JP2768242B2 - 電気抵抗溶接性に優れた制振金属板 - Google Patents

電気抵抗溶接性に優れた制振金属板

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JP2768242B2 JP29998493A JP29998493A JP2768242B2 JP 2768242 B2 JP2768242 B2 JP 2768242B2 JP 29998493 A JP29998493 A JP 29998493A JP 29998493 A JP29998493 A JP 29998493A JP 2768242 B2 JP2768242 B2 JP 2768242B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、スポット溶接、シー
ム溶接、シリーズ溶接などの電気抵抗溶接性に優れ、自
動車、電機、機械、建築材料用として必要な密着力、制
振性を有する制振金属板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】2枚の薄い鋼板の間に、高分子樹脂を挾
持した制振鋼板は、制振性に優れることから、騒音防
止、振動防止を目的に、自動車、家電機器、建築材料に
多く使用されている。しかしながら、これらの制振鋼板
に使用される高分子樹脂はもともと鋼板との密着力が小
さく、また、変形抵抗が極めて小さいために、プレス成
形時に上下鋼板間にずれが生じて、樹脂と鋼板とが剥離
するなど、加工上の問題点があった。また、高分子樹脂
は、電気絶縁性が極めて高く、そのままでは直接通電に
よる電気抵抗溶接を行うことができない。これらの問題
を解決するために以下の方法が提案されている。まず、
加工性を向上させるために、熱可塑性樹脂の表面に金属
に強固な接着性能を有する樹脂を付与した多層樹脂シー
トを使用して金属板との接着力を向上させる方法(特開
昭58−72445 号公報)、熱可塑性樹脂フィルムの内外面
に、接着強度が8kgf/cm2 以上であるポリオレフ
ィン樹脂を設ける方法がある(特開昭60−82349 号公
報)。さらに、電気抵抗溶接性を付与する方法として
は、高分子樹脂に導電性金属粉を添加する方法(特開昭
50−79920 号公報、特公昭60−912 号公報、特開昭62−
87341 号公報、特開昭57−146649号公報、特公昭61−29
261 号公報)がある。一般には、多層樹脂の場合にも、
同様に樹脂中に金属粉を添加したり、多層樹脂シート上
にばらまいたりする方法がとられている。また、金属粉
添加による制振性の低下を防ぐために、中心層のみに金
属粉を添加した多層フィルムを使用する方法もある(特
公平3 −55310号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来技術においては、
高分子樹脂として多層フィルムを用いることにより、制
振性と密着力を両立することは可能である。さらに、多
層フィルム中に、従来技術により金属粉を添加すること
によって、電気抵抗溶接性を付与することも可能ではあ
る。
【0004】しかしながら、溶接性は付与できるもの
の、特定形状の金属粉をフィルム全体にわたって添加す
るために、制振性が低下する問題が生ずる。また、制振
性の低下を防ぐために、中心層のみに金属粉を添加し、
制振鋼板貼合わせ時に外側層を流出させて外側層の厚み
を薄くし、金属粉と鋼板との接触を確保することによっ
て、溶接性を付与する方法では、金属粉と鋼板との界面
に樹脂が残存したり、外側層の流出の程度によって、溶
接性が低下する問題がある。
【0005】本発明は、上述の問題点を解決するために
なされたものであって、制振性と密着力を兼ね備えた多
層樹脂フィルムを使用した制振金属板において、外側層
を有効に活用することによって、制振性の低下を防ぎ、
かつ電気抵抗溶接性にも優れた制振金属板を得ることを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高分子樹
