JP2742268B2 - シリコーン系樹脂からなる歯科用接着剤 - Google Patents

シリコーン系樹脂からなる歯科用接着剤

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JP2742268B2 JP63194756A JP19475688A JP2742268B2 JP 2742268 B2 JP2742268 B2 JP 2742268B2 JP 63194756 A JP63194756 A JP 63194756A JP 19475688 A JP19475688 A JP 19475688A JP 2742268 B2 JP2742268 B2 JP 2742268B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、特定の構造を有するシリコーン系樹脂から
なるる歯科用接着剤に関するもので、特にシリコーンゴ
ム系裏装剤と義歯床を接着するのに用いられる歯科用に
接着剤に関するものである。
[従来の技術] 有床義歯患者が義歯を使用する場合において、使用者
の老化と共に顎堤の萎縮,顎粘膜の菲薄化が生じ、義歯
床が顎堤に安定して適合することが困難となり、また顎
粘膜が咬合圧に対する緩圧機能を失う結果、咬合時に疼
痛を受けるという問題がある。この様な不都合を防止す
ることを目的として、一般に義歯床の粘膜面に弾性材料
を裏装することが行なわれている。
この様な弾性裏装材としては、従来よりアクリル系樹
脂,ポリオレフィン系樹脂或はフッ素系樹脂を始めとし
て各種裏装材が使用されてきたが、シリコーンゴム系裏
装材もその弾性が極めて優れていることから好ましい裏
装材とされ、特に50℃程度迄の室温で硬化する室温硬化
型シリコーンゴム[以下、RTV(Room Temperature Vulc
anizing)シリコーンゴムと言うことがある]や50〜150
℃程度の低温で硬化する低温硬化型シリコーンゴム[以
下、LTV(Low Temperature Vulcanizing)シリコーンゴ
ムと言うことがある]は取扱いが簡単な為に注目されて
いた。
[発明が解決しようとする課題] しかしながらシリコーン系裏装材は義歯床との接着性
に劣るという欠点があった。これらを接着する為の接着
剤は種々提案されてはきたが、接着性及び耐水性に優
れ、しかも口腔内で長時間使用することのできる接着剤
は未だ開発されていないのが現状である。
[発明の目的] 本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであっ
て、その目的はRTVやLTVシリコーンゴム系裏装材と義歯
床の接着剤として優れた接着性を発揮し、ししかも耐水
性に優れ、口腔内で長時間使用することのできる特定構
造を有するシリコーン系樹脂からなる歯科用接着剤を提
供することにある。
尚、以下本明細書でシリコーンゴムと言う場合はRTV
シリコーンゴム及びLTVシリコーンゴムを指すものとす
る。
〔発明の構成〕
本発明に係る歯科用接着剤とは、室温硬化型又は低温
硬化型の縮合型シリコーンゴム系裏装材と義歯床とを接
着する為の接着剤であって、 前記接着剤は、下記一般式で示される(I)及び(II
I)を繰り返し要素とし、 〔式中、R1及びR7は同一若しくは異なった水素又は低級
アルキル基、R2,R3,R4,及びR8は同一若しくは異なった
低級アルキル基、T1は同一若しくは異なった低級アルキ
レン基を意味する〕 且つこれらの繰り返し要素が任意の繰り返し順序で任意
数結合しているシリコーン系樹脂であることを特徴とす
る。あるいは、室温硬化型又は低温硬化型の付加型シリ
コーンゴム系裏装材と義歯床とを接着する為の接着剤で
あって、 前記接着剤は、下記一般式で示される(II)、(I
I′)及び(III)を繰り返し要素とし、 〔式中、R1及びR7は同一若しくは異なった水素又は低級
