JP2722698B2 - 楽音合成装置 - Google Patents

楽音合成装置

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は、特に管楽器音の合成に用いて好適な楽音
合成装置に関する。
「従来の技術」 自然楽器の発音メカニズムをシミュレートすることに
より得られたモデルを動作させ、これにより、自然楽器
の楽音を合成する方法が知られてる。クラリネット等の
管楽器の最も基本的なモデルとしては、リードの弾性特
性をシミュレートした非線形増幅素子と、共鳴管をシミ
ュレートした双方向伝送回路とを接続した閉ループ構造
のモデルが知られている。このモデルでは、非線形増幅
素子から信号が出力されると、この信号は進行波信号と
して双方向伝送回路に入力され、双方向伝送回路の終端
部で反射され、この反射波信号が双方向伝送回路を介
し、非線形増幅素子に帰還される。このように、非線形
増幅素子と双方向伝送回路とからなる閉ループ回路によ
って、管楽器における空気圧力波の伝播が忠実にシミュ
レートされる。
また、実際の管楽器には、音高操作用の孔、いわゆる
トーンホールが設けられているが、このトーンホールを
も含めて管楽器をシミュレートしたモデルが知られてい
る。このモデルでは、トーンホールに対応し、各双方向
伝送回路間に信号散乱ジャンクション(以下、ジャンク
ションと略す)と呼ばれる信号処理回路が介挿される。
そして、各ジャンクションにより、隣接する双方向伝送
回路からの各入力信号に対し係数乗算等の演算処理が行
われ、演算結果が隣接する双方向伝送回路に供給され
る。この演算処理における乗算係数等は当該トーンホー
ルの開閉状態に対応し切り換えられる。
この場合、非線形増幅素子に帰還される信号は、各ジ
ャンクションにおいて折り返された成分の総和となる。
しかも、上述したように、各ジャンクションにおける演
算用の乗算係数は当該トーンホールの開閉状態に対応し
て切り換えるので、結局、非線形増幅素子から双方向伝
送回路側を見た場合の伝送量周波数特性はトーンホール
の開閉状態に対応して切り換えられる。
この伝送量周波数特性は、非線形増幅素子の出力信号
が開放状態のトーンホールに対応したジャンクションに
おいて折り返されて非線形増幅素子に帰還されるまでの
遅延時間に対応した周波数(1次)、およびその整数倍
の各周波数(高次)に共振周波数を有する多峰性の特性
となる。なお、この種の技術は、例えば特開昭63−4019
9号公報に開示されている。
「発明が解決しようとする課題」 ところで、上述した従来の楽音合成装置において個々
のトーンホールに対応した音高の微調整が必要な場合、
1つの解決策として、例えば共振回路を構成する各双方
向伝送回路の遅延時間の配分を調整する方法が考えられ
る。しかしながら、この方法を用いる場合、例えば音色
等、他の特性に変化を与えることなく、行うことは難し
く、また、面倒であるという問題があった。
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであ
り、トーンホールに対応した音高の微調整を容易に実施
することができる楽音合成装置を提供することを目的と
している。
「課題を解決するための手段」 上記課題を解決するため、この発明は、所定の遅延時
間を有する第1の信号処理手段と、所定の遅延時間を有
する第2の信号処理手段と、所定の遅延時間を有する第
3の信号処理手段と、前記第1と第2と第3の信号処理
手段を結合すると共に、所定の演算処理を行う信号散乱
ジャンクションと、発生すべき楽音の音高を表す音高情
報に応じて、前記第1および第2の信号処理手段の各遅
延時間を制御する第1の制御手段と、前記第3の信号処
理手段の所定の遅延時間を、前記音高情報とは独立に調
整する第2の制御手段とを具備し、前記第1乃至第3の
信号処理手段と前記信号散乱ジャンクションを接続して
なるループ状の信号路に励振信号を入力することにより
