JP2700609B2 - プレキャストコンクリート部材の接合凹部へのモルタル充填工法 - Google Patents

プレキャストコンクリート部材の接合凹部へのモルタル充填工法

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JP2700609B2
JP2700609B2 JP5319170A JP31917093A JP2700609B2 JP 2700609 B2 JP2700609 B2 JP 2700609B2 JP 5319170 A JP5319170 A JP 5319170A JP 31917093 A JP31917093 A JP 31917093A JP 2700609 B2 JP2700609 B2 JP 2700609B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,例えばセグメントなど
のようなプレキャストコンクリート部材同士をボルト,
ナットやPC鋼材を用いて接合するために設けられてい
る接合凹部(箱抜き部,ボルトボックス)に,吹き付け
工法でモルタルを充填する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】今日,都市の地下空間に地下道路,地下
鉄道,上下水道,電力通信ケーブルなどのトンネルを施
設するためにシールド工法が広く利用されている。シー
ルド工法は,立坑を築造して,その立坑からシールドと
呼ばれる強固な鋼殻を地山に嵌入し,シールドによって
保護された空間の前面で地山を掘削し,その後部でセグ
メント同士を組み立ててボルト,ナットやPC鋼材で接
合し,こうしてセグメントに反力をとらせながらシール
ドを前進させて,トンネルを増築する工法である。
【0003】以上のようなシールド工法に用いられるセ
グメントにあっては,セグメント同士をボルト・ナット
やPC鋼材を用いて接合するために接合凹部が設けられ
ているが,ボルト・ナットやPC鋼材の腐食を防ぐため
に,セグメント同士を接合後,その接合凹部にセメント
モルタルなどの防食材料を充填する方法が採られてい
る。ここで,接合凹部が横向きにあるいは下向きに開口
している場合は,充填したモルタルが流れ出さないよう
にする必要があり,従来は,形枠を配してその中に流動
性の良好なモルタルを注入する方法や,硬練りのモルタ
ルを塗り込む方法が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし,以上のような
従来工法は,何れも施工に手間がかかり,効率的な作業
ができないといった難点がある。一方,セグメントの接
合凹部に対しモルタルを吹き付け工法によって充填でき
れば施工は極めて容易になると考えられるが,そのため
には吹き付けられたモルタルが接合凹部から流出したり
落下したりしないように,吹き付けられてからすぐにモ
ルタルが凝結する必要がある。ところが,単に液体急結
剤を混入しただけのモルタルを用いたのでは,10cm
以上の厚さに一度に吹き付けられないという問題があっ
た。また,セメント系粉体急結剤を用いた場合は,粉塵
が大きくなるという問題があった。
【0005】従って本発明の目的は,横向きあるいは下
向きに開口している接合凹部に対しても吹き付け工法に
よって良好にモルタルを充填できる方法を提供すること
にある。
【0006】
【問題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに本発明にあっては,プレキャストコンクリート部材
をボルトナットで接合するために設けられた深さ10c
m以上の接合凹部にセメントモルタルを充填するに際
し,補強繊維,鉱物質微粉末,膨張材,減水剤を添加し
セメントモルタルに液状急結剤を混入したものを一次
吹き付け材として接合凹部の表層3〜5cmを除いて内
部に吹き付けで固着させ,その後,補強繊維,鉱物質微
粉末,膨張材,減水剤を添加したセメントモルタルを二
次吹き付け材として表層部に吹き付けるか,もしくは該
二次吹き付け材を表層部に塗り付ける構成とした。
【0007】そして,以上のように接合凹部へセメント
モルタルを充填した後に,こてで表面仕上げを行うよう
にした。また,液状急結剤は,吹き付けノズルにおいて
