JP2702392B2 - 溶液組成測定システム - Google Patents
溶液組成測定システムInfo
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Description
いた溶液組成測定システムに関し、特に製塩工程におけ
る濃縮缶缶内液組成の測定に好適な溶液組成測定システ
ムに関する。 【0002】 【従来の技術】製塩工場では、海水をイオン交換膜電気
透析法で濃縮して濃い塩水(かん水)を得、これを蒸発
缶でさらに濃縮して塩の結晶を析出させる方法(晶析
法)によって製塩を行っている。製塩工程での溶液中に
は、主成分としてナトリウムイオン、塩化物イオン、不
純物としてカルシウムイオン、マグネシウムイオン、カ
リウムイオン等が含まれている。これら各イオンの濃度
は、かん水の濃縮度により変化する。 【0003】製品結晶は、晶析工程で溶液を結晶内に液
泡として包含しながら成長する。また、溶液の組成によ
り成長速度が異なってくるため、溶液組成は製品結晶組
成、粒径等の品質に影響を及ぼす。したがって、製品結
晶の品質を制御するためには、溶液の組成管理を行う必
要がある。また、溶液組成測定は晶析操作の操作基準で
ある濃縮缶缶内液の濃縮比及び溶液の濃縮限界の決定を
行うためにも必要である。 【0004】従来、製塩工場では、溶液組成測定のため
のセンサがないため、以下に示す分析方法で溶液組成の
測定を行っている。塩化物イオン:硝酸銀標準溶液によ
る滴定カルシウムイオン、マグネシウムイオン:EDT
A標準溶液による滴定カリウムイオン:フレーム分光光
度計又はフレーム光度計による測定ナトリウムイオン:
上記4成分による結合計算 【0005】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来の溶液組
成測定において、滴定法(Cl-、Ca2+、Mg2+の分析)に
よる分析は手動で行うため時間と労力を要する。また、
光度計による測定(K+の分析)は測定範囲がカリウム濃
度で0.01〜0.30%に限られるため、試料液の希釈操作が
必要となる。このため、溶液組成の分析は1日1回程度
しか行えないのが現状であり、またオンライン測定も不
可能であるため、以下に示す問題が生じている。 【0006】製品結晶の品質制御上の問題 製塩工場では、供給かん水として、透析かん水及び雑塩
(製塩工場で製品にならない塩)を再溶解したかん水を
用いている。これらの比は時間により変化するため、給
液組成も変化する。 【0007】一方、前述したように、製品結晶は晶析工
程で溶液を結晶内に液泡として包含しながら成長する
が、溶液の組成により成長速度が異なってくるため、溶
液組成は製品結晶組成、粒径等の品質に影響を及ぼす。
したがって、製品結晶の品質を管理するためには溶液の
組成管理を行う必要があり、また製品の品質を制御する
ためには溶液組成に応じた最適な制御を行う必要があ
る。しかし、現在の製塩工場では迅速な溶液組成測定を
行うことができないため、溶液組成の測定結果を製品結
晶制御に反映させられないのが実状である。 【0008】晶析操作の制御上の問題 晶析操作を行う場合には、主として2つの管理基準があ
る。第1は、濃縮缶(供給かん水を飽和まで濃縮する
缶)缶内液の溶液組成である。濃縮缶では結晶を析出さ
せないように、しかもできるだけ飽和に近い状態まで溶
液を濃縮することが、製品の品質、エネルギーコストの
面で最適な操作である。濃縮缶缶内液組成をリアルタイ
ムで測定することで、現在の組成が把握できるため、濃
縮缶での最適な濃縮比の決定が可能となり、濃縮缶缶内
液の組成の制御ができるようになると考えられる。 【0009】第2は、苦汁濃縮缶(かん水を極限まで煮
つめる缶)缶内液の溶液組成である。製塩工場では、溶
液の濃縮限界を管理基準としている。イオンかん水系で
の濃縮限界は、塩化カリウム析出点である。この点以上
まで濃縮すると塩化カリウムが析出するため、製品品質
は著しく低下する。また、できるだけ濃縮限界近くまで
濃縮することが、エネルギー的に最適な操作である。こ
の最適な濃縮限界の決定は、濃縮缶缶内液組成と晶析工
程における物質収支とから可能となる。 【0010】以上が晶析操作を行うための管理基準であ
るが、現状では溶液組成測定システムがなく、溶液組成
