JP2719281B2 - 低温用クヌ−ドセンセル - Google Patents

低温用クヌ−ドセンセル

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隆文 八百
高稔 山本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は分子線エピタキシ−装
置において用いられるクヌ−ドセンセルの改良に関す
る。これは分子線セルあるいは単にKセルということも
ある。発明者の名前をとってクヌ−ドセンセルというこ
ともある。いずれにしても材料をるつぼに入れてヒ−タ
によって加熱し材料を蒸発または昇華させ分子線とする
ものである。分子線エピタキシ−装置は超高真空中で材
料を加熱するので蒸発または昇華したものは分子線とな
る。分子線エピタキシ−の材料は金属、非金属など様々
である。ここで低温用というのは、有機材料やイオウ
S、セレンSe、塩素Clなどの低温でも蒸気圧の高い
物質を対象とするという意味である。
【0002】
【従来の技術】図2に従来例に係るクヌ−ドセンセルの
断面図を示す。これは低温用のものではなく金属などの
比較的蒸気圧の低い材料に対するものである。現在のと
ころ低温で蒸気圧の低い材料に対する適当なクヌ−ドセ
ンセルは存在しない。ここに示すセルは分子線エピタキ
シ−装置の真空チャンバの一部分に設けられる。材料を
収容したるつぼ1と、材料を加熱するヒ−タ2とを含
む。これらが真空チャンバ3の内壁に沿って設けられる
液体窒素シュラウド4の穴部に設けられる。分子線エピ
タキシ−は単体の分子線を基板に照射するものであるか
ら、材料ごとにクヌ−ドセンセルが必要である。一般に
このようなクヌ−ドセンセルが複数個真空チャンバの内
部に設けられる。
【0003】クヌ−ドセンセルはるつぼ1、ヒ−タ2の
他にヒ−タの熱を遮蔽するためのリフレクタ11と、リ
フレクタ11、るつぼ1、ヒ−タ2を支持する支柱12
を有する。支柱12は真空チャンバ3の開口部に固定さ
れる超高真空フランジ13に取り付けられる。ヒ−タの
電力を供給するヒ−タ電力線14、熱電対の端子等は超
高真空フランジを貫いて外部に取り出される。るつぼ1
は例えばPBNが用いられる。ヒ−タはW、Taのコイ
ル状のものあるいはリボン状のものが用いられる。ヒ−
タの温度は熱電対によってモニタされる。リフレクタは
Taの薄板を何枚も重ね合わせたものである。輻射熱を
外部に逃がさずるつぼの近傍に閉じ込めるものである。
この他、るつぼの開口部を開閉するためにシャッタ(図
示しない)が設けられる。
【0004】真空チャンバ3の内部にはこの他にマニピ
ュレ−タ(図示しない)がありこれがホルダに固定され
た基板を支持している。マニピュレ−タは基板加熱用ヒ
−タを持ち多くの場合回転機構を持っている。エピタキ
シャル成長は基板を加熱しないと起こらないものが多い
からである。基板を回転させるのはエピタキシャル成長
を基板上で均一に起こさせるためである。さらに搬送機
構(図示しない)があって前段にある試料準備室や分析
室などとの間で試料ホルダを自動的に搬送できるように
なっている。
【0005】このような分子線エピタキシ−装置はすで
に良く知られている。クヌ−ドセンセルに材料を充填し
てから真空チャンバを密閉し、真空に引く。ベ−キング
することによりチャンバの内壁や、内部構造物について
いるガスを除去しさらに真空に引くことにより、10
-10 〜10-11 Torrの超高真空にする。基板の搬送
は別異の真空室を経由してなされるので基板の交換時も
超高真空は維持される。エピタキシャル成長を繰り返す
とるつぼの中へ入れた材料が枯渇する。この時は真空チ
ャンバ3の真空を破り、るつぼに材料を補填しなければ
ならない。一旦大気圧にすると壁面にガスや不純物が付
着するので、全体をベ−キングして真空に引くという操
作を再び繰り返す必要がある。元の超高真空にするのに
時間がかかる。このために3日〜1週間かかる。
