JP2725647B2 - Ii−vi族化合物半導体単結晶の成長方法 - Google Patents

Ii−vi族化合物半導体単結晶の成長方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、封管中でZnS
e、ZnS、CdTe、CdS等のII−VI族化合物半導
体単結晶を成長する方法、及び、ドーパントを含有する
II−VI族化合物半導体単結晶の成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】II−VI族化合物半導体単結晶の成長は、
大きく分けて、融液成長法、固相成長法、溶液成長法、
気相成長法の4種の方法で作製される。その中で気相成
長法(昇華法)が古くから行われてきた。例えば、10
mm角程度の大きなZnSe単結晶をPVT(Physical V
apour Transport )法で成長したことが報告されている
(JOURNAL OF CRYSTAL GROWTH 94 (1989) P1〜P5参
照)。この方法は、原料として5gのZnSe多結晶
と、種結晶としてZnSe単結晶を用い、直径20mm、
長さ70mmの石英封管の両端に配置して真空封入し、こ
の石英封管を電気炉にセットして多結晶原料を約107
0℃に、種結晶を約1060℃に加熱して種結晶上にZ
nSe単結晶を成長させるものである。
【0003】従来の昇華法によるZnSe単結晶の成長
では、結晶成長速度を確実に制御することができず、結
晶成長温度を上げたり、原料多結晶部の昇華温度と種結
晶部の成長温度との温度差ΔTを大きくすることにより
成長速度を上げたり、成長温度を下げてΔTを小さくし
て成長速度を小さくすることは可能であるが、成長速度
は安定せずに大きくばらついてしまう。特に、成長速度
が多くなりすぎると単結晶が成長せずに多結晶化すると
いう問題があった。
【0004】また、一般にII−VI族化合物半導体は、ド
ーパントとしてIII 族元素を添加しても自己補償現象の
ため、ドーパントが活性化せず、導電性の結晶を得るこ
とができなかった。例えば、ZnSe結晶成長において
は、ZnSe結晶中にZn空孔がドーパントと複合体を
形成し、ドーパントの活性化が阻まれると言われてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上
記の欠点を解消し、原料多結晶からの昇華ガスの組成の
ずれの蓄積を防止することにより、結晶成長速度を一定
に保持し、II−VI族化合物半導体単結晶を安定して成長
させる方法、及び、導電性を有するドーパント含有II−
VI族化合物半導体単結晶を成長させる方法を提供しよう
とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の構成を
採用することにより、上記の発明の課題の解決に成功し
たものである。 (1) 封管中に管径を細めた拡散制限部を介して成長室と
ガス漏洩室を接続し、前記成長室の拡散制限部側に原料
多結晶を、他端に種結晶を配置し、前記封管中に不活性
ガスを封入した後、種結晶を結晶成長温度に、原料多結
晶を昇華温度に、前記拡散制限部を前記昇華温度以上
に、ガス漏洩室を成長室より低い温度に保持しながら、
種結晶上に単結晶を成長することを特徴とするII−VI族
化合物半導体単結晶の成長方法。
【0007】(2) 封管中に拡散制限部、原料多結晶、種
結晶及び封入蓋を挿入し、封管を真空排気した後、封管
に所定の圧力の不活性ガスを導入し、封入蓋を封止して
から加熱炉に封管を配置することを特徴とする上記(1)
記載のII−VI族化合物半導体単結晶の成長方法。
【0008】(3) 封管の少なくとも一方を加熱炉の外ま
で延長させ、封管を1つの支点で支持し、加熱炉の外に
延びる封管端部に加わる重量変化により結晶成長速度を
測定し、封管の温度分布を制御することを特徴とする上
記(1) 又は(2) 記載のII−VI族化合物半導体単結晶の成
長方法。
【0009】(4) ドーパントを含有するII−VI族化合物
半導体単結晶の成長方法において、原料多結晶の1つの
構成元素からなる単体物質をガス漏洩室に配置し、結晶
成長中は、前記単体物質の蒸気圧が成長室中の原料ガス
の蒸気圧より低くなる温度に前記単体物質を保持し、結
