JP2735652B2 - 巡回型雑音抑圧装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は、信号遅延に用いるディジタル画像メモリ
を、必要最小限に小容量化できるようにした巡回型雑音
抑圧装置に関する。

［従来の技術］ 現在の画像信号に過去の画像信号を巡回加算し、相関
差に応じて画像信号に含まれる雑音を抑圧する巡回型雑
音抑圧装置は、ノイズリデューサと呼ばれ、テレビジョ
ン受像機やビデオテープレコーダ等において、かなりの
雑音抑圧効果を挙げている。この種の巡回型雑音抑圧装
置は、画像信号に含まれる信号成分が巡回加算により振
幅和でもって加算されるのに対し、雑音成分の方は電力
和で加算されることを利用して雑音を抑圧しており、い
わば時間軸方向の低域フィルタの一種であると考えられ
る。

一般に、テレビジョン信号のような画像信号は、ライ
ン周期やフィールド周期或はフレーム周期でもって時系
列上の信号相関を示す性質がある。このため、画像信号
を時系列上で信号相関を示す単位周期だけ遅延し、遅延
により得られる過去の画像信号に係数を乗じて現在の画
像信号に巡回加算するわけであるが、そのさいに画像信
号の遅延手段として、ラインメモリやフィールドメモリ
或はフレームメモリといった各種画像メモリが用いら
れ、雑音の抑圧に利用される相関の種別に応じて、例え
ばライン相関型巡回型雑音抑圧装置などと呼ばれる。

第６図に示す従来の巡回型雑音抑圧装置１は、雑音抑
圧にフィールド相関の有無を利用するいわゆるフィール
ド相関型であり、雑音抑圧の対象となる入力画像信号Si
（ｔ）を、まず巡回加算に必要な２個の減算器2,3に、
ともに被減算入力として供給する。一方、雑音抑圧処理
を受けた直後の出力映像信号So（ｔ）は、フィールドメ
モリ等の画像メモリ４にて一定期間τ（この場合１フィ
ールド期間）だけ遅延され、一方の減算器２にて入力映
像信号Si（ｔ）から減算される。この場合、減算器２の
減算出力Si（ｔ）−So（ｔ−τ）は、現在の画像信号と
１フィールド期間だけ前の画像信号の差分、すなわち画
像の動きを示す信号と雑音との和となる。こうして減算
器２にて得られた差信号Si（ｔ）−So（ｔ−τ）は、減
算器２に接続した係数器５において、０〜１の係数Ｋを
乗ぜられ、もう一方の減算器３の減算入力とされる。こ
の結果、減算器３における減算により、現在の画像信号
Si（ｔ）から差信号Si（ｔ）−So（ｔ−τ）のＫ倍が差
し引かれ、出力画像信号So（ｔ）が得られる。すなわ
ち、 So（ｔ）＝Si（ｔ）−Ｋ［Si（ｔ）−So（ｔ−τ）］ である。

この式は、 So（ｔ）＝（１−Ｋ）Si（ｔ）＋KSo（ｔ−τ） のごとき書き改めることができ、巡回型雑音抑圧装置１
が、現在の画像信号Si（ｔ）と過去の画像信号So（ｔ−
τ）とに、それぞれ係数比１−ＫとＫの重み付けを施し
て巡回加算していることが理解される。また、画像信号
に含まれる信号成分の抑圧度を１とした場合に、雑音成
分は、１−K/1＋Ｋの1/2乗に抑圧される。このため、係
数Ｋを１に近付けるほど相関をとる対象となるフィール
ド数が増え、それだけ雑音抑圧度を高めることができ
る。しかし、動きの速い画像については、非相関信号ど
うしが加算されることで残像が目立ってしまうといった
問題もあり、係数器５の入力に振幅制限を施すことで、
残像の発生を抑圧するようにした例も報告されている。

