JP2767369B2 - 大型カム、その製作方法および鍛造用金型 - Google Patents

大型カム、その製作方法および鍛造用金型

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JP2767369B2
JP2767369B2 JP26557393A JP26557393A JP2767369B2 JP 2767369 B2 JP2767369 B2 JP 2767369B2 JP 26557393 A JP26557393 A JP 26557393A JP 26557393 A JP26557393 A JP 26557393A JP 2767369 B2 JP2767369 B2 JP 2767369B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、舶用や発電機用など
の大排気量ディーゼル機関等の内燃機関用の燃料カムや
吸排カム等に用いられる大型カムと、型打ち鍛造を用い
た大型カムの製作方法およびこの製作方法に用いる鍛造
用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の大型カムの一つに舶用ディーゼ
ル機関に用いられる自己逆転カム(前進用カムと後進用
カムを一体に備えたカム)があるが、ディーゼル機関の
排気量に応じて重量が数百キログラムにも及ぶ巨大なも
のが使用されることがある。そのような大型カムの製作
は、一般に、次のような手順で行われている。図7に示
すように、 a) カムの容積に比べてかなり(2〜3割)余裕をもた
せた丸棒状の延伸鋼材51を、1250℃以上に加熱
し、 b) 延伸鋼材51を長手方向(厚み方向)に収縮する方
向に打撃して樽形鋼材52に形成し(荒地工程若しくは
据込みという)、 c) 樽形鋼材52の中央部に貫通する穴52aを設ける
とともに、この穴52aにポンチ53を打ち込んで穴5
2aを埋め、 d) 前記樽型鋼材52’を外周面よりエアスタンパーハ
ンマーで打撃するとともに厚み方向にも打撃することに
より、製品としてのカムに近い形態に形成し(いわゆる
自由鍛造)、 e) ポンチ53を引き抜いて中央孔54を開口し、偏芯
中空状のカム素材55を形成したのち、 機械加工により切削してカム形状に仕上げ、熱処理して
研磨することにより、最終製品としてのカムを製作する
ものである。
【0003】また、上記した自己逆転カムのような複雑
な形状のカムでは、自由鍛造により扇形のカムを二組形
成して一体に結合したのちに機械加工して形成するか、
自由鍛造は用いずに、丸棒状の延伸鋼材51又は樽形鋼
材52から機械加工により切削して形成するかしてい
た。
【0004】そのほか、重量が数キログラム〜数十キロ
グラム程度の小型のカムで、図8のような板状の非逆転
カム(一方向回転カム)58・59の場合には、上下に
対称的に二分割した金型を用いて鍛造によりカム素材を
形成する方法が提案されているようであるが、上記のよ
うな大型カムでは実施されておらず、非逆転カムの場合
にも、カム形状に近い形状に自由鍛造したのち、溶断に
よりカム形状に仕上げる方法が一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記した自由鍛造によ
る従来の大型カムの製作方法では、次のような不都合が
ある。
【0006】a) 材料(鋼材)の歩留まり率(製品とし
ての重量/材料としての鋼材の重量)が80%若しくは
それ以下と悪く、無駄になる材料の割合が高くて不経済
である。
【0007】b) エアスタンプハンマーでカムに近い形
態にたたき出す、自由鍛造であるため、ハンマーの打撃
力は一定でも、打撃した方向の表面側に膨張し、カムの
表面部分だけがカム形状に応じて変形(主に引張変形)
される。このために、デンドライト(樹枝状晶組織)が
とくにコア部に見られることから、コア部の鍛練効果が
低くく部位による不均一さが存在していると考えられ、
カムの内部組織と表面組織との間に差異があることに起
因し、使用開始から比較的短期間でクラックが発生した
り、折損が起きたりするおそれがある(PLの問題があ
るようでしたら削除下さい)。