混入させることとした。なお,以上のように一次吹き付
け材と二次吹き付け材とに分けずに,補強繊維,鉱物質
微粉末,膨張材,減水剤を添加したセメントモルタルに
液状急結剤を混入したものを接合凹部の内部に吹き付け
て固着させる構成とした,より簡易な充填工法を併せて
提供する。
【0008】
【作用】吹き付け工法とは,モルタルミキサーやポンプ
などで構成される吹き付け装置を用いてモルタルを圧送
し,圧搾空気でノズル先端から吹き付けて所望の箇所に
モルタルを吹き付け施工する工法である。セグメントの
接合凹部は横向きや下向きに開口している場合があるか
ら,接合凹部に吹き付けられるモルタルには,自重によ
る流出や落下を防ぐために瞬時にして凝結し硬化する性
質が要求されるが,通常のモルタルに単に液体急結剤を
混入しただけでは10cm以上の厚さに一度に吹き付け
られず,また,セメント系粉体急結剤を用いると粉塵が
飛散し,作業環境が悪化する。そこで本発明にあって
は,補強繊維,鉱物質微粉末,膨張材,減水剤を添加し
たモルタルに液状急結剤を混入したものを吹き付け材と
して用いることにより,深さが10cm以上もあるよう
なセグメントの接合凹部に対して吹き付け工法によって
モルタルを充填することを可能とし,かつ,そのような
吹き付け工法によって平滑な仕上げができるようにした
ものである。
【0009】吹き付け工法に利用されるモルタルには以
上のような急硬性の他,適度な粘性やワーカビリティ
ー,コンシステンシーなども要求される。そこで本発明
にあっては,一次吹き付け材と二次吹き付け材の何れの
場合も補強繊維,鉱物質微粉末,膨張材,減水剤を添加
したモルタルを用いることとした。
【0010】なお,補強繊維をモルタルに添加すること
によってモルタルのダレを防止でき,また,鉱物質微粉
末をモルタル中に添加することにより,モルタルの粘性
を本発明方法に特に適したものとすることが可能にな
る。また,膨張材をモルタルに添加することによってモ
ルタルの収縮を補正し,これにより,モルタルのひび割
れや,コンクリート部材表面とモルタルとの境界面剥離
に起因して,ボルト・ナットやPC鋼材が腐食するとい
った問題を防止できるようになる。また,分散性の良好
な減水剤をモルタル中に添加してモルタルの水量を減少
させることにより,材料分離を防止し,吹き付け工法に
利用されるモルタルに要求されるワーカビリティー及び
コンシステンシーを満足させることが可能になる。かく
して,以上のような各材料をモルタルに配合することに
よって,プレキャストコンクリート部材の接合凹部に間
隙のない一体化したモルタルの充填施工を行うことが可
能になる。
【0011】また,湿式吹き付け装置で圧送してノズル
先端からモルタルを吹き付けるに際し,モルタル中にア
ルミン酸塩系の液状急結剤を圧搾空気で噴霧して急結剤
を混入させることにより,プレキャストコンクリート部
材の接合凹部に吹き付けた一次吹き付け材を吹き付け後
瞬時に凝結硬化させることができ,これにより,モルタ
ルが接合凹部から流出したり落下したりするのを防止で
きる。なお,表面仕上げには,鉄などの金属製の金ご
て,プラスチック製のこて,木製のこてなどを任意に利
用できる。
【0012】
【実施例】以下,実際に吹き付け工法を実施してモルタ
ルを充填した試験例をもとにして本発明の実施例を説明
する。 [試験1] (模擬試験体)先ず,図1〜3に示されるようなボルト
ボックスの模擬試験体1を作製し,その凹部2にモルタ
ルを吹き付け充填する試験を行った。模擬試験体1はR
Cコンクリート(設計基準強度:300kgf/c
2,スランプ:21cm,最大寸法:25mm)製
で,吹き付け試験開始まで三週間の気中養生を行って作
製した。セグメントの代表的な形状であるIV型を想定
し,凹部2の間口の大きさは開口部が23×34cm,
奥行きが39cmとなるようにした。なお,模擬試験体
1の上面には吊り下げ用のフック3を形成した。また,
一部の模擬試験体1については凹部2内に落下金物(図
示せず)を取り付けた。以上のようなボルトボックスの
模擬試験体1を図4〜6に示すように架台4,5,6で
支持することにより,凹部2の開口部が鉛直下向きから
それぞれ0゜(図4),45゜(図5),90゜(図
