JP2715722B2 - 半導体シナプス回路とその製造方法、及び半導体ニューロン素子、及び半導体−超伝導体複合ニューロン素子 - Google Patents

半導体シナプス回路とその製造方法、及び半導体ニューロン素子、及び半導体−超伝導体複合ニューロン素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はニューラルネットワーク
を構成する半導体ニューロン素子、及び半導体−超伝導
体ニューロン素子、さらにこれらのニューロン素子を構
成する半導体シナプス回路とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、神経回路網の概念を応用したニュ
ーラルネットワークは、パターン認識などの優れた情報
処理機能が実証されてきており、ハードウェア,ソフト
ウェアの両面で研究が活発化している。特にハードウェ
アの面では電気回路を用いるものと、光を用いるものと
がある。この中で、電気回路を用いるものでは、生物の
神経組織を模倣して、シナプスや細胞体をシリコンMO
Sで作製するものや、超伝導体によるジョセフソン接合
を利用して作製するものなどが実際に試作されたり、提
案されたりしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来例により、確かに
ニューラルネットワークが実現され、又実現の可能性が
あると考えられるが、そのニューロン素子数はまだ少な
く、実際の幅広い応用の為には、さらに集積度を向上さ
せる必要がある。この集積化で問題となるのは素子間を
結ぶ配線数が膨大になることが最も大きな問題である
が、この他、これまでの提案ではシナプスを構成する回
路が大きくなりすぎてしまう欠点がある。これに伴っ
て、シナプス部分での遅延時間も膨大になり、実際の計
算時間に支障をきたすようになることが心配される。
【0004】又、最近、日高により提案された特願平0
3−024224号明細書によればジョセフソン接合を
含む超伝導回路により、ニューロン素子が実現されてい
るが、この日高による発明では入力の重みづけが離散的
である為に、望まれる出力を得るにあたり、充分な入力
の重みづけの微調ができないという欠点がある。
【0005】本発明の目的は、この様な問題点を解決し
た、メゾスコピックなバリスティック電子を利用したシ
ナプス回路と半導体トランジスタや超伝導ジョセフソン
接合回路とを組み合わせた半導体装置、及び半導体−超
伝導体複合装置とその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明の半導体シナ
プス回路は、荷電キャリアガスを有する半導体に、荷電
キャリアの出射方向を限定する狭搾領域を出口として設
けた各々電気的に分離された複数の入力チャネルと、こ
の入力チャネルから出射された荷電キャリアの方向を変
え得る静電ポテンシャルを与え得る電極と、前記入力チ
ャネルの出口に対向して、限定された方向の荷電キャリ
アのみを通過させ得る単一の狭搾領域と、この単一狭搾
領域を通過した荷電キャリアを集めるアクセプタ電極と
を設けたことを特徴としている。
【0007】第2の発明の半導体ニューロン素子は、第
1の発明の半導体シナプス回路を含み、このシナプス回
路のアクセプタ電極と接地電極間に設けた抵抗体に発生
する電位を、隣接して設けたトランジスタのゲートに、
このトランジスタの制御電圧として印加することを特徴
としている。
【0008】さらに、第3の発明の半導体−超伝導体複
合ニューロン素子は、第1の発明の半導体シナプス回路
を含み、このシナプス回路のアクセプタ電極と接地電極
間に超伝導配線によりインダクタンスを設けた半導体装
置と、前記インダクタンスに対する結合インダクタンス
に誘起する電流の多寡により、しきい値動作を行う超伝
導体装置とを具備することを特徴としている。
【0009】また、第4の発明の半導体シナプス回路の
製造方法は、第1の発明の半導体シナプス回路における
狭搾領域の作製にあたり、ショットキー金属を半導体上
に被着し、前記金属の下方に存在する荷電キャリアを空
乏化することを特徴としている。
【0010】さらに、第5の発明の半導体シナプス回路
の製造方法は、第1の発明の半導体シナプス回路におけ
る狭搾領域の作製にあたり、イオン注入による高抵抗
