JP2726694B2 - 導電性炭化珪素焼結体及びその製造方法 - Google Patents

導電性炭化珪素焼結体及びその製造方法

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JP2726694B2 JP1020573A JP2057389A JP2726694B2 JP 2726694 B2 JP2726694 B2 JP 2726694B2 JP 1020573 A JP1020573 A JP 1020573A JP 2057389 A JP2057389 A JP 2057389A JP 2726694 B2 JP2726694 B2 JP 2726694B2
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【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、各種構造材料や精密金型部材、さらには電
極、抵抗体、発熱体などにも好適に用いられる炭化珪素
焼結体とその製造方法に関し、特に炭化珪素焼結体の本
来の特性が劣化することなく、電気比抵抗が0.1Ω・cm
以下の優れた特性を有する導電性炭化珪素焼結体とその
製造方法に関するものである。
「従来の技術」 炭化珪素焼結体は常温及び高温で化学的に極めて安定
なもので、高温における機械的強度にも優れているた
め、ガスタービン部品、自動車部品、熱交換器部品、バ
ーナーノズル等の構造材料として期待されている。また
このような炭化珪素焼結体は、表面平滑性、高熱伝導
性、耐摩耗性等も良好であることから、光ディスク、非
球面レンズ等の精密金型部材としても有望なものとされ
ている。その他、半導体分野においても加熱処理の高温
化に伴い、耐熱性、耐クリープ性に優れた高純度の炭化
珪素焼結体がボートやプロセスチューブに利用されるよ
うになってきている。
ところで、炭化珪素は共有結合体の強い難焼結性物質
であることから、高密度となるまで焼結して緻密化する
には従来ホウ素、炭素、アルミニウム、ベリリュウム等
の元素や、これらの化合物の1種類あるいは2種類以上
を焼結助剤として炭化珪素粉末に数重量%添加する必要
がある。したがって得られた炭化珪素焼結体は、焼結助
剤の種類やその量などにより、その電気比抵抗値が変化
する可能性がある。例えばホウ素と炭素を添加したもの
では通常電気比抵抗が104〜105Ω・cm程度となり、また
アルミニウム化合物を添加したものでは10〜102Ω・cm
程度になると報告されており、共に電気比抵抗値が比較
的高いものとなる。
このような炭化珪素の性質についてさらに詳述する
と、炭化珪素の結晶には多種類のポリタイプがあり、大
別するとα型とβ型に分類されるが、いずれも半導体の
性質を示すものである。このような炭化珪素の結晶は、
その半導体性が不純物の種類や量によってn型にもp型
にもなり、その電気比抵抗値としては以下に述べるよう
な種々の報告がなされている。例えば、Buschによると
α型のものは常温で10-4〜10-2Ω・cmを示し、Nelsonに
よるとβ型は常温で10-2〜103Ω・cmを示すと報告され
ている。
また、単結晶の電気比抵抗値は、一般に単結晶中の不
純物濃度、例えば硼素や窒素等の濃度が高い程小さくな
る傾向にあり、これは不純物がキャリヤーとして働いて
いるためと考えられている。したがって、ある条件下で
合成された単結晶炭化珪素であれば電気比抵抗値が1Ω
・cm以下のものが得られる可能性もあるが、従来の技術
では大型の炭化珪素単結晶を製造することが困難であ
り、また、小型のものであってもコストが高くなるとい
う問題がある。このような技術的あるいは経済的な問題
により、電気抵抗値の小さい炭化珪素を得るには現在の
ところ単結晶の集合体である焼結体を製造するのが有効
であるとされているが、焼結体中には粒界が存在してい
