JP2743177B2 - 百日咳菌の培養方法、及び百日咳トキソイドとその混合ワクチン - Google Patents

百日咳菌の培養方法、及び百日咳トキソイドとその混合ワクチン

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、百日咳菌の培養方法並びに百日咳トキソイ
ドとその製法に関するものであり、また、百日咳トキソ
イドを有効成分の一部として含有する種々の複数の抗原
からなる混合ワクチンとこれ等の製法に寄与するもので
ある。更にまた、百日咳の診断剤として有用な百日咳毒
素及び百日咳菌繊維状赤血球凝集素を提供するものであ
る。
従来の技術とその問題点 百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)による
感染が原因となって生じる急性の呼吸器系伝染病であ
る。この感染症では、気管支及び小気管支が侵され俗
に,100日続くといわれる特有の咳が伴う激しい咳の発作
が数週間にわたり反復持続する。特に乳幼児の場合は、
無呼吸発作の咳が生じ、痙攣を伴う事があり、重症にな
り易い。そのため、我が国では1949年以来、生後早期に
ワクチン接種が実施されてきた。従来の百日咳ワクチン
は、死菌体を有効成分として含有するものであり、種々
の副作用が報告されている。例えば、ワクチン接種部位
における居所諸反応、発熱、不機嫌、嘔吐、下痢等の全
身症状、発熱に伴われた神経系の一過生の痙攣やショッ
ク、更には重篤な脳症等が知られている。従って、現在
では生活条件の向上並びに化学療法の発展と共に百日咳
の罹患率や死亡率が著しく低下したため、この感染症の
恐ろしさよりもワクチン接種によるこれらの副作用の方
が問題になっている。しかし、斯かる副作用を理由とし
て予防接種を中止することは、極めて危険である。この
ことは、予防接種の中断が百日咳の自然流行の引き金に
なり、日本及び英国において多数の小児患者が死亡した
過去の苦い経験から明らかである。換言すれば、百日咳
ワクチンの重要性と必要性は、約20年前と同様に現在及
び将来においても変わらないと考えられる。
(1)百日咳菌の感染防御抗原、生物活性物質又は菌体
成分として現在までに報告されている主なものは、次の
通りである:易熱性毒素又は皮膚壊死毒素;易熱性凝集
原;内毒素又はリポ他糖類;繊維状赤血球凝集素(F−
HA:filamentous hemagglutinin);ヒスタミン増感因子
(HSF:histamin sensitizing factor);白血球又はリ
ンパ球増多因子(LPF:leukocytosis又はlymphocytosis
promoting factor);百日咳毒素(PT:pertussis toxin
又はLPF−HA:lymphocytosis promoting factor hemaggl
utininともいう);アジュバント活性因子;アデニル酸
サイクラーゼ;インスリン分泌活性増強因子;外膜蛋白
質等。以上のうち、現在までに、百日咳トキソイドない
しは百日咳コンポーネントワクチンの有効成分としてす
でに実用化されているものには、繊維状赤血球凝集素
(以下「F−HA」という)及び百日咳毒素(以下「PT」
という)がある。
(2)前述の通り、従来のワクチンは不活化された全菌
体を有効成分として含有しているため、種々の副作用が
知られている。従って、斯かる副作用を有しない安全か
つ有効そして均質なワクチンの登場が、全世界で待望さ
れている(Journal of American Medical Association,
125(2),51−252,1984;Bulletin of the World Healt
h Organization,63(2),241−248,1985)。既に我が
国では、百日咳菌に由来の感染防御抗原画分(F−HA及
びPT)を無毒化し、これを有効成分として用いる百日咳
トキソイド(「沈降精製百日せきワクチン」)が厚生省
により認可され、1981年秋から市販され使用されてい
る。その製造技術に関し、例えば、特公昭57−5203、特
開昭57−50925、特開昭58−67182、特開昭58−67188、
特開昭58−222032、特開昭59−175439、特開昭59−1812
22、特開昭59−18413、特開昭60−98988、特開昭60−21
8326、特開昭60−226822、特公昭60−28277、特開昭60
−237023特開昭61−53224、特開昭61−76422、特開62−
5922米国特許第4029766号、米国特許第4551429号等が知
られている。その外、百日咳菌由来の物質を有効成分と
して用いるコンポーネントワクチンに関し、細胞壁を用
いる技術(特公昭56−47167)、インスリン分泌活性増
強因子を用いる技術(特開昭59−110626)、外膜蛋白質
を用いる技術(ヨーロッパ特開第4137号、ヨーロッパ特
開第80021号)アデニル酸サイクラーゼ活性画分を用い
る技術(特開昭60−246321)、内毒素を使用する技術
(フランス特開第2536429号)等が開発されている。し
かしながら、これら公知の技術は夫々、高価な材料を要
するため生産コストが高い;ワクチンの有効成分の生産
収率が低い;ワクチンの安全性、有効性、均質性又は安
定性に関し不十分である等の欠点を一項目以上有してい
る。例えば、PT及びF−HAの増産を図るため、百日咳菌
の基本培地にシクロデキストリン等の包接化合物を添加