【0008】c) エアスタンプハンマーによるたたき出
しでカム形状に近い形状に整えるために、作業に熟練を
要すとともに時間がかかり、また加工代(余肉部)が不
均一で厚いために機械加工にも時間がかかり、生産性が
非常に低い。具体的には、例えば重量700キログラム
程度の自己逆転カムの場合には、日産で1個未満であ
る。
【0009】この発明は上述の点に鑑みなされたもの
で、表面からコア部まで鍛練効果が均一にいきわたり、
ファイバーフローがカム形状に沿って連続し、金属組織
上も全体的に均一で、表面割れなどが生じず、耐久性に
富んだ大型カムを提供し、併せて、材料の歩留まり率が
100%近くと非常に高くて経済的であり、しかも機械
加工が容易で作業時間が短縮され、生産性が向上する大
型カムの製作方法とその製作方法に用いられる型打ち鍛
造用金型とを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために本発明の大型カムは、カムに対応する容積を有す
る丸棒状延伸鋼材を加熱し、この延伸鋼材を打撃して樽
形に形成する荒地工程を経たのち、この樽形鋼材を、上
下に分割されて対応するカム形状に近似した金型で型打
ち鍛造し、バリを取り除くとともにカム中央孔をポンチ
抜きし、機械加工してカム形状に仕上げ、熱処理したの
ち、カム全体を研磨仕上げしたものである。
【0011】また、本発明の大型カムの製作方法は、
前記カムに対応する容積を有する丸棒状延伸鋼材を加熱
したのち、長手方向に圧縮する方向に打撃して樽形に
形成し、この樽形鋼材を上下に分割した下金型内に位
置決めして上金型で繰り返し型打ちすることによりその
全体的な形態を対応するカムに近い形状に鍛造したの
ち、バリを取り除くとともに中央孔をポンチ抜きし、
機械加工してカム形状に仕上げ、熱処理したのち、カム
全体を研磨仕上げすることである。
【0012】さらに、本発明の大型カムの製作方法に用
いる鍛造用金型は、a)上下に分割した一対の金型からな
り、それらの分割面の型周囲に形成される突き合わせ部
のパーティングラインがカムの作動面の中心位置を通る
線又は作動面に沿った稜線に対応して形成され、b)前記
各金型内の中心部に、対応する円形断面の突起部を備
え、c)前記各金型の相対向する複数の箇所に、インロー
部を設けている。
【0013】請求項4記載のように、d)前記インロー部
を構成する凸部と凹部とに、対応する勾配を設けること
が好ましい。
【0014】請求項5記載のように、e)前記カムが自己
逆転カムで、前記各金型の前記突き合わせ部周囲の分割
面の少なくとも一部分を、前記突き合わせ部より低くし
て段差を設けることが好ましい。
【0015】
【作用】上記構成を有する本発明の大型カムによれば、
型打ち鍛造により金型という限定された容積の中で均等
にたたかれるので、たたかれる方向に対して全方向に同
じ力が作用し、ファイバーフローがカム形状に沿って連
続して均等に形成され、金属組織上から見て全体的に均
一に仕上がり、強度が高く、耐久性に富む。これによ
り、長期間使用しても、カム表面にクラックが生じた
り、折損が起きたりせず、安定した使用が可能になる。
【0016】また、本発明の大型カムの製作方法によれ
ば、型打ち鍛造によって製品としてのカムの形態に非常
に近いところまで仕上げられることで、機械加工代を均
一にかつ少なくでき、したがって、鋼材に無駄がなく、
鋼材の歩留まり率が100%に近く、経済的である。加
えて、金型を用いて鋼材を繰り返し打撃することによっ
て、カム形状に仕上げるために、作業に熟練がほとんど
要求されず、しかも、製品のカム形態が一定化するうえ
に、機械加工が容易になるため、生産性が大幅に向上
し、具体的には、従来の自由鍛造を用いた製作方法の
3.5〜4倍乃至はそれ以上に向上する。
【0017】さらに、本発明の鍛造用金型によれば、上
下の金型のパーティングラインがカムの作動面の中心位
置を通る線(非逆転カムの場合)又は作動面に沿った稜
線(自己逆転カムの場合)に対応して形成されることに
より、上型と下型の質量分布がほぼ均等に分けられ、機
械加工代(余肉部)を最小限にかつ均一にでき、また型
ずれも生じにくくなる。そして、例えば上記した自己逆