脂を挾持してなる制振金属板に、多層フィルムを適用す
ることで制振性と密着力、剛性を有効に付与でき、ま
た、多層フィルム中に金属粉を添加することで、基本的
にはこの多層フィルムに電気抵抗溶接性を付与すること
が可能と考え、制振性を低下させることなく、安定した
電気抵抗溶接性を付与すべく、金属粉添加条件と溶接性
について、鋭意検討を行った。その結果、多層フィルム
であるがゆえに、その外側層を有効に利用することで、
本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明の電気抵抗溶接性に優れ
た制振金属板は、高分子樹脂を上下2枚の金属板の間に
挾持してなり、前記高分子樹脂は制振性を有する中心層
とその両面に金属板との接着性を有する外側層からなる
少なくとも3層構造からなり、前記中心層内には、圧潰
され金属板の間に挾持される前の平均粒径D1 が、前記
高分子樹脂層の厚さT0 に対して、T0 ≦D1 ≦2T0
の範囲内であり、ビッカース硬さが180Hv以下であ
り、融点が前記2枚の金属板と同等以上の導電金属粉が
中心層樹脂と導電金属粉との総和に対して3〜20重量
%添加されており、かつ、前記外側層内には、金属板に
挾持される前の平均粒径D2 が前記外側層の厚さT2
対して、0.6T2 ≦D2 ≦2T2 であり、融点が前記
2枚の金属板と同等以上の導電金属粉が外側樹脂と導電
金属粉との総和に対して3〜5重量%添加されている。
また、導電金属粉は、圧潰された金属板間に挾持された
状態では、前記中心層内には、前記高分子樹脂層の厚さ
0 に対して、2T0 ≦D1Wの範囲の金属粉が中心層中
の全金属粉の個数の70%以下で、かつT0 ≦D1Wの範
囲の金属粉が30%以上であり、かつ、前記外側層内に
は、外側層の厚さT2 に対して、2T2 ≦D2Wの範囲の
金属粉が外側層の全金属粉の個数の70%以下で、かつ
2 ≦D2Wの範囲の金属粉が外側層の全金属粉の個数の
30%以上である。ただし、D1Wは圧潰された金属板間
に挾持された後の中心層中の金属粉の幅方向径、また、
2Wは圧潰され金属板間に挾持された後の外側層中の金
属粉の幅方向径である。
【0008】また、制振性の点からは、上記中心層を構
成する高分子樹脂がガラス転移に基づく損失正接(ta
nδ)の極大値が0.3以上であり、この極大値を示す
温度が−40〜100℃の範囲にあり、金属粉を添加し
た制振金属板での損失係数の極大値が0.1以上であ
り、この極大値を示す温度が0〜120℃の範囲にある
のがよい。
【0009】さらに、多層フィルムとしては、フィルム
成形性の点から、高分子樹脂は中心層、外側層ともに、
ポリオレフィン系樹脂を主体とする熱可塑性樹脂である
ことが望ましい。
【0010】
【作用】本発明の作用については、検討結果に基づいて
説明する。まず、スポット溶接メカニズムについて述べ
る。スポット溶接時に果たす金属粉の役割は、全部で1
0サイクル程度からなるスポット溶接における溶接初期
段階(約3サイクル以内)において、制振鋼板等の制振
金属板を挾んだ状態の溶接用電極間に電流を流すことに
ある。すなわち、制振金属板と被溶接材とを溶接用電極
で加圧しながら挾み、電極間に通電すると、電極直下お
よびその周辺の金属粉を通じて電流が流れる。その通電
により、電極直下およびその周辺で、表皮金属板および
金属粉が抵抗発熱を起こし、その熱で高分子樹脂が溶融
あるいは熱分解する。電極直下の溶融、あるいは熱分解
によりガス化した高分子樹脂は、電極の加圧力で電極の
周りに排除され、表皮金属板同士が接触し、通常金属板
と同様にスポット溶接が行われる。
【0011】ここで、金属粉の数が少なかったり、金属
粉の量が多くても金属板との接触状態が不充分な場合
は、接触している金属粉への電流密度が大きくなるの
で、瞬時に金属粉が抵抗発熱を起こし、金属粉と接触し
ている表皮金属板が急速加熱され、溶融飛散し、ピンホ
ール状の欠陥を引き起こす。なお、表皮金属板に亜鉛め
っき鋼板を使用する場合には、亜鉛は鉄に比べて融点が
