JP2778043B2 - 新規白金含有化合物および悪性腫瘍治療剤 - Google Patents

新規白金含有化合物および悪性腫瘍治療剤

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JP2778043B2 JP63200932A JP20093288A JP2778043B2 JP 2778043 B2 JP2778043 B2 JP 2778043B2 JP 63200932 A JP63200932 A JP 63200932A JP 20093288 A JP20093288 A JP 20093288A JP 2778043 B2 JP2778043 B2 JP 2778043B2
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、新規白金含有化合物およびそれを有効成分
とする悪性腫瘍治療剤に関する。
<従来の技術> 悪性腫瘍の化学療法は、近年シス−ジクロロ(ジアン
ミン)白金(II)(以下、CDDPと略す)の適用で飛躍的
な進歩をとげた。すなわち、CDDPは、それまで化学療法
剤での治療が難しかった卵巣癌や精巣癌などの性器癌に
著効を示したためである。以来、抗腫瘍活性を有する白
金錯体の研究が盛んに行われるようになってきた(例え
ば、特開昭54−70246号公報)。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、CDDPをはじめとする従来の白金錯体に
は腎毒性や骨髄毒性などの重篤な副作用があり、臨床使
用上の問題点となっている。このため、毒性が弱い白金
化合物の開発が望まれている。
本発明の目的は、抗腫瘍活性を有し、かつ毒性が弱い
という両条件を満足する新規白金含有化合物を提供する
ことにあり、さらにかかる両条件を満足する悪性腫瘍治
療剤を提供することにある。
<課題を解決するための手段> 上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわ
ち、本発明は、下記一般式(A) (式中、R1は水素原子、 またはCH3SCH2CH2−基を示し、nは1または2を示す
(ただしR1の場合はnは2を示す)。
で示される新規白金含有化合物(以下、本発明化合物と
略す)および上記式(A)で示される新規白金含有化合
物を有効成分とする悪性腫瘍治療剤である。
ここで、本発明化合物における は下記式 で示される共役系を意味する。
本発明化合物はジニトラト(1,2−ジアミノシクロヘ
キサン)白金(II)(化合物(B1))あるいはジスルフ
ァト(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)化合
物(B2))をアルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土
類金属水酸化物の存在下で、上記式(D)で示される化
合物(化合物(D))と反応させることによって、また
は、ジヒドロキソ(1,2−ジアミノシクロヘキサン)白
金(II)(化合物(C))と化合物(D)とを反応させ
ることにより合成することができる。
ここで、アルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類
金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリ
ウム、水酸化バリウムなどが好ましく用いられ、化合物
(B)または(C)に対して通常2〜2.5倍モル、化合
物(D)に対して1〜2倍モル用いる。, 化合物(C)は、通常、化合物(B1)または(B2)の
水溶液を“アンバーライトIRA−400"“ダイヤイオンSA
−10A"などの陰イオン交換樹脂(OH型)を充填したカラ
ムに通して得られる。
反応は通常、常温〜100℃,好ましくは5〜50℃で、
常圧下に化合物(B1)、(B2)または化合物(C)に対
して化合物(D)を1〜2.5倍モル/モル用い水溶液中
あるいは水−エタノール溶液中で混和、加熱することに
より実施できる。このようにして得られた本発明化合物
はアコ錯体として水を含む場合があるが、アコ錯体も本
発明化合物の範囲に含まれる。
本発明化合物の原料であるジニトラト(1,2−ジアミ
ノシクロヘキサン)白金(II)(化合物(B1))はたと
えば次の方法により合成することができる。
化合物(B2)は上記反応式においてAgNO3の代りにAg2
SO4を用いることによって合成することができる。
上記反応式で得られる化合物(B1)、(B2)、(C)
には原料として用いる1,2−ジアミノシクロヘキサン
(以下、dachと略す)の立体配置によりPt(トランス−
l−dach)(ONO2)2、Pt(トランス−d−dach)(ON
O2)2、Pt(シス−dach)ONO2)2の三種の異性体、Pt(ト