化、あるいは混晶化を利用することを特徴としている。
【0011】
【作用】本発明の作用を以下に説明する。
【0012】ニューロン素子として必要になる動作は以
下の2つに要約される。 重み付き加算(シナプス)動作 しきい値動作 即ち、他のニューロン素子からの入力を個々に重みを付
けて足し合わせ()、その総和があるしきい値を越え
ると出力を出す()動作である。
【0013】本発明では、で要求されるシナプス動作
を、近年研究が活発化してきているメゾスコピック領域
のバリスティック荷電キャリアの伝導を利用して実現す
る。サイバンらがフィジカル・レビュー(Physic
al Review)B,第41巻,7937頁,19
90年に報告しているように、運動方向を限定する狭搾
領域(以下ポイントコンタクトと呼ぶ)から出射したバ
リスティック荷電キャリアは、空間的に勾配を持たせた
静電ポテンシャル(例えば、基部上部に取り付けたゲー
ト電極により供給できる)により、その運動方向を変え
ることができる。彼らはエミッタとして設けた一つのポ
イントコンタクトに対向して、いくつかの電気的に分離
されたアクセプタとなるポイントコンタクトを用意し、
ゲートに印加する電圧を変えることにより、荷電キャリ
アが異なるアクセプタに振り分けられることを示した。
【0014】本発明では、ポイントコンタクトからなる
複数のエミッタから出射するバリスティック荷電キャリ
アの運動方向を、各々の出口近傍に設けた電極により制
御し、これに対向するポイントコンタクトからなる単一
のアクセプタにより、各ゲート電圧に対応した電流を個
々のエミッタから独立に集められるという新規に見いだ
した実験結果に基づいている。この結果は、エミッタか
ら出射する荷電キャリアの分布が指向性を有している
が、ある程度の幅を持っており、ゲート電圧によりアク
セプタに飛び込む荷電キャリアの量を連続的に変えるこ
とができるという事実と、異なるエミッタからアクセプ
タに飛び込む荷電キャリア相互の間に干渉がなく、総和
則が成り立つという事実が背景にある。後者の事実に関
しては、これを裏付ける実験がスペクタらにより、アプ
ライド・フィジクス・レター(Appl.Phys.L
ett.),第58巻,263頁,1991年に報告さ
れている。彼らは2組のポイントコンタクトによるエミ
ッタとアクセプタを、エミッタから出射する荷電キャリ
アが互いに十字路型に交差するように配置し、相互に影
響されないことを確認している。以上が本発明のシナプ
ス部分に相当するが、アクセプタを通過した荷電キャリ
アはすべてオーム性電極(アクセプタ電極)に集められ
る。
【0015】次に、しきい値動作に関しては、2種類
の方法により実現している。第1の発明では従来しきい
値デバイスの代表であるトランジスタを用いている。即
ち、シナプス部分のアクセプタ電極と接地電極間に設け
た抵抗体に発生する電位を隣接して設けたトランジスタ
のゲートに制御電圧として印加している。第2の発明で
は、シナプス部分のアクセプタ電極と接地電極間に設け
た超伝導配線に対して、磁気的に結合するインダクタン
スとスイッチングエレメントとしてジョセフソン接合を
含む超伝導体しきい値素子を用いる。この超伝導体しき
い値素子としては日高により出願されている特願平03
−024224号明細書による素子を、ここでは一つの
例として用いている。
【0016】
【実施例】図1に示したのは図2,図4及び図5のニュ
ーロン素子に含まれるシナプス部分の詳細平面図であ
る。図2及び図4はしきい値動作素子としてトランジス
タを用いた場合のニューロン素子の回路図である。図5
はしきい値動作素子としてジョセフソン接合を含む超伝
導体を用いた場合のニューロン素子の回路図である。
又、図3は図1と同様のシナプス部分を異なる方法で作
製したものの詳細平面図である。これらの図面を参照し
て本発明の実施例を詳細に説明する。
【0017】図1及び図3の半導体シナプス回路につい
て説明する。本発明の半導体シナプス回路を作り込む基
板としては、荷電キャリアのバリスティック性を利用す
る為、高移動度AlGaAs/GaAs基板を用いてい
る。荷電キャリアの存在する領域を限定する為のメサエ
ッチング2を図に示した様に行った後、図1ではエミッ
タ及びアクセプタを作製するにあたり、第4の発明の製
造方法を用いて、ショットキー電極1を基板上部に被着
