JP2747744B2 - 光情報記録方法 - Google Patents

光情報記録方法

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JP2747744B2
JP2747744B2 JP3103917A JP10391791A JP2747744B2 JP 2747744 B2 JP2747744 B2 JP 2747744B2 JP 3103917 A JP3103917 A JP 3103917A JP 10391791 A JP10391791 A JP 10391791A JP 2747744 B2 JP2747744 B2 JP 2747744B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光による情報を記録す
る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般のDRAW(Direct Read After Wr
ite 、書き込み可能)型の情報記録媒体は、基本構造と
してプラスチック、ガラス等からなる円盤状の透明基板
と、この上に設けられたBi、Sn、In、Te等の金
属または半金属、あるいはシアニン色素等の色素類から
なる記録層とを有する。記録媒体への情報の書き込み
は、たとえばレーザービームを記録媒体に照射すること
により行なわれ、記録層の照射部分がその光を吸収して
局所的に温度上昇する結果、ピット形成等の物理的変化
あるいは化学的変化を生じてその光学的特性を変えるこ
とにより情報が記録される。光ディスクからの情報の読
み取りもまた、レーザービームを光ディスクに照射する
ことにより行なわれ、記録層の光学的特性の変化に応じ
た反射光または透過光を検出することにより情報が再生
される。
【0003】上記レーザービームの照射は、レーザーを
基板上に円環状(本発明ではスパイラル状も含む)に形
成された凹溝からなるプリグルーブに沿って(案内され
て)移動させることにより行なわれる。このような、プ
リグルーブは一般に、基板の内周側(一般に内周縁から
半径方向に外側5mm前後はミラー部)から外周側(外
周端まであるいは外周端から1〜3mm内周側まで)ま
で形成されている。また、このような光ディスクの基板
は、一般に直径が5インチ(120mm )、5.25インチ
(130mm)、3.5インチ(80mm)のものが使用されてい
る。
【0004】色素からなる記録層は、色素を溶剤に溶か
した色素塗布液を基板に塗布乾燥することにより容易に
形成することができる。このため、真空蒸着等により形
成する必要がある金属記録層に比べて製造上明らかに有
利である。従って、最近では色素を記録層材料として使
用する例が多く見受けられる。色素からなる記録層は、
反射率が一般に30%程度と低いため、DRAW型CD
(記録信号としてオーディオ用CDのCDフォーマット
信号を用いる)のように情報を市販のCDプレーヤーで
再生できる、すなわち高反射率が要求される場合は、一
般に反射層が設けられる。このようなDRAW型CDの
例として、ポリカーボネート基板上に色素記録層、Au
の反射層および保護層がこの順で積層された構造の光デ
ィスクが日経エレクトロニクス(107頁、1989年 1月
23日発行)に記載されている。
【0005】一方、市販のCDプレーヤーで再生できる
一般のオーディオ用CD(コンパクトディスク)は、カ
ッティング原板からスタンパを作成して成形することに
より製造される。このため、製造経費が高く、大量に販
売できるソフトには適用することができるが、数枚、数
十枚程度の少量のCDソフト等(同じ情報が記録された
光ディスク)を作成する場合は、製造経費を抑える必要
から例えば上記CD−DRAW(基板上に色素記録層、
反射層および保護層が積層された)に記録することによ
り行なわれていていた。すなわち、CD−DRAWをC
Dの再生線速度である1.2〜1.4m/秒で回転させ
ながら発振波長780nmを有するレーザーをプリグル
ーブに照射することにより情報を記録し、一般に少量の
CDソフト等を作成していた。このような作成方法で
は、記録時の線速度が再生線速度と等しいため、CDソ
フト一枚製作するために、CDソフト一枚の再生時間と
同じ時間を要する。
【0006】従って、記録に要する時間を短縮すること
が望まれる。その方法として、レーザーのパワーを大き
くして、速い線速度で記録する方法が考えられるが、大
きなパワーのレーザーを用いると光ディスク装置が高価
なものとなることや、再生時のC/Nが低下するなどの
特性上の問題もある。
【0007】また、上記色素記録層および反射層を有す
るCD−DRAWは、一般に色素の光吸収率が30%以
下の発振波長(780nm)を有するレーザーで記録再
生する。これは、再生時の反射光量が大きく得られるの
で市販のCDプレーヤーで再生するには好ましいが、記