楽音信号を合成するようにしたことを特徴としている。
「作用」 上記構成によれば、信号散乱ジャンクションが、第1
と第2と第3の信号処理手段を結合すると共に、所定の
演算処理を行い、第1の制御手段が、発生すべき楽音の
音高を表す音高情報に応じて、第1および第2の信号処
理手段の各遅延時間を制御し、そして、第2の制御手段
が、第3の信号処理手段の所定の遅延時間を、音高情報
とは独立に調整する。これによれば、第3の信号処理手
段の遅延時間を、第2の制御手段によって、音高情報に
よらず、微妙に調整することができるようになる。これ
により、他の特性に変化を与えることなく、音高を微妙
に制御することが可能になり、例えば第3の信号処理手
段をトーンホールに対応させることで、トーンホールに
対応した音高の微調整を容易に実施することができる構
成を得ることができる。
「実施例」 以下、図面を参照し、本発明の一実施例を説明する。
第1図はこの発明の一実施例による楽音合成装置の構
成を示すブロック図である。また、第2図はこの楽音合
成装置がシミュレートするクラリネットの物理モデルの
構成図である。
まず、第2図の物理モデルについて説明する。第2図
において、1は管楽器の共鳴管(管部)、2はマウスピ
ース部、2aはリード、THは共鳴管1に形成された1個の
トーンホール、RTCはレジスタチューブを示す。
以下、この物理モデルを参照し、クラリネットの発音
メカニズムを説明する。吹奏者がマウスピース部2をく
わえ、息を吹き込むと、その吹奏圧Pおよび自身の弾性
特性によりリード2aに変位が生ずる(矢印2S)。この結
果、リード2aの管内側に空気の圧力波(粗密波)が発生
し、これが進行圧力波Fとなって共鳴管1の終端部1Eに
向かって送出される。そして、進行圧力波Fは共鳴管1
内の各所および終端部1Eにおいて反射され、反射圧力波
Rとなってリード2aに戻り、リード2aは反射圧力波Rか
らの圧力PRを受ける。従って、吹奏中、リード2aが受け
る全圧力PAは、反射圧力波Rの圧力をPRとすると、 PA=P−PR ……(1) となり、結局、リード2aは自身の弾性特性と上記圧力PA
とにより振動する。そして、リード2aの振動と共鳴管1
内の圧力波FおよびRの往復運動とが共振状態となるこ
とにより楽音が発生される。
この時の1次の共振周波数は、共鳴管1に形成された
トーンホールTHの開閉操作により切り換えられる。すな
わち、トーンホールTHの開閉操作が行われると、それに
伴ってトーンホールTH近傍における圧力波の流れが変化
し、共鳴管1の実効的な長さが変化することによって共
振周波数の切換がなされる。
以下、共鳴管1のトーンホールTHの近傍点jにおける
空気圧力波の状態について説明する。
<トーンホールTHが開状態の場合> トーンホールTHが開状態の場合、点jの空気圧Pjは、 となる。ここで、 は共鳴管1のリード2a側から点jに流入する空気圧力波
の圧力、 は共鳴管1の終端部1E側から点jに流入する空気圧力波
の圧力、また、 はトーンホールTHから流入する空気圧力波の圧力を示
す。また、a1off,a2offおよびa3offは、点jに流入す
る各空気圧力波の点jの空気圧Pjへの寄与度に相当する
係数であり、下記式(3)〜(5)で与えられる。
a1off=2φ /(φ +φ +φ ) ……(3) a2off=2φ /(φ +φ +φ ) ……(4) a3off=2φ /(φ +φ +φ ) ……(5) ここで、φは共鳴管1のリード2a側の部分の直径、φ
は共鳴管1の終端部1E側の直径、φはトーンホール
THの直径を示す。
一方、第2図において、点jから共鳴管1のリード2a
方向に流出する空気圧力波の圧力 共鳴管1の終端部1E方向に流出する空気圧力波の圧力 およびトーンホールTHへと流出する空気圧力波の圧力を とすると、これらは各々 となる。
点jから終端部1E側へと伝播する空気圧力波 は、やがて終端部1Eに到達して一部がリード2a側へ反射
されるが、クラリネット等のように終端が開いた管楽器
