JP2750918B2 - 赤血球の保存バッグ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、供血者より採血した血液を赤血球成分と赤
血球以外の血液成分を分離し、該赤血球成分を保存及び
洗浄するために使用するバッグに関するもので、特に凍
結しなくても保存効果のよいバッグを提供するものであ
る。

［従来技術及び発明が解決しようとする課題］ 第２図は、現在使用されている血液バッグ50の概略図
を示す。血液バッグ50は、採血した血液を収納する親バ
ッグ52と該親バッグ52内に収納された血液を各成分に分
離した後、該成分を収納するために使用される第１の子
バッグ53、第２の子バッグ54から構成される。

さらに親バッグ52の上端部には、供血者の血管に穿刺
して血液を、親バッグ52内に、誘導するための採血針62
及び採血チューブ56、その他輸血口57、プロテクター5
8、連通ピース59を内装した連結チューブ60が装着され
ている。

親バッグ52と子バッグ53、54は連結チューブ51、53、
63と分岐管61を介して連結されている。親バッグ52内に
はCPD、CPD−Ａ液等の血液の保存液が充填されている。

使用に際しては、採血針62を供血者に穿刺して血液を
採血チューブ56を経て、親バッグ52内へ導入した後、遠
心分離処理する。血液成分は上層、赤血球成分は下層に
分離する。

連通ピース59を、破断して、血漿成分を子バッグ53中
へ移した後、連結チューブ51の任意の箇所を熱溶着し
て、親バッグ52と子バッグ53、54を分離する 親バッグ52中に残った赤血球を保存するために、ま
ず、採血針62から採血チューブ56を経て、塩化ナトリウ
ム、グルコース、アデニン、マルトースなどを主成分と
する赤血球保存液を赤血球とほどよく撹拌しながら導入
した後、採血チューブ56の任意の箇所を熱溶着して、親
バッグ52を密封し凍結させて保存する（即座に供血者に
返還する場合は凍結する必要を場合ははない）。

また凍結保存された赤血球成分を供血者に返還する際
に機能を改善するために生理食塩液で洗浄してから供血
者に返還されている。生理食塩液の導入方法としてプロ
テクター58を開封して、輸血口57を露出させて、該輸血
口57に生食ボトルを連通した輸液セットを接続して行っ
ている。

このように血液バッグ51を赤血球を保存する方法は、
親バッグ52内に収納した赤血球が外気と接する機会が多
いので、外気中の雑菌等に汚染される危険があり衛生上
好ましくない。

また、親バッグ52内に収納した赤血球成分は凍結保存
した後、解凍して使用する際に部分的に溶血を生じるた
め、回収率が80％と低く、赤血球の損失が多く好ましく
ない。さらに解凍後の使用に際しての許容期間が短時間
に制限されているので使用できる手術等の分野が狭い。

［課題を解決するための手段］ そこで本発明者らは以上の課題を解決するために鋭意
検討を重ねた結果、次の発明に到達した。

第１の発明として 供血者より採血した血液を赤血球成分とその他の血液
成分に分離し、該赤血球成分を保持するために使用する
バッグであって、 バッグ本体８の上端部に採血針９を装着した採血チュ
ーブ10を設けかつバッグ本体８の上部内面11を漏斗状に
形成した採血バッグ２と、 前記採血バッグ２中に採血された血液から分離された
赤血球以外の血液成分を収納する少なくとも二個の血液
成分分離バッグ３、４と、 バッグ本体28、28a、28の内部に赤血球の保存液を充
填した少なくとも二個以上の保存液供給バッグ５、６、
７とからなり、 前記赤血球以外の血液成分の出口OUTを上部内面11の
漏斗形状の頂部Ｔに形成し、前記赤血球保存液の流入口
INを上部内面11の漏斗形状の側辺部Ｓに形成し、 前記採血バッグ２の上部に連通ピース21を介して前記
赤血球以外の血液成分の出口OUTと連通する連結チュー
ブ12を接続し、この連結チューブ12に分岐管19を接続
し、この分岐管19に連結チューブ14、15を介して血液成
分分離バッグ３、４を接続し、 前記採血バッグ２の上部に連通ピース22を介して前記
赤血球保存液の流入口INと連通する連結チューブ13を接
続し、この連結チューブ13に分岐管20を接続し、この分
岐管20に連結チューブ18を介して前記保存液供給バッグ
７を接続し、前記分岐管20に途中に連通ピース23、24を
設けた連結チューブ16、17を介して一個以上の前記保存
液供給バッグ５、６を接続してなる赤血球の保存バッグ
１を提供するものである。

第２の発明として 保存液供給バッグ５、６、７のバッグ本体28、28a、2
8b内に、少なくとも塩化ナトリウム、グルコース、アデ
ニン、マルトースの成分を含有する赤血球の保存液を充
填してなる前記第１の発明記載の赤血球の保存バッグ１
を提供するものである。