ることから、ここに不純物が存在すると電気比抵抗値が
大きくなってしまうという新たな問題がある。すなわ
ち、炭化珪素は難焼結性であるため高密度焼結体を得る
ためには上述したごとく焼結助剤を必要とするが、焼結
助剤を添加した場合焼結助剤が不純物として粒界に残る
か、あるいは炭化珪素粒内に固溶してしまう。そして、
粒界に残った燃焼助剤は不純物として挙動するため、単
結晶の電気比抵抗値より高い値になる可能性が大きくな
る。
そこで、従来導電性炭化珪素焼結体を得るため種々の
開発が行われており、特に炭化珪素焼結体に導電性を賦
与するための方法としては大別すると以下に示す方法が
知られている。
(イ)1種類以上の導電性物質を炭化珪素に添加し、焼
結体中にて導電性物質を連続的に接触させる方法、 (ロ)1種類以上の導電性物質あるいは化合物を炭化珪
素に添加し、導電性物質同士や化合物同士を反応させる
か、あるいは炭化珪素と上記導電性物質あるいは化合物
を反応させることにより、導電性の化合物あるいは複合
相を炭化珪素粒界に形成する方法、 (ハ)導電性の繊維を炭化珪素に添加する方法、等があ
る。
添加される化合物としては、(イ)の例として特開昭
58−209084号でTiC,ZrC,MoB2,ZrB2,MoSi2,TaSi2,Zr
Si2,TiN,ZrNの使用が開示されている。また、(ロ)の
例としては、特開昭57−22173号で0.5から30重量%のAl
2O3およびTiO2の両化合物の添加が開示され、特開昭57
−196770号で0.5〜30容量%のIVa,Va,VIa族元素の炭化
物、窒化物、硼化物、酸化物及びこれらの化合物ならび
にAl4C3から選ばれた1種類以上を添加することが開示
され、さらに特開昭60−195057号でアルミニウム及びア
ルミニウム化合物のうちの少なくとも1種類の1〜10重
量%と、1〜15重量%の希土類元素化合物、及び、8重
量%以下のシリコン化合物の添加が開示されている。ま
た、(ハ)の例としては、特開昭61−36162号でTiCある
いはZrB2からなる導電性繊維を使用することが開示され
ている。
「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、上記の導電性炭化珪素焼結体の製造方
法においては以下に述べるような課題がある。
上記(イ)、(ロ)、(ハ)の方法で共通しているの
は、導電性物質あるいは化合物を1種類以上添加するこ
とであるが、これらの物質は炭化珪素と異種物質である
ため、これらの物質を焼結体中に均質に分散させること
は非常に困難である。また、これらの物質を添加する
と、炭化珪素が本来有している特性、例えば、高硬度、
高耐蝕性、高温での機械的特性、高熱伝導性、高表面平
滑性等のいずれかが劣化してしまうという大きな問題が
ある。さらに、これらの方法では上記の炭化珪素焼結体
特性を満足し、さらに、電気比抵抗値の小さい導電性炭
化珪素焼結体を得ることは不可能である。
本発明は、このような技術背景に鑑みてなされたもの
で、その目的とするところは、焼結助剤を添加すること
なく、したがって焼結体の粒界に不純物が入り込むこと
なく高純度で構造欠陥の少ない高密度炭化珪素焼結体を
得、これにより炭化珪素本来の特性が損なわれることな
く、電気比抵抗値が0.1Ω・cm以下と優れた導電性を示
す導電性炭化珪素焼結体を提供することにある。
「課題を解決するための手段」 本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ね
た結果、平均粒子径が0.1〜10μmの第1の炭化珪素粉
末と、非酸化性雰囲気のプラズマ中にシラン化合物また
はハロゲン化珪素と炭化水素とからなる原料ガスを導入
し、反応系の圧力を1気圧未満から0.1torrの範囲で制
御しつつ気相反応させることによって合成された平均粒
子径が0.1μm以下の第2の炭化珪素粉末と、これらの
炭化珪素粉末中に含有される二酸化珪素等の酸化物を還
