JP2713127B2 - シクロヘキサノールの製造方法 - Google Patents

シクロヘキサノールの製造方法

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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシクロヘキセンの水和反
応によりシクロヘキサノールを製造する方法に関する。
詳しくは、該水和反応に用いる触媒の寿命を改善し、か
つ、触媒の分離性も改善し、長期間に渡り、安定にシク
ロヘキサノールを製造する方法に関する。シクロヘキサ
ノ−ルは、シクロヘキサノン、アジピン酸、リジン等の
中間原料として、工業上有用な物質である。
【0002】
【従来の技術】従来、シクロヘキセンの水和反応による
シクロヘキサノ−ルの好ましい製造方法として、アルミ
ノシリケ−トなどのゼオライトを使用する方法(特開昭
58−194828号、特開昭60−104028号
等)、メタロシリケ−トのゼオライトを使用する方法
(特開平1−110639号等)などが知られている。
【0003】以上のゼオライト触媒を用いた方法は平衡
反応であり、その反応の転化率は最大でも数十%程度に
すぎないが、副反応がほとんどなく100%に近い選択
率で目的とするシクロヘキサノ−ルを得ることが可能で
ある。また、該方法では、反応液を油相と水相を分離す
ることで目的物質であるシクロヘキサノ−ルと触媒が簡
便に分離することができる。即ち、水相側に触媒を残
し、油相側よりシクロヘキサノ−ルを分離回収すること
ができる。従って、該方法は工業的に簡便で有利な方法
として大いに期待できる。
【0004】一方、原料のシクロヘキセンは、鎖状モノ
オレフィンと比較すると不安定であり、特に高温、酸素
存在下では分解しやすく、酸化生成物として、シクロヘ
キセンの過酸化物、1,2−エポキシシクロヘキサン、
シクロヘキセン−1−オ−ル−3、1,3−シクロヘキ
サジエンなどが知られている(E.H.Farmere
t al.,J.Chem.Soc.,121(194
2)参照)。
【0005】特開昭60−246331号及び特開昭6
0−246332号では、シクロヘキセンを含む混合物
にニトロ基で置換された芳香族化合物あるいは亜硝酸化
合物を酸化防止剤として添加する安定化方法が提案され
ている。かかる酸化防止剤を使用してシクロヘキセンを
蒸留精製することも期待されるが、実際に商業的に入手
可能な製品シクロヘキセン中には前記のような種々の微
量不純物が含まれていることが確認されており、これら
微量不純物を工業的レベルで完全に除去することは必ず
しも容易ではないと考えられる。
【0006】また、ゼオライト触媒を用いてシクロヘキ
センの水和を行う反応において、反応系中の特定の不純
物に注目した例として、特開昭63−154636号及
び特開昭63−250334号の2件の報告が知られて
いる。前者の特開昭63−154636号の報告は、反
応系中の有機過酸化物により触媒の活性低下を招くとす
るものである。この有機過酸化物は主に原料のシクロヘ
キセン由来の不純物であり、該報告の実施例では、試薬
のシクロヘキセンを硫酸鉄で処理し、シクロヘキセン中
の有機過酸化物を分解してから蒸留精製し、これについ
て水和反応を実施している。この実施例では、反応に使
用したシクロヘキセン中の有機過酸化物以外のその他の
不純物の濃度が不明であり、その他の不純物の反応への
影響についての開示はない。また、有機過酸化物はその
多くは、通常不安定であり、この水和反応系においても
大部分は分解消失し、反応系中には殆ど蓄積されない。
【0007】一方、後者の特開昭63−250334号
の報告は、反応系中の1、3−シクロヘキサジエンによ
り触媒の活性を招くとするものである。この1、3−シ
クロヘキサジエンも主に原料のシクロヘキセン由来の不
純物であり、該報告の実施例では、試薬のシクロヘキセ
ンを活性白土と接触させてシクロヘキセン中の1、3−
シクロヘキサジエンを吸着除去し、次いで蒸留精製した
ものについて水和反応を実施している。この実施例で
は、反応に使用したシクロヘキセン中の1、3−シクロ
ヘキサジエン以外のその他の不純物の濃度が不明であ
る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前段で既に説明したよ
