JP2704474B2 - 加圧鋳造における加圧ストローク制御方法 - Google Patents

加圧鋳造における加圧ストローク制御方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,金型のキャビティ内に
溶湯を射出装置により射出し,加圧プランジャを有した
加圧装置により金型内の溶湯を加圧して鋳造加工品を得
る加圧鋳造における加圧ストローク制御方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】金型装置のキャビティ内に溶湯を射出装
置の射出プランジャにより射出し,他方,加圧プランジ
ャを有した加圧装置により金型内に射出された溶湯に加
圧による押湯効果を与えながら,加圧プランジャ内に冷
却水を流入,通過させて溶湯を中心部側から冷却効果を
与えて加工品内部に湯ひけによる巣の発生を防止した加
圧鋳造法を実現する加圧鋳造機は既に周知である。ま
た,金型内への溶湯射出用の射出装置と金型内に射出さ
れた溶湯の加圧用加圧装置を有した鋳造機においては,
加圧装置の加圧プランジャの移動ストロークを同プラン
ジャの作動開始時点からの時間を基準にして,経時的に
コンピュータを用いて,目標軌跡として設定し,その目
標軌跡に沿うようフィードバック制御を行っている。こ
のフィードバック制御の制御演算式としては,PID制
御演算式を使用し,加圧プランジャストローク制御は,
例えば図3において比例ゲインPを一定として示した
ように,1つのPID定数で行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし,上記従来の加
圧ストローク制御方法においては,フィードバック制御
に当たり,1つのPID定数を使用しているため,PI
D定数をプランジャが動いている状態の定常状態時に設
定すると,制御開始直後に例えば1秒程度の応答遅れが
発生する。制御開始直後は,プランジャストロークの目
標値と実際のストローク値との偏差が小さいため,油圧
圧力すなわち制御出力値が小さく,プランジャを動作さ
せることができない。本発明は上記従来の問題点に着目
したもので,加圧プランジャストロークのフィードバッ
ク制御における追従性の向上を目的としている。
【0004】
【問題を解決するための手段】加圧鋳造機による加圧鋳
造法において,加圧プランジャのストローク量を制御す
るに当たり,予め横軸を時間軸とし,ストローク量を縦
軸にとって,設定した目標軌跡通りのストローク量とな
るようフィードバック制御する際,予め設定された制御
開始時の比例ゲイン定数と予め設定された経過時間後の
比例ゲイン定数より時間ベースの2次曲線補間を行い,
予め設定された経過時間内の比例ゲイン定数を変えるこ
とができるようにした。
【0005】
【作用】上述のように本発明においては予め設定された
経過時間内の比例ゲイン定数を変えることができるた
め,制御開始時の比例ゲイン定数を経過時間後の比例ゲ
イン定数よりかなり大きくして,制御開始直後のプラン
ジャストロークの目標値と実際のストローク値との偏差
が小さくても,制御出力値を大きくでき,制御開始直後
の応答遅れが小さくなり,追従性が向上する。
【0006】
【実施例】以下,本発明の実施例を図面を参照しつつ説
明する。図1は本発明による加圧鋳造法の加圧ストロー
ク制御方法を実施する金型装置と加圧鋳造システムの機
構図である。金型10は上下に相対的に開閉可能な上型
12および下型14と,上記上型12,下型14の上下
方向の開閉軸線に対して側方から開閉動作する中子16
とを具備して構成されている。勿論,図1は図示されて
いない型締機構により金型装置10が型締されている状
態を示している。これらの上型12,下型14,中子1
6により,鋳造空間であるキャビティ18が形成され,
キャビティ18には,射出装置13の射出プランジャ1
1およびプランジャチップ11aの上昇により,射出ス
リーブ15内に予め供給されていた溶湯20が射出さ
れ,キャビティ18を充填する。射出装置13に対する
上記溶湯の供給には,射出装置13が下方に後退した位
置にあるとき,その後退位置でさらに側方に傾け,射出
スリーブ15内に溶湯供給機により供給する構成等が一
