JP2695469B2 - スチレン系重合体の製造装置及び製造方法 - Google Patents

スチレン系重合体の製造装置及び製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、スチレン系重合体の製造装置及び製造方法
に関し、詳しくは、重合体連鎖の立体化学構造が主とし
てシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を
効率よく製造する装置及び方法に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
従来、スチレン系重合体として、その立体化学構造が
アタクチック構造のもの及びアイソタクチック構造のも
のはよく知られているが、最近この立体化学構造が主と
してシンジオタクチック構造であるスチレン系重合体の
開発が行われつつあり、例えば特開昭62−187708号公報
等に開示されている。
しかしながら、シンジオタクチック構造を有するスチ
レン系重合体は、その製造段階において、転化率が20%
程度で系全体が固相化するが、重合反応が転化率70%程
度まで進行する。そのため、従来のパドル翼等の攪拌翼
を具備した反応器で重合反応を行うと、液相からシンジ
オタクチック構造を有するスチレン系重合体が析出する
際に、その粒径が約5mm以上の巨大粒子が生成し、これ
が乾燥効率の低下の原因になっていた。さらに攪拌によ
る剪断力が及ばない部分では、これらの粒子が塊状に固
化し、重合反応終了時には反応器の内部壁面,攪拌翼,
熱電対等の器内突起物に重合体が付着してしまうという
問題がある。
そこで、本発明者らは、重合物の後処理を容易にする
ために、生成する重合物の粒径を制御可能とするととも
に、重合反応中に生成する重合物の反応器内部への付着
を防止でき、効率よくシンジオタクチック構造を有する
スチレン系重合体を製造することのできる装置及び方法
を開発すべく、鋭意研究を重ねた。
〔課題を解決するための手段〕
その結果、適当な装置を用いて、充分な剪断力を加え
ながら重合反応を行うことにより、上記課題を解決でき
ることを見出した。本発明はかかる知見に基いて完成し
たものである。
すなわち、本発明は主としてシンジオタクチック構造
を有するスチレン系重合体を製造する装置であって、略
円筒状の反応容器と、該反応容器内に回転可能に設けら
れた複数のフラットパドルまたは傾斜パドルを有する撹
拌翼と、該反応容器の軸長さの底部から少なくとも1/4
以上の上部に位置する前記パドルの先端に装着されたス
クレーパとを備え、該スクレーパは、その先端と反応容
器の内壁との間隔を10mm以下とし、かつ上下のスクレー
パの回転放送の位相をずらして設けたことを特徴とする
スチレン系重合体の製造装置を提供するとともに、スチ
レン系モノマーを重合して主としてシンジオタクチック
構造を有するスチレン系重合体を製造するにあたり、略
円筒状の反応容器に、撹拌翼として複数のフラットパド
ルまたは傾斜パドルを備え、反応容器の軸長さの底部か
ら1/4以上の上部に位置する前記パドルの先端に、その
先端と反応容器の内壁との間隔を10mm以下としたスクレ
ーパを、回転方向の位相をずらして装着した反応装置を
用いてスチレン系モノマーを撹拌し、重合することを特
徴とするスチレン系重合体の製造方法を提供するもので
ある。
本発明において製造される重合体は、主としてシンジ
オタクチック構造を有するスチレン系重合体である。こ
こで、スチレン系重合体における主としてシンジオタク
チック構造とは、立体化学構造が主としてシンジオタク
チック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に
対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に
反対方向に位置する立体構造を有することを意味し、そ
のタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(
13C−NMR法)により定量される。13C−NMR法により測定
されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位
の存在割合、例えば2個の場合はラセミダイアッド,3個
の場合はラセミトリアッド,5個の場合はラセミペンタッ
ドによって示すことができるが、本発明に言う「主とし
てシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体」
