JP2727968B2 - タクシーメータ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、走行距離及び走行時間
に基づいて乗車料金を演算するタクシーメータに関する
ものであり、更に詳しくは乗車料金の演算の基準となる
ＲＯＭ内に書き込まれた各種定数を表示可能にすること
によって、タクシーメータの検定項目を減らすことを可
能にしたタクシーメータに関する。

【０００２】

【従来の技術】タクシーには走行距離と走行時間によっ
て乗車料金を計算するタクシーメータが搭載されてい
る。現在主流である電子式タクシーメータは、乗車料金
の基準となる各種定数を必要に応じてＰＲＯＭから読み
出し、車体に搭載された距離パルス発振器が出力する距
離パルスをマイクロプロセッサよりなる演算手段により
計数しながら、前記各定数に基づいて乗車料金を演算
し、その演算結果をタクシーメータ前面の料金表示部に
表示している。

【０００３】このようなタクシーメータは計量器の一種
であり、しかもその計量結果は乗客に対する請求運賃と
なることから、各タクシーメータの器差が許容される公
差の範囲内に収まっているか否かを調べるための検定制
度が設けられている。検定は車体に搭載される前に行わ
れる頭部検査と、車体に搭載された後に行われる走行検
査とがあり、共に地方自治体における監督官庁が行って
いる。

【０００４】頭部検査は、走行時に車体から送給される
距離パルスに相当する距離パルス列を、車体搭載前のタ
クシーメータ頭部に供給して走行時におけるカウント状
態を再現し、その器差が検定公差内であれば、当該メー
タ頭部は合格品であると判断して、メータ頭部を封印し
たうえ検定合格印を押印している。また、走行検査は１
年に１回の頻度で定期的に行うものであり、タクシーメ
ータを搭載した車体の駆動輪を検定ローラー上で回転さ
せて走行状態を再現し、この状態でタクシーメータのカ
ウント状態を観測することにより、タイヤの磨耗度を含
めたタクシーメータの計測精度を調べている。

【０００５】ところで、タクシーメータの料金カウント
システムは、「基本距離」に対応する基本料金と、「そ
の後の距離」に対応してカウントされる時間併用加算運
賃とがあり、更に割増料金や迎車固定料金等もあり、し
たがって頭部検査及び走行検査のいずれにおいてもこれ
ら全てが検査対象項目となり、これら全ての項目につい
て検査されているのが実情である。上記料金体系を規定
する各定数、例えば、基本料金、基本距離、その後の距
離、割増率、税率、その後の料金、その後の距離に対応
する時間、迎車料金等はＰＲＯＭ等に書き込まれてお
り、メータケース表面にはこれらＲＯＭ内定数を記載し
たラベルが貼られているが、検査機関としては、ラベル
内容がＰＲＯＭ内の実際の定数内容と一致しているかを
確認する必要がある。タクシー料金は都道府県単位の認
可制であることから、都道府県が変われば上記定数も変
わり、同一工場内で各地仕様のタクシーメータを製造し
ている現状では、ＲＯＭ内定数と仕様ラベルの内容とが
完全に一致しているとはいいきれず、また走行検査にお
いてはタイヤの磨耗程度も計測精度に影響してくるの
で、検定に際しては全ての走行モードについて多大の時
間と労力を費やして検査しているのが現状である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに全ての走行モードに対してそれぞれ検査を行うこと
は多大の時間と労力を要し、例えば料金改定等が成され
たときなど、膨大な台数のタクシーメータについて短期
間に検定を終了させる必要があるときには、その対応に
混乱が生じていた。特に近年、タクシーの料金体系は、
割引モードの新設に代表されるように複雑化する傾向に
あり、従来の検定手法を踏襲していたのでは検定作業が
一層遅滞することが予測される。本発明はかかる現況に
鑑みてなされたものであり、タクシーメータの検定項目
を減らすことができるタクシーメータを提案するもので
ある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明は、開放不能に封印されたメータケース内に、運賃計
算の基準となる各種定数を記憶させたＲＯＭが搭載され
ているとともに少なくとも基本距離全長にわたって料金
カウントを実測する機能を備えたタクシーメータに、Ｒ
ＯＭ内に書き込まれた定数を呼び出す定数呼び出し手段
と、前記ＲＯＭ内定数呼び出し手段によって呼び出され
た定数を表示する定数表示手段とを備えさせたことを特
徴としている。

【０００８】定数表示手段としては、既設の料金・累計
指数表示部を利用することが考えられる。また定数呼び
出し手段としては、既設の操作ボタンの組み合わせ操作
を採用することが考えられる。この場合、タクシーメー
タが空車モードにあるときのみ前記定数呼び出し操作が
有効となるようにすることが望まれる。