録の際には吸収が小さいため、レーザーのパワーを大き
くしないと信号を記録することができない。従って、記
録の際に、色素記録層の光吸収が大きい波長領域の発振
波長を有するレーザーを用いて記録する方法が考えられ
る。
【0008】特開平2−187937号公報に、記録の
際に、色素記録層の光吸収性を有する波長の記録光を照
射して信号の記録を行ない、記録光の波長より低い光吸
収性を示す波長の再生光によって記録された信号を屈折
率の変化として再生することが開示されている。この方
法は、基板上に色素記録層及び反射層が積層された光デ
ィスクであって、記録された信号を市販のCDプレーヤ
ーで再生できるような信号を記録する方法として提案さ
れている。従って、上記のように数枚、数十枚程度の比
較的少量のCDソフト等を作成する場合、上記CD−D
RAWにどのように記録すれば能率的であるかについて
は提案されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、数枚、数十
枚程度の比較的少量の同じ情報が記録された光ディスク
(CDソフト等)を容易に作成することができる光情報
記録方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、表面にプリグ
ルーブが設けられた円盤状基板の上に色素からなる記録
層および反射層がこの順に設けられ、プリグルーブの底
部における色素記録層の光学膜厚とプリグルーブのラン
ド部における色素記録層の光学膜厚との差が情報記録に
用いるレーザー光の波長の1/8以下(すなわち、λ/
8以下:但し、λは情報記録に用いるレーザー光の発振
波長)である情報記録媒体を、記録した情報を再生する
際の線速度より速い線速度で回転させながら、該色素記
録層の光吸収率が70%以上を示す波長領域に発振波長
を有するレーザー光を基板側より、プッシュプル法によ
りトラッキングしながら、該プリグルーブ底部に照射し
て情報を記録することからなる光情報記録方法にある。
【0011】本発明の光情報記録方法の好ましい態様は
以下の通りである。 1)記録用のレーザー光が半導体レーザーから発振され
るレーザー光であることを特徴とする上記光情報記録方
法。
【0012】2)記録用のレーザー光の発振波長が55
0〜770nmの範囲にあり、記録パワーが5〜10m
Wの範囲にあることを特徴とする上記光情報記録方法。
【0013】3)上記レーザーの照射を、該色素記録層
のプリグルーブ底部の層厚とプリグルーブ間部(ランド
部)の層厚との光学的膜厚の差がλ/16(但し、λは
記録用レーザーの発振波長)以下になるように作成され
た情報記録媒体の該プリグルーブをプッシュプル法によ
ってトラッキングしならがら行なうことを特徴とする上
記光情報記録方法。
【0014】4)上記レーザーが、該色素記録層の光吸
収率が80%以上を示す波長領域に発振波長を有するも
のであることを特徴とする上記光情報記録方法。
【0015】5)上記記録時の線速度が、再生時の速度
の2〜10倍の範囲にあることを特徴とする上記光情報
記録方法。
【0016】6)該反射層の上に、さらに保護層が設け
られたことを特徴とする上記光情報記録方法。
【0017】
【発明の効果】上記のように、プリグルーブ付き基板の
上に、色素記録層および反射層がこの順で設けられた情
報記録媒体に、色素記録層の光吸収率が70%以上を示
す波長領域に発振波長を有するレーザーを照射して信号
の記録を行なうことによって、記録時間の短縮、すなわ
ち記録時の線速度を速くすることができる。従って、数
枚、数十枚程度の比較的少量のCDソフト等を短時間で
簡易に作成することができる。特に、上記レーザーの照
射を、該色素記録層のプリグルーブ底部の層厚とプリグ
ルーブ間部(ランド部)の光学的膜厚との差がλ/8以
下になるように情報記録媒体を作成することにより、記
録用に一般に使用されるトラッキング方法であるプッシ
ュプル法によってトラッキングしならがら記録すること
ができる。
【0018】 [発明の詳細な記述]本発明者等は、上記のように数
枚、数十枚程度の比較的少量のCDソフト等を簡易に作
成する方法について種々検討を重ねてきた。色素記録層
が高い光吸収性を示す波長領域に発振波長を有するレー
ザーを照射して信号の記録を行なうことによって、記録
時間の短縮、すなわち記録時の線速度の増加が可能であ
ると考え鋭意研究を重ねた。しかしながら、必ずしも色
素記録層が高い光吸収性を示す波長のレーザーを照射し
ても記録時の線速度を増加できるとは言えず、色素記録
層の光吸収率が70%以上を示す波長領域に発振波長を
有するレーザーを照射することによって初めて線速度の
増加が可能になることが判明した。また、特に色素記録
層が高い光吸収性を示す波長である、一般に短波長のレ
ーザーを用いた場合、位相差が変化し易く、記録用に一
般に使用されるトラッキング法であるプッシュプル信号