ランス−l−dach)(OSO3)、Pt(トランス−d−dac
h)(OSO3)、Pt(シス−dach)(OSO3)の三種の異性
体、〔Pt(トランス−l−dach)(OH)2〕、〔Pt(トラ
ンス−d−dach)(OH)2〕および〔Pt(シス−dach)(O
H)2〕の三種の異性体がそれぞれ存在する。
本発明化合物のもう一つの原料である化合物(D)は
J.Chem.Soc.,850(1954)に記載の方法に準じて容易に
合成することができる。
かくして得られる本発明化合物は抗腫瘍剤、すなわち
腫瘍治療剤の有効成分として使用することができる。
本発明化合物の有効量を含む治療剤を臨床において投
与する場合、経口または非経口経路により投与される。
その剤形は、錠剤、糖衣錠、丸剤、カプセル剤、散剤、
トローチ剤、液剤、坐剤、注射剤などを包含し、これら
は、医薬上許容される賦形剤(excipient)を配合して
製造される。賦形剤としては次のようなものを例示する
ことができる。乳糖、ショ糖、ブドウ糖、ソルビトー
ル、マンニトール、ばれいしょでんぷん、アミロペクチ
ン、その他各種でんぷん、セルローズ誘導体(たとえ
ば、カルボキシメチルセルローズ、ハイドロキシエチル
セルローズなど)、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウ
ム、ポリビニルアルコール、ステアリン酸カルシウム、
ポリエチレングリコールワックス、アラビアゴム、タル
ク、二酸化チタン、オリーブ油、ピーナツ油、ゴマ油な
どの植物油、パラフィン油、中性脂肪基剤、エタノー
ル、プロピレングリコール、生理食塩水、滅菌水、グリ
セリン、着色剤、調味剤、濃厚剤、安定剤、等張剤、緩
衝剤などおよびその他医薬上許容される賦形剤。
本発明の治療剤は、本発明化合物を0.001〜85重量
%、好ましくは0.005〜60重量%含有することができ
る。
本発明の治療剤の投与量は、主として症状により左右
されるが、1日成人体重あたり0.005〜200mg、好ましく
は0.01〜50mgである。
<実施例> 以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明す
る。
実施例1 〔3−アセチルピロリジン−2,4−ジオン−モノヒドロ
キソ(トランス−l−1,2−ジアミノシクロヘキサン)
白金(II)・1水和物〕 グリシンエチルエステル塩酸塩21.0g(0.15モル)を
無水エタノール200mlで加温して溶かした溶液に、ナト
リウム3.45gを無水エタノール70mlに溶かした溶液を加
えた。析出した食塩をすばやく別して液を冷却し、
10℃以下を保ってジケテン13.00gを滴下した。室温で2
時間撹拌したのち、溶媒を留去してエチルエーテル抽出
を行い、硫酸ナトリウムで乾燥した。エチルエーテルを
除き、残留物をエチルエーテル30mlで再結晶して、3−
オキソブチロイルグリシンエチルエステル15.9gを得た
(収率57%)。
3−オキソブチロイルグリシンエチルエステル10.0g
(0.054モル)をベンゼン25mlに溶かし、28%ナトリウ
ムメチラート/メタノール溶液10.4gを添加して2時間
加熱還流した。反応液に水70mlを加え、ベンゼン層を分
離した。水層を濃硫酸で中和し、析出した結晶を取し
て乾燥すると5.47gの粗生成物が得られた。酢酸エチル
で再結晶して4.21gの3−アセチルピロリジン−2,4−ジ
オンを得た(収率55%)。
得られた化合物の分析結果は次のとおりであった。
Pt(トランス−l−dach)(ONO2)2水溶液を陰イオン
交換樹脂“ダイヤイオンSA−10A"(OH型)を充填したカ
ラムを通して得られたPt(トランス−l−dach)(OH)2
水溶液50ml(4.2ミリモル)に3−アセチルピロリジン
−2,4−ジオン0.59g(4.2ミリモル)をエタノール30ml
に溶かした溶液を加え、室温で2日間撹拌した。微量の
析出物を去して得られた液を濃縮乾固したのち、酢
酸エチルで洗浄、減圧乾燥して3−アセチルピロリジン
−2,4−ジオン−モノヒドロキソ(トランス−l−1,2−
ジアミノシクロヘキサン)白金(II)化合物の1水和物
(以下、本発明化合物(A1)と略す)1.82gを得た(収
率89%)。
この化合物の赤外吸収スペクトル(IR)を第1図に、
また、融点と元素分析値を以下に示す(Ptは原子吸光分
析により求めた)。
実施例2 〔3−アセチル−5−(1−メチルチオ)エチルピロ
リジン−2,4−ジオン−モノヒドロキソ(トランス−l
−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白金(II)・1水和
物〕 グリシンエチルエステル塩酸塩に代えてDL−メチオニ
ンエチルエステル塩酸塩を用いる以外は、実施例1と同
様にして3−アセチル−5−(1−メチルチオ)エチル
ピロリジン−2,4−ジオンを得た(収率71%)。