の場合、この反射の際、位相の反転が行われる。また、
トーンホールTHが開状態の場合、j点からトーンホール
THの外側に向けて流出された空気圧力波 は開口部において反射されるが、この場合も、進行波は
逆相で反射される。
<トーンホールTHが閉状態の場合> この場合、トーンホールTHの直径φが0になった状
態と等価であると考えられる。従って、上記式(3)〜
(5)にφ=0を代入することにより、トーンホール
THが閉状態の場合における各空気圧力波の空気圧Pjへの
寄与度に相当する係数a1on、a2on,a3onが、下記式
(9)〜(11)のように導かれる。
a1on=2φ /(φ +φ ) ……(9) a2on=2φ /(φ +φ ) ……(10) a3on=0 ……(11) そして、点jの空気圧Pjは、 となる。
リード2aには、上述のようにして共鳴管1の各所にお
いて反射された信号が帰還され、その中の最も有効な成
分によって1次の共振周波数が決定される。そして、ト
ーンホールTHか開状態の場合、1次の共振周波数はリー
ド2aとトーンホールTHとの間を空気圧力波が往復する所
要時間によって決定される。また、この場合の共鳴管1
の伝送量周波数特性は、1次の共振周波数、およびその
3倍、5倍、…の高次の共振周波数において伝送利得か
極大になる多峰性の特性となる。
次にレジスタチューブRTCについて説明する。上述し
たように、管楽器の共鳴管1は多峰性の伝送量周波数特
性を有するが、レジスタチューブRTCは、共鳴管1にお
ける高次の共振周波数での共振を促進するために設けら
れたものである。実在の管楽器の中にも、1オクターブ
以上の音高切換の容易にするために、レジスタチューブ
RTCに相当する孔(オクターブキーと呼ばれる)を備え
た管楽器が存在する。第4図に示すように、レジスタチ
ューブRTCの近傍点kでは、空気圧力波の散乱が発生す
る。
は近傍点kに流入する空気圧力波の圧力、 は近傍点kから流出する空気圧力波の圧力である。レジ
スタチューブRTCが閉じた状態の場合、リード2aに帰還
される空気圧力波の成分は、トーンホールTHあるいは終
端部1Eにおいて反射されて帰還するものが支配的とな
る。一方、レジスタチューブRTCが開状態になると、レ
ジスタチューブRTCでの空気圧力波の散乱が著しくなる
ので、リード2aに帰還される空気圧力波において、レジ
スタチューブRTCにおいて反射された成分か強調され
る。なお、この点kにおける空気圧力波の散乱は、上述
したトーンホールTHの近傍点jにおける場合と同様であ
るので、ここでの重複した定量的説明は省略する。
次に第2図の物理モデルに基づいて構成された第1図
の楽音合成装置について説明する。同図において、励振
回路10は第2図におけるマウスピース部2に対応してお
り、共振回路30は共鳴管1に対応している。また、励振
回路10と共振回路30との間に介挿されるジャンクション
20は、マウスピース部2と共鳴管1との接続部における
空気圧力波の散乱をシミュレートしたものである。この
ジャンクション20では、共振回路30からの出力信号と励
振回路10の出力信号が加算器18によって加算されて共振
回路30に入力され、加算器18の出力信号と共振回路30に
出力信号が加算器19によって加算されて励振回路10に入
力されるようになっている。
励振回路10は、減算器11、フィルタ12および13、加算
器14、ROM15、乗算器16、17およびINVとで構成される。
そして、楽音発生時、楽音制御回路100から吹奏圧P、
エンブシュアE(マウスピースを口にくわえる時の圧
力)に相当する情報が与えられる。減算器11には、共振
回路30からジャンクション20を介して入力される信号、
すなわち、第2図における共鳴管1からの反射波Rの空
気圧PRに相当する信号と、吹奏圧Pに相当する信号が入
力される。そして、上記式(1)の演算が行われ、リー
ド2aに加わる空気圧PAに相当する信号が得られる。
減算器11の出力信号はフィルタ12によって帯域制限さ