とは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは
85%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ま
しくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポ
リスチレン,ポリ(アルキルスチレン),ポリ(ハロゲ
ン化スチレン),ポリ(アルコキシスチレン),ポリ
(ビニル安息香酸エステル)及びこれらの混合物、ある
いはこれらを主成分とする共重合体を意味する。なお、
ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチ
ルスチレン),ポリ(エチルスチレン),ポリ(イソプ
ロピルスチレン),ポリ(ターシャリーブチルスチレ
ン)等があり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、
ポリ(クロロスチレン),ポリ(ブロモスチレン),ポ
リ(フルオロスチレン)等がある。また、ポリ(アルコ
キシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン),
ポリ(エトキシスチレン)等がある。これらのうち特に
好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン,ポ
リ(p−メチルスチレン),ポリ(m−メチルスチレ
ン),ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン),ポリ
(p−クロロスチレン),ポリ(m−クロロスチレ
ン),ポリ(p−フルオロスチレン)、さらにはスチレ
ンとp−メチルスチレンとの共重合体をあげることがで
きる。
本発明により製造されるスチレン系重合体は、一般に
重量平均分子量5,000以上、好ましくは10,000〜20,000,
000、数平均分子量2,500以上、好ましくは5,000〜10,00
0,000のものであり、上記のようにシンジオクタティシ
ティーの高いものであるが、重合後、必要に応じて塩酸
等を含む洗浄液で脱灰処理し、さらに洗浄,減圧乾燥を
経てメチルエチルケトン等の溶媒で洗浄して可溶分を除
去し、得られる不溶分をさらにクロロホルム等を用いて
処理すれば、極めてシンジオタクティシティーの大きい
高純度のスチレン系重合体が入手できる。
上記の如き主としてシンジオタクチック構造を有する
スチレン系重合体は、例えば不活性炭化水素溶媒中また
は溶媒の不存在下に、チタン化合物及び有機アルミニウ
ム化合物と縮合剤との接触生成物からなる触媒を存在さ
せ、スチレン系モノマー(上記スチレン系重合体に対す
るモノマーであり、スチレンあるいはその誘導体)を重
合することにより製造することができる。
ここで、上記触媒として用いられるチタン化合物とし
ては様々なものであるが、好ましくは 一般式 TiR1 aR2 bR3 cX1 4-(a+b+c) または TiR1 dR2 eX1 3-(d+e) 〔式中、R1,R2およびR3はそれぞれ水素原子,炭素数1
〜20のアルキル基,炭素数1〜20のアルコキシ基,炭素
数6〜20のアリール基,アルキルアリール基,アリール
アルキル基,炭素数1〜20のアシルオキシ基,シクロペ
ンタジエニル基,置換シクロペンタジエニル基あるいは
インデニル基を示し、X1はハロゲン原子を示す。a,b,c
はそれぞれ0〜4の整数を示し、d,eはそれぞれ0〜3
の整数を示す。〕 で表わされるチタン化合物およびチタンキレート化合物
よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物であ
る。また、チタン化合物として上記一般式で表わされる
もののほか、一般式 〔式中、R4,R5はそれぞれハロゲン原子,炭素数1〜20
のアルコキシ基,アシロキシ基を示し、kは2〜20を示
す。〕 で表わされる縮合チタン化合物を用いてもよい。
さらに、上記チタン化合物は、エステルやエーテルな
どと錯体を形成させたものを用いてもよい。
一方、上記チタン化合物とともに触媒の主成分を構成
する有機アルミニウム化合物と縮合剤との接触生成物
は、各種の有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触し
て得られるものである。ここで有機アルミニウムとして
