JP2700342B2 - 磁性体薄膜 - Google Patents

磁性体薄膜

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ビデオテープレコーダ(VTR)の磁気ヘッ
ドに好適な磁性体薄膜に関する。
〔従来の技術〕 VTR等の磁気ヘッドは、記録の高密度化に伴って、高
飽和磁化、高透磁率を有する軟磁性体膜を必要としてい
る。近年は、センダストやCo系アモルファス等の飽和磁
化の大きい合金をスパッタリング成膜し、磁気ヘッドに
利用することが行われている。
しかしながら、さらに大きな飽和磁化を得るために、
鉄に富む、Fe−M−C(M:Zr,Ta,Hf,Nbなど)系膜にお
いて、適当な熱処理を施すことにより、スパッタ成膜時
にはアモルファスであって膜を微結晶析出させた材料が
開発されている。この膜は、鉄に富むことから、最大16
KG程度の飽和磁化を持ち、微結晶であることから良好な
軟磁気特性を示す。さらにMの炭化物が結晶粒界に折出
することにより、加熱による結晶粒成長が鈍く、軟磁気
特性は600℃程度まで安定である(信学技報MR89−12(1
989))。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記の膜は、鉄を成分とした微結晶粒の粒界にMの炭
化物が析出した構造となっているが、鉄微結晶粒は体心
立方格子の(110)面が膜面に平行となる、いわゆる、
(110)配向膜となっている。ところで、鉄膜は、(11
0)配向膜と(100)配向膜とが形成可能なことが知られ
ている。(例えば信学技報MR86−22,(1986))この(1
10)配向膜と(100)配向膜の膜面内に磁界を印加した
ときの結晶磁気異方性エネルギーは、(100)配向膜の
方が小さい(J.of the Magnetics Society of Japan Vo
l.13,Supplement,No.SI(1989))。すなわち、上記Fe
−M−C膜は、(110)配向膜であることから、今だ軟
磁気特性改善の余地を残している。
本発明は、軟磁気特性の向上を図ることができる磁性
体薄膜を提供することを目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的を達成するために、本発明に係る磁性体薄
膜は、鉄を母材とする体心立方格子構造の多数の合金微
結晶粒からなる磁性体薄膜において、前記各微結晶粒の
(100)面が膜面に平行に配向し、前記膜面に平行した
<010>軸の方向がランダムであり、かつ前記微結晶粒
界に合金成分の炭化物または窒化物が析出していること
を特徴としている。
微結晶粒は、平均直径が100Å以下であることが望ま
しい。
〔作用〕
一般に、磁気ヘッド用磁性体薄膜は、磁化の方向が膜
の面内にある。また、鉄は、結晶構造が体心立方格子を
とり、結晶磁気異方性の磁化容易軸が<100>軸方向に
ある。従って、上記の如く構成した本発明は、微結晶粒
の体心立方格子の(100)面が膜面と平行となっている
ため、この膜面と平行な(100)面に平行した<010>軸
方向が膜と平行となり、しかもその方向がランダムであ
るため、膜面内での結晶の磁気異方性エネルギーが小さ
くなって高透磁率が得られ、保磁力も小さくなる。そし
て、結晶粒界に炭化物または窒化物を析出させたことに
より、この炭化物または窒化物が、磁性体薄膜を磁気ヘ
ッドに加工する際の熱工程における磁性体薄膜の微結晶
粒の成長を妨げ、透磁率の低下、保磁力の増大を防止す
る。
X線回折パタンを用いScherrerの式から算出した結晶
粒の平均直径を100Å以下にすると、保磁力が大きくな
るのを防止できる。
〔実施例〕
鉄を主成分とする磁性体薄膜は、鉄ターゲットの上に
金属M〔Mはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、
タンタル(Ta)、チタニウム(Ti)、ニオブ(Nb)〕の
チップと炭素チップとを配置し、スパッタリングによっ
て基板上にアモルファス膜を形成して得ることができ
