JP2764146B2 - 火入れ醤油の澱引き方法 - Google Patents

火入れ醤油の澱引き方法

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JP2764146B2 JP63307432A JP30743288A JP2764146B2 JP 2764146 B2 JP2764146 B2 JP 2764146B2 JP 63307432 A JP63307432 A JP 63307432A JP 30743288 A JP30743288 A JP 30743288A JP 2764146 B2 JP2764146 B2 JP 2764146B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は火入れ醤油から澱を除去して醤油を精製する
澱引き方法に関する。
(従来の技術) 現在行なわれている醤油の一般的製造工程は第7図A
に示すように、諸味を圧搾して得られる生揚醤油を加熱
して火入れ醤油とし、この火入れ醤油をタンク内で静置
し、火入れによって失活・変性した酸素類やタンパク質
を凝集させ澱としてタンク底部に沈降せしめ、上澄の醤
油を硅藻土を用いて濾過することで製品とするようにし
ている。
斯る従来法による場合は、火入れ醤油の10%程度を澱
として除去しているが、この澱にはまだ多量の醤油分が
残っており、製品収率の面で不利がある。
そこで従来法の改良方法として第7図Bに示す方法が
提案されている。この方法はタンク底部に沈降した澱を
高分子膜を通して再び濾過し、澱中の醤油を回収してこ
の回収分を上澄醤油に加えて硅藻土による濾過を行い、
製品収率を98%程度まで高める方法である。
(発明が解決しようとする課題) 上述した従来法はいずれも硅藻土濾過を経て製品を得
るようにしているが、硅藻土濾過では微細な澱や細菌の
耐熱性芽胞子を完全に除去できず、また使用後の醤油含
有硅藻土が産業廃棄物として問題となっている。
また高分子膜を用いて製品収率を高める場合にあって
も、高分子膜は耐薬品性(洗浄性)耐熱性の点で不利が
あり、特に高分子膜として広く用いられているホローフ
ァイバータイプのものは、保持液の粘土上昇に伴って膜
モジュールの入口圧と出口圧の差が大きくなり、膜が破
壊されるおそれがある。
(課題を解決するための手段) 上記課題を解決すべく本発明は、火入れ醤油をタンク
内で沈降せしめることなく、直ちに多孔質セラミックを
支持体とする自己阻止型ダイナミック膜を用いて濾過す
るようにし、特に膜透過流束を向上すべく、濾過温度、
多孔質セラミック支持体の孔径及び濾過圧力を所定範囲
に設定した。
(作用) 生揚醤油を火入れし、80℃程度まで加熱された火入れ
醤油をそのまま多孔質セラミック支持体に通す。する
と、分離されるべき高分子成分、主としてタンパク質が
多孔膜セラミック面上にダイナミック膜を形成し容量で
97〜98%程度の醤油と2〜3%の高粘度の澱に分離され
る。
(実施例) 以下に本発明の実施例を添付図面に基いて説明する。
第1図は澱引き装置の概略構成図であり、左側部分は
本発明方法の実施に用いる装置、右側部分は比較例に用
いる装置を示し、タンクは共用としている。
澱引き装置はタンク1に火入れ醤油2を貯留するとと
もに温度コントローラ3を付設し、またタンク1内の火
入れ醤油2はポンプ4によって膜モジュール5,6に供給
され、膜を透過しなかった保持液は再びタンク1内に戻
すようにし、膜モジュール5,6の入口部及び出口部には
圧力計7を設け、また膜モジュール5,6の出口部よりも
下流側には圧力調整バルブ8を設けている。ここで本発
明方法の実施に用いる膜モジュール5は直列二連とし内
部に多孔質セラミック支持体膜を収納し、比較例に用い
る膜モジュール6内には高分子膜を収納した。
以上の装置を用い第2図に示すように本発明にあって
は、火入れ醤油を濾過膜を用いて醤油と澱に分離するわ
けであるが、多孔質セラミック支持体を用いた自己阻止
型ダイナミック膜による場合と高分子膜を用いた場合、
およびダイナミック膜を用いた場合の各種操作条件を比
較した実験結果を以下に述べる。
[セラミック膜と高分子膜の比較] セラミック膜と高分子膜との比較は、容量減少率RF、
膜透過流束及び粘性率ηとの関係について行い、その結
果を第3図に示す、尚、供試液の調整、膜の種類、操作
条件及び運転方法は以下の通りである。
供試液の調整 本醸造口生揚醤油を65℃で2時間、更に85℃で1時間
加熱した火入れ澱混濁醤油を使用。
膜の種類 本発明(自己阻止型ダイナミック膜) :アルミナ・シリカ製の多管モジュール支持体の孔径は
0.2μm及び0.5μm 比較例(高分子膜) :ポリサルフォン製の中空糸膜 操作条件 本発明 濾過圧力:0.2MPa 膜面線速:2m・S-1 温 度:30℃ 比較例 濾過圧力:0.1MPa 膜面線速:当初1m・S-1 RF4で0.75m・S-1 RF25で0.03m・S-1 温 度:30℃ ここで比較例の濾過圧力及び膜面線速を本発明方法よ
りも低くしたのは、高分子膜はRFが大きくなるにつれ、
モジュールの入口圧と出口圧の差が大きくなり破壊のお
それがあるためである。
運転方法 運転方法は本発明方法も比較例も同じで具体的には20
の供試液を膜透過流束を測定しながらRF5まで処理し
た保持液4と、90の供試液をRF5まで処理した保持
液18とを加えて22とし、この22の保持液のRF5か
らRF50までの膜透過流束を測定した。
第3図からも明らかなように、自己阻止型ダイナミッ
ク膜を用いた本発明方法によれば、濾過処理初期から膜
透過流束の変化が小さく、特にRF10以降に保持液の粘度
