JP2727262B2 - 光波長変換素子 - Google Patents

光波長変換素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基本波を第2高調波等
に波長変換する光波長変換素子、特に詳細には、非線形
光学材料の周期構造を有する光波長変換素子に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来より、非線形光学材料を利用して、
レーザー光を第2高調波等に波長変換(短波長化)する
試みが種々なされている。このようにして波長変換を行
なう光波長変換素子の一つとして、バルク結晶型のもの
が広く知られている。
【0003】ところで、上記のようなバルク結晶型とす
ると非線形光学定数を有効利用できない非線形光学材料
に対して、いわゆる周期構造を導入することが考えられ
ている。この周期構造は、例えばAppl .Phys .Let
t .(アプライド・フィジックス・レター)57(20),12
November 1990 p2074に示されるように、屈折率あ
るいは非線形分極(ドメイン)が互いに異なる第1、第
2の部分が基本波の進行方向に周期的に並設されたもの
である。この周期構造を有する従来の光波長変換素子を
図1の(a) に模式的に示す。図中1、2がそれぞれ第1
の部分、第2の部分であり、これらは例えば基本波3を
導波させる光導波路に形成されている。この基本波3
は、非線形光学材料からなる第1の部分1および第2の
部分2を通過して、例えば波長が1/2 の第2高調波4に
波長変換される。この周期構造は、第1の部分、第2の
部分における基本波と波長変換波との位相不整合量をΔ
1 、Δk2 とし、第1、第2の部分の長さを各々
1 、l2 として、 Δk1 1 +Δk2 2 =2πM (M=0、±1、±
2……) …(1) が成立するように形成されており、
このような周期構造を基本波と波長変換波とが通過する
ことにより、両者の間で位相整合が取られるようにな
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような周期構造
の導入が特に望まれる非線形光学材料の一つとして、II
−VI族化合物半導体が挙げられる。すなわちこのII−VI
族化合物半導体は非線形光学定数が比較的大きいもの
の、非線形光学定数としてd14、d25、d36しか持たな
いので、バルク結晶状態で使用したのでは基本波と波長
変換波との位相整合が取れないからである。
【0005】他方、上述のII−VI族化合物半導体を良質
に結晶成長させるためには、格子定数が一致する基板が
必要であるが、そのような基板は見つかっていない。そ
こで従来から知られているように、格子定数の異なる基
板上にII−VI族化合物半導体からなる臨界膜厚以下の歪
超格子層を成長させて、良質の結晶を得ることが考えら
れる。
【0006】ところが、II−VI族化合物半導体の場合、
臨界膜厚は通常10nm(=100 Å)程度であり、上記歪
超格子層はそれ以下の極めて薄いものとなるのに対し、
前記(1) 式の位相整合条件を満足するための第1、第2
の部分の長さl1 、l2 は、数μm程度となってしま
う。したがって、このII−VI族化合物半導体を利用する
場合は、従来から知られている周期構造をそのまま適用
したのでは、歪超格子層を採用して良質の結晶を得るこ
とは不可能となる。
【0007】以上、非線形光学材料としてII−VI族化合
物半導体を使用する場合の問題について説明したが、そ
の他例えば、非線形光学材料によりLB(ラングミュア
ブロジェット)膜を積層して光波長変換素子を得るよう
な場合でも、膜厚が非常に小さくしかできない場合があ
り、そのような場合は前記(1) 式で示される位相整合条
件を満足できないことになる。
【0008】本発明は上記のような事情に鑑みてなされ
たものであり、非線形光学材料を極めて薄い膜の状態に
した上で、周期構造により基本波と波長変換波とを位相
整合させることができる光波長変換素子を提供すること
を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による光波長変換
素子は、前述したように、基本波を波長変換する非線形
光学材料からなる長さl1 の第1の部分、および長さl
2 の第2の部分が基本波進行方向に周期的に並設され、
前記(1) 式で示される位相整合条件を満足するようにし
た、周期構造を有する光波長変換素子を、第1の部分お
よび第2の部分をそれぞれN分割(Nは2以上の整数)
して、両部分を交互に繰り返すように並設した形のもの
であり、より具体的には、基本波の進行方向に、長さl
1 /Nの第1の非線形光学材料、および長さl2/N
(Nは2以上の整数)の第2の非線形光学材料が交互に
繰り返すように周期的に並設されてなり、前記長さl1
/Nの部分N個による基本波と波長変換波との位相不整
合量をΔk1 、前記長さl2 /Nの部分N個による基本
波と波長変換波との位相不整合量をΔk2 としたとき、 Δk1 1 +Δk2 2 =2πM (M=0、±1、±2……) が成立していることを特徴とするものである。
【0010】
【作用および発明の効果】上記構造の本発明の光波長変
換素子を、前述した従来の周期構造を有する光波長変換
素子と比較して、模式的に図1の(b) に示す。同図(a)
に示した従来装置においては、基本的に、1つの第1の
部分1および1つの第2の部分2で構成される1周期部
分により、基本波3と第2高調波4とが位相整合する。
それに対して同図(b) に示した本発明の光波長変換素子
においては、上記1周期部分に相当する長さ(l1 +l
2 )間に配されたN(図ではN=6)分割の第1の部分
1’N個と、同じくN分割の第2の部分2’N個とによ
り位相整合が取られる。すなわちこの場合の位相整合条
件は、◆ N(Δk1 1 /N+Δk2 2 /N)=2πM …(2) となる(ただしM=0、±1、±2……)。この(2) 式
の左辺最前のNをカッコ内に入れれば、前述の(1) 式の
