JP2729712B2 - 機能性ポリペプチド - Google Patents

機能性ポリペプチド

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JP2729712B2 JP3238935A JP23893591A JP2729712B2 JP 2729712 B2 JP2729712 B2 JP 2729712B2 JP 3238935 A JP3238935 A JP 3238935A JP 23893591 A JP23893591 A JP 23893591A JP 2729712 B2 JP2729712 B2 JP 2729712B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規ポリペプチドに関
し、更に詳しくは細胞接着活性とガン転移抑制活性の両
活性を有する新規なポリペプチド、並びにそれらをコー
ドする核酸、及びそのDNAを用いた該ペプチドの遺伝
子工学的な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フィブロネクチン(以下、FNと表示す
る)は、血漿や細胞外マトリックスに存在する糖タンパ
ク質で、多彩な機能を持つことが知られている〔アニュ
アルレビュー オブ バイオケミストリー( Annual Rev
iew of Biochemistry ) 、第57巻、第375〜413
頁(1988)〕。天然のFNを創傷治癒、点眼薬等の
医薬品や化粧品に利用する試みがなされているが、血液
から採取するために、供給に制限があること、コスト高
であること、また、病原性の細菌やウイルス等による汚
染の可能性があること等の理由により、実用化されてい
ない。FNにはヘパリンに結合する領域(ヘパリン結合
ドメイン)が2ケ 所存在し、1ケ 所はN末端付近にあ
り、結合にCaイオンが必要であることが知られてい
る。もう一方の領域はC末端付近にあり、この領域のヘ
パリンに対する結合活性は、前述の領域よりも強く、し
かもCaイオンに影響されない。最近の研究からFNの
ヘパリン結合ドメインが、細胞接着ドメインと同様に線
維芽細胞、内皮細胞、ある種のガン細胞等の接着、伸
展、移動に重要な役割を果していることが次第に明らか
となってきた。FNのヘパリン結合ドメインは細胞の表
層にあるプロテオグリカンに結合して、細胞と細胞外マ
トリックスとの相互作用を引起すことにより、細胞の接
着、伸展、移動等に寄与すると考えられる。したがっ
て、細胞接着ドメイン構造とヘパリン結合ドメイン構造
の両構造を持つポリペプチドは、細胞と細胞外マトリッ
クスの両方に結合して創傷部の組織の修復や、恒常性の
維持に寄与し、医薬品としての用途が期待できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは特開平2
−311498号公報に記載のヒトFNの細胞接着ドメ
インと、ヘパリン結合ドメインが、直接又はリンカーペ
プチドを介して結合した機能性ポリペプチドを創製し、
該ポリペプチドがガン転移抑制作用等の生理活性を示す
ことを既に見出している(特開平3−127742号、
特願平1−306145号、同2−165727号各明
細書)。ガン転移抑制作用、脈管形成抑制作用等の生理
活性は、機能性ポリペプチドの構造、特に該ポリペプチ
ドのヘパリン結合ドメイン由来のポリペプチドの構造に
より異なることより、更にヘパリン結合ドメイン由来の
ポリペプチド部の構造の異なる上記機能性ポリペプチド
の開発が望まれている。本発明の目的は上記現状にかん
がみ、ヘパリン結合ドメイン由来のポリペプチド部の構
造の異なる細胞接着活性とガン転移抑制活性を合せもつ
機能性ポリペプチド、及び該ポリペプチドを含有するガ
ン転移抑制剤を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明の第1の発明は機能性ポリペプチドに関し、下記一
般式(化1):
【化1】A−(B)−(C) (式中Aは配列表の配列番号1で表されるポリペプチ
ド、Bは配列表の配列番号2で表されるポリペプチド、