低いため、金属粉と接した亜鉛めっき層が、抵抗発熱に
より瞬時に溶融飛散あるいは蒸発することがあるので、
冷延鋼板を使用した場合に比べて、金属粉の添加量を増
大して、電流密度を小さくすることが望ましい。
【0012】本発明は、上記の知見に基づいてなされた
ものであり、多層フィルムへの金属粉添加条件と溶接性
との関係について検討を進めた結果、以下の結論を得
た。高分子樹脂としては、制振性を有する中心層とその
両面に金属板との接着性を有する外側層からなる少なく
とも3層構造からなる。すなわち、上述したように制振
性と加工性に必要な密着力やフィルム剛性を付与するこ
とは、単一フィルムでは困難であり、各層に機能分離さ
せることが望ましいからである。多層フィルムの層鋼構
成としては、制振性の点からも、外側層/中心層/外側
層の厚み比は、1:4:1〜1:8:1が望ましく、よ
り望ましくは1:6:1〜1:8:1である。中心層の
厚み比が小さくなると制振性が低下し、外側層の厚み比
が小さくなり過ぎると密着力が劣る。また、中心層の厚
さは、制振性を考慮して20〜100μm程度、外側層
の厚さは、密着性を考慮して3〜10μm程度がよい。
【0013】金属粉は、中心層と外側層にそれぞれ所定
粒径のものを添加する。具体的には、中心層には、圧潰
され金属板の間に挾持される前の平均粒径D1が、高分
子樹脂層の総厚さT0 に対して、T0 ≦D1 ≦2T0
範囲のものを用いる。その理由は、積層する際に高分子
樹脂層の厚さまで圧潰することによって、平滑面が造ら
れ、金属粉を上下の金属板と有効に接触でき、少ない添
加量で溶接性を付与できる状態になるからである。2T
0 <D1 では、金属粉を潰すのが困難となり、その結
果、高分子樹脂層と表皮金属板との界面に気泡が混入
し、密着力が低下する。また、T0 >D1 では、充分な
接触が得られず溶接性が低下する。なお、金属粉は圧潰
される前の形状がほぼ球状をしたものが望ましい。その
理由は、粒径分布を正確に把握でき、これにより潰した
ときの表皮金属板と金属粉との接触した部分の面積を簡
単に求めることができ、ピンホール欠陥などの溶接欠陥
が発生しないための金属粉の添加量を最小限に、かつ正
確に決定できるからである。圧潰後の金属粉では、前記
高分子樹脂層の厚さT0 に対して、2T0≦D1Wの範囲
の金属粉が中心層中の全金属粉の個数の70%以下で、
かつT0 ≦D1Wの範囲の金属粉が30%以上である。2
0 ≦D1Wの範囲の個数が70%を越えると、金属粉を
潰するのが困難となり、T0 ≦D1Wの範囲の個数が30
%未満では、充分な接触状態および平滑面が得られず溶
接性が低下するためである。また、添加量としては、中
心層樹脂に対して3〜20重量%添加する。下限を3重
量%とした理由は、前述のスポット溶接のメカニズムか
らも判るように、溶接を行うためには、金属粉と表皮金
属板との充分な接触面積を確保することが必要であり、
そのためには、最低3重量%以上が必要であり、さら
に、めっき鋼板等のめっき金属板の場合には10重量%
以上の添加量が望ましい。めっき鋼板の場合に、添加量
を多くすることが望ましいのは、めっき層の融点が40
0〜500℃程度であるため、金属粉と接しためっき層
が抵抗発熱し、溶接初期段階で瞬時に溶融飛散ないし、
蒸発することがあるからで、これを防ぐために金属粉の
添加量を多くして、金属粉への電流密度を小さくして、
これに接するめっき層の抵抗発熱を防ぐためである。上
限を20重量とした理由は、20重量%以上では、積層
時に潰することが困難となり、気泡の混入により密着力
の低下や、スポット溶接性の低下を引き起こしたり、仮
に潰せたとしても、密着力の低下は避けられず、また、
制振性能の低下が起こる。めっき鋼板(メッキ金属板)
の場合、メッキ層の組成は、Zn,Ni,Sn,Cr,
Cu,Fe−Zn系,Ni−Zn系,Zn−Al系など
各種のめっき鋼板を使用できる。
【0014】また、外側層には、金属板に挾持される前
の平均粒径D2 が前記外側層の厚さT2 に対して、0.