の分析が1日に1回しかできないため、限界に近い操作
が行えず、かなり安全サイドでの操作を行っているた
め、最適な晶析操作が行えないのが現状である。 【0011】このように、現状では製塩工程中の溶液組
成測定システムがなく、組成分析を手動で行っているた
め時間と労力を要し、分析結果を迅速に工程にフィード
バックすることができないので、最適な晶析操作を行う
ことは不可能である。したがって、製塩工程の自動化、
省力化、最適化を行うためには、溶液組成を測定できる
システムが必要である。 【0012】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、晶析工程の最適自動制御による製品の安定生産を目
的として、製塩工程における溶液のうち、濃縮缶缶内液
の組成測定に好適な測定システムを提供することを目的
とする。 【0013】 【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は、上
記目的を達成するため、イオン選択性電極を用いて濃縮
缶缶内液の溶液組成測定システムを構築することについ
て検討を行った。イオン選択性電極はイオン選択性の膜
を持ち、測定対象イオンに選択的に応答する。そして、
溶液中の測定対象イオンの活量(化学的有効濃度)に応
じて膜の両側に電位が発生する。この発生電位と参照電
極による一定の基準電位との電位差を測定する。測定さ
れた電極電位と溶液中の測定対象イオンの活量との関係
は、下記のネルンストの式で表される。 【0014】E=E0 +XlogA E:電極電位 A:測定対象イオンの活量 E0:基準電位(一定) X:電位勾配 【0015】測定対象イオンの活量Aは、測定対象イオ
ン濃度Cに対して次の関係を持つ。ここで、γはイオン
活量係数である。 A=γC 【0016】イオン活量係数γは、溶液の全イオン強度
によって大きく変化する。全イオン強度は次式で定義さ
れる。 全イオン強度=1/2ΣCi Zi 2 Ci:イオンiの濃度 Zi:イオンiの電荷 【0017】測定するイオン濃度に対して、バックグラ
ウンドとなるイオンの強度が高い場合には、測定対象イ
オンの活量係数が一定となり、活量が濃度に直接比例す
る。このため、電極電位と濃度との関係からの濃度測定
が可能となる。 【0018】従来より、イオン選択性電極を用いてイオ
ン濃度測定を行う場合、通常はサンプル溶液をバックグ
ラウンドとなる溶液の全イオン強度に影響を及ぼさない
ように希釈し、これにイオン強度調整剤を加えて、イオ
ン強度を一定にしてから測定を行う必要があった。しか
し、オンラインでイオン選択性電極によるイオン濃度測
定を行うためには、無希釈で、かつイオン強度調整剤を
加えず行う必要がある。 【0019】そこで、本発明者はまず第1段階として、
全イオン強度が製塩工程における溶液中のイオン濃度測
定にどの程度影響を与えるかを調べるために、測定対象
イオンに選択的に応答するイオン選択性電極を使用し
て、濃縮缶缶内液中の各イオン濃度を直接測定すること
を試みた。しかし、塩化物イオン選択性電極による塩化
物イオン濃度測定以外のカルシウムイオン、2価陽イオ
ン、カリウムイオンの測定については、各々イオン選択
性電極を単独で用いても分析値と測定値との相関が悪
く、実用上の使用は不可能であった。すなわち、イオン
活量係数が全イオン強度の影響を受けるために、単独の
イオン選択性電極では濃度測定が不可能なことがわかっ
た。ただし、塩化物イオンに関しては、後述するように
全イオン強度と塩化物イオン濃度が比例関係にあるた
め、単独の電極でも測定可能であった。 【0020】次に、本発明者は第2段階として、測定不
可能であったイオンについて、全イオン強度による補正
が有効かどうかについて検討を行った。全イオン強度に
よる補正式は以下に示すとおりである。 【0021】 logCi=d0+d1Ei+d2μ Ci :測定対象イオン濃度[M](i=Ca,Di
v.,K、ただしCa はカルシウムイオン、Div.は
2価陽イオン、Kはカリウムイオ ンを示す) Ei :測定対象イオン選択性電極の電極電位[mV] μ :全イオン強度[−] dj :定数(j=0,1,2) 【0022】その結果、イオン選択性電極の電極電位を
全イオン強度で補正する本補正式を用いることにより、
いずれのイオンにおいても分析値と測定値との相関関係
