JP2705183B2 - イットリウム・アルミニウム・ガーネット微粒子およびイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体微粒子の製造方法 - Google Patents

イットリウム・アルミニウム・ガーネット微粒子およびイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体微粒子の製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット
(以下、YAGと称する。)、およびこれをテルビウムで
賦活したYAG系蛍光体微粒子の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
YAGは組成式Y3Al5O12で表される酸化物であり、レー
ザー発振素子の原料や人造宝石等としての用途がある。
このYAGの固溶系においてYの一部をテルビウムで置換
したものは組成式TbxY3-xAl5O12(ただし、xは置換量
を表す3未満の数である。)で表される蛍光体材料とな
り、特にx=0.15付近において効率良く蛍光を発するこ
とが知られている。この材料は発光飽和レベルが高く、
投影型テレビジョン、ビームインデック管、航空機の計
器表示等の高輝度蛍光面に適している。
YAG系蛍光体の特性を左右する要因としては、粒度,
均一性,分散性,純度等がある。これらを最適化するこ
とにより近年の高精細度ビジョン等のように微細化され
た蛍光体パターンを有する陰極線管の高解像度化,高画
質化等も可能となるため、有望な材料として研究が進め
られている。
YAGおよびYAG系蛍光体は同様の手順により合成するこ
とができる。
まずYAGの代表的な合成方法としては、酸化イットリ
ウムと酸化アルミニウムとを焼結助剤等と共にボールミ
ル等で粉砕混合し、1500℃の高温にて一定時間固相反応
させた後、再びボールミル等で微粒子化して篩で分級す
る方法、あるいは上述の固相反応時にフラックスを添加
し、YAG微粒子に加わる物理的な歪みを低減させる改良
法等がある。
YAG系蛍光体を合成する際には、上述の酸化イットリ
ウムと酸化アルミニウムに加えて酸化テルビウムを使用
し、同様の操作を行っている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、これらの従来の方法では固相反応によ
り得られた生成物をボールミルで粉砕することにより微
粒子化を行っているので、得られるYAG微粒子もしくはY
AG系蛍光体微粒子の粒度分布が2〜30μmと広く、粗大
粒子の混入は避けられない。また、粉砕作業に長時間を
要するため金属酸化物等の不純物が混入しやすい。フラ
ックスを使用した場合にも微粒子化に限度があり、通常
粒径10μm以下の粒子を得ることは困難である。
このような問題点は、特にYAG系蛍光体微粒子を高精
細度ビジョン等に適用する場合にエネルギー変換効率の
劣化、不要な着色、解像度の低下等の不都合を招く。
そこで本発明は、上述の課題を解決し、微細で粒径分
布が狭く、かつ高純度のYAG微粒子およびYAG系蛍光体微
粒子の製造を可能とする方法を提供することを目的とす
る。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは上述の目的を達成するために鋭意検討を
行った結果、アルカリ水溶液に可溶となされたイットリ
ウムとアルミニウムとを所定の温度以上に加熱反応させ
ることにより、微細で粒径分布の均一なYAG微粒子が単
相で得られることを見出した。
さらに本発明者らは、上記イットリウムとアルミニウ
ムに加えてアルカリ水溶液に可溶となされたテルビウム
を賦活元素として添加することにより、同様の操作によ
り微細で粒径分布の均一なYAG系蛍光体微粒子が単相で
得られることを見出した。
本発明はかかる知見にもとづいて完成されたものであ
る。すなわち、本発明の第1の発明にかかるYAG微粒子
の製造方法は、イットリウム化合物の加水分解生成物ま
たはイットリウム塩と、アルミニウム化合物の加水分解
生成物またはアルミニウム塩とをpH10.0以上のアルカリ
水溶液中、反応温度270℃以上にて反応させることを特
徴とするものである。
本発明の第2の発明にかかるYAG系蛍光体微粒子の製
造方法は、イットリウム化合物の加水分解生成物または
イットリウム塩と、アルミニウム化合物の加水分解生成