する技術(特開昭58−67182、特開昭58−67188、特開昭
59−175439、特開昭59−181222、特開昭59−184132、特
公昭60−28277)では、シクロデキストリンそのものが
高価である上に、産生されるPT及びF−HAが培養液中で
シクロデキストリンに包接された状態で存在するため、
これ等をその培養液から高純度に精製することが困難で
ある。換言すれば、斯かる技術は、高価な材料と精製装
置、及び繁雑な製造工程を要するため、経済的ではな
く、ワクチンの安全性と均質性の保証を目的とする高純
度のPT及びF−HAの確保が難しい。また、上記と同様の
目的でポリビニールアルコールを培地に添加する技術
(米国特許4551429号)が知られてはいるけれども、高
度精製や品質についての記載がないので、これ等に関す
る疑問が生じる。
(3)衆知の通り、1979年にWHO(世界保健機構)は、
免疫拡大計画(EPI)に着手し、目下実施中である。こ
の計画では、百日咳、破傷風、ジフテリア、結核、ポリ
オ、及び麻疹の合計6種類のワクチンを1990年までに世
界の全ての子供達に提供することを目標としている(WH
O Chronicle,36(4),131−152,1982)。そのため、WH
Oは、冷蔵庫の備えのない熱帯地域においても使用に耐
える高度に安定な耐熱性ワクチンの実用化を勧告してい
る(WHO technical Report Series,No.673,15,1982)。
更に、寒冷地域において凍結しても力価の低下しないワ
クチンもまた極めて有用である。即ち、熱帯地域及び寒
冷地域を問わず、外気温の状態で世界のどこにおいても
使用できる耐熱性と耐寒性とを兼備した極めて安定なワ
クチンの開発が、世界中で期待されている。例えば、耐
熱性ワクチンについては、生ウイルスワクチン、不活性
ウイルスワクチン、不活化菌体とトキソイドとの混合か
らなる細菌混合ワクチン(特開昭59−196821)等の凍結
乾燥ワクチンが知られてはいる。しかし、これ等はいず
れも37℃、約1ヵ月の保存において、その力価の低下が
保存当初の力価の50〜10%に留まるに過ぎない程度の耐
熱性である。以上の理由により、概ね、−20℃から50℃
の範囲の温度で数ヵ月間保存しても、ほとんど力価の低
下しない著しく安定な耐熱性かつ耐寒性ワクチンが大い
に望まれている。
更に、無毒化後の毒性の安定度の観点から、現在市販
され使用されている百日咳トキソイドは、保存中にトキ
サイドから臭素への復帰(reversion)を起こすため、
その安全性に関し重大な難点がある。これを解消するた
め、ホルマリンに代わる無毒化剤としてカルボジイミド
を適用する技術(特開昭62−5922)が公知ではあるが、
未だカルボジイミドの安全性について疑問の余地が残さ
れている。
以上の欠点並びに観点を全て解消することは、全世界
から待望されており、当業者にとっては急務の課題であ
る。
問題点を解決するための手段 本発明者等は、前述の従来技術の課題を克服するた
め、鋭意研究を行った結果、従来のものに比べ優れて安
全、有効、均質かつ耐熱性と耐寒性と兼備した安定な百
日咳トキソイドとその混合ワクチンを得ると共に、百日
咳菌に由来の高純度のPT及びF−HAを極めて低コストで
高収率に製造する方法を達成した。驚くべきことに、百
日咳菌の培養をセルロース及び/又はセルロース誘導体
の存在下で行うと、PAとF−HAが大量に低コストで得ら
れ、しかも培養物からのPTとF−HAの精製が容易である
ことを発見した。また、斯かるPTとF−HAをホルマリン
で無毒化して得られる百日咳トキソイドは、保存中にト
キサイドから臭素への復帰(reversion)を生じないこ
とを見出した。更にまた、上記百日咳トキソイドを有効
成分として含有するワクチン、及び百日咳トキソイドと
これとは別種の抗原の混合ワクチンにゼラチン及び/又
はゼラチン誘導体を含有させることにより、斯かるワク
チンの熱に対する安全性が著しく向上することを見出し
た。その上に、これ等のワクチンを凍結乾燥することに
より、液状ワクチンに比べ、熱に対する安定性が優れて
向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基
づき完成した。
即ち、本発明によれば、以下の第(1)項から第
(8)項に記載の培養方法、百日咳毒素及び百日咳繊維
状赤血球凝集素、百日咳トキソイド、百日咳ワクチン及
び各種混合ワクチン、並びにこれらワクチンの製造方法
が提供される: (1)メチルセルロースを0.01−2.0重量%含有し、シ
クロデキストリンを含有しない百日咳菌培養培地中で百
日咳菌を30−37℃にて20−80時間培養することにより、
該百日咳菌から略等量の百日咳毒素及び百日咳繊維状赤
血球凝集素を産生させることを特徴とする百日咳菌の培
養方法; (2)メチルセルロースを0.01−2.0重量%含有し、シ
クロデキストリンを含有しない百日咳菌培養培地中で百
日咳菌を30−37℃にて20−80時間培養した培養上清より
精製された略等量の百日咳毒素及び百日咳繊維状赤血球
凝集素; (3)請求項(2)に記載の略当量の百日咳毒素及び百
日咳繊維状赤血球凝集素を無毒化することにより調製さ
れた百日咳トキソイド; (4)請求項(3)に記載の百日咳トキソイドを、免疫
を奏する量含有する百日咳ワクチン; (5)安定化剤として、0.1−8.0重量%蔗糖、0.1−8.0
重量%アルギニン及び0.1−5.0重量%ヘマセルを含有す
る請求項(4)の百日咳ワクチン; (6)請求項(3)に記載の百日咳トキソイド及び該ト
