JP2754815B2 - イオン交換による光学素子の製造方法 - Google Patents

イオン交換による光学素子の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、ガラス基材中の陽イオンを他の陽イオンと
交換することによりガラス基材の屈折率等の物性を部分
的に変えて、光導波路、マイクロレンズアレイ等の光学
素子をガラス基材中に一体的に形成する方法の改良に関
し、特に交換イオンの大きさの差に基づいて基材に発生
する応力の偏分布或いは異常変形を防止する技術に関す
る。
<従来の技術> 以下、マイクロレンズアレイの製造を例にとり説明す
る。マイクロレンズアレイは、透明ガラス平板中に、略
半球状あるいは略半円柱状の高屈折率領域から成る微小
なレンズを多数、ガラス基板中に一次元的または二次元
的に配列形成したものであり、一般的には以下のように
して製造される。まず、Na+イオン、K+イオンを含むガ
ラス基板の表面を金属薄膜等のイオン不透過性材料から
なるマスク膜で被覆し、このマスク膜に所定のレンズ配
列パターンで微小開口を設けておき、この面に基板ガラ
スの屈折率を高めるTl+イオン等の1価陽イオンを含む
溶融塩、例えば硝酸タリウムを接触させる。
これによりガラス基板中の前記イオンが外に出るとと
もに、溶融塩中の前記イオンが前記マスク膜の開口部を
通してガラス基板中に拡散進入し、拡散領域の屈折率が
増大することにより、略半球状(マスク開口が円形の場
合)あるいは略半円柱状(マスク開口がスリット状の場
合)をなした多数の微小レンズが、ガラス基板の片面側
肉厚内に配列形成される。
なお、前記マスク膜の開口パターンを適当に選ぶこと
により、上記と同様の方法で光導波路をガラス基板中に
形成することができる。
<発明が解決しようとする問題点> しかしながら、上述した従来のイオン交換方法では、
ガラスから外に出る1価の陽イオンに対して外部からガ
ラス内に入る1価陽イオンの大きさが異なるため、ガラ
ス中の拡散領域に応力が発生し、この局部応力の発生に
起因してガラス基材が異常変形するという重大な問題が
あった。
つまり、ガラス基材中に含まれる1価の陽イオンN
a+、K+の分子容がそれぞれ20.1cm3,34.0cm3であるのに
対し、Tl+の分子容が63.0cm3であるため、1対1のイオ
ン交換を行った場合、必然的にガラス内の交換領域の体
積が膨張し、その部分に応力が発生してガラス基材が反
り変形してしまうという現象である。
特に、基板ガラスの厚みが薄い場合に上記の反り変形
は著しくなる。
<問題点を解決するための手段> 1価陽イオンを1種以上含むガラス基材に対し、この
イオンと交換可能な他の陽イオンを1種以上含む媒質を
接触させてこれらイオン同士を交換させることにより、
周辺とは物性の異なった、例えば周辺部よりも屈折率の
高い領域からなる光学素子をガラス基材内に形成する方
法において、 交換される前記媒質中の1価陽イオンの体積と前記ガラ
ス基材中の1価陽イオンの体積とがほぼ等しくなるよう
に、媒質または(及び)ガラス基材中のイオン種及びイ
オン濃度を設定する。
例えば、基材ガラス中に二種のアルカリイオンA,Bが
含まれるとした場合、両者のモル体積和MVgは次式で表
すことができる。
MVg=Ca×βa+Cb×βb(cm3) ここで、Ca,CbはそれぞれA,Bイオンの濃度、βa,βb
はそれぞれA,Bイオンの分子容である。
上記のガラスに対して、二種の1価陽イオンC,Dを含
む溶融塩、例えば硝酸タリウムと硝酸ナトリウムとの混
塩を用い、次式で表される両イオンのモル体積和MVsが
ガラスにおけるイオンのモル体積和MVgに等しくなるよ
うに、両イオンC,Dの濃度Cc,Cdを設定する。
MVs=Cc×βc+Cd×βd(cm3) ここで、βc,βdはそれぞれイオンC,Dの分子容であ
る。
<作用> 本発明方法によれば、交換に関与する出入イオンの体
積が同じであるため、交換後、ガラス基材に変形を生じ
ることがなく、平坦度に優れたマイクロレンズアレイ、
光導波路などの光学素子を得ることができる。
<実施例> 以下本発明を具体的な数値例について説明する。大き
さが100mm×100mmで厚み0.6mmのガラス基板を準備し、
まず比較例として従来通り硝酸タリウム(TlNO3)100モ
ル%の溶融塩を用いて、基板ガラスの片面側にイオン交
換処理を行った。処理後の基板ガラスを平坦な面上に置
いてこの面からの最大浮き上がり量(反り変形量)を測
定したところ、約2mmであった。
これに対して、後述のようにして混合濃度比を決めた
硝酸タリウム12モル%、硝酸ナトリウム88モル%の混合
溶融塩を用いて上記のガラス基板に対しイオン交換を行
い反り変形量を測定したところ、約5μmであった。
溶融塩の濃度の計算方法は以下の通りである。
本実施例で用いたほう珪酸ガラスには、アルカリがNa
2O=13.2モル%,K2O=7.7モル%含まれている。Na+,K+,
Tl+の各分子容はそれぞれ20.2,34.0,63.0cm3である。
ガラス中のアルカリイオンのモル体積MVcm3は、 MV=0.132×20.2+0.077×34.0=5.2844cm3 になる。
このMVと同体積なるTl+とNa+の混合比を選ぶ。
Tl+,Na+量は次のように見積もられる。
MV=x×20.2+y×63.0=5.2844cm3 x+y=100モル% よって x=Tl+=12モル% y=Na+=88モル% になる。
<発明の効果> 本発明方法によれば、イオン交換によってガラス基板
中に光学素子を形成する場合に、従来は不可避であった
基板の変形をほとんど無くすことができ、平坦度に優れ
た平板光学素子が得られるとともに、素子基板の厚みを
可及的に薄くすることができる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1価の陽イオンを1種類以上含むガラス基
    材に対し、前記イオンと交換可能な他の陽イオンを少な
    くとも1種以上含む媒質を接触させて、これらイオン同
    士を交換させることにより、その周辺とは物性の異なっ
    たイオン拡散領域からなる光学素子を製造する方法にお
    いて、 交換される前記媒質中の1価陽イオンの体積と、前記ガ
    ラス基材中の1価陽イオンの体積とが等しくなるよう
    に、前記媒質又は/及びガラス基材中のイオン種及びイ
    オンの濃度を設定することを特徴とするイオン交換によ
    る光学素子の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のイオン交換による光学素
    子の製造方法において、 前記ガラス基材に含まれる1種以上の1価の陽イオンの
    モル体積和MVgを式(1)で、前記媒質の1価の陽イオ
    ンのモル体積和MVs式(2)を表したときに、MVg=MVs
    となるように前記媒質のイオン種及びイオンの濃度を設
    定することを特徴とするイオン交換による光学素子の製
    造方法。 MVg=Ca×βa+Cb×βb+・・・ (1) MVs=Cc×βc+Cd×βd (2) (ここで、Ca、Cb、Cc、Cd・・は、1価の陽イオンのモ
    ル濃度を表し、βa、βb、βc、βd・・は、1価の
    陽イオンの分子容を表す。)
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