れる。このフィルタ12は1次のローパスフィルタによっ
て構成されており、励振回路10と共振回路30との間を循
環する信号の振幅が特定周波数において著しく大きくな
らないようにするために介挿されている。そして、フィ
ルタ12の出力信号P1はフィルタ13に入力されると共に乗
算器INVによって反転されて乗算器16に入力される。信
号P1はフィルタ13を介すことにより、高周波成分が除去
される。これにより、急激な圧力変化を吸収するリード
2aの応答特性がシミュレートされる。
そして、加算器14によって、フィルタ13の出力信号P2
に対し、エンブシュアEに相当する信号が加算され、実
際にリードに加えられる圧力に相当する信号P3が求めら
れる。そして、この信号P3がROM15にアドレスとして与
えられる。これにより、ROM15内に予め記憶された非線
形関数のテーブルが参照され、リード2aとマウスピース
部2との間隙の断面積、すなわち、空気流に対するアド
ミッタンスに相当する信号Yが出力される。そして、信
号Yと信号−P1とが乗算器16によって乗算され、リード
2aとマウスピース部2との間隙を通過する空気の流速に
相当する信号FLが得られる。
そして、信号FLに対し、乗算器17によって乗算係数G
が乗じられる。ここで、乗算係数Gは共鳴管1における
マウスピース部2の取り付け部付近の管径に応じて決め
られる定数であり、空気流の通りにくさ、すなわち、空
気流に対するインピーダンスに相当するものである。従
って、乗算器17からは、共鳴管1のマウスピース側の入
口において発生する空気の圧力変化に相当する信号が得
られる。そして、この信号がジャンクション20を介し、
共振回路30に入力される。
共振回路30において、遅延回路Djf,Dkf,Dmf、Dmr,Dk
r,Djrは、各々、第2図の共鳴管1内における空気圧力
波の伝播経路に対応している。さらに詳述すると、リー
ド2aとレジスタチューブRTCとの間の空気圧力波の伝播
遅延が遅延回路DjfおよびDjrによってシミュレートさ
れ、レジスタチューブRTCとトーンホールTHとの間の伝
播遅延が遅延回路DkfおよびDkrによってシミュレートさ
れ、トーンホールTHと終端部1Eとの間の伝播遅延が遅延
回路DmfおよびDmrによってシミュレートされる。
共振回路30の出力信号が終端回路TRMに入力される
と、ローパスフィルタMLによって帯域制限され、さらに
乗算器IVによって負の反射係数γが乗算されて共振回路
30に戻される。このようにして、終端部1Eにおける音響
損失の周波数特性および反射に伴う位相反転がシミュレ
ートされる。
共振回路30におけるジャンクションJTHは、第2図に
おけるトーンホールTHの近傍点jにおける空気圧力波の
散乱をシミュレートしたものであり、加算器Aj、乗算器
M1,M2,M3,M4、減算器A1,A2,A3、遅延回路DTH1,DT
H2、ローパスフィルタLPFTHとで構成される。加算器Aj
には、遅延回路Dkfの出力信号 に乗算器M1によって係数a1を乗じた信号、遅延回路Dmr
の出力信号 に乗算器M2によって係数a2を乗じた信号、および遅延回
路DTH2の出力信号 に乗算器M3によって係数a3を乗じた信号が入力される。
また、各係数a1,a2,a3としては、当該トーンホールTH
の開閉に対応し、係数a1off,a2off,a3offあるいは係
数a1on,a2on,a3onが与えられる。これらの各係数は、
実際の共鳴管およびトーンホールの径φ〜φに基づ
き上記式(3)〜(5)あるいは(9)〜(11)により
計算されたものが用いられる。
そして、加算器Ajの加算結果、すなわち、点jの空気
圧Pjに相当する信号は、減算器A1、A2およびA3に入力さ
れる。そして、減算器A1では加算器Ajの出力信号から遅
延回路Dkfの出力信号 が減算され、減算結果 が遅延回路Dkrに送られる。また、減算器A2では加算器A
jの出力信号から遅延回路Dmrの出力信号 ガ減算され、減算結果 が遅延回路Dmfに送られる。さらに、減算器A3では加算