6)の方向に指向するように設置し,シールド坑内にお
いてそれぞれ天井面,斜面,垂直面でモルタルを吹き付
ける場合を想定した試験を行った。
【0013】(吹き付け方法)模擬試験体1の凹部2に
モルタルを吹き付け充填するに際し,先ず,モルタルに
液状急結剤を混入したものを一次吹き付け材として凹部
2の表層3〜5cmを除いて内部に吹き付けて固着さ
せ,その後,液状急結剤を混入しないモルタルを二次吹
き付け材として表層部に吹き付け,更に金ごてで表面仕
上げする方法を採用した。
【0014】(吹き付け材)吹き付け材は,以下の3種
類とした。先ず,工法Aの一次吹き付け材はセメント系
の断面修復材である株式会社エヌエムビー製の「エマコ
S88C(登録商標)」に水を加えたモルタルに液状急
結剤を混入させたもの,二次吹き付け材は「エマコS8
8C」に水を加えたものとした。「エマコS88C」
は,セメントに砂,プラスチック短繊維(補強繊維),
鉱物質微粉末,減水剤,膨張材が予め添加されている特
殊セメント系の補修用モルタル材である。また,工法B
の一次吹き付け材は「エマコS88C」に砂と水を加え
たモルタルに液状急結剤を混入させたもの,二次吹き付
け材は「エマコS88C」に砂と水を加えたものとし
た。また,工法Cの一次吹き付け材は住友セメント株式
会社製の普通ポルトランドセメントに砂と水を加えたモ
ルタルに液状急結剤を混入させたもの,二次吹き付け材
は普通ポルトランドセメントに砂と水を加えたものとし
た。なお,各吹き付け材の配合を表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】液状急結剤は株式会社エヌエムビー製のア
ルミン酸塩系液状急結剤である「ショットパッチB材」
を用いた。砂は株式会社エヌエムビー製の粒度調整され
た五mm以下の川砂である「ショットパッチC材」を用
いた。水は飲料用上水を用いた。
【0017】(吹き付け装置)一次吹き付け材について
は図7に示すように,パン型のモルタルミキサー10に
材料を投入後連続して三分間練り混ぜして得たモルタル
をモルタルポンプ11で圧送し,吹き付けノズル12に
おいてコンプレッサー13の圧搾空気によってモルタル
を吐き出し,上記した模擬試験体1の凹部2にモルタル
を吹き付け充填する構成とした。一次吹き付け材を圧送
するモルタルポンプ11として,新明和工業株式会社の
スネーク式ポンプ「DM−30」を使用し,吐出量を
0.7m3/hrとした。また,吹き付けノズル12から
モルタルを吹き付けるに際し,急結剤供給ポンプ14で
供給したアルミン酸塩系の液状急結剤を,コンプレッサ
ー13からの圧搾空気を利用してモルタル中に噴霧添加
し,前記凹部2に吹き付けられた一次吹き付け材が吹き
付け後瞬時に凝結硬化するようにした(図8参照)。
【0018】二次吹き付け材については図9に示すよう
に,パン型のモルタルミキサー15に全材料を投入後連
続して三分間練り混ぜして得たモルタルをモルタルポン
プ16で圧送し,吹き付けノズル17においてコンプレ
ッサー18の圧搾空気によってモルタルを吐き出す構成
とした(図10参照)。二次吹き付け材を圧送するモル
タルポンプ16として,新明和工業株式会社のスネーク
式ポンプ「DM−15」を使用し,吐出量を0.27m3
/hrとした。そして,二次吹き付け材を吹き付け充填
した後,手作業で金ごてで表面仕上げをした。
【0019】以上の条件の下で表2に示すNo.1〜6
の例について種々の測定を行った。No.1は工法Aの
一次吹き付け材と二次吹き付け材を,図4に示したよう
に鉛直下向き(天井面)に開口させた凹部2に対して吹
き付けた例である。No.2は工法Bの一次吹き付け材
と二次吹き付け材を,鉛直下向き(天井面)に開口させ
た凹部2に対して吹き付けた例である。No.3は工法
Bの一次吹き付け材と工法Aの二次吹き付け材を,鉛直
下向き(天井面)に開口させた凹部2に対して吹き付け
た例である。No.4は工法Bの一次吹き付け材と二次
吹き付け材を,図5に示したように鉛直下向きから45
゜の方向(斜面)に開口させた凹部2に対して吹き付け
た例である。No.5は工法Bの一次吹き付け材と二次
吹き付け材を,図6に示したように横向き(垂直面)に
開口させた凹部2に対して吹き付けた例である。No.