キソイド以外の少なくとも1種以上のトキソイドをそれ
ぞれ、免疫を奏する量、含有する混合ワクチン; (7)安定化剤として、0.1−8.0重量%蔗糖、0.1−8.0
重量%アルギニン及び0.1−5.0重量%ヘマセルを含有す
る請求項(6)の混合ワクチン; (8)メチルセルロースを0.01−2.0重量%含有し、シ
クロデキストリンを含有しない百日咳菌培養培地中で百
日咳菌を30−37℃にて20−80時間培養することにより、
該百日咳菌から略等量の百日咳臭素及び百日咳繊維状赤
血球凝集素を産生させ、これら略等量の百日咳臭素及び
百日咳繊維状赤血球凝集素を精製し、精製した略等量の
百日咳臭素及び百日咳繊維状赤血球凝集素を無毒化する
ことにより百日咳トキソイドを精製し、この百日咳トキ
ソイドを有効成分とするワクチンを製造することを特徴
とする百日咳ワクチン又は混合ワクチンの製造方法。
本発明の構成は、次の通り出ある: (1)百日咳菌の培養:百日咳菌の培養に用いられてい
る公知の基本培地、例えば、ボルデー・ジャング(Bord
et−Gengou)培地、コーエン・ウィラー(Cohen−Wheel
er)培地、ステナー・ショルテ(Stainer−Sholte)培
地等の固形培地又は液体培地を用いることができるが、
本発明の方法では、基本培地として特に、ステナー・シ
ョルテ培地(Journal of General Microiology,63,211
−220,1971)の使用が望ましい。そして、本発明の培養
方法では、斯かる基本培地に対し最終濃度が約0.01〜約
2.0W/W%になうようメチルセルロースを添加混合して調
製した変法培地を使用する。尚、斯かる変法培地は、メ
チルセルロースを添加する以外に、必要に応じて基本培
地の組成の1もしくは複数の成分を適宜に変更したもの
を使用することもできる。但し、本発明で使用する変法
培地は、シクロデキストリンを含有しないことを必須の
条件とする。培養法としては、固形培地を用いる場合に
は静置培養を、液体培地の場合には静置培養、回転培養
又はタンク培養を採用することができる。培養条件は、
約30〜約37℃で、約20〜約80時間行うこととする。
以上のとおりの培養によって、百日咳菌は、後述の実
施例1に示すようにPT及びP−HAを略等量ずつ産生す
る。このようにPT及びF−HAが略等量(後述する実施例
9に記載の公知方法により測定した重量比としてほぼ1:
1)ずつ産生されることは、本発明の重要な特徴であ
る。
(2)PT及びF−HAの回収と精製:上記(1)による百
日咳菌の培養物中に産生されるPT及びF−HAは、先ず、
培養物を培養上清と菌体とに分離し、次いで培養上清を
精製することにより得ることができる。斯かる菌体の分
離と培養上清の精製は従来の公知の方法、例えば、低速
遠心分離、高速遠心分離、超遠心分離、塩析や有機溶媒
等を用いる沈澱法、炭末や各種ゲル等の吸着剤への吸脱
着法、透析、過、限外過等、汎用されている常套手
段を組合わせて行うことができる。尚、上記の技術は、
高価で繁雑な電気泳動法やアフィニティー・カラムクロ
マトグラフィー等を用いる必要がないので、従来の方法
に比べ、極めて低廉かつ効率的である。その具体例につ
いては、後述の実施例において開示する。
(3)ワクチン原液の調整:上記(2)で精製されたPT
及びF−HA画分にホルマリン等の不活化剤を添加混合す
る等、通常の公知の方法による無毒化を行い、次いで、
透析によりホルマリンを除去した後、得られる百日咳キ
ソイドの蛋白窒素濃度が約40〜約60μg/mlになるようリ
ン酸緩衝液等で希釈し、ワクチン原液とする。
(4)ワクチンの作製:上記(3)で得たワクチン原液
を、例えば、M/75酸緩衝液にて希釈した後、アジュバン
ト、例えば、水酸化アルミゲルを最終濃度が約0.1〜約
0.8mg/mlなるように添加混合し、斯かるゲルにワクチン
抗原を吸着結合させる。尚、本発明ではアジュバントと
して上記のゲル以外に、抗原徐放性の沈降性アジュバン
ト、例えばリン酸カルシウムゲル、リン酸アルミニウム
ゲル、硫酸アルミニウム、アルミナ、ベントナイトナ
等、更に、抗体産生誘起性のアジュバント、例えば、ム
ラミルペプチド誘導体、ポリヌクレオチド、クレスチ
ン、ピシバニール等、公知のものを任意に使用できる。
次いで、これをアンプルやバイアル瓶等の小容器に分注
し密封することにより、予防接種による獲得免疫に基づ
く感染防止機能の付与に必要な量、即ち、免疫を奏する
量の百日咳トキソイドを含有する沈降精製百日せきワク
チン(沈降百日咳トキソイド)が得られる。尚ワクチン
の適格性については、厚生省告示第159号「生物学的製
剤基準」に規定の「沈降精製百日せきワクチン」に準拠
して各種試験を行い、その結果に基づいて判定する。斯
かる沈降ワクチンないしはアジュバントワクチンに、耐
熱性と耐寒性とを装備させるには、分注の後、凍結乾燥
を行い乾燥ワクチンにすることができる。尚、ワクチン
中のトキサイドに安定性を与えるために、安定化剤を添
加することができる。安定化剤を添加したワクチンはそ
のまゝ小容器に分注し製品化してもよいし、凍結乾燥す
ることもできる。しかしながら、保存下の安定性の観点
からは、凍結乾燥した方が好ましい。凍結乾燥する場合
は、上述の分注前のアジュバント添加済のワクチン液に
更に安定化剤を添加混合した後、これをアンプルやバイ
アル瓶等の小容器に分注して行う。凍結乾燥終了の後、
窒素を充填し、次いで密封して、乾燥沈降百日咳トキソ
イドないしは乾燥アジュバント百日咳トキソイドを得
