JP2703874B2 - コバルトシッフ塩基錯体及び酸素分離用錯体溶液並びに酸素分離法 - Google Patents

コバルトシッフ塩基錯体及び酸素分離用錯体溶液並びに酸素分離法

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JP2703874B2 JP7311317A JP31131795A JP2703874B2 JP 2703874 B2 JP2703874 B2 JP 2703874B2 JP 7311317 A JP7311317 A JP 7311317A JP 31131795 A JP31131795 A JP 31131795A JP 2703874 B2 JP2703874 B2 JP 2703874B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コバルトシッフ塩
基錯体と酸素分離用錯体溶液及び酸素分離法に関し、詳
しくは空気等の酸素含有ガスから高効率で酸素を分離可
能なコバルトシッフ塩基錯体を溶かした酸素分離用錯体
溶液、その酸素分離用錯体溶液を用いて温度変動方式に
より空気等の酸素含有ガスから高効率で酸素を分離可能
な酸素分離法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、工業的規模で空気中の酸素を分離
製造する方法としては、空気を加圧、冷却、膨張して液
化し、多段の精留工程を経て、沸点差によって窒素と酸
素とを分離する深冷分離方法がある。しかしこの方法で
は、多量のエネルギーを投入する必要がある。また高純
度の酸素または窒素を大量に製造する目的には適する
が、少量生産には適さない。また近年、ゼオライトまた
はカーボンモレキュラーシーブス等の吸着剤を用いて、
該吸着剤に窒素または酸素を選択的に吸着させることに
より、酸素または窒素を分離製造する吸着分離方法があ
る。この方法は運転操作が簡便で起動時間が短いという
利点を有しており比較的小容量の酸素や窒素の製造には
適している。しかし、この吸着分離方法は大容量の製造
には不適である。さらに、製品の製造量に比較して装置
が大きくなる欠点がある。特に酸素を製造する場合に
は、最大酸素濃度が95%に過ぎないという欠点があ
る。
【0003】これらの欠点を克服するために、最近で
は、酸素とのみ可逆的に反応する錯体を利用して酸素を
分離する方法が幾つか提案されている。この方法は例え
ば、特開昭58−20296号公報に記載されているよ
うに、5℃以下の低温で錯体溶液と空気を接触させて、
空気中の酸素を錯体溶液に吸収させて、次いで25℃以
上の高温で酸素を錯体溶液から放出させ、これを製品酸
素として採取するもので、錯体溶液は再び5℃以下の低
温に冷却して酸素を吸収させる。以下同じ工程を繰り返
して酸素を連続的に採取し得るものである(温度変動式
化学吸収法)。また、この酸素分離法のもう一つの方法
は、錯体への酸素結合割合が気相中の酸素分圧の大きさ
により変化することにより、錯体溶液を温度一定条件下
にして、高酸素分圧下において酸素を吸収し、低酸素分
圧下で吸収していた酸素を脱離させて酸素を分離採取す
る圧力変動式化学吸収法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の化学吸収法に用いられる錯体溶液には次のような欠点
がある。従来の錯体溶液は、酸素吸脱着条件が悪く、酸
素吸着時には5℃以下に冷却し、酸素脱着時には60℃
以上に加熱せねばならず、酸素の吸脱着に多大の加熱・
冷却エネルギーが必要となる。また従来の錯体溶液は、
錯体の酸素吸収能力が小さいため、錯体の利用効率が低
く、錯体溶液を0℃に冷却しても大気圧の空気から酸素
を吸収する時、錯体への酸素結合割合は20〜40%に
過ぎなかった。更に、錯体溶液はその組成を決めると、
酸素吸収温度と酸素放出温度も同時に定まり、これらの
温度を変更することができなかった。この為、環境熱や
排熱を十分に利用することができなかった。また従来の
錯体溶液は、錯体の立体障害が不十分であるために、酸
素の吸収・脱離を繰り返し行うに従って錯体が二量化
し、酸素吸収能力が低下してしまう問題があった。また
従来の錯体溶液は、錯体の飽和溶解度が低いために、実
用的な酸素発生量を得るためには多量の溶媒が必要であ
り、大量の錯体溶液を循環使用せねばならず、設備の大
型化を招いてしまう。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、酸素吸脱着性能に優れ、安定であり、かつ疎水性溶
