JP2734342B2 - エレベータのすべり量データ測定装置 - Google Patents

エレベータのすべり量データ測定装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エレベータの駆動シー
ブと主ロープ間のすべり量を測定する装置の改良に関す
るものである。
【0002】ロープトラクション式エレベータは、駆動
シーブと主ロープ間の摩擦力によって動力が伝達される
が、この際、シーブとロープ間に摩耗が発生する。この
摩耗量はシーブとロープとの接触圧力及びすべり量に比
例し、材料自身の硬度に反比例することが知られてい
る。このため、シーブの摩耗分析や寿命予測等を行うた
めに、接触圧力,すべり量及び材料自身の硬度の測定が
行われる。本発明は、このうちのすべり量を測定する装
置に関するものであり、特に、住宅用エレベータ等のよ
うに、軽荷重運転の多いエレベータのすべり量測定に好
適な装置を提供するものである。
【0003】
【従来の技術】従来のすべり量測定装置を図4により説
明する。図において、1は一端に乗かご2、他端に釣合
い重り3を吊り、駆動シーブ4及びそらせシーブ5に巻
き掛けられた主ロープ、6は駆動シーブ4を駆動して乗
かご2及び釣合い重り3を昇降する駆動装置である。
【0004】7は駆動シーブ4に固定されたプーリ、8
は第1のパルス発生器9のプーリ、10は両プーリ7,
8間に張架されたワイヤであり、これにより駆動シーブ
4の回転に連動してプーリ8が回転し、第1のパルス発
生器9からパルスが発生する。同様に、11はそらせシ
ーブ5に固定されたプーリ、12は第2のパルス発生器
13のプーリ、14は両プーリ11,12間に張架され
たワイヤであり、そらせシーブ5の回転に連動して第2
のパルス発生器13からパルスが発生する。
【0005】そして、この第1のパルス発生器9の出力
と第2のパルス発生器13の出力とを比較することによ
り、駆動シーブ4とそらせシーブ5との回転量の差を演
算し、これを駆動シーブ4と主ロープ1のすべり量とし
て検出している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来装置は、駆動
シーブ4及びそらせシーブ5から、プーリ7,8,1
1,12とワイヤ10,14を介してパルス発生器9,
13を駆動する構成のため、ワイヤ10,14の摩耗や
振動などにより検出精度が悪くなるという問題があっ
た。また、上記従来装置では、主ロープ1の動きを検出
するのにそらせシーブ5の回転量を検出しているため、
そらせシーブ5と主ロープ1の間にすべりが発生してい
ない場合には問題はないが、エレベータに大きな加減速
が作用する場合にはそらせシーブ5と主ロープ1の間に
すべりが発生し、正確な主ロープ1の動きを検出するこ
とができなかった。
【0007】更に、駆動シーブ4とそらせシーブ5の両
方にパルス発生器等を設置する構成のため、装置全体が
大きくなり、現場での装置の取り付けや測定作業が容易
ではないという問題があった。本発明は、上記の問題点
を解決することを目的としたものであり、比較的簡単な
構成で、精度良く駆動シーブ4と主ロープ1間のすべり
量を測定する装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、予め駆動シー
ブの任意の位置を基準位置としておき、乗かごが特定階
に停止する毎に、駆動シーブの基準位置からのずれの量
が所定以上になったか否かを検出する装置と、前記ずれ
の量が所定以上になったことを検出すると、前記の基準
位置に代えてそのずれた位置を基準位置にするととも
に、基準位置を変更した回数を記憶しておくものであ
り、この基準位置変更回数を基にして駆動シーブと主ロ
ープ間のすべり量を測定するものである。
【0009】
【実施例】駆動シーブと主ロープ間に発生するすべりに
は、エレベータに大きな加減速が働いた場合に、一時的
にトラクション能力が不足することに起因するすべりの