第３の発明として 保存液供給バッグ５、６、７のバッグ本体28、28a、2
8b内に、赤血球の保存液として、生理食塩液を充填して
なる前記第１の発明記載の赤血球の保存バッグ１を提供
するものである。

［作用］ 採用バッグ２内に採血した血液成分を赤血球成分と血
漿成分に分離した後、赤血球成分以外の血液成分を分離
バッグ３、４へ収納し、残った赤血球成分に少なくとも
塩化ナトリウム、グルコース、アデニン、マルトースの
成分を含有する赤血球の保存液（以下SAG−Ｍ溶液と略
記する）を混合して、所定期間、赤血球成分を保存した
後、使用済のSAG−Ｍ溶液を排出し、新鮮なSAG−Ｍ溶液
を逐次赤血球成分に添加することにより赤血球成分を長
期間保存することが可能である。

［実施例］ 第１図は、本発明の赤血球の保存バッグ１の概略図で
ある。赤血球保存バッグ１は、 可撓性の合成樹脂からなるバッグ本体８の上端部に、
先端に採血針９を装着した採血チューブ10を設けかつ該
バッグ本体８の上部内面11を漏斗状に形成した採血バッ
グ２と、 前記採血バッグ２中で分離された赤血球以外の血液成
分を収納するための血液成分分離バッグ３、４と、 バッグ本体28、28a、28bの内部に赤血球の保存液とし
て少なくとも塩化ナトリウム、グルコース、アデニン、
マルトースの各成分からなる赤血球の保存液（以下、SA
G−Ｍ溶液と略記する）または生理食塩液を充填した保
存液供給バッグ５、６、７とから構成されている。

これらの採血バッグ２、血液成分分離バッグ３、４、
保存液供給バッグ５、６、７はいずれも可撓性の合成樹
脂性シートを２枚重ね合せて溶着して袋状に形成するか
またはブロー成形により袋チューブ状に押出した可撓性
合成樹脂の端部を溶着して袋状に形成してもよい。

例えば、採血バッグ２の容量は、200ml血液成分分離
バッグ３、４および保存液供給バッグ５、６、７の容量
は150ml程度が好ましいが使用の態様により設計変更す
ることができる。

保存液供給バッグ５、６、７中には、SAG−Ｍ溶液が6
0ml充填されるが充填量は、前記と同様に、使用の態様
のより適当に調整することができる。

採血バッグ２は前記赤血球以外の血液成分の出口OUT
を上部内面11の漏斗形状の頂部Ｔに形成し前記赤血球保
存液の流入口INを上部内面11の漏斗形状の側辺部Ｓに形
成している。

以上の採血バッグ２と血液成分分離バッグ３、４並び
に保存液供給バッグ５、６、７は、次のように接続され
ている。

すなわち前記採血バッグ２の上部に連通ピース21を介
して前記赤血球以外の血液成分の出口OUTと連通する連
結チューブ12を接続し、この連結チューブ12に分岐管19
を接続し、この分岐管19に連結チューブ14、15を介して
血液成分分離バッグ３、４を接続し、前記採血バッグ２
の上部に連通ピース22を介して前記赤血球保存液の流入
口INと連通する連結チューブ13を接続し、この連結チュ
ーブ13に分岐管20を接続し、この分岐管20に連結チュー
ブ18を介して前記保存液供給バッグ７を接続し、前記分
岐管20に途中に連通ピース23、24を設けた連結チューブ
16、17を介して一個以上の前記保存液供給バッグ５、６
が接続されている。

また、各バッグの上端部には輸血口（輸液口）25がプ
ロテクター26に被冠されて装着されている。

次に赤血球保存バッグの使用方法について説明する。

採血針９を供血者に、穿刺した後、血液を採血チュー
ブ10を経て、採血バッグ２の本体８内に導入する。採血
チューブ10の任意の箇所を熱溶着して採血バッグ２を密
封した後、該血液を遠心処理し、赤血球成分と血漿成分
に分離して（赤血球成分と血漿成分の界面には、白血球
成分を含むバフィーコート層が生成している）、連通ピ
ース21を破断して、血漿成分を連結チューブ12、14を経
て分離バッグ３中へ収納し、他方バフィーコート層は連
結チューブ12、15を経て分離バック４内へ収納される。
採血バッグ２の上部内面11は漏斗状に形成されているの
で、血漿成分と微少成分のバフィーコート層は上部内面
11の漏斗形状の頂部Ｔ付近に集めやすくなり赤血球成分
との分離が容易になる。

続いて連結チューブ12の任意の箇所を熱溶着にして、
採血バッグ２から分離する。連通ピース22を破断して、
保存液供給バッグ７からSAG−Ｍ溶液を連結チューブ18
を経て採血バッグ２中に導入して、赤血球成分を混合す
る。以上のようにして赤血球成分を室温で暗所に保存す
る。