が得られ難いとの問題があり、本発明はこの問題にも解
決法を提供するものである。
【0019】添付図面を参照しながら、本発明の光情報
記録方法について説明する。図1には、プリグルーブを
有する円盤状基板11、基板上に設けられた色素からな
る記録層12、記録層上に設けられた金属からなる反射
層13、そして反射層上に設けられた保護層14からな
る情報記録媒体を回転させながら、基板側からレーザー
16を照射して基板のプリグルーブ底部15上の記録層
にレーザーを集光して情報を記録している状態が示され
ている。記録された情報を再生する場合も基本的には同
じ様に行なわれる。
【0020】本発明では、上記情報を記録する際のレー
ザー16は、その発振波長が色素記録層12の光吸収率
が70%以上(80%以上が好ましい)を示す波長領域
にあるレーザーを使用する。そして、情報記録媒体の回
転時の線速度を、記録した情報を再生する際の線速度よ
り速い線速度にする。このようにして、記録することに
より情報の記録が再生より遥かに速く行なえることか
ら、数枚、数十枚程度の比較的少量の同じ情報が記録さ
れた光ディスク(CDソフト)を短時間で容易に作成す
ることができる。光吸収率は、各波長での、光ディスク
の基板側からの光の反射率(R)および透過率(T)を
測定し、100−(R+T)として求めた。本発明で
は、透過率(T)は反射層により0であるため、100
−Rが光吸収率となる。
【0021】本発明の情報の記録は、例えば、情報記録
媒体を定線速度(CDフォーマットの場合は再生時の速
度である1.2〜1.4m/秒の2〜10倍の速度が好
ましい)にて回転させながら、基板側から半導体レーザ
ー光などの記録用の光を照射する。レーザーの発振波長
は、色素記録層の光吸収率が70%以上を示す波長で、
550〜770nmが一般的である。記録パワーは一般
に5〜10mWである。記録パワーを大きくするには、
大きなパワーのレーザーを用いる必要があり、これは光
ディスク装置が高価なものとなることや、再生信号や各
種制御信号のS/Nが低下することから好ましくない。
光の照射により、記録層に空洞が形成されることによ
り、あるいは記録層に変色、会合状態の変化等により屈
折率が変化することによって情報が記録される。
【0022】本発明者等の検討によると、上記記録方法
のように、記録時のレーザーの照射を速い線速度で行な
うには、スリービーム法によってプリグルーブをトラッ
キングすることが好ましいことが分かった。すなわち、
一般に色素記録層表面の凹凸形状は、基板のプリグルー
ブの凹凸形状を正確に反映しているとは言えない。色素
記録層は、一般にスピンコート法で塗布形成されること
から、プリグルーブ底部の層厚は厚く、プリグルーブ間
(ランド部)の層厚は薄くなる。一方、再生レーザー波
長(すなわち長波長)でプッシュプル信号が大きくなる
ようにプリグルーブの深さを深くすると、その再生波長
ではプッシュプル法でトラッキングが可能となるが、記
録レーザー波長(すなわち短波長)では記録層の屈折率
が大きく変わる。このため、記録波長ではプッシュプル
法では充分なトラッキングエラー信号が得られず、トラ
ッキングはずれを起こし易いことが分かった。また、記
録波長に合わせてプリグルーブの深さを設定すると、再
生に充分なトラッキングエラー信号が得られなくなる。
【0023】しかしながら、さらに本発明者等の検討に
よると、上記色素記録層12のプリグルーブ15の底部
の層厚とプリグルーブ間部(ランド部)の層厚との光学
的膜厚の差が、λ/8以下(λ/16以下が好ましい)
となるように作成された情報記録媒体を用いることによ
って、上記記録方法のように記録時に色素記録層の光吸
収率が70%以上を示す波長のレーザーを用いて、その
照射を速い線速度で行なう場合でもプッシュプル法のト
ラッキングによりエラーなくトラッキングできることが
明らかになった。プッシュプル法は、情報の記録に広く
用いられている方法で、反射光強度分布形あるいは回折
光方式等と呼ばれ、スリービーム法と異なり、1つのビ
ーム(スポット)しか必要とせず、レーザーのパワーを
有効に利用でき、かつ構成が非常に簡単であるとの利点
がある。
【0024】上記色素記録層のプリグルーブ底部とラン
ド部の光学的層厚の差が、λ/8以下となった場合、短
波長のレーザーを照射して速い線速度で行なってもプッ
シュプル法によるトラッキングであればトラッキングが
良好である理由について、添付する図面(図2)を参照
して詳細に説明する。
【0025】図2において、プラスチックからなる基板
21の表面に色素からなる記録層22が形成されてい
る。基板21には、プリグルーブ23が形成されてい
る。記録層22は色素を塗布によって形成されたもので
ある。プリグルーブ23のプリグルーブ底部25の記録
層22の光学的膜厚(nr ・t2 )(但し、nr は記録
層の屈折率であり、t2 はプリグルーブ底部25の記録