6T2 ≦D2 ≦2T2 のものを用いる。外側層に、この
ような小径金属粉を添加する理由は、中心層に添加した
前述金属粉のみでは、金属板と金属粉との接触界面に樹
脂が残留することがあり、溶接性が安定しないからで、
接着層に添加した金属粉を介して中心層中の金属粉と金
属板とを接触させることによって、上下金属板間を低い
抵抗で短絡でき、溶接性を向上させるためである。さら
に、これにより、中心層中の金属粉添加量を低減できる
ので、併せて、制振性の低下も防ぐことができる。2T
2 <D2 では、金属板に挾持する前のフィルム表面の平
滑性が劣り、金属板に挾持した後に、気泡が混入した
り、また、中心層に添加する金属粉の個数に対して、外
側層に添加した金属粉の個数が少なくなるため、外側層
中の金属粉を介して中心層中の金属粉と金属板とが接触
する確率が低くなり、溶接性が安定しない。一方、0.
6T2 >D2 では金属板との充分な接触が得られず、溶
接性が劣る。圧潰後の金属粉では、前記外側層の厚さT
2 に対して、2T2 ≦D2Wの範囲の金属粉が外側層の全
金属粉の個数の70%以下で、かつT2 ≦D2Wの範囲の
金属粉が外側層の全金属粉の個数の30%以上とする。
2T2 ≦D2Wの範囲の金属粉が70%を越えると金属板
に挾持した後に、気泡が混入し、T2 ≦D2Wの範囲の金
属粉が30%未満では溶接性が劣るためである。また、
添加量は3〜5重量%とする。その理由は、前述のよう
に、外側層の厚みが中心層の厚みに比べて薄いことか
ら、3〜5重量%の添加量でも、中心層中の金属粉の個
数に対して、10〜100倍の個数が存在するので、前
述の中心層中の金属粉と金属板との間に介することがで
き、溶接性への効果が充分あるからである。3重量%未
満では、溶接性が劣る。5重量%を越えると金属板との
密着力がおとるとともに、フィルム成形性が劣る。
【0015】ここで、重要なことは、外側層に添加する
所定の金属粉は、溶接性を向上させるが、制振性低下へ
の影響がなく、また添加量を最適化すれば密着力低下へ
の影響もないことであり、外側層を有効に利用すること
により、性能のバランス向上がはかれることを見いだし
た点である。
【0016】また、金属粉としては、中心層に添加する
ものは、ビッカース硬さが180Hv以下のものがより
望ましい。その理由は、積層する際に金属粉を容易に高
分子樹脂の厚みまで潰すことができ、表皮金属板との接
触面積を充分に確保することができ、かつ高分子樹脂層
と表皮金属板の界面に気泡が入ることなく、良好な密着
力を得ることができるからである。例えば冷延鋼板のビ
ッカース硬さは100〜130Hv程度であり、また合
金化亜鉛めっき鋼板では300Hv程度であり、表皮鋼
板の硬さの範囲は、おおよそ100〜300Hvであ
る。これに対して、金属粉の硬さが、表皮鋼板の硬さの
1.8倍以下であれば、積層時の圧着ロールの圧下力で
圧潰することが可能であることを見いだした。すなわち
金属粉のビッカース硬さとしては、180Hv以下が望
ましい。さらに、表皮鋼板等の金属板の硬さ以下であれ
ば、容易に圧潰できるので一層望ましい。表皮金属板の
1.8倍以上の硬さの金属粉を使用すると、積層する際
の圧下力を高くしても、金属粉は表皮金属板に簡単に食
い込むことができず、さらに潰そうと圧下力を高くした
場合、むしろ表皮金属板の変形が生じ、結果として金属
粉と表皮金属板が点接触となり、接触が不充分となり、