数週間後に、新鮮なSAG−Ｍ溶液を入れ換えるために
次の操作を行う。

採血バッグ２を遠心処理して、赤血球成分を下層に沈
降させて、上澄みのSAG−Ｍ溶液を連結チューブ13、18
を介して保存液供給バッグ７中へ回収し、連結チューブ
18の任意の箇所を熱溶着して、保存液供給バッグ７を分
離する。

続いて連通ピース24を破断して、保存液供給バッグ６
から新鮮なSAG−Ｍ溶液を連結チューブ17、13を経て採
血バッグ２中に導入して赤血球成分と混合して、再び赤
血球成分を室温で暗所に保存する。

以下数週間毎に同様の操作を反復して行うことにより
赤血球成分の長期保存が可能となる。

赤血球保存バッグ１の形状は第１図のものに限定され
るものではなく、例えば赤血球成分の保存期間に応じ
て、赤血球の保存液を充填した保存液供給バッグの数を
適宜調整することができる（赤血球の保存期間が長くな
ると共に保存液供給バッグの設定数を増加することがで
きる）。他方、血液成分分離バッグの設定数も所目的に
応じて適宜調整することができる。

さらに赤血球の保存液として前述のSAG−Ｍ溶液の代
わりに、生理食塩水を使用することにより、赤血球機能
の改善、長期保存を図ることができる。

生理食塩水を使用した場合の赤血球成分の洗浄、保存
方法も前述と同様である。

なお、本発明では、連通ピース23、24の代わりに保存
液供給バッグ５、６、７の上端部にプラスチックボール
27、27a、27bを設けて保存液の漏出を防止するようにし
ても良い。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明は、 完全なクローズドシステムで使用済の赤血球の保存液
と新鮮な赤血球の保存液の交換を行うことができるので
赤血球が外気中の雑菌に汚染されるおそれがなく衛生が
たもてる。

赤血球の活力を損なうことなく、室温において長時間
保存できるとともに損失も少なく回収率が良い。

バフィーコート層の排出ルートと赤血球保存液の流入
ルートが区別されているので、赤血球中にバフィーコー
ト層が不純物として混入するおそれがない。

等の効果を有する優れた発明である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の赤血球の保存バッグを示す概略図、第
２図は従来の血液バッグを示す概略図である。 図中、１は赤血球の保存バッグ、２は採血バッグ、３、
４は血液成分分離バッグ、５、６、７は保存液供給バッ
グを示す。

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】供血者より採血した血液を赤血球成分とそ
   の他の血液成分に分離し、該赤血球成分を保持するため
   に使用するバッグであって、 バッグ本体８の上端部に採血針９を装着した採血チュー
   ブ10を設けかつバッグ本体８の上部内面11を漏斗状に形
   成した採血バッグ２と、 前記採血バッグ２中に採血された血液から分離された赤
   血球以外の血液成分を収納する少なくとも二個の血液成
   分分離バッグ３、４と、 バッグ本体28、28a、28の内部に赤血球の保存液を充填
   した少なくとも二個以上の保存液供給バッグ５、６、７
   とからなり、 前記赤血球以外の血液成分の出口OUTを上部内面11の漏
   斗形状の頂部Ｔに形成し、前記赤血球保存液の流入口IN
   を上部内面11の漏斗形状の側辺部Ｓに形成し、 前記採血バッグ２の上部に連通ピース21を介して前記赤
   血球以外の血液成分の出口OUTと連通する連結チューブ1
   2を接続し、この連結チューブ12に分岐管19を接続し、
   この分岐管19に連結チューブ14、15を介して血液成分分
   離バッグ３、４を接続し、 前記採血バッグ２の上部に連通ピース22を介して前記赤
   血球保存液の流入口INと連通する連結チューブ13を接続
   し、この連結チューブ13に分岐管20を接続し、この分岐
   管20に連結チューブ18を介して前記保存液供給バッグ７
   を接続し、前記分岐管20に途中に連通ピース23、24を設
   けた連結チューブ16、17を介して一個以上の前記保存液
   供給バッグ５、６を接続した、ことを特徴とする赤血球
   の保存バッグ１。
2. 【請求項２】保存液供給バッグ５、６、７のバッグ本体
   28、28a、28b内に、少なくとも塩化ナトリウム、グルコ
   ース、アデニン、マルトースの成分を含有する赤血球の
   保存液を充填してなる特許請求の範囲第１項記載の赤血
   球の保存バッグ１。
3. 【請求項３】保存液供給バッグ５、６、７のバッグ本体
   28、28a、28b内に、赤血球の保存液として、生理食塩液
   を充填してなる特許請求の範囲第１項記載の赤血球の保
   存バッグ１。