晶成長終了後は、前記単体物質の蒸気圧が成長室中の原
料ガスの蒸気圧より高くなるように前記単体物質を加熱
し、前記単体物質の蒸気中で成長結晶を熱処理すること
を特徴とする上記(1) 〜(3) のいずれか1つに記載のII
−VI族化合物半導体単結晶の成長方法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者等は、昇華法でII−VI族
化合物半導体単結晶を成長するときの結晶成長速度のバ
ラツキの原因を検討する中で、原料多結晶の組成比のず
れが昇華ガスの組成比のずれをもたらし、成長室内に過
剰な元素が蓄積されることにその原因があることを見い
だした。そこで、原料多結晶の組成比のずれを極力小さ
くし、成長速度のバラツキを小さくすることを試みたが
実効は挙がらなかった。これは原料多結晶の組成比のず
れが小さくても、ずれがばらつくことによって成長速度
がばらつくと推測された。したがって、原料多結晶の組
成比のずれを小さくして結晶成長速度のバラツキを無く
することは極めて困難であった。
【0011】また、本発明者等は、原料多結晶の組成比
のずれを小さくするのではなく、成長室から昇華ガスの
一部を漏洩させながら、II−VI族化合物半導体単結晶の
成長を行うことにより、成長室内の昇華ガスの組成比の
ずれの蓄積を抑制し、成長室中の昇華ガスの組成を原料
多結晶の組成比と実質的に一致させる結晶成長方法を提
案した。しかし、成長室から漏れる原料ガスの量を適切
に制御できなければ結晶成長速度を一定に保つことはで
きない。
【0012】そこで、本発明では、図1に示すように、
封管を拡散制限部で区切り、一方を成長室、他方を漏洩
室とし、封入時に適当な圧力の不活性ガスを封入して、
漏洩室の端部の温度を十分に低くすることにより、漏洩
室内の原料の蒸気圧を成長室より低くし、かつ、漏洩室
の内径を拡散制限部の内径より十分に大きくすれば、成
長室から漏洩室への原料ガスの漏洩は、原料ガスの拡散
制御部での不活性ガス中での拡散によって律速される。
同様に、原料ガスの原料多結晶から種結晶への移動も原
料ガスの不活性ガス中の拡散によって律速される。
【0013】したがって、成長室、漏洩室及び拡散制限
部の形状、即ち、長さと断面積を適切に設計すれば、種
結晶側に輸送される量と漏洩量の比を任意に設定するこ
とができる。また、種結晶側に輸送される原料ガスの絶
対量は成長室中の原料ガスの組成ずれがほとんど無いと
考えられるので、原料多結晶と種結晶側の温度及び不活
性ガスの圧力のみによって規定される。この3つのパラ
メータは全て制御が可能であるため、結晶成長速度を所
定の速度に制御することができる。
【0014】本発明における拡散制限部の形状は、成長
室の断面積をS1 、原料多結晶から種結晶までの距離を
1 (成長室の長さにほぼ等しい)、拡散制限部の断面
積S2 、拡散制限部の長さL2 とするときに(S2 1
/S1 2 )を0.001〜0.2にするようにS2
びL2 を決定することが好ましい。
【0015】また、本発明で使用するドーパント含有原
料多結晶としては、Al,Ga,In等のIII 族元素を
含むII−VI族化合物半導体多結晶を挙げることができ
る。さらに、本発明で使用する不活性ガスは、成長結晶
及び封管と反応を起こさないものであれば、その種類を
問わないが、具体的にはArなどを使用することができ
る。
【0016】また、ドーパントを含むII−VI族化合物半
導体単結晶の成長における自己補償現象に対しては、図
2に示すように、原料多結晶を構成する元素からなる単
体物質、好ましくはII族元素、例えば、ZnSe結晶や
ZnS結晶の成長においてはZn、CdTe結晶やCd
S結晶の成長においてはCdを漏洩室中に配置し、結晶
成長中は、漏洩室の温度、即ち単体物質の温度を、単体
物質の蒸気圧が成長室中の原料ガスの蒸気圧より低くな
るように設定し、結晶成長終了後には、単体物質の蒸気
圧が結晶成長中の成長室の原料ガスの蒸気圧より高くな
るように、漏洩室の温度、即ち単体物質の温度を上げ、
成長した結晶を単体物質の蒸気圧中で熱処理することが
できる。
【0017】なお、溶融したII族元素を成長結晶の表面
に移動して、II族元素融液中で熱処理することも可能で