物またはアルミニウム塩と、テルビウム化合物の加水分
解生成物またはテルビウム塩とをpH10.0以上のアルカリ
水溶液中、反応温度270℃以上にて反応させることを特
徴とするものである。
本発明によれば、YAG微粒子およびYAG系蛍光体微粒子
は水溶液系における液相反応により製造されるので、原
料となるイットリウム,アルミニウム,およびテルビウ
ムも可溶化されていることが必要である。そのために
は、これらの元素を含む化合物の加水分解生成物、ある
いはこれらの元素の塩が使用される。
まず上述の加水分解生成物を得るためには、イットリ
ウム,アルミニウム,テルビウムのハロゲン化物や後述
の各種の塩を水に溶解させるか、もしくはその水溶液を
LiOH,NaOH,KOH,NH4OH等のアルカリ水溶液で加水分解さ
せれば良い。
また上記塩としては、硝酸塩,硫酸塩等の酸素酸塩、
酢酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
上述の原料を溶解させるアルカリ溶液としては、Li,N
a,K等のアルカリ金属の水酸化物を水溶液としたものを
使用する。
本発明の反応においては、pHと反応温度を適切に選ぶ
必要がある。
まずpHは、10.0以上に選ばれる。pH10.0未満では十分
に単相が達成されず、純度が不十分となる。この純度
は、X線回折により確認することができる。YAG微粒子
の場合、好ましいpHの範囲は10.0〜13.3であり、さらに
pH11.0〜12.6において単相の生成物が高収率で得られ
る。またYAG系蛍光体微粒子の場合は、好ましいpHの範
囲は10.2〜14.1であり、さらにpH11.0〜13.5において単
相の生成物が高収率で得られる。pHは得られるYAG微粒
子およびYAG系蛍光体微粒子の粒径に影響するので、所
望の特性に応じて適宜設定する必要がある。
また、温度は270℃以上とする。270℃未満では目的の
生成物以外の生成物に由来するX線回折強度が強くな
り、純度が劣化する。反応時間を短縮して効率良い合成
を行う観点からは、300℃以上とすることが一層望まし
い。反応温度の上限は特に限定されるものではないが、
反応系の臨界蒸気圧を考慮しておおよそ390℃とされ
る。
なお、反応時間は5分以上、より好ましくは10分以上
とする。
反応終了後は、YAG微粒子あるいはYAG系蛍光体微粒子
が沈澱として得られるので、冷水または温水を用いてデ
カンテーション、遠心分離,あるいは濾過を行うことに
より洗浄する。このようにして沈澱に吸着されているア
ルカリ溶液中のLi,Na,K等の金属イオンを除去した後、
乾燥させる。
なお、本発明のYAG系蛍光体微粒子には、輝度の向上
を目的としてさらにGaが添加されていても良い。
〔作用〕
本発明においては、従来のような固相合成と物理的粉
砕の組合せとは異なり、液相合成により微細で粒径分布
の狭いYAG粒子あるいはYAG系蛍光体微粒子を高収率に得
ることができる。また、固相合成よりは遥かに低い温度
にて迅速な反応が可能である。また、ボールミル等によ
る長時間の物理的粉砕を行う必要がないので、金属酸化
物の混入等も防止することができ、純度の高いYAG微粒
子およびYAG系蛍光体微粒子が得られる。
〔実施例〕
以下、本発明の好適な実施例について図面を参照しな
がら説明する。
第1の実施例 本実施例は、硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2Oと、
塩化アルミニウムAlCl3・6H2OとからYAG微粒子を製造し
た例である。
まず、硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2O6.34gと塩
化アルミニウムAlCl3・6H2O11.3gを純水40mlに溶解し、
溶液Aを調製した。次に、所定量の水酸化ナトリウムを
純水40mlに溶解して調製した溶液Bの中に、上記溶液A
をゲル化が生じないように攪拌しながらゆっくりと滴下
し、さらに純水を加えて100mlの反応溶液Cとした。こ
こで、上記反応溶液CのpH値は水酸化ナトリウムの添加
量を調節することにより変化させた。
上記反応溶液Cを白金からなる内容器を備えたオート
クレーブに入れ、攪拌しながら360℃にて1時間反応さ
せた。反応終了後、純水を使用してデカンテーションを
繰り返すことにより、上記反応で生成した白色沈澱物か
らアルカリ金属イオン等を除去し、さらに濾過水洗を行