層22の膜厚である)と、基板21のランド部24の記
録層22の光学的膜厚(nr ・t1 )(但し、nrは記
録層の屈折率であり、t1 はランド部24の記録層22
の膜厚である)との差は、通常は大きくなっているが
(この場合スリービーム法によるトラッキングが好まし
い)、ここではほぼ等しい。すなわち、この差はλ/8
以下と小さくなっており、好ましくはλ/16以下とな
るように形成されている。その結果、記録層22の反射
層と接触する表面における溝形状の深さはプリグルーブ
23の深さd1 と同じかまたは光学的膜厚でλ/8以下
ほど小さくなっており、記録層22のグルーブ部とラン
ド部との位相差が記録層の屈折率によらずほぼ一定とな
る。従って、短波長のレーザーを用いても大きいトラッ
キングサーボ信号が得られると考えられる。
【0026】上記プッシュプル信号を与えるプッシュプ
ルトラッキング法は、図3に示すように行なわれる。図
3において、1a、1b、1cはそれぞれ記録層に形成
されたピットを表わす。2a、2b、2cはレーザービ
ームを上記ピットに照射することにより形成したスポッ
トを表わす。3a、3b、3cは、ピットでの反射光に
より検出器表面に形成された明部分で、4a、4b、4
cは、ピットでの反射光により検出器表面に形成された
暗部分である。スポット部分の反射強度は、トラック方
向の左右が反対になって検出器の表面に到達する。トラ
ッキング信号は、検出板の左右の反射光強度の差として
検出される。従って、図3の(b)は、検出板の左右の
反射光強度の差が0であり、図3の(a)は、スポット
位置がピットの右側に位置しており、検出板の右の反射
光強度が強く、その差が検出される。図3の(c)は、
スポット位置がピットの左側に位置しており、検出板の
左の反射光強度が強く、その差が検出される。すなわ
ち、図3の(c)検出される差は図3の(a)の差とは
正負の符号が反対となる。従って、上記光学的膜厚の差
がλ/8以下の色素記録層を用いることにより、レーザ
ーの波長によらずグルーブ部とランド部との境目で左右
の光量差が大きく、トラッキングサーボ信号が大きいも
のとなることから、プッシュプル信号が得られ易く、ト
ラッキング制御が容易になると考えられる。
【0027】本発明の光情報記録方法に用いられる情報
記録媒体は、たとえば以下に述べるような方法により製
造することができる。
【0028】円盤状基板は、従来の情報記録媒体の基板
として用いられている各種の材料から任意に選択するこ
とができる。基板材料として、例えばガラス;ポリカー
ボネート;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹
脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニ
ル系樹脂;エポキシ樹脂;アモルファスポリオレフィン
およびポリエステルなどを挙げることができ、所望によ
り併用してもよい。なお、これらの材料はフィルム状と
してまたは剛性のある基板として使うことができる。上
記材料の中で、耐湿性、寸法安定性および価格などの点
からポリカーボネートが好ましい。
【0029】情報記録媒体の記録層が設けられる側の基
板表面には、平面性の改善、接着力の向上、感度の向上
および記録層の変質の防止の目的で、中間層が設けられ
る。中間層の材料としてはたとえば、ポリメチルメタク
リレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレ
ン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、
N−メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトル
エン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロ
セルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、
ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共
重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、クシ型グラフ
ト重合体等の高分子物質;および色素、銀アセチリド化
合物、シランカップリング剤などの有機物質を挙げるこ
とができる。
【0030】中間層は、たとえば上記物質を適当な溶剤
に溶解または分散して塗布液を調製したのち、この塗布
液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョ
ンコートなどの塗布法により基板表面に塗布することに
より形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.