媒に対しても十分な溶解性を有する錯体、及び空気等の
酸素含有ガスから高効率で酸素を分離可能な酸素分離用
錯体溶液、並びにその酸素分離用錯体溶液を用いて温度
変動方式により空気等の酸素含有ガスから高効率で酸素
を分離可能な酸素分離法の提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
式(A)
【0007】
【化2】
【0008】(式中R1は、置換または未置換フェニレ
ン基、置換または未置換ピリジレン基、置換または未置
換アルキレン基からなる群より選択される1つであり、
R2〜R6は、水素、置換または未置換フェニル基、置換
または未置換アルキル基、ハロゲン、置換または未置換
アルコキシ基からなる群より選択される1つであり、M
eはメチル基を表す)で示されるコバルトシッフ塩基錯
体である。請求項2に係る発明は、請求項1記載のコバ
ルトシッフ塩基錯体を有機溶媒に溶かしてなり、酸素吸
着状態および酸素脱着状態で液相であることを特徴とす
る酸素分離用錯体溶液である。請求項3に係る発明は、
前記有機溶媒が、極性溶媒または極性溶媒と疎水性溶媒
との混合溶媒であることを特徴とする請求項2記載の酸
素分離用錯体溶液である。請求項4に係る発明は、前記
コバルトシッフ塩基錯体の濃度を0.1〜1mol/l
としたことを特徴とする請求項2または3記載の酸素分
離用錯体溶液である。請求項5に係る発明は、請求項2
から4のいずれか1項に記載の酸素分離用錯体溶液に、
空気または酸素を含む混合ガスを接触させて、酸素分離
用錯体溶液中のコバルトシッフ塩基錯体に酸素を結合さ
せる酸素吸着工程と、酸素結合錯体を含む酸素分離用錯
体溶液を加熱して酸素を脱着させる酸素脱着工程とを備
えた酸素分離法である。請求項6に係る発明は、前記酸
素吸着工程を−10〜50℃の温度範囲で行い、前記酸
素脱着工程を10〜80℃の温度範囲で行うことを特徴
とする請求項5記載の酸素分離法である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の酸素分離用錯体溶液に用
いられる錯体は、前記式(A)で表される構造を有して
いる。この錯体は、一般的な有機溶媒に対する溶解度が
従来の錯体よりも向上する。また、この錯体は、立体障
害となる大きな置換基の導入によって安定性が高い。本
発明の酸素分離用錯体溶液は、錯体(A)を有機溶媒に
溶解させてなるものである。この本発明の酸素分離用錯
体溶液は、酸素吸収時および酸素脱着時(酸素吸収前)
のいずれの状態においても均一な液状である。
【0010】本発明の酸素分離用錯体溶液に用いる有機
溶媒は、極性溶媒または極性溶媒と疎水性溶媒との混合
溶媒である。極性溶媒としては、例えば、N−メチルピ
ロリドン、N,N′−ジメチルホルムアミド、プロピレ
ンカーボネート、ジメチルスルホキシド、N,N′−ジ
メチルアセトアミド、スルホラン、オルト−ジクロロベ
ンゼン、γ−ブチロラクトンなどが好適に用いられる。
また、極性溶媒と混合される疎水性溶媒としては、鎖式
炭化水素、環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化
炭化水素、O,N,Sを含む炭化水素などの疎水性溶媒
から選択され、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン等の
5〜C12の飽和炭化水素、1,2−ジクロロベンゼ
ン、1,2−ジブロモベンゼン、3,4−ジクロロトル
エン、2,4−ジクロロトルエン、2,3−ジクロロト
ルエン、2,6−ジクロロトルエン、2−クロロパラキ
シレン、4−クロロパラキシレン、1−クロロナフタレ
ン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、1−メ
チルナフタレン、2−エチルナフタレン、1,2,3−
トリメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベ
ンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、ターシャリ
ーアミルベンゼン、ノルマルアミルベンゼン、フェニル
シクロヘキサン、4−ターシャリーブチルトルエン、メ
チルベンゾエイト、ノルマルプロピルベンゾエイト、チ
オアニソール、インダンなどである。
【0011】本発明の酸素分離用錯体溶液において、錯
体(A)の濃度は、0.1〜1mol/lの範囲内の濃
度とし、錯体溶液の粘性(流動性)、錯体溶液と処理気
