JP2716859B2 - 熱拡散塔 - Google Patents

熱拡散塔

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、同位体の分離に関し、特に対向配置された
温壁と冷壁との間でのガス分子の拡散運動を利用して同
位体分離(濃縮)を行なうための熱拡散塔に関する。
原子力やライフサイエンス等の分野において、同位体
の使用が増加している。これらに用いられる同位体は、
自然界に存在し、主にイオン交換法、隔壁法等によって
分離されている。
同位体は、また、低温蒸溜法によって粗分離でき、熱
拡散法によって濃縮できる。以下、熱拡散法による同位
体分離について説明する。
[従来の技術] 従来の熱拡散を利用した同位体分離は、熱線を中心軸
上に備えた熱拡散塔によって行なっている。熱拡散塔の
外壁は、温度上昇を防ぐために、水冷ギャケットによっ
て覆われる。熱拡散による同位体分離の分離係数は、温
壁と冷壁との温度差を、冷壁の温度で割った商に指数関
数的に依存する。このため、冷壁の温度が低い程、また
温壁と冷壁との温度差は大きい程、分離がよく行なわれ
る。通常の熱拡散塔においては、外壁を室温程度に水冷
し、中央の熱線を600℃〜1000℃に加熱する。このよう
にして、半径方向に大きな温度勾配を形成する。
ガス分子の平均運動エネルギEkは、Ek=(1/2)mv2
表わせる。たとえば、水素分子H2と、デュウテリウム分
子D2との混合ガスの場合、ガス分子の質量は、H2の場合
2、D2の場合4となる。したがって、同一温度における
H2分子とD2分子の平均速度は、大きく異なる。
上述のように、熱拡散塔内に大きな温度勾配を形成
し、そこに(H2+D2)混合ガスを導入すると、質量の異
なるガス分子は、温度勾配に沿って異なる分布を示す。
相対的に質量の大きいガス分子は低温側に、質量の小さ
いガス分子は高温側に濃縮されることになる。
このように、半径方向に質量の異なるガス分子が濃縮
された後、熱拡散塔内に対流が生じることにより、熱線
周囲の高温ガスは上へ上昇し、水冷壁近傍の低温ガスは
下へ下降する。このようにして、熱拡散塔の底部からD2
を濃縮したガスが、熱拡散塔頂部からはH2を濃縮したガ
スが得られる。
第2図は、本出願人が先に提案した熱拡散塔(実願昭
62−44259号参照)を示す断面図である。
反応容器11は、上壁11aと共にガス容器を構成する。
ガス容器底部および頂部には、ガス流入/流出口が設け
られているが、図示を省略している。上壁11aには、2
個の電極13、16が設けられている。これらの電極間に熱
線を加熱する電流が印加される。一方の電極13には、熱
線12が接続され、他方の電極16には、リード線17が接続
される。熱線12が反応容器11の中央軸に沿って下方に吊
下げられるように、熱線12の下端には錘14が取付けられ
ている。熱線12は、加熱されると伸びるため、リード線
17は、熱線12の熱による伸縮を許容するように、その下
部18がコイル状に巻かれている。また、リード線17と熱
線12との短絡、および反応容器11が金属で構成されてい
る場合は、リード線17と反応容器との接触による短絡を
防止するため、リード線17には絶縁碍子18が被せられて
いる。熱線12の伸縮を許容するための下部コイル上部に
おいては、リード線の曲率半径を小さくするために、碍
子の長さも短くされている。
図中14は、熱線12が反応容器11の中央軸付近に配置さ
れるように、位置付けを行なうスペーサであり、スペー
サは、たとえばセラミック先端部を有することによっ
て、反応容器11と絶縁される。
反応容器11は、たとえば直径が約3.0cm、長さが約150
cmのような寸法を有する。
熱線およびリード線を上壁に取付けた構成としたこと
により、熱線交換を上壁を取外すことのみによって簡単
に行なうことができる。熱線交換が簡単に行なえること
は、たとえばトリチウム等の放射性物質を処理する熱拡
散塔の場合に、安全対策上重要なことである。
なお、反応容器11の外側には水冷ジャケット19が設け
られており、反応容器11の壁面を水冷する。このように
して、反応容器内では熱線近傍が、たとえば600℃〜100
0℃に加熱され、反応容器近傍は室温近くに保持され
る。
たとえば、H2:D2=50%:50%の組成を有する2成分
水素同位体ガスを分離する場合、内径約3.0cm、長さ約9
2cmの鉛直に立てられた熱拡散塔を用い、熱線温度を約1
000℃、ガス圧力を約700Torrとすると、熱拡散塔底部の
D2濃度は約56%となる。なお、ここで得られるD2濃度
は、設定条件によって若干変化する。
ところで、H2とD2との混合ガスを高温に加熱した場
合、熱拡散と同時に以下の同位体平衡反応が生じる。
H2+D2→2HD すなわち、同位体平衡反応によって、第3の成分HDが
生じる。このような同位体平衡反応は、通常の化学反応
と同様、温度の上昇によって盛んになる。また、通常タ
ングステン(W)で形成された熱線の表面温度は600℃
〜1000℃と高温になるため、この高温のW表面が触媒作
用を発揮する。このため、短時間で同位体平衡反応が進
行して、HDガスが生成される。この同位体平衡反応の進
行により、D2分離の度合は極めて低下してしまう。
H2、D2、T2の3成分の水素同位体ガスを分離する場合
は、3種類の同位体平衡反応が進行し、HD、HT、DTが形
成され、3成分ガスが6成分ガスに変化してしまう。こ
の同位体平衡反応により、D2およびT2の分離性能は極め
て低下してしまう。
本出願人は、熱拡散燈における上述のような不所望の
反応を抑制するため、熱線の温度を制限し、かつ同位体
分離の分離効率を確保するために、冷壁を冷媒によって