6は工法Cの一次吹き付け材と二次吹き付け材を,鉛直
下向き(天井面)に開口させた凹部2に対して吹き付け
た例である。
【0020】
【表2】
【0021】(コンシステンシー)先ず,各吹き付け材
のコンシステンシーをJIS A 1101「コンクリ
ートのスランプ試験方法」に従って測定した。なお,一
次吹き付け材については急結剤を添加する前のモルタル
において測定した。目標スランプと実測スランプを併せ
て表2に示す。
【0022】(リバウンド率)凹部2について各モルタ
ルを充填後,リバウンドによって落下したモルタルを集
めて重量を測定し,凹部2内に充填されたモルタルの重
量に対するリバウンド率を算出した。各吹き付け材のリ
バウンド率は,一次吹き付け材と二次吹き付け材の何れ
についても工法A(No.1,No.3の二次吹き付け
材)が最も小さく,工法B(No.2,No.3の一次吹
き付け材,No.4,No.5)は,工法Aよりもやや多
いリバウンド率を示した。また,垂直面,斜面,天井面
の何れの面に吹き付けた場合もリバウンド率に大きな差
は生じなかった。一方,工法C(No.6)は,一次吹
き付け材の吹き付け時に剥落を生じ,充填が不可能であ
った。
【0023】(粉塵)各吹き付け材について吹き付け時
の粉塵の程度を目視で観察した。粉塵の発生量は,工法
A,工法B,工法Cの何れの場合も,一次吹き付け材の
吹き付け時ではミストが見られるものの,粉塵量は少な
く,また,二次吹き付け材の吹き付け時では一次吹き付
け材と同様にミストは見られるものの,粉塵量は極微量
であった。
【0024】(だれ性状)各材料の吹き付け時のだれ性
状は,工法Aと工法B(No.1〜5)では,一次吹き
付け材及び二次吹き付け材の何れについてもだれは見ら
れなかった。一方,工法C(No.6)は一次吹き付け
材の吹き付け終了の数分後に自立できず,凹部2から吹
き付け材が剥離し,落下を生じた。
【0025】(こて仕上げ性)工法Aの二次吹き付け材
を用いたNo.1とNo.3については吹き付け終了の2
0〜40分後に第1回目のこてがけを行ったところ,ノ
ロ上がりも良く仕上げ性は良好であった。一方,工法B
の二次吹き付け材を用いたNo.2,No.4,No.5
については吹き付け終了の約60分後に第1回目のこて
がけを行った。工法Bの吹き付け材は工法Aの吹き付け
材に砂を混入したものであるから,ざらつきが多く,ま
た,材料の粘性も工法Aよりも低く,特に天井面等をこ
て仕上げする場合,早くこてがけを実施するとだれを生
じる恐れがあるので,工法Aの場合よりもこてがけのタ
イミングを遅らせた。その結果,工法Bの二次吹き付け
材は,工法Aの二次吹き付け材よりもノロ上がりが若干
悪く,仕上げ性に劣った。また,こて仕上げに時間を要
した。なお,工法Cは,一次吹き付け材の充填時に剥落
を生じ,充填施工が不可能であったため,こて仕上げ性
は調査できなかった。
【0026】(充填状態)ボルトボックス充填後,模擬
試験体を7日間現場養生し,各試験条件につき試験体を
1体づつダイアモンドカッターで切断して,ボックス内
部の充填状態を観察した。工法A(No.1,No.3の
二次吹き付け材)は,鬆は発生していなかった。一方,
工法B(No.2,No.3の一次吹き付け材,No.