般に設けられている。
【0007】射出プランジャ11に対向して,上型12
の上方部には加圧装置の加圧プランジャ17が摺動自在
に,しかも,キャビティ18内に突出可能に配置されて
いる。加圧プランジャ17は,図示されていない可動盤
に取付けられている加圧シリンダ8のピストン8cに連
結されている。加圧プランジャ17の先端部は,金型キ
ャビティ18のゲートシール位置,つまり,下型14の
中央孔口18aに侵入開始する位置まで突出可能に設け
られている。加圧シリンダ8の作動は,油圧源6から供
給される圧力油を方向切換弁7を介してシリンダ室21
aまたは21bに供給することにより,起動される。こ
のとき,戻り油はタンク19内に戻る。すなわち,方向
切換弁7のソレノイドSOL−aを励磁して,油圧源6
の圧油を油路21aを経由して加圧シリンダ8の一方の
ヘッド室8aに導き,同時に,ロッド室8bの作動油を
油路21bを経てタンク19へ解放すれば,ピストン8
cは前進し,加圧プランジャ17の先端部は図示のごと
く,金型装置10のキャビティ18内に突出する。また
逆に,方向切換弁7のソレノイドSOL−bを励磁すれ
ば,上記と反対に加圧シリンダ8のピストン8cが上昇
し,加圧プランジャ17の先端部はキャビティ18内か
ら上型12に収納されるように戻り動作する。
【0008】油圧源6の圧力は,電磁比例自動圧力弁か
ら成る電磁リリーフ弁5により,制御し得るように構成
されている。つまり,電磁リリーフ弁5への入力電気信
号の大きさに応じて油圧源6からの圧力リリーフを制御
し,以て加圧プランジャ17の突出圧力を制御できるの
である。加圧シリンダ8のピストン8c,つまり,加圧
プランジャ17がキャビティ18に対して突出または後
退する際のストローク位置,またはストローク量は,例
えば,ポテンショメータから成る位置検出器9で検出可
能に構成され,その位置に応じて電気信号を出力し得る
ように成っている。
【0009】他方,マイクロコンピュータやパーソナル
コンピュータ等のコンピュータ手段から成る加圧プラン
ジャ制御手段22が設けられ,この加圧プランジャ制御
手段22は,時間に対する加圧プランジャ17の金型キ
ャビティ18内への突出によるストローク量の変化を経
時的に目標軌跡Tとして設定できる指令信号設定部
1,位置検出器9の検出信号である入力信号と指令信号
設定部1からの指令入力信号を比較,演算し,これらの
両方の入力信号の偏差値に対応した偏差出力信号を送出
する偏差演算部2,偏差演算部2の偏差出力信号を受け
て適宜の利得演算処理を行い,上記偏差出力信号に応じ
た所定の出力信号を出すPID制御演算設定部3とを具
備しており,加圧プランジャ制御手段22はコンピュー
タのキーボードやマウスから成る入力手段23,例えば
ROMおよびRAM等のメモリ,CRTから成るディス
プレイ手段24,マイクロプロセッサMPUやCPU等
の演算手段によって形成されている。そして上記指令信
号設定部1,偏差演算部2,PID制御演算設定部3は
加圧プランジャ17を起動する加圧シリンダ8に対する
フィードバック制御器を構成している。したがって,P
ID制御演算設定部3の出力は,ドライバ4と図示され
ていないI/O手段を経て圧力調整弁を成す電磁リリー
フ弁5へ送出する。故に,加圧シリンダ8はフィードバ
ック制御器と電磁リリーフ弁5,方向切換弁7によりフ
ィードバック制御されて,加圧プランジャ17のストロ
ーク量を,目標軌跡Tに追従するように制御する。
【0010】図2は本発明による時間t−比例ゲイン定
数P曲線である。図2において,制御開始時の比例ゲイ
ン定数PをP,経過時間t後の比例ゲイン定数をP
とする。なお,P,t,Pは予め設定されてい
るものとする。比例ゲイン定数は時間ベースで直線補間
すると以下のように表わされる。
【0011】
【式1】
【0012】
【式2】
【0013】よって,図1のPID制御演算設定部3に
おいて,制御関始から予め設定された経過時間の間,P
とP間を2次曲線補間して算出した比例ゲイン定数
Pを使用してPID演算処理を行う。
【0014】以上のように構成した金型装置と加圧鋳造
システムの動作を説明する。図1に示すように,射出プ
ランジャ11による溶湯の充填が完了すると,所定の時
