JP2709406B2 - 電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法 - Google Patents

電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法

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JP2709406B2 JP1268723A JP26872389A JP2709406B2 JP 2709406 B2 JP2709406 B2 JP 2709406B2 JP 1268723 A JP1268723 A JP 1268723A JP 26872389 A JP26872389 A JP 26872389A JP 2709406 B2 JP2709406 B2 JP 2709406B2
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【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
本発明は、高い静電容量を示し且つ比較的箔厚の厚い
電解コンデンサ陰極箔を得るのに好適な、エッチング特
性に優れたアルミニウム合金箔及びその製造方法に関す
るものである。
【従来の技術】
電解コンデンサ陰極用箔としては、99.85%Al純度程
度のアルミニウム合金箔と、Cu又はCu及びFe等を添加し
た99.50%Al純度程度のアルミニウム合金箔が、従来か
ら主に使用されている。前者は後者に比較して、耐久性
に優れているが、エッチング特性に劣り静電容量の高い
ものが得られにくいという欠点があった。 エッチングは、アルミニウム合金箔の表面に微細な凹
凸部を形成させ、箔の表面積を増大させて、静電容量を
高めるために行われるものである。エッチング処理は、
塩化物イオンを含有した水溶液中で行われる。一般的に
塩化物イオンの濃度が濃いほど、アルミニウム合金箔の
表面積拡大率が大きく、静電容量が高くなる。しかし、
塩化物イオンの濃度がある一定の限界量を超えると、ア
ルミニウム合金箔表面の溶解が過度になり、結果的にエ
ッチング初期にできた微細な凹凸部が破壊され、表面積
が減少し、静電容量も低くなってしまうということがあ
る。この過度の溶解を抑制するために、エッチング液中
に硫酸,蓚酸等の酸を添加する等して、エッチング技術
の改良が試みられている。 しかし、現在使用されている99.85%Al純度のアルミ
ニウム合金箔においては、上記のような改良されたエッ
チング処理を施しても過度の溶解が起こりやすく、静電
容量の高いものが得られにくいという欠点があった。
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、アルミニウム合金箔の酸性溶液(エッチン
グ液)中における電気化学的溶解の機構は、Alの電極電
位よりも高い電極電位を有する合金元素又は不純物元素
が析出物として存在していると、Alがアノード、析出物
がカソードとして働く局部電池を形成する。従って、カ
ソードからアノードへ電流が流れ、アノードであるAlが
陽イオンとなって酸性溶液中に溶解する。そして、これ
はカソード即ち電極電位がAlよりも高い析出物の数が多
いほど顕著となる。 本発明者等は、この溶解機構が99.85%Al純度のアル
ミニウム合金箔のエッチング処理中に生じており、この
ために過度の溶解が起こると考え、アルミニウム合金に
ある特定の元素を添加して、過度の溶解がなるべく生じ
ないようにし、エッチング特性に優れた99.85%Al純度
程度の電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔を得る
ことに成功したのである。
【課題を解決するための手段及び作用】
即ち、本発明は、Si 0.010〜0.050%、Fe 0.010%
以上で0.020%未満、Mg 0.002〜0.010%、Zn 0.005〜
0.012%、Cu 0.001%以下、Ti 0.001%以下、Ni 0.0
02%以下、残部Alよりなり、MgとFe又はSiとで金属間化
合物が形成されていることを特徴とする電解コンデンサ
陰極用アルミニウム合金箔及びその製造方法に関するも
のである。 本発明に係る電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金
箔の構成成分の組成範囲は、下記のとおりである。な
お、本発明において%はすべて重量%を表している。 Siは、0.010〜0.050%である。Siはアルミニウムの原
料であるボーキサイトに含まれているものである。三層
電解法や偏析法の精製工程を経ない高純度一次アルミニ
ウム地金には、この程度の量のSiが含まれている。Siを
0.010%未満とするには、特別なアルミニウムの精製工
程を経なければならず、アルミニウムが高価になるため
好ましくない。Siが0.050%を超えると、Al純度が低下
し、電解コンデンサ用として用いるのに好ましくない。 Feは0.010%以上で、0.020%未満である。Feを0.010
%未満とするには、アルミニウムを極端に精製しなけれ
ばならず、得られたアルミニウムが高価になるため好ま
しくない。 Mgは、0.002〜0.010%である。Mgは、一般的にはボー
キサイト中に含まれていないものであり、本発明におい
て特徴的な成分である。Mgは、上記FeやSiと金属間化合
物を形成し、Fe−Al間における局部電池の形成を防止す
るものである。Mgは、Alよりも標準電極電位が低く、標
準電極電位がAlよりも高いFeと金属間化合物を作ると、
この金属間化合物はAlと近似の標準電極電位を持つこと
になる。従って、AlやFeやSi等との標準電極電位の差が
顕著にならず、エッチング液中でAlの過溶解を防止する
ことができるのである。Mgが0.002%未満であると、Fe
やSiと金属間化合物を作るのに量が不足し、好ましくな
い。Mgが0.010%を超えると、Al純度が低下し、電解コ
ンデンサ用として用いるのに好ましくない。 Znは、0.005〜0.012%である。Znも、一般的にはボー
キサイト中に含まれていないものであり、本発明におい
て特徴的な成分である。Znは、Alへよく固溶して、得ら
れるアルミニウム合金箔の強度を向上させるものであ
る。Znが0.005%未満であると、アルミニウム合金箔の
強度が十分に向上せず、好ましくない。Znが0.012%を
超えると、Znが固溶したAlの標準電極電位の低下が起こ
り、AlとFe等との標準電極電位の差が大きくなり、エッ
チング液中におけるAlの過溶解が生じやすくなり、電解
コンデンサ用として用いるのに好ましくない。 本発明においては、上記の成分以外に不可避的不純物
が混入することがある。不可避的不純物としては、Cu、
Ti及びNiが挙げられる。 Cuの許容限界は0.001%である。Cuはボーキサイト中
に含まれていることがあり、三層電解法等の精製工程を
経ないアルミニウムには、0.001%程度以下のCuが含ま
れていることがある。Cuが0.001%を超えて含有されて
いると、陰極用コンデンサとして使用した場合、陽極に
Cuが析出して短絡する危険が生じるので好ましくない。 また、Tiの許容限界も0.001%である。Tiもボーキサ
イト中に含まれている場合があり、精製の程度により0.