が向上し、全イオン強度による補正が有効であることが
わかった。しかし、全イオン強度測定用のセンサがない
ため、溶液中の各イオン濃度を分析し、その分析値より
算出することが必要であった。 【0023】さらに、本発明者は第3段階として、全イ
オン強度を測定するためのセンサについて種々検討を行
った。その結果、濃縮缶缶内液の組成範囲において、塩
化物イオン選択性電極の電極電位が溶液の全イオン強度
と比例関係にあり、これを全イオン強度測定用のセンサ
として使用できることを見い出した。そして、測定対象
イオン電極の電極電位を塩化物イオン選択性電極の電極
電位で補正することにより、濃縮缶缶内液組成を測定す
ることが可能な組成測定システムを構築できることを知
見し、本発明をなすに至った。 【0024】したがって、本発明は、塩化物イオン選択
性電極、カルシウムイオン選択性電極、2価陽イオン選
択性電極、カリウムイオン選択性電極、前記各イオン選
択性電極の参照電極及び前記各イオン選択性電極の電極
電位測定用イオンメータを備えた測定部と、前記各イオ
ン選択性電極の電極電位から各イオン濃度を演算する演
算部とを具備し、支配的陰イオン種が塩化物である溶液
の組成を測定する溶液組成測定システムであって、前記
演算部が、前記塩化物イオン選択性電極の電極電位から
塩化物イオン濃度を演算するとともに、前記カルシウム
イオン選択性電極、2価陽イオン選択性電極及びカリウ
ムイオン選択性電極の電極電位に前記塩化物イオン選択
性電極の電極電位に基づく補正を加えてカルシウムイオ
ン濃度、2価陽イオン濃度及びカリウムイオン濃度を演
算するものであることを特徴とする溶液組成測定システ
ムを提供する。 【0025】本発明システムにおいては、各イオン選択
性電極と参照電極との電位差をイオンメータで検出し、
各イオン選択性電極の電極電位を測定するとともに、こ
れらの電極電位から溶液中の塩化物イオン、カルシウム
イオン、2価陽イオン、カリウムイオンの濃度を演算す
る。 【0026】この場合、カルシウムイオン濃度、2価陽
イオン濃度及びカリウムイオン濃度の演算においては、
カルシウムイオン選択性電極、2価陽イオン選択性電極
及びカリウムイオン選択性電極の電極電位に重回帰法に
より塩化物イオン選択性電極の電極電位に基づく全イオ
ン強度補正を加えて演算を行う。塩化物イオンの濃度
は、塩化物イオン選択性電極の電極電位のみから補正無
しで算出可能である。演算は以下の式によって行うこと
ができる。 【0027】補正しない場合 logCi=a0+a1Ei Ci :測定対象イオン濃度[M](i=Cl,Ca,
Div.,K、ただしClは塩化物イオン、Caはカル
シウムイオン、Div.は2価陽イオン、Kはカリウム
イオンを示す) Ei :測定対象イオン選択性電極の電極電位[mV] aj :定数(j=0,1) 【0028】したがって、塩化物イオン濃度は下記式に
よって算出できる。 logCcl=a0+a1E cl Ccl:塩化物イオン濃度[M] E cl :塩化物イオン選択性電極の電極電位[mV] aj :定数(j=0,1) 【0029】補正する場合(カルシウムイオン、2価
陽イオン、カリウムイオン濃度) logCi=b0+b1Ei+b2E cl Ci :測定対象イオン濃度[M](i=Ca,Di
v.,K、ただしCa はカルシウムイオン、Div.は
2価陽イオン、Kはカリウムイオ ンを示す) Ei :測定対象イオン選択性電極の電極電位[mV] E cl :塩化物イオン選択性電極の電極電位[mV] bj :定数(j=0,1,2) 【0030】また、ナトリウムイオン濃度は、塩化物イ
オン濃度、2価陽イオン濃度及びカリウムイオン濃度の
測定値から結合計算により算出可能である。 【0031】さらに、マグネシウムイオン濃度は、2価
陽イオン濃度とカルシウムイオン濃度の値の差をとるこ
とで算出可能である。 【0032】本発明において、各イオン選択性電極の種
類に限定はないが、例えば塩化物イオン選択性電極とし
ては非結晶固体膜電極、カルシウムイオン選択性電極、
2価陽イオン選択性電極及びカリウムイオン選択性電極
としては液体膜電極などを用いることができる。参照電
極の種類にも限定はなく、シングルジャンクション型、
ダブルジャンクション型等の任意のものを使用できる。
また、イオン選択性電極及び参照電極は別々に設置して