Cは配列表の配列番号3で表されるポリペプチド、m、
nはそれぞれ1又は0の数を示す。但しm、nの和は1
以上である)で表されることを特徴とする。また本発明
の第2の発明はガン転移抑制剤に関し、本発明の第1の
発明の機能性ポリペプチドを含有することを特徴とす
る。本発明の第3の発明は、第1の発明の機能性ポリペ
プチドをコードする核酸に関する。本発明の第4の発明
は、第1の発明の機能性ポリペプチドをコードするDN
Aを組込んだプラスミドに関する。本発明の第5の発明
は、第4の発明のプラスミドを導入した形質転換体に関
する。更に本発明の第6の発明は、第1の発明の機能性
ポリペプチドの製造方法に関し、第5の発明の形質転換
体を培養し、該培養物より第1の発明の機能性ポリペプ
チドを採取することを特徴とする。
【0005】配列表の配列番号1のアミノ酸番号1〜2
77はヒトFNの細胞接着ドメインの Pro1239− Ser
1515と同一配列であり、配列表の配列番号2はヒトFN
のヘパリン結合ドメインの Asn1782− Thr1870と同一配
列であり、配列表の配列番号3は同じくヘパリン結合ド
メインの Ala1871− Thr1960と同一配列である。
【0006】なお、本明細書において、アミノ酸に付与
された肩数字は、EMBLデータバンク( EMBL DATA B
ANK ) のFNのcDNAを翻訳して得られるアミノ酸に
付与されたN末端からのアミノ酸残基数を示す。
【0007】ヒトFNの遺伝子構造については、ジ エ
ンボ ジャーナル( The EMBO Journal) 、第4巻、第1
755〜1759頁(1985)に記載されている。ま
た、その細胞接着ドメイン及びヘパリン結合ドメインを
コードするcDNAクローン( pLF5、pLF3、p
LF4及びpLF5)についてはバイオケミストリー(
Biochemistry )、第25巻、第4936〜4941頁
(1986)に記載されている。本発明者らは、pLF
5から、細胞接着ドメインに対するcDNA断片を取出
し、これを発現ベクターに接続して大腸菌に導入するこ
とにより、細胞接着活性ポリペプチド及びその製造方法
を開発し特許出願した(特開平1−206998号)。
本発明で必要とされる細胞接着ドメインのcDNAは、
特開平1−206998号公報に記載されている組換え
体プラスミドpTF7021 を用いることができる。pTF7021
はFNの Pro1239− Met1517(279アミノ酸残基)を
発現するプラスミドである。pTF7021 の翻訳領域のC末
端の終止コドンの直前にクローニングサイト、例えばN
coIサイトを導入することにより、細胞接着ドメインの
cDNAと他のドメインのcDNAを連結させることが
できる。特開平2−311498号公報に記載のように
pTF7021にNCOIサイトを導入したプラスミドは pTF75
20と命名され、該プラスミド中に Pro1239− Ser1515
Met の配列がコードされている。
【0008】ヘパリン結合ドメインについてはトリプシ
ン、サーモライシン、カテプシンD等によって分解され
て得られた断片が報告されており、その大きさは、29
kDから38kDに及んでいる。ドメインの詳しい特定はな
されていないが、一般的には約90アミノ酸から成る I
II型類似配列を3個( III−12、 III−13、 III−
14)と、それに続く IIIcs型配列の一部を含む断片が
知られている。
【0009】ヘパリン結合ドメインをコードするcDN
Aは、 pLF2435から取出すことができる。 pLF2435は、
前記pLF2、pLF3、pLF4及びpLF5から再
構築されたプラスミドで、FNのヘパリン結合ドメイン
をコードするcDNAを含んでいる。 pLF2435から必要
なcDNA断片を制限酵素で切出し、5′側に開始コド
ンを含む合成DNAを、また、3′側には、終止コドン
を含む合成DNAをDNAリガーゼで連結した後、適当
な発現ベクターに接続することにより、特開平2−31
1498号公報に記載の III型類似配列が3個つらなっ
た配列を有するペプチド(H−271)を発現するプラ