る。そして、このアモルファス膜を熱処理して微結晶化
するとともに、結晶粒界に合金成分であるMの炭化物を
析出させる。
この熱処理を膜面と平行な磁界中、特に回転磁界中に
おいて行うと、結晶粒の(100)面を膜面と平行にする
ことができ、また膜面に平行な<010>軸の方向をラン
ダムにできる。そして、析出した炭化物が、磁性体薄膜
を磁気ヘッドに加工する際の熱工程における結晶粒の成
長を妨げ、X線回折パタンを用いScherrerの式から求め
た結晶粒の平均粒径を100Å以下に保つ。
スパッタリングの条件は、通常のスパッタリング条件
でよい。また、膜面に平行に印加する磁界は、600Oe以
上であれば充分である。そして、熱処理の条件は、500
〜600℃の雰囲気中に30分〜2時間程度保持すればよ
い。600℃より高湿で熱処理を行うと、結晶粒が100Å以
上になるおそれがある。また、500℃以下では、炭化物
の析出が充分でなかったり、充分結晶化できないおそれ
がある。
一方、基板上にMgOの下地膜を形成し、この下地膜上
に鉄を主成分とするFe−S−Nの磁性体薄膜を形成する
と、結晶粒の(100)面が膜面と平行に配向し、膜面と
平行した<010>軸がランダムな結晶粒からなる磁性体
薄膜が得られる。ただし、ここにSは、アルミニウム
(Al)、ガリウム(Ga)、ケイ素(si)、ゲルマニウム
(Ge)である。
この場合、磁性体薄膜を形成するときに、鉄ターゲッ
ト上に添加物Sのチップを配置し、アルゴンガス+窒素
ガスの雰囲気中においてスパッタリングを行う。Fe−S
−Nの磁性体薄膜を形成した後、500〜600℃において30
分から2時間熱処理を行うと、結晶粒界にSの窒化物を
析出させることができる。そして、析出した窒化物が、
磁気ヘッドに加工する際の熱工程における結晶粒の成長
を妨げ、Scherrerの式から、求めた結晶粒の平均粒径を
100Å以下に保つ。
<第1実施例> 本発明の磁気ヘッド用磁性体薄膜の好ましい実施例
を、添付図面に従って詳説する。
20.32cm(8インチ)の鉄ターゲット上にZrと炭素と
のチップを配置し、真空チャンバ内を1×10-6Torrの真
空度にした後、アルゴンガスを供給して2×10-3Torrの
アルゴンガス雰囲気にし、1kWの電力を供給してマグネ
トロンスパッタにより、第1図(A)に示したように基
板10上にFeZrCの組成を有するアモルファス磁性体薄膜
を2.5μm形成した。次に、このアモルファス膜を膜面
に沿った710Oeの磁界中において、600℃の温度で30分間
保持して熱処理をし、アモルファス膜を結晶化させて磁
性微結晶粒からなる磁性体薄膜12にした。
このようにして形成した磁性体薄膜12を、Cuのkα線
を用いてX線回折を行った結果、第2図(A)に示した
ように(200)面に強度のピークが現れ、結晶粒の(10
0)面が膜面に平行に配向していることが確認できた。
また、磁性体薄膜12を電子顕微鏡により観察をした結
果、第1図(B)に模式図を示したように、各結晶粒16
の粒界にZrの炭化物18が観察された。
そして、磁性体薄膜12の磁性結晶粒16のScherrerの式
から求めた平均直径は、100Å以下てあった。なお、第
1図(B)に示した矢印20は、磁性体薄膜12の膜面に垂
直な<100>軸方向を示す。
第3図、第4図は、上記のように形成した磁性体薄膜
12の飽和磁化(4πMs)と保磁力(Hc)との特性を示し
たものである。
第3図は、磁性体薄膜12の炭素Cの含有量を10.1〜1
2.4at%に保持したときの、飽和磁化(4πMs)と保磁
力HcとのZr依存性を示したものである。また、第4図
は、磁性体薄膜12のZrの含有量を6.2〜7.3at%にし保持
したときの、飽和磁化(4πMs)と保磁力HcとのC依存
性を示したものである。
磁気ヘッド用磁性体薄膜は、飽和磁化が大きく、保磁
力が1以下であることが望ましい。従って、第3図、第
4図の結果から、磁性体薄膜12のZrの含有量は5〜10at
%が望ましく、またCの含有量は7〜20at%が望ましい