る。斯かるトキサイドの適格性につていは、前述と同様
に厚生省告示第159号の基準に準拠して判定する。尚、
本発明によれば、定化剤として、糖類とアミノ酸類、例
えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッ
カロース、ラクトース、グリシン、アラニン、リジンア
ルギニン、グルタミン等から1種類以上を選択し組合わ
せて、各々の最終濃度が約0.1〜約0.8%w/wになるよう
添加混合することができる。また、本発明で用いる糖類
とアミノ酸は上記にのみ限定される分けではなく、公知
のものが使用可能である。但し、斯かる糖類とアミノ酸
の添加混合は、必ずしも必要でなく、省略することも可
能である、しかしながら、安定化剤として、ゼラチン及
びゼラチン誘導体から選ばれた少なくとも1種の物質を
添加することにより、本発明の百日咳トキソイド含有ワ
クチンの耐熱性と耐寒性が著しく向上し、従来のワクチ
ンと比較して、安定性に極めて優れたものを得ることが
できる。該ゼラチン及びゼラチン誘導体から選ばれた物
質は、ワクチン原液に最終濃度が約0.1〜約5.0w/w%に
なるよう添加混合することができる。尚、本発明で用い
ることのできるゼラチン誘導体とは、精製ゼラチンとそ
の加水分解物並びにこれらの化学的誘導体である。本発
明で用いることのできるゼラチン誘導体として、例え
ば、日本薬局方に規定の精製ゼラチンや市販の商品名、
ゲリセート(Gelysete:BBL社製)、更に、商品名、フィ
ジオゲル(Physiogel)、ネオプラズマゲル(Neoplasma
gel)、ゲリファンドール(Gelifundol)、及びヘマセ
ル(Haemaccel)[ヘキスト(Hoechst)社製][Develo
pments in Biological Standardization,第48巻,207−2
34ページ(S,Karger,1981)]が挙げられる。本発明で
は、これ等公知の種々のゼラチン及びゼラチン誘導体の
使用が可能ではあるが、特に、これらのうち、血液代用
剤ないしは代用血漿として人体への注射により適用さ
れ、その安全性が確認されている市販の商品名ヘマセル
[別名ポリゲリン(Polygeline)]の使用が好ましい。
(5)混合ワクチンの作製:本発明のワクチンは本発明
による百日咳トキソイドを含有し、かつ該百日咳トキソ
イド以外のワクチン用抗原を少なくとも1種含有する混
合ワクチンとすることができる。斯かる混合ワクチン被
接種者に於ける各抗原による副反応が相加的又は相乗的
に生じず、かつ各々の抗原の抗原性と免疫原性が夫々、
抗原相互間の緩衝により損なわれない限り、いかなる種
類のワクチン用抗原でも混合することができる。混合す
る抗原の種類の数には、上記の混合条件が満たされる限
り制限はないが、通常2〜6種のものが混合される。例
えば百日咳トキソイド以外の抗原として、ジフテリア
菌、破傷風菌、腸チフス菌、パラチフス菌、コレラ菌、
淋菌、髄膜炎菌、緑膿菌、大腸菌、ヘモフィルス・イン
フルエンザ菌、ストレプトコッカスA群及びB群、スト
レプトコッカス・ニューモニア、肺炎球菌、レジオネラ
菌、発しんチフス菌、ロッキー山紅斑熱菌、レプトスピ
ラ、ワイル病病原体、マラリア、コクシジオイデス・イ
ミティス、往血吸虫、トキソプラズマ、トリパノソー
マ、リーシュマニア、、B型肝炎ウイルス、日本脳炎ウ
イルス、インフルエンザA及びB型ウイルス、パライン
フルエンザウイルス、エイズウイルス、はぶ毒等の夫々
に由来のワクチン用の無毒化ないしは不活性各抗原およ
び合成各抗原が挙げられる。
以下にジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドとの
混合ワクチンを例に挙げて説明する。ジフテリア菌及び
破傷風菌の各培養液から公知の常法により夫々、ジフテ
リアトキソイド及び破傷風トキソイドを分画、精製した
後、上記(3)と同様に無毒化を行い各々のワクチン原
液を調製する。百日咳トキソイドについては、上記
(3)で得たものを用いる。これ等のワクチン原液から
2種又は3種の原液を組合わせて混合した後、上記
(4)と同様にして、沈降型の混合ワクチン又は沈降型
の乾燥混合ワクチンを作製する。斯かる混合ワクチンの
適格性については、厚生省告示第159号「生物学的製剤
基準」に規定の「沈降精製百日せきジフテリア破傷風混
合ワクチン」に準拠して各種試験を行い、判定する。
尚、本発明に係る混合ワクチンは、上記ワクチンに限定
される分けではなく、百日咳トキソイドと、一種類以上
のこれとは別種の細菌やウイルス等に由来のワクチン用
抗原並びに合成抗原とを組合わせて混合し作製できるも
のである。
本発明のワクチンは、通常、バイアル瓶又はアンプル
等の容器中で密封された状態で、液状の沈降ないしはア
ジュバントワクチン、又は固形の乾燥ワクチンの形態に
より提供できる。液状ワクチンの場合にはそのまゝ使用
し、乾燥ワクチンの場合には滅菌蒸溜水等で溶解し乾燥
前の体積にまで戻して使用する。また、斯かるワクチン
は通常、被接種者当り0.5mlずつ皮下に接種する。
また、本発明のPT及びF−HAは診断剤として、バイア
ル瓶又は小型試験管内で密封されるか、若しくは常用さ
れている紙、膜又はマイクロプレートの表面に吸着さ
せた状態で提供できる。斯かる診断剤は、各種の抗原抗
体反応測定の常套手段に従って使用できる。
以下、本発明の具体例につき実験例及び実施例を挙げ
て説明する。但し、本発明は、以下の実験例及び実施例