スポット溶接性が低下する。さらに、金属粉が潰れない
ために、高分子樹脂層との接合面に気泡が混入し、密着
力低下の弊害が生ずる。以上のように、ビッカース硬さ
が180Hv以下の金属粉を使用することにより、あら
ゆる種類の表皮金属板を使用しても、良好な溶接性が得
られるだけでなく、良好な密着力をも得ることができ
る。さらに、最小限の金属粉添加量でよいため、制振性
能の低下が少なく、良好な制振性能をも得ることができ
る。金属粉の硬度を所定の硬度とするには、硬くする場
合は、焼き入れ又は加工硬化法を、柔らかくする場合は
焼鈍法があり、いずれも当業者が適宜行うことができる
技術である。
【0017】次に、金属粉の融点は、両層に添加する金
属粉共に、2枚の表皮金属板の融点と同等以上であるこ
とが望ましい。その理由は、スポット溶接は表皮金属板
が溶融してなされるわけであるから、金属粉は表皮金属
板が溶融するまで上下の金属板の短絡点の役割を果たす
必要がある。溶接時には、電流は金属粉を通じて流れ、
金属粉自体も抵抗発熱を起こすため、温度上昇によって
は、溶融し、消失する可能性は大きいので、少なくと
も、表皮金属板の融点以上であることが望ましい。この
条件を満足する金属粉としては、ニッケル粉、鉄粉、ス
テンレス鋼粉、銅粉、又はこれらの混合粉などがある。
このうち特に、ニッケル粉が好適である。
【0018】高分子樹脂としては、中心層を構成するも
のは、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、酢酸ビ
ニル系、ポリエステル系などの熱可塑性樹脂やアクリル
系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系などおよ
びこれらとSBRなどのゴムとの重合体またはポリマー
アロイなどの熱硬化性樹脂が使用でき、外側層樹脂とし
ては、フィルム成形性の容易な点から、接着性ポリエチ
レンや接着性ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂が使用
できる。フィルム成形性の点からは、中心層、外側層と
もに、変性ポリエチレン系や変性ポリプロピレン系など
のポリオレフィン系をベースとする熱可塑性樹脂が望ま
しい。
【0019】中心層樹脂としては、制振性の点から、ガ
ラス転移に基づく損失正接(tanδ)の極大値が0.
3以上であり、この極大値を示す温度が−40〜100
℃の範囲にある高分子樹脂を使用することが望ましく、
金属粉を添加した制振金属板の損失係数の極大値を0.
1以上とし、この極大値を示す温度を0〜120℃の範
囲とすればよい。金属粉の添加量の増大は、制振性の低
下を引き起こすので、中心層への添加量と接着層への添
加量を制御することにより、損失係数の低下を防ぐこと
ができる。
【0020】なお、多層フィルムを製造する方法として
は、ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーシ
ョン法、押出ラミネーション法、共押出法(フィードブ
ロック法、マルチマニホールド法)、多層インフレーシ
ョン法などがあり、いずれを用いても良い。ただし、フ
ィルム成形の容易さの点からは、共押出法が有効であ
る。これらの方法でtanδを0.3以上、損失係数の
極大値を0.1以上とするためには、常法に従って原
料、製造条件を制御すればよい。例えば、tanδ0.