005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜
10μmの範囲である。
【0031】上記円盤状基板上には、アドレス信号等の
情報あるいは音楽情報等を表わすトラッキング用のプリ
グルーブが形成されている。また、所望によりプリピッ
トが形成されていても良い。上記ポリカーボネートなど
の樹脂材料を使用する場合は、樹脂材料を射出成形ある
いは押出成形などにより直接基板上にピットおよびグル
ーブが設けられることが好ましい。
【0032】またグルーブ等の形成を、プリグルーブ層
を設けることにより行なってもよい。プレグルーブ層の
材料としては、アクリル酸のモノエステル、ジエステ
ル、トリエステルおよびテトラエステルのうちの少なく
とも一種のモノマー(またはオリゴマー)と光重合開始
剤との混合物を用いることができる。プレグルーブ層の
形成は、まず精密に作られた母型(スタンパー)上に上
記のアクリル酸エステルおよび重合開始剤からなる混合
液を塗布し、さらにこの塗布液層上に基板を載せたの
ち、基板または母型を介して紫外線の照射により液層を
硬化させて基板と液相とを固着させる。次いで、基板を
母型から剥離することによりプレグルーブ層の設けられ
た基板が得られる。プリグルーブ層の層厚は一般に0.
05〜100μmの範囲にあり、好ましくは0.1〜5
0μmの範囲である。プリグルーブの形状は、深さが2
0nm〜200nmが好ましく、特に30〜170nm
が好ましい。半値幅は、0.2〜1.2μmが好まし
く、特に0.6〜1.0μmが好ましい。
【0033】円盤状基板の上には、色素からなる記録層
が設けられる。
【0034】本発明に使用される色素は、例えば、イン
ドレニン系色素、イミダゾキノキサリン系色素、インド
リジン系色素などのシアニン系色素、フタロシアニン系
色素、ナフタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、
ピリリウム系・チオピリリウム系色素、アズレニウム系
色素、スクワリリウム系色素、Ni,Crなどの金属錯
塩系色素、ナフトキノン系・アントラキノン系色素、イ
ンドフェノール系色素、インドアニリン系色素、トリフ
ェニルメタン系色素、トリアリルメタン系色素、メロシ
アン系色素、オキソノール系色素、アミニウム系・ジイ
ンモニウム系色素およびニトロソ化合物を挙げることが
できる。
【0035】色素層の形成は、上記色素、さらに所望に
より結合剤、金属錯塩系色素またはアミニウム系・ジイ
ンモニウム系色素(クエンチャー)を溶剤に溶解して塗
布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して
塗膜を形成したのち乾燥することにより行なうことがで
きる。
【0036】上記色素塗布液調製用の溶剤としては、酢
酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエ
ステル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチ
ルイソブチルケトンなどのケトン、ジクロルメタン、テ
トラクロロエタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホ
ルムなどのハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン、
エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル、エタノー
ル、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノ
ールなどのアルコール、ジメチルホルムアミドなどのア
ミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの
セロソルブ、2、2、3、3−テトラフロロプロパノー
ル等フッ素系溶剤などを挙げることができる。なお、こ
れらの非炭化水素系有機溶剤は、50容量%以内である
限り、脂肪族炭化水素溶剤、脂環族炭化水素溶剤、芳香
族炭化水素溶剤などの炭化水素系溶媒を含んでいてもよ
い。
【0037】塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収
剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を目的に応じて添
加してもよい。
【0038】結合剤を使用する場合に結合剤としては、
例えばゼラチン、ニトロセルロース、酢酸セルロース等
のセルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなど
の天然有機高分子物質;およびポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素
系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩
化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、
ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のア
クリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリオレフ
ィン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フ
ェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初
期縮合物などの合成有機高分子物質を挙げることができ
る。
【0039】塗布方法としては、スプレー法、スピンコ
ート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート
法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げる