うに、触媒としてゼオライトを用いてシクロヘキセンの
水和反応によりシクロヘキサノ−ルを製造する方法は工
業的に有利な方法として期待できるものであるが、該反
応を連続的に行った場合、その触媒活性が経時的に急速
に低下していくという問題がある。
【0009】また、本発明者等の検討によれば、水和反
応を長時間に渡り連続的に行った場合には、次第に油相
への触媒の混入量が増加し、反応液の油水分離が不良と
なる問題が判明した。油相への触媒の混入は、油相が通
る配管を閉塞させたり、触媒ロスとなったりするなど、
工業的には深刻な問題を招く可能性がある。かかる問題
は、前記の原料シクロヘキセン中の有機過酸化物や1、
3−シクロヘキサジエンを除去しても十分とはいえな
い。従って、シクロヘキセンの水和反応を行う場合に
は、頻繁に、触媒を補充、交換したり、あるいは、活性
の低下した触媒を再生する必要があり、工業的な実施に
は未だ大きな問題が残る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、シクロヘ
キセンの水和反応において上記のゼオライトを触媒とし
て使用するときの課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結
果、驚いたことに、反応系中で、原料シクロヘキセン中
の微量不純物である特定の化合物の含有量を一定量以下
とすることで、長時間の連続反応によって起こる触媒の
分離性の悪化を著しく抑制できることを見出し、本発明
を完成するに至った。
【0011】すなわち、本願発明は、触媒としてゼオラ
イトを用いて、シクロヘキセンの水和反応によりシクロ
ヘキサノールを連続的に製造する方法において、反応系
内で、原料シクロヘキセンに対する1,2−エポキシシ
クロヘキサンの含有量を300ppm以下として水和反
応を行うことを特徴とする。
【0012】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明では、反応系中で、原料シクロヘキセンに対する
1,2−エポキシシクロヘキサンの含有量を300pp
m以下、好ましくは150ppm以下、さらに好ましく
は50ppm以下とする。1,2−エポキシシクロヘキ
サンの含有量が300ppmを越える場合、水和反応を
長時間に渡り連続的に行った場合には、次第に油相への
触媒の混入量が増加し、反応液の油水分離が不良とな
る。そして、1,2−エポキシシクロヘキサンの含有量
が300ppm以下の範囲では油相への触媒の混入が殆
ど認められなくなる。
【0013】従来より、原料シクロヘキセン中の不純物
のひとつとして1,2−エポキシシクロヘキサンの存在
は認められていたものである。しかしながら、反応系に
おいては微量成分の一つでしかない1,2−エポキシシ
クロヘキサンが水和反応に影響を及ぼすというようなこ
とは全く思いもつかなかったことであり、1,2−エポ
キシシクロヘキサンを特に除去する必要性はないもの
して見過ごしていた。シクロヘキセンは、商業的には主
にクロルシクロヘキサンの脱ハロゲン化水素により製造
されていると推定されるが、この方法によって製造され
たシクロヘキセン中にはかなりの量の1,2−エポキシ
シクロヘキサンが含まれている。また、ベンゼンの部分
水素化によりシクロヘキセンを製造する方法において
は、反応液中には1,2−エポキシシクロヘキサンの副
生はほとんど認められないが、反応液より高温条件下で
蒸留分離した精製シクロヘキセン中には相当量の1,2
−エポキシシクロヘキサンが確認される。また、1,2
−エポキシシクロヘキサンの含有量は、シクロヘキセン
の貯蔵中にも増加することも確認されている。従って、
商業的に入手可能な製品シクロヘキセン(以下「粗シク
ロヘキセン」ということがある。)中には、通常500
〜数千ppmの量の1,2−エポキシシクロヘキサンが
含まれている。
【0014】従って、本願発明を実施する際は、通常、
反応系内でのシクロヘキセンに対する1,2−エポキシ
シクロヘキサンの含有量が前記の許容濃度以下になるよ
うに、例えばシクロヘキセンに対する1,2−エポキシ
シクロヘキサンの含有量を300ppm以下、好ましく
は150ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下
とするように、粗シクロヘキセンを精製する必要があ
る。該精製方法については特に制限はなくどのような方