い、乾燥器中で100℃にて一晩乾燥させて、白色固体を
得た。
ここで、反応溶液CのpH値を12.3とした場合に得られ
た白色固体について、CuKα線によるX線回折を行っ
た。この結果を第1図に示す。図中、縦軸は回折強度
(任意単位)を表し、横軸は回折2θ(°)を表す。こ
のX線回折パターンはJCPDS(ジョイント・コミッティ
ー・オン・パウダー・ディフラクション・スタンダー
ズ:Joint Committee on Powder Diffraction Standard
s)カード 33-40と一致することから、立方晶のYAG(Y
3Al5O12)であることが確認された。
さらに、この白色固体を走査電子顕微鏡により観察し
た際の写真を第2図に示す。この図によれば、粒径2〜
3μmでしかも粒度が極めて良く揃ったYAG微粒子が得
られていることがわかる。
次に、YAG微粒子の製造条件を最適化するため、反応
溶液CのpH値,反応温度および反応時間について検討し
た。
まずpH依存性は以下のようにして検討した。すなわ
ち、使用する水酸化ナトリウムの量を変えることにより
反応溶液CのpH値を種々に変化させ、それぞれの場合に
ついて同様に反応を行った。続いて得られた各白色固体
のX線回折を行ってYAGの相対生成量を(420)面からの
回折に対応するピークの面積として求め、pHに対してプ
ロットした。この結果を第3図に示す。図中、縦軸はYA
Gの相対生成量(%)を表し、横軸は反応溶液CのpH値
を表す。この図より、pH10.0〜13.3の範囲でYAGが生成
しており、特にpH11.0〜12.6の範囲において高収率で生
成していることが明らかとなった。
また温度依存性は以下のようにして検討した。すなわ
ち、反応溶液CのpH値を12.3とし、反応温度を種々に変
化させて1時間反応を行った。続いて得られた各白色固
体のX線回折を行って同様にYAGの相対生成量を求め、
反応温度に対してプロットした。この結果を第4図に示
す。図中、縦軸はYAGの相対生成量(%)を表し、横軸
は反応温度(℃)を示す。この図より、270℃以上の温
度でYAGが生成し、約360℃で最も効率良く反応が進行す
ることがわかった。
最後に反応時間は以下のようにして検討した。すなわ
ち、反応溶液CのpH値を12.3、反応温度を360℃とし
て、反応時間を種々に変化させて反応を行った。続いて
得られた各白色固体のX線回折を行って同様にYAGの相
対生成量を求め、反応時間に対してプロットした。この
結果を第5図に示す。図中、縦軸はYAGの相対生成量
(%)を表し、横軸は反応時間(分)を示す。この図よ
り、YAGの生成は反応開始後数分で始まり、約10分後に
生成量が飽和に達することが明らかとなった。
第2の実施例 本実施例は、塩化イットリウムYCl3と塩化アルミニウ
ムAlCl3とからYAG微粒子を製造した例である。
まず、塩化イットリウムYCl336.6gと塩化アルミニウ
ムAlCl362.5gとを純水400mlに溶解し、溶液Aを調製し
た。次に、水酸化ナトリウム水溶液400mlの中に、上記
溶液Aをゲル化が生じないように攪拌しながらゆっくり
と滴下し、さらに純水を加えて1000mlの反応溶液Cとし
た。この反応溶液CはpH12.6であった。
上記反応溶液Cを白金からなる内容器を備えたオート
クレーブに入れ、攪拌しながら360℃にて6時間反応さ
せた。反応終了後、デカンテーションおよび濾過水洗に
より、上記反応で生成した白色沈澱物を洗浄し、乾燥器
中で100℃にて12時間乾燥させて、白色固体を得た。
この白色固体は、X線回折および電子顕微鏡観察の結
果、高純度,微細かつ粒径の均一のYAG微粒子であるこ
とが確認された。
第3の実施例 本実施例は、硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2Oと塩
化アルミニウムAlCl3・6H2OとからYAG微粒子を製造する
にあたり、反応溶液中のアルミニウムの添加量について
検討した例である。
まず、硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2O63.4gと塩化
アルミニウムAlCl3・6H2O75.4gとを純水400mlに溶解
し、溶液Aを調製した。次に、水酸化ナトリウム水溶液
400mlの中に上記溶液Aをゲル化が生じないように攪拌
しながらゆっくりと滴下した。この溶液を10等分し、各
溶液に対して塩化アルミニウムAlCl3を0g,7.54g,15.1g,