スミドpHD101を得ることができる。
【0010】プラスミドpTF7520 及びプラスミドpHD101
については特開平2−311498号公報中に更に詳細
に記述されている。CHV−179、CHV−90及び
CHV−89は、それぞれヘパリン結合ドメインの III
型リピートのうち、 III−13及び III−14、III −
14、及び III−13が細胞接着ドメインポリペプチド
( Pro1239− Ser1515) のC末端にメチオニン残基を介
して結合したポリペプチドである。これらを発現するプ
ラスミドは、例えば次のようにして構築することができ
る。ヘパリン結合ドメインのポリペプチド(H−27
1)をコードするプスラミドpHD101の III−13のN末
端、又はC末端に対応する領域にNCOIサイトを導入
し、NCOIとBamHIで消化して III−14、又は III
−13及び III−14をコードするDNA断片を得る。
これを細胞接着ドメインポリペプチドをコードしている
プスラミドpTF7520 (特開平2−311498号)のN
COI−BamHIサイトに接続することにより、CHV−
179及びCHV−90をそれぞれ発現するプラスミド
pCHV179 及びpCHV90が得られる。次いで、CHV−17
9を発現するプラスミドから、部位特異的変異の手法
で、 III−14をコードする配列を欠失させることによ
り、CHV−89を発現するプラスミドpCHV89を得るこ
とができる。
【0011】前記プラスミドにおける連結部には、NCO
Iサイトに由来するメチオニン残基がリンカーとして含
まれる。リンカーの有無は、本発明の効果を左右するも
のではないが、必要とあれば部位特異的変異の手法によ
り、容易に除去することができる。また、任意のスペー
サーを分子間距離の調節のため挿入することもできる。
【0012】配列表の配列番号4のアミノ酸配列をコー
ドするプラスミドpCHV89、配列表の配列番号5のアミノ
酸配列をコードするプラスミドpCHV179 、配列表の配列
番号6のアミノ酸配列をコードするプラスミドpCHV90を
それぞれ例えば、大腸菌に導入し、適当な条件下に培養
することにより、目的ペプチドが大腸菌内に蓄積され
る。発現の確認にはイムノブロッティングが用いられ
る。組換え大腸菌の全菌体タンパク質をSDS−ポリア
クリルアミド電気泳動で分離した後、泳動パターンをニ
トロセルロース膜に移し取る。FNの細胞接着ドメイン
を認識するモノクローナル抗体(FN−10、宝酒
造)、及びFNのヘパリンドメインを認識するモロクロ
ーナル抗体(IST−1又はIST−2、セラ・ラブ
社)等を用いて検出されるバンドが目的のポリペプチド
である。目的ポリペプチドの精製は、例えば次のように
行う。組換え大腸菌をL−ブロス等の培地に培養し、集
菌した後、超音波処理により、菌体破砕液を得、これを
遠心分離して上清を得る。上清を透析後、DEAEイオ
ン交換体のカラムで分画し、次いで抗体カラム及び/又
はヘパリン−アガロース等のアフィニティクロマトを行
う。以上の操作により、目的のポリペプチドを精製する
ことができる。
【0013】得られたポリペプチドは、BHKやNRK
細胞に対する細胞伸展活性の測定及びヘパリン結合活性
の測定に用いられる。細胞伸展活性の測定は、例えばル
オスラティ( Ruoslahti )らの方法〔メソッズ イン
エンザイモロジー ( Methodsin Enzymology )、第82
巻、第803〜831頁(1981)〕に準じて行う。
すなわち、試料をコートした後、BSAでブロッキング
したマイクロタイタープレートに、BHK又はNRK細
胞の懸濁液を添加し、37℃で約1時間インキュベート
した後、未吸着の細胞を洗浄した後、ホルマリン固定し
て、伸展した細胞の割合を顕微鏡下に測定することによ
り、細胞伸展の強さを測定することができる。一方、ヘ
パリン結合活性は、ヘパリンを結合した担体、例えばA
F−ヘパリントヨパール( Toyopearl、東ソー)のカラ
ムに試料を吸着させ、NaClの塩濃度を上昇させて溶
出させ、溶出された塩濃度により、ヘパリンへの結合能