元するに必要な炭素粉末とを混合し、焼結工程の初期に
還元処理した後、加熱し焼結することにより、炭化珪素
が本来有している高硬度、高耐蝕性、高強度、高熱伝導
性、高表面平滑性等の特性を損なうことなく、電気比抵
抗値が0.1Ω・cm以下と小さい、しかも放電加工が可能
な導電性炭化珪素焼結体が得られることを究明し、上記
課題を解決した。
以下、本発明をその製造方法に基づいて詳しく説明す
る。
まず、平均粒子径が0.1〜10μmの第1の炭化珪素粉
末と、平均粒子径が0.1μm以下の第2の炭化珪素粉末
と、炭素とを用意し、これらを適宜配合して混合する。
ここで第1の炭化珪素粉末としては、一般に使用される
ものでよく、例えば以下に述べる方法などによって製造
されたものを用いることができる。
(A)黒鉛と珪素を1150℃以上で反応させる方法。
(B)黒鉛と二酸化珪素を1475℃以上で反応させる方
法。
(C)珪砂、コークス、のこくず、塩を電気炉中にて22
00〜2500℃で反応させる方法。
また、このようにして製造されて用いられる炭化珪素
の結晶相としては、非晶質、α型、もしくはβ型である
か、あるいはこれらの混合相であってもよい。さらに、
その平均粒子径としては、0.1〜10μm、好ましくは0.1
〜1μmとされる。これは、粒子径が大きいと表面応力
が小さくなり焼結駆動力が減少して高密度焼結体が得ら
れにくくなるからである。
また、第2の炭化珪素粉末としては、プラズマCVD法
により製造されたものとされ、具体的には非酸化性雰囲
気のプラズマ中にシラン化合物またはハロゲン化珪素と
炭化水素の原料ガスを導入し、反応系の圧力を1気圧未
満〜0.1torrの範囲で制御しつつ気相反応させることに
よって得られたものを使用する。例えば、四塩化珪素と
エチレンとからなる原料ガスを高周波により励起された
アルゴンプラズマ中に導いて合成すると、平均粒子径が
0.01〜0.03μm程度のアイペクト比の小さい非晶質超微
粉末が得られる。また、原料ガスとしてモノシランとエ
チレンとからなるものを用いて同様に合成すると、平均
粒子径が0.005〜0.03μm程度のアイペクト比の小さい
β型超微粉末が得られ、合成条件によってはα型とβ型
の混合相が得られる。このようにして得られた超微粉末
では、焼結性が非常に優れているため、上記第1の炭化
珪素粉末と混合するのみで焼結助剤を添加することなく
高密度焼結体を得ることができるものとなる。
また炭化珪素は、一般に合成工程中や保存中にその粒
子表面が酸化されて二酸化珪素等の酸化物が形成されて
いることが多く、その場合には焼結性が阻害されさらに
は電気比抵抗値が増加するといった問題を生ずる。した
がって、このような炭化珪素粉末中に存在する酸化物を
還元するため、上記炭化珪素粉末中に炭素を添加し、焼
結工程の初期に還元処理を行うことが高密度焼結体とす
るなどの目的を達成するうえで有効である。このような
理由により炭素を上記炭化珪素粉末中に添加するが、炭
素の添加量としては、上記第1および第2の炭化珪素粉
末中に含有された酸化物の還元に必要な化学当量相当と
される。
炭素源としては、カーボンブラック、コロイド炭素、
あるいは残炭率の高い有機炭化水素化合物の熱分解炭素
が用いられる。上記有機炭化水素としては、フェノール
樹脂、ポリフェニレン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエ
ステル樹脂、エポキシ樹脂、フルフラール樹脂、アミノ
系樹脂等が使用可能である。また、第2の炭化珪素粉末
をプラズマCVD法により気相合成する際、その合成条件
により超微粉末(第2の炭化珪素粉末)中に炭素を含有
させることが可能である。そしてこの場合、含有される
炭素はその平均粒子径が0.005〜0.03μmと小さいもの
になり、かつ反応性に富むことから、高焼結性、高導電
性等の効果を得る上で特に有効なものとなる。この炭素