アルキル基、R5及びR6は同一若しくは異なった低級アル
キル基又はビニル基、T2は同一若しくは異なった低級ア
ルキレン基をを意味する〕 かつこれらの繰り返し要素が、(II)及び(III)の組
み合せ、或いは(II′)及び(III)の組み合せのいず
れかにおいて夫々任意の繰り返し順序で任意数結合して
いるシリコーン系樹脂であることを特徴とする。
ここで、上述のシリコーン系樹脂の製造方法として
は、次に示す3つの反応手順を包含する。
〔式中、R1,R2,R3,R4,R7,R8,T1及びT2は前と同じ意味。
又原料化合物(I a)及び(III a)の反応分子数は任意
であり、m及びnは任意の繰り返し数であって、このシ
リコーン系樹脂(VII)はこれらの繰り返し要素が任意
順序で任意数連鎖して結合していることを意味する。〕 〔式中、R1,R7,R8,及びT2は前と同じ意味、R9及びR10
同一又は異なった低級アルキル基或いはビニル基、Yは
ハロゲンを意味する。又原料化合物(IV)及び(III
a)の反応分子数は任意であり、、m及びnは任意の繰
り返し数であって、この共重合化合物(V)はこれらの
繰り返し要素が任意順序で任意数連鎖して結合している
ことを意味する。〕 〔式中、R1,R7,R8,R9及びR10,Z及びT2は前と同じ意味。
又原料化合物(IV a)及び(III a)の反応分子数は任
意であり、、m及びnは任意の繰り返し数であって、こ
の共重合化合物(V′)はこれらの繰り返し要素が任意
順序で任意数連鎖して結合していることを意味する。〕 樹脂製義歯床と縮合型シリコーンゴム裏装材の接着剤
としては、上記シリコーン系樹脂(VII)が使用され、
樹脂製義歯床と付加型シリコーンゴム裏装材の接着剤と
しては上記シリコーン系樹脂(VIII)或は(VIII′)が
使用される。
次に上記一般式の定義について説明する。尚本明細書
で使用する“低級”なる用語は炭素数1〜6のものを意
味する。
R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9及びR10で示される低級
アルキル基とは、直鎖若しくは分岐鎖状の飽和脂肪炭化
水素残基であり、その具体例としては例えば、メチル,
エチル,プロピル,イソプロピル,第3級ブチル,ペン
チル,ネオペンチル,第3級ペンチル,ヘキシル等が挙
げられ、更に好ましくは炭素数1〜3個のアルキル基が
挙げられる。
また、T1及びT2で示される低級アルキレン基として
は、エチレン,プロピレン,イソプロピレン,ブチレ
ン,イソブチレン等が例示される。
更にZで示される活性エステルとしては、パラニトロ
フェノキシカルボニル、パラニトロフェニルチオカルボ
ニル、2,4,6−トリクロロフェノキシカルボニル及び
(2,3,4,5−テトラヒドロ−2,5−ジオキソピロール−1
−イル)オキシカルボニル{別名(N)サクシニルイミ
ノオキシカルボニル}等が例示される。
次に歯科用接着剤を構成するシリコーン系樹脂(VI
I),(VIII)及び(VIII′)の製造方法について説明
する。
(a) シリコーン系樹脂(VII)の製造方法 化合物(I a)+化合物(III a)→シリコーン系樹脂
(VII)の反応 化合物(I a)に有機溶媒及び重合開始剤の存在下、化
合物(III a)を反応させる。
ここで使用される有機溶媒としては、トルエン,キシ
レン,ベンゼン,その他この反応の進行に悪影響を与え
ない溶媒が例示される。また重合開始剤としては、過酸
化ベンゾイル(BPO),過酸化アセチル,アゾビスイソ
ブチロニトリル(AIBN)等この反応の進行に悪影響を与
えない重合用触媒が例示される。反応は窒素ガス等の不
活性ガス存在下で行なうのが望ましい。反応温度は特に
限定されないが、通常加温ないし加熱下で行なわれる。