もよく、これらを一体化した複合電極を用いてもよい。 【0033】なお、本発明システムにおいては、必要に
応じ、塩化物イオン選択性電極、カルシウムイオン選択
性電極、2価陽イオン選択性電極、カリウムイオン選択
性電極以外のイオン選択性電極とその参照電極を測定部
に設けてもよい。 【0034】本発明システムにおいては、測定部にさら
に溶液温度補償用温度センサを設け、演算部において各
イオン選択性電極の電極電位及び溶液温度から各イオン
濃度を演算することが好ましい。そして、演算部で実工
程における溶液温度範囲である30℃〜60℃の範囲で
温度補償演算を行うことにより、濃縮缶缶内液の組成を
正しく測定することができる。 【0035】 【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に示す
が、本発明は下記実施例に限定されるものではない。 【0036】(1)システム概要 図1に本発明の一実施例に係る溶液組成測定システムの
概要を示した。本システムでは、濃縮缶缶内液の晶析缶
への配管部にバイパス2を設け、そこに電極を設置し
た。本システムは、測定部4と演算部6とからなる。測
定部4は、イオン選択性電極4本(塩化物イオン、カル
シウムイオン、2価陽イオン、カリウムイオン)及び参
照電極4本(図中符号8で示す)と、温度補償用の温度
センサ10と、電極電位測定用のイオンメータ12とか
らなる。また、演算部6は、イオンメータ12から得ら
れた電極電位及び温度センサ10から得られた溶液温度
に基づいて演算を行い、各々のイオン濃度算出を行うた
めのコンピュータ14からなる。 【0037】ここで、参考として実際に使用したイオン
選択性電極及び参照電極を示すが、ここに示した電極に
限らず他の電極を用いても溶液組成測定は可能である。 【0038】・塩化物イオン 塩化物イオン選択性電極:オリオン社製塩素電極94-17 参照電極:オリオン社製ダブルジャンクション比較電極
90-02 内部液:オリオン社製90002 外部液:KNO310%水溶液 【0039】・カルシウムイオン カルシウムイオン選択性電極:オリオン社製カルシウム
電極93-20 参照電極:オリオン社製シングルジャンクション比較電
極90-01 内部液:KCl飽和水溶液 【0040】・2価陽イオン 2価陽イオン選択性電極:オリオン社製2価陽イオン極
93-32 参照電極:オリオン社製シングルジャンクション比較電
極90-01 内部液:KCl飽和水溶液 【0041】・カリウムイオン カリウムイオン選択性電極:オリオン社製カリウム電極
93-19 参照電極:オリオン社製ダブルジャンクション比較電極
90-02 内部液:オリオン社製90002 外部液:NaCl0.1M水溶液 【0042】(2)サンプル溶液組成、温度 サンプル溶液は、すべての製塩工場の実工程の濃縮缶缶
内液組成に対応できる範囲で調製した。すなわち、Cl-
濃度4〜5M、純塩率88〜94%とした。測定温度も
すべての製塩工場の実工程の濃縮缶缶内液温度に対応で
きるように、30〜60℃とした。表1に溶液組成の分
析結果(12点)を示した。 【0043】 【表1】 【0044】(3)本システムの有効性について 本システムは、イオン選択性電極の電極電位が溶液の全
イオン強度に影響を受けることに着目し、イオン選択性
電極の電極電位を全イオン強度と比例関係にある塩化物
イオン選択性電極の電極電位で補正するシステムであ
る。本システムの有効性を示すために、以下の検討を行
った。 【0045】本システムでは、全イオン強度の代わりに
塩化物イオン選択性電極の電極電位を使用しているが、
実際に使用可能かどうか検討するため、全イオン強度と
塩化物イオン選択性電極の電極電位との関係について調
べた。結果を図2に示す。同図より、全イオン強度と塩
化物イオン選択性電極の電極電位には相関係数0.99
0の直線関係があり、塩化物イオン選択性電極の電極電
位は全イオン強度を示すために使用可能であることがわ
かる。 【0046】次に、全イオン強度による補正及び塩化物
イオン選択性電極の電極電位による補正の有効性につい
て、カルシウムイオンの濃度測定を例にして検討した。
図3に補正を行わなかった場合の分析値と測定値の関係
について、図4に実際の全イオン強度で補正を行った場
合について示した。 【0047】補正無しの場合の相関係数は図3より0.