間間隔をおいて図示しないホストコントローラが加圧プ
ランジャ17の作動指令を加圧プランジャ制御手段22
に与えるとともに方向切換弁7のソレノイドSOL−a
を励磁する。加圧プランジャ制御手段22の指令信号設
定部1には,予め,プランジャ作動開始時点からの時間
tに対する加圧プランジャ17のストローク量Stの所
望の軌跡が,上述の目標軌跡Tとしてプログラム設定
されており,上述した作動指令を受けると目標軌跡T
のストローク量Stを例えば数ミリ秒毎に時分割処理し
て,偏差演算部2に入力する。同偏差演算部2では,位
置検出器9で検出される加圧プランジャ17の実際のス
トローク位置St’との偏差e(=St−St’)を演
算し,これをPID制御演算設定部3に入力する。
【0015】PID制御演算設定部3は加圧プランジャ
17作動開始時点からの時間tから,上記で説明したよ
うに2次曲線補間により比例ゲイン定数Pを算出して,
積分I,微分Dゲイン定数とともに偏差eの結果に基づ
き,PID演算処理を行い,制御量である圧力指令値P
cに変換する。ドライバ4は圧力指令値Pcが入力され
ると,実際に電磁リリーフ弁5を駆動する信号Prfに
変換し,油圧源6の圧力を制御し,方向切換弁7を介し
て加圧シリンダ8に対する油圧力を制御している。この
ように,加圧プランジャ17のストローク量における目
標軌跡Tと実際のストローク量Taとの偏差を基準
に,加圧シリンダ8を作動させる圧力を制御することに
より,加圧プランジャ17の実際のストローク量をフィ
ードバック制御し,その結果,加圧プランジャ17によ
り常に所要レベルの安定した押湯効果を溶湯20に与え
て,緻密,かつ,内部にひけ巣等の無い品質良好な鋳造
製品が得られるようになる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,
加圧プランジャストロークのフィードバック制御を行う
にあたり,予め設定された制御開始時の比例ゲイン定数
と,予め設定された経過時間後の比例ゲイン定数より,
時間ベースの2次曲線補間を行い,予め設定された経過
時間内の比例ゲインを初めは比較的に早く,それに続い
て比較的にゆっくりと可変とし,最後は滑らかに一定な
所望の比例ゲインに落ちつかせることにより,制御開始
時の比例ゲイン定数を大きくとり,制御開始直後の応答
遅れを無くし,ストロークを目標軌跡に沿うように速早
くかつ滑らかに実際のストロークを制御することが可能
となり,鋳造品内に生じる巣や割れ等の無い高品質の鋳
造加工品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施する金型装置と加圧鋳造シ
ステムの1実施例を示す機構図である。
【図2】本発明による加圧ストローク制御方法を説明す
るための時間−比例ゲイン線図である。
【図3】従来の技術の1例を示す時間−比例ゲイン線図
である。
【符号の説明】
1 指令信号設定部 2 偏差演算部 3 PID制御演算設定部 8 加圧装置 9 位置検出器 10 金型装置 11 射出プランジャ 13 射出装置 17 加圧プランジャ 18 キャビティ 20 溶湯 22 加圧プランジャ制御手段

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 射出装置の作用によって金型内に溶湯を
    充填するとともに射出装置と対向した加圧プランジャを
    前進させて金型内の溶湯を加圧する加圧鋳造において,
    加圧プランジャストロークのフィードバック制御を行う
    にあたり,予め設定された制御開始時の比例ゲイン定数
    と,予め設定された経過時間後の比例ゲイン定数より,
    時間ベースの2次曲線補間を行い,予め設定された経過
    時間内の比例ゲイン定数を可変とすることを特徴とする
    加圧鋳造における加圧ストローク制御方法。
JP35421291A 1991-11-22 1991-11-22 加圧鋳造における加圧ストローク制御方法 Expired - Fee Related JP2704474B2 (ja)

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