他に、乗かご側と釣合い重り側の張力の差による主ロー
プの弾性伸縮により発生するすべりがある。
【0010】このすべりは、図3に示すように、駆動シ
ーブ4に巻き掛けている主ロープ1の張力Tc,Twに
差があることによって生じるものである。主ロープ1の
張力がTc<Twで、乗かご2が上昇しているとする
と、主ロープ1の張力は駆動シーブ4を通過する過程
で、TcからTwに変化する。主ロープ1は張力変化に
よって弾性的に若干伸縮するので、この過程で主ロープ
1は若干伸びる、即ち、駆動シーブ4と主ロープ1との
間でクリープ(creep)とよばれるすべりが発生す
る。
【0011】いま、駆動シーブ4のx点と、それに対応
している主ロープ1のx1点とに着目すると、駆動シー
ブ4が角度θだけ回転したとき、駆動シーブ4のx点は
y点に達し、主ロープ1のx1点はy1点に達し、x1
点とy1点の間にずれが生じる。これは、乗かご2の上
昇過程では、弾性伸びによって主ロープ1が駆動シーブ
4よりも相対的に早く進み、クリープが蓄積されるから
である。逆に、乗かご2の下降時には、弾性縮みが生じ
るので、主ロープ1は駆動シーブ4よりも相対的に遅れ
る。
【0012】すなわち、Tc<Twの状態では、乗かご
2の上昇・下降にかかわらず、また大きな加減速の有無
にかかわらず、主ロープ1は常に釣合い重り3側にずれ
る、つまり、駆動シーブ4は相対的に乗かご2側にずれ
る(図3の反時計方向に余分に回転する)。したがっ
て、乗かご2内の荷重が小さく、乗かご2側の重量が釣
合い重り3側の重量より小さい場合(以下軽荷重と称す
る)には、Tc<Twとなり駆動シーブ4は常に乗かご
2側(以下これを正方向とする)にずれる。逆に、乗か
ご2内の荷重が大きく、乗かご2側の重量が釣合い重り
3側の重量より大きい場合(以下重荷重と称する)に
は、Tc>Twとなり駆動シーブ4は常に釣合い重り3
側(以下これを負方向とする)にずれる。また、乗かご
2内の荷重が定格荷重の半分位で、乗かご2側の重量と
釣合い重り3側の重量が等しい場合(すなわちTc=T
w)には、ずれは生じない。
【0013】次に、本発明の一実施例を、図1,2によ
り説明する。図1はすべり量測定装置の全体構成を示す
図、図2はすべり量測定装置の制御回路を示す図であ
る。図において、20は駆動シーブ4の周囲部に等間隔
に貼付された反射テープであり、その長さaは、乗かご
2が空の状態で最下階から最上階まで1往復したときの
駆動シーブ4のずれをs、反射テープ20と反射テープ
20間(以下非テープ部と称する)の距離をbとする
と、 b>a>s になっている。
【0014】30は制御回路、31は第1の光電装置、
32は第2の光電装置、31a,32aは各光電装置3
1,32の光軸、33はカウンタである。光軸31aと
32a間の距離cは、 c=N×(a+b)/2 Nは奇数 の関係を満足している。
【0015】つまり、一方の光軸31aが反射テープ2
0の一つ(例えば20a)の中心にあるとき、他方の光
軸32aは非テープ部の一つ(例えば21a)の中心に
くるように配置してある。この実施例の場合、N=3と
している。また、図1を見れば明らかなように、光軸3
1aと32aが同時に反射テープ20上にくることはな
いが、両光軸31a,32aが同時に非テープ部にくる
ことはある。
【0016】40は乗かご2が基準階にあるときに閉路
する接点、41はブレーキ回路に連動する接点であり、
ブレーキがOFFになり乗かご2が停止しているときに
閉路する接点である。42,43はそれぞれ光電装置3
1,32に接続されたリレー、42a,42b,43
a,43bはそれぞれリレー42,43の常開接点、4
4は光電装置の切り替えリレー、44aはリレー44の
接点、L1,L2は電源母線であり、図3と同一符号は
同一のものを示している。
【0017】次に、本実施例の動作について説明する。
この実施例においては、常に乗かご2は釣合い重り3よ
り軽い、即ち、駆動シーブ4は常に乗かご2側(正方