…,67.9gのように段階的に最初の量の10%ずつを順次追
加する形で添加し、さらに純水を加えて各々100mlの反
応溶液C0〜C9とした。つまり、反応溶液C0はYAGを合成
するために化学量論的に必要な量のアルミニウムを含
み、C1〜C9はその量の10%増しないし90%増しとなって
いるわけである。これらの各溶液のpH値は水酸化ナトリ
ウム水溶液を用いて12.6に調製した。
上記反応溶液C0〜C9を白金からなる内容器を備えたオ
ートクレーブにそれぞれ入れ、攪拌しながら360℃にて
1時間反応させた。反応終了後、デカンテーションおよ
び濾過水洗により、上記反応で生成した白色沈澱物を洗
浄し、乾燥器中で100℃にて一晩乾燥させ白色固体を得
た。
この白色固体をX線回折により分析したところ、反応
溶液C3〜C9から得られた白色固体は第1図のX線回折パ
ターンとほぼ同じパターンを示し、高純度のYAGである
ことが確認された。しかし、C0〜C2から合成された白色
固体のX線回折パターンには、水酸化イットリウムY(O
H)3の混在を示すピークがみられた。これより、反応に
際してはイットリウムに対してアルミニウムが化学量論
的に必要とされる量よりおよそ30%は過剰に必要である
ことがわかる。
第4の実施例 本実施例は、硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2Oと塩
化アルミニウムAlCl3・6H2OとからYAG微粒子を製造する
にあたり、反応溶液CのpHによるYAG微粒子の粒径の変
化について検討した例である。
まず、硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2O25.3gと塩化
アルミニウムAlCl3・6H2O45.2gを純水160mlに溶解し、
溶液Aを調製した。次に、水酸化ナトリウム水溶液100m
l中に上記溶液Aをゲル化が生じないように攪拌しなが
らゆっくりと滴下し、純水を加えて320mlの溶液を調製
した。この溶液を4等分し、各溶液に水酸化ナトリウム
溶液と純水を加えて100mlとし、それぞれpH11.6,pH12.
3,pH12.6,pH13.0の溶液CI〜CIVを調製した。
上記反応溶液CI〜CIVを白金からなる内容器を備えた
オートクレーブにそれぞれ入れ、攪拌しながら360℃に
て1時間反応させた。反応終了後、デカンテーションお
よび濾過水洗により、上記反応で生成した白色沈澱物を
洗浄し、乾燥器中で100℃にて一晩乾燥させ白色固体を
得た。
この白色固体をX線回折により分析したところ、反応
溶液CI〜CIVから得られた各白色固体は回折強度がやや
異なるものの、高純度なYAGであることがわかった。
さらにこれらの白色固体の電子顕微鏡観察を行ったと
ころ、pH11.6の反応溶液CIから得られた白色固体の粒径
は約0.1μm,pH13.0の反応溶液CIVから得られた白色固体
の粒径は約10μmであり、pH値の調節により粒径の制御
がおおよそ0.1〜10μmの範囲で制御可能であることが
わかった。
第5の実施例 本実施例は、硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2Oと塩
化アルミニウムAlCl3・6H2Oと、塩化テルビウムTbCl3
からYAG系蛍光体微粒子を製造した例である。
まず、水酸化ナトリウム19.7gを純水に溶解して60ml
としたアルカリ水溶液中に、硝酸イットリウムY(NO3)3
・3.5H2O12.04g,塩化アルミニウムAlCl3・6H2O22.61g,
および塩化テルビウムTbCl30.497gを攪拌しながら徐々
に添加し、さらに純水を加えて100mlの反応溶液Dとし
た。
上記反応溶液Dを白金からなる内容器を備えたオート
クレーブに入れ、攪拌しながら370℃にて1時間反応さ
せた。反応終了後、純水を使用してデカンテーションを
繰り返すことにより、上記反応で生成した白色沈澱物か
らアルカリ金属イオン等を除去し、さらに濾過水洗を行
い、乾燥器中で100℃にて一晩乾燥させて、白色固体を
得た。
上記白色固体について、CuKα線によるX線回折を行
った。この結果を第6図に示す。図中、縦軸は回折強度
(任意単位)を表し、横軸は回折角2θ(°)を表す。
このX線回折パターンは、前述のJCPDSカード33-40に示
される立方晶YAG(Y3Al5O12)のパターンとほぼ一致し
ていた。
この白色固体は波長254〜366nmの紫外線を照射したと