4,No.5)は,何れの場合も切断面に若干だれ落ち
と鬆が見られ,特に落下防止金物を設置したものは金物
の近傍に鬆が多く発生した。工法C(No.6)は,一
次吹き付け材が剥落してしまったため観察できなかっ
た。
【0027】(ひび割れの有無)No.1〜5について
吹き付け施工より1ケ月経過した時点での表面観察を行
ったが,ひび割れは観察されなかった。
【0028】(硬化単位容積質量)工法A,工法B,工
法Cのそれぞれの一次吹き付け材と二次吹き付け材につ
いて硬化単位容積質量を調べた。その結果を表3に示
す。各材料の硬化単位容積質量は,工法A,工法B,工
法Cの何れも,一次吹き付け材が2.13〜2.16の範
囲であり,二次吹き付け材が2.18〜2.25の範囲で
あった。一次吹き付け材と二次吹き付け材の硬化単位容
積質量の差は,単位水量の違いによるものと考えられ
る。
【0029】(圧縮強度)先ず,標準供試体による圧縮
強度試験を行った。直径5cm×高さ10cmの鋼製型
枠に急結剤を添加しない一次吹き付け材と二次吹き付け
材を採取し,キャッピング整形後20℃の水中で養生し
た。圧縮強度試験はJIS A 1108「コンクリー
トの圧縮強度試験方法」に従って行った。試験材令は1
日,3日,7日,28日の4材令とした。その結果を表
3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】また,材令と圧縮強度の関係を図11に示
した。
【0032】(圧縮強度)次に,コア供試体による圧縮
強度試験を行った。縦30cm×横50cm(二次吹き
付け材は10cm)の合板型枠に一次吹き付け材と二次
吹き付け材を吹き付けて現場で養生した。硬化後,径5
cmのコアビットでボーリングを行い,両端面を整形し
て圧縮強度試験を行った。試験材令は7日,28日とし
た。その結果を表3に示す。また,材令と圧縮強度の関
係を図12に示した。コア供試体による一次吹き付け材
の圧縮強度は,急結剤使用の影響によって,急結剤を使
用していない標準供試体と比較して約20%程度の強度
低下が見られた。また,二次吹き付け材の圧縮強度は,
標準供試体と比較して材令7日では若干上回るが,28
日では若干低下する傾向を示した。養生条件が起因して
いるものと思われる。
【0033】(乾燥収縮率)工法A,工法B,工法Cの
それぞれの二次吹き付け材をゲージプラグを取り付けた
4cm×4cm×16cmの鋼製型枠に採取し,JIS
A 1129「モルタル及びコンクリートの長さ変化
試験方法」のダイヤルゲージ法に従って材令3ケ月まで
の長さ変化を測定した。その結果を表4に示す。また,
材令と長さ変化の関係を図13に示した。
【0034】
【表4】
【0035】(透水性)工法A,工法B,工法Cのそれ
ぞれの二次吹き付け材を直径10cm×高さ20cmの
鋼製型枠に採取し,28日間20℃の水中で養生した
後,供試体の両端面を平滑に仕上げ,7日間20℃の室
内で乾燥させた。供試体を透水性試験機内に設置し,周
囲に樹脂を充填して水密にした。そして,15kgf/
cm2の水圧を48時間加えた後,割裂し水の浸透部を
着色して断面を撮影した。平均浸透深さを測定し,水の
拡散係数を算出した。その結果を表4に示す。何れの吹
き付け材も一般的なコンクリートの拡散係数(10×1
-4cm2/sec)と比較して非常に小さな値であっ
た。モルタルの場合,コンクリートと比較して骨材界面
の面積が小さくなることにより,透水性が有利に働くも
のと考えられる。なお,工法Aと工法Bの二次吹き付け
材の透水性が工法Cの二次吹き付け材の透水性よりも更
に小さい理由は,「エマコS88C」中の鉱物質微粉末
の存在によるものと考えられる。
【0036】(試験1についての考察)以上の試験1の