器Ajの出力信号から遅延回路DTH2の出力信号 が減算され、減算結果 が遅延回路DTH1に送られる。
そして、遅延回路DTH1に入力された信号は所定時間遅
延されてローパスフィルタLPFTHに入力され、トーンホ
ール開口部における音響損失が付与される。そして、ロ
ーパスフィルタLPFTHの出力信号に対し、トーンホールT
H開口部における空気圧力波に対する反射係数thcが乗算
器M4によって乗算される。
そして、乗算器M4の乗算結果は遅延回路DTH2によって
遅延されて減算器A3および乗算器M3に入力される。この
ようにして上述したトーンホールTHの近傍点jにおける
空気圧力波の伝播がシミュレートされる。
さて、遅延回路DTH1およびDTH2の遅延時間は、一般的
には、トーンホールTHの高さ、すなわち、空気圧力波が
トーンホールTHの筒状部分を往復するのに要する時間に
等しい遅延時間に設定される。しかしながら、トーンホ
ールTHが開放された場合における音高の微調整を行うた
めに、遅延回路DTH1およびDTH2の遅延時間を調整するこ
とができるようになっている。なお、遅延回路DTH1およ
びDTH2の遅延時間と共振周波数、すなわち、楽音の音高
との関係については後で詳述する。
ジャンクションJRTCはレジスタチューブRTCの空気圧
力波の散乱を演算するために設けたものである。ここ
で、各乗算係数b1,b2,b3は、レジスタチューブRTCに
対応した各径φb,φb,φbに基づいて決められ
る。また、LPFRTCはレジスタチューブRTC開放時の音響
損失を与えるローパスフィルタ、DRTC1およびDRTC2はレ
ジスタチューブRTCの高さに応じた遅延時間を有する遅
延回路である。また、反射係数rtcはレジスタチューブR
TCの開閉に対応し切り換えられる。なお、ジャンクショ
ンJRTCの構成は、ジャンクションJTHと全く同じであ
り、以上説明したように演算に用いられる各係数に相異
があるだけである。従って、ジャンクションJRTCに関す
る詳細な構成の説明は省略する。
さて、この楽音合成装置における遅延回路Djf,Djr,Dk
f,Dkr,Dmf,Dmrは各々複数遅延素子を有すると共に、信
号遅延に寄与する遅延素子の段数を切換制御可能な構成
となっている。そして、遅延回路DjfおよびDjrには遅延
段数データllが、遅延回路DkfおよびDkrには遅延段数デ
ータl2が、遅延回路DmfおよびDmrには遅延段数データm
が、楽音制御回路100から与えられ、開放するトーンホ
ールTHの位置に対応じてこれらの遅延時間の配分が切り
換えられるようになっている。なお、この種の遅延時間
の制御可能な遅延回路の具体的回路としては、例えば入
力信号を所定周期のシフトクロックによって駆動される
シフトレジスタに入力し、シフトレジスタの各段出力の
内、所望の遅延時間に対応したものをセレクタ等によっ
て選択して出力するといった方式のものを用いることが
できる。
ここで、上述のトンホールの開閉操作に対応した遅延
時間の配分の制御について詳述する。今、第2図におけ
るトーンホールTHが、共鳴管1に多数設けられたトーン
ホールの内、開状態であり、かつ、最もリード2a寄りの
トーンホールであるものとする。この場合、遅延段数デ
ータl1とl2は、両データの和が、リード2aから当該トー
ンホールTHまでの距離に対応した遅延段数nと等しくな
り、かつ、遅延段数l1の遅延段数nに対する比が一定値
となるように設定される。また、共鳴管1の全長に対応
した遅延段数がlsの場合、m=ls−nなる段数データm
が遅延回路DmfおよびDmrに供給される。このようにし
て、各遅延回路の遅延時間が設定される。そして、ジャ
ンクションJTHには、係数a1off,a2off,a3offが供給さ
れると共に反射係数thcとして−1が供給される。
一方、トーンホールをすべて指でふさいだ場合は、最
も終端部1E寄りのトーンホール位置に対応し、段数デー