体との接触性及び錯体溶液の搬送性などの点を考慮し
て、好ましくは0.1〜0.3mol/l程度とする。
また、軸配位子の濃度は、錯体に対し1〜50当量、好
ましくは1〜5当量程度とする。
【0012】本発明の酸素分離用錯体溶液における酸素
の吸着・脱着の原理について説明する。この酸素分離用
錯体溶液における酸素の吸着・脱着の平衡反応は次式
(1)により表される。
【0013】
【数1】
【0014】この式(1)中、Lはシッフ塩基配位子、
Coはコバルト原子、Bは軸配位子、O2は酸素分子、
Ko2は酸素結合定数である。このKo2は、次式(2)
によって示される。この式(2)中の[ ]は濃度を示
す。
【0015】
【数2】
【0016】上記式(2)中でeqは平衡(equilibriu
m)状態を示す。
【0017】
【数3】
【0018】全コバルトの濃度は、[LCo(B)]0と考え
て良い。錯体溶液調整時での溶液濃度を[LCo(B)]0
する。
【0019】
【数4】
【0020】
【数5】
【0021】[O2]eqをヘンリーの溶解則に従うと仮
定すると、次式(6)となる。
【0022】
【数6】
【0023】ここでK=Ko2Ho2 n とすると、次式
(7)が得られる。
【0024】
【数7】
【0025】平衡酸素分圧Po2のlnPo2に対して、
ln(Y/1−Y)をプロットして得られた曲線をヒル
プロット(Hill plot)と言い、その曲線の傾きをヒル
係数という。Kを見かけの平衡定数(酸素親和力)とい
う。Yが丁度1/2になったときの平衡酸素圧をP1/2
とすると、見かけの平衡定数Kは、次式(8)で示され
る。
【0026】
【数8】
【0027】この式(8)から、P1/2の値が小さいほ
ど、Kの値が大きくなる。従って、P1/2が小さいほど
酸素親和力が大きいと考えられる。
【0028】本発明のコバルトシッフ錯体のヒル係数は
理想的には1を示す。これは、コバルト錯体には、ヘモ
グロビンに見られるように酸素を1分子結合した後、別
のコバルトシッフ塩基錯体の酸素への結合能力を変化さ
せる現象が起きていない、すなわちアロステリック効果
が起きていない系であることを示している。したがっ
て、コバルト錯体と酸素分子との反応は、他のコバルト
錯体に影響されない反応であることがわかる。また、コ
バルト錯体の中で酸素分子と反応する部位は、中心金属
のコバルトであり、コバルトは錯体1分子中に1原子し
か存在せず、かつ酸素錯体は第5座の配位子として軸配
位子が必要で、それがあってはじめて酸素分子が最後の
第6座に配位することがわかっている。その構造解析は
Schaeferらの文献[Inorg. Chem., 2758, 15(1976)、J.
Amer.Chem.Soc.,98,5135(19)、J.Amer.Chem.Soc.,98,51
53(19)]に明示されている。本発明の酸素分離用錯体溶
液に用いられるコバルト錯体は、その1分子に酸素1分
子が結合し、1:1のコバルト酸素結合錯体を形成する
ものと考えられる。錯体と酸素分子の結合割合がミオグ
ロビンのように1:1の場合は、正確にヒル係数が1に
なることは文献[Basoloら、Chem.Rev.,79,139(1979)]
により知られている。
【0029】本発明で用いたコバルトシッフ塩基錯体
は、ミオグロビンと同じく、アロステリック効果はな
く、結合部位のコバルトイオンも錯体1分子中に1つし
かなく、かつ二量体を生成できない程度の立体障害を錯
体分子内に持っているので、酸素分子と1:1で結合す
る。そして、後述する実施例の結果に示すように、酸素
親和力測定実験により得られたヒル係数が1になってい
る。すなわち、n=1とみなせる。酸素錯体の酸素結合
反応が、可逆であるならば、上記式(1)によって表す
ことができる。吸収だけでなく、脱着においても同様に
ヒルプロットを行うことができ、この場合のヒル係数も
計算できる。酸素分子が錯体から可逆的に脱着すれば、
脱着は吸着の逆反応であるから、その場合のヒル係数は
1となる。もし、酸素が可逆的に脱着しなければ、酸素
分子は錯体溶液に取り込まれた状態となり、酸素の脱着
は不可逆となる。よって、吸着過程と脱着過程でのヒル
係数を比較すれば、錯体の酸素分子に対する吸脱着が可
逆かどうかの目安となる。
【0030】本発明に係る酸素分離法は、上述した酸素
分離用錯体溶液に、空気または酸素を含む混合ガスを接
触させて、酸素分離用錯体溶液中のコバルトシッフ塩基
錯体に酸素を結合させる酸素吸着工程と、酸素結合錯体
を含む酸素分離用錯体溶液を加熱して酸素を脱着させる
