JP2766057B2 - 熱動継電器 - Google Patents

熱動継電器

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は熱動継電器に係り、特にバイメタル破断から
接点溶着発生に展開した時の回路遮断能力の向上に好適
な熱動継電器に関するものである。
〔従来の技術〕
一般に、例えば冷蔵庫、空気調和機、除湿機等の電動
圧縮機をはじめ、広く電動機を用いる製品には、電動機
の過熱焼損を保護する手段として熱動継電器が用いられ
ている。
従来のこの種の熱動継電器は、第5図に示すように、
両端に可動接点3を備えた皿型バイメタル2′を調節ね
じ8の頭部にコイルばね7で押付けて保持し、ヒータ6
に過電流が流れて所定温度に達するとバイメタル2′の
皿型が反転して可動接点3が固定接点4から急速に開離
して回路を遮断する。その後温度が下降してバイメタル
2′が復帰し上記両接点3、4が再び閉成したときに、
過電流の原因が除去されてないと、バイメタル2′は開
閉を繰返すこととなる。そして、遂にはバイメタル2′
が第6図(a),(b),(c),(d)のE,F,G,H,J,
Kの如く疲労破断し、上記両接点3、4が溶着してバイ
メタル2′が反転できず、回路が遮断されなくなる。こ
こでヒータ6が断線すれば、回路が遮断されて安全であ
るが、断線しないと、過電流が流れ続け負荷の電動機が
焼損する事態となる。
そこで、第7図に示す実開昭64−35642号公報に記載
されているようなバイメタル2′を保持する調節ねじ8
を、頭部8Aとねじ部8Bとに2分割し、これを熱可溶性金
属9(例えば融点232℃の錫など)で結合しておき、異
常高温度の際は溶解して調節ねじ8の頭部8Aと融隔させ
るもので、万一接点が溶着しヒータ6が断線しなくて前
述のように過電流が流え続ける状態になると、高い温度
になり、熱可溶金属9が溶融して調節ねじ8の頭部Aが
ねじ部8Bから離融し、バイメタル2′を保持するコイル
ばね7が該ねじ頭部8Aとバイメタル2点を押し上げ、接
点3、4の溶着力に打ち勝って、接点3、4を開離させ
回路を遮断する。その後冷却してもバイメタル2′はコ
イルばね7で持ち上げられたままで、その接点3、4は
開路した状態を保つものが開示されていた。
なお、この他にこの種の装置としては実開閉2−4423
2号公報等が挙げられる。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記従来技術ではバイメタル2′の軸支穴2aから放射
状に配置したスリット2b,2c,2d,2e,2f,2g、即ち応力分
散手段が全て同一形状,同一寸法で形成されていた。
又、夫々のスリット2b,2c,2d,2e,2f,2gの配置も第8
図(a)に示すように一対の可動接点3の中心線X軸上
にスリット2b,2eがくるもの、および第9図に示すよう
に一対の可動接点3の中心線X軸と直交する中心線Y軸
上にスリット2c,2fがくるもの等があった。
なお、付記すれば、バイメタル2′の最大応力点は夫
々のスリット2b,2c,2d,2e,2f,2gの底面2b′,2c′,2d′,
2e′,2f′,2g′の周辺に現われる。
その結果、バイメタル2′の寿命が尽きて疲労破断が
始まる時、一般的にはこの底面2b′,2c′,2d′,2e′,2
f′,2g′のいずれか一番応力の大きい所もしくは一番弱
い所からバイメタル2′の外周方向に向って破断が進行
することになる。
又、バイメタル2′と可動接点3とは互いに抵抗溶接
により接合されて居り、この時の残留応力と可動接点3
の表面積に対して極めて小さい抵抗溶接面積部分に集中
して流れる電流による極部発熱の熱的アンバランスとに
より、この可動接点3の接合部分を起点としてバイメタ
ル2′の外周方向並びに内周方向に向って破断が進行す
る。特に大電流開閉時にはこの破断モードが大半を占め
るようになる。
従って、単相100V750Wを超える電動機を開閉する用途
では第8図のスリット2b〜2gの配置にする手段がより多
く採用されていた。
しかしながら、バイメタル2′を加熱するヒータ6と
バイメタル2′の位置関係及びヒータ6の加熱エネルギ
ーの大小や熱動継電器自身の取付方向等によってバイメ
タル2′の破断形態が左右され、一定の破断形態にする
事は不可能であった。