にのみ限定されるものではない。
実験例1 ステナー・ショルテ(Stainer−scholte)変法培地の
調製:培地10当りの組成を次の通りとする適量の蒸溜
水で溶解後、基礎組成の部分は高圧加熱滅菌し、補液は
過滅菌する。使用時に両者を混合して最終濃度10当
り下記の組成に成るよう蒸溜水を加えて調製する。
基礎:塩化ナトリウム 25.0 g リン酸二水素ナトリウム 5.0 g 塩化マグネシウム六水塩 1.0 g 塩化カルシウム二水塩 0.2 g 硫酸銅五水塩 0.005 g カザミノ酸 100.0 g L−プロリン 2.4 g グルタミン酸ソーダ 100.0 g トリス 15.3 g 補液:L−シスチン 0.4 g 硫酸鉄七水塩 0.1 g アルコルピン酸 0.2 g ナイアシン 0.04 g 実験例2 ポープ(Pope)改良培地の調製;次の組成からなり、
高圧加熱滅菌して用いる。
塩化カルシウム 0.6 g リン酸−水素ナトリウム 1.0 g L−シスチン 0.15g マルトース 31.0 g 溶液II 4.0 ml 牛肉消化液 1000.0 ml (注)溶液IIの組成: 硫酸マグネシウム 2.25 g 硫酸銅 0.5 g 塩化マンガン 0.15 g 硫酸亜鉛 0.4 g β−アラニン 1.15 g ニコチン酸 1.15 g ピメリン酸 0.075g 塩酸 30.0 ml 蒸溜水 1000.0ml 牛肉消化液:蒸溜水17に牛肉ミンチ5.1kgを添加の
後、1晩浸出させ、次いで、恒温槽で60℃に保ちパパイ
ン[メルク社製(卵白水解能1:350)]6.2gを添加混合
し、2時間消化する。次に、90〜95℃で10分加熱し、
過助剤セライトを添加の後、紙過し、その液を牛
肉消化液とする。
実験例3 P II改良培地の調製:次ぎの組成からなり、高圧加熱
滅菌して用いる。
ハートエキス 15.0 g ポリペプトン 20.0 g 塩化ナトリウム 5.0 g 硫酸マグシウム 0.2 g リン酸一水素ナトリウム 0.16g リン酸二水素ナトリウム 0.1 g ブドウ糖 7.5 g 還元鉄 0.25g 蒸溜水 1000.0 ml (注)ハートエキス:(株)日本製薬社製 ポリペプトン:(株)大五栄養化学社製 実験例4 リン酸塩緩衝液の調製:所望の濃度のリン酸一水素ナ
トリウム水溶液と同濃度のリン酸二水素カリウム溶液を
所望のpHになるような量比で混合して調製する。
実験例5 リン酸塩緩衝塩化ナトリウム液(PBS)の調製:塩化
ナトリウム6.8g/溶液を基礎液としこれにリン酸一水
素ナトリウムとリン酸二水素カリウムとを溶解して調製
する。
実験例6 菌数の測定:比濁法による。比色計(Coleman社製,Ju
nior II型)で、標準菌液と検体の各濁度を比較測定し
算出する。単位はIOU/ml(IOU:International Opacity
Unit)。
実験例7 F−HA価の測定:生理的食塩水を用いて生後3日のニ
ワトリ雛の固定赤血球0.6v/v%を調製する。検体を2倍
階段希釈した後、その各々に等量の固定赤血球を添加混
合し赤血球凝集反応を起こすさせる。HA価は、完全に赤
血球凝集を起こした検体の最高希釈倍数の逆数で表示す
る。固定赤血球の希釈には0.1w/v%ウシ血清アルブミ
ン、0.001w/v%ゼラチン及び0.1w/v窒化ナトリウム加M/
75PBSを用い、検体の希釈には0.2w/v%ウシ血清アルブ
ミン加M/75PBSを用いる。単位は、HAU。
実験例8 PT価の測定:ヒト・ハプトグロビン(ミドリ十字社
製)を2μg/mlになるよう炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.
6)で溶解し、これをポリスチレン製のマイクロプレー
ト(Greiner社製)上で、4℃一昼夜保ち、該プレート
上にハプトグロビンを吸着させて固相化する。斯かる固
相化プレート、抗−PTウサギ血清及びアルカリフォスフ
ァターゼ結合抗ウサギIgGを用いて、検体のPT価を公知
のELISA法により測定する。尚、各検体のPT価は、ELISA
用オートリーダー(Dinatech社製)により自動読取りを
行った後、コンピューターにより算出する。単位は、EL
ISA U/ml。
実験例9 F−HAとPTの重量比の測定:(A)活性価と蛋白量が
既知の純度約100%の各F−HAとPTの標準品を用いて、
F−HAとPTの活性価を夫々、ELISAで測定し重量比を算
出する。(B)酸性条件下でポリアクリルアミドゲル電
気泳動を行う。泳動後のゲルをクマジーのブリリアント
ブルーで染色し、泳動像を表出させ、これをデンシトメ
ーターで読取る。読取画像に於けるF−HAとPT各バンド
の面積から重量比を算出する。上記(A)と(B)の両
算出値に基づき判定する。
実験例10 内毒素の量の測定:カブトガニの血球抽出物(LAL)
を用いたリムルステスト・ワコー(和光純薬工業KK製)
のキットを使用する。
実験例11 毒性復帰の否定試験:厚生省告示第159号「生物学的
製剤基準」の「沈降精製百日せきワクチン」に規定のマ
ウス白血球増加試験、及びヒスタミン増感試験に準拠し
て行う。
実験例12 ジフテリア及び破傷風両トキソイド価の測定:標準抗
毒素を用いるフロキュレーション テストに基づき測定
する。単位は、Lf/ml。
実験例13 ワクチンの力価試験:(A)百日咳ワクチン−マウス
脳内攻撃法により測定する。(B)ジフテリアトキソイ
ド−家免皮内法により測定する。(C)破傷風トキソイ
ド−免疫モルモット及び免疫マウスに対する毒素攻撃法