［発明が解決しようとする課題］ 上記従来の巡回型雑音抑圧装置１は、通常その前後に
AD変換器とDA変換器を配し、輝度信号或は色信号等をデ
ィジタル画像データとして巡回型雑音抑圧にかける場合
が多く、その場合、量子化ビット数の選択は、単に量子
化ノイズ抑圧といった観点からだけではなく、随時書き
込み読み出しメモリなどの画像メモリ４のメモリ容量選
定にも重大な影響を及ぼす。ちなみに、テレビジョン信
号のダイナミックレンジを160IREとした場合、信号対量
子化ノイズの比S/Nは、量子化ビット数ｎを用いて S/N≒6.7＋6n で表されることから、量子化ビット数ｎを6,7,8と変え
ることで、S/Nは43,49,55dBのごとく変化する。このこ
とから、ディジタル画像データを取り扱う場合、量子化
ビット数ｎは、最低でも６ビット以上必要であると言わ
れている。

一方、画像メモリ４の記憶容量の点から量子化ビット
数ｎを考察すると、AD変換器のサンプリング周波数を色
副搬送周波数fscの４倍とし、フィールド巡回型の雑音
抑圧を行うとした場合、画像メモリ４に１フィールド分
の画像データを記憶させるのに必要な記憶容量Ｍは、 Ｍ＋4nfsc/60 であり、量子化ビット数ｎに比例した記憶容量が要求さ
れることが分かる。そこで、量子化ノイズに対するマー
ジンを確保するため、量子化ビット数ｎを仮に８ビット
とした場合、画像メモリ４に要求される記憶容量Ｍは、
約1.9Mビットである。言うまでもなく、画像メモリ４の
購入コストは、そのメモリ容量Ｍにほぼ比例しており、
画像メモリ４だけで巡回型雑音抑圧装置１全体の製造コ
ストの1/2〜1/3を占める現状では、量子化ビット数ｎを
下げることが装置全体の製造コスト切り下げの決め手で
あるといっても過言ではない。しかし、前述したごと
く、量子化ビット数ｎを下げることは、とりも直さず量
子化ノイズの顕在化を意味し、画質確保とコスト削減と
いった相反する要求にどう応えるかが、今後の課題とし
て問われていた。

［課題を解決するための手段］ この発明は、上記課題を解決したものであり、画像信
号をディジタル画像メモリにより時系列上で信号相関を
示す単位周期だけ遅延し、得られた過去の画像信号を現
在の画像信号から減算して得られる差信号に、１以下の
係数を乗じて前記現在の画像信号から減算することによ
り、信号成分に比べて信号相関の乏しい雑音成分を抑圧
する巡回型雑音抑圧装置であって、前記差信号の形成に
供される現在の画像信号と前記ディジタル画像メモリに
より単位周期遅延される直前の画像信号とにそれぞれ作
用し、低域に集中する信号成分を除去し、前記ディジタ
ル画像メモリの容量負担を軽減するメモリ容量節約手段
を具備したことを特徴とするものである。

［作用］ この発明は、ディジタル画像メモリにより遅延された
画像信号との差信号の形成にえ供される現在の画像信号
と前記ディジタル画像メモリにより単位周期遅延される
直前の画像信号とに、それぞれメモリ容量節約手段を作
用させ、低域に集中する信号成分を除去することによ
り、ディジタル画像メモリの容量負担を軽減し、小容量
化による製造コストの低減を図る。

［実施例］ 以下、この発明の実施例について、第１図ないし第５
図を参照して説明する。第１図は、この発明の巡回型雑
音抑圧装置の一実施例を示す回路構成図、第２図は、第
１図に示した帯域濾波回路の濾波特性を示す図である。

第１図に示す巡回型雑音抑圧装置11は、差信号Si
（ｔ）−So（ｔ−τ）を生成する減算器２に入力画像信
号Si（ｔ）を供給する信号線路と、ディジタル画像メモ
リ４に出力映像信号So（ｔ）を供給する信号線路とに、
それぞれ帯域濾波回路12,13を設け、各信号線路途中で
画像信号のエネルギが集中する低域成分の通過を阻止す
る構成としてある。すなわち、画像信号に含まれる雑音
成分は、一般に高域ほど多く含まれるため、低域成分を
巡回対象から外しても、雑音抑圧効果にはさしたる影響
は生じない。このため、例えば輝度信号の場合、第２図
に示したように、１〜2MHzを濾波帯域とする帯域濾波回
路12,13を用いることで、輝度信号の低域成分を巡回対
象から外してしまうことができる。この場合、ダイナミ
ックレンジが圧縮された分だけ、量子化ビット数ｎを削
減しても実害は少なく、ここでは量子化ビット数の削減
をむしろ積極的に評価し、ディジタル画像メモリ14のメ
モリ容量を削減に結び付けることで、製造コストの削減
を図ることができる。