タnおよびmが決められる。そして、ジャンクションJT
Hには、係数a1on,a2on,a3onが供給されると共に反射
係数thcとして1が供給される。また、レジスタチュー
ブRTCの開閉操作に対応し、ジャンクションJRTCにおけ
る反射係数rtcおよび積和演算用の乗算係数b1,b2、b2
が切り換えられる。
以上説明した第1図の構成の楽音合成装置を試作し、
楽音波形の評価を行った。以下、今回の評価において試
作品に設定した各パラメータを列挙し説明する。
<設計パラメータ一覧> [フィルタ類] ◇トーンホールTH用ローパスフィルタLPFTHのカットオ
フ周波数fcTH=2500[Hz] ◇レジスタチューブRTC用ローパスフィルタLPFRTCのカ
ットオフ周波数 fcRTC=7000[Hz] ◇終端部1E用ローパスフィルタMLのカットオフ周波数fc
ML=2000[Hz] ◇フィルタ13(ローパスフィルタ)のカットオフ周波数
fcdcf=1500[Hz] [遅延回路の段数(シフトレジスタ段数)] ◇遅延回路Djf,DkfおよびDmf(遅延回路Djr,DkrおよびD
mr)の総遅延段数(共鳴管1の全長に対応)ls=82 ◇遅延回路DjfおよびDkf(遅延回路DjrおよびDkr)の総
遅延段数(リード2aからトーンホールTHまでの距離に対
応)n=40 ◇遅延回路Djf(遅延回路Djr)の遅延段数(リード2aか
らレジスタチューブRTCまでの距離に対応)l1=10 ◇遅延回路DTH1およびDTH2の各々の遅延段数(トーンホ
ールTHの高さに対応)lTHについては、1,2,3の3通りの
条件で評価を行った。
◇遅延回路DRTC1およびDRTC2の各々の遅延段数(レジス
タチューブRTCの高さに対応)lRTC=2 [トーンホールTH関連の各パラメータ] φ=24[mm] φ=24[mm] φ=16[mm] これら各径の値に基づいて上記乗算係数a1off,a2of
f,a3offを演算し、ジャンクションJTHに設定した。
また、反射係数thcは−1(トーンホールTH開状態)
とした。
[レジスタチューブRTC関連の各パラメータ] φb=19[mm] φb=19[mm] φb=3[mm] これらの各径の値に基づいて上記乗算係数b1off,b2o
ff,b3off,b1on,b2on,b3onを演算し、ジャンクショ
ンJRTCに設定した。
また、反射係数rtcは1(レジスタチューブRTC閉状
態)および−1(レジスタチューブRTC開状態)の2種
類に切り換えた。
[その他のパラメータ] ◇乗算器17の乗算係数(共鳴管1の空気流に対するイン
ピーダンス)G=0.3 ◇終端回路TRMの乗算器IVの反射係数γ=−0.9 そして、上記各パラメータを設定した状態で、遅延回
路DTH1およびDTH2の遅延段数lTH=1,2,3の3条件につい
て、第1図の楽音合成装置の評価を行った。今回の評価
では、第1図の楽音合成装置から励振回路10を切り離
し、点t1からインパルスを入力し、点t2においてその応
答を観測し、そのインパルス応答に対してFFT(高速フ
ーリェ変換)を適用し、第3図(a),(b)に示す伝
送量周波数特性を得た。なお、第3図(a)はレジスタ
チューブRTC用の反射係数rtcを1(レジスタチューブRT
C閉状態)にした場合、第3図(b)はrtc=−1(レジ
スタチューブRTC開状態)にした場合を示したものであ
る。これらの図に示すように、遅延段数lTHを1,2,3と大
きくするに従って共振周波数が低くなる。また、第3図
(a),(b)を見ると、遅延段数lTHは変化は、単
に、伝送量周波数特性が周波数軸に沿って平行移動せし
めるのみであり、特性への他の影響がないことが理解さ
れよう。
この楽音合成装置では、既に上述したように遅延回路
DTH1,DTH2の遅延時間を調整することが可能であるの
で、上記評価結果から容易に理解されるように、共振周
波数を微調整することができる。また、遅延回路DTH1
よびDTH2の遅延段数は、図示してない操作子の操作に基