酸素脱着工程とを備える。前記酸素吸着工程は−10〜
50℃の温度範囲で行い、前記酸素脱着工程は10〜8
0℃の温度範囲で行うことが好ましい。この温度範囲で
あれば、酸素分離用錯体溶液の酸素吸脱着が効率良く行
えるとともに、錯体の二量化が進行することがなく、長
期間安定して運転することができる。
【0031】上述した酸素分離用錯体溶液を用い、温度
変動方式によって酸素分離を行うことにより、従来の酸
素分離用錯体溶液を用いた酸素分離と比べて酸素の吸脱
着に必要な加熱・冷却エネルギーが低減され、低コスト
で酸素を製造することができるようになる。この酸素分
離法において、酸素吸着工程および酸素脱着工程の圧力
は特に限定されないが、通常は100Torr以上、好まし
くは大気圧程度の圧力下で実施される。
【0032】上述した本発明による酸素分離法は、酸素
分離用錯体溶液を収容した吸脱着槽に空気などの酸素を
含む原料ガスを供給し、酸素分離用錯体溶液に酸素を吸
着させ、次いで錯体溶液を加熱して酸素を脱着させ、酸
素を回収する回分式(バッチ式)、若しくは、吸着槽と
脱着槽に酸素分離用錯体溶液を循環させる構成とし、吸
着槽に空気などの酸素を含む原料ガスを供給し、酸素分
離用錯体溶液に酸素を吸着させ、脱着槽で錯体溶液を加
熱して酸素を脱着させ、酸素を回収する連続式のいずれ
の酸素分離装置を用いて実施しても良い。
【0033】
【実施例】
(使用錯体)この実施例において使用する上記式(A)
で示されるコバルトシッフ塩基錯体は、ジオール化合物
を2−クロロメチル−3−クロロ−プロペンと反応さ
せ、ジクロル誘導体を得た後、2位にヒドロキシル基、
3位に水素原子をもつサリチルアルデヒド誘導体と塩基
の存在下反応させて得たエーテル化合物を熱分解してビ
スサリチルアルデヒド誘導体を得、続いてTmen
(2,3−ジアミノ−2,3−ジメチル−ブタン)を反
応させて得た新規シッフ塩基をコバルトと錯体形成反応
を行い合成した。
【0034】合成した本発明に係る錯体は、前記式
(A)により表され、R1は、オルト−フェニレン、メ
タ−フェニレン、2,6−ピリジレンであり、R2、R
3、R5が水素であり、R4、R6がメトキシ基(MeOと
記す)である、表1に示す通りの錯体1,2,3であ
る。なお、以下の実施例は本発明の一例を例示したに過
ぎず、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
【0035】
【表1】
【0036】(比較例)また、以下の実施例1及び2の
各実験において、本出願人により出願された特開平7−
165776号公報明細書中に記載されている4種の錯
体を比較例1〜4とし、本発明に係る錯体1〜錯体3と
比較した。比較例1のCoSalTmenは、N,N′-ビス(サ
リチリデン)1,1,2,2-テトラメチルエチレンジアミ
ノコバルト(II)である。比較例2のCo3MeOSalTmen
は、N,N′-ビス(3-メトキシサリチリデン)1,1,
2,2-テトラメチルエチレンジアミノコバルト(II)で
ある。比較例3のCo4,6DMeOSalTmenは、N,N′-ビス
(4,6-ジメトキシサリチリデン)1,1,2,2-テトラ
メチルエチレンジアミノコバルト(II)である。比較例
4のCo4,6DtBuSalTmenは、N,N′-ビス(4,6-ジタ
ーシャリーブチルサリチリデン)1,1,2,2-テトラメ
チルエチレンジアミノコバルト(II)である。
【0037】[実施例1]:錯体の溶解度 錯体の溶解度は、錯体溶液の酸素運搬量を決める重要な
パラメータである。一般に軸配位子が共存すると、錯体
の溶解度は高くなる。これは、軸配位子が錯体と溶媒の
相互作用を仲介するためと考えられる。軸配位子の溶解
度は錯体の溶解度より一般に大きい。上述した本発明に
係る錯体1〜3を、N−メチルピロリドン(NMP)、
γ−ブチロラクトン(BLO)、n−ヘキサン(n-h
ex)、シクロヘキサン(c-hex)の各有機溶媒に
溶かした場合の溶解度を測定し、従来の錯体(比較例1
〜4)と比較した。
【0038】各錯体の溶解度は、次の手順によって重量
法により測定した。 V字型のバイアルに1mlの溶媒を入れる、 バイアルと溶媒の総重量W1(g)を測定する、 バイアルに少量ずつ錯体を入れ良く攪拌する、 静置して、バイアルの底に沈澱が生じたところで総重
量W2(g)を測定する、 先端目盛付ピペットで溶液を吸い上げ溶液全量の容積
V(ml)を測定する、 加えた錯体の重量はW2−W1であるから、錯体又は
軸配位子の分子量をM(g/mol)とすると、溶解度S(mol