ころ、緑色の蛍光を発した。また、既知の組成を有する
TbxY3-xAl5O12の標準試料を使用して蛍光X線分析を行
ったところ、x=0.15の標準試料が示すパターンと一致
し、上記白色固体の組成はTb0.15Y2.85Al5O12であるこ
とが確認された。このときのX線回折ピークにもとづい
て算出された格子定数は12.025Åであった。
さらに、この白色固体を走査電子顕微鏡により観察し
た際の写真を第7図に示す。粒度が極めて良く揃ったYA
G系蛍光体微粒子が得られていることがわかる。
次に、YAG系蛍光体微粒子の製造条件を最適化するた
め、反応溶液DのpH値,反応温度および反応時間につい
て第1の実施例の場合と同様に検討した。
まず、pH依存性について検討した結果を第8図に示
す。図中、縦軸はYAG系蛍光体の相対生成量(%)を表
し、横軸は反応溶液DのpH値を表す。反応条件は374℃,
1時間である。この図より、pH10.2〜14.1の範囲でYAG系
蛍光体が生成しており、特にpH11.0〜13.5の範囲におい
て高収率で生成していることが明らかとなった。
次に、温度依存性の検討結果を第9図に示す。図中
は、縦軸はYAG系蛍光体の相対生成量(%)を表し、横
軸は反応温度(℃)を示す。反応溶液DのpH値は12.5,
反応時間は1時間である。この図より、275℃以上の温
度でYAG系蛍光体が生成し、約360℃で最も効率良く反応
が進行することがわかった。また250℃以下の温度では
別の相に由来する回折ピークが大きくなり、合成には適
さないこともわかった。
最後に反応時間について検討した結果を第10図に示
す。図中、縦軸はYAG系蛍光体の相対生成量(%)を表
し、横軸は反応時間(時間)を示す。反応溶液DのpH値
は12.5,反応温度は374℃である。この図より、YAG系蛍
光体の生成は反応開始後数分で始まり、約10分後に生成
量が飽和に達することが明らかとなった。
第6の実施例 本実施例は、第5の実施例の反応溶液Dにおいて塩化
アルミニウムAlCl3・6H2Oと塩化テルビウムTbCl3の添加
量を変えた場合のYAG系蛍光体の組成および格子定数の
変化を検討した例である。
まず、適当量の水酸化ナトリウムを含有する純水中に
硝酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2O12.04g,および後述の
第1表に示す量の塩化アルミニウムAlCl3・6H2Oと塩化
テルビウムTbCl3を攪拌しながら徐々に添加し、純水を
加えて100mlとした反応溶液Dを7種類調製した。
これら各反応溶液Dを、オートクレーブ中で攪拌しな
がら374℃で2時間反応させた。生成した白色沈澱物か
ら、同様の操作により白色固体を得た。これらの白色固
体のX線蛍光分析を行い、各白色固体の組成を決定し
た。この結果を、第1表に示す。
これらのYAG系蛍光体微粒子(TbxY3-xAl5O12)につい
てそれぞれX線回折を行ったところ、各回折パターンは
第6図に示すものと同相を呈していたが、回折ピーク角
度がそれぞれ若干シフトしていた。これらの回折ピーク
角度にもとづいて格子定数を算出し、テルビウムの置換
量xに対してプロットした結果を第11図に示す。この図
より、テルビウムの置換量xと格子定数の間には直線関
係が成立していることがわかる。
第7の実施例 本実施例は、上記反応溶液Dにおけるアルミニウムの
添加量によるYAG系蛍光体微粒子の組成変化について調
べた例である。
まず、塩化テルビウムTbCl32.485g,硝酸イットリウム
Y(NO3)3・3.5H2O60.2g,塩化アルミニウムAlCl3・6H2O7
5.3gを200mlの純水中に溶解し、水酸化ナトリウムを加
えて中和した。
次にこの溶液を5等分し、塩化アルミニウムを7.53g,
15.1g,…,37.7gのように段階的に最初の量の10%ずつを
順次追加する形で添加し、さらに純水を加えて各々100m
lの反応溶液D1〜D5を調製した。これらの反応溶液D1〜D
5のpHは、水酸化ナトリウムを添加することにより13.3
に調整した。
上記各反応溶液D1〜D5を、オートクレーブ中で攪拌し
ながら360℃で1時間反応させた。生成した白色沈澱物
から、同様の操作により白色固体を得た。これらの白色
固体のX線回折を行ったところ、反応溶液D3〜D5から得
られた白色固体の回折パターンは第6図に示すものとほ
ぼ同様であったが、反応溶液D1および反応溶液D2から得