転カムを型打ち鍛造する際に、下型内に樽形鋼材を位置
決めした状態で上型で繰り返したたくときに、カムの外
周壁が上下に直線状な箇所では回転力は作用せず、鋼材
に対して圧縮方向の打撃力が加えられたときに、鋼材の
全方向に均等に応力が作用する。これは、金型内という
一定の限られた空間で外力が鋼材に作用することによる
ものである。また、各金型内の中心部の円形断面の突起
部によって、カムの中央部に取付用の孔が概ね(非貫通
状態で)形成される。
【0018】ところで、自己逆転カムでは、突起部の向
きが上下で異なり、質量分布が上下で異なっていること
に起因し、カムの突起部を形成する位置まで型打ち鍛造
が進行すると、突起部を介して鋼材の上部と下部とで鋼
材を相互に逆方向に回転させようとする力が生じ、この
反力(抗力)で上型と下型に対しこれらを相互に逆向き
に回転させようとする力(いわゆる偏荷重)が作用す
る。しかし、こうした偏荷重が増大する直前に、つまり
カムの突起部の斜面に達する位置まで上型が下降してき
たときには、上下の金型の相対向するインロー部の嵌め
合いが開始されることによって、型ずれが確実に阻止さ
れる。
【0019】請求項4記載の鍛造用金型では、凸状のイ
ンローと凹状のインローとに対応する勾配(テーパー)
が設けられていることから、下型に対し上型を降下(打
撃)させたときに、インロー部が確実に嵌まり合う。
【0020】請求項5記載の鍛造用金型では、突き合わ
せ部より低くなった段差部(分割面)にバリが逃げるこ
とによって、バリのしわ傷や巻き込み傷が防止される。
【0021】
【実施例】以下、この発明の大型カムを大型の舶用ディ
ーゼル機関用自己逆転カムの実施例について説明し、併
せてその製作方法および鍛造用金型について説明する。
【0022】図1は本例にかかる自己逆転カムの概要を
現すもので、図1(a)は平面図、図1(b)はA−A線断
面図およびA−B線断面図、図1(c)は図1(a)のC方
向から見た縮小矢視図である。同図に示すように、自己
逆転カム1は、下部にカム1の反回転方向に向いた突起
状の前進用カム部2を、上部にカム1の回転方向に向い
た突起状の後進用カム部3をそれぞれ一体に備えてい
る。また逆転時にローラガイド(図示せず)が滑らかに
カム面を移動できるように、各カム部2・3の啓開角度
(広がり)が広く、二つのカム部2・3の間の谷部4の
角度が大きいという形状的な特性を有している。図中の
符号5は、カム1をカム軸(図示せず)に取り付けるた
めの中央孔である。
【0023】上記した自己逆転カム1の形状に由来し
て、後述する型打ち鍛造用金型11(図2)のパーティ
ングラインLは、基本的には、図1(c)に示すように二
つのカム部2・3の間の中間点を通る傾斜したライン
(段引き線)L’を含む。本発明のカム1の特徴は、型
打ち鍛造を用いてカム形状が形成されていることである
が、この型打ち鍛造用の金型11は、図2に示すように
上下に分割された下型12と上型13とからなる。
【0024】図3は金型11のパーティングラインLを
示す展開図で、金型11の上下方向の中間位置を通る直
線部L1と、上方へ向け山形の円弧状ライン部L2と、
下方へ向け山形の円弧状ラインL3とで構成されてい
る。そのパーティングラインLは、自己逆転カム1(図
6(e))の上下の作動面の中間に位置する稜線(エッジ
ライン)Eに対応するものである。このようにパーティ
ングラインLを決定することで、上型13と下型12の
凹状部内の容積分布を、ほぼ均等に分けることができ
る。また決定されたパーティングラインLによって、型
打ち(打撃)時の偏荷重が軽減されるとともに、加工代
(余肉部)が最小限に抑えられる。
【0025】図2(a)(b)に示すように、上型13と下
型12の凹状部13b・12bの型周囲に形設される突
き合わせ部13aおよび突き合わせ部12aは、上下の
中間位置で水平に切断した面で面対称に設定されてい
る。また上型13と下型12の凹状部13b・12bの
中央部には、円形断面の突起部13c・12cが相対向
して突設されている。上下の金型13・12の突き合わ
せ部13a・12aの周囲の金型分割面13d・12d
は、少なくとも一部分を突き合わせ部13a・12aよ