ある。この時の結晶の温度は、結晶成長中の温度と同一
にする必要はなく、熱処理に適した温度に設定すればよ
い。このように、本発明では、結晶成長終了後の熱処理
を、結晶成長に引き続き同一アンプル中で行うことがで
きる。
【0018】
【実施例】
〔実施例1〕図1の反応管を用いてZnSe単結晶を成
長した。反応管は、内径2cm、長さ80cmの片封じ石英
アンプルに、拡散制限部、原料としてZnSe多結晶、
種結晶として直径2cm(100)ZnSe単結晶ウエ
ハ、及び封入蓋を順次挿入した。石英アンプルの片封じ
部分と拡散制限部との間の漏洩室の長さは45cm、拡散
制限部の長さは5cm、内径0.1cm、拡散制限部と封入
蓋の間の成長室の長さは20cmとし、ZnSe多結晶は
成長室中の拡散制限部側に配置し、種結晶は封入蓋側に
配置した。この石英管をロータリーポンプとターボ分子
ポンプからなる排気装置に接続し、1×10-6Torrまで
排気した後、ロータリーポンプで排気しながらArを排
気装置に導入して10torrになった段階で、封入蓋の部
分を封止した。
【0019】このようにして作製したアンプルを、横型
電気炉に投入し、原料多結晶の温度を1050℃に、種
結晶を1030℃に、拡散制限部の温度を1050℃以
上になるように炉内温度を設定して結晶成長を開始し
た。なお、漏洩室の端部は炉外に出すことにより、この
端部の温度を室温まで下げた。結晶成長は10日間行
い、結晶成長終了後石英管から結晶を取り出して重量の
変化を測定し、結晶成長速度を求めた。この実験を10
回行ったところ、結晶成長速度は1.00g/日から
1.47g/日の間で±20%程度のばらつきしかなか
った。また、成長した結晶は全て単結晶であった。
【0020】〔実施例2〕実施例1において、拡散制限
部の形状を表1のように変更して、実施例1と同様にし
て結晶成長を行った。各々の結晶成長の実験を3回ずつ
行い、結果を表1に示した。なお、表中の「漏れ量
(%)」は漏洩室に漏れた原料の重量を、成長した単結
晶の重量で割ったものである。
【0021】
【表1】
【0022】表1から明らかなように、(S2 1 )/
(S1 2 )の値が0.04、0.001、0.002
5の例では、漏れ量が数%以下で、結晶成長速度もほぼ
一定に保たれているので、この範囲では成長室内の原料
ガスの組成比は原料多結晶と同じに保たれていると推測
できる。一方、(S2 1 )/(S1 2 )の値が0.
25の例では、漏れ量が50%程度になっているが、結
晶成長速度も他の例と異なる上、ばらついている。した
がって、上記の値を0.25まで大きくすることは好ま
しくない。また、(S2 1 )/(S1 2 )の値が
0.000625の例では、結晶成長速度が他の例と異
なり、ばらつきも大きいので、上記の値を0.0006
25まで小さくすることも好ましくない。
【0023】〔実施例3〕実施例1と同様に石英管を作
製し、石英管の長さだけ100cmに変更した。この石英
管を図3に示すように、横型管状炉の炉口に設けた支点
1(回転支点)に載せて漏洩室側の端部が炉壁に接触し
ないように、石英管の成長室側端部に重りを下げて(こ
の位置を支点2とする)、この重りを電子天秤の上に載
せた。支点1と支点2の間隔は20cmとした。そして、
原料多結晶の温度を1050℃に、種結晶の温度を10
30℃に、拡散制限部の温度を1050℃以上になるよ
うに炉内の温度を設定し、漏洩室の端部を炉外に出して
この部分の温度を室温にして結晶成長を開始した。
【0024】支点1と支点2の間隔は、成長室の長さ即
ち原料多結晶と種結晶の間の距離に等しいので、種結晶
上に成長した結晶の重量は、電子天秤の重りの重量変化
として測定することができる。漏洩室への原料ガスの漏
れは、成長速度測定の誤差の原因となるが、実施例2で
示したように、この条件では成長した結晶の2%程度し
か漏れないので、成長速度測定の誤差は小さい。
【0025】この実施例では、結晶成長中の成長速度を
1.0g/日から1.5g/日に保つように、種結晶側
の温度を調整しながら30日間結晶成長を行った。その
結果、図4に示すように種結晶側の温度を結晶成長に伴
って低下させることよって、結晶の成長速度をほぼ一定
に保ちながら結晶成長を行うことができた。成長した結