により測定する。各力価試験の詳細な手技については、
厚生省告示第159号「生物学的製剤基準」に於ける「精
製沈降百日せきワクチン」、「沈降ジフテリアトキソイ
ド」及び「沈降破傷風トキソイド」の力価試験の規定に
準拠して行う。単位は、IU/ml(International Uni
t)。
実施例1 百日咳菌I相菌東浜株(国立予防衛生研究所から分
与)の培養:容量200の醗酵槽へ実験例1に記載のス
テナー・ショルテ変法培地147を入れ、120℃、30分
間、高圧滅菌した後、冷却する斯かる培地に滅菌済の補
液1500ml並びに10w/w%メチルセルロース水溶液を1500m
l添加混合し、液体培地を調製する。次いで、これに百
日咳菌I相菌東浜株を最終濃度が0.5 IOU/mlになるよう
接種した後35℃で48時間、通気撹拌培養を行う。尚、培
養条件として、撹拌羽根の回転数が220rpm、槽底のスパ
ージャーからの送気量が50/分になるよう設定する。
以上の培養をメチルセルロースの添加混合量を種々変え
て行う。各々の培養開始後、24時間毎に50mlずつ培養液
のサンプリングを行い、各検体の菌数、HA価、及びPT価
を実施例6、7及び8に従って測定する。その結果を第
1表に示す。この表から明らかな通り、メチルセルロー
スの添加により、HA及びPTの生産量が無添加の場合に比
べ約1〜2オーダー増加している。尚、生産されるF−
HAとPTの重量比F−HA:PTは、実験例9に記載の測定の
結果、ほヾ1:1であった。
実施例2 HAとPTの精製:実施例1で得た培養菌液を連続遠心機
(Sherples AS−16型)により、室温で回転数13,500rp
m、流量800ml/分にて遠心して菌体を除去し、培養上清
を採集する。この培養上清10に対し、硫酸アンモニウ
ムを4kg加え塩析を行う。次に、これを遠心分離し、沈
渣を回収する。回収した沈渣を、1M塩化ナトリウム加0.
05Mリン酸緩衝液に溶かし。次いで、これを、蔗糖濃度
勾配5〜15w/w%に設定したゾーナル遠心機により33,00
0rpm,20時間、遠心分離する。遠心終了後、蔗糖濃度の
低い方から順に30分画し、これ等のうち第14〜22画分を
採取し、精製百日咳抗原の画分として、爾後の工程に供
する。尚、実験例8、9及び11の記載に従って測定した
結果、出発材料の培養液でのF−HA、PT及び内毒素の各
測定値を100%とすると、ゾーナル遠心後のF−HAとPT
の回収率は夫々、60%と57%であり、一方、内毒素の残
存率は0.001%(除去率は99.999%)であった。
実施例3 百日咳トキソイド(以下「P」という)原液の調製:
実施例2で得た精製百日咳抗原画分をM/20リン酸緩衝液
で希釈し、蛋白窒素濃度が50.0μg/mlになるよう調製す
る。次いで、これに最終濃度が、ホルマリン0.4v/v%、
L−リジン0.05モルになるよう添加混合した後、35℃で
20日間、保温し無毒化を行う。次いで、M/20リン酸緩衝
液を外液とし、4℃で24時間、透析しホルマリン及びL
−リジンを除去した後、P原液とする。
実施例4 液状沈降百日咳トキソイドの作製:実施例3で得たP
原液をM/40リン酸緩衝液(pH6.0)で希釈し最終蛋白窒
素濃度が10μg/mlになるよう調製する。これにリン酸ア
ルミニウムゲルを0.2mgAl/mlとなるよう添加混合し、4
℃で5時間、撹拌し百日咳抗原をゲルに吸着させる。次
いで、回転数が2,000rpm、4℃で20分間、遠心分離(国
産遠心機)し、ゲルの層を回収する。回収ゲルをM/75リ
ン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁させ、これに最終濃度が蔗
糖3w/V%、L−アルギニン1w/V%、及びヘマセル(ヘキ
スト社製)2w/v%なるよう夫々、この順に添加混合した
後、これを10ml用のバイアル瓶に10mlずつ小分・分注
し、液状沈降百日咳トキソイドとする。以上の操作をヘ
マセルの添加濃度を種々変えて行う。尚、小分・分注後
の各ワクチンの一部をサンプリングし、後述の実施例10
の保存試験に供する。斯かるトキソイドは、厚生省告示
第159号「生物学的製剤基準」に規定の「沈降精製百日
咳トキソイド」の条項に準拠して各種試験検定を行こと
により、ワクチンとしての適確性が確認された。
実施例5 乾燥沈降百日咳トキソイドの作製:実施例4で得た回
収ゲルをM/75リン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁させ。次い
で、最終濃度が、蔗糖3m/V%、L−アルギニン1m/V%、
及びヘマセル2w/v%を夫々、この順に添加混合した後、
最終容量が吸着前の体積の1/5になるよう調製する。こ
れを10ml用のバイアル瓶に2.0mlずつ小分・分注して凍
結乾燥する。以上の操作をヘマセルの添加濃度を種々変
えて行う。尚、小分・分注後の各ワクチンの一部をサン
プリングし、凍結乾燥することなく後述の実施例10の保
存試験に供する。得られた乾燥トキソイドは、滅菌蒸溜
水で10mlになるよう溶解した後、厚生省告示第159号
「生物学製剤基準」に規定の「沈降精製百日咳トキソイ
ド」の条項に準拠して各種試験・検定を行い、ワクチン
としての適確性が確認された。
実施例6 ジフテリアトキソイド(以下「D」という)の調製・
容量200の醗酵槽中の実施例2に記載のポープ(Pop
e)改良培値150にジフテリア菌パーク・ウィリアムズ
No.8株を接種した後、35℃で48時間、通気撹拌培養す