001%程度以下のTiが含まれていることがある。TiはAl
に対する固溶限が小さいので、0.001%を超えて含有さ
れていると、析出物となりやすく、Alの過溶解を生じさ
せるため好ましくない。 Niの許容限界は0.002%である。Niもボーキサイト中
に含まれている場合があり、精製の程度により0.002%
程度以下のNiが含まれていることがある。NiはAlに対す
る固溶限が小さく且つ標準電極電位がAlより高いので、
0.002%を超えて含有されていると、Alの過溶解を生じ
させるため好ましくない。 本発明においては、MgとFe又はSiとの間で金属間化合
物が形成されている。Mgは、Alよりも標準電極電位が低
く、標準電極電位がAlよりも高いFe等と金属間化合物を
作ると、この金属間化合物はAlと近似の標準電極電位を
持つことになる。従って、AlとFeやSi等との標準電極電
位の差が顕著にならず、エッチング液中でAlの過溶解を
防止することができるのである。 次に、本発明に係る電解コンデンサ陰極用アルミニウ
ム合金箔の製造方法について説明する。 本発明に係る製造方法は、Si 0.010〜0.050%、Fe
0.010%以上で0.020%未満、Mg 0.002〜0.010%、Zn
0.005〜0.012%、Cu 0.001%以下、Ti 0.001%以下、
Ni 0.002%以下、残部Alよりなる鋳塊を、温度500℃〜
550℃、時間20時間以上の条件で均質化処理し、次いで
温度450℃以上の条件で熱間粗圧延し、更に入側の温度4
00℃以上、出側の温度250℃以下、時間2分以下の条件
で熱間仕上げ圧延し、その後中間焼鈍を行うことなく冷
間圧延することを特徴とするものである。 本発明においては、まずアルミニウム地金を溶かして
鋳型に流す前に、MgやZn等を添加して、ある特定の成分
組成を持つ鋳塊を作る。特定の成分組成にする理由等
は、前述したとおりである。 この鋳塊を、温度500〜550℃、時間20時間以上の条件
で均質化処理する。均質化処理は、鋳塊中の各成分を均
一に分散させるために行われるものである。温度が500
℃未満であると、MgとFeやSiとの金属間化合物が形成さ
れにくくなるため、好ましくない。端的に言えば、各成
分元素が均一に分布しない恐れがあるため、好ましくな
い。温度が550℃を超えた場合も、MgとFeやSiとの金属
間化合物が形成されにくくなるため、好ましくない。時
間が20時間未満の場合も同様に、MgとFeやSiとの金属間
化合物が形成されにくくなるため、好ましくない。工業
的には、20〜25時間程度が好ましい。 均質化処理の後、鋳塊に熱間粗圧延が施される。熱間
粗圧延は温度450℃以上という条件で施される。温度が4
50℃未満であると、FeやSi等が析出する恐れがあるた
め、好ましくない。工業的には、450〜500℃が好まし
い。 熱間粗圧延の後、熱間仕上げ圧延が施される。熱間仕
上げ圧延は、入側の温度400℃以上、出側の温度250℃以
下、時間2分以下の条件で施される。入側の温度を400
℃未満にしたり、出側の温度が250℃を超えたり、時間
が2分を超えて熱間仕上げ圧延が施されると、FeやSi等
が析出する恐れがあるため、好ましくない。 熱間仕上げ圧延の後、直ちに即ち中間焼鈍を行うこと
なく冷間圧延を施す。一般に行われている300〜400℃の
条件下における中間焼鈍を行うと、FeやSi等が析出する
恐れがあるため、好ましくない。 冷間圧延により所望の厚さの電解コンデンサ陰極用ア
ルミニウム合金箔が得られる。また、冷間圧延後に最後
焼鈍を施して、電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金
箔を得ることもできる。そして、これらにエッチング処
理を施すことにより電解コンデンサ陰極箔を得ることが
できる。
【実施例】
実施例A 第1表に示す組成の鋳塊(厚さ400mm)を準備した。 この鋳塊を、第2表に示す条件で、均質化処理、熱間
粗圧延、熱間仕上げ圧延を行った。なお、鋳塊の厚さは
400mmとし、熱間粗圧延後の厚さは約23mmとし、熱間仕
上げ圧延後の厚さは3mmとなるようにした。その後、冷
間圧延を行って、第2表に示す厚さとした。 得られたアルミニウム箔の性能を評価するために、溶
解減量(mg/cm2)と静電容量(μF/cm2)を測定した。
これらは、塩酸4.5重量%及び蓚酸0.5重量%が溶解され
ている水溶液中にアルミニウム箔を浸漬し、AC0.3A/cm2