向)にずれる、つまり図1において反時計方向に余分に
回転するとする。乗かご2が基準階に着床停止している
とすると、接点40,41は共に閉路している。また、
接点44aが光電装置31側になっているとすると、 L1−40−44a−31−41−L2 の回路により、光電装置31は動作可能状態になってい
る。
【0018】このとき、光軸31aが反射テープ20a
の中心にあり、他方の光軸32aは非テープ部21aの
中心にあるとすると、光電装置31が作動して、リレー
42が作動し、その接点42a,42bが閉路する。こ
れによりカウンタ33はカウント数を1つ増加するとと
もに、リレー44がセットされて、接点44aは光電装
置31側から32側に切り替わり、 L1−40−44a−32−41−L2 の回路により、光電装置32は動作可能状態になるとと
もに、光電装置31は不動作状態になる。しかしこのと
き、光軸32aは非テープ部21aの中心にあるため、
光電装置32は作動しない。
【0019】乗かご2が呼びに応答して他階へ走行し、
再び基準階へ帰ってくると、駆動シーブ4は正方向にず
れている(反時計方向に余分に回転している)から、光
軸32aは相対的に非テープ部21aの中心よりも上
方、即ち、反射テープ20bに近づいた位置にくる。更
に、乗かご2が他階へ走行して基準階へ帰ってくる度
に、光軸32aは反射テープ20bに近づき、ついには
反射テープ20b上にくる。
【0020】そうすると、光電装置32は作動して、リ
レー43が作動し、その接点43a,43bが閉路し、
カウンタ33がカウント数を1つ増加するとともに、リ
レー44がリセットされて、接点44aは光電装置32
側から31側に切り替わり、再び光電装置31は動作可
能、32は不動作状態になる。尚、既述のように、光軸
31aと32aが同時に反射テープ20上にくることは
なく、光軸32aが反射テープ20b上にきたときに
は、光軸31aは非テープ部21bに位置しているた
め、光電装置31は作動しない。
【0021】また、乗かご2が他階へ走行して基準階へ
帰ってきたとき、駆動シーブ4のずれが大きい場合に
は、非テープ部21aにあった光軸32aは、反射テー
プ20bを飛び越えて、非テープ部21cにきてしまう
可能性も考えられる。通常の運転においては、駆動シー
ブ4のずれが最も大きくなるのは、乗かご2が空の状態
で最下階から最上階まで1往復する場合である。この対
策として、既述のように本実施例では、反射テープ20
等の長さaを、乗かご2が空の状態で最下階から最上階
まで1往復したときの駆動シーブ4のずれsよりも大き
くしているため、光軸32aが、反射テープ20bを飛
び越えることはない。
【0022】更にまた、極めて稀なケースではあるが、
乗かご2が基準階を出発後、基準階以外の最上階や中間
階を何度も往復することにより、基準階へ帰ったとき
に、駆動シーブ4のずれが非常に大きくなって、光軸3
2aが、反射テープ20bを飛び越えてしまうことが考
えられるが、このケースをもカバーしたい場合には、反
射テープ20等の長さを更に長くしておけば良い。
【0023】以下同様に、乗かご2が他階へ走行し基準
階へ帰ってくる度に、本装置が動作し、動作可能状態に
ある光電装置31又は32が作動する度に、カウンタ3
3はカウント数を1つずつ増加していく。
【0024】ところで、カウンタ33がカウント数を1
つ増加する、即ち、光電装置31,32が切り替わるの
は、光軸31a又は32aが反射テープ20上にきたと
きである。つまり、駆動シーブ4が、 (a+b)/2
だけずれる毎に、カウンタ33のカウント数は1つず
つ増えていくことになる。従って、カウンタ33のカウ
ント数に (a+b)/2 を掛けてやると、駆動シー
ブ4の総すべり量を計算することができる。
【0025】上記の説明では、乗かご2が基準階に停止
する度にすべり量測定装置を作動させるようにしている
が、これは一般に乗かご2が最も多く停止する階が基準
階だからである。従って、基準階が複数ある場合や基準