は各種のものが使用可能であるが、通常は一般式 AlR6 3 〔式中、R6は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕 で表わされる有機アルミニウム化合物を挙げることがで
きる。
この有機アルミニウム化合物を縮合させる縮合剤とし
ては、典型的には水が挙げられるが、このほかにアルキ
ルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物が縮合反応
する如何なるものを用いてもよい。この接触生成物の代
表例としては、トリアルキルアルミニウム化合物と水と
の反応生成物をあげることができるが、具体的には一般
〔式中、nは重合度を示す。〕 で表わされる鎖状アルキルアルミノキサンあるいは一般
で表わされる繰り返し単位を有する環状アルキルアルミ
ノキサン等がある。
一般に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニ
ウム化合物と水との接触生成物は、上述の鎖状アルキル
アルミノキサンや環状アルキルアルミノキサンととも
に、未反応のトリアルキルアルミニウム、各種の縮合生
成物の混合物、さらにはこれらが複雑に会合した分子で
あり、これらはトリアルキルアルミニウムと水との接触
条件によって様々な生成物となる。
この際の有機アルミニウム化合物と水との反応は特に
限定はなく、公知の手法に準じて反応させればよい。例
えば、有機アルミニウム化合物を有機溶剤に溶解して
おき、これを水と接触させる方法、重合時に当初有機
アルミニウム化合物を加えておき、後に水を添加する方
法、さらには金属塩等に含有されている結晶水、無機
物や有機物への吸着水を有機アルミニウム化合物と反応
させる等の方法がある。ここで上記の水にはアンモニ
ア,エチルアミン等のアミン,硫化水素等の硫黄化合
物,亜燐酸エステル等の燐化合物などが20%程度まで含
有されていてもよい。
なお、これを触媒として用いる際には、上記接触生成
物を単独で用いることは勿論、前記有機アルミニウム化
合物を混合した態様で、さらには他の有機金属化合物を
混合し、あるいは接触生成物の無機物等へ吸着または担
持した態様で用いることもできる。
上記チタン化合物及び有機アルミニウム化合物と縮合
剤との接触生成物の量は、重合するスチレン系モノマー
(スチレンあるいはスチレン誘導体)の種類、触媒成分
の種類、その他の条件により適宜に設定されるものであ
る。またこの触媒には、他の触媒成分を加えることもで
きる。
本発明では、好ましくは上記原料と触媒を、重合体が
融着する温度以下、即ち110℃以下の温度、好ましくは
0〜90℃の温度で、多分散状態に保つに充分な剪断力を
加えながら、実質的に固体多分散体となるように攪拌し
て重合反応を行い、シンジオタクチック構造を有するス
チレン系重合体を生成する。
ここで、重合反応時の攪拌は、重合温度下で、モノ
マー,オリゴマーおよびポリマーが液体状態であるか、
あるいは一部のポリマーがモノマー中で液体にならずス
ラリー状になっている状態、または他の溶剤を含んだ実
質的に液体であるポリマーの低粘度状態での攪拌から、
重合の進行に伴い高粘度状態の剪断力を加えながらの
攪拌となり、最終的には実質的に全てが固体多分散化
し、固体多分散体の攪拌となる三段階の攪拌状態が同一
反応器内で行われる。
第1図は、上記の主としてシンジオタクチック構造を
有するスチレン系重合体を重合するのに適した本発明の
製造装置であって、本発明を実施するための一例を示す
ものである。
この製造装置1は、略円筒状の反応容器2と、該反応
容器2内に回転可能に設けられた撹拌翼3とからなるも
ので、一般に撹拌槽型の反応器と称されるものである。
本発明の製造装置1は、上記撹拌翼3として複数のフラ
ットパドルあるいは傾斜パドル(以下単にパドルとい
う)4,4を有するものを使用するとともに、反応容器2
の底部近傍に位置するパドルを除く上部のパドルの先端
にスクレーパ5,5を装着したものである。また、第4図
に示すように、さらに反応容器の軸長さの底部から1/2
以上の上部の位置では、パドルの代わりに先端にスクレ
ーパ12を有する棒状の撹拌体8からなる撹拌翼3を設け
ることも有効である。
上記パドル4や撹拌体8は、前記原料や触媒等の混合
物(以下単に原料という)に充分な剪断力を与えるもの
で、各パドル4や撹拌体8の幅等の形状や上下間の配置
間隔,配置角度等は従来から用いられているこの種のも
のと同様に形成することができる。例えば、パドル4や
棒状の撹拌体8の段数は反応容器2の軸線長さや翼幅等
により異なるが、一般的には3〜20段が適当である。ま