りやや低くして段差を設けている。これは、型打ち鍛造
を行ったときに生じるバリを金型11の間隙から外部へ
逃がすことによって、バリ25(図5(d))のしわ傷や
巻き込み傷を防止するためである。
【0026】上記のようにパーティングラインLを設定
したことで、図4に示すように、上下の各金型12・1
3の内底からパーティングラインLまでの深さ(H〜
h)が一定しておらず、その寸法差が大きいので、上下
の各金型12・13の凹状部12b・13bの内周壁面
に、外方へ向け開口断面積が漸次拡大するように勾配
(テーパー角β)を設けることによって、鍛造品が円滑
に型抜けするようにしている。
【0027】図2に示すように、本例では、上型13と
下型12の相対向する三つの隅角部に、インロー部14
・15を設けている。下型12に凸状のインロー14
が、また上型13に凹状のインロー15がそれぞれ設け
られており、相対向するインロー部14・15の嵌め合
いが開始される時期が、鍛造品に対する偏荷重が最大限
に達する直前になるよう、いいかえれば鍛造品に対する
鍛造成形がカムの突起状のカム部2・3の斜面に達する
位置まで進行してきたときと一致するよう、上下のイン
ロー部14・15の対応する高さ(深さ)が設定されて
いる。また、図2(c)のように、凸状のインロー14と
凹状のインロー15との対応する垂直方向の接触面に
は、勾配(テーパー角度α)を設けて、下型12に対し
上型13がガイド(図示せず)に沿って降下(打撃)し
てきたときに、上下の型12・13が多少横ずれしてい
てもインロー部14・15が嵌まり合うようにしてい
る。
【0028】ここで、上記した型打ち鍛造用金型11を
用いて自己逆転カム1を製作する手順を説明する。図5
および図6はそれぞれ製作過程を示す図面である。
【0029】 カム1に対応する容積を有する丸棒状
延伸鋼材21を1250〜1280℃程度まで加熱する
(図5(a))。
【0030】 加熱した丸棒状延伸鋼材21を据込ん
で、長手方向に圧縮する方向に打撃して樽形鋼材22を
形成する(図5(b)・図6(a))。
【0031】 樽形鋼材22を下金型12内に位置決
めして上金型12で短時間の間に複数回繰り返し型打ち
することにより、製品としてのカム1(図6(e))に近
い形状に鍛造する(図5(c)・図6(b))。本例で
は、6トンのエアースタンプハンマーを用いて、上型1
3を介して型打ちした。
【0032】 鍛造品23をバリおよびパンチ抜き用
下型26に移しかえたのち、上記上型13に近い形態の
バリ取り用刃物部とポンチ部を備えたバリ取り用金型2
7を落下させてバリを取り除くとともに中央の取付孔を
ポンチ抜きして完全に貫通させる(図5(d)・図6
(c))。本例では、800トンのクランクプレスを用い
てバリ取りおよびポンチ抜きした。
【0033】 鍛造品24(図6(d))を機械加工に
より切削して最終製品形状のカム1に仕上げ(図6
(e))、熱処理(浸炭処理)したのち、さらにカム1を
全体的に研磨仕上げする。
【0034】以上のようにして型打ち鍛造により本発明
の自己逆転カム1が製作されるが、このカム1には、次
のような優れた特性がある。
【0035】1)断面マクロ組織観察 (A) 型打ち鍛造カム:コア部にメタルフローが観察さ
れ、内部まで鍛練効果が現れている。マクロ組織は全体
にわたり熱処理の効いた一様な組織を呈し、また材料欠
陥や熱間割れなどの有害な欠陥は観察されない。
【0036】(B) 自由鍛造カム:全体的に樹枝状晶組織
(デンドライト)が観察されるが、とくにコア部で顕著
に見られる。これは、鍛練効果が低く部位による不均一
さを有することが起因していると考えられる。
【0037】2)断面ミクロ組織観察 (A)型打ち鍛造カムおよび(B)自由鍛造カムともに、浸炭
硬化層の厚さは一様で良好であり、また浸炭硬化層の組
織は、表面付近が焼き戻しマルテンサイト組織で、表面
から4ミリメートル以上は(フェライト+ベイナイト)
組織を呈しており、浸炭硬化層としては正常である。表
面付近において、網状セメンタイト組織が全く観察され
ないことは、浸炭熱処理の品質管理が良好であることを
示している。さらに、ミクロ組織の内部には、非金属介