率が大巾に上昇しても膜透過流束には大きな変化がなく
安定している。一方高分子膜を用いた比較例にあって
は、濾過処理当初の膜透過流束は大きいが保持液の粘性
率が大きくなると急激に膜透過流束が低下する。
このように本発明によれば、PF10からPF45まで膜透過
流束は殆ど変化しないので、硅藻土濾過以上の高い回収
率で火入れ醤油を濾過でき、逆に高分子組を用いた場合
には、回収率を高めるために硅藻土濾過を組合せなけれ
ばならない。したがって本発明方法によれば工程が簡略
化できる。尚、本発明方法によると、保持液の混濁度は
0.86から18.01まで増加したが、透過液の混濁度は保持
液の2%以下を維持した。
[火入れ醤油の濾過温度] 以上によって自己阻止型ダイナミック膜が有利である
ことが判明したが、更に自己阻止型ダイナミック膜膜を
用いた場合の火入れ醤油の濾過温度と膜透過流束との関
係について行った実験結果を第4図に示す。尚、供試液
の調整、膜の種類及び温度を除く操作条件については前
記した本発明方法と同様とし、温度については20,40,6
0,80℃の各温度で行った。
第4図から明らかなように膜透過流束は温度上昇によ
り直線的に増加し、80℃では20℃の場合の約3倍の膜透
過流束を示す。特に自己阻止型ダイナミック膜を使用す
る場合には高分子膜に比べて耐熱性において優れるた
め、火入れ直後の火入れ醤油(80〜85℃)をそのまま処
理することができ、またこのようにすることで膜透過流
束が大きくなり、処理時間も短縮される。
[多孔質セラミック支持体の孔径と操作圧力] 高分子物質を含む溶液の濾過では、大きな孔径の膜を
使用すると目詰りが激しく膜透過流束を大きく低下さ
せ、小さな孔径の膜を使用すると膜自体の抵抗が大きく
なり高い膜透過流束が得られないため、孔径と操作圧力
を種々変化させて行った結果を第5図に示す。尚供試液
の調整については前記と同様とし、膜の種類及び操作条
件は以下の通りとした。
膜の種類 アルミナ・シリカ製の各管モジュール、孔径は0.2μ
m,0.5μm,0.8μm,1.0μm,1,5μm 操作条件 濾過圧力:0.1MPa,0.2MPa,0.3MPa,0.4MPa 膜面線速:2m・S-1 温 度:30℃ 第5図から明らかなように孔径(平均粒径)が1.0μ
m及び1.5μmのセラミック支持体を用いた場合は、0.1
MPa程度で限界流束となり、その値は0.2μm,0.5μm及
び0.8μmのセラミック支持体を用いたダイナミック膜
の限界流束の60%にしかならない。これは澱の寸法が0.
8〜1.2μm程度であるため、孔径が1.0μm以上のセラ
ミック支持体では目詰りを生じるからと考えられる。し
たがって、火入れ醤油の澱引きに用いるセラミック支持
体の孔径は0.8μm以下のものが好ましい。
また、操作圧力については、0.2MPa付近において最高
値となり、圧力が増加すると目詰りを生じやすい。した
がって操作圧力は0.4MPa以下、特に0.2MPa以下とするの
が好ましい。
[膜面線速] 膜面線速が増加すると膜面での剪断力が高くなり膜面
付近の物質移動条件が向上し膜透過流束も大きくなると
考えられるため、その実験も行い、結果を第6図に示
す。
第6図からも明らかなように膜面線速と膜透過速度と
は比例関係にある。
(発明の効果) 以上説明した如く本発明によれば、火入れ醤油の澱引
きに多孔質セラミックを支持体としたダイナミック膜を
用いることで、従来行っていたタンク内での静置及び硅
藻土濾過が省略でき、且つ高分子膜を用いた場合と同等
以上の製品収率が期待できる。
そして火入れ直後の火入れ醤油を濾過するとともに、
セラミック支持体膜の孔径及び操作圧力を適切なものと
することで、更なる収率向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は澱引き装置の概略構成図、第2図は本発明方法
の工程図、第3図は多孔質セラミックを支持体としたダ
イナミック膜と高分子膜とを容量減少率、膜透過流束及
び粘性率との関係で比較したグラフ、第4図は火入れ醤
油の濾過温度と膜透過流束との関係を示すグラフ、第5
図はセラミック支持体膜の孔径及び操作圧力と膜透過流
束との関係を示すグラフ、第6図は膜面線速と膜透過流
束との関係を示すグラフ、第7図A,Bは従来方法の工程
を示す図である。 尚、図面中1はタンク、2は火入れ醤油、4はポンプ、
5,6は膜モジュールである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 名和 義彦 茨城県つくば市吾妻2丁目1506―804― 102 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 1/238

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】諸味を圧搾して得られる生揚醤油を加熱し
    て火入れ醤油とし、この火入れ醤油を多孔質セラミック
    を支持体とする自己阻止型ダイナミック膜を利用して濾
    過することで醤油と澱とを分離するようにしたことを特
    徴とする火入れ醤油の澱引き方法。
  2. 【請求項2】前記火入れ醤油の濾過は火入れ後の高温状
    態のときに行うようにしたことを特徴とする請求項1に
    記載の火入れ醤油の澱引き方法。
  3. 【請求項3】前記セラミック支持体は平均孔径が1μm
    以下のものを用い、また濾過圧力は0.4MPa(メガパスカ
    ル)以下としたことを特徴とする請求項1に記載の火入
    れ醤油の澱引き方法。
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