【０００９】また定数呼び出し手段として、専用ＩＣカ
ードの挿入操作あるいは既設ディップスイッチの特定操
作と既設操作ボタンの組み合わせ操作を採用することも
考えられる。

【００１０】

【作用】このような構成のタクシーメータは、定数呼び
出し手段を操作することによってＲＯＭ内から料金計算
に関連する各種定数が呼び出され、定数表示手段に表示
される。料金計算はこれら定数を用いてＣＰＵによって
行われるが、ＣＰＵによる演算精度は極めて高いので、
格納されている各定数の値にさえ誤りがなければ料金計
算に狂いが生じることはあり得ず、したがって、基本距
離についてのみ従来どおりの検定を行い、その他は定数
表示手段に表示される各定数の値に誤りが無いことを確
認するだけで検定を済ますものである。頭部検査の場合
は、基本距離についての従来手法による検定作業すら行
うことなく、基本距離についても定数表示手段に表示さ
れる定数の確認だけで済ますこともできる。また走行検
査は、タクシーメータの精度以外にタイヤ種別やタイヤ
磨耗度の影響も含めて検定する必要があるので、基本距
離については検定ローラによる走行検査を省略すること
はできないが、「その後の走行距離」、「割増モード」
等についてはそれぞれ走行検査を行う必要はない。

【００１１】定数表示手段としては、既設の料金・累計
指数表示部を利用した場合、ＲＯＭ内定数はタクシーメ
ータ前面の料金・累計指数表示部に表示され、定数表示
用の新たな表示部を必要としない。

【００１２】既設の操作ボタンの組み合わせ操作によっ
て定数呼び出しを行うときは、複数のタリフ設定ボタン
を同時に操作するか、あるいは所定の順番で操作するこ
とにより、定数表示手段に各種定数が表示される。

【００１３】またタクシーメータが空車モードにあると
きのみ前記定数呼び出し操作が有効となるようにした場
合は、賃走時等の実車走行時には定数表示ができないか
ら、故意に表示させた定数値を乗車料金であるかのよう
に装って乗客から過剰料金を詐取する不正を行うことは
できない。

【００１４】また専用ＩＣカードの挿入操作あるいは既
設ディップスイッチの特定操作と既設操作ボタンの組み
合わせ操作により定数を呼び出すようにした場合は、こ
れら操作は実車走行時に操作することはできないので、
この場合も故意に表示させた定数値を乗車料金であるか
のように装って乗客から過剰料金を詐取する不正を行う
ことはできない。

【００１５】

【実施例】次に本発明の詳細を図示した実施例に基づき
説明する。第１図は本発明に係るタクシーメータの主要
構成を示すブロック図であり、図２はタクシーメータ頭
部の正面図である。本タクシーメータは、従来のタクシ
ーメータと同様に、タクシーメータ頭部Ａと、車軸の回
転に対応して距離パルスを発生する距離パルス発生器Ｂ
とから主として構成されている。タクシーメータ頭部Ａ
にはマイクロプロセッサを主体とする演算手段１が搭載
され、この演算手段１を中心にして、前記マイクロプロ
セッサを制御するためのプログラムや料金計算の基準と
なる各種定数を記憶させたＰＲＯＭ等よりなるＲＯＭ
２、演算手段１による演算処理結果が格納されたり演算
処理時のワークエリアとなるＲＡＭ３、現在時刻を刻み
続ける内部時計４、距離補正回路５、賃走、割増、迎
車、支払、空車等のタリフ設定を行うためのタリフ設定
ボタン６、前記タリフ設定ボタン６によって設定された
タリフを表示するタリフ表示部７、料金表示部８ａと累
計指数表示部８ｂ及び時刻表示部８ｃとより構成される
料金・累計指数表示部８、あるいは図示しないが他の表
示機能を兼用させた料金表示部のみを配置した構成であ
る。演算手段１は単一のマイクロプロセッサを主体とし
た構成であるが、複数のマイクロプセッサを用いること
もできる。またＲＯＭ２としてはＰＲＯＭ以外にもフラ
ッシュメモリを用いることもできる。図例のタリフ設定
ボタン６，６……の項目は最も一般的なものを示してい
るが、この他にも、賃走ボタンと割増ボタンに代えて両
ボタンの機能を一体化し、内部時計４に関連づけて賃走
モードと割増モードを自動選択する「実車ボタン」を設
けることや、あるいは「身体障害者割引ボタン」や
「「高速道路走行ボタン」等を新設したものも対象とな
る。また図例の料金・累計指数表示部８は、図３に示す
ように料金表示部８ａと累計指数表示部８ｂ及び時刻表
示部８ｃとより構成されているが、他の構成も採用可能
である。また図例のものではセグメント方式の表示体を
用いているが、料金・累計指数表示部８全体をドットマ
トリックス方式の表示体から構成することや、更にタリ
フ表示部７と料金・累計指数表示部８を一体化して一枚
のドットマトリックス方式の表示体によって構成するこ
ともできる。