結果から,工法Aは充填性,施工性及び物性の面で最も
優れた結果を示すことが分かった。また,工法Bは工法
Aと比較すると,充填性,施工性及び物性のすべての面
で若干劣っているが,ボルトボックス充填材としての性
能は十分満足しており,加えて,砂を混ぜているため経
済性の点で大きく優れていることが分かった。一方,工
法Cは普通セメントに対する急結剤の効果が十分発揮さ
れず,急結剤の添加量を増加させても自重に耐えきれず
に剥落してしまい,セグメントの接合凹部に対する充填
材として不適当であることが分かった。
【0037】[試験2] (試験体)実物のRCセグメントを使用して,ボルトボ
ックスを吹き付け工法で充填施工し,吹き付け材とボル
トボックスの付着強度の測定を行った。図14に示すよ
うに,実物のRCセグメント20に形成されたボルトボ
ックス21の内面に粘着テープ22を貼り付け,ボルト
ボックス21に充填された吹き付け材が乾燥収縮した場
合の吹き付け材とボルトボックス21内面との縁切り状
態を想定した試験を行った。また,図15に示すよう
に,ボルトボックス21の内部に吹き付け材の脱落防止
金具23を装着した。脱落防止金具23はリング間ボル
ト24に半切りナット25を螺合させて固定した。ま
た,ボルトボックス21の内部中央にはボルトボックス
21に充填した吹き付け材の付着試験を行うための引き
抜き治具26を配置した。引き抜き治具26はセグメン
ト20に取り付けた設置金具27で固定した。設置金具
27は吹き付け充填後,直ちに取り除くこととした。な
お,ピースリング間ボルトボックスとリング間専用ボル
トボックスの二種類について吹き付け充填して試験を行
った。
【0038】(吹き付け材)吹き付け材は,試験1で用
いた工法Bの一次吹き付け材と二次吹き付け材を用い,
下向き(天井面)に開口させたセグメント20のボルト
ボックス21に対して,試験1と同様に,先ずモルタル
に液状急結剤を混入させたものを一次吹き付け材として
ボルトボックス21の表層3〜5cmを除いて内部に吹
き付けて固着させ,その後,液状急結剤を混入しないモ
ルタルを二次吹き付け材として表層部に吹き付けた。そ
して,室内において気中養生した。一次吹き付け材と二
次吹き付け材の配合を表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】(コンシステンシー)一次吹き付け材と二
次吹き付け材のコンシステンシーをJIS A 110
1「コンクリートのスランプ試験方法」に従って測定し
た。なお,一次吹き付け材については急結剤を添加する
前のモルタルにおいて測定した。測定結果を併せて表5
に示す。
【0041】(圧縮強度)また,一次吹き付け材につい
てJSCE−1986「はりによる吹き付けコンクリー
トの初期強度試験方法」に準じて供試体を作製し,JI
S A 1114「はりの折片によるコンクリートの圧
縮強度試験方法」に従って圧縮強度試験を行った。試験
材令は9日とし,供試体は型枠に入れたまま室内で気中
養生した。圧縮強度の試験結果を併せて表5に示す。
【0042】(試験装置)図16に示すように,ボルト
ボックス22の回りに架台28を設置し,養生させた吹
き付け材の中央に埋設された引き抜き治具26をジャッ
キ29で引き抜くように荷重を加えた。荷重は,0kg
f→100kgf→0kgfを1サイクルとして4回繰
り返して載荷し,その後,吹き付け材が破壊するまで,
もしくは6500kgf(引き抜き治具26の伸びが著
しくなる荷重)になるまで荷重を加えた。そして,引き
抜き荷重をロードセル30で測定すると共に,ひずみ計
31で吹き付け材の抜け出し量を測定した。なお,以下
のa〜dの四種類の供試体について試験を行った。 a:ピースリング間ボルトボックスの内面に粘着テープ