(b) シリコーン系樹脂(VIII)の製造方法 (1) 化合物(IV)+化合物(III a)→共重合
(V)の反応 有機溶媒、重合開始剤の存在下、化合物(IV)に化合
物(III a)を反応させる。この場合に使用される有機
溶媒としては、イソプロパノール,トルエン,キシレン
等この反応の進行に悪影響を与えない溶媒が例示され
る。また重合開始剤としてはAIBN,BPO,過酸化アセチル
等が例示される。反応は窒素ガス等の不活性ガス存在下
で行なうのが好ましい。
反応温度は特に限定されないが、通常加温ないし加熱
下で行なわれる。
(2) 共重合(V)+化合物(VI)→シリコーン系樹
脂(VIII)の反応 有機溶媒及び例えばトリエチルアミン等の脱ハロゲン
化剤存在下で共重合化合物(V)に化合物(VI)を反応
させる。この場合の有機溶媒としてはテトラヒドロフラ
ン(THF),クロロホルム或はジクロロエタン等、この
反応の進行に悪影響を与えない溶媒が例示される。
(c) シリコーン系樹脂(VIII′)の製造方法 (1) 化合物(IV a)+化合物(III a)→共重合
(V′)の反応 有機溶媒、重合開始剤の存在下、化合物(IV a)に化
合物(III a)を反応させる。この場合に使用される有
機溶媒としては、イソプロパノール,トルエン,キシレ
ン等この反応の進行に悪影響を与えない溶媒が例示され
る。また重合開始剤としてはAIBN,BPO,過酸化アセチル
等が例示される。反応は窒素ガス等の不活性ガス存在下
で行なうのが好ましい。
反応温度は特に限定されないが、通常加温ないし加熱
下で行なれる。
(2) 共重合(V′)+化合物(VI a)→シリコーン
系樹脂(VIII′)の反応 有機溶媒及び例えばトリエチルアミン等の脱ハロゲン
化剤存在下で共重合化合物(V′)に化合物(VI a)を
反応させる。この場合の有機溶媒としてはTHF,クロロホ
ルム或はジクロロエタン等、この反応の進行に悪影響を
与えない溶媒が例示される。
以上の様にして得られたシリコーン系樹脂(VII),
(VIII)及び(VIII′)は、例えばトルエン等の有機溶
媒に溶解して濃度を調整して、歯科用接着剤として用い
られる。
次に本発明の前記シリコーン系樹脂(VII),(VII
I)及び(VIII′)を歯科用接着剤として用いる用途に
ついて説明する。歯科用接着剤であるシリコーン系樹脂
は、樹脂製義歯床とシリコーンゴム裏装材を接着するも
のであるが、裏装材に対しては化学的接着を行ない、一
方義歯床に対しては物理的接着を行なう。
(A) シリコーン系樹脂(VII)を用いる場合 裏装材として縮合型シリコーンゴムを用いるものであ
って、下記の様に裏装材は接着剤と縮合反応を行なって
硬化する。尚下記式において(VII a)は前記(VII)の
トリ低級アルキルオキシシラン構造部を示し又(IX)は
縮合型シリコーンゴムの部分構造を示す。
[式中、T1,R2,R3,R4は前と同じ意味、R11,R12,R13,R14
は低級アルキル基を意味する] (B) シリコーン系樹脂(VIII)を用いる場合 裏装材として付加型シリコーンゴムを用いるものであ
って、下記の様に例えば白金系触媒(H2PtCl6等)の存
在下で裏装材は接着剤と付加反応を行なって硬化する。
尚下記式において(VIII a)は前記(VIII)のビニルジ
アルキルシラン構造部を示し、又(X)は付加型シリコ
ーンゴムの部分構造を示す。
[式中、R9及びR10は前と同じ意味、R15,R16,R17,R18
びR19は同一若しくは異なって低級アルキル基を意味す
る] (c) シリコーン系樹脂(VIII′)を用いる場合 裏装材として付加型シリコーンゴムを用いるものであ
って、下記の様に例えば白金系触媒(H2PtCl6等)の存
在下で裏装材は接着剤と付加反応を行なって硬化する。
尚下記式において(VIII a′)は前記(VIII′)のビニ
ルジアルキルシラン構造部を示し、又(X)は付加型シ