【0006】材料補填のためのチャンバの開閉はエピタ
キシャル成長の種類によりさまざまであるが、半年に1
回、月に1回、あるいは1週間に1回ということもあ
る。真空の立ち上げに時間がかかり生産性を下げる原因
になるからチャンバの開閉はできるだけしない方が良
い。
【0007】このような難点を解決するためにガスソ−
スセルが提案されている。これはチャンバ外部に置かれ
たガスボンベから材料となるガスをチャンバ内へ導入す
るものである。外部から材料が供給されるので材料が枯
渇するということはなく、超高真空を破る必要性が少な
くなる。また、分子線セルをチャンバの中心部から遠ざ
けて真空チャンバを開かず、材料の補充を行うようにし
たものもある。(特開昭63−310792号、特開昭
64−79095号)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従来の分子線エピタキ
シ−装置のようにチャンバの内部にあるクヌ−ドセンセ
ルに材料を充填するものは材料の補填のため真空を破る
必要がある。再び真空にするのに時間がかかり望ましく
ない。特に低温でも蒸気圧の高い物質を材料とするとき
はさらに問題がある。真空引きする際、チャンバの全体
をベ−キングするがこのとき蒸気圧の高い物質は加熱さ
れて蒸発昇華し減量してしまう。これを避けるためには
低温でベ−キングしなければならないということにな
る。できないことはないが真空度の高まりが遅くなる。
【0009】外部から材料をガスとして供給するガスソ
−スセルはこのような欠点はない。しかし常温でガスで
ある材料は限られている。分子線エピタキシ−は単体を
材料にするので純度に優れた薄膜を成長させることがで
きるのである。単体でガスである材料はさらに少ない。
水素化物、塩化物、ハロゲン化物、有機金属としたもの
は常温近くでガス状であるものが多いのでこれら化合物
の材料を用いることもなされる。しかし必ずしもガス状
の化合物を作らない物質もある。また化合物の分子線で
あるから単体の分子線とは異なる。薄膜の内部に不純物
が含まれ易く組成の制御が難しいという難点がある。ま
た、ガスの場合有毒物も多くその安全対策が大変であ
る。
【0010】本発明は低温でも蒸気圧の高い材料を扱う
クヌ−ドセンセルであって、ベ−キングの妨げになら
ず、材料の補填の度に真空チャンバを開閉する必要のな
いクヌ−ドセンセルを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明のクヌ−ドセンセ
ルは、真空チャンバの外部に材料を充填するための開閉
可能なリザ−バ−を有し、リザ−バ−と真空チャンバの
内部とは導入パイプによって連結され、リザ−バ−は独
自のヒ−タと真空排気装置を持つ。ヒ−タによって材料
を加熱して蒸気とし導入パイプを通って真空チャンバの
内部に蒸気を導入し分子線とする。
【0012】リザ−バ−は真空排気装置を持ちリザ−バ
−だけを真空に引くことができる。またリザ−バ−と真
空チャンバの中間には仕切りバルブがあってこれを閉じ
るとリザ−バ−と真空チャンバとが遮断され、開くと蒸
気がリザ−バ−から真空チャンバへと導入される。
【0013】
【作用】リザ−バ−は真空チャンバの外部にあるから、
リザ−バ−に材料を充填する時、真空チャンバを開く必
要がない。仕切りバルブを閉じておきリザ−バ−の蓋を
開き、材料をリザ−バ−に補填する。この後リザ−バ−
を閉じて真空に排気し、十分な真空度に達したら仕切り
バルブを開いて、リザ−バ−と真空チャンバを接続させ
る。リザ−バ−から発生した材料の蒸気は真空チャンバ
に入り分子線となる。
【0014】また材料は真空チャンバの外部にあるの
で、真空チャンバをベ−キングしたときベ−キングのた
めの熱が材料に伝わらず材料が蒸発昇華して減量しな
い。特に低温で蒸気圧の高い材料の場合は好適である。
【0015】
【実施例】図1は本発明の実施例にかかるクヌ−ドセン
セルの概略の構造を示す。このクヌ−ドセンセルは、真