3以上を得るためには、ポリエチレン、ポリプロピレン
などのポリオレフィンをアクリルさんエステルなどで共
重合させることで可能であり、また損失係数を0.1以
上にするためには、厚さ0.2〜1.6mmの表皮鋼板
に金属粉添加量を20重量%以下とした厚さ40μm以
上のフィルムを、一対のピンチロールを使用し、熱圧着
により、気泡の混入なく貼合わせることにより可能であ
る。これらを適宜することにより可能である。
【0021】表皮金属板としては、冷延鋼板、ステンレ
ス鋼板をはじめ、亜鉛、ニッケル、錫、クロム、銅など
の各種めっき鋼板や、鉄−亜鉛系、ニッケル−亜鉛系亜
鉛−アルミニウム系などの溶融あるいは電気合金化めっ
き鋼板、銅板などの金属板などいずれも使用できる。そ
の厚さは0.2〜3.2mm程度である。また、耐食性
などを向上する目的で、鋼板表面にクロメート処理、あ
るいは有機系皮膜が施されていてもよい。
【0022】
【実施例】本発明の実施例について、説明する。図1
(a)、図1(b)は本発明の実施態様を示す断面図、
図2はスポット溶接要領を示す正面図である。図面にお
いて、1,1′は制振鋼板を示し、制振鋼板1,1′
は、表皮鋼板2,2′間に高分子樹脂層を挟んでおり、
高分子樹脂層は中心層3,3′とその両側に配置された
外側層4,4′とを備え、外側層4,4′が前記制振鋼
板1,1′に接している。中心層3,3′中には金属粉
5,5′が、外側層中には金属粉6,6′が分散含有さ
れている。なお、図1(b)中7′はめっき層、図2中
8は電極、9は単一鋼板(被溶接材)である。
【0023】図2に示す制振鋼板1(1´)と単一鋼板
9をスポット溶接した。表1に本発明の制振鋼板の各種
条件を、表2にスポット溶接結果、制振性測定結果、密
着力測定結果をまとめて示す。また、比較のために、表
3に示す条件を備えた本発明の範囲外の制振鋼板につい
ても、同様のスポット溶接を行った。表4にその実験結
果を示す。
【0024】以下に、表皮鋼板、高分子樹脂、金属粉、
積層条件、スポット溶接条件、制振性測定条件を示す。
なお、表3中に、本発明の範囲外のものに*を付し、表
4中に結果の劣るところにも*を付した。また、表2
中、本発明の範囲内ではあるが、好適な範囲からはずれ
るところも*を付した。 (1)表皮鋼板 1.冷延鋼板(アルミキルド鋼板)、板厚0.8mm
t 、ビッカース硬さ100Hv 2.亜鉛−ニッケル合金化電気めっき鋼板(素材は上記
1.)、板厚0.8mmt (2)高分子樹脂 1.中心層;アクリル変性ポリプロピレン系樹脂
(a),(b)、厚み0.04mmt 2.外側層;接着性ポリプロピレン系樹脂、厚み0.0
05mmt 3層フィルム、層構成比1:8:1、総厚さ0.05m
t (3)樹脂フィルム製造方法 マルチマニホールド法による共押出法により、3層フィ
ルムを製造した。場合により、各層に金属粉を添加した
ものを製造した。 (4)金属粉 (中心層添加) 1.ニッケル粉 ・平均粒径;120μm(分布90〜150)、68μ
m(63〜74)、48μm(44〜53) ・硬さ;ビッカース硬さで90Hv、180Hv、28
0Hv ・添加量;2〜30重量%の範囲で添加 2.ステレンス鋼粉 ・平均粒径;58μm(分布53〜63) ・硬さ;ビッカース硬さで180Hv ・添加量;3〜20重量%添加 (外側層添加) 1.ニッケル粉 ・平均粒径;2μm(分布1〜6)、5μm(3〜1
0)、15μm(10〜25) ・硬さ;ビッカース硬さで、90Hv、180Hv、2
80Hv ・添加量;1〜10重量%の範囲で添加 (5)積層条件 いずれも、130℃に加熱した表皮鋼板に、金属粉を添
加した3層フィルムを、樹脂をライニングした一対のピ
ンチロールで貼合わせ、180℃に加熱し樹脂を溶融さ
せた状態で、別途180℃に加熱したもう一方の表皮鋼
板とを、樹脂をライニングした1対のピンチロールによ
って、10kgf/cm2 〜80kgf/cm2 の面圧
の範囲で金属粉の添加量に応じて選択して積層し、空冷