リコーンゴムの部分構造を示す。
〔式中、R9及びR10は前と同じ意味、R15,R16,R17,R18
びR19は同一若しくは異なった低級アルキル基を意味す
る〕 以下本発明を実施例によって更に具体的に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
く、前・後記の趣旨に徴して適宜設計変更することは、
本発明の技術的範囲に含まれる。
[実施例] 実施例1 シリコーン系樹脂(VII)(R1,R2,R3,R4,R7及びR8
メチル基、T1はプロピレン基)の合成 γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信
越化学社製、以下γ−MPTSということがある)とアクリ
ル酸エチル(以下EAということがある),トルエン及び
BPOを第1表に示すNo.1〜No.3の配合割合で重合用ガラ
ス封管中に入れて窒素置換後封管し、70℃で40時間加熱
反応させた。反応物から溶媒を減圧留去した後、60℃で
減圧乾燥して共重合生成物(樹脂)を得た。収量及び収
率を第1表右欄に示す。
この様にして得られた共重合生成物の1H−NMRスペク
トルを第4図に示し、同じくIRスペクトルを第5図に示
す。
第4図において、γ−MPTS構造におけるα−炭素上の
−CH3基のプロトンピークは1.2ppm付近に認められる。
またケイ素原子に隣接する−CH2−プロトンのピークは
0.6ppm付近に、≡SiOCH3基のプロトンピークは3.5ppm付
近に、またEAのα炭素上のプロトンピークは2.2ppm付近
にそれぞれ認められる。一方、EAのエトキシ基の−CH3
基のプロトンピークとγ−MPTSユニットのα炭素上の−
CH3基のプロトンピークは1.2ppm付近に認められる。
第5図では、Si−O吸収が1100cm-1に認められ、エス
テルのC=OおよびC−O−C吸収はそれぞれ1740cm-1
および1190cm-1に認められた。これらの結果から重合生
成物はγ−MPTS構造とEA構造を有しているシリコーン系
樹脂(VII)であることが確認された。
次に以上の様にして得られたNo.1〜No.3のシリコーン
系樹脂(VII)を、それぞれ濃度が20重量%となる様に
トルエンに溶解して歯科用接着剤を調製し、接着試験に
供した。
接着試験に際しては、樹脂床に相当するものとしてア
クリル棒(ポリメタクリル酸メチル)を用い、また縮合
型シリコンゴム裏装材としては市販のトシコンレギュラ
ー(三金工業株式会社製)を用いた。
接着試験体の作製は下記の手順で行なった。
直径8mmのアクリル樹脂棒を、長さ3cmに切断し、切断
面を旋盤で平らに仕上げた。各接着剤を用いてそれぞれ
の裏装材を前記樹脂棒断面に接着した。裏装材の厚さは
1mmとした。
これらの試験体を用いて引張り接着試験を行なった。
即ち試験体を6,12,24,48時間、80℃の熱水中に浸漬し、
熱水浸漬後の各試験体の引張強さを測定して接着強さを
求めた。引張強さの測定は、インストロン型万能試験機
(シリコー社製,TOM10000X)を用い、引張速度100mm/分
で、各試料毎に5本の試験体について測定した。
結果を第1図に示す。
第1図から明らかな様に引張り接着強さは全体的に浸
漬後約6時間で急激に下がり、その後は徐々に低下する
傾向にあった。また接着製はγ−MPTSの仕込みモル数が
少ないNo.1及びNo.2の方がNo.3より良かった。印象材に
用いられる通常のシリコーンゴムの重合度は約1000であ
り、No.3のようにγ−MPTSの仕込みモル数が多いと、ポ
リマー中にγ−MPTSユニットが多く存在するので、シリ
コーンゴムとの接着の際に、過剰なトリメトキシシリル
基が未反応のまま残る。そのために親水性が高く、熱水
浸漬によって界面で剥離しやすくなると考えられる。ま
たトリメトキシシリル基が多くなると、その縮合重合に
