JP2767503B2 - 低挿入力型電気コネクタ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は電気コネクタ、特に低挿
入力型の電気コネクタに関する。

【０００２】

【従来の技術及びその問題点】最近の電子機器は益々高
性能化しており、例えば半導体デバイス等に実装される
電子回路は複雑高密度化している。斯るデバイスの性能
評価試験を行うＩＣテスタ等には数１００個以上の極め
て多数のピンを接続する為に多数のコンタクト（接点）
を有する高周波用電気コネクタが必要になる。

【０００３】ＩＣソケットに挿入接続された被評価用半
導体デバイスを合む回路基板をＩＣテスタの試験装置に
接続する際には、コンタクトが多いと挿入力が莫大とな
り、操作が困難又は不可能になる。また、各コンタクト
の挿入力を低くすると不完全接蝕を生じるという問題が
ある。そこで、所謂ＬｌＦ（低挿入力）又はＺｌＦ（零
挿入力）コネクタと称される低挿入力型の電気コネクタ
が種々開発提案されて実用されている。

【０００４】低挿入力型電気コネクタは一般にリセプタ
クル（雌）コンタクトを形成する接触片を、例えば接触
パッド付き回路基板である雄型コネクタの挿入時には拡
開し、即ち、接触片間隔を拡げる。拡閉されたコンタク
トの接触片間に回路基板のエッジを挿入すると、実質的
に接触片と接触することなく低挿入力となる。拡開した
コンタクト間に回路基板を挿入した後に拡開を解除して
通常状態にコンタクトを復帰させると、コンタクトと回
路基板の端縁の接触パッド間の電気的接触が確立する。
斯る電気コネクタは例えば特願平２−２６７５５０号明
細書に記載している。

【０００５】しかし、ＩＣテスタ等の高周波高速信号路
に挿入される電気コネクタにあっては接触抵抗及びリア
クタンスの存在はデバイスの特性測定結果に大きな影響
を及ぼすので極力低減する必要がある。リアクタンスを
低減するにはその物理的形状を小さく且つマイクロスト
リップライン状に構成するのが一般的であり、例えば特
願平２−１０６６４４号明細書に記載している。一方、
接触抵抗を低減するにはコンタクト及び接触パッドに金
めっきを施すことが一般に行われている。しかし、金め
っき処理されたコンタクト等を使用しても接触部表面に
ほこりや酸化物等が付着している虞れがあり単なる物理
的接触のみで十分高信頼性の電気的接触、即ち低接触抵
抗を実現するのは困難である。低接触抵抗且つ高信頼性
の電気的接触を確立する為にワイプ、即ち接触時に接触
面を相互に拭う作用をするのが有効であることが知られ
ている。その為に種々の低挿入力型コネクタが提案され
ている。

【０００６】例えば特公平３−２６１９５号公報にはゼ
ロ挿入力型エッジコネクタが開示されている。この従来
のコネクタでは、通常開状態の多数の雌型接点を有する
コネクタハウジングのスロットに電子コンポーネントの
エッジを挿入する。アクチュエータ・ハンドルの操作で
電気接点と係合する斜面を有するハウジングの一部を移
動して接点間を閉じ電子コンポーネントの接触領域にか
み合せて移動することにより拭い作用を行う。

【０００７】しかし乍ら、斯る従来の低挿入力型電気コ
ネクタは構造が大型で複雑であり、高周波用小型電気コ
ネクタには適用困難であり、接触には斜面を有するハウ
ジングと接点との協働が不可欠であるので、極めて高い
組立精度が必要であり且つ多数回の操作でも高信頼性の
接触を維持するのが困難であるという欠点があった。従
って、本発明はこれら欠点のない低挿入力型電気コネク
タを提供することを目的とする。