して、制振鋼板を得た。 (6)スポット溶接条件 1.電極;ドーム型、銅−クロム電極(先端系6mm
φ) 2.加圧力;200kgf 3.電流;10kA 4.通電時間;12サイクル(60Hz) 5.制御方法;定電流制御(0.5サイクル制御) 6.試験片組合わせ;30×100mmの制振鋼板と
1.6mm厚の単一鋼板を重ね合わせ、溶接した。
【0025】7.溶接性の評価;積層鋼板1本につき一
か所のスポット溶接を500本行い、欠陥発生数を求め
た。また、溶接時の電流・電圧波形から、0.5サイク
ル時の溶接時抵抗を求めた。
【0026】なお、溶接時抵抗は、表皮鋼板の種類に好
適な範囲は異なり、冷延鋼板では400μΩ未満、亜鉛
−ニッケル合金化電気めっき鋼板では300μΩ未満が
好適な範囲であり、この範囲を超えると溶接性が低下す
る。 (7)制振性能の測定 25×220mmと25×280mmの試験片にて、共
振応答曲線からの半値幅法により、損失係数を測定し、
1000Hzでの損失係数の最大値で整理した。
【0027】表2から明らかなように、本発明範囲内の
実施例No.1〜No.10は、溶接時抵抗が好適範囲
内にあり、溶接性が良好であった。また、No.5,N
o.7以外では密着力、制振性も良好であった。
【0028】これに対して、表4から、比較例No.1
は、外側層に金属粉を添加していないので、溶接時抵
抗、溶接性ともに不良であった。比較例No.2および
No.9は、外側層への金属粉添加量が5%を越えてい
るので、密着力が不良であった。
【0029】比較例No.3は、外側層の金属粉の粒径
が2T2 <D2 (2T2 ≦D2Wの範囲の個数が外側層中
の金属粉の個数の85%)なので、密着力が不良であっ
た。比較例No.4は、中心層への金属粉添加量が3%
未満なので、溶接時抵抗、溶接性ともに不良であった。
【0030】比較例No.5は、中心層への金属粉添加
量が20%以上なので、制振性および密着力が不良であ
った。比較例No.6は、中心層の金属粉の粒径がT0
>D1 (T0 ≦D1Wの範囲の個数が中心層中の金属粉の
個数の20%)なので、溶接時抵抗および溶接性が不良
であった。
【0031】比較例No.7は、中心層中の金属粉の粒
径が2T0 <D1 (2T0 ≦D1Wの範囲の個数が中心層
中の金属粉の個数の90%)なので、溶接時抵抗および
密着力が不良であった。
【0032】比較例No.8は、単層フィルムであり、
密着力が不良であった。比較例No.10は、外側層の
金属粉の粒径が0.6T2 >D2 (2T2 ≦D2Wの範囲
の個数が外側層中の金属粉の個数の5%)なので、溶接
時抵抗および溶接性が不良であった。比較例No.11
は、外側層への金属粉添加量が3%未満なので、溶接時
抵抗および溶接性が不良であった。
【0033】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、密着
力、制振性を低下させることなく、電気抵抗溶接性に優
れた制振鋼板を確実に得ることが可能となり、自動車、
電機、機械、建築材料など従来において、密着力、制振
性、溶接性のバランスの問題、あるいは、溶接性が安定
しないために、適用することが困難であった用途への適
用が可能となり、工業上有用な効果がもたらされる。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制振鋼板の模式図で、(a)は一実施
例を、(b)は他の実施例を示す。
【図2】本発明に係る制振鋼板をスポット溶接する際の
説明図。
【符号の説明】
1,1′…制振鋼板、2,2′…表皮鋼板、3,3′…
中心層、4,4′…外側層、5,5′…金属粉、6,
6′…金属粉、7′…めっき層、8…電極、9…単一鋼