例えば、量子化ビット数ｎとして６ビットを採用した
場合、８ビット量子化を採用した場合と比べて、ディジ
タル画像メモリ14のメモリ容量が3/4程度に縮小され、
同時にまた巡回型雑音抑圧装置11の製造コストも相応の
削減が可能である。

なお、上記実施例において、メモリ容量節約手段とし
て用いた帯域濾波回路12,13は、例えば第３図に示す巡
回型雑音抑圧装置21のごとく、帯域濾波回路12（13）と
振幅制限回路22（23）の直列接続回路に代えることもで
きる。この場合、第４図（Ａ）〜（Ｃ）に示したよう
に、振幅制限回路22,23が、帯域濾波回路12,13の濾波出
力に残留する大振幅の信号成分を除去してくれるので、
前段の達域濾波回路12,13が周波数軸上で行った信号成
分排除を、振幅制限回路22,23においてさらに徹底する
ことができ、これによりディジタル画像メモリ14に必要
最小限のメモリ容量を与えることができる。そして、メ
モリ容量を最大限有効活用することで、雑音抑圧に関係
しない無駄な投資を排除し、ディジタル画像メモリ14に
関連する製造コストをより一層効率良く削減することが
できる。

また、第５図に示す巡回型雑音抑圧装置31のごとく、
振幅制限回路22,23の各振幅制限動作を示すハイレベル
の動作信号を、排他的論理和をとるエクスクルーシブオ
アゲート回路32に供給し、このエクスクルーシブオアゲ
ート回路32の出力をもって係数器５の係数Ｋを小に切り
替える構成としてもよい。この場合、画像に動きがある
と、振幅制限回路22,23のいずれか一方だけが動作する
ため、このときだけエクスクルーシブオアゲート回路32
の排他的論理和出力がハイレベルをとる。従って、残像
発生の虞れがあるときに、エクスクルーシブオアゲート
回路32のハイレベルの出力をもって係数Ｋを小さな値に
切り替え、残像の発生を抑制することができる。すなわ
ち、２個の振幅制限回路22,23を、画像の動き判定に利
用できるわけであり、減算器２から得られる差信号の大
小をもって動き検出するといった複雑な方法を用いずに
済む。

［発明の効果］ 以上説明したように、この発明は、ディジタル画像メ
モリにより遅延された画像信号との差信号の形成に供さ
れる現在の画像信号とディジタル画像メモリにより単位
周期遅延される直前の画像信号とに、それぞれメモリ容
量節約手段を作用させ、低減に集中する信号成分を除去
することにより、ディジタル画像メモリの容量負担を軽
減し、小容量化による製造コストの低減を図る構成とし
たから、巡回加算による雑音抑圧の対象となる画像信号
のうち、エネルギが集中する低域成分を雑音抑圧対象か
ら削減することにより、実質的にダイナミックレンジを
圧縮し、量子化ノイズを気にすることなく、画像信号の
量子化ビット数を落とすことができ、これによりディジ
タル画像メモリのメモリ容量を削減し、装置全体に占め
るコスト比率の高い画像メモリに費やすコストを切り下
げ、装置全体の製造コストを良好に切り下げることがで
きる等の優れた効果を奏する。

また、この発明は、抑圧対象である雑音成分が多く含
まれる信号帯域を通過させる帯域濾波回路をもってメモ
リ容量節約手段を構成することにより、信号エネルギが
集中する反面、比較的雑音が少ない低域成分を、周波数
軸上で効率よく雑音抑圧対象から除外することができ、
ごく一般に用いられる帯域濾波回路を付加するだけで、
コスト負担増をはるかに上回るコスト削減が可能である
等の効果を奏する。