そしてこれ等のバイメタル2′を実開昭64−35462号
公報に見られる従来技術に採用した場合、例えば第9図
に示すバイメタル2′のスリット2cから完全破断し、ス
リット2fから不完全破断Mが同時に発生したとすると、
熱可溶金属9が溶融し調整ねじ8の頭部8Aがねじ部8Bか
ら離融してバイメタル2′を保持するコイルばね7が該
頭部8Aとバイメタル2点を押し上げても、第10図に示す
如くその押し上げ力の大半が前記破断部を起点としてへ
の字形に折り曲げるエネルギーとして消費され、接点3,
4の溶着を解除するに至らないことがある。
又、第11図に示すバイメタル2′のスリット2bから完
全破断Nが発生し、破断した右半分が可動接点3から剥
離したとすると、熱可溶金属9が溶融し調整ねじ8の頭
部8Aがねじ部8Bから離融してバイメタル2′を保持する
コイルばね7が該頭部8Aとバイメタル2′を押し上げて
も、第12図に示す如く可動接点3周囲のバイメタル2′
の断面積が元の断面積の約50%前後になり、押し上げ力
の一部がバイメタル2′のたわみに消費されて接点3、
4の溶着力に打ち勝てず本来の目的を十分に発揮出来な
い恐れがあった。
本発明は、バイメタル2′が完全破断したときにコイ
ルばね7の押し上げ力のロスを最小限に留め、その大半
の押し上げ力を接点3、4の溶着力解除に伝達出来るこ
の種用途に最適なバイメタルを提供せんとするものであ
る。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、本発明に係る熱動継電器
は、一対の可動接点を備えた皿型バイメタル、固定接
点、熱可溶金属にて互に結合された頭部とねじ部から成
る調整ねじ、並びに調整ねじ頭部に皿型バイメタルを押
付け保持するコイルばねを備えた熱動継電器において、
前記バイメタルの軸支穴から放射状に設けた複数のスリ
ットのうちの一部のスリット又は上記放射状スリットの
延長線状に応力集中部を設けたことである。
[作用] 上記技術的手段による働きを述べれば、あらかじめ設
定されたスリットの底面は他のスリットの底面より変形
自由度が小さく、底面周辺の応力が最も大きくなる。
その結果、バイメタルの反転動作の繰り返し中に応力
の最も大きな部分である応力集中部からクラックが始ま
ることになる。そして、一度クラックが入るとその部分
はノッチ効果により加速度的に破断が進行し、遂には外
周部まで到達する。
本発明は、バイメタルが破断した時コイルばねの押し
上げ力が接点溶着解除には不利にならない位置、即ち、
一対の可動接点を結ぶ中心線上若しくは前記中心線と直
交する中心線上のいずれとも重ならない位置を確実に破
断させ得ることから、接点溶着解除の確実なものにする
ことが出来る。特に一対の接点が同時溶着を発生した時
であっても、最悪一方の接点溶着部側には十分な押し上
げ力が作用して接点溶着を解除し、回路を遮断すること
が出来る。
従って、過電流が流れ続けることが無い信頼性および
安全性の高い熱電継電器を提供出来るものである。
[実施例] 第1図乃至第3図により一実施例の熱動継電器を説明
する。1は絶縁物製のケース、2は皿型バイメタル、3
は一対の可動接点、4は固定接点、5は端子、6はヒー
タ、8は頭部8Aとねじ部8Bとから成り、熱可溶金属9に
て互に結合された調整ねじ、7はコイルばね、11はキャ
ップである。常時はコイルばね7により皿型バイメタル
2が調整ねじ頭部8Aに押付け保持され、可動接点3が固
定接点4に接触し閉路している。
なお、前記バイメタル2には第3図(a)に示すよう
に、中心部に調整ねじ8を挿通し軸支するための軸支穴
2aと、この軸支穴2aから放射状に複数のスリット2b,2c,
2d,2e,2f,2gが設けられ、かつ、一対の可動接点3を結
ぶ中心線X軸上と、前記X軸と直交する中心線Y軸上の
位置に一致しない任意のスリット2cの底面2c′を、他の
スリット2b,2d,2e,2f,2gの底面2b′,2d′,2e′,2f′,2g
のコーナーRより小さなコーナーR′で形成した弱点部
(応力集中部)を設けてある。
直列に接続された負荷に過電流が流れると、ヒータ6
がバイメタル2を加熱し、従来例と同様にバイメタル2
が所定温度に達すると、その皿型バイメタル2が反転し
て、可動接点3が固定接点4から急速に開離して回路を
遮断する。そしてバイメタル2が開閉を繰返し、万一接
点3、4が溶着して異常な高温度になった場合には、調