の結晶相は非晶質である場合が多いが、合成条件によっ
ては結晶質になる場合もある。
第1の炭化珪素粉末への第2の炭化珪素粉末の配合量
は、0.5〜50重量%の範囲とするのが好適とされる。す
なわち、第2の炭化珪素粉末の配合量を0.5重量%未満
とすると、この炭化珪素粉末を混合した効果が十分発揮
されず、また50重量%以上とすると、第2の炭化珪素粉
末がプラズマCVD法により気相合成することからコスト
が高く、よって得られた製品が高価となり、また焼結密
度を上げるための効果もこれ以上ではほぼ横這いに達す
るからである。そして、特に焼結体を3.00g/cm3以上の
高密度のものとするためには、超微粉末、すなわち第2
の炭化珪素粉末の混合量を3重量%以上にすることが望
ましい。
次に、得られた混合物を還元処理する。ここでの還元
処理は、酸化物が二酸化珪素の場合に以下に示す(A)
と(B)の反応によって進められる。
(A)SiO2+2C→Si+2CO (B)SiO2+C →SiO+CO これらの反応を促進させるためには、添加する炭素量
を化学当量より多少多くすることが望ましい。また、こ
れらの反応は、炭化珪素の焼結収縮が始まる温度以下で
行う必要があることから、反応温度を1800℃以下とする
のが望ましい。さらに、還元処理の雰囲気は真空雰囲気
が望ましく、高真空であるほどその効果が大きい。な
お、(A)と(B)の反応が進むとSiとSiOが生じる
が、これらの物質は添加された炭素の余剰分によって以
下に示す(C)と(D)の反応を行わせることにより、
SiCにするのが望ましい。なぜなら、SiやSiOは炭化珪素
の焼結初期において炭化珪素の焼結を促進する効果があ
るが、炭化珪素超微粉末(第2の炭化珪素粉末)を異常
粒子に成長させる恐れがあるためである。
(C)Si+C→SiC (D)SiO+2C→SiC+CO その後、上記の還元処理した混合物を加熱しさらに焼
結して導電性炭化珪素焼結体を得る。ここで加熱温度と
して、1800℃から2400℃とするのが好ましい。また焼結
方法としては、常圧焼結、ホットプレス焼結、あるいは
熱間静水圧焼結(HIP)等の従来の方法で行うことが可
能であるが、より高密度で導電性に優れた炭化珪素焼結
を得るためにはホットプレス等の加圧焼結法を使用する
ことが望ましく、特に焼結雰囲気を真空雰囲気、不活性
雰囲気もしくは還元ガス雰囲気とするのが好ましい。
なお、炭素を加えるにあたり、その添加量を多大にし
て余剰分が多くなり過ぎると、得られる炭化珪素焼結体
の特性に悪影響がでる。第1図は上述した本発明の方法
により製造した導電性炭化珪素焼結体中のフリー炭素量
と電気比抵抗値の関係を示した図である。ここで、導電
性炭化珪素焼結体は、後述する実施例1で使用した炭化
珪素粉末(第1の炭化珪素粉末)と非晶質超微粉末(第
2の炭化珪素粉末)5重量%と、さらに添加量を変化さ
せた炭素(ボラック型フェノール樹脂)とを混合するこ
とにより、焼結体中のフリー炭素量を変化させて作製さ
れたものである。第1図より、フリー炭素量の増加に伴
って電気比抵抗値が増加することが分かる。
また、本発明によって得られた導電性炭化珪素は、従
来の炭化珪素焼結体より耐蝕性に優れ、常温及び高温
〔1500℃〕における3点曲げ強度が各々68kg/mm2、85kg
/mm2と高く、ビッカース硬度も2500以上と高い値が得ら
れることから、炭化珪素が本来有している高硬度、高熱
電動性、高耐蝕性、高強度、高表面平滑性等の特性を満
足するものとなり、種々の分野での利用が期待できるも
のとなる。
さらに、この導電性炭化珪素はグレインサイズが2〜
3μmと小さく均一な微細組織を有し、熱伝導率も170W
/m・K以上と高いことから、従来にない良好な放電加工
性が得られた。例えばワイヤー放電加工や型彫放電加工
においては、放電加工速度が170mm2/minであり、表面粗
さ(Rmax.)が2.3μm程度であった。また、この放電加