たパドル4の角度も特に制限は無いが、この種の撹拌翼
に一般に用いられている角度、すなわち回転軸線に対し
て0度(フラット)〜45度が適当である。
また、上記パドル4や棒状の撹拌体8の先端に装着さ
れるスクレーパ5(あるいはスクレーパ12)は、反応容
器の内壁面にスケールが付着するのを防止するためのも
ので、その形状はフラットは板状のもの或いは丸棒状の
もので形成され、表面が滑らかなものであることが望ま
しい。材質は、翼に使用している材質(例えばステンレ
ススチール)と同じであってもよく、またテフロン等の
材質でもよい。金属を使用する場合は、その表面にバフ
仕上げ等で滑らかにしておくことが好ましい。このスク
レーパ5(あるいはスクレーパ12)と反応容器内壁面と
の距離は、壁面に付着する原料の掻き取り残しが無いよ
うに、10mm以下、特に5mm以下とすることが好ましい。
またスクレーパ5(スクレーパ12)は、原料が回転翼と
共に回転する供回りを防止するために、上下のスクレー
パの回転方向の位相をずらして配置し、スクレーパ5
(スクレーパ12)が鉛直方向に一直線にならないように
する必要がある。このスクレーパ5(スクレーパ12)の
位相をずらす手段は、撹拌翼のパドル4や棒状の撹拌体
8の取り付け状態により適宜最適な手段を採用すること
ができるが、例えば、第1図に示すように上下に隣接す
るパドル4が90度の位相差を有する場合には、各パドル
4の一端に90度ずつ位相を変えてスクレーパ5を装着す
ることにより行うことができる。また第2図A,Bに示す
ように各パドル4a,4aが同位相に設けられている場合
は、各パドル4aの一端に交互にスクレーパ5,5を装着し
て180度の位相を設けるなどの手段を採用することがで
きる。また同様に原料の供回りを防止するために、反応
容器の軸線長さの少なくとも1/4以下の底部に近い撹拌
翼にはスクレーパを設けずにおくことが必要である。原
料に供回りを生じると原料に充分な剪断力を与えること
ができず、本発明の目的を達成することができない。
さらに第1図に示すように撹拌翼3の上端部には、反
応容器2の上部内面に付着する原料を掻き取る上部スク
レーパ6を装着するとともに、反応容器2底部には、通
常のパドルを装着してもよいが、これに代えて、反応容
器の底部の形状に合わせたアンカー型パドル7を装着す
ることができる。
また、これらのパドル内、先端にスクレーパ5を装着
しないパドルの先端と反応容器2内壁面との距離を、20
mm以下、好ましくは5mm以下とすることにより、原料に
充分な剪断力を均等に与えることができる。
尚,反応容器や撹拌翼の材質は、ステンレススチール
などの一般的な材料を用いることができる。
次に第4図に示す製造装置についてさらに詳細に説明
する。
この製造装置9は、略円筒状の反応容器10内に回転可
能に設けられた撹拌翼11として該反応容器10内の中段よ
り上部(反応容器の軸長さの底部から1/2以上の上部の
位置)に設けられる複数の丸棒パドル(棒状の撹拌体)
8,8と該反応容器10内の中段より下部に設けられる複数
の傾斜フラットパドル(傾斜パドル)4を有するものを
使用するとともに、反応容器10の底部近傍に位置するパ
ドルを除く上部のパドルの先端に丸棒状のスクレーパ12
を装着したものである。
上記のごとく反応容器10の中段より上部に丸棒状パド
ル(棒状の撹拌体)8を、中段より下部に傾斜フラット
パドル4を配置することにより、原料に充分な剪断力を
与えながら、撹拌時の抵抗を低減するとともに、原料を
充分に撹拌することが可能となる。また反応容器10底部
には、フラットパドルを装着してもよいが、これに代え
て、反応容器の底部の形状に合わせたアンカー型パドル
13を装着することにより、さらに撹拌効率を向上させる
ことができる。
本発明では、これらの各パドルの径や幅等の形状や上
下間の配置間隔,配置角度等も前述の製造装置と同様に
反応容器10の大きさや原料の種類などにより適宜設定す
ることができる。例えば、各パドルの段数は5〜20段、
傾斜フラットパドル4の角度は回転軸線に対して0度
(フラット)〜45度など前記製造装置と同様に設定する
ことができる。
一方、前記パドルの先端に装着されるスクレーパ12を
丸棒状とすることにより、反応容器10の内壁面にスケー
ルなどが付着するのを防止することに加えて撹拌時の抵
抗を低減することができる。このスクレーパ12も、前記
製造装置に用いたスクレーパと同様に、表面が滑らかで
耐摩耗性に優れた材料により形成し、スクレーパ12と反
応容器10の内壁面との距離を、10mm以下、特に5mm以下