を貼り付けて吹き付け充填した。 b:リング間専用ボルトボックスの内面に粘着テープを
貼り付けて吹き付け充填した。 c:ピースリング間ボルトボックスの内面に粘着テープ
を貼り付けないで吹き付け充填した。 d:リング間専用ボルトボックスの内面に粘着テープを
貼り付けないで吹き付け充填した。
【0043】(試験結果)付着試験の結果を表6に示
す。また,荷重と抜け出し量の関係を図17,18に示
す。
【0044】
【表6】
【0045】粘着テープを貼り付けてボルトボックスの
内面と吹き付け材を縁切り状態にした供試体aとbはそ
れぞれ2.0tと0.6tから変位が増し(脱落防止金具
の伸び),吹き付け材がセグメントから剥離し始めた。
更に荷重を上げると供試体aは4.0tで完全に離脱
し,供試体bは1.3tで完全に離脱した。この離脱は
脱落防止金具のボルト穴周囲の引張破壊によるもので,
吹き付け材自体が破壊を起こしたものではなかった。供
試体c,dは4.5t〜5.0tの荷重で変位が増した
が,これは引抜き治具の伸びであると考えられる。
【0046】(試験2についての考察)以上の試験2の
結果から,工法Bの吹き付け材を用いて充填した場合
は,例えボルトボックス内面と全体的に縁切れを起こし
たとしても,吹き付け材の自重程度の荷重によっては,
ボルトボックスから落下する心配のないことが分かっ
た。
【0047】[試験3]下向き(天井面)に開口するセ
グメントのボルトボックスに工程Bの一次吹き付け材を
吹き付け充填し,直ちに金ごてと,バイブレーターの先
端に平板を取り付けたこて型バイブレーターとによって
表面仕上げを行い,表面の仕上げ状況を目視にて観察
し,両者の比較を行った。その結果,金ごてを用いて表
面の仕上げを行った場合は,比較的良好な表面仕上げが
行えた。一方,こて型バイブレーターを用いて表面の仕
上げを行った場合は,平板の表面に剥離剤を塗布しても
吹き付け材が付着してしまい,良好な仕上げができなか
った。こて型バイブレーターの実用化にはかなりの改良
が必要と思われる。なお,金ごてによって表面仕上げを
する方法として,以下の二通りの方法が考えられる。 (金こて切削法)ボルトボックスから吹き付け材が若干
溢れるように,一次吹き付け材を少し多めに充填し,吹
き付け後に半乾き状態において金こてで余分な部分を削
り落としセグメント表面と面一にする方法である。この
方法は,材料をロスするものの,こて仕上げのタイミン
グの自由度が大きく,またさほどの熟練を要しないとい
った利点がある。 (金こて左官法)一次吹き付け材の吹き付け量が十分で
なかった場合に部分的にできた凹部に,別に練った二次
吹き付け材を補う方法である。この方法は,こて仕上げ
のタイミングが難しく,左官の熟練を要するものの,繰
り返し仕上げができるといった利点がある。
【0048】(まとめ)以上を総合的に考察すると,良
好な表面仕上げが求められる場合は,試験1や試験2で
行ったように,急結剤を混入させた一次吹き付け材と急
結剤を混入させない二次吹き付け材を用いたいわゆる二
段階施工が有利であり,一方,表面仕上げの程度があま
り高く要求されない場合は,試験3で行ったような急結
剤を混入させた一次吹き付け材のみを用いた吹き付け工
法によって充填施工できることが分かった。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば,施工が比較的簡単な吹
き付け工法によって深さが10cm以上もあるようなセ
グメントの接合凹部に対してモルタルを充填することが
可能となる。また,セメント系粉体急結剤を用いていな
いので,粉塵の飛散といった問題がなく,良好な作業環
境を得ることができ,特にシールドのような密閉雰囲気