工面に仕上げ放電加工を行うと、その仕上げ放電面の表
面粗さ(Rmax.)が1μm以下となり、非常に良好な加
工面となった。したがって、球面加工や三次元加工を自
由に行うことができることから、任意の複雑形状部品を
高精度で得ることができるという効果を奏する。
「作用」 本発明によれば、平均粒子径が0.1〜10μmの第1の
炭化珪素粉末と、非酸化性雰囲気のプラズマ中にシラン
化合物またはハロゲン化珪素と炭化水素とからなる原料
ガスを導入し、反応系の圧力を1気圧未満から0.1torr
の範囲で制御しつつ気相反応させることによって合成さ
れた平均粒子径が0.1μm以下の第2の炭化珪素粉末
と、これらの炭化珪素粉末中に含有される二酸化珪素等
の酸化物を還元するに必要な炭素とを混合し、還元処理
した後、加熱し焼結することによって導電性炭化珪素焼
結体を得るものであるから、焼結助剤を添加することな
く高密度焼結体が得られ、よって粒界に不純物の少ない
微細で均一な組織が得られ、これにより炭化珪素が本来
有している特性を損なうことなく高導電性の炭化珪素焼
結体が得られる。さらに、得られた炭化珪素焼結体は高
熱伝導性、高強度のものであるから、良好な放電加工性
も得られる。
「実施例」 以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明す
る。
(実施例1) 平均粒子径0.33μm、比表面積12m2/gであり二酸化珪
素0.85重量%を不純物として含むβ型炭化珪素粉末(第
1の炭化珪素粉末)に、四塩化珪素とエチレンとを原料
としてプラズマCVD法により気相合成して得た平均粒子
径0.02μm、比表面積150m2/gであり二酸化珪素2.5重量
%を不純物として含む非晶質炭化珪素超微粉末(第2の
炭化珪素粉末)を5〜10重量%を添加し、さらにノボラ
ック型のフェノール樹脂をその熱分解残留炭素量が0.3
〜3重量%となるように添加し、これをメタノール中に
て分散せしめ、さらに遊星ミルで12時間混合した。
次に、乾燥器にてメタノールを蒸発し、混合物を粉砕
した後、直径40mmの黒鉛モールドに充填し、この黒鉛モ
ールドをホットプレス装置に装着した。
次いで、真空中で1500℃まで加熱して脱脂及び還元処
理を行い、その後アルゴン雰囲気下で押圧力400kg/c
m2、焼結温度2150℃の条件で45分間焼結した。
得られた炭化珪素焼結体の焼結体密度、常温における
3点曲げ強度、電気比抵抗値をそれぞれ調べ、その結果
を第1表に示す。
第1表に示した結果より、この実施例の炭化珪素焼結
体では非晶質炭化珪素超微粉末の添加量が5重量%以
上、熱分解炭素量が1〜2重量%で電気比抵抗値が0.02
Ω・cm以下となり、高い導電性を有していることが確認
された。また、実験No.3で得られた導電性炭化珪素焼結
体は、そのグレインサイズが2〜3μmでありかつ組織
も均一であり、1500℃における3点曲げ度が80kg/mm2
熱伝導率が190W/m・Kと優れた焼結体特性を示した。
(実施例2) 実施例1と同一の炭化珪素粉末(第1の炭化珪素粉
末)に、モノシランとエチレンとを原料としてプラズマ
CVD法により気相合成した平均粒子径0.017μm、比表面
積145m2/gであり二酸化珪素1.55重量%を不純物として
含むβ型炭化珪素超微粉末(第2の炭化珪素粉末)を5
重量%添加し、さらにノボラック型のフェノール樹脂を
その熱分解残留炭素量が1〜3重量%となるように添加
し、実施例1と同一の条件で還元処理した後、焼結して
炭化珪素焼結体を製造した。
得られた炭化珪素焼結体の焼結体密度、常温における
3点曲げ強度、電気比抵抗値をそれぞれ調べ、その結果
を第1表に示す。
この結果より、炭化珪素超微粉末の結晶形がβ型のも
のであっても、本発明の効果が十分得られることが確認
された。特に、No.7の炭化珪素焼結体では電気比抵抗値
が0.007Ω・cmを示し、優れた導電特性を有しているこ