よって保存性も悪くなる。この為γ−MPTSの仕込みモル
数は20%以下が好ましい。
実施例2 シリコーン系樹脂(VIII)(R1,R7,R8,R9及びR10はメ
チル基、T1はエチレン基)の合成を次の(a)及び
(b)の二段階で行なった。
(a)化合物(IV)(R1はメチル基,T1はエチレン基)
+化合物(III a)(R7及びR8はメチル基)→共重合化
合物(V)(R1,R7及びR8はメチル基,T1はエチレン基)
の反応 メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA),メチル
メタクリレート(MMA),イソプロパノール及びAIBNを
第2表に示す配合割合で重合用ガラス封管中に入れて、
窒素置換後封管し、60℃で3時間加熱反応させた後イソ
プロパノールを留去して反応物をTHFに溶解し、次いで
大量のメタノール中に共重合物を沈殿させて、濾別・乾
燥を行なった。収量及び収率を第2表右欄に示す。
この様にして得られた共重合生成物の1H−NMRスペク
トルを第6図に示し、同じくIRスペクトルを第7図に示
す。第6図において、HEMAにおいて酸素原子に隣接する
−CH2−プロトンのピークは3.9ppm付近に認められる。
また−OH基のプロトンピークは、重クロロホルム中で測
定したNo.4では3.4ppm付近に認められ、DMSO−d6中で測
定したNo.5では、DMSO中の水のピーク3.3ppmとは別の位
置の4.8ppm付近に認められた。3.5ppm付近にはMMAの−O
CH3基のプロトンピークが認められた。
第7図においては、エステルのC=OおよびC−O−
C吸収が1740cm-1および1150cm-1それぞれに認められ、
OH吸収が3550cm-1に認められた。これらの結果から重合
生成物はHEMAユニットとMMAユニットを有していること
が確認された。
(b)共重合化合物(V)+化合物(VI)(Yは塩素原
子)→シリコーン系樹脂(VIII)の反応 共重合化合物(V)とトリエチルアミンをTHFに溶解
し、更にジメチルビニルクロロシラン(以下「DMVCS」
という)を滴下して反応させた後、トリエチルアミンの
塩酸塩を濾別し、溶媒を留去し共重合生成物[シリコー
ン系樹脂(VIII)]を得た。第3表に原料組成,共重合
生成物収量及び収率を示す。
この様にして得られた共重合生成物1H−NMRスペクト
ルを第8図に示し、IRスペクトルを第9図に示す。第8
図では、第6図には存在しなかった0.1ppm付近の≡SiCH
3基のプロトンピークと、6.0ppm付近の≡Si−CH=CH2
のプロトンピークが新たに認められ、HEMAにおける−OH
基のプロトンピークは消失している。また第9図のIRス
ペクトルでは、第7図には見られなかったケイ素原子上
の−CH=CH2基による吸収が1610cm-1に新たに認められ
る。これらの結果よりDMVCSがHEMA/MMA共重合物と反応
してビニル基を有するポリマー、即ちシリコーン系樹脂
(VIII)の生成が確認された。
次に、以上の様にして獲られたシリコーン系樹脂を溶
剤に溶解して接着剤を調製し、義歯床材用樹脂と裏装材
の接着試験に供した。
接着剤の調製方法,義歯床材用樹脂の種類,接着試験
体の作製方法及び試験体の引張り接着試験方法は実施例
1の場合と同様したが、80℃熱水浸漬時間に関しては、
0〜10日間の期間について試験を行なった。
尚シリコーンゴム裏装材としては、市販のトシコン付
加型レギュラー(三金工業株式会社製)を用いた。また
比較の為の接着剤としてトシコン付加型アドヒシーブ
(三金工業株式会社製)を用いる接着試験も行なった。
結果を第2図に示す。第2図から明らかな様に従来例
の市販品接着剤による接着試験体の引張強さは、熱水中
に浸漬後、日を追って低下した。しかし試料のNo.6及び
No.7の接着強さは良好で、特にNo.6の接着強さは浸漬後