られた白色固体には若干の水酸化イットリウムY(OH)3
混在が認められた。この事実より、アルカリ水溶液中の
反応において水酸化イットリウムY(OH)3の生成を抑制す
るためには、少なくともイットリウムの2.3倍程度のモ
ル数のアルミニウムが必要であることがわかる。
第8の実施例 本実施例は、反応溶液DのpHによるYAG系蛍光体の粒
径の変化について検討した例である。
まず、350mlの純水中に塩化テルビウムTbCl33.48g,硝
酸イットリウムY(NO3)3・3.5H2O84.3g,塩化アルミニウ
ムAlCl3・6H2O158.3gを溶解し、水酸化ナトリウムを加
えて中和した。
次にこの溶液を7等分し、各溶液に所定量の水酸化ナ
トリウムと純水を加えて100mlとし、後述の第2表に示
すpH値の反応溶液D6〜D12を調整した。
上記各反応溶液D6〜D12を、オートクレーブ中で攪拌
しながら374℃で1時間反応させた。生成した白色沈澱
物から、同様の操作により白色固体を得た。これらの白
色固体のX線回折を行ったところ、各々ピーク強度は異
なったが同一の相のYAG系蛍光体であることが確認され
た。
さらにこれらの白色固体を走査電子顕微鏡により観察
したところ、pHの変化によって0.2〜5μmの粒径のYAG
系蛍光体が得られていることがわかった。この結果を第
2表に示す。
このように、反応溶液DのpHにより生成するYAG系蛍
光体微粒子の粒径を制御できることがわかった。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、本発明において得
られるYAG微粒子およびYAG系蛍光体微粒子は、粒径が極
めて小さい,粒度分布が均一である。粒径が反応溶液の
pHにいおって制御可能である。製造過程において金属酸
化物等の混入の虞れがないといった優れた特性を有す
る。特にこのような長所を有するYAG系蛍光体微粒子
は、高解像度の要求される極線管用の蛍光体として極め
て有効なものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明を適用して得られるYAG微粒子のX線回
折パターンを示す特性図である。第2図は本発明を適用
して得られるYAG微粒子の走査電子顕微鏡写真である。
第3図はYAG微粒子の相対生成量のpH依存性を示す特性
図、第4図はYAG微粒子の相対生成量の温度依存性を示
す特性図、第5図はYAG微粒子の相対生成量の反応時間
依存性を示す特性図である。第6図は本発明を適用して
得られるYAG系蛍光体微粒子のX線回折パターンを示す
特性図である。第7図は本発明を適用して得られるYAG
系蛍光体微粒子の走査電子顕微鏡写真である。第8図は
YAG系蛍光体微粒子の相対生成量のpH依存性を示す特性
図、第9図はYAG系蛍光体微粒子の相対生成量の温度依
存性を示す特性図、第10図はYAG系蛍光体微粒子の相対
生成量の反応時間依存性を示す特性図、第11図はYAG系
蛍光体微粒子の格子定数のテルビウム置換量依存性を示
す特性図である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イットリウム化合物の加水分解生成物また
    はイットリウム塩と、アルミニウム化合物の加水分解生
    成物またはアルミニウム塩とをpH10.0以上のアルカリ水
    溶液中、反応温度270℃以上にて反応させることを特徴
    とするイットリウム・アルミニウム・ガーネット微粒子
    の製造方法。
  2. 【請求項2】イットリウム化合物の加水分解生成物また
    はイットリウム塩と、アルミニウム化合物の加水分解生
    成物またはアルミニウム塩と、テルビウム化合物の加水
    分解生成物またはテルビウム塩とをpH10.0以上のアルカ
    リ水溶液中、反応温度270℃以上にて反応させることを
    特徴とするイットリウム・アルミニウム・ガーネット系
    蛍光体微粒子の製造方法。
JP2046289A 1988-07-30 1989-01-30 イットリウム・アルミニウム・ガーネット微粒子およびイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体微粒子の製造方法 Expired - Fee Related JP2705183B2 (ja)

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