/l)は次式で求められる。 S=(W2−W1)/(MV×10-3) 本発明に係る錯体1〜3および比較例1〜4の各々の錯
体の各溶媒に対する溶解度を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】表2から明らかなように、本発明に係る錯
体1〜3は、極性の大きな溶媒であるN−メチルピロリ
ドン、γ−ブチロラクトンに溶解するのみならず、極性
の小さい疎水性溶媒であるn−ヘキサン、シクロヘキサ
ンに対しても溶解した。従って本発明に係る錯体1〜3
は、疎水性溶媒の使用が可能であることが分かる。
【0041】[実施例2]:酸素親和力の測定 本発明に係る錯体1〜3をそれぞれバイアル容器に入
れ、また軸配位子を必要とする比較例1〜4の各錯体と
軸配位子として1−メチルイミダゾール(MeIm)と
を入れ、所定量の溶媒(N−メチルピロリドン;NM
P))を加えて溶かし、錯体濃度0.1mol/l、軸
配位子濃度1.5当量の錯体溶液15mlをバイアル容
器内で調製した。酸素錯体溶液を入れた容器の気相を真
空排気し、さらに不活性ガスでパージしてバイアル容器
内の酸素を完全に無くした後、バイアル容器内に酸素を
導入し、定容式酸素吸脱着量測定法によって系内の圧力
変動出力を検出することによって酸素親和力を測定し
た。この測定方法は、酸素吸収量ゼロの状態から出発し
てPO2を増加させながら(Y,PO2)l,l=1,2,
・・・・,を求める(吸収曲線)。次に、酸素吸収量既知の
状態からPO2を減少させ(Y,PO2)m,m=1,2,
・・・・,を求める(脱着曲線)。そして、縦軸にlog
(Y/1−Y)、横軸にlogPO2をとったグラフに
各測定値をプロットすると、図1に示すように吸収曲線
と脱着曲線とが得られ、それらの傾きnがヒル係数とな
る。この方法によりもとめた吸収曲線と脱着曲線のヒル
係数nは、一般にn(吸収)>n(脱着)となる。
【0042】この実施例2での各錯体溶液の酸素親和力
の測定は、これら各錯体溶液を入れたバイアル容器を0
℃の恒温槽(水氷浴槽)に入れ、上述した方法により酸
素吸着と酸素脱着を0℃で行い、酸素吸収曲線、脱着曲
線を作成し、それぞれのP1/2、ヒル係数、ヒル係数比
(吸着/脱着)を求めた。酸素吸収能力を示す結果を表
3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】表3から明らかなように、本発明に係る錯
体1〜3の溶液は、溶媒、吸収温度を同じにした場合、
比較例1〜4の錯体を用いた溶液よりも優れた酸素吸収
性能を示した。
【0045】酸素吸脱着の可逆性を示す結果を表4に示
す。
【0046】
【表4】
【0047】表4に示す通り、本発明の係る錯体1〜3
の溶液は、吸着と脱着のそれぞれのヒル係数がほぼ1で
あり、吸着過程と脱着過程でのヒル係数比もほぼ1であ
ることから、錯体の酸素分子の吸脱着の可逆性は、既知
のものと同様に可逆であることが判明した。
【0048】・使用溶媒の安全性の比較 表5に各種溶媒の毒性データを示す。
【0049】
【表5】
【0050】表5に示す各種溶媒のうち、特にn-ヘキ
サンやシクロヘキサンは低毒性であり、本発明に係る錯
体1〜3はこれら低毒性の溶媒に溶解させて使用するこ
とが可能であることから、本発明に係る錯体1〜3をこ
れら溶媒に溶かして得られる錯体溶液は、取扱時の安全
性を向上させることができる。また、表6には、比較例
1〜4の錯体において好適に使用される軸配位子の毒性
値を示す。
【0051】
【表6】
【0052】従来の錯体は、酸素分離用錯体溶液を調整
する際に、表6に示すようなLD50値が小さい軸配位
子を必須としたが、本発明に係る錯体は、このような軸
配位子の使用を省くことができるので、本発明に係る錯
体溶液は、取扱時の安全性を向上させることができる。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るコバ
ルトシッフ塩基錯体は、酸素の吸脱着性能が優れてお
り、溶媒に対する溶解度が高く、かつ安定性も高い、と
いう優れた特性を有している。また、本発明に係る酸素
分離用錯体溶液は、溶媒に対する溶解度の高い上記コバ
ルトシッフ塩基錯体を有機溶媒に溶かして均一な状態と
したものであり、コバルトシッフ塩基錯体の濃度を高め
ることができることから、酸素分離性能を高めることが
できる。また、本発明に係る酸素分離用錯体溶液は、安
全で安価な疎水性溶媒を使用可能であることから、取扱
いが容易となり、かつ原料ガス中の水分を除去する前処