10日目でもほとんど低下しなかった。この理由は、シリ
コーンゴム側で接着剤ポリマー中のビニル基が付加型シ
リコーンゴムと反応して結合し、アクリル樹脂側では接
着剤中のMMA構造部分がアクリル樹脂中に浸透して接着
したと考えられる。このように想定した接着状態の模式
図を第3図に示す。第3図において1は接着剤層,2は裏
装材,3は樹脂(義歯床)を表わす。
No.7において、熱水浸漬によって引張り強さが若干低
下したのは、第2表におけるHEMA/MMA共重合物(No.5)
中のHEMAユニットの割合がNo.4に比べて高いので、DMVC
Sとの反応の際に未反応のまま残留するHEMAの水酸基も
多く、親水性が大きいためと考えられる。
付加型シリコーンゴム自体の引張強さは、第10図に示
したように、熱水中浸漬10日間ほぼ一定の値を保ち、付
加型シリコーンゴム自体も水に対して耐久性の高いこと
が確かめられた。
[発明の効果] 本発明の歯科用接着剤は、以上のような構成を有する
シリコーン系樹脂で構成されているので、RTV及びLTVシ
リコーンゴム系裏装材と樹脂製義歯床の接着剤として接
着性を発揮し、しかも耐水性に優れ、口腔内で長時間使
用することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明実施例の縮合型義歯裏装材用接着剤の熱
水浸漬時間と引張り接着強さとの関係を示す図、第2図
は付加型義歯裏装材用接着剤の本発明実施例及び従来例
の熱水浸漬日数と引張り接着強さとの関係を示す図、第
3図は本発明の付加型接着剤を用いて義歯床と裏装材を
接着した場合における接着機構の模式図、第4図は本発
明実施例におけるNMRスペクトル図、第5図は同IRスペ
クトル図、第6図は本発明のシリコーン系樹脂を製造す
る工程における中間生成物のNMRスペクトル図、第7図
は同IRスペクトル図、第8図は本発明の他の実施例にお
けるNMRスペクトル図、第9図は同IRスペクトル図、第1
0図は本発明の実施に使用した付加型シリコーンゴム裏
装材の引張試験結果を示す図である。 1……接着剤層 2……付加型シリコーンゴム裏装材 3……ポリメタクリル酸メチル

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】室温硬化型又は低温硬化型の縮合型シリコ
    ーンゴム系裏装材と義歯床とを接着する為の接着剤であ
    って、 前記接着剤は、下記一般式で示される(I)及び(II
    I)を繰り返し要素とし、 〔式中、R1及びR7は同一若しくは異なった水素又は低級
    アルキル基、R2,R3,R4,及びR8は同一若しくは異なった
    低級アルキル基、T1は同一若しくは異なった低級アルキ
    レン基を意味する〕 且つこれらの繰り返し要素が任意の繰り返し順序で任意
    数結合しているシリコーン系樹脂であることを特徴とす
    る歯科用接着剤。
  2. 【請求項2】室温硬化型又は低温硬化型の付加型シリコ
    ーンゴム系裏装材と義歯床とを接着する為の接着剤であ
    って、 前記接着剤は、下記一般式で示される(II)、(II′)
    及び(III)を繰り返し要素とし、 〔式中、R1及びR7は同一若しくは異なった水素又は低級
    アルキル基、R5及びR6は同一若しくは異なった低級アル
    キル基又はビニル基、T2は同一若しくは異なった低級ア
    ルキレン基をを意味する〕 かつこれらの繰り返し要素が、(II)及び(III)の組
    み合せ、或いは(II′)及び(III)の組み合せのいず
    れかにおいて夫々任意の繰り返し順序で任意数結合して
    いるシリコーン系樹脂であることを特徴とする歯科用接
    着剤。
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