位相整合条件と等しくなる。
【0011】以上説明の通り、本発明の光波長変換素子
においては、従来装置では位相整合のためにそれぞれ長
さl1 、l2 としなければならなかった第1、第2の部
分をそれぞれN分割して、各分割領域の長さをl1
N、l2 /Nと非常に短くしても、位相整合が取られる
ことになる。Nの数を非常に大きくすれば、当然上記分
割領域のそれぞれの長さは極めて短く、つまり極めて薄
くなる。そこで、例えば非線形光学材料としてII−VI族
化合物半導体を使用する場合には、前述したような歪超
格子層を形成して、良質の結晶を成長させることも可能
となる。またそれ以外、非線形光学材料をLB膜等の薄
膜構造とする場合でも、本発明を適用すれば、周期構造
により位相整合を取ることが可能となる。
【0012】そうであれば、大きな非線形光学定数を持
つのにもかかわらず、厚く形成することができないため
従来は周期構造を採用し得なかった非線形光学材料を使
用して、高い波長変換効率を実現可能となる。
【0013】
【実施例】以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を
詳細に説明する。図2は、本発明の第1実施例による光
波長変換素子10を示すものである。本実施例の光波長変
換素子10は、非線形光学効果を有するII−VI族化合物半
導体として、ZnS/ZnSeが用いられたものであ
る。すなわち、GaAs基板15上には、第1の部分のN
分割領域としてのZnS層11と、第2の部分のN分割領
域としてのZnSe層12とが交互に積層されている。Z
nS層11とZnSe層12は各々、長さ(l1 +l2 )内
にN層ずつ形成されている。なお、ZnS層11およびZ
nSe層12と基本波13との相互作用長をより大きく取る
ために、ZnS層11とZnSe層12が各々N層ずつ形成
された長さ(l1 +l2 )の領域を複数組み合わせるの
が望ましい。つまり、ZnS層11とZnSe層12は各々
N×m(m=1、2、3……)層ずつ形成されることに
なる。
【0014】ZnS、ZnSeおよびGaAsの格子定
数aはそれぞれ、5.41、5.69、5.65Åである。このよう
に基板材料の格子定数と層材料の格子定数が異なってい
ても、ZnS層11とZnSe層12をそれぞれ臨界膜厚以
下にして歪超格子層とすると、各層を良質に結晶成長さ
せることができる。本実施例では、後述するように、Z
nS層11とZnSe層12の膜厚は各々1nm、4nmと
されている。
【0015】基本波13はGaAs基板15と反対側から、
ZnS層11およびZnSe層12の並び方向に入射せしめ
られる。この基本波13は波長が900 nmのものであり、
非線形光学材料からなるZnS層11およびZnSe層12
により、波長が1/2 すなわち450 nmの第2高調波14に
変換される。この第2高調波14を含む光は、基板15に設
けられた開口部15a から出射し、図示しないフィルター
に通されて第2高調波14のみが取り出される。
【0016】本実施例の材料で前記(1) 式の位相整合条
件を満足しようとすると、l1 =1μm、l2 =4μm
となる。これらの数値はそれぞれZnS、ZnSeの臨
界膜厚を大きく上回る。そこで本実施例においてはN=
1000として、ZnS層11の膜厚をl1 /N=1nm、Z
nSe層12の膜厚をl2 /N=4nmに設定し、ZnS
層11とZnSe層12の歪超格子層を得ている。
【0017】そして、このような膜厚のZnS層11およ
びZnSe層12を、それぞれN×m層ずつ形成すること
により、前述の(2) 式に示した位相整合条件を満足する
ことができる。
【0018】次に図3を参照して、本発明の第2実施例
について説明する。なおこの図3において、図2中のも
のと同等の要素については同番号を付し、それらについ
ての重複した説明は省略する。この光波長変換素子20
は、GaAs系面発光レーザー21と一体化されている。
レーザー21の後端面21a には、波長860 nmの基本波と
してのレーザー光13および波長430 nmの第2高調波14
を良好に反射させるコーティングが施されている。そし
て光波長変換素子20の前端面20a には、上記基本波13を
良好に反射させる一方、第2高調波14は良好に透過させ
るコーティングが施されている。こうして本例では、上
記二つの面21a ,20a により、半導体レーザーの共振器
が構成されている。
【0019】本実施例においても、ZnS層11とZnS
e層12は極めて膜厚の小さい歪超格子層とし、そしてそ
れらを各々N×m層ずつ設けることにより、基本波13と
第2高調波14とを位相整合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来装置と本発明装置における周期構造を比較
して模式的に示す概略図
【図2】本発明の第1実施例の光波長変換素子を示す概
略側面図
【図3】本発明の第2実施例の光波長変換素子を示す概
略側面図
【符号の説明】
1’ 第1の部分の分割領域 2’ 第2の部分の分割領域 3、13 基本波 4、14 第2高調波 11 ZnS層 12 ZnSe層 15 GaAs基板

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基本波の進行方向に、該基本波を波長変
    換する長さl1 /Nの第1の非線形光学材料、および該
    基本波を波長変換する長さl2 /N(Nは2以上の整
    数)の第2の非線形光学材料が交互に繰り返すように周
    期的に並設されてなり、 前記長さl1 /Nの部分N個による基本波と波長変換波
    との位相不整合量をΔk1 、前記長さl2 /Nの部分N
    個による基本波と波長変換波との位相不整合量をΔk2
    としたとき、 Δk1 1 +Δk2 2 =2πM (M=0、±1、±2……) が成立していることを特徴とする光波長変換素子。
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