【００１６】本発明の特徴は、上記構成のタクシーメー
タにおいて、ＲＯＭ内に書き込まれた定数を呼び出す定
数呼び出し手段と、この定数呼び出し手段によって呼び
出された定数を表示する定数表示手段とをタクシーメー
タ頭部Ａに備えさせたことが特徴である。定数呼び出し
手段としては専用ボタンを新設してもよいが、定数呼び
出しが必要になるのは検定のときだけであることを考え
れば、既存のタリフ設定ボタン６，６……を兼用し、タ
リフ設定ボタン６，６……の組み合わせ操作によって定
数呼び出しが可能なように構成することが好ましい。

【００１７】また、定数表示手段も、専用の表示部を設
けることも考慮されるが、タクシーメータ頭部Ａの前面
パネルが狭いことや、新たな表示体が必要となってコス
トアップ原因となることなどを考えると、専用表示部を
設けることなく、既設の料金・累計指数表示部８を利用
することが好ましい。

【００１８】定数呼び出し手段のより具体的な内容とし
ては、例えば特定のタリフ設定ボタン６，６……を複数
個同時に押したり、あるいは複数のボタンを所定の順序
で押すことによって料金・累計指数表示部８が定数表示
モードに切り替わり、以後、特定ボタンを順次あるいは
繰り返し押下することにより表示される定数内容が切り
替わるようにしたり、あるいは前記ボタン操作によって
定数表示モードに切り替わった後は、一定時間経過する
毎に定数内容が自動的に切り替わって次々と表示される
ようにすることなどが考えられる。

【００１９】また、乗務員による定数呼び出し手段の操
作を禁止することも考えられる。ＲＯＭ内定数の表示は
検定時にのみ必要なのであって乗務員にとっては全く不
要のものである。乗務員による定数呼び出しを禁じる工
夫をしていない場合、乗務員が営業走行中に特定ボタン
操作によって料金・累計指数表示部８の料金表示内容
を、それよりも桁数の大きいＲＯＭ内定数の表示に切り
替えたならば、乗客はメータ表示部の内容を信じて過剰
料金を支払わされるという不正が発生する可能性があ
る。これを防止するには、営業走行中は定数表示モード
への切り替えを禁止できるように工夫することが好まし
い。

【００２０】営業走行中の定数表示モードへの切り替え
を禁止する具体的手段は種々考えられるが、例えば定数
表示モードへの切り替えを空車モードのときのみを許可
すること、あるいは定数表示モードへの切り替えをタリ
フ設定ボタン６，６……の組み合わせ操作だけに依ら
ず、図２に示すようにメータケース前面において、通常
はカバーによって隠されている各種補正用あるいは設定
用のディップスイッチ５ａの操作を併用したり、あるい
は営業情報収集用のＩＣカードとは別に検定員のみが所
持する検定用の専用ＩＣカード９を作り、この専用ＩＣ
カード９をＩＣカード挿入口１０に挿入したときのみ始
めて定数表示モードへの切り替えがなされるようにする
ことも考えられる。

【００２１】図４〜図１１は、料金・累計指数表示部８
にＲＯＭ内定数を表示させた状態を示している。図例の
ものでは、料金表示部８ａに定数値が表示され、累計指
数表示部８ｂに定数の種別が表示されている。定数の種
別は数字で表現しており、例えば、基本料金は「１」、
基本距離は「２」、その後の距離は「３」、割増率は
「４」、税率は「５」、その後の料金は「６」、その後
の距離に対応する時間は「７」、迎車料金は「８」を対
応させている。ＲＯＭ２内定数としてはこれら以外のも
のもある。料金・累計指数表示部８がドットマトリック
ス方式の表示体から構成されているときは、定数種別を
漢字や特殊記号で表示する場合もある。

【００２２】図４は基本料金が６００円であることを示
し、図５は基本距離が２０００ｍであることを示し、図
６はその後の距離が３９０ｍであることを示し、図７は
割引率が２０％であることを示し、図８は税率が３．０
％であることを示し、図９はその後の料金が９０円であ
ることを示し、図１０はその後の距離に対応する時間が
１４５秒であることを示し、図１１は迎車料金が１５０
円であることを示している。尚、ここでは基本距離及び
その後の距離としてはｍで表示しているが、パルス数で
表示してもよい。また、図示しないが定数内容を、タク
シーメータ頭部Ａに外部接続される領収書発行機を利用
してプリントアウトすることも考えられる。