得られた化合物の分析結果は次のとおりであった。
実施例1と同様にして、Pt(トランス−l−dach)(O
NO2)2水溶液をイオン交換して得たPt(トランス−l−d
ach)(OH)2水溶液50ml(4.2ミリモル)に3−アセチル
−5−(1−メチルチオ)エチルピロリジン−2,4−ジ
オン0.90g(4.2ミリモル)をメタノール80mlに溶かした
溶液を加え、室温で24時間撹拌した。反応後、微量の析
出物を去し、液を濃縮乾固した。固型物を酢酸エチ
ルで洗浄し、減圧乾燥して3−アセチル−5−(1−メ
チルチオ)エチルピロリジン−2,4−ジオン−モノヒド
ロキソ(トランス−l−1,2−ジアミノシクロヘキサ
ン)白金(II)の1水和物(以下、本発明化合物(A2)
と略すを)2.29g得た(収率95%)。
この化合物のIRを第2図に、また、融点と元素分析値
を以下に示す(Ptは原子吸光分析により求めた)。
実施例3 〔3−アセチル−5−(1−メチルプロピル)ピロリ
ジン−2,4−ジオン(トランス−l−1,2−ジアミノシク
ロヘキサン)白金(II)・1水和物〕 実施例1と同様にしてPt(トランス−l−dach)(ONO
2)2水溶液をイオン交換して得たPt(トランス−l−dac
h)(OH)2水溶液100ml(4.2ミリモル)に3−アセチル−
5−(1−メチルプロピル)ピロリジン−2,4−ジオン
1.72g(8.7ミリモル)をエタノール50mlに溶かした溶液
を加え、室温で18時間撹拌した。反応液を濃縮乾固した
のち、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥して3−アセチル
−5−(1−メチルプロピル)ピロリジン−2,4−ジオ
ン(トランス−l−1,2−ジアミノシクロヘキサン)白
金(II)の1水和物(以下、本発明化合物(A3)と略
す)を2.67g得た(収率88%)。
この化合物のIRを第3図に、また、融点と元素分析値
を以下に示す(Ptは原子吸光分析により求めた)。
実施例4 CDF1マウス(雄性、6週齢、1群6〜10匹使用)腹腔
内にDBA/2マウスで継代したマウス白血病細胞L1210 105
個を移植した。移植日を0日として、1日目、5日目、
9日目の計3回本発明化合物(A1)、(A2)および(A
3)をそれぞれ被検薬として腹腔内に投与した。本実験
の比較薬としてはCDDPを用いた。各薬剤は0.05%“Twee
n 80"溶液に溶解または懸濁して使用した。L1210移植マ
ウスに対する白金錯体の抗腫瘍作用の効果判定は、以下
の式により求められるT/C値ならびに30日目における生
存マウス数によって行った。
結果を表1に示す。
表1に示す結果より、本発明化合物(A1)は、10mg/k
g投与群において200%のT/C値を示した。また、本発明
化合物(A2)は、200mg/kg投与群において、183%のT/C
値を示し、30日目における生存マウスも1/6であった。
本発明化合物(A3)は50mg/kg投与群において158%のT/
C値を示した。以上より、本発明化合物は明らかに抗腫
瘍作用を示したといえる。
実施例5 本発明化合物(A1)、(A2)および(A3)のマウスに
おける急性毒性試験を、CDDPを対照として行った。Slc:
ICRマウス(雄性;5週齢)の腹腔内に本発明化合物(A
1)、(A2)および(A3)を被検薬として投与した。被
検薬は0.05%“Twene 80"溶液に溶解または懸濁して用
いた。投与後14日目の死亡率からLD50値を算出した。
その結果を表2に示す。
表2に示し結果から明らかなように、本発明化合物
(A1)、(A2)および(A3)は、CDDPに比べ低毒性であ
る。
<発明の効果> 本発明の化合物は強い抗腫瘍活性を有し、かつ毒性も
弱く、悪性腫瘍治療剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図、第2図および第3図は、実施例1、2および3
で得られた本発明化合物(A1)、(A2)および(A3)の
赤外吸収スペクトル(IR)をそれぞれ示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−313488(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07F 15/00 A61K 31/555 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(A) (式中、R1は水素原子、 またはCH3SCH2CH2−基を示し、nは1または2を示す
    (ただしR1の場合はnは2を示す)。) で示される新規白金含有化合物。
  2. 【請求項2】請求項1記載の新規白金含有化合物を有効
    成分とする悪性腫瘍治療剤。
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