冷却することを提案しした(特願平2−5762号、特願平
2−42049号参照)。
[発明が解決しようとする課題] 以上説明したように、従来の熱拡散塔によれば、反応
容器の中心軸上に配置される熱線は、600℃〜1000℃と
高温に加熱された。このように高温の熱線を反応容器中
央部に確実に配置させるため、熱線12を鉛直方向に引下
げるための錘14や、熱線の中間部を反応容器壁から引離
すためのスペーサ15が必要であった。
また、熱線12に電流を流すため、絶縁されたリード線
17を反応容器内に配置する必要があった。
このような構成とするため、反応容器の構成自身がか
なり複雑となり、その寸法等にも制限を生じていた。
本発明の目的は、より簡単な構成で保守取扱いが容易
な熱拡散塔を提供することである。
[課題を解決するための手段] 本発明の熱拡散塔は、低温に耐える材料で形成され、
ガスを気密に収容することができる、鉛直方向に長い反
応容器と、該反応容器を囲んで冷媒通路を形成する冷媒
ジャケットと、該冷媒通路に冷媒を供給する冷媒源と、
該反応容器の中央部に鉛直に配置され、自己保持能力を
有するシースヒータとを有する。
[作用] 熱拡散塔の温壁においても、同位体平衡反応が進行し
ないようにするためには、熱拡散塔内の最高温をたとえ
ば、約200℃程度に制限する必要がある。この程度の温
度は、針金状の抵抗線等の他、種々の形態によって実現
することができ、シースヒータによっても容易に達成で
きる。
シースヒータは、シース素材として適当な材料を用い
ることにより、物理的な自己保持機能を有し、外部と絶
縁性を保ち、十分な長さ延在するものが得られる。ま
た、シースヒータのシース部分に帯電対を埋め込むこと
により、シースヒータ基部から温度モニタ信号を取出す
ことが可能である。
このように、シースヒータを熱拡散塔中央部に配置
し、反応容器周壁を冷媒によって冷却することにより、
最高温度を制限した熱拡散塔において、効率的な同位体
分離を行なうことができる。
熱線、錘、スペーサ、碍子付きリード線等の構成がシ
ースヒータのみによって置換えられるため、熱拡散塔の
構成が簡単化される。
[実施例] 第1図は、本発明の実施例による熱拡散塔を示す概略
断面図である。
反応容器1は、その主要部をステンレス等の金属で構
成され、その外周部は、冷媒ジャケット6によって取囲
まれている。反応容器1上部には、シースヒータ2がそ
の基部3によって、気密に取付けられている。シースヒ
ータ2は、絶縁物容器中にヒータを内蔵したものであ
り、表面温度をモニタする熱電対5を備える。また、ヒ
ータ用電力線4は、シースヒータ基部3から絶縁された
状態で取出されている。
シースヒータ2は、絶縁材料でその主要部を構成さ
れ、物理的自己保持能力を有する。また、その熱膨脹係
数は小さいため、熱による伸縮は無視できる程度であ
る。このため、反応容器1に最も適した形状のシースヒ
ータ2を、反応容器1上面によって取付けることができ
る。冷媒ジャケット6は、冷媒通路7を介して冷凍機8
に接続されている。冷凍機8は、冷媒を冷却し、再び冷
媒ジャケット6に供給する。たとえば、冷媒としてヘリ
ウム(He)を用い、反応容器1外周面を液体窒素温度以
下の極低温に冷却する。
第1図に示すような構成の熱拡散塔により、反応容器
中央部の温度を約200℃程度以下に設定し、反応容器1
外壁部の温度を極低温に冷却することによって、同位体
平衡反応を抑制しつつ、十分高い同位体分離効率を得
る。
高温部の温度が、従来の熱拡散塔と比較して十分低温
なため、シースヒータによって、十分加熱の目的を果た
すことができる。熱線に代えてシースヒータを用いるこ
とにより、錘やスペーサ、碍子付きリード線等を反応容
器内に入れる必要がなくなった。このため、構成が簡単
となり、反応容器1の内径も必要最少限に減少させるこ
とが可能となった。
また、ヒータの交換を行なう際にも、熱拡散塔上部よ
りシースヒータアセンブリを交換することで容易に交換
作業を実施することができる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこ
れらに制限されるものではない。たとえば、種々の変
更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明で
あろう。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明によれば、絶縁性があ
り、自己保持能力を有するシースヒータによって熱拡散
塔中央部が加熱されるため、従来の熱線および熱線を配
置させるための諸部材が不要となった。
このため、簡単な構成の熱拡散塔が実現された。
加熱手段の交換作業も、容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例による熱拡散塔を概略的に示
す断面図、 第2図は、従来技術による熱拡散塔の例を示す概略断面
図である。 図において、 1……反応容器 2……シースヒータ 3……シースヒータ基部 4……電力線 5……熱電対 6……冷媒ジャケット 7……冷媒通路 8……冷凍機

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】低温に耐える材料で形成され、ガスを気密
    に収容することができる、鉛直方向に長い反応容器と、 該反応容器を囲んで冷媒通路を形成する冷媒ジャケット
    と、 該冷媒通路に冷媒を供給する冷媒源と、 該反応容器の中央部に鉛直に配置され、自己保持能力を
    有するシースヒータと を有する熱拡散塔。
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