る。培養条件として、撹拌羽根の回転数を200rpm、送気
量を700ml/分に設定する。培養後、培養菌液を、室温で
回転数9,160rpm、流量3/分にて連続遠心分離(West
falia CSA8型)により徐菌し、上清を採集する。この上
清1に過助剤としてセライト3gを添加混合した後、
紙過を行う。次いで、液を限外過膜(旭化成製
モジュールSIP3013、分画分子量6,000)で濃縮し、その
体積を1/20量にする。該濃縮液につき、活性炭末0.5w/v
%を添加し、その遠心上清を採取して飽和硫安60v/v%
添加混合による塩析及びDEAEカラムクロマトグラフィー
による分画の順に精製処理を行う。以下、実施例3と同
様にして無毒化を行いD原液を調製する。
実施例7 破傷風トキソイドは(以下「T」という)]の調製:
容量200の醗酵槽中の実施例3に記載のP−II改良培
地150に破傷風菌ハーバード株を接種した後、35℃で
4日間、槽底のスパージャーからの窒素ガス送気量5
/分にて嫌気培養を行う。培養菌液1に過助剤とし
てセライト3gを添加混合し、紙過をおこなう。採集
した液にホルマリンを最終濃度が0.4v/v%になるよう
に添加混合し、35℃で14日間、保温し無毒化を行う。無
毒化を終了後、実施例6と同様に精製処理をし、T原液
を得る。
実施例8 沈降精製DPT混合ワクチンの作製:実施例36及び7で
夫々得たP、D及びT各原液の抗原量を、Pでは蛋白窒
素量で30μg/ml、Dでは90Lf/ml、Tでは21 Lf/mlにな
るようM/20PBSで希釈調整する。次いで、各抗原を実施
例4と同様にしてリン酸アルミニウムゲルに吸着させた
後、等容量ずつ混合する。次いで、実施例5の記載に従
って蔗糖2w/w%、L−アルギニン1w/w%及びヘマセル1w
/w%を添加混合する。このDPT三種混合液を10ml用のバ
イアル瓶に10mlずつ小分・分注し、沈降精製DPT混合ワ
クチンとする。該ワクチンは、厚生省告示第159号「生
物学的製剤基準」に規定の「沈降精製百日咳ジフテリア
破傷風混合ワクチン」の条項に準拠して各種試験検定を
行い、ワクチンとしての適確性が確認された。
実施例9 乾燥沈降精製DPT混合ワクチンの作製:実施例5と同
様にして、D、P及びTの各々につき吸着前の体積の1/
5に調整した後、等量混合する。次いで、実施例5の記
載に従って蔗糖2w/w%、L−アルギニン1w/w%及びヘマ
セル1w/w%を添加混合する。これを10ml用のバイアル瓶
に2.0mlずつ小分・分注し、凍結乾燥を行い乾燥沈降精
製DPT混合ワクチンを得る。該ワクチンは、厚生省告示
第159号「生物学的製剤基準」に規定の「沈降精製百日
咳ジフテリア破傷風混合ワクチン」の条項に準拠して各
種試験検定を行い、ワクチンとしての適確性が確認され
た。
実施例10 保存試験:実施例4、5、8及び9で作製した各ワク
チンを夫々、−20、4、25、37及び50℃の各温度下で36
ヶ月間保存し、この間にサンプリングし、各検体につき
夫々、実験例14の記録に従って、力価を測定する。ま
た、保存中に於ける毒性の復帰を追跡するため、上記の
各検体につき、実験例12の記載に従って毒性復帰の否定
試験を実施する。更にまた、液状沈降ワクチンについて
凍結融解に於ける各ワクチンの安定性を確認するため、
−20℃での凍結と室温での融解とを10回交互に行った
後、実施例13に記載に従って斯かる各検体の力価を測定
する凍結融解試験を併せて行う。
(イ)実施例4と5で作製したワクチンに関する結果を
第2表と第3表に示す。安定剤としてヘマセルを添加し
た本発明のワクチンは極めて安定でありかつ、保存中に
毒性の復帰を生じない。
(1)液状沈降:実施例4で得たワクチン。保存試験開
始時の力価は41.0 IU/ml。
乾燥沈降:実施例5で得たワクチン。保存試験開始時の
力価は41.0 IU/ml。
(2)無添加:安定剤を添加せず。
(−):蔗糖3w/w%及びL−アルギニン1w/w%を添加。
数値:ヘマセルの濃度を示す。例えば、2.0は、蔗糖3w/
w%及びL−アルギニン1w/w%の上に更に添加したヘマ
セルの濃度2w/w%を意味する。
(3)M:保存の月数、例えば、12Mは12ヵ月の保存を意
味する。
数値:力価IU/ml。
(4)毒性なし:保存中に毒性の復帰を生じない。
(1)液状沈降:実施例4で得たワクチン。
乾燥沈降:実施例5で得たワクチン。
無添加:安定剤を添加せず;H;ヘマセル;S:蔗糖;A:L−ア
ルギニン。
(2)保存温度:℃ (3)M:保存の月数を示す。例えば、OMは保存開始時
を、12Mは12ヵ月間の保存を意味する。
数値:力価IU/ml。
(4)なし:保存中に毒性の復帰が生じない。
(ロ)実施例8及び9で作製した三種混合ワクチンにつ
いての実施例13に記載の力価試験の結果を第4表に示
す。安定剤としてヘマセルを添加したワクチンは優れて
安定であり、かつ、本発明のワクチンは保存中に毒性の
復帰を生じない。
(1)液状沈降:実施例8で得たワクチン。保存試験開
始時の力価(IU/ml)は夫々Pが13.5、Dが120、Tが5
0.0。
乾燥沈降:実施例9で得たワクチン。保存試験開始時の
力価(IU/ml)は夫々Pが14.0、Dが125、Tが56.7。
(2)P:百日咳トキソイド;D:ジフテリアトキソイド;T:
破傷風トキソイド。
(3)M:各温度での保存月数を示す。例えば、12Mは12
ヵ月間の保存を意味する。
数値:P、D及びT各々の力価(IU/ml)を表す。
実施例11 ワクチンの安全性、有効性及び均質性:各ワクチンの