晶は、重量36.2g、長さ2cmの単結晶であった。仮
に、結晶成長中の種結晶側の温度を一定に保つと、成長
速度は徐々に低下するので、成長結晶は小さくなると思
われる。
【0026】〔実施例4〕図2に示すように、ガス漏洩
室の端部に純度6NのZnを約10g配置し、原料とし
てGaドープZnSe多結晶を用い、種結晶として(1
00)GaドープZnSe単結晶を用い、その他の構成
は実施例1と同様にしてZnSe結晶成長用アンプルを
作製した。このアンプルを実施例1と同じ温度環境中に
配置して結晶成長を行った。
【0027】この時、ガス漏洩室のZnは炉外に出てい
るので、Znの温度はほぼ室温と同じであった。10日
間の結晶成長後、ガス漏洩室端部を炉内に収容するよう
にアンプルを移動し、結晶の温度を1000℃、成長室
及び拡散制御部の温度を800℃以上、ガス漏洩室の最
低温度を800℃になるように炉内温度を変更し、成長
させたGaドープZnSeをZn蒸気中で熱処理を開始
した。10日間熱処理を行った後、炉内温度を20℃/
分の速度で室温まで冷却した。得られたGaドープZn
Se結晶の比抵抗を測定したところ、0.2〜0.3Ω
cmであり、導電性結晶を得ることができた。なお、成
長した結晶は全て単結晶であった。
【0028】
【発明の効果】本発明は、上記の構成を採用することに
より、昇華法でのII−VI族化合物半導体結晶の成長速度
のばらつきを小さくすることができ、単結晶成長の再現
性が向上した。また、成長速度の測定も可能となり、大
型結晶の成長も容易になった。さらに、結晶成長後の熱
処理を簡便に行うことができ、導電性を有するドーパン
ト含有II−VI族化合物半導体単結晶の成長を可能にし
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する反応管の断面図である。
【図2】本発明で使用するもう1つの反応管の断面図で
ある。
【図3】本発明で使用する成長速度測定手段を備えた結
晶成長装置の断面図である。
【図4】実施例3で測定した、種結晶温度と成長速度の
関係を示した図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 封管中に管径を細めた拡散制限部を介し
    て成長室とガス漏洩室を接続し、前記成長室の拡散制限
    部側に原料多結晶を、他端に種結晶を配置し、前記封管
    中に不活性ガスを封入した後、種結晶を結晶成長温度
    に、原料多結晶を昇華温度に、前記拡散制限部を前記昇
    華温度以上に、ガス漏洩室を成長室より低い温度に保持
    しながら、種結晶上に単結晶を成長することを特徴とす
    るII−VI族化合物半導体単結晶の成長方法。
  2. 【請求項2】 封管中に拡散制限部、原料多結晶、種結
    晶及び封入蓋を挿入し、封管を真空排気した後、封管に
    所定の圧力の不活性ガスを導入し、封入蓋を封止してか
    ら加熱炉に封管を配置することを特徴とする請求項1記
    載のII−VI族化合物半導体単結晶の成長方法。
  3. 【請求項3】 封管の少なくとも一方を加熱炉の外まで
    延長させ、封管を1つの支点で支持し、加熱炉の外に延
    びる封管端部に加わる重量変化により結晶成長速度を測
    定し、封管の温度分布を制御することを特徴とする請求
    項1又は2記載のII−VI族化合物半導体単結晶の成長方
    法。
  4. 【請求項4】 ドーパントを含有するII−VI族化合物半
    導体単結晶の成長方法において、原料多結晶の1つの構
    成元素からなる単体物質をガス漏洩室に配置し、結晶成
    長中は、前記単体物質の蒸気圧が成長室中の原料ガスの
    蒸気圧より低くなる温度に前記単体物質を保持し、結晶
    成長終了後は、前記単体物質の蒸気圧が成長室中の原料
    ガスの蒸気圧より高くなるように前記単体物質を加熱
    し、前記単体物質の蒸気中で成長結晶を熱処理すること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のII−
    VI族化合物半導体単結晶の成長方法。
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