節ねじ頭部8Aを固定していた熱可動溶金属9が溶融し
て、コイルばね7が接点溶着力に打ち勝って調節ねじ頭
部8Aとバイメタル2を押し上げて回路を遮断する。なお
ねじ頭部8Aやバイメタル2が冷却後も再び各部に接触し
て閉路しないように、コイルばね7は十分な自由長を有
するものとする。又調節ねじ8は、第2図(イ)又は
(ロ)に例示するように、ねじ部8Bの突起部を頭部8Aの
孔に挿入して後、熱可溶金属9で固定する。
上述の熱動継電器では、バイメタル2が反転動作を繰
り返すうちに、最も応力の大きいコーナーR′の部分が
最も早くクラックに至る。そして、遂にはそのクラック
がバイメタル2の外周部に到達し、部分的に皿型バイメ
タル2が分離された状態になる。この状態で負荷の開閉
を継続していると、接点圧力の減少から前述の接点3、
4の溶着に発展する。
しかしながら、前述の様に破断発生箇所がX軸上およ
びY軸上と重ならない位置としてあることから、ランダ
ムに破断が起る場合と比較して接点圧力の減少が少な
く、この接点圧力の大小によって定まる接点溶着力は、
接点3、4の接触過渡現象である接触不安定時期(チャ
タ、バウンシング時間ともいう)が短かく、その分だけ
アーク発生エネルギーが小さくなることからその値はバ
イメタル反転動作力を少し上廻る程度であると推定され
る。(いずれも実験では、ばね荷重325gのコイルばねで
接点溶着解除となった。) 発明者らは、開閉負荷を変えて従来技術と本発明技術
について比較試験を行ないその効果を確認済みである。
その実施例結果は表1の通りで、大電流開閉用として十
分に対応可能であることが立証出来た。
なお、上記実施例ではX軸上にスリット2b,2eが重な
るバイメタル2の形状を用いたが、第3図(b)のよう
にY軸上にスリット2b,2eが重なったバイメタル2の形
状であっても、その効果が何等変わるものではない。
また、第3図(a),(b)はいずれも最大応力部と
なるスリットは1箇所で説明したが、第3図(c)に示
す如く必要に応じてX軸と平行な片側の2箇所のスリッ
ト2c,2dにコーナーR′部を設け、前記片側と対象側を
完全な姿で残すことが出来、致命傷となる対角線状の破
断防止を図り動作の安定性をより確実化したものであ
る。
また、第3図(d)に示す如くスリット2cの底面2c′
までの深さH2が、他のスリット2b,2d〜2gの底面2b′,2
d′〜2g′までの深さH1より浅くても前述同様の効果が
得られることは言うまでもない。
言い換えれば、最大応力部とすることが出来るならば
その手段は任意である。例えば、第4図に示す如くスリ
ット2cの延長線Z軸上のバイメタル外周部に応力集中部
である切り欠き2hを設ける方法も本発明に含まれるもの
である。上記スリットの延長線上の外周部に切り欠きを
設けられたものは、ノッチ効果により外周部側のクラッ
クと、底面部側のクラックが同時進行してクラック同志
がドッキングし、前述同様の効果を得ることが出来る。
特に、外周部からのクラック開始は、熱動継電器が動
作する異常通電、即ち、電動機が束縛された正常に運転
出来ない状態を早くキャッチし、安全に機能停止させる
のに効果を発揮するものである。上記応力集中部は、外
周部に限られるものではなく、スリットの延長線上、即
ちスリットと外周部との間に位置していればよい。
更には、第3図(a),(b),(c),(d)と第
4図のものも併用しても良く種々の組合せも本発明に含
まれる。
即ち、破断しては困る位置以外の位置に応力集中部を
形成すれば良い。
本実施例によれば、小電流負荷から大電流負荷まで同
一のバイメタルで対応することが出来る。
又、その方法もバイメタルの応力分散用に設けた軸支
穴から放射状に配置したスリットの一部又は周辺部に弱
点部(応力集中部)を設けるだけであるため、製作が容
易であるばかりか原価が上昇したり、バイメタル組込み
上の制限等も無く、しかも、バイメタルの外形寸法が従
来品と変わらず互換性を有することから、実施化が容易
である効果を有する。
なお、本実施例ではスリットの数を6箇所設けたもの
で説明したが、5箇所でも8箇所でもその効果は左右さ
れない。
[発明の効果] 本発明は、放射状に配置したスリットの一部又は周辺
部に弱点部(応力集中部)を設けたので、バイメタル破
断箇所をあらかじめ理想的な位置にコントロールするこ