880であり、カルシウムイオン選択性電極の電極電位
は全イオン強度の影響を受けてばらつくため、補正が必
要であることが認められる。これに対し、全イオン強度
で補正を行った場合は図4より相関係数が0.999と
なり、直線関係がかなり向上しているため、全イオン強
度による補正が有効であることがわかる。 【0048】図5に塩化物イオン選択性電極の電極電位
による補正を行った場合における分析値と測定値の関係
について示した。同図より、相関係数0.997の良好
な直線関係が見られる。したがって、塩化物イオン選択
性電極の電極電位による補正は、全イオン強度による補
正と同様の効果が得られ、有効な手段であることが認め
られる。 【0049】以上ではカルシウムイオンを例にして本シ
ステムの有効性について示したが、以下にカルシウムイ
オン及び他のイオンについて濃度測定を行った関係式を
示す。塩化物イオン濃度については補正を行う必要はな
く、1つのイオン選択性電極のみで測定可能であるが、
カルシウムイオン、2価陽イオン、カリウムイオン濃度
測定については、塩化物イオン選択性電極の電極電位に
よる補正が必要である。なお、下記関係式において、C
iは溶液中のiイオン濃度[M]、Eiはiイオン選択性
電極の電極電位[mV]である。 【0050】 ・塩化物イオン 30℃:logC cl =−0.1124−0.0132E cl 40℃:logC cl =−0.0905−0.0127E cl 50℃:logC cl =−0.0600−0.0119E cl 60℃:logC cl =−0.0753−0.0116E cl 【0051】 【0052】 【0053】 【0054】以上の式から、塩化物イオン、カルシウム
イオン、2価陽イオン、カリウムイオンの濃度が求めら
れる。また、マグネシウムイオンについては、2価陽イ
オン濃度の測定値とカルシウム濃度の測定値との差をと
ることで算出可能である。ナトリウムイオン濃度につい
ては、塩化物イオン、2価陽イオン、カリウムイオン濃
度から結合計算により算出可能である。 【0055】表2に塩化物イオン選択性電極の電極電位
で補正を行わなかった場合と行った場合の相関係数につ
いて示した。いずれのイオンにおいても、補正を行わな
かった場合に比べて補正を行った場合にはかなりの直線
性の向上が見られ、相関係数0.980以上となってい
る。したがって、塩化物イオン選択性電極の電極電位に
よる補正は有効であり、本システムは実用上使用可能で
あることがわかる。 【0056】 【表2】 【0057】(4)温度補償機構について 本システムは、溶液温度30、40、50、60℃のデ
ータより、溶液温度30〜60℃で対応可能である。す
なわち、補間法により濃度測定を行う機構が付随してい
る。その温度補償の演算式について次に示す。この温度
補償機構を用いて溶液温度測定を行うことで、実工程の
溶液温度範囲30〜60℃での溶液組成測定が可能であ
る。 【0058】・塩化物イオンについて 30℃:log CCl30=a0+a1ECl30 40℃:log CCl40=a0'+a1'ECl40 50℃:log CCl50=a0''+a1''ECl50 60℃:log CCl60=a0'''+a1'''ECl60 であるとき 【0059】溶液温度30〜40℃(T℃)の場合 logCClT={(T-30)/10 }(a0' +a1'E Cl40) +{(40-
T)/10}}(a0 +a1ECl30) 溶液温度40〜50℃(T℃)の場合 logCClT={(T-40)/10}}(a0''+a1''E Cl50) +{(50-
T)/10}}(a0+a1'E Cl40) 溶液温度50〜60℃(T℃)の場合 logCClT={(T-50)/10}}(a0'''+a1'''ECl60)+{(60-
T)/10}}(a0''+a1''ECl50) 【0060】・その他のイオン(カルシウムイオン、2
価陽イオン、カリウムイオン)について 30℃:log Ci30=b0 +b1 Ei30+b2 ECl30 40℃:log Ci40=b0' +b1' Ei40+b2' ECl40 50℃:log Ci50=b0'' +b1'' Ei50+b2'' ECl50 60℃:log Ci60=b0''' +b1''' Ei60+b2''' E
Cl60 であるとき 【0061】溶液温度30〜40℃(T℃)の場合 log CiT={(T-30)/10}}(b0'+b1' Ei40+b2' E