理設備が不要となる。また、毒性も従来より改善されよ
り安全に取り扱うことができる。さらに本発明に係る酸
素分離用錯体溶液は、酸素吸脱着時の温度差を小さくし
て酸素分離を行うことができるので、酸素吸脱着時の冷
却及び加熱に要する熱エネルギーを削減することができ
る。また、本発明に係る酸素分離法は、上記の酸素分離
用錯体溶液を用い、温度変動方式若しくは圧力変動方式
により空気等の酸素含有ガスから酸素を分離することに
より、高効率で酸素を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は錯体溶液の酸素親和力の測定においてヒ
ル係数を求める際に用いられる吸収曲線と脱着曲線を例
示するグラフである。
フロントページの続き (72)発明者 平谷 和久 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院 物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 高橋 利和 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院 物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 春日 和行 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院 物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 中辻 利一 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日本 酸素株式会社内 (72)発明者 仲山 一郎 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日本 酸素株式会社内 (72)発明者 岡本 歩 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日本 酸素株式会社内 (72)発明者 伊東 延義 東京都港区西新橋1丁目16番7号 日本 酸素株式会社内 (72)発明者 市田 泰三 大阪府大阪市西区靱本町2丁目4番11号 大陽東洋酸素株式会社内 (72)発明者 内野 誠 大阪府大阪市西区靱本町2丁目4番11号 大陽東洋酸素株式会社内 (72)発明者 足立 貴義 大阪府大阪市西区靱本町2丁目4番11号 大陽東洋酸素株式会社内 審査官 山田 泰之

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(A) 【化1】 (式中R1は、置換または未置換フェニレン基、置換ま
    たは未置換ピリジレン基、置換または未置換アルキレン
    基からなる群より選択される1つであり、R2〜R6は、
    水素、置換または未置換フェニル基、置換または未置換
    アルキル基、ハロゲン、置換または未置換アルコキシ基
    からなる群より選択される1つであり、Meはメチル基
    を表す)で示されるコバルトシッフ塩基錯体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のコバルトシッフ塩基錯体
    を有機溶媒に溶かしてなり、酸素吸着状態および酸素脱
    着状態で液相であることを特徴とする酸素分離用錯体溶
    液。
  3. 【請求項3】 前記有機溶媒が、極性溶媒または極性溶
    媒と疎水性溶媒との混合溶媒であることを特徴とする請
    求項2記載の酸素分離用錯体溶液。
  4. 【請求項4】 前記コバルトシッフ塩基錯体の濃度を
    0.1〜1mol/lとしたことを特徴とする請求項2
    または3記載の酸素分離用錯体溶液。
  5. 【請求項5】 請求項2から4のいずれか1項に記載の
    酸素分離用錯体溶液に、空気または酸素を含む混合ガス
    を接触させて、酸素分離用錯体溶液中のコバルトシッフ
    塩基錯体に酸素を結合させる酸素吸着工程と、酸素結合
    錯体を含む酸素分離用錯体溶液を加熱して酸素を脱着さ
    せる酸素脱着工程とを備えた酸素分離法。
  6. 【請求項6】 前記酸素吸着工程を−10〜50℃の温
    度範囲で行い、前記酸素脱着工程を10〜80℃の温度
    範囲で行うことを特徴とする請求項5記載の酸素分離
    法。
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