【０００８】

【課題解決のための手段】本発明の低挿入力型電気コネ
クタによると、駆動部材によりカム部材を駆動させて少
なくとも一対のコンタクトを開閉し、開状態で前記少な
くとも一対のコンタクト間に相手部材を受容し、その後
閉状態にして前記相手部材を受容方向と逆方向に押し出
して前記コンタクトと前記相手部材とを互いにワイピン
グさせて電気的に接触させる低挿入力型電気コネクタに
おいて、前記相手部材を受容方向と逆方向に押し出すよ
う前記カム部材から突出可能な他のカム部材が前記カム
部材とは別体に設けられ、前記駆動部材は細長形状を有
し、前記カム部材を駆動させる第１のカム面及び前記他
のカム部材を突出駆動させる第２のカム面を具え、前記
駆動部材は、前記少なくとも一対のコンタクトを閉状態
とし前記他のカム部材を突出状態に配置する第１位置
と、前記少なくとも一対のコンタクトを開状態とし前記
他のカム部材を非突出位置に配置する第２位置との間を
長さ方向に直線的に往復摺動可能とされ、摺動時に前記
カム部材と前記他のカム部材とを独立に駆動させること
を特徴とする。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の低挿入力型電気コネクタを実
施例を参照して詳述する。

【００１０】図１乃至図５は本発明による低挿入力型電
気コネクタの好適一実施例の構造及び一連の接続動作を
説明する断面図である。図１は雌（リセブククル）型コ
ネクタ１０の通常状態を示す。この特定実施例の雌型コ
ネクタ１０にあっては、ベース部１１及びキャップ部１
２を嵌合組立てしてハウジングを形成する。ハウジング
のベース部１１には２列の開口が形成され、その外周に
は対応する開口を有する補強用金属板１７が配設されて
いる。ベース部１１には必要に応じてガイドポスト１９
が形成される。ベース部１１の開口には夫々マイクロス
トリップライン状のコンタクト１３、１４がインサート
モールドされたコネクタモジュール１５、１６のボディ
部が挿入固定されている。コネクタモジュール１５、１
６の各コンタクト１３、１４は回路基板（図示せず）の
接触パッド（図示せず）等に接続する接続部１３ａ、１
４ａと曲面状に形成された接点１３ｃ、１４ｃとを有す
る弾性接触片１３ｂ、１４ｂとを有する。ハウジングの
キャップ部１２の他端面には雄（ブラグ）型コネクタ挿
入用開口１８を有する。この開口１８から挿入される雄
型コネクタの接触片間隔よりも両コンタクト１３、１４
の接点１３ｃ、１４ｃの間隔は狭い。

【００１１】対向するコンタクト１３、１４の接触片１
３ｂ、１４ｂ間にはカムレール２１、カム駆動部材２
２、中心開口２４を有する略Ｈ字状第１カムフォロワ２
３、及ぴ第２カムフォロワ２６より成るカム手段２０を
設えている。カム駆動部材２２は第１カムフォロワ２３
の開口２４より突出するカム突起２５を有ずる。カム手
段２０の基本構成は前述した特願平２−２６７５５０号
明細書に記載されているのでここで詳述しない。カム駆
動部材２２及びカム突起２５は金属板に固定され第１カ
ムフォロワ２３にカム作用するカム面２２ａを有する鋳
造して成る複数のカムブロックであるを可とする。カム
レール２１、カムフォロワ２３、２６は高強度のエンジ
ニアリングブラスチック製であるのが好ましい。

【００１２】図１の雌型コネクタ１０に雄型コネクタを
挿入接続するには、カム駆動部材２２を（図中、紙面に
直角方向）一方向に操作する。これにより、図２に示す
如くカム駆動部材２２と第１カムフォロワ２３との間隔
が拡がり、Ｈ字状の第１カムフォロワ２３の先端部２３
ａ、２３ｂが接触片１３ｂ、１４ｂの接点１３ｃ、１４
ｃの近傍の傾斜部に当接して接点１３ｃ、及び１４ｃ間
を拡開し、雄型コネクタを受け入れる十分な間隔とな
る。