空チャンバ3の内部にはるつぼのような材料を充填する
容器を持たず、導入パイプ5が挿通されているだけであ
る。導入パイプ5は真空チャンバ3の外部にまで連通
し、外部の端でリザ−バ−8につながっている。外部の
リザ−バ−8が材料を入れる容器になっている。真空チ
ャンバ3の内部には液体窒素シュラウド4が設けられる
が、この穴の部分に前記の導入パイプ5の先端が挿入さ
れる。
【0016】導入パイプ5の開口部の周囲には開口部ヒ
−タ6がある。これは図2のるつぼ1の周囲のヒ−タ2
に対応した位置にあるが機能は少し異なる。また開口部
ヒ−タ6を囲んでリフレクタ11が設置されている。超
高真空フランジ13に立てられた支柱12が開口部ヒ−
タ6、リフレクタ11、ヒ−タの電力線、熱電対等を支
持している。導入パイプ5は超高真空フランジ13を貫
き外部に延長している。途中に仕切りバルブ7がありこ
れを介してリザ−バ−8につながる。
【0017】リザ−バ−8は開閉する蓋(図示しない)
を独自に持っている。この蓋を開いて自由に材料を補填
することができる。またリザ−バ−8は外壁の周りに独
自のヒ−タ9を持っている。これはリザ−バ−8内部の
材料を加熱し蒸発昇華させるものである。真空チャンバ
3内部の導入パイプ5の先端にあるヒ−タ6とは独立に
制御することができる。またリザ−バ−8は排気パイプ
15を介して真空排気装置(図示せず)に接続されてお
り、この真空排気装置によって、真空チャンバ3とは独
立に真空に排気することができる。排気パイプ15の途
中には真空引きバルブ10が設けられる。
【0018】リザ−バ−用ヒ−タ9とヒ−タ6は自由に
制御できるから、真空チャンバ3内部の導入パイプ5の
先端の温度T2 と、リザ−バ−8の内部温度T1 とは異
なる。仕切りバルブ7を閉じて、真空排気装置を作動
し、真空引きバルブ10を開くと、リザ−バ−8のみを
真空に引くことができる。仕切りバルブ7を閉じ、真空
引きバルブ10も閉じてリザ−バ−8に大気圧を導入し
蓋を開くことによって材料をリザ−バ−8の中へ補填す
ることができる。仕切りバルブ7は全開または全閉状態
が可能である。中間開度では前後の圧力差を再現性よく
厳密に制御できない。
【0019】以上の構成においてその作用を説明する。
このクヌ−ドセンセルに材料を充填するには真空チャン
バ3を開く必要がない。仕切りバルブ7を閉じて、真空
引きバルブ10も閉じ、大気圧を導きリザ−バ−8の真
空状態を破る。リザ−バ−8の蓋を開く。材料を所要量
だけリザ−バ−8に充填する。この間真空チャンバ3の
超高真空は依然として維持されている。蓋を閉じて真空
引きバルブ10を開き真空排気装置を作動させる。リザ
−バ−8の内部が高真空に引かれる。リザ−バ−用ヒ−
タ9に通電しこれを加熱する。リザ−バ−8の材料が加
熱されて蒸発または昇華を開始する。仕切りバルブ7を
開く。蒸気が導入パイプ5を通って真空チャンバ3の導
入パイプ5の先端から真空チャンバ3の内部へ分子線と
して飛び出す。
【0020】チャンバ内ヒ−タ6は導入パイプ5の先端
部で材料が固化するのを防ぐ作用がある。またこれは分
子線のエネルギ−を制御するためにも利用できる。しか
し分子線量を制御するのは第1にはリザ−バ−用ヒ−タ
9である。これの温度を高くすると分子線量が増え、こ
れの温度を下げると分子線量が減る。このように材料の
補填の際真空チャンバ3を高真空に保持したまま行うこ
とができるという長所がある。
【0021】もうひとつの利点はより決定的である。真
空チャンバ3の真空を立ち上げる時にベ−キングを行う
必要があるが、低温で蒸気圧が高い材料が内部のクヌ−
ドセンセルの中にあるとベ−キングによって材料が失わ
れるので十分なベ−キングができない。しかし本発明の
場合は仕切りバルブ7を閉じて置いて、リザ−バ−8と
真空チャンバ3とを遮断しておいてから真空チャンバ3
のベ−キングを行うことができる。ベ−キングの熱がリ
ザ−バ−8に加わらない。ために自由にベ−キング温度