ことができる。
【0040】本発明の基板の外周側で色素記録層の層厚
を薄くする塗布方法としては、例えば、色素塗布液をス
ピンコート法により回転数100〜200rpm の速度で
5秒間塗布した後、1秒間に30〜80rpmづつ18
00〜2500rpmまで速度を上昇させ、1800〜
2500rpmで10〜60秒間保持することにより乾
燥させて色素記録層を形成する。すなわち、主として最
終回転数をある程度大きな値にまで上げることが必要と
される。
【0041】色素層の材料として結合剤を併用する場合
に、結合剤に対する色素の比率は一般に0.01〜99
%(重量比)の範囲にあり、好ましくは1.0〜95%
(重量比)の範囲にある。
【0042】上記色素層は単層でも重層でもよいが、そ
の層厚は一般に10〜550nmの範囲にあり、好まし
くは20〜300nmの範囲にある。
【0043】色素記録層上には反射層が設けられること
が好ましい。反射層の材料である光反射性物質はレーザ
ー光に対する反射率が高い物質であり、その例としては
Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、
Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、R
u、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Z
n、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、P
b、Po、Sn、Biなどの金属および半金属を挙げる
ことができる。これらのうちで好ましいものはAl、A
u、CrおよびNiである。これらの物質は単独で用い
てもよいし、あるいは二種以上の組合せでまたは合金と
して用いてもよい。
【0044】反射層は、たとえば上記光反射性物質を蒸
着、スパッタリングまたはイオンプレーティングするこ
とにより基板の上に形成することができる。反射層の層
厚は一般には10〜300nmの範囲にある。
【0045】また、色素記録層と反射層との間にはエン
ハンス層を設けてもよい。その材料としては、クシ型グ
ラフト重合体(例、マクロマー(東亜合成化学工業
(株)製))、銀アセチリドなどを挙げることができ
る。金属記録層上にこのようなエンハンス層を設けても
よいのは勿論である。
【0046】反射層の上には、記録層などを物理的およ
び化学的に保護する目的で保護層が設けられることが好
ましい。この保護層は、基板の記録層が設けられていな
い側にも耐傷性、耐湿性を高める目的で設けられてもよ
い。
【0047】保護層に用いられる材料の例としてはSi
O、SiO2 、MgF2 、SnO2、Si34 等の無
機物質;熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂
等の有機物質を挙げることができる。
【0048】保護層は、たとえばプラスチックの押出加
工で得られたフィルムを接着層を介して記録層(反射
層)上および/または基板上にラミネートすることによ
り形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタ
リング、塗布等の方法により設けられてもよい。また、
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当
な溶剤に溶解して塗布液を調製したのち、この塗布液を
塗布し、乾燥することによっても形成することができ
る。UV硬化性樹脂の場合には、そのままもしくは適当
な溶剤に溶解して塗布液を調製したのちこの塗布液を塗
布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成
することができる。これらの塗布液中には、更に帯電防
止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に
応じて添加してもよい。記録層上に直接保護層形成材料
を塗布する場合は、該記録層を保護層の塗布液の溶解作
用から守るため記録層上にポリブタジエンなどを塗布
(その際溶剤としては記録層を溶解しない溶剤を用い
る)することにより中間層を設けることが好ましい。中
間層は、金属等の薄膜を蒸着により設けてもよい。保護
層の層厚は一般には0.1〜100μmの範囲にある。
【0049】さらに、色素記録層上に保護層を形成する
の代わりに、記録層上にプラスチックのフィルムを基板
の内周及び外周にて融着して設けることにより記録層を
保護してもよい。
【0050】本発明において、情報記録媒体は上述した
構成からなる単板であってもよいが、あるいは更に上記
構成を有する二枚の基板を記録層が内側となるように向
い合わせ、接着剤等を用いて接合することにより、貼合
せタイプの記録媒体を製造することもできる。あるいは
また、二枚の円盤状基板のうちの少なくとも一方に上記
構成を有する基板を用いて、リング状内側スペーサとリ
ング状外側スペーサとを介して接合することにより、エ
アーサンドイッチタイプの記録媒体を製造することもで
きる。
【0051】本発明に用いられる情報記録媒体は上記の
ような方法で製造することができる。
【0052】情報の記録方法は上記に述べた通りである
が、再生は、例えば次のように行なわれる。
【0053】上記のように記録された情報の再生は、情
報記録媒体を定線速度(CDフォーマットの場合は再生
時の速度である1.2〜1.4m/秒)で回転させなが
ら半導体レーザー光を基板側から照射して、その反射光
を検出することにより行なうことができる。レーザーの
発振波長は、770〜850nmが一般的である。再生
パワーは一般に0.05〜1mWである。
【0054】
【実施例】以下に、本発明の実施例および比較例を記載
する。ただし、これらの各例は本発明を制限するもので
はない。
【0055】[サンプル1]円盤状のポリカーボネート
基板(外径:120mm、内径:15mm、厚さ:1.