【００１３】次に、図３に示す如く、雌型コネクタ１０
のキャップ１２の開口１８を介して雄型コネクタ３０の
嵌合部（前端）を挿入する。この雄型コネクタ３０は端
縁に接触パッドを有する回路基板でもよいが、図示の例
では、細長いハウジング３１の中央隔壁両面に雄型コン
タクト（接触片）３２、３３を有し、後端から例えば回
路基板のスルーホールに挿入接続される４列のタイン部
を有するコネクタである。この状態で雄型コネクタ３０
の前端がカム駆動部材２２のカム突起２５先端に略当接
する。雄型コネクタ３０をこの位置に挿入後にカム駆動
部材２８を操作して雌型コネクタ１０の接触片１３ｂ、
１４ｂ間の拡開を解除すると、接点１３ｃ、１４ｃが図
１の状態に復帰して雄型コネクタ８０の接触片３２、３
３に十分な法線圧を加えて接触する。この状態では両接
触片間のワイプ作用がないので完全な電気的接触とはな
り得ない。

【００１４】そこで、図４及び図５を参照して接触片の
ワイプ動作を説明する。先ず、図４はワイプ動作の閉始
状態を示し、図５はワイプ終了状態を示す。図３の両接
触片１３、１４及び３２、３３の接触状態から、カム駆
動部材２２を駆動してカム突起２５と第２カムフォロワ
２６とを係合させ、第２カムフォロワ２６を駆動して第
２カムフォロワ２６を雄型コネクタ８０の方向へ押圧す
る。即ち、雄型コネクタ３０の中央隔壁の前端を押圧し
て雌雄両コネクタ１０、３０の嵌合を部分的に抜去す
る。この抜去寸法は図５中に寸法Ｄで示され、実験の結
果０．３ｍｍ以上であるのが好ましいことが判明した。
これにより、接点１３ｃ、１４ｃと接触片３２、３３間
にワイプを生じさせる。ここで、通常の閉じている状態
の接触片間にコネクタを挿入する挿入力と、既に挿入済
のコネクタを引き抜く抜去力とを比較すると、後者の方
が前者より小さいので比較的小さい力で両コネクタ１
０、３０を部分的に引き離してワイプ動作を容易に行う
ことが可能であることに注目されたい。

【００１５】図６は図１乃至図５に示した本発明による
低挿入力型電気コネクタの各状態におけるカム手段２０
の動作、即ちカム駆動部材２２、カム突起２５、第１カ
ムフォロワ２３及び第２カムフォロワ２６の構造及び動
きを模型的に示す。図６（Ａ）乃至（Ｅ）は夫々図１乃
至図５の各状態に対応する。

【００１６】先ず、図６（Ａ）では、カム駆動部材２２
の第１カム面２２ａは第１カムフォロワ２３のカム面の
谷位置にあるので、第１カムフォロワ２３は図中最も
下、即ち雄型コネクタ３０挿入用開口１８から最も離れ
た位置にある。他方、第２カムフォロワ２６はカム突起
２５の頂部により、雄型コネクタ３０の挿入用開口１８
に最も近い位置にある。

【００１７】次に、接触片１３ｂ、１４ｂの拡開状態で
は、図６（Ｂ）に示す如く、カム駆動部材２２は左方向
に引張られ、第１カムフォロワ２３のカム面の山に第１
カム面２２ａが当接して第１カムフォロワ２３が第２カ
ムフォロワ２６と重なる位置に移動する。このとき、カ
ム突起２５は第２カムフォロワ２６の開口２６ａ内に位
置する。

【００１８】接触片１３ｂ、１４ｂ及び、３２、３３の
接触位置ではカム突起２５のカム面２５ａが第２カムフ
ォロワ２６のテーパ状カム面２６ｂに少し当接し、その
頂部２５ｂが開口２６ａより一部突出する（図６（Ｃ）
参照）。

【００１９】ワイピング動作を行わせる為に、カム駆動
部材２２を右方向へ移動すると、カム突起２５のカム面
２５ａと第２カムフォロワ２６のカム面２６ｂとが係合
して、第２カムフォロワ２６を挿入された雄型コネクタ
３０の方向へ押圧変位させる（図６（Ｄ）参照）。更に
右方向へカム駆動部材２２を駆動すると、カム突起２５
の頂部２５ｂが第２カムフォロワ２６の下面に接触する
（図６（Ｅ）参照）。これにより、完全嵌合した両コネ
クタ１０、３０を第２カムフォロワ２６の板厚で決ま
る、例えば０．３ｍｍの予め定めたワイプを生じること
が理解できよう。即ち、両コネクタ１０、３０の物理的
嵌合を阻害する（半嵌合）ことなく高信頼性の電気的接
触が得られる。