安全性と有効性については、実施例4、5、8及び9に
記載の通り、厚生省告示第159号に規定のマウス及びモ
ルモットを用いる安全性試験及び力価試験を行う。ま
た、均質性については、実験例9の記載に従って、F−
HAとPTとの重量比を測定すると共に、デンシトメーター
による読取り画像の単一性と面積に基づき判定する。そ
の結果、実施例1、4、5、8、9及び10の記載から明
らかな通り、本発明ワクチンは、優れた安全性、有効性
並びに均質性を有している。
実施例12 百日咳診断剤の作製:実施例2で得た精製百日咳抗原
画分をpH8.6に調整した後、これをハイドロキシアパタ
イト・カラムクロマトグラフィーにかけ先ず、PTを素通
りさせ回収する。次いで、カラム内に吸着されているF
−HAを、IM NaCl 加M/20リン酸緩衝液にて溶出し、これ
を採取する。得られたF−HA及びPTは、百日咳の抗体価
を測定し、百日咳菌の感染を同定するための高純度の診
断剤として使用に供する。
発明の作用と効果 (1)PT及びF−HAの増産を図るため培地に添加混合す
るセルロース及びセルロース誘導体は入手が容易である
上に低廉であるので、従来技術に比べ生産コストが著し
く低く、極めて経済的である。
(2)培養後の培養液中に産生されるPT:F−HAの比が、
概ね1:1であるため、爾後のワクチン調製工程が省力的
かつ能率的である。
(3)培養後の培養液中でPT及びF−HAと共存するセル
ロース及びセルロース誘導の分離除去が容易であるた
め、高純度のPT並びにF−HAを低い精製コストで効率よ
く得ることができる。
(4)斯かるPT及びF−HAは優れた均質性を有している
ため、常法のホルマリンによる無毒化工程を経て調整さ
れる百日咳トキソイドは、その保存中に毒素への復帰
(reversion)を起こさない。従って、該トキソイド
は、トキソイドして優れて安定かつ安全である。
(5)本発明に係るゼラチン及びゼラチン誘導体から選
ばれる少なくとも1種の物質を安定化剤として含有する
乾燥ワクチンは、−20℃〜37℃の温度範囲の保存下では
3年にわたり、また、50℃の保存下では3ヵ月以上にわ
たり、その力価が全く低下しないので、比類なく安定か
つ有効である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:01) (72)発明者 高延 壮男 香川県観音寺市八幡町2丁目9番41号 財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究 所内 (72)発明者 納 壽一郎 香川県観音寺市八幡町2丁目9番41号 財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究 所内 (72)発明者 高久 慶典 香川県観音寺市八幡町2丁目9番41号 財団法人阪大微生物病研究会観音寺研究 所内 (56)参考文献 特開 昭62−253377(JP,A)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】メチルセルロースを0.01−2.0重量%含有
    し、シクロデキストリンを含有しない百日咳菌培養培地
    中で百日咳菌を30−37℃にて20−80時間培養することに
    より、該百日咳菌から略等量の百日咳毒素及び百日咳繊
    維状赤血球凝集素を産生させることを特徴とする百日咳
    菌の培養方法。
  2. 【請求項2】メチルセルロースを0.01−2.0重量%含有
    し、シクロデキストリンを含有しない百日咳菌培養培地
    中で百日咳菌を30−37℃にて20−80時間培養した培養上
    清から精製された略等量の百日咳毒素及び百日咳繊維状
    赤血球凝集素。
  3. 【請求項3】請求項(2)に記載の略等量の百日咳毒素
    及び百日咳繊維状赤血球凝集素を無毒化することにより
    調製された百日咳トキソイド。
  4. 【請求項4】請求項(3)に記載の百日咳トキソイド
    を、免疫を奏する量含有する百日咳ワクチン。
  5. 【請求項5】安定化剤として、0.1−8.0重量%蔗糖、0.
    1−8.0重量%アルギニン及び0.1−5.0重量%ヘマセルを
    含有する請求項(4)の百日咳ワクチン。
  6. 【請求項6】請求項(3)に記載の百日咳トキソイド及
    び該トキソイド以外の少なくとも1種以上のトキソイド
    をそれぞれ、免疫を奏する量、含有する混合ワクチン。
  7. 【請求項7】安定化剤として、0.1−8.0重量%蔗糖、0.
    1−8.0重量%アルギニン及び0.1−5.0重量%ヘマセルを
    含有する請求項(6)の混合ワクチン。
  8. 【請求項8】メチルセルロースを0.01−2.0重量%含有
    し、シクロデキストリンを含有しないステナー・ショル
    テ変法培地中で百日咳菌を30−37℃にて20−80時間培養
    することにより略等量の百日咳毒素及び百日咳繊維状赤
    血球凝集素を産生させ、これら略等量の百日咳毒素及び
    百日咳繊維状赤血球凝集素を精製し、精製した略等量の
    百日咳毒素及び百日咳繊維状赤血球凝集素を無毒化する
    ことにより百日咳トキソイドを調製し、この百日咳トキ
    ソイドを有効成分とするワクチンを製造することを特徴
    とする百日咳ワクチン又は混合ワクチンの製造方法。
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