とが確認された。
(実施例3) 平均粒子径0.70μm、比表面積15m2/gであり二酸化珪
素0.7重量%を不純物として含むα型炭化珪素粉末に、
第2の炭化珪素粉末として実施例1で使用した非晶質炭
化珪素超微粉末と実施例2で使用したβ型炭化珪素超微
粉末とをそれぞれ別に10重量%ずつ配合し、さらにノボ
ラック型のフェノール樹脂をその熱分解残留炭素量が2
重量%となるように添加し、実施例1と同一の条件で還
元処理した後、焼結して炭化珪素焼結体を製造した。
得られた炭化珪素焼結体の焼結体密度、常温における
3点曲げ強度、電気比抵抗値をそれぞれ調べ、その結果
を第1表に示す。
この結果より、第1の炭化珪素粉末としてα型炭化珪
素粉末を使用しても、本発明の効果が得られることが確
認された。
(実施例4) 実施例1で用いた第1の炭化珪素粉末と同一の炭化珪
素粉末を用意し、また第の炭化珪素粉末を以下の方法に
よってフリー炭素を含有するよう作製して用意した。
四塩化珪素とエチレンとを原料とし、これらのモル比
を変化させてC/Siのモル比が1.2以上となる条件下でプ
ラズマCVD法により気相合成し、平均粒子径0.019μm、
比表面積155m2/gであり二酸化珪素1.40重量%を不純物
として含み、そしてフリー炭素量を5.25重量%含有する
非晶質炭化珪素超微粉末(第2の炭化珪素粉末)を得
た。
次に、上記第1の炭化珪素粉末にフリー炭素を含有す
る第2の炭化珪素粉末を10.5重量%添加し、混合して実
施例1と同一の方法で還元処理し、その後焼結して炭化
珪素焼結体を製造した。
得られた炭化珪素焼結体の焼結体密度、常温における
3点曲げ強度、電気比抵抗値をそれぞれ調べ、その結果
を第1表に示す。
この結果より、炭化珪素粉末中に含有された酸化物を
還元するための炭素源として、プラズマCVD法によって
気相合成した炭化珪素超微粉末中の余剰炭素を利用する
と、本発明の効果がさらに高まることが確認された。
(比較例1) 実施例1で使用したβ型炭化珪素粉末を用い、これに
平均粒子径0.5μmの硼素0.3重量%を添加し、さらにノ
ボラック型のフェノール樹脂をその熱分解残留炭素量が
3重量%となるように添加し、実施例1と同一の条件で
炭化珪素焼結体を製造した。
得られた焼結体を調べたところ、グレインサイズは4
〜5μmであり、熱伝導率は80W/m・Kであった。ま
た、電気比抵抗は第1表に示すように2×105Ω・cmと
なり、実施例の導電性炭化珪素焼結体に比較してはるか
に高い値であった。
(比較例2) 実施例3で使用したα型炭化珪素粉末(第1の炭化珪
素粉末)に、平均粒子径0.5μmの硼素を0.3重量%添加
し、さらにノボラック型フェノール樹脂をその熱分解残
留炭素が3重量%となるように添加し、実施例1と同一
の条件で還元処理した後、焼結して炭化珪素焼結体を製
造した。
得られた焼結体を調べたところ、グレインサイズは5
〜6μmであり、熱伝導率は75W/m・Kであった。ま
た、電気比抵抗値は第1表に示すように5×104Ω・cm
となり、実施例の導電性炭化珪素焼結体に比較してはる
かに高い値であった。
(比較例3) 実施例1で使用したβ型炭化珪素粉末(第1の炭化珪
素粉末)と非晶質炭化珪素超微粉末(第2の炭化珪素粉
末)とを混合し、実施例1と同一の条件で焼結して炭化
珪素焼結体を製造した。
得られた焼結体の電気比抵抗値を調べたところ、第1
表に示すように0.054Ω・cmとなり、実施例1のものに
比較して高いものとなった。
(比較例4) 実施例2で使用したβ型炭化珪素粉末(第1の炭化珪
素粉末)とβ型炭化珪素超微粉末(第2の炭化珪素粉
末)とを混合し、実施例2と同一の条件で焼結して炭化
珪素焼結体を製造した。
得られた焼結体の電気比抵抗値を調べたところ、第1
表に示すように0.043Ω・cmとなり、実施例2のものに
比較して高いものとなった。
(比較例5) 実施例3で使用したα型炭化珪素粉末(第1の炭化珪