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松田 恭典 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−108035(JP,A) 特開 平1−156055(JP,A) 特開 平3−23937(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B32B 15/08 B32B 15/08 103 B32B 7/10 B32B 27/18 F16F 15/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子樹脂を金属板の間に挾持してなる
    制振金属板において、前記高分子樹脂は制振性を有する
    中心層とその両面に金属板との接着性を有する外側層か
    らなる少なくとも3層構造からなり、前記中心層内に
    は、圧潰され金属板の間に挾持される前の平均粒径D1
    が、前記高分子樹脂層の厚さT0 に対して、T0 ≦D1
    ≦2T0 の範囲内であり、融点が前記2枚の金属板と同
    等以上の導電金属粉が前記中心層樹脂と導電金属粉との
    総和に対して3〜20重量%添加されており、かつ、前
    記外側層内には、金属板に挾持される前の平均粒径D2
    が前記外側層の厚さT2 に対して、0.6T2 ≦D2
    2T2 であり、融点が前記2枚の金属板と同等以上の導
    電金属粉が外側樹脂と導電金属粉との総和に対して3〜
    5重量%添加されていることを特徴とする電気抵抗溶接
    性に優れた制振金属板。
  2. 【請求項2】 高分子樹脂を金属板の間に挾持してなる
    制振金属板において、前記高分子樹脂は制振性を有する
    中心層とその両面に金属板との接着性を有する外側層か
    らなる少なくとも3層構造からなり、前記中心層内に
    は、前記高分子樹脂層の厚さT0 に対して、2T0 ≦D
    1Wの範囲の金属粉が中心層中の全金属粉の個数の70%
    以下で、かつT0 ≦D1Wの範囲の金属粉が30%以上で
    あり、融点が前記2枚の金属板と同等以上の導電金属粉
    が前記中心層樹脂と導電金属粉との総和に対して3〜2
    0重量%添加されており、かつ、前記外側層内には、前
    記外側層の厚さT2 に対して、2T2 ≦D2Wの範囲の金
    属粉が外側層の全金属粉の個数の70%以下で、かつT
    2 ≦D2Wの範囲の金属粉が外側層の全金属粉の個数の3
    0%以上であり、融点が前記2枚の金属板と同等以上の
    導電金属粉が外側層樹脂と導電金属粉との総和に対して
    3〜5重量%添加されていることを特徴とする電気抵抗
    溶接性に優れた制振金属板。ただし、D1Wは圧潰された
    金属板間に挾持された後の中心層中の金属粉の幅方向
    径、また、D2Wは圧潰され金属板間に挾持された後の外
    側層中の金属粉の幅方向径である。
  3. 【請求項3】 中心層を構成する高分子樹脂がガラス転
    移に基づく損失正接(tanδ)の極大値が0.3以上
    であり、この極大値を示す温度が−40〜100℃の範
    囲にあり、金属粉を添加した制振金属板での損失係数の
    極大値が0.1以上であり、この極大値を示す温度が0
    〜120℃の範囲にある請求項1または2に記載の電気
    抵抗溶接性に優れた制振金属板。
  4. 【請求項4】 上記高分子樹脂がポリオレフィン系樹脂
    を主体とする熱可塑性樹脂である請求項1又は2又は3
    に記載の電気抵抗溶接性に優れた制振金属板。
  5. 【請求項5】 上記中心層に添加する金属粉は、ビッカ
    ース硬さが180Hv以下である請求項1乃至4のいず
    れか1に記載の電気抵抗溶接性に優れた制振金属板。
  6. 【請求項6】 上記中心層に添加する金属粉は、金属板
    硬度以下の硬さである請求項1乃至のいずれか1に記
    載の電気抵抗溶接性に優れた制振金属板。
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