Cl40)+{(40-T)/10}}(b0+b1 Ei30+b2 ECl30) 溶液温度40〜50℃(T℃)の場合 log CiT={(T-40)/10 }(b0''+b1'' Ei50+b2'' E
Cl50)+{(50-T)/10 }(b0'+b1' Ei40+b2' ECl40) 溶液温度50〜60℃(T℃の場合) log CiT={(T-50)/10}}(b0'''+b1''' Ei60+b2'''
ECl60)+{(60-T)/10}}(b0''+b1'' Ei50+b2'' E
Cl50) 【0062】(5)実工程への適用例 図6に本システムを製塩の実工程に適用した適用例につ
いて示した。濃縮缶は供給かん水を飽和まで濃縮する缶
である。また、濃縮缶では結晶を析出させないように、
しかもできるだけ飽和に近い状態まで溶液を濃縮するこ
とが、製品の品質、エネルギーコストの面で最適な操作
である。そこで、本システムを使用して濃縮缶缶内液の
組成を測定することにより、溶液を飽和に対して95%
まで濃縮するように制御を行った。 【0063】制御は、設定より濃縮が進んだ場合には供
給蒸気量を減らし、濃縮が足りない場合には供給蒸気量
を増やす操作で行った。本システムを使用した場合と使
用しなかった場合における濃縮缶缶内液の濃縮度の経時
変化を図7に示した。 【0064】同図より、本システムを使用した場合には
濃縮度は設定値95%程度でほぼ安定しているのに対
し、使用しない場合には濃縮度がばらつき、また結晶が
析出しないように飽和よりかなり低濃度までしか濃縮し
ていないことがわかる。以上より、本システムは濃縮缶
缶内液の制御に有効であることが認められた。 【0065】 【発明の効果】本発明の溶液組成測定システムは、測定
時にサンプル溶液を希釈することなく、またイオン強度
調整剤を添加することなく製塩工程における濃縮缶缶内
液の組成を測定することが可能であり、オンラインでリ
アルタイムに濃縮缶缶内液組成を正確に測定することが
できる。したがって、本発明の測定システムを用いるこ
とにより、製塩工程における晶析工程の最適自動制御が
でき、製品の安定生産が可能となる。また、本発明シス
テムは晶析操作の操作基準である濃縮缶缶内液の濃縮比
及び溶液の濃縮限界の決定に有効であり、製品品質の安
定化、エネルギー的な最適化を達成することができる。
さらに、一定の溶液温度範囲で温度補償を行うことによ
り、溶液の温度変化があっても濃縮缶缶内液組成を正し
く測定することができる。
ステムの概要を示す概略図である。
イオン強度の関係を示すグラフである。
ウムイオン濃度測定結果を示すグラフである。
おけるカルシウムイオン濃度測定結果を示すグラフであ
る。
る補正を行った場合におけるカルシウムイオン濃度測定
結果を示すグラフである。
例を示す概略図である。
用しない場合における濃縮缶缶内液の濃縮度の経時変化
を示すグラフである。
Claims (7)
- 【請求項1】 塩化物イオン選択性電極、カルシウムイ
オン選択性電極、2価陽イオン選択性電極、カリウムイ
オン選択性電極、前記各イオン選択性電極の参照電極及
び前記各イオン選択性電極の電極電位測定用イオンメー
タを備えた測定部と、前記各イオン選択性電極の電極電
位から各イオン濃度を演算する演算部とを具備し、支配
的陰イオン種が塩化物である溶液の組成を測定する溶液
組成測定システムであって、前記演算部が、前記塩化物
イオン選択性電極の電極電位から塩化物イオン濃度を演
算するとともに、前記カルシウムイオン選択性電極、2
価陽イオン選択性電極及びカリウムイオン選択性電極の
電極電位に重回帰法により前記塩化物イオン選択性電極
の電極電位に基づく全イオン強度補正を加えてカルシウ
ムイオン濃度、2価陽イオン濃度及びカリウムイオン濃
度を演算するものであることを特徴とする溶液組成測定
システム。 - 【請求項2】 製塩工程における濃縮缶缶内液を測定対
象とすることを特徴とする請求項1記載の溶液組成測定
システム。 - 【請求項3】 演算部が、塩化物イオン選択性電極の電
極電位から下記式 logC cl =a 0 +a 1 E cl C cl :塩化物イオン濃度[M] E cl :塩化物イオン選性電極の電極電位[mV] a j :定数(j=0,1) により塩化物イオン濃度を演算するものであることを特
徴とする請求項1または2記載の 溶液組成測定システ
ム。 - 【請求項4】 演算部が、カルシウムイオン選択性電
極、2価陽イオン選択性電極及びカリウムイオン選択性
電極の電極電位と塩化物イオン選択性電極の電極電位と