力を示すことができる。
【0014】以上の測定により、本発明のポリペプチド
はBHKやNRK細胞に対して強い細胞伸展活性を示す
と共に、CHV−179、CHV−89はそれぞれヘパ
リンに対しても強い親和性を示すことが証明される。
【0015】本発明のポリペプチドを医薬として使用す
る場合、必要に応じて医薬用担体と共に常法により製剤
化し、経口投与又は非経口投与すればよい。賦形剤ある
いは担体としては薬理学的に許容されるものが選ばれ、
その種類及び組成は投与経路や投与方法によって異な
る。例えば液状担体として水、アルコール類若しくは大
豆油、オリーブ油、ミネラル油等の動植物油、又は合成
油が用いられる。固体担体としてマルトース、シューク
ロースなどの糖類、アミノ酸類、ヒドロキシプロピルセ
ルロースなどのセルロース誘導体、ステアリン酸マグネ
シウムなどの有機酸塩などが使用される。
【0016】注射剤の場合は溶解液は生理食塩液、各種
緩衝液、グルコース、イノシトール、マンニトール、ラ
クトースなどの糖類溶液、エチレングリコール、ポリエ
チレングリコールなどのグリコール類が望ましい。また
イノシトール、マンニトール、ラクトース、シュークロ
ース等の糖類、フェニルアラニン等のアミノ酸等の賦形
剤と共に凍結乾燥製剤とし、それを投与時に注射用の適
当な溶剤、例えば滅菌水、生理食塩液、ブドウ糖液、電
解質溶液、アミノ酸溶液等静脈投与用液体に溶解させて
投与することもできる。製剤中における本発明のポリペ
プチドの含量は製剤により異なるが、通常0.1〜10
0重量%好ましくは1〜98重量%である。例えば注射
液の場合には、通常0.1〜30重量%、好ましくは1
〜10重量%の有効成分を含むようにすることが望まし
い。経口投与する場合には前記固体担体若しくは液状担
体と共に、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、液剤、ド
ライシロップ剤等の形態で用いられる。カプセル、顆
粒、粉剤は一般に5〜100重量%、好ましくは25〜
98重量%の有効成分を含む。
【0017】投与量は、患者の年令、体重、症状、治療
目的等により決定されるが治療量は一般に、非経口投与
で1〜100mg/kg/日、経口投与で5〜500m
g/kg/日である。
【0018】本発明のポリペプチドはB16メラノーマ
を用いる転移のモデル系にて有意な転移防止効果を示す
もので、胃ガン、肺ガン、大腸ガン、乳ガン、前立腺ガ
ン、子宮頸ガン、腎ガンなどガン細胞に対して良好に転
移を防止せしめてなる有用なものである。
【0019】以上詳細に説明した様に、遺伝子工学的手
法により、細胞接着活性とガン転移抑制剤活性を伴せ持
ち、新規な機能性ポリペプチドを効率よく提供すること
ができる。該ポリペプチドは抗転移抑制剤としての用途
のほか、脈管形成抑制剤、創傷治癒剤、生長促進剤等の
医薬品として、また、化粧料、培養基材等として有用で
ある。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0021】実施例1 ヘパリン結合ドメインの一部と細胞接着ドメインポリペ
プチドとの融合タンパク質の構築 なお、図1は融合タンパク質を発現するプラスミドの構
築工程を示す図である。Escherichia coli HB 101/pHD
101 (FERM BP−2264)より調製したヘパリ
ン結合ドメインをコードするプラスミドpHD101(特開平
2−311498号)を大腸菌BW313に導入し、ヘ
ルパーファージM13K07を感染させてdUを含む一本鎖
DNAを調製した。これをテンプレートとし、NCOI認
識配列を含む配列表の配列番号6で表す合成DNAをプ
ライマーとして、T4DNAポリメラーゼを作用させ、
相補鎖合成を行った。なお、プライマーは、ポリヌクレ
オチドキナーゼにより、あらかじめ5′末端をリン酸化
した。得られた2重鎖DNAを大腸菌DNAリガーゼで
環状化し、宿主菌の大腸菌BMH71-18mutS株に導入して、
複製させた。得られた形質転換体からプラスミドを抽出
しNCOIで切断してゲル電気泳動で約0.27kbのバン