2mm、屈折率:1.58、プリグルーブ:トラックピ
ッチが1.6μm、プリグルーブの半値幅が0.45μ
m、深さが40nmそして直径が44〜117mm領
域)を光ディスクの基板として用意した。
【0056】下記の色素A:色素A
【化1】
【0057】3.25gと 下記の色素B:色素B
【0058】
【化2】
【0059】0.325gとを2,2,3,3−テトラ
フロロ−1−プロパノール75ml、エチルセルソルブ
20mlおよびテトラクロロエタン5mlからなる混合
溶剤に、超音波1時間の付与により溶解して色素記録層
塗布液を調製した。
【0060】上記円盤状のポリカーボネート基板の内周
側から、上記塗布液をスピンコート法により回転数20
0rpm の速度で5秒間塗布した後、1秒間に50rpm
づつ2000rpmまで速度を上昇させ、2000rp
mで30秒間保持することにより乾燥させ、プリグルー
ブ底部の層厚が125nm、プリグルーブ間部(ランド
部)の層厚が120nmの色素記録層を形成した。ま
た、得られた色素記録層の780nmの光に対するn
(屈折率)とk(消衰係数)は、それぞれn=2.9、
k=0.05であった。これは色素記録層の反射率と透
過率を測定し、これらの膜厚依存性を考慮した理論式に
回帰して求めた。
【0061】上記色素記録層上に、AuをDCスパッタ
リング(Ar圧力:2Pa、電力:200W)して膜厚
が100nmの反射層を基板の直径118mmまで形成
した。
【0062】さらに、反射層上に、紫外線硬化性樹脂
(商品名:3070、スリーボンド(株)製)をスピン
コート法により回転数200rpm の速度で塗布した後回
転数1500rpmで30秒間レベレングさせ、次いで
紫外線(高圧水銀灯200W/cm)を10秒照射する
ことにより硬化させ、層厚2μm(外周端面の層厚2〜
10μm)の保護層を形成した。
【0063】このようにして、基板、色素記録層、反射
層および保護層からなる情報記録媒体を製造した。な
お、上記基板のプリグルーブの半値幅および深さ、色素
記録層の層厚は、その断面を超高解像度SEM(走査型
電子顕微鏡)で測定して得られたものである。プリグル
ーブ底部の層厚とプリグルーブ間部(ランド部)の光学
的膜厚との差が5×2.9=14.5(nm)でλ/1
6以下である(λ:680nm)。
【0064】[サンプル2]実施例1において、プリグ
ル−ブの深さを45nmから90nmの変えたポリカー
ボネート基板を用い、色素塗布液として混合溶剤を2,
2,3,3−テトラフロロ−1−プロパノール100m
lに変え、そして色素AおよびBの量をそれぞれ2.6
5gと0.265gに変えたものを用いてプリグルーブ
底部の層厚が140nm、プリグルーブ間部(ランド
部)の層厚が100nmの色素記録層を基板上に形成し
た以外は実施例1と同様にして情報記録媒体を製造し
た。プリグルーブ底部の光学的膜厚とプリグルーブ間部
(ランド部)の光学的膜厚との差が40×2.9=11
6(nm)でλ/8以上である(λ:680nm)。
【0065】[実施例1]サンプル1で得られた情報記
録媒体に下記の条件にて情報を記録した。記録再生評価
装置として、光ディスク評価機DDU1000(パルス
テック(株)製)を用いて記録を行なった。すなわち、
発振波長が680nmおよびNAが0.5の光ヘッドを
用いて、パワー7mW、線速度4.2m/秒で、EFM
信号を変調クロック25.92MHzにて、プッシュプ
ル法のトラッキングにより記録した。
【0066】[参考例1] サンプル2で得られた情報記録媒体にスリービーム法の
トラッキングを用いた以外は実施例と同条件にて情報を
記録した。
【0067】[比較例1]サンプル2で得られた情報記
録媒体に下記の条件にて情報を記録した。記録再生評価
装置として、光ディスク評価機DDU1000(パルス
テック(株)製)を用いて記録を行なった。すなわち、
発振波長が780nmおよびNAが0.5の光ヘッドを
用いて、記録パワー7mW、線速度1.4m/秒で、E
FM信号を変調クロック8.64MHzにてプッシュプ
ル法のトラッキングにより記録した。
【0068】[比較例2]サンプル2で得られた情報記
録媒体に下記の条件にて情報を記録した。記録再生評価