から下記式 logC i =b 0 +b 1 E i +b 2 E Cl C i :測定対象イオン濃度[M](i=Ca,Di
v.,K、ただしCaは カルシウムイオン、Div.は
2価陽イオン、Kはカリウムイオンを 示す) Ei :測定対象イオン選択性電極の電極電位[mV] E cl :塩化物イオン選択性電極の電極電位[mV] b j :定数(j=0,1,2) によりカルシウムイオン漕席、2価陽イオン澗度及びカ
リウムイオン濃度を演算するものであることを特徴とす
る請求項1〜3のいずれか1項に記載の 溶液組成測定シ
ステム。 - 【請求項5】 演算部が、演算した塩化物イオン濃度、
2価陽イオン濃度及びカリウムイオン漕度から結合計算
によりナトリウムイオン濃度を演算するものでることを
特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶液組
成測定システム。 - 【請求項6】 測定部が溶液温度補償用温度センサを備
えているとともに、演算部が各イオン選択性電極の電極
電位及び溶液温度から各イオン濃度を演算するものであ
ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載
の溶液組成測定システム。 - 【請求項7】 演算部が、溶液温度30℃〜60℃の範
囲で温度補償演算を行うものであることを特徴とする請
求項1〜6のいずれか1項に記載の溶液組成測定システ
ム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5279323A JP2702392B2 (ja) | 1993-11-09 | 1993-11-09 | 溶液組成測定システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5279323A JP2702392B2 (ja) | 1993-11-09 | 1993-11-09 | 溶液組成測定システム |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07128283A JPH07128283A (ja) | 1995-05-19 |
JP2702392B2 true JP2702392B2 (ja) | 1998-01-21 |
Family
ID=17609577
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5279323A Expired - Lifetime JP2702392B2 (ja) | 1993-11-09 | 1993-11-09 | 溶液組成測定システム |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2702392B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2702449B2 (ja) * | 1995-06-14 | 1998-01-21 | 財団法人塩事業センター | 製塩工程における溶液サンプリング装置 |
CN114910540A (zh) * | 2022-04-22 | 2022-08-16 | 中国科学院深圳先进技术研究院 | 晶体结晶过程的探测方法、控制方法和探测系统 |
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JPH0718835B2 (ja) * | 1985-06-26 | 1995-03-06 | 株式会社東芝 | イオン濃度の測定方法 |
IT1217581B (it) * | 1988-05-13 | 1990-03-30 | Instrumentation Lab Spa | Sistema di soluzioni tampone per la standardizzazione di analizzatori di ph ed elettroliti |
JPH04191650A (ja) * | 1990-11-26 | 1992-07-09 | Shimadzu Corp | イオン測定装置 |
-
1993
- 1993-11-09 JP JP5279323A patent/JP2702392B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH07128283A (ja) | 1995-05-19 |
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