ことがわかる。
このようにして得たFeZrCからなる磁性体薄膜12は、
ヘッドに加工する際の熱工程においても磁気特性に殆ど
変化がなく、高性能の磁気ヘッドが得られた。
上記実施例においては、FeZrCからなる磁性体薄膜12
について説明したが、Zrに代えてHf,Ta,Ti,Nbを用いて
も同様の効果を得ることができ、またZr,Hf,Ta,Ti,Nbの
複数を合金の組成に含めてもよい。
<第2実施例> 鉄ターゲット上にアルミニウム(Al)のチップを配置
し、真空チャンバ内にアルゴンガスと窒素ガスを供給
し、窒素のガス圧を0.1×10-3Torr、全ガス圧を2×10
-3Torrであるアルゴンガス+窒素ガス雰囲気にし、表面
にMgOからなる約250Åの下地膜を作成したガラス基板10
上に、第1実施例と同様にしてFeAlNからなる磁性体薄
膜12を2.5μm成膜した。このように形成したFeAlNの膜
は、(100)面が膜面と平行に配向することが知られて
いる(例えば、第13回日本応用磁気学会学術講演概要集
(1989)、細野彰彦、島田寛による「Fe−Si膜の配向性
と軟磁気特性」)。
その後、FeAlN膜を、500℃の温度で1時間保持してア
ニール処理を行った。
その結果、第2図(B)に示したように(200)面方
向に回析ピークが現れ、結晶粒の(100)面が膜面と平
行に配向していることが確認された。また、電子顕微鏡
による観察によって、結晶粒界にAl窒化物が析出してい
ることを観察できた。
第5図は、上記のようにして形成したFeAlNの窒素N
の含有量を5〜20at%に維持し、Alの含有量を変化させ
たときの保磁力の変化を示したものである。また、第6
図は、FeAlN膜のAlの含有量を2〜10at%にし、Nの含
有量を変化させたときの保磁力の変化を示したものであ
る。
これらの図から、Alは5〜20at%、Nは5〜20at%の
FeAlN膜が磁気ヘッドの材料として適していることがわ
かる。なお、Alに代えてGa,si,Geを用いても同様の効果
を得ることができ、またこれらの複数を合金の組成とし
て含んでいてもよい。
〔発明の効果〕
以上に説明したように、本発明によれば、鉄を主成分
とする微結晶粒からなる磁性体薄膜の結晶粒の(100)
面を膜面と平行に配向し、膜面と平行な<010>軸をラ
ンダムにするとともに、結晶粒界に合金成分の炭化物ま
たは窒化物を析出させたことにより(110)配向膜以上
に良好な軟磁気特性を有し、かつ、磁気ヘッドの熱工程
においても結晶粒が成長することがなく、透磁率の低下
を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例に係る磁気ヘッド用磁性体薄
膜の説明図、第2図は、実施例のX線回析の結果を示す
図、第3図は、実施例に係るFeZrC膜の飽和磁化と保磁
力とのZr依存性を示す図、第4図は、実施例に係るFeZr
C膜の飽和磁化と保磁力とのC依存性を示す図、第5図
は、実施例に係るFeAlN膜の保磁力のAl依存性を示す
図、第6図は、実施例に係るFeAlN膜の保磁力のN依存
性を示す図である。 10……基板 12……磁性体薄膜 16……結晶粒 18……炭化物

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉄を母材とする体心立方格子構造の多数の
    合金微結晶粒からなる磁性体薄膜において、前記各微結
    晶粒の(100)面が膜面に平行に配向し、前記膜面に平
    行した<010>軸の方向がランダムであり、かつ前記微
    結晶粒界に合金成分の炭化物または窒化物が折出してい
    ることを特徴とする磁気ヘッド用磁性体薄膜。
  2. 【請求項2】前記微結晶粒は、平均直径が100Å以下で
    あることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッド用磁
    性体薄膜。
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