ドを与えるプラスミドを選択した。このようにして、ヘ
パリン結合ドメインの III−13のN末端( Asn1782 )
と、 III−12のC末端( Glu1781 )をコードする配列
の間にNCOIサイトを導入したプラスミドを得た。な
お、この変異導入には市販の変異導入キット(ミュータ
ンK、宝酒造)を用いた。このプラスミドを、NCOIと
amHIで消化してゲル電気泳動を行い、約0.54kb
のバンドをゲルから抽出した。一方、Escherichia coli
JM 109/pTF 7021(FERM BP−1941)より前
述の組換え体プラスミドpTF 7021を調製し、次いで該プ
ラスミドにNCOIサイトを導入した。NCOIサイトの導
入は特開平2−311498号公報に記載のように、配
列表の配列番号7で表すオリゴヌクレオチドを合成し、
前出ミュータンKを用いて行い、プラスミドpTF 7520を
得た。前記0.54kbのDNA断片をNCOIとBamHI
で消化したpTF 7520とT4DNAリガーゼで連結した
後、大腸菌HB101に導入した。得られた形質転換体
から、プラスミドを抽出し、NCOIと、BamHIで消化
したときに、0.54kbのバンドを与えるプラスミドを
選択した。このプラスミドを pCHV179と命名した。pCHV
179は、H−271の III−12を欠失したヘパリン結
合ドメインポリペプチドと細胞接着ドメインポリペプチ
ド( Pro1239− Ser1515 )がメチオニン残基を介して結
合した融合タンパク質を発現するプラスミドであること
をDNAの塩基配列分析によって確認した。 pCHV179を
導入した大腸菌HB101を Escherichia coli HB1
01/pCHV179 と命名、表示して工業技術院微生物工業
技術研究所に寄託した〔微工研菌寄第12183号(F
ERM P−12183)〕。
【0022】同様にして、NCOIサイトを含む配列表の
配列番号8で表す変異導入プライマーを用いて、pHD101
に変異導入を行い、III −13のC末端( Thr1870 )と
III−14のN末端( Ala1871 )をコードする配列の間
にNCOIサイトを導入したプラスミドを得た。これをN
COIとBamHIで消化して約0.27kbのバンドを切り
出し、 pTF7520のNCOI−BamHIサイトに接続して、
大腸菌HB101に導入した。得られた形質転換体か
ら、プラスミドを抽出し、NCOIとBamHIで消化した
とき0.27kbのバンドを与えるプラスミドを選択し、
このプラスミドをpCHV 90 と命名した。pCHV 90 は、H
−271の III−12と III−13を欠失したヘパリン
結合ドメインポリペプチドを細胞接着ドメインポリペプ
チドがメチオニン残基を介して結合した融合タンパク質
を発現するプラスミドであることをDNAの塩基配列分
析により確認した。pCHV 90 を導入した大腸菌HB10
1をEscherichia coli HB101/pCHV 90 と命名し
た。
【0023】次いで、 pCHV179から、 III−14をコー
ドする領域を欠失するために欠失導入プライマーとして
III−13のC末端をコードする配列に相補的な配列
と、ストップコドン以下の配列に相補的な配列とが直接
結合した配列表の配列番号9で表す30塩基のオリゴヌ
クレオチドを合成した。これをプライマーとして前記の
方法で相補鎖を合成し、DNAリガーゼで閉環した後、
大腸菌BMH71-18mutSを形質転換し、得られたプラスミド
をNCOIとBamHIで消化して、0.27kbの断片を生
成するものを目的の変異体として選択した。最終的に
は、塩基配列分析により、変異を確認した。このように
して得られたプラスミドはH−271の III−12と I
II−14を欠失したヘパリン結合ドメインポリペプチド
と細胞接着ドメインポリペプチドがメチオニン残基を介
して結合した融合タンパク質を発現するプラスミドであ
り、該プラスミドをpCHV89と命名した。これを再び大腸
菌HB101に導入して、得られた形質転換体を Esche