【００２０】以上、本発明の低挿入力型電気コネクタを
好適実施例に基づき説明した。しかし、本発明は斯る実
施例のみに限定するものではなく、必要に応じて種々の
変形変更が可能であること当業者には容易に理解できよ
う。

【００２１】

【発明の効果】本発明の低挿入力型電気コネクタによれ
ば、相手部材を受容方向と逆方向に押し出すようカム部
材から突出可能な他のカム部材がカム部材とは別体に設
けられ、駆動部材は細長形状を有し、カム部材を駆動さ
せる第１のカム面及び他のカム部材を突出駆動させる第
２のカム面を具え、駆動部材は、少なくとも一対のコン
タクトを閉状態とし他のカム部材を突出状態に配置する
第１位置と、少なくとも一対のコンタクトを開状態とし
他のカム部材を非突出位置に配置する第２位置との間を
長さ方向に直線的に往復摺動可能とされ、摺動時にカム
部材と他のカム部材とを独立に駆動させることを特徴と
するので以下のような効果を奏する。

【００２２】駆動部材の動作に必要な空間を駆動部材を
回転等させる場合に比べて小さくすることができる。特
にその動作は単なる摺動でなく駆動部材の第１及び第２
位置間の往復摺動だけで一連の動作を生ぜしめるよう構
成されており、相手部材を受容する前の状態と接続完了
時の駆動部材の位置を同じにすることができ、よって駆
動部材の摺動距離は最短となる。これにより比較的小型
の低挿入力型電気コネクタが実現される。

【００２３】加えて、本発明の低挿入力型コネクタで
は、コンタクトを開閉するためのカム部材と相手部材を
押し出すために突出する他のカム部材とを独立に駆動さ
せるので、駆動のために必要とされる高さ寸法を小さく
でき、よって低挿入力型コネクタの全体の高さ寸法を比
較的小さなものとすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による低挿入力雌型電気コネクタの通常
状態における断面図。

【図２】図１の電気コネクタの接触片を拡開した断面
図。

【図３】図２の電気コネクタの拡開した接触片間に雄型
電気コネクタを挿入し接触片の拡開を解除した状態を示
す断面図。

【図４】図３の雌雄両電気コネクタのワイプ動作開始時
の断面図。

【図５】図４の雌雄両電気コネクタのワイプ動作完了時
の断面図。

【図６】図１の電気コネクタの図１乃至図５に対応する
状態におけるカム手段の各状態の説明図。

【符号の説明】

１０ 低挿入力型電気コネクタ（雌型
コネクタ） １３、１４ コンタクト ２２ 駆動部材 ２２ａ 第１のカム面 ２３ カム部材 ２５ａ、２５ｂ 第２のカム面 ２６ 他のカム部材 ３０ 雄型コネクタ（相手部材）

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】駆動部材によりカム部材を駆動させて少な
   くとも一対のコンタクトを開閉し、開状態で前記少なく
   とも一対のコンタクト間に相手部材を受容し、その後閉
   状態にして前記相手部材を受容方向と逆方向に押し出し
   て前記コンタクトと前記相手部材とを互いにワイピング
   させて電気的に接触させる低挿入力型電気コネクタにお
   いて、 前記相手部材を受容方向と逆方向に押し出すよう前記カ
   ム部材から突出可能な他のカム部材が前記カム部材とは
   別体に設けられ、 前記駆動部材は細長形状を有し、前記カム部材を駆動さ
   せる第１のカム面及び前記他のカム部材を突出駆動させ
   る第２のカム面を具え、 前記駆動部材は、前記少なくとも一対のコンタクトを閉
   状態とし前記他のカム部材を突出状態に配置する第１位
   置と、前記少なくとも一対のコンタクトを開状態とし前
   記他のカム部材を非突出位置に配置する第２位置との間
   を長さ方向に直線的に往復摺動可能とされ、摺動時に前
   記カム部材と前記他のカム部材とを独立に駆動させるこ
   とを特徴とする低挿入力型電気コネクタ。