法を用いてもよいが、蒸留やクロマトグラフィーなどに
より粗シクロヘキセンから1,2−エポキシシクロヘキ
サンを除去する方法が例示できる。この精製方法に際し
ては、あくまでも粗シクロヘキセンより1,2−エポキ
シシクロヘキサンを効率よく分離できる条件を選択すれ
ばよく、1,2−エポキシシクロヘキサン以外の微量不
純物も全て分離する必要はない。即ち、できるだけ高純
度のシクロヘキセンを得ることが理想であるが、粗シク
ロヘキセン中の多数不純物を効率よく完全に除去するこ
とは技術的に困難があり、また、多大なコストアップと
なるので工業的には現実的ではないからである。
【0015】なお、以上のゼオライト触媒の経時的な分
離性の悪化の理由は明確ではないが、本発明に至る実験
結果からみて以下のことが推定される。原料シクロヘキ
セン中には種々の不純物が存在しているが、該不純物で
も水和反応系に対する影響は各々大きく相違する。これ
は、ゼオライト触媒との相互作用が不純物の種類によっ
て大きな差があるからであると推定される。そして、
1、2−エポキシシクロヘキサンの場合、該化合物によ
って微結晶の集合体であるゼオライトの状態が極僅かな
変化を受けることや、1、2−エポキシシクロヘキサン
及びその重合物の触媒への吸着によって触媒の親水性が
低下することに起因すると考えられる。従って、本発明
の効果は固体触媒であるゼオライトに特有の効果である
と推定される。
【0016】次に、本発明で使用することのできるゼオ
ライトの好ましい例としては、モルデナイト、エリオナ
イト、フェリエライト、モ−ビル社発表のZSM系ゼオ
ライトなどの結晶性アルミノシリケ−トおよびホウ素、
鉄、ガリウム、チタン、銅、銀など異元素を含有するメ
タロアルミノシリケ−トやメタロシリケ−トなどのゼオ
ライトである。また、ゼオライトの交換可能なカチオン
種は、通常プロトン交換型(H型)が用いられるが、M
g、Ca、Sr等のアルカリ土類元素、La、Ce等の
希土類元素、Fe、Co、Ni、Ru、Pd、Pt等の
VIII族元素の少なくとも一種のカチオン種で交換され
ていることも有効である。あるいはTi、Zr、Hf、
Cr、Mo、W、Th等を含有させることも有効であ
る。
【0017】本発明における水和反応は連続式で行われ
る。反応温度は、通常50〜250℃であり、好ましく
は70〜160℃である。また、反応圧力に関しては特
に制限はなく、シクロヘキセンと水はともに気相として
存在してもよいが、液相として存在する方が望ましい。
反応系内での水に対するシクロヘキセンのモル比は、通
常0.01〜100、好ましくは0.03〜10であ
る。また、反応系中でのシクロヘキセンに対する触媒の
重量比は、通常0.005〜100、好ましくは0.0
5〜10である。反応系中におけるシクロヘキセンの滞
留時間は、通常3〜300分、好ましくは10〜180
分である。
【0018】さらに、反応系内は、窒素、水素、ヘリウ
ム、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで置換してお
くことが好ましい。この場合、不活性ガス中の酸素の含
有量は少ない方が望ましく、通常100ppm以下、好
ましくは20ppm以下である。更に、反応原料である
シクロヘキセンと水の他に、脂肪族炭化水素、芳香族炭
化水素、含酸素有機化合物、含イオウ有機化合物、含ハ
ロゲン有機化合物等を反応系に共存させてもよい。
【0019】反応液を油相と水相に分離する方法として
は、反応器内に油水分離堰を設けて油相のみを取り出す
方法が例示される。また、反応液の一部を液循環ポンプ
などで取り出し、反応器外に設けた油水分離槽に供給し
て分離する方法も考えられ、分離された触媒を含む水相
は反応器に循環して再使用することができる。分離した
油相よりシクロヘキサノールは蒸留などの公知の方法に
より容易に精製回収することができる。また、蒸留など
してシクロヘキサノールを分離した後のシクロヘキセン
を含む残液は水和反応の原料として再使用することがで
きる。
【0020】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具
体的に述べる。 実施例1 シクロヘキセン(試薬、アルドリッチ社製)10kgを
精密分留装置(段数20段、還流比2.0)で十分に酸
素を除去しながら常圧蒸留を行い沸点82〜83℃の留