の電流を2分間流して、電解エッチングをした後に測定
したものである。なお、静電容量は硝酸8.3重量%の水
溶液中においてキャパシタンスメーターを用いて0vf.で
測定した。 溶解減量と静電容量の性能結果は第3表に示したとお
りである。この結果より明らかなように、実施例1で得
られたアルミニウム合金箔は、溶解減量に対して静電容
量が高く、表面に微細な 凹部が多数且つ奥深く形成されていることがわかる。こ
れに対し、比較例1〜8は溶解減量に対して静電容量が
小さく、表面に凹凸部は形成されているものの、実施例
に比較して微細なものではないことがわかる。なお、参
考例1〜4で得られたアルミニウム合金も、実施例1と
ほぼ同様の性能を持つものであった。また、比較例9〜
14は含有成分元素が参考例1と同じであるが均質化条
件、熱間粗圧延の温度或いは熱間仕上げ圧延の入側温度
や出側温度が異なるためMgとFe又はSiとで金属間化合物
が十分に形成されておらず、その結果静電容量が小さい
と考えられる。 実施例B 実施例Aにおける実施例1、参考例1〜4及び比較例
9〜14で得られたアルミニウム箔に350℃で20時間の最
終焼鈍を施して、電解コンデンサ陰極用アルミニウム箔
を得た。この溶解減量と静電容量を実施例1と同様の方
法で測定したところ、第4表に示すとおりであった。な
お、第4表において、実施例Aの実施例1に対応するも
のは実施例B−1とし、参考例1に対応するものは参考
例B−1とし、以下各々B−2,B−3,B−4とし、更に比
較例9に対応するものは比較例B−9とし、以下各々B
−10, B−11,B−12,B−13,B−14とした。 この結果より明らかなとおり、比較例に係るものは実
施例に係るものに比べて、静電容量が小さくなってい
る。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る電解コンデンサ陰
極用アルミニウム合金箔はエッチング特性、特に箔の厚
み方向に亙って奥深くエッチングすることができるとい
う特性に優れており、これをエッチング処理して得られ
た電解コンデンサ陰極箔は静電容量が大きく、単位面積
当たり大容量のコンデンサを得ることができるという効
果を奏する。更に、本発明に係る電解コンデンサ陰極用
アルミニウム合金箔はAl純度が低くてもよい(例えばAl
純度99.85%程度)ので、厳しい精製工程を経ていない
アルミニウムを用いることができ、安価な電解コンデン
サ陰極箔を得ることができるという効果を奏する。 また、本発明の製造方法によれば、上記の如き特性に
優れた電解コンデンサ陰極用アルミニウム合金箔を確実
に得ることができるという効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22F 1/00 661 8719−4K C22F 1/00 682 682 8719−4K 683 683 8719−4K 691B 691 8719−4K 691C 8719−4K 694B 694 H01G 9/04 331

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Si 0.010〜0.050%、Fe 0.010%以上で
    0.020%未満、Mg 0.002〜0.010%、Zn 0.005〜0.012
    %、Cu 0.001%以下、Ti 0.001%以下、Ni 0.002%
    以下、残部Alよりなり、MgとFe又はSiとで金属間化合物
    が形成されていることを特徴とする電解コンデンサ陰極
    用アルミニウム合金箔。
  2. 【請求項2】Si 0.010〜0.050%、Fe 0.010%以上で
    0.020%未満、Mg 0.002〜0.010%、Zn 0.005〜0.012
    %、Cu 0.001%以下、Ti 0.001%以下、Ni 0.002%
    以下、残部Alよりなる鋳塊を、温度500℃〜550℃、時間
    20時間以上の条件で均質化処理し、次いで温度450℃以
    上の条件で熱間粗圧延し、更に入側の温度400℃以上、
    出側の温度250℃以下、時間2分以下の条件で熱間仕上
    げ圧延し、その後中間焼鈍を行なうことなく冷間圧延す
    ることを特徴とする電解コンデンサ陰極用アルミニウム
    合金箔及びその製造方法。
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