在物のような不純物は殆ど観察されない。
【0038】3)硬さ分布測定 (A)型打ち鍛造カムおよび(B)自由鍛造カムともに、有効
硬化層の深さは3.6ミリメートル以上あり、製品の使
用を十分に満足している。なお、表面から5.0ミリメ
ートル以上の深さにおけるビッカース硬さは、(A)型打
ち鍛造カムの方が(B)自由鍛造カムよりもやや高い値を
示した。
【0039】4)機械的性質試験 (A) 型打ち鍛造カム:測定値について、試験片の採取部
位および方向性に対してのバラツキが見られない。全項
目の測定結果は良好と判断される。
【0040】(B) 自由鍛造カム:型打ち鍛造カムと同様
に、測定値についてのバラツキは試験片の採取部位およ
び方向性に対して見られない。耐力と引張試験の測定値
が型打ち鍛造カムに比べて低いが、これは、マクロ組織
観察で見られたように鍛練硬化の弱さが初期のデンドラ
イトを残し、そのために組織中に粗状態が形成されたこ
とに起因していると考えられる。また、コア部の硬さが
表面部に比べて低くなる傾向が見られる。
【0041】5)総合評価 確性試験から得られた全ての組織写真およびデータを細
かく比較した結果、(A)型打ち鍛造カムは、(B)自由鍛造
カムに比べて組織特性および機械的性質の両面から優れ
ていることが判明した。とくに、カムの機能とメカニズ
ムの構成要素を勘案した場合、動荷重(圧縮方向による
繰り返し荷重)が重要であり、カムの機械的性質に要求
されるところの、荷重に対する等価な内部応力を示す試
験項目である耐力および引張試験に示される値で、(A)
型打ち鍛造カムは(B)自由鍛造カムより優れていた。
【0042】上記に本発明の大型カムおよびその製作方
法ならびに鍛造用金型について一つの実施例を示した
が、例えば次のように実施することもできる。
【0043】a) 本発明は上記した自己逆転カムに限ら
ず、非逆転カムを含む各種カムに適用できることはいう
までもない。非逆転カムの場合の鍛造用金型のパーティ
ングラインは、カムの作動面の中間位置を通る線に対応
させる。
【0044】b) 上下の金型13・12の突き合わせ部
13a・12aとその周囲の分割面13d・12dとの
段差をなくすことは可能であり、また上下の金型12・
13の相対向位置に設けるインロー部14・15の形状
および個数は、カムの形状に応じて偏荷重の大きさを考
慮して適宜決定することができる。
【0045】
【発明の効果】以上説明したことから明らかなように、
本発明にかかる大型カム、その製作方法および鍛造用金
型には、次のような効果がある。
【0046】(1) 本発明の大型カムは、金型という限定
された空間内で均等にたたかれる型打ち鍛造により形成
されているので、カムの内部の全方向に同じ力が作用
し、表面からコア部まで鍛練効果が均一にいきわたり、
ファイバーフローがカム形状に沿って連続して均等に生
じ、金属組織上から見て全体的に均一に仕上がり、強度
が高く、耐久性に富む。
【0047】(2) 本発明の大型カムの製作方法は、型打
ち鍛造によって製品としてのカムの形態に非常に近いと
ころまで仕上げらることができ、また金型を用いるので
機械加工代を均一にかつ少なくできるので、材料に無駄
がなく、鋼材の歩留まり率が100%近くに達し、経済
的である。さらに作業に熟練がほとんど要求されず、し
かも製品のカム形態が一定化するうえに、機械加工が容
易になるため、生産性が大幅に向上する。このため、カ
ム1個当たりの製作コストも低減される。
【0048】(3) 本発明の鍛造用金型は、例えば突起状
カム部の向きが上下で異なり、質量分布も上下で異なる
自己逆転カムを鍛造により形成する場合でも、上型と下
型の質量分布がほぼ均等に分けられ、機械加工代(余肉
部)を最小限にかつ均一にでき、また型ずれが確実に阻
止され、大型カムを型打ち鍛造にて正確にかつ効率よく
形成できる。
【0049】(4) 請求項4記載の鍛造用金型は、下型に
対し上型で打撃したときにインロー部が確実に嵌まり合
い、型ずれを確実に防止する。
【0050】(5) 請求項5記載の鍛造用金型は、バリの
しわ傷や巻き込み傷を確実に防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる自己逆転カムの概要