分(留出率85%)を得た。試薬シクロヘキセンと蒸留
留分をそれぞれ分析し、これらに含有される1,2−エ
ポキシシクロヘキサンをガスクロマトフィーにより定量
した。結果を表−1に示す。
【0021】
【表1】表−1
【0022】次に、図1に示すような連続流通反応装置
を用いて、シクロヘキセンの水和反応を行った。即ち、
内容積2000mlの攪拌装置付きステンレス製オ−ト
クレ−ブ反応器3に、H型結晶性ガロシリケ−ト(MF
I型、NEケムキャット製、シリカ/Ga2 3 比=5
0)を100gと水250gを仕込み、系内を窒素ガ置
換した。回転数500rpmで攪拌しつつ反応器3内の
温度を昇温し、反応温度120℃とした後、供給管1よ
りシクロヘキセン(留分)を120g/hrの速度で供
給した。反応液は反応器内部に設置した内容積30ml
の油水分離堰4内で油相と触媒スラリ−水相に分離され
た後、オ−バ−フロ−管5より油相のみが流出される。
また、供給管2からは水和反応で消費される水とオ−バ
−フロ−管5から油相への溶解度分として流出する水の
合計量の水を供給することにより反応器3内の水量を一
定に保った。反応250時間経過に至るまで、オ−バ−
フロ−管5からの触媒の流出は全く認められなかった。
【0023】比較例1 原料として前記の試薬シクロヘキセンを使用したほかは
実施例1と同一の反応条件で水和反応を行った。反応開
始10時間後からオ−バ−フロ−管5より少量の触媒の
流出が認められ、30時間後にはオ−バ−フロ−管5の
閉塞により反応が継続できなくなった。
【0024】実施例2 触媒としてH型結晶性アルミノシリケ−トZSM−5
(NEケムキャット製、シリカ/アルミナ比=50)を
用いたほかは実施例1と同一の反応条件で水和反応を行
った。反応250時間経過に至るまで、オ−バ−フロ−
管5よりの触媒の流出は全く認められなかった。
【0025】比較例2 原料として前記の試薬シクロヘキセンを使用したほかは
実施例2と同一の反応条件で水和反応を行った。反応開
始7時間後からオ−バ−フロ−管5より少量の触媒の流
出が認められ、22時間後にはオ−バ−フロ−管5の閉
塞により反応が継続できなくなった。
【0026】実施例3〜6、比較例3 実施例1で使用したシクロヘキセンに1、2−エポキシ
シクロヘキサン(試薬、和光純薬製)を加え表−2に示
す含有量のシクロヘキセンを作り、原料として用いたほ
かは実施例1と同一の反応条件で250時間の水和反応
を行った。原料シクロヘキセン供給開始250時間経過
に至るまでの流出油相中のシクロヘキサノ−ル濃度及び
オ−バ−フロ−管5からの触媒の流出状況を表−2に示
す。
【0027】
【表2】表−2
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、シクロヘキセンの水和
反応において、従来の方法と比較して長時間安定した触
媒の分離性を維持することができるので、シクロヘキサ
ノールを、長期間、安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例で用いた連続流通反応装置
を示す概念図である。
【符号の説明】 1,シクロヘキセン供給管、2,水供給管、3,オ−ト
クレ−ブ反応器、4,油水分離堰、5,オ−バ−フロ−

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 触媒としてゼオライトを用いて、シクロ
    ヘキセンの水和反応によりシクロヘキサノールを連続的
    に製造する方法において、反応系内で、原料シクロヘキ
    センに対する1,2−エポキシシクロヘキサンの含有量
    を300ppm以下として水和反応を行うことを特徴と
    するシクロヘキサノールの製造方法。
  2. 【請求項2】 反応系内で、原料シクロヘキセンに対す
    る1,2−エポキシシクロヘキサンの含有量を150p
    pm以下として水和反応を行うことを特徴とする請求項
    1に記載のシクロヘキサノールの製造方法。
  3. 【請求項3】 反応系内で、原料シクロヘキセンに対す
    る1,2−エポキシシクロヘキサンの含有量を50pp
    m以下として水和反応を行うことを特徴とする請求項1
    又は2に記載のシクロヘキサノールの製造方法。
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