素粉末)と非晶質炭化珪素超微粉末(第2の炭化珪素粉
末)とを混合し、実施例1と同一の条件で焼結して炭化
珪素焼結体を製造した。
得られた焼結体の電気比抵抗値を調べたところ、第1
表に示すように0.85Ω・cmとなり、実施例3のものに比
較してかなり高いものとなった。
(試験例) 実施例1で得られた実験No.3の導電性炭化珪素焼結体
(直径40mm×厚さ30mm)を、トランジスタパルス回路方
式の放電加工機によってワイヤー放電加工のテストを行
った。放電用ワイヤーには外径が2mmの黄銅のワイヤー
を用い、試験条件としては加工電圧を50V、パルス幅を
1.2μsec、休止時間を20μsecとした。
このようにしてワイヤー放電加工を行ったところ、安
定した放電加工ができた。また、このときの放電加工速
度は170mm2/minであり、放電加工面の表面粗さはRmax.
2.3μm程度であることから、放電加工性が良好である
ことが確認された。さらに、上記放電面に仕上げ放電加
工を施したところ、表面粗さがRmax.0.7μm以下となり
非常に良好な平滑面を得ることができた。またこの放電
加工面を走査型電子顕微鏡により観察したところ、クラ
ック等の欠陥が全く見られなかった。
「発明の効果」 以上説明したように本発明の導電性炭化珪素焼結体
は、平均粒子径が0.1〜10μmの第1の炭化珪素粉末
と、非酸化性雰囲気のプラズマ中にシラン化合物または
ハロゲン化珪素と炭化水素とからなる原料ガスを導入
し、反応系の圧力を1気圧未満から0.1torrの範囲で制
御しつつ気相反応させることによって合成された平均粒
子径が0.1μm以下の第2の炭化珪素粉末と、これらの
炭化珪素粉末中に含有される二酸化珪素等の酸化物を還
元するに必要な炭素とを混合し、還元処理した後、加熱
し焼結することによって得られた電気比抵抗値が0.1Ω
・cm以下のものであるから、焼結助剤を添加することな
く高密度焼結体となり、よって粒界に不純物の少ない微
細で均一な組織を有するものとなることから、炭化珪素
焼結体が本来有している高硬度、高熱伝導性、高強度、
高表面平滑性、高耐蝕性等の特性を損なうことな高導電
性を有した炭化珪素焼結体となる。したがって、従来の
構造用セラミックスとしての利用ばかりでなく、抵抗
体、発熱体、電極等にも用いることができるなど応用範
囲が非常に広いものとなる。また、この導電性炭化珪素
焼結体は優れた放電加工性を有しているので、これを用
いることにより三次元複雑形状部品などをも十分精度良
く製造することができ、したがって材料としての自由度
が高く、多くの分野での利用が期待でき、これにより産
業上多大の効果を奏するものとなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の導電性炭化珪素焼結体中のフリー炭
素量と焼結体の電気比抵抗値との関係を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小西 幹郎 千葉県習志野市津田沼3―7―4―204 (72)発明者 加藤 謙 千葉県船橋市本中山3―19―2 (56)参考文献 特開 昭62−260772(JP,A) 特開 昭62−56371(JP,A)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】平均粒子径が0.1〜10μmの第1の炭化珪
    素粉末と、非酸化性雰囲気のプラズマ中にシラン化合物
    またはハロゲン化珪素と炭化水素とからなる原料ガスを
    導入し、反応系の圧力を1気圧未満から0.1torrの範囲
    で制御しつつ気相反応させることによって合成された平
    均粒子径が0.1μm以下の第2の炭化珪素粉末と、これ
    らの炭化珪素粉末中に含有される二酸化珪素等の酸化物
    を還元するに必要な炭素とを混合し、還元処理した後、
    加熱し焼結することによって得られた電気比抵抗値が0.