を現すもので、図1(a)は平面図、図1(b)はA−A線
断面図およびA−B線断面図、図1(c)は図1(a)のC
方向から見た縮小矢視図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる型打ち鍛造用金型を
示すもので、図2(a)は上型13を下から見た斜視図、
図2(b)は下型12を上から見た斜視図、図2(c)は上
型と下型のインロー部を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例にかかる型打ち鍛造用金型のパ
ーティングラインを示す展開図である。
【図4】本発明の実施例にかかる型打ち鍛造用金型の概
要を示す縦断面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は本発明の実施例にかかる型打
ち鍛造による大型カムの製作工程の主要部を順に示す概
要正面図である。
【図6】図6(a)〜(e)は本発明の実施例にかかる型打
ち鍛造による自己逆転カムの製作工程の主要部を示す概
要斜視図である。
【図7】図7(a)〜(e)は従来の一般的な自由鍛造によ
る大型カムの製作工程の主要部を順に示す概要正面図で
ある。
【図8】非逆転カムを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 自己逆転カム(大型カム) 2・3 カム部(突起部) 5 中央孔 11 金型 12 下型 13 上型 12a・13a 突き合わせ部 14・15 インロー部 L パーティングライン
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21K 3/00 B21J 13/02 F01L 1/04 F16H 53/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 舶用や発電機用などの内燃機関に用いら
    れる大型カムにおいて、 前記カムに対応する容積を有する丸棒状延伸鋼材を加熱
    し、この延伸鋼材を打撃して樽形に形成する荒地工程を
    経たのち、この樽形鋼材を、上下に分割されて対応する
    カム形状に近似した金型で型打ち鍛造し、バリを取り除
    くとともにカム中央孔をポンチ抜きし、機械加工してカ
    ム形状に仕上げ、熱処理したのち、カム全体を研磨仕上
    げしたことを特徴とする大型カム。
  2. 【請求項2】 舶用や発電機用などの内燃機関の大型カ
    ムの製作方法において、 前記カムに対応する容積を有する丸棒状延伸鋼材を
    加熱したのち、 長手方向に圧縮する方向に打撃して樽形に形成し、 この樽形鋼材を上下に分割した下金型内に位置決め
    して上金型で繰り返し型打ちすることによりその全体的
    な形態を対応するカムに近い形状に鍛造したのち、バリ
    を取り除くとともに中央孔をポンチ抜きし、 機械加工してカム形状に仕上げ、熱処理したのち、
    カム全体を研磨仕上げすることを特徴とする大型カムの
    製作方法。
  3. 【請求項3】 舶用や発電機用などの内燃機関の大型カ
    ムの鍛造用金型であって、 上下に分割した一対の金型からなり、それらの分割面の
    型周囲に形成される突き合わせ部のパーティングライン
    がカムの作動面の中間位置を通る線又は作動面に沿った
    稜線に対応して形成され、 前記各金型内の中心部に、対応する円形断面の突起部を
    備え、 前記各金型の相対向する複数の箇所に、インロー部を設
    けたことを特徴とする大型カムの鍛造用金型。
  4. 【請求項4】 前記インロー部を構成する凸部と凹部と
    に、対応する勾配を設けた請求項3記載の大型カムの鍛
    造用金型。
  5. 【請求項5】 前記カムが自己逆転カムで、前記各金型
    の前記突き合わせ部周囲の分割面の少なくとも一部分
    を、前記突き合わせ部より低くして段差を設けた請求項
    3又は4記載の大型カムの鍛造用金型。
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