とすることが好ましい。また、このスクレーパ12も、原
料が回転翼11と共に回転する供回りを防止するために、
上下のスクレーパ12の回転方向の位相をずらして配置
し、スクレーパ12が鉛直方向に一直線にならないように
する必要がある。
また、先端にスクレーパ12を装着しない下部の傾斜フ
ラットパドル4の先端と反応容器10内壁面との距離を、
20mm以下、好ましくは5mm以下とすることにより、前記
同様、原料に充分な剪断力を均等に与えることができ
る。
さらに反応容器10の内周壁上端部には、液返し14を設
けることにより、上壁部へのスケールの付着を防止する
ことができる。また撹拌翼11の回転駆動軸とを接続する
ボス部15もできるだけ小さく形成することにより、この
部分へスケールの付着も低減することができる。
〔実施例〕
次に、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく
説明する。
実施例1 容積10,槽径200mm槽に、翼径190mm,パドル幅25mm,
翼角度30度(軸線に対して),翼段数5段,最下部のパ
ドルはアンカー型パドル,軸線長さ330mm,各パドルがそ
れぞれ下端から290mm,230mm,170mm,108mmの位置にある
マルチパドルタイプの撹拌翼(第1図参照)を設置し、
底部に近い2つのパドルを除いたものの先端に長さ60mm
(最上部スクレーパ),72mm(二段目スクレーパ),85mm
(三段目スクレーパ),幅13mm,槽内壁との距離を2mmと
したスクレーパをそれぞれ装着した槽型反応器を用い、
原料としてスチレン3.0,触媒としてメチルアルミノ
キサン104ミリモル及びチタニウムテトラエトキシド0.3
5ミリモルを加え、反応温度70℃,撹拌速度400rpmの条
件で2時間重合反応を行った。但し撹拌方向は掻き上げ
方向とした。その結果、粉状体のシンジオタクチック構
造を有するスチレン重合体(以下SPSという)を1700g得
た。このSPSのラセミペンタッドでのシンジオタクティ
シティーは97%であった。また反応後に槽内の内部観察
を行ったところ、槽内壁や撹拌翼に付着したスケールは
僅かであり、このスケールと得られたSPSの中の5mm以上
の粒子との和は全体に対して7%であった。
実施例2 実施例1において、スクレーパと槽内壁との間隔を5m
mとした以外は実施例1と同様に操作を行い、SPS1690g
を得た。このSPSのラセミペンタッドでのシンジオタク
ティシティーは97%であった。実施例1と同様にスケー
ルと5mm以上の粒子との和をみたところ、得られたSPS全
体に対して15%であった。
実施例3 実施例1において、最下部のアンカー型パドルを通常
のパドル翼とした以外は実施例1と同様に操作を行い、
SPS1680gを得た。このSPSのラセミペンタッドでのシン
ジオタクティシティーは97%であった。同様にスケール
と5mm以上の粒子との和をみたところ、得られたSPS全体
に対して15%であった。
実施例4 実施例1において、パドルの傾斜をフラットとした以
外は実施例1と同様に操作を行い、SPS1720gを得た。こ
のSPSのラセミペンタッドでのシンジオタクティシティ
ーは97%であった。同様にスケールと5mm以上の粒子と
の和をみたところ、得られたSPS全体に対して15%であ
った。
実施例5 容積10,槽径200mm槽に、翼径190mm,パドル幅25mm,
翼角度30度(軸線に対して),翼段数5段,最下部のパ
ドルはアンカー型パドル,軸線長さ330mm,各パドルがそ
れぞれ下端から170mm,108mmの位置にマルチパドルタイ
プの撹拌翼、および下端から290mm,230mmの位置に棒状
翼(第4図参照)を設置し、底部に近い2つのパドルを
除いたものの先端を長さ60mm(最上部スクレーパ),72m
m(二段目スクレーパ),85mm(三段目スクレーパ),幅
13mm,槽内壁との距離を2mmとしたスクレーパをそれぞれ
装着した槽型反応器を用い、原料としてスチレン3.0
,触媒としてメチルアルミノキサン104ミリモル及び
チタニウムテトラエトキシド0.35ミリモルを加え、反応
温度70℃,撹拌速度400rpmの条件で2時間重合反応を行
った。但し撹拌方向は掻き上げ方向とした。その結果、
粉状体のシンジオタクチック構造を有するSPSを1700g得
た。このSPSのラセミペンタッドでのシンジオタクティ
シティーは97%であった。
実施例1と同様にスケールと5mm以上の粒子との和を
みたところ、得られたSPS全体に対して5%以下であっ
た。