し、下方の荷電キャリアを空乏化することにより実現し
ている。また図3ではエミッタ及びアクセプタを作製す
るにあたり、第5の発明の製造方法であるイオン注入に
よる高抵抗化、あるいは混晶化を2に示した領域に行う
ことにより実現している。より簡便には集束イオンビー
ムを用いてもよい。11〜14は、他のニューロン素子
からの入力の為のエミッタ電極で、この例では簡単の
為、4入力に限定している。エミッタの前方にある21
〜24で示した狭搾領域は、エミッタから流れ出た荷電
キャリアの方向を限定する為のポイントコンタクトであ
る。さらに31〜34は、エミッタ領域から飛び出した
荷電キャリアの方向を変える静電ポテンシャルを供給す
る為のゲート電極である。41はこの領域に集まる荷電
キャリアの中の一定の範囲にあるものだけを通過させる
ポイントコンタクトで、このポイントコンタクトを通過
した荷電キャリアはアクセプタ電極40に集められる。
電極15,16はポイントコンタクト41を通過できな
かった荷電キャリアを吸収する為のドレイン電極であ
る。このシナプスの機能を充分に発揮させる為には、エ
ミッタ側のポイントコンタクトからアクセプタ側のポイ
ントコンタクトまでの距離を荷電キャリアの平均自由行
程以内になるように微細加工を行い、荷電キャリアがバ
リスティックに走行させることが必要となる。この実施
例で用いた基板の荷電キャリアの平均自由行程は約10
μmあり、図1及び図3に示した設計ではポイントコン
タクト間の距離を5μmにしてあるので、充分にバリス
ティック性は保証されている。又、各オーミック電極,
各ゲート電極への配線は、これらの図面では示されてい
ない第2層配線によって行っている。
【0018】図2は図1及び図3に示したシナプスと、
しきい値動作素子としてトランジスタ60を用いて構成
した第2の発明による半導体ニューロン素子である。1
1〜14は、図1及び図3で示したシナプス回路の入力
のエミッタ領域のオーミック電極であり、40はアクセ
プタ電極である。アクセプタ電極は抵抗51を通してア
ースされており、抵抗51の間に発生する電位がトラン
ジスタ60のゲートににされるようになっている。トラ
ンジスタ60の主電流は抵抗52を介して電源より供給
されており、シナプスのアクセプタ電極に流れ込む電流
の多寡により、この主電流が制御できるようにトランジ
スタ60のしきい値、及び抵抗51の抵抗値を選んでい
る。出力からは適切な負荷により、分流して次段のシナ
プスへ接続される。ここで示した回路はシナプスと半導
体しきい値回路との接続を最も簡素にする為に、直接結
合型の回路を示したが、ニューロン素子に必要となる大
きなファンアウト数を得る為に、図4に示したようなバ
ッファードFET論理回路を用いても良い。61〜64
は回路を構成するトランジスタ、65はダイオードを示
している。又、これらの回路の他に、ソース結合型FE
T論理回路等、砒化ガリウムやヘテロ接合FET用の基
本論理回路を用いても良いことは当然である。
【0019】図5は図1及び図3に示した半導体シナプ
ス回路と、しきい値動作素子として特願平03−024
224号明細書によるジョセフソン接合74,73を含
む超伝導回路とを用いて構成した第2の発明によるニュ
ーロン素子である。11〜14は図1及び図3で示した
入力のエミッタ領域のオーミック電極であり、40はア
クセプタ電極である。アクセプタ電極は71の超伝導配
線を通してアースされており、この間のインダクタンス
によって超伝導閉回路72と磁気的に結合している。こ
の超伝導閉回路には、バイアス電流入力端75より、バ
イアス電流がジョセフソン接合73を通して流れている
が、この他に超伝導配線71に流れる電流と相互インダ
クタンスMに応じて循環電流が超伝導閉回路72に流れ
る。このバイアス電流と循環電流の総和がジョセフソン
接合73のしきい値電流を越えると、この接合は電圧状
態にスイッチし、これらの電流はジョセフソン接合74
を通過するようになるが、ジョセフソン接合74の電流
しきい値をジョセフソン接合73よりも小さくしてある
と、ジョセフソン接合73も電圧状態にスイッチし、結
局、出力端76へ電流が送り出されるようになる。
【0020】
【発明の効果】本発明を用いれば、従来提案されている
回路と比べ大幅に素子面積を削減したシナプス回路を実
現することができる。これにより、さらなる集積度の向