    1Ω・cm以下である導電性炭化珪素焼結体。
  2. 【請求項2】平均粒子径が0.1〜10μmの第1の炭化珪
    素粉末と、非酸化性雰囲気のプラズマ中にシラン化合物
    またはハロゲン化珪素と炭化水素とからなる原料ガスを
    導入し、反応系の圧力を1気圧未満から0.1torrの範囲
    で制御しつつ気相反応させることによって合成された平
    均粒子径が0.1μm以下の第2の炭化珪素粉末と、これ
    らの炭化珪素粉末中に含有される二酸化珪素等の酸化物
    を還元するに必要な炭素とを混合し、還元処理した後、
    加熱し焼結して電気比抵抗値が0.1Ω・cm以下の焼結体
    を得る導電性炭化珪素焼結体の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載した導電性炭化珪素焼結体
    において、第2の炭化珪素粉末の配合量が0.5〜50重量
    %である導電性炭化珪素焼結体。
  4. 【請求項4】請求項2に記載した導電性炭化珪素焼結体
    の製造方法において、第2の炭化珪素粉末の配合量が0.
    5〜50重量%である導電性炭化珪素焼結体の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項1に記載した導電性炭化珪素焼結体
    において、第2の炭化珪素粉末の結晶相が非晶質、α
    型、もしくはβ型であるか、あるいは、それらの混合相
    である導電性炭化珪素焼結体。
  6. 【請求項6】請求項2に記載した導電性炭化珪素焼結体
    の製造方法において、第2の炭化珪素粉末の結晶相が非
    晶質、α型、もしくはβ型であるか、あるいは、それら
    の混合相である導電性炭化珪素焼結体の製造方法。
  7. 【請求項7】請求項1に記載した導電性炭化珪素焼結体
    において、炭素がカーボンブラックまたはコロイド状炭
    素であるか、あるいは残炭率の高い有機炭化水素の熱分
    解炭素である導電性炭化珪素焼結体。
  8. 【請求項8】請求項2に記載した導電性炭化珪素焼結体
    の製造方法において、炭素がカーボンブラックまたはコ
    ロイド状炭素であるか、あるいは残炭率の高い有機炭化
    水素の熱分解炭素である導電性炭化珪素焼結体の製造方
    法。
  9. 【請求項9】請求項1に記載した導電性炭化珪素焼結体
    において、炭素が第2の炭化珪素粉末中に含有される導
    電性炭化珪素焼結体。
  10. 【請求項10】請求項2に記載した導電性炭化珪素焼結
    体の製造方法において、炭素が第2の炭化珪素粉末中に
    含有される導電性炭化珪素焼結体の製造方法。
  11. 【請求項11】請求項2に記載した導電性炭化珪素焼結
    体の製造方法において、還元処理の雰囲気が真空雰囲気
    である導電性炭化珪素焼結体の製造方法。
  12. 【請求項12】請求項2に記載した導電性炭化珪素焼結
    体の製造方法において、焼結雰囲気が、真空雰囲気、不
    活性雰囲気、もしくは還元ガス雰囲気であり、焼結温度
    が1800〜2400℃である導電性炭化珪素焼結体の製造方
    法。
  13. 【請求項13】請求項1に記載した導電性炭化珪素焼結
    体において、焼結密度が2.90g/cm3以上である導電性炭
    化珪素焼結体。
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