づいて楽音制御回路100から発生される制御情報に従っ
て設定される。従って、例えば演奏中における音高の微
調整を容易に行うことができる。
なお、上述した実施例では、進行波の遅延時間と反射
波の遅延時間を等しくした場合について説明したが、励
振回路10から出力された信号が、ジャンクションJRTCあ
るいはJTH、あるいは終端回路TRMを介して励振回路10に
帰還されるまでの時間の総和が一定であるならば、進行
波に対する遅延時間と反射波に対する遅延時間との配分
を不均衡にしても構わない。
「発明の効果」 以上説明したように、この発明によれば、所定の遅延
時間を有する第1の信号処理手段と、所定の遅延時間を
有する第2の信号処理手段と、所定の遅延時間を有する
第3の信号処理手段と、前記第1と第2と第3の信号処
理手段を結合すると共に、所定の演算処理を行う信号散
乱ジャンクションと、発生すべき楽音の音高を表す音高
情報に応じて、前記第1および第2の信号処理手段の各
遅延時間を制御する第1の制御手段と、前記第3の信号
処理手段の所定の遅延時間を、前記音高情報とは独立に
調整する第2の制御手段とを具備し、前記第1乃至第3
の信号処理手段と前記信号散乱ジャンクションを接続し
てなるループ状の信号路に励振信号を入力することによ
り楽音信号を合成するようにしたので、音高の微調整を
容易に行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】 第1図はこの発明の一実施例による楽音合成装置の構成
を示すブロック図、第2図は同実施例がシミュレートす
るクラリネットの物理モデルを示す図、第3図は同実施
例におけるt1,t2点から共振回路30側を見た場合の伝送
量周波数特性を示す図である。 JTH……トーンホール用ジャンクション、JRTC……レジ
スタチューブ用ジャンクション、Dnf,Dmf,Dmr,Dnr,Djf,
Dkf,Dkr,Djr……遅延回路、100……楽音制御回路。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定の遅延時間を有する第1の信号処理手
    段と、 所定の遅延時間を有する第2の信号処理手段と、 所定の遅延時間を有する第3の信号処理手段と、 前記第1と第2と第3の信号処理手段を結合すると共
    に、所定の演算処理を行う信号散乱ジャンクションと、 発生すべき楽音の音高を表す音高情報に応じて、前記第
    1および第2の信号処理手段の各遅延時間を制御する第
    1の制御手段と、 前記第3の信号処理手段の所定の遅延時間を、前記音高
    情報とは独立に調整する第2の制御手段と を具備し、 前記第1乃至第3の信号処理手段と前記信号散乱ジャン
    クションを接続してなるループ状の信号路に励振信号を
    入力することにより楽音信号を合成するようにしたこと
    を特徴とする楽音合成装置。
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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5230417A (en) * 1975-09-03 1977-03-08 Kawai Musical Instr Mfg Co Ltd Device for combining musical sound waves of electronic musical instrum ent
JPS61163390A (ja) * 1985-01-14 1986-07-24 セイコーインスツルメンツ株式会社 電子楽器楽音発生装置
JPS6340199A (ja) * 1986-05-02 1988-02-20 ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ 残響付与システム

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