において,絶大なる効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験1に用いた模擬試験体の正面図
【図2】模擬試験体の底面図
【図3】図1A−A断面矢視図
【図4】模擬試験体の設置状態図(天井面)
【図5】模擬試験体の設置状態図(斜面)
【図6】模擬試験体の設置状態図(垂直面)
【図7】一次吹き付け材の吹き付け装置の説明図
【図8】一次吹き付け材の吹き付けノズルの拡大図
【図9】二次吹き付け材の吹き付け装置の説明図
【図10】二次吹き付け材の吹き付けノズルの拡大図
【図11】材令と圧縮強度の関係を示すグラフ図(標準
供試体)
【図12】材令と圧縮強度の関係を示すグラフ図(コア
供試体)
【図13】材令と長さ変化の関係を示すグラフ図
【図14】試験2に用いたボルトボックスの断面図
【図15】脱落防止金具と引き抜き治具の取り付け状態
を示すボルトボックスの断面図
【図16】試験2の試験装置の説明図
【図17】荷重と抜け出し量の関係を示すグラフ図
【図18】荷重と抜け出し量の関係を示すグラフ図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原 廣 東京都港区元赤坂一丁目3番8号 鹿島 建設株式会社 東京支店内 (72)発明者 瀬月内 修一 東京都港区元赤坂一丁目3番8号 鹿島 建設株式会社 東京支店内 (72)発明者 根本 佳明 東京都港区元赤坂一丁目3番8号 鹿島 建設株式会社 東京支店内 (72)発明者 池田 捷也 東京都港区六本木3丁目16番26号 株式 会社エヌエムビー内 (56)参考文献 特開 平5−332096(JP,A) 特開 昭63−138098(JP,A) 特開 平3−122040(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プレキャストコンクリート部材をボルト
    ナットで接合するために設けられた深さ10cm以上の
    接合凹部にセメントモルタルを充填するに際し,補強繊
    維,鉱物質微粉末,膨張材,減水剤を添加したセメント
    モルタルに液状急結剤を混入したものを一次吹き付け材
    として接合凹部の表層3〜5cmを除いて内部に吹き付
    けで固着させ,その後,補強繊維,鉱物質微粉末,膨張
    材,減水剤を添加したセメントモルタルを二次吹き付け
    材として表層部に吹き付けるか,もしくは該二次吹き付
    け材を表層部に塗り付けることを特徴とするプレキャス
    トコンクリート部材の接合凹部へのモルタル充填工法。
  2. 【請求項2】 プレキャストコンクリート部材をボルト
    ナットで接合するために設けられた深さ10cm以上の
    接合凹部にセメントモルタルを充填するに際し,補強繊
    維,鉱物質微粉末,膨張材,減水剤を添加したセメント
    モルタルに液状急結剤を混入したものを接合凹部の内部
    に吹き付けて固着させることを特徴とするプレキャスト
    コンクリート部材の接合凹部へのモルタル充填工法。
  3. 【請求項3】 最後に,こてで表面仕上げすることを特
    徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンク
    リート部材の接合凹部へのモルタル充填工法。
  4. 【請求項4】 液状急結剤は,吹き付けノズルにおいて
    混入させることを特徴とする請求項1,2,3の何れか
    にに記載のプレキャストコンクリート部材の接合凹部へ
    のモルタル充填工法。
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