を上げることができベ−キングの目的を良く達成でき
る。
【0022】本発明は低温での蒸気圧の高い材料に対し
て極めて好都合のクヌ−ドセンセルを与えることができ
る。例えば、VI属のS、Se、有機材料などに適用す
ることができる。
【0023】導入パイプの先端はこのように単なる開口
であっても良い。しかし真空チャンバの内部の真空度と
リザ−バ−8の真空度に差が在り過ぎる場合は導入パイ
プ先端には流路抵抗を増やすための細頸部や多孔板を設
置して差圧を維持できるようにしても良い。
【0024】
【発明の効果】材料を収容しこれを蒸気とするためのリ
ザ−バ−を真空チャンバの外部に設け、両者を導入パイ
プで連結して、リザ−バ−で発生した蒸気を真空チャン
バ内に導くことができるようにしている。導入パイプの
中間には仕切りバルブを設けて気体の流通を遮断できる
ようにしている。リザ−バ−に材料を充填する時は仕切
りバルブ7を閉じておいてリザ−バ−の蓋を開けて材料
を補填することができる。真空チャンバの超高真空に何
ら影響を及ぼさない。真空チャンバを一旦大気圧にする
と次に立ち上げるには3日〜1週間の長い時間と手数が
かかるが本発明はこのような時間と手間を節減すること
ができる。連続的にエピタキシャル成長でき分子線エピ
タキシ−の生産性を高揚できる。
【0025】また真空チャンバを開いて材料の交換をす
ると有害な物質が大気中に飛散して作業環境を悪化させ
ることがあるが、本発明はこのような危険を回避できる
ので作業衛生の向上という点でも優れている。さらにま
た真空チャンバのベ−キングの際は、リザ−バ−が真空
チャンバから切り放されているので、ベ−キングの熱が
リザ−バ−内の材料に伝わらずこれを蒸発させないし減
量させない。ベ−キングを自由に行うことができるとい
う利点があるし、低温で蒸気圧の高い材料の損失を防ぐ
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかるクヌ−ドセンセルの概
略断面図。
【図2】従来例にかかるクヌ−ドセンセルの概略断面
図。
【符号の説明】
1 るつぼ 2 ヒ−タ 3 真空チャンバ 4 液体窒素シュラウド 5 導入パイプ 6 ヒ−タ 7 仕切りバルブ 8 リザ−バ− 9 リザ−バ−用ヒ−タ 10 真空引きバルブ 11 リフレクタ 12 支柱 13 超高真空フランジ 14 ヒ−タ電力線 15 排気パイプ
フロントページの続き (72)発明者 大橋 茂治 京都府京都市右京区梅津高畝町47番地日 新電機株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−226493(JP,A) 特開 昭64−56397(JP,A) 実開 平4−29664(JP,U)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空チャンバを超高真空中として、材料
    を加熱し気化させ分子線として超高真空中にある基板に
    照射し基板上にエピタキシャル成長を行う分子線エピタ
    キシ−装置のクヌ−ドセンセルであって、真空チャンバ
    の外部に設けられ開閉できる蓋を有し材料を収容できる
    リザ−バ−と、リザ−バ−の材料を加熱するためのリザ
    −バ−用ヒ−タと、リザ−バ−と真空チャンバとを連結
    し真空チャンバの内部に分子線を導入する導入パイプ
    と、導入パイプの真空チャンバ内での出口の近傍に設け
    られたヒ−タと、導入パイプの途中に設けられた仕切り
    バルブと、リザ−バ−を真空に引くための真空排気装置
    とを有することを特徴とする低温用クヌ−ドセンセル。
JP25210992A 1992-08-26 1992-08-26 低温用クヌ−ドセンセル Expired - Fee Related JP2719281B2 (ja)

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