また、この発明は、抑圧対象である雑音成分が多く含
まれる信号帯域を通過させる帯域濾波回路と、この帯域
濾波回路の濾波出力を振幅制限し、該濾波出力に残留す
る信号成分を除去する振幅制限回路をもってメモリ容量
節約手段を構成することにより、帯域濾波回路が周波数
軸上で行った信号成分排除を、振幅制限回路においてさ
らに徹底することができ、これによりディジタル画像メ
モリに必要最小限のメモリ容量を与えることが可能であ
り、メモリ容量を最大限有効活用することで、雑音抑圧
に関係しない無駄な投資を排除し、ディジタル画像メモ
リに関連する製造コストをより一層効率良く削減するこ
とができる等の効果を奏する。

さらにまた、この発明は、差信号の形成に供される現
在の画像信号に作用する振幅制限回路と画像メモリによ
り単位周期遅延される直前の画像信号に作用する振幅制
限回路から、それぞれの振幅制限動作を示す動作信号を
供給され、両動作信号の排他的論理和をもって画像の動
きの有無を判定し、画像の動きが顕著である場合に、前
記差信号に乗ずる係数を小とするエクスクルーシブオア
ゲート回路を設けることにより、いずれか一方の振動制
限回路が動作したときにのみ、エクスクルーシブオアゲ
ート回路の出力をもって、係数を小に切り替え、動画に
つきものの残像を抑制することができ、振幅制限回路を
残像抑制のための動き検出回路として利用することで、
残像抑制のための特別な動き検出回路を不要とし得る等
の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この発明の巡回型雑音抑圧装置の一実施例を
示す回路構成図、第２図は、第１図に示した帯域濾波回
路の濾波特性を示す図、第3,4図は、それぞれこの発明
の巡回型雑音抑圧装置の他の実施例を示す回路構成図及
び回路各部の信号波形図、第５図は、第３図に示した巡
回型雑音抑圧装置の変形例を示す回路構成図、第６図
は、従来の巡回型雑音抑圧装置の一例を示す回路構成図
である。 2,3……減算器,4……画像メモリ,5……係数器,11,21,31
……巡回型雑音抑圧装置,12,13……帯域濾波回路,14…
…ディジタル画像メモリ,22,32……振幅制限回路,32…
…エクスクルーシブオアゲート回路。

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】画像信号をディジタル画像メモリにより時
   系列上で信号相関を示す単位周期だけ遅延し、得られた
   過去の画像信号を現在の画像信号から減算して得られる
   差信号に、１以下の係数を乗じて前記現在の画像信号か
   ら減算することにより、信号成分に比べて信号相関の乏
   しい雑音成分を抑圧する巡回型雑音抑圧装置であって、
   前記差信号の形成に供される現在の画像信号と前記ディ
   ジタル画像メモリにより単位周期遅延される直前の画像
   信号とにそれぞれ使用し、低域に集中する信号成分を除
   去し、前記ディジタル画像メモリの容量負担を軽減する
   メモリ容量節約手段を具備してなる巡回型雑音抑圧装
   置。
2. 【請求項２】前記メモリ容量節約手段は、抑圧対象であ
   る雑音成分が多く含まれる信号帯域を通過させる帯域濾
   波回路であることを特徴とする請求項１記載の巡回型雑
   音抑圧装置。
3. 【請求項３】前記メモリ容量節約手段は、抑圧対象であ
   る雑音成分が多く含まれる信号帯域を通過させる帯域濾
   波回路と、この帯域濾波回路の濾波出力を振幅制限し、
   該濾波出力に残留する信号成分を除去する振幅制限回路
   からなることを特徴とする請求項１記載の巡回型雑音抑
   圧装置。
4. 【請求項４】前記差信号の形成に供される現在の画像信
   号に作用する前記振幅制限回路と、前記画像メモリによ
   り単位周期遅延される直前の画像信号に作用する前記振
   幅制限回路から、それぞれの振幅制限動作を示す動作信
   号を供給され、両動作信号の排他的論理和をもって画像
   の動きの有無を判定し、画像の動きが顕著である場合
   に、前記差信号に乗ずる係数を小とするエクスクルーシ
   ブオアゲート回路を有することを特徴とする請求項３記
   載の巡回型雑音抑圧装置。