比較例1 実施例3において、スクレーパの装着位置を第3図に
示すように鉛直方向に一直線とした以外は、実施例3と
同様に操作を行い、SPS1700gを得た。同様にスケールと
5mm以上の粒子との和をみたところ、得られたSPS全体に
対して55%であった。
比較例2 実施例1において、スクレーパを装着せずにパドルの
みで撹拌を行ったこと以外は、実施例1と同様に操作を
行い、SPS1650gを得た。同様にスケールと5mm以上の粒
子との和をみたところ、得られたSPS全体に対して70%
以下であった。
比較例3 実施例3において、全てのパドル及びアンカー型パド
ルの先端にスクレーパを装着して撹拌を行ったこと以外
は、実施例3と同様に操作を行い、SPS1700gを得た。同
様にスケールと5mm以上の粒子との和をみたところ、得
られたSPS全体に対して60%であった。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば重合反応の進行
に伴う重合生成物が反応槽や撹拌翼等に付着することが
なく、均質な粒径の粉状の主としてシンジオタクチック
構造を有するスチレン系重合体を効率よく得ることがで
きる。また撹拌翼による剪断力を制御することにより、
重合物の粒径制御が可能となり、後処理なども容易とな
る。
したがって、本発明は主としてシンジオタクチック構
造を有するスチレン系重合体の工業的な製造方法として
有効な利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の製造装置及び製造方法を実施するため
の装置の一例を示す反応容器の断面図、第2図は撹拌翼
の他の例を示す撹拌翼の正面図及び平面図、第3図は比
較例2で用いた撹拌翼の正面図である。また、第4図は
本発明の製造装置及び製造方法を実施するための装置の
他の例示す反応容器の断面図である。 1:製造装置,2:反応容器,3:撹拌翼, 4,4a:パドル,5:スクレーパ, 6:上部スクレーパ,7:アンカー型パドル, 8:棒状の撹拌体,9:製造装置, 10:反応容器,11:撹拌翼, 12:スクレーパ,13:アンカー型パドル, 14:液返し,15:ボス部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊積 孝 千葉県市原市姉崎海岸1番地1 出光石 油化学株式会社内 (56)参考文献 特開 昭51−23860(JP,A) 実開 昭56−52026(JP,U)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主としてシンジオタクチック構造を有する
    スチレン系重合体を製造する装置であって、略円筒状の
    反応容器と、該反応容器内に回転可能に設けられた複数
    のフラットパドルまたは傾斜パドルを有する撹拌翼と、
    該反応容器の軸長さの底部から少なくとも1/4以上の上
    部に位置する前記パドルの先端に装着されたスクレーパ
    とを備え、該スクレーパは、その先端と反応容器の内壁
    との間隔を10mm以下とし、かつ上下のスクレーパの回転
    方向の位相をずらして設けたことを特徴とするスチレン
    系重合体の製造装置。
  2. 【請求項2】反応容器の軸長さの底部から1/2以上の上
    部の位置に、先端にスクレーパを有する棒状の撹拌体か
    らなる撹拌翼を設けてなる請求項1記載の製造装置。
  3. 【請求項3】スチレン系モノマーを重合して主としてシ
    ンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を製造
    するにあたり、略円筒状の反応容器に、撹拌翼として複
    数のフラットパドルまたは傾斜パドルを備え、反応容器
    の軸長さの底部から1/4以上の上部に位置する前記パド
    ルの先端に、その先端と反応容器の内壁との間隔を10mm
    以下としたスクレーパを、回転方向の位相をずらして装
    着した反応装置を用いてスチレン系モノマーを撹拌し、
    重合することを特徴とするスチレン系重合体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】反応容器の軸長さの底部から1/2以上の上
    部の位置に、先端にスクレーパを有する棒状の撹拌体か
    らなる撹拌翼を設けた反応装置を用いた請求項3記載の
    製造方法。
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