上や配線遅延の減少が可能となる。
【0021】特に、本発明の素子は低温動作を基本とし
ており、配線に超伝導体を用いることは容易であり、膨
大になる配線部分での発熱を抑えることが可能となる。
【0022】又、最近発明された超伝導ニューロン素子
と比べ、各入力に対して連続的に重みづけが可能である
為、期待される出力が正確に得られるように微調するこ
とができ、実際のパターン認識等に応用した場合の認識
率をはるかに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の発明の半導体シナプス回路を第4の発明
の製造方法により、作製した素子の一実施例の上面図で
ある。
【図2】第2の発明の半導体ニューロン素子の実施例の
回路図である。
【図3】第1の発明の半導体シナプス回路を第5の発明
の製造方法で作製した素子の一実施例を示した上面図で
ある。
【図4】第2の発明の半導体ニューロン素子の実施例の
回路図である。
【図5】第3の発明の半導体−超伝導体複合ニューロン
素子の一実施例の回路図である。
【符号の説明】
1 ショットキー電極 2 メサエッチング 11〜14 入力エミッタ電極 15,16 ドレイン電極 21〜24 エミッタ側狭搾領域(ポイントコンタク
ト) 31〜34 ゲート電極 40 アクセプタ電極 41 アクセプタ側狭搾領域(ポイントコンタクト) 51,52 抵抗体 60〜64 トランジスタ 65 ダイオード 71 インダクタンスを含む超伝導配線 72 相互インダクタンスMで71と結合する超伝導閉
回路 73,74 ジョセフソン接合 75 バイアス電流入力端 76 出力端
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 39/22 ZAA H03K 19/195 ZAA H03K 19/195 ZAA 9447−4M H01L 29/80 A

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】荷電キャリアガスを有する半導体に、荷電
    キャリアの出射方向を限定する狭搾領域を出口として設
    けた各々電気的に分離された複数の入力チャネルと、こ
    の入力チャネルから出射された荷電キャリアの方向を変
    え得る静電ポテンシャルを与え得る電極と、前記入力チ
    ャネルの出口に対向して、限定された方向の荷電キャリ
    アのみを通過させ得る単一の狭搾領域と、この単一狭搾
    領域を通過した荷電キャリアを集めるアクセプタ電極と
    を設けたことを特徴とする半導体シナプス回路。
  2. 【請求項2】請求項1記載の半導体シナプス回路を含
    み、このシナプス回路のアクセプタ電極と接地電極間に
    設けた抵抗体に発生する電位を、隣接して設けたトラン
    ジスタのゲートに、このトランジスタの制御電圧として
    印加することを特徴とする半導体ニューロン素子。
  3. 【請求項3】請求項1記載の半導体シナプス回路を含
    み、このシナプス回路のアクセプタ電極と接地電極間に
    超伝導配線によりインダクタンスを設けた半導体装置
    と、前記インダクタンスに対する結合インダクタンスに
    誘起する電流の多寡により、しきい値動作を行う超伝導
    体装置とを具備することを特徴とする半導体−超伝導体
    複合ニューロン素子。
  4. 【請求項4】請求項1記載の半導体シナプス回路におけ
    る狭搾領域の作製にあたり、ショットキー金属を半導体
    上に被着し、前記金属の下方に存在する荷電キャリアを
    空乏化することを特徴とする半導体シナプス回路の製造
    方法。
  5. 【請求項5】請求項1記載の半導体シナプス回路におけ
    る狭搾領域の作製にあたり、イオン注入による高抵抗
    化、あるいは混晶化を利用することを特徴とする半導体
    シナプス回路の製造方法。
JP3211271A 1991-08-23 1991-08-23 半導体シナプス回路とその製造方法、及び半導体ニューロン素子、及び半導体−超伝導体複合ニューロン素子 Expired - Fee Related JP2715722B2 (ja)

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