richia coli HB101/pCHV89と命名、表示して工業
技術院微生物工業技術研究所に寄託した〔微工研菌寄第
12182号(FERM P−12182)〕。
【0024】実施例2 CHV−89、CHV−90、及びCHV−179の大
腸菌による生産と精製 pCHV89を導入した Escherichia coli HB101/pCHV
89(FERM P−12182)を50μg/mlのアン
ピシリンを含む5mlのL−ブロス培地に接種し、37
℃、1夜振とう培養した。これを500mlの同培地に接
種して振とう培養し、660nmの吸光度が0.3のとき
に、2mMのIPTGを添加して、更に20時間培養し
た。次に遠心分離により集菌し、1mM EDTA、5mM
メルカプトエタノール、3μM p−アミジノフェニル
メタンスルホニルフルオライドを含む20mMトリス塩酸
バッファー( pH 8.0)に懸濁した。これを超音波処
理した後、遠心分離を行って25mlの上清を得た。上清
をDEAE−トヨパール 650M(15ml)をカラム
に吸着させ、カラムを20mMトリス塩酸バッファー( p
H 8.0)で洗浄後、バッファー中のNaCl濃度の上
昇により吸着物を分画した。イムノブロッティングによ
り検出された目的画分を集め、20mMトリス塩酸バッフ
ァー(pH8.0)で平衡化した抗体カラム(FN−10
を結合させたセファロース4B、10ml)に吸着させ、
次に0.1M NaClを含む同バッファー、20mM酢
酸アンモニウムの順に洗浄した後、40mM酢酸で目的画
分を溶出した。その中でSDS−PAGEで単一のバン
ドを与える画分を集めて、脱塩、凍結乾燥した。このよ
うにして500mlの培養菌体から約5mgのCHV−89
を得た。このCHV−89の一部をプロテインシーケン
サー(477A/120A、アプライドバイオシステム
ズ社)で分析して、N末端配列を確認した。また、カル
ボキシペプチダーゼP消化法により、C末端アミノ酸を
確認した。
【0025】同様の方法により、pCHV179 を導入した E
scherichia coli HB101/pCHV179 (FERM P
−12183)を培養し、500mlの培養菌体から、約
5mgのCHV−179を得た。また、pCHV90を導入した
Escherichia coli HB101/pCHV90の500ml培養
液から約4mgのCHV−90を得た。CHV−179、
CHV−90のN末端アミノ酸、C末端アミノ酸も、上
記と同様の方法でそれぞれ確認した。
【0026】実施例3 生物活性の測定 前記実施例2で得られた各ポリペプチドを用いて細胞接
着活性、ヘパリン結合活性及びヘパリン結合ドメインに
対するモノクローナル抗体との反応性を測定した。細胞
接着活性は、ルオスラティらの方法〔メソッズ イン
エンザイモロジー、第82巻、該803〜831頁(1
981)〕に準じて測定した。試料を蒸留水、PBS
(リン酸緩衝化生理食塩水)等に溶かし、96穴マイク
ロプレート上で階段的に希釈した。4℃、2時間インキ
ュベートして、試料をプレート上に吸着させた(50μ
l/ウエル)。3%BSA(牛血清アルブミン)を含む
PBS溶液を100μl/ウエル加え、37℃、1時間
インキュベートしてプレートをブロックした。PBSで
プレートを洗浄後、あらかじめダルベッコ( Dulbecoo′
s)イーグル最小栄養培地(DMEM)に5×105 細胞
/mlとなるように懸濁させたベビーハムスター腎細胞
(BHK−21)を100μl/ウエル分注し、37
℃、1時間インキュベートした。なお使用したBHK−
21細胞は、凍結保存した株を継代培養後、トリプシン
処理(37℃、5分)したものを用いた。PBSでプレ
ートを洗浄後、3%ホルマリン溶液で細胞をプレート上
に固定した。顕微鏡下でBHK−21細胞の伸展を観察
し、伸展細胞数が、n−FNの高濃度における伸展細胞
数の50%となる試料の濃度(ED50)を求め細胞接着
活性の指標とした。
【0027】ヘパリン結合活性の測定は以下のようにし
た。20mMリン酸バッファー( pH 7.0)で平衡化し
たAFヘパリン−トヨパール650Mのカラム(1.5