とが出来る。
その結果、バイメタルが疲労破断し接点溶着が発生し
た後、熱可溶金属が溶融してコイルばねがその接点溶着
に打ち勝って調整ねじ頭部とバイメタルを押し上げ回路
を遮断する能力が向上安定することから、信頼性、安全
性に優れた熱動継電器を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明一実施例の熱動継電器を示す断面図、第
2図は第1図の調整ねじ説明図、第3図(a),
(b),(c),(d)は本発明のバイメタルの複数の
実施例を示す図、第4図は本発明の他の実施例を示すバ
イメタルの要部図、第5図は従来の熱動継電器を示す縦
断面図、第6図は従来のバイメタルの疲労破断説明図、
第7図は第5図とは別な従来の熱動継電器を示す縦断面
図、第8図(a),(b)は従来のバイメタルを示す要
部説明図、第9図は第8図(b)のバイメタルの疲労破
断説明図、第10図は第7図の熱動継電器に第8図(b)
のバイメタルを組込み時の動作説明縦断面図、第11図は
第8図(a)のバイメタルの疲労破断説明図、第12図は
第7図の熱動継電器に第8図(a)のバイメタルを組込
み時の動作説明縦断面図である。 2……皿型バイメタル、2a……軸支穴、 2b〜2g……スリット、2b′〜2g′……底面、 2h……切り欠き部、3……可動接点、4……固定接点、 6……ヒータ、7……コイルばね、8……調整ねじ 8A……頭部、8B……ねじ部、9……熱可溶金属。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−224125(JP,A) 特開 昭64−82424(JP,A) 特開 平1−105436(JP,A) 特開 平1−279532(JP,A) 特開 平1−286220(JP,A) 特開 平1−320723(JP,A) 特開 平2−244528(JP,A) 特開 平2−244529(JP,A) 特開 平2−265135(JP,A) 特開 平4−92331(JP,A) 特開 平3−289020(JP,A) 実開 昭59−72641(JP,U) 実開 昭60−183349(JP,U) 実開 昭63−174145(JP,U) 実開 昭64−1450(JP,U) 実開 昭64−35642(JP,U) 実開 平2−44232(JP,U) 特公 昭55−10941(JP,B1) 実公 昭38−23226(JP,Y1) 実公 昭39−28954(JP,Y1) 米国特許2727962(US,A) 米国特許3959691(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01K 5/64 - 5/72 H01H 37/00 - 37/56

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一対の可動接点を備えた皿型バイメタル、
    固定接点、熱可溶金属にて互に結合された頭部とねじ部
    から成る調節ねじ、並びに調節ねじ頭部に皿型バイメタ
    ルを押付け保持するコイルばねを備えた熱動継電器にお
    いて、前記バイメタルの軸支穴から放射状に設けた複数
    のスリットのうちの一部のスリット又は上記放射状のス
    リットの延長線上に応力集中部を設けたことを特徴とす
    る熱動継電器。
  2. 【請求項2】請求項1において、応力集中部を、一対の
    可動接点を結ぶ中心線上若しくは前記中心線と直交する
    中心線上の夫々と一致しない位置に配置したことを特徴
    とする熱動継電器。
  3. 【請求項3】請求項1または2において、複数のスリッ
    トのうち最小1箇所,最大2箇所のスリットの底面径を
    他のスリットの底面径より小さくするか、又は軸支穴か
    らスリットの底面までの深さを他のスリットの底面まで
    の深さより浅くしてなる応力集中部を設けたことを特徴
    とする熱動継電器。
  4. 【請求項4】請求項1または2において、バイメタルの
    軸支穴から放射状に設けたスリットの延長線上のバイメ
    タル外周部に最小1箇所,最大2箇所の切り欠き部より
    なる応力集中部を設けたことを特徴とする熱動継電器。
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