【００２３】このように料金・累計指数表示部８に表示
された定数値はＲＯＭ２内に格納されている定数値その
ものであり、乗車料金の演算はこれら定数値に基づいて
演算手段１によって正確に演算される。演算手段１によ
る演算精度は極めて高く充分信頼できるから、このタク
シーメータの検定は、基本距離についてのみ、パルス列
を入力したりあるいはローラ走行によって従来どおりの
検査を行い、他は表示された各定数の値に誤りが無いこ
とを確認するだけでタクシーメータの検定を終えるもの
である。

【００２４】

【発明の効果】本発明のタクシーメータは、ＲＯＭ内に
書き込まれた定数を呼び出す定数呼び出し手段と、呼び
出された定数を表示する定数表示手段とを備えさせたの
で、封印されたメータケース内に収容されたＲＯＭ内の
各種定数を読み出して表示させることができ、検定に際
しては、基本距離についてのみ従来どおりの検定を行
い、その他は定数表示手段に表示される各定数の値に誤
りが無いことを確認するだけで検定を済ますことが可能
となるので、従来行われているような、「その後の距
離」や「割増」走行時等の料金カウント状況をそれぞれ
検査する作業が省略でき、検定作業に要する時間と労力
を飛躍的に削減することができるようになる。

【００２５】請求項２記載のように、定数表示手段とし
て、既設の料金・累計指数表示部を利用した場合、ＲＯ
Ｍ内定数はタクシーメータ前面の料金・累計指数表示部
に表示されるので、定数表示用の新たな表示部を必要と
しない。

【００２６】請求項３記載のように、既設の操作ボタン
の組み合わせ操作によって定数呼び出しを行うようにし
たときは、定数呼び出し用の新たなボタンを必要とせず
タクシーメータ前面の狭い空間を有効利用することがで
きる。

【００２７】請求項４記載のように、空車モードにある
ときのみ前記定数呼び出し操作が有効となるようにした
場合は、故意に表示させた定数値を乗車料金であるかの
ように装って乗客から過剰料金を詐取する不正が行われ
ることはない。

【００２８】請求項５記載のように、専用ＩＣカードの
挿入操作あるいは既設ディップスイッチの特定操作と既
設操作ボタンの組み合わせ操作により定数を呼び出すよ
うにした場合は、ディップスイッチは検定終了後封印さ
れ検定時以外に操作することはできず、また専用ＩＣカ
ードは検定員しか所持できないので、故意に表示させた
定数値を乗車料金であるかのように装って乗客から過剰
料金を詐取する不正がが発生する懸念は全くない。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明のタクシーメータの主要部を示すブロ
ック図

【図２】 本発明のタクシーメータ頭部の外観を示す正
面図

【図３】 料金・累計指数表示部の概要を示す説明図

【図４】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状態
を示す説明図

【図５】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状態
を示す説明図

【図６】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状態
を示す説明図

【図７】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状態
を示す説明図

【図８】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状態
を示す説明図

【図９】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状態
を示す説明図

【図１０】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状
態を示す説明図

【図１１】 料金・累計指数表示部に定数を表示した状
態を示す説明図

【符号の説明】

Ａ タクシーメータ頭部 Ｂ 距離パルス発生
器 １ 演算手段 ２ ＲＯＭ ３ ＲＡＭ ４ 内部時計 ５ 距離補正回路 ６ タリフ設定ボタ
ン ７ タリフ表示部 ８ 料金・累計指数
表示部 ８ａ 料金表示部 ８ｂ 累計指数表示
部 ８ｃ 時刻表示部 ９ 専用ＩＣカー
ド １０ ＩＣカード挿入口

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 開放不能に封印されたメータケース内
   に、運賃計算の基準となる各種定数を記憶させたＲＯＭ
   が搭載されているとともに少なくとも基本距離全長にわ
   たって料金カウントを実測する機能を備えたタクシーメ
   ータに、 ＲＯＭ内に書き込まれた定数を呼び出す定数呼び出し手
   段と、 前記ＲＯＭ内定数呼び出し手段によって呼び出された定
   数を表示する定数表示手段と、 を備えさせたことを特徴とするタクシーメータ。
2. 【請求項２】 定数表示手段として、既設の料金・累計
   指数表示部を利用してなる請求項１記載のタクシーメー
   タ。
3. 【請求項３】 定数呼び出し手段として、既設の操作ボ
   タンの組み合わせ操作を採用してなる請求項１又は２記
   載のタクシーメータ。
4. 【請求項４】 既設の操作ボタンの組み合わせ操作によ
   る定数呼び出し操作は、タクシーメータが空車モードに
   あるときのみ有効となした請求項３記載のタクシーメー
   タ。
5. 【請求項５】 定数呼び出し手段として、専用ＩＣカー
   ドの挿入操作あるいは既設ディップスイッチの特定操作
   と既設操作ボタンの組み合わせ操作を採用してなる請求
   項１又は２記載のタクシーメータ。