ml)に試料を乗せ、バッファー中のNaCl濃度を段階
的に上昇させ、溶出される塩濃度によりヘパリンへの結
合力を表した。
【0028】ヘパリン結合ドメインに対するモノクロー
ナル抗体との反応性の測定は、試料1〜2μgをSDS
−PAGEで分離し、これをセミドライブロッター(ザ
ルトリウス社)を用いて、ニトロセルロースメンブラン
にブロッティングした。メンブランをブロッキング液
(1%BSAを含むPBS)で処理した後、FNのヘパ
リン結合ドメインを認識するモノクローナル抗体(IS
T−1及び−2、セラ・ラブ社)を含むブロッキング液
と約1時間インキュベートし、50mM NaCl及び
0.05% NP−40を含む10mMトリス・HClバ
ッファー( pH 7.5)でメンブランを洗浄、更にNP
−40を含まない上記バッファーでメンブランを洗浄し
た。次いで、パーオキシダーゼ標識2次抗体(アマシャ
ム社)を含むブロッキング液と約1時間インキュベート
し、同様にメンブランを洗浄した。4−クロロ−1−ナ
フトール及びH2 2 を含む50mM NaCl−トリス
・HCl(pH7.5)溶液にメンブランを浸して、メン
ブランにブロッティングされたバンドを発色させた。
【0029】以上のようにして得られた測定結果を表1
に示す。なお、特開平2−311498号公報記載のC
277 −Met−H271 を対照とし用いた。
【0030】
【表1】 表 1 ─────────────────────────────────── 細胞接着活性 ヘパリン結合活性 抗体との反応性 試 料 ( ED50、nM) (溶出塩濃度、mM) ───────── IST-1 IST-2 ─────────────────────────────────── C277 -Met-H271 176 300 有 有 CHV-179 176 300 有 有 CHV-90 176 150 無 無 CHV-89 176 300 有 有 ───────────────────────────────────
【0031】実施例4 次に本発明のポリペプチドの生理活性を示す。 (1)ガン転移抑制作用 C57BL/6 マウス(1群5匹)にB16-BL6 メラノーマ細胞
3×104 個と本発明のポリペプチド1000μgを静
脈内に注入する(細胞とポリペプチドをPBS中で混合
し、その0.05mlを静注する)。対照としてメラノ
ーマ細胞のみを静注し、対照群とする。メラノーマ細胞
移植後14日目に肺を摘出して、肺表面における転移結
節数を実体顕微鏡を用いて測定する。その結果を表2に
示す。
【0032】
【表2】 表 2 ─────────────────────────────────── 投与量 肺への転移数 μg/マウス 平均±SD ─────────────────────────────────── 対 照 − 45±7 CHV−89 1000 12±9 CHV−90 1000 11±5 CHV−179 1000 4±3 ───────────────────────────────────
【0033】以上のように、本発明のポリペプチド投与
群で、メラノーマの肺転移が抑制されている。
【0034】(2)急性毒性試験 C57BL/6 マウスにCHV−89、CHV−90、CHV
−179をそれぞれ静脈内投与した。100mg/kg
において毒性は認められなかった。
【0035】実施例5 次に、本発明のポリペプチドの製剤例を示す。なお各例
において、部は重量部を意味する。
【0036】製剤例1 CHV−89 30部に対しPBSを加え、全量を20
00部としてこれを溶解後、ミリポアフィルターGSタ
イプを用いて除菌ろ過する。このろ液2gを10mlの
バイアル瓶にとり凍結乾燥し、1バイアルに該ポリペプ
チド30mgを含む凍結乾燥注射剤を得た。
【0037】製剤例2 CHV−90 30部に対しPBSを加え、全量を20
00部としてこれを溶解後、ミリポアフィルターGSタ
イプを用いて除菌ろ過する。このろ液2gを10mlの
バイアル瓶にとり凍結乾燥し、1バイアルに該ポリペプ
チド30mgを含む凍結乾燥注射剤を得た。