装置として、光ディスク評価機DDU1000(パルス
テック(株)製)を用いて記録および再生を行なった。
記録時には発振波長が780nmおよびNAが0.5の
光ヘッドを用いて、記録パワー15mW、線速度4.2
m/秒で、EFM信号を変調クロック25.92MHz
にてプッシュプル法のトラッキングにより記録した。
【0069】[記録済情報記録媒体の評価] 1)記録感度 上記記録パワーは、再生信号のアシンメトリーが約−1
0%を示す時の値である。一般に、EFM信号を記録し
た場合、最も長い信号である11Tの再生信号と最も短
い3Tの再生信号の振幅の中心がずれる。その程度をア
シンメトリーといい、下記の式より求めることができ
る。 アシンメトリー={(C−B)/A}×100(%) 但し、Aは11Tの振幅電圧、Bは11Tの振幅の中心
電圧、そしてCは3Tの振幅の中心電圧を表わす。
【0070】2)記録時間 上記記録感度で各媒体に、再生時間が60分のCDを記
録するのに要した時間を測定した。
【0071】3)トラッキング性(記録時) 記録されていないプリグルーブ部分を記録に使用したレ
ーザー(実施例1および2は680nm、比較例1およ
び2は780nm)と同じ波長で、NAが0.5の光ヘ
ッドを用いて、再生パワー0.5mWで、線速度1.4
m/秒にて、スリービーム法およびプッシュプル法によ
りトラッキングして再生し、記録時のトラッキング性を
評価した。その際スリービーム法およびプッシュプル法
によりトラッキング性を下記のように評価した。 AA:トラッキング良好 CC:トラッキング不可
【0072】4)光吸収率(S) 各記録時のレーザーの発振波長における、情報記録媒体
の反射率(R)を測定し下記の式より求めた。 S=100−R(%) 上記測定結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】上記結果より明らかなように、本発明の記
録層の光吸収率が70%以上の波長領域に発振波長を有
するレーザーを用いて速い線速度で記録を行なった(実
施例1および2)記録された情報は、通常の線速度での
再生が可能であった。すなわち、記録時間の短縮が可能
であった。また、プリグルーブの底部と間部との光学的
膜厚の差が殆どない媒体を用いた実施例1は、プッシュ
プルによるトラッキングが可能であった。記録に再生用
と同じ波長のレーザーを用いた比較例1では、記録時間
の短縮は出来ず、記録パワーを大きくした比較例2は記
録時間の短縮はできるが、パワーの大きいレーザーを使
用しなければならないとの不利がある。また、これらは
短波長のレーザーを使用していないので、プッシュプル
によるトラッキングが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の光情報記録方法の一例を示す
断面図である。
【図2】図2は、本発明に用いられる情報記録媒体の色
素記録層の光学的膜厚を説明するための一例を示す断面
図である。
【図3】図3は、プッシュプルトラッキング法を説明す
るための一例の平面図である。
【符号の説明】
11 円盤状基板 12 色素記録層 13 反射層 14 保護層 15 プリグルーブ 16 レーザー

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面にプリグルーブが設けられた円盤状
    基板の上に色素からなる記録層および反射層がこの順に
    設けられ、プリグルーブの底部における色素記録層の光
    学膜厚とプリグルーブのランド部における色素記録層の
    光学膜厚との差が情報記録に用いるレーザー光の発振波
    長の1/8以下である情報記録媒体を、記録した情報を
    再生する際の線速度より速い線速度で回転させながら、
    該色素記録層の光吸収率が70%以上を示す波長領域に
    発振波長を有するレーザーを基板側より、プッシュプ
    ル法によりトラッキングしながら、該プリグルーブ底部
    に照射して情報を記録することからなる光情報記録方
    法。
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