階を定めていない場合には、乗かご2が最も多く停止す
る階ですべり量測定装置を作動させるようにすればよ
い。また、乗かご2が停止したことを検出するものとし
て、ブレーキ回路に連動する接点41を使用している
が、運転リレー等他のものを使用することもできる。
【0026】また、光軸31aと32a間の距離cは
c=N×(a+b)/2 を満足しているが、必ずしも
満足する必要はなく、光軸31aと32aが同時に反射
テープ20上にこないように設定しておけば良い。
【0027】以上説明したように、本実施例において
は、常に軽荷重で運転される場合には、誤差なく正確に
駆動シーブ4と主ロープ1間のすべり量を測定すること
ができる。また逆に、常に重荷重で運転される場合に
も、同様に駆動シーブ4と主ロープ1間のすべり量を測
定することができる。この場合、駆動シーブ4は負方向
にずれていくことになる。
【0028】しかしながら、軽荷重と重荷重とが混在す
る場合には誤差が発生する。すなわち、軽荷重の場合に
は駆動シーブ4は正方向にずれ、重荷重の場合には駆動
シーブ4は負方向にずれるため、互いに打ち消し合って
ずれとして測定されない場合がでてくる。
【0029】一般に、荷物用エレベータ、特にフォーク
リフトに荷物を積んで、フォークリフトごと乗かごに乗
り込むようなタイプのエレベータの場合、軽荷重運転と
重荷重運転とが交互に行われるため、誤差は非常に大き
くなる。しかし、重荷重運転がほとんどない乗用エレベ
ータの場合には誤差は少ない。
【0030】例えば、住宅用エレベータの場合、朝のピ
ーク時でさえも重荷重運転がほとんどないため、本装置
で正確な測定が可能であり、また、オフィスビルにおい
ても、重荷重運転は朝夕及び昼食時の一部の時間帯に限
られており、発明者の調査によれば誤差は数%程度に過
ぎない。ところで、このすべり量の測定結果は、シーブ
とロープ間の接触圧力及び材料自身の硬度とともに、シ
ーブの摩耗分析や寿命予測等を行うために使用するが、
接触圧力や材料自身の硬度の誤差は10%を超えてい
る。そのため、すべり量の誤差が数%程度であれば十分
実用できる。
【0031】したがって、重荷重運転がほとんどない乗
用エレベータ等において、本発明は実用上十分な精度で
すべり量の測定ができ、また、図4の従来装置にくらべ
装置の小型化が図れ、現場での装置の取り付けや測定作
業が容易に行える。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
軽荷重運転の多いエレベータにおいて、駆動シーブと主
ロープ間のすべり量を、比較的簡単な装置で、精度良
く、容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す図である。
【図2】図1の制御回路の詳細説明図である。
【図3】駆動シーブと主ロープ間のすべりを説明する図
である。
【図4】従来のすべり量測定装置を示す図である。
【符号の説明】
1 主ロープ 2 乗かご 3 釣合い重り 4 駆動シーブ 5 そらせシーブ 20,20a,20b 反射テープ 21a,21b,21c 非テープ部 30 制御回路 31 第1の光電装置 32 第2の光電装置 31a,32a 光軸 33 カウンタ

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 予め駆動シーブの任意の位置を基準位置
    としておき、 乗かごが特定階に停止する毎に、駆動シーブの基準位置
    からのずれの量が所定以上になったか否かを検出する装
    置と、前記 基準位置からのずれの量が所定以上になったことを
    検出すると、前記の基準位置に代えてそのずれた位置を
    基準位置とする装置と、 前記の基準位置変更回数を記憶しておく装置とを備えた
    ことを特徴とするエレベータのすべり量データ測定装
    置。
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