【0038】製剤例3 CHV−179 30部に対しPBSを加え、全量を2
000部としてこれを溶解後、ミリポアフィルターGS
タイプを用いて除菌ろ過する。このろ液2gを10ml
のバイアル瓶にとり凍結乾燥し、1バイアルに該ポリペ
プチド30mgを含む凍結乾燥注射剤を得た。
【0039】製剤例4 CHV−89 50部、乳糖600部、結晶セルロース
330部及びヒドロキシプロピルセルロース20部をよ
く混和し、ロール型圧縮機(ローラーコンパクター)を
用いて圧縮し、破砕して16〜60メッシュの間に入る
ように篩過し、顆粒とした。
【0040】製剤例5 CHV−90 50部、乳糖600部、結晶セルロース
330部及びヒドロキシプロピルセルロース20部をよ
く混和し、ロール型圧縮機(ローラーコンパクター)を
用いて圧縮し、破砕して16〜60メッシュの間に入る
ように篩過し、顆粒とした。
【0041】製剤例6 CHV−179 50部、乳糖600部、結晶セルロー
ス330部及びヒドロキシプロピルセルロース20部を
よく混和し、ロール型圧縮機(ローラーコンパクター)
を用いて圧縮し、破砕して16〜60メッシュの間に入
るように篩過し、顆粒とした。
【0042】
【発明の効果】本発明によりFNのヘパリン結合ドメイ
ン由来のポリペプチド部の構造が異なり、細胞接着活性
とガン転移抑制活性の両活性を合せ持つ新規低分子ポリ
ペプチド、並びにそれらをコードする核酸、及びそのD
NAを用いる該ポリペプチドの遺伝子工学的な製造方法
が提供される。このポリペプチドは遺伝子工学的に大量
に供給可能であり、創傷治癒等種々の分野で有用な新規
タンパク質である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpCHV179 、pCHV89、及びpCHV90をそ
れぞれ構築するための工程図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/02 9282−4B C12N 15/00 A //(C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 君塚 房夫 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒 造株式会社中央研究所内 (72)発明者 加藤 郁之進 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒 造株式会社中央研究所内

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(化1): 【化1】A−(B)−(C) (式中Aは配列表の配列番号1で表されるポリペプチ
    ド、Bは配列表の配列番号2で表されるポリペプチド、
    Cは配列表の配列番号3で表されるポリペプチド、m、
    nはそれぞれ1又は0の数を示す。但しm、nの和は1
    以上である)で表されることを特徴とする機能性ポリペ
    プチド。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の機能性ポリペプチドを含
    有することを特徴とするガン転移抑制剤。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の機能性ポリペプチドをコ
    ードする核酸。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の機能性ポリペプチドをコ
    ードするDNAを組込んだプラスミド。
  5. 【請求項5】 請求項4記載のプラスミドを導入した形
    質転換体。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の形質転換体を培養し、該
    培養物より請求項1記載の機能性ポリペプチドを採取す
    ることを特徴とする機能性ポリペプチドの製造方法。
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