JP2694239B2 - 低熱膨張鋳鉄の製造方法 - Google Patents
低熱膨張鋳鉄の製造方法Info
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Description
[産業上の利用分野] 本発明は熱膨張率のきわめて低い鋳鉄材料に係る。 [従来の技術] 従来、装置や機械内の部材として組込まれるもののう
ち、機能上熱膨張率のきわめて小さい材料を求められる
場合がある。たとえば、精密機械の部品や金型,ラッピ
ングプレートなどは、外的温度の変化に伴う膨張量が小
さくないと、精緻な仕上状態に狂いが生じたり、製品の
サイズにばらつきが生じて品質上の信頼性に悪い影響を
及ぼしたりする。 このために特定の部材のために低熱膨張材料が開発さ
れ既に多種類の材質が実地に提供されている。 一般の鉄系合金は、通常熱膨張係数が10〜18×10-6/
℃であるのに対し、種々の合金元素を添加してこの数値
を大幅に引き下げようとする試みが加えられ、最も著名
な材質としてインバーが完成した。 インバーはCが0.10以下の鋼系でNiを35〜37%含み、
その他Cr,Mo,Coを若干量添加された材料で常温〜100℃
における平均熱膨張係数は鍛造のままで1.66×10-6/℃
で、830℃焼入れ後で0.64×10-6/℃、830℃焼入れ焼戻
し後で、1.02×10-6/℃また830℃から炉冷した場合で
も、2.01×10-6/℃の低い熱膨張率が報告されている。 さらにその後の開発に係るスーパーインバー(Fe-32N
i-5Co)に至ると0.1×10-6/℃と、ほぼ0に近い数値を
示す。(以上、生井 亨「新しい素形材−低熱膨張鋳造
材」:鋳鍛造と熱処理89年1月号21〜28頁) 一方鋳鉄系についても同様の試みが続けられ、たとえ
ば特公昭60-51547号公報においては、C:0.8〜3.0%、N
i:30.0〜34.0%、Co:4.0〜6.0%のダクタイルオーステ
ナイト鋳鉄を提案している。当該従来技術における実施
例を引用するとC:2.56%、Ni:32.48%、Co:4.91%の鋳
鉄材で0〜100℃の平均熱膨張係数αが3.4×10-5/℃
(出願人注、10-6/℃のミスと思われる。)また、C:2.
37%、Ni:31.75%、Co:5.34%では同じくαが2.6×10-5
/℃(同)であったことを提示している。 何れにしても熱膨張係数は、3.9×10-6/℃位(25℃
〜100℃の平均値)となったことを謳う。 鋳鉄系の別の提案として特開平1-283342号公報を引用
して見ると、C:3.0%以下、Ni:25.0〜40.0%、Co:6.9〜
12.0%の範囲を特定するオーステナイト鋳鉄であるが、
その実施例においてはC:1.74%、Ni:33.7%、Co:2.02%
で常温(100℃までの平均)のαが4.5×10-6/℃、一番
よい成績として、C:1.82%、Ni:29.7%、Co:7.48%の試
料では同3.2×10-6/℃であり3.2〜4.5×10-6/℃の範
囲に納まる成績を例示している。 その他、低C系では特開平1-306540号公報において、
C:0.3〜2.0%(実質的にはCは1.0%以下)、Ni:28〜36
%を主成分とし、熱膨張率については、たとえば1.055
×10-6/℃とか1.29×10-6/℃の測定結果を例示して、
水準の高い低熱膨張材を提示している。また高Cの鋳鉄
系としては特開平2-125837号公報において、Cが1.0〜
3.5%、珪素が1.0%未満、Niが29〜34%、Coが4〜8%
を主要成分とし、その特徴はNiとCoの合計含有量を変化
させた場合における温度と熱膨張率との関係では、各Ni
+Co量の割合に応じて熱膨脹率の温度依存性が急に立ち
上がる屈曲点が現れ、その屈曲点が両成分の増加ととも
に高温側へ移行することに着目した点にあるとしてい
る。引例では各成分量と熱膨張率の他、機械的強度との
関係を実験式的に捉えて、特にCFRP用金型に使用するこ
とを眼目とした屈曲点温度の上昇と成分の特定を目指し
たものと読み取れる。しかし、この従来技術において
は、特にCFRP成形用金型材料として優れた鋳造性、被削
性、を保有し、かつ熱膨張係数が1.5×10-6/℃以下と
なる低熱膨張鋳鉄を提供することを目的として掲げてお
り、主な用途を前記のプラスチックの金型材料に対象を
絞っていることもあって、測定は0〜200℃間の平均熱
膨張係数として表示され、そのうちの実施5例は2〜3
×10-6/℃以上の範囲に留まっているから、該発明が0
〜100℃までの温度範囲では本発明が目標とする数値に
ほぼ達し得たのではないかとも推定できる。 [発明が解決しようとする課題] インバーを起点とする低熱膨張率材料は添加元素の調
整を主体にさまざまな発展を遂げてきた。 成分的にみればFe-Pt系、Fe-Pd系、Zr-Nb-Fe系、Cr-F
e-Mn系など多岐に亘るが、実用上鉄系としてはFe-Ni-Co
をベースとする材料が中心となって研究されてきた。 しかしインバーを筆頭にC%が低いオーステナイト鋼
は望むならば熱膨張率をほぼ0にさえすることが可能と
なったが、非常に軟弱で機械や装置を構成する部材とし
ては難点となることがある。しかも低炭素系オーステナ
イト鋼の共通要素として鋳造性がきわめて劣悪であり、
溶解温度の高いにも拘らず溶湯の流動性が悪く、鋳造技
術の向上した今日においても複雑な形状の部材を健全に
鋳造することが難しい。 また機械的性質が前記のように軟弱である上、低炭素
鋼共通の要素である制振性の小さい点も適用しようとす
る装置などの機能にマイナスの要因を与える。低熱膨張
材料が測定機器の標準尺にはじまり電子機器(たとえば
IC基盤、サーモスタット素子)や定温機器(LPGタン
ク:超電導システム)と用途を拡大するにつれ低熱膨張
性が満足できても制振性が小さいために折角の機能を減
殺されることは少なからずある。 次に比較的炭素含量の高いオーステナイト鋳鉄におい
ては周知のとおり制振性は優れ、切削性は格段に向上す
る。必要とあれば黒鉛を球状化して高強度高靱性を与え
ることもできる。しかし既に述べたようにまだ鋼系の低
熱膨張材に比べるとその低熱膨張率において到底同一レ
ベルの範囲に達しているとは言い難い。結局、インバー
からスタートしたNi、Co系の低熱膨張合金に関する従来
技術のすべてを総覧し、共通する事項を整理して挙げる
と次の項目に集約される。 Cが1.0%以下では熱膨張率は1.5×10-6/℃以下で
あるが、制振性、鋳造性、加工性がきわめて悪い。 Cが1.0%以上では制振性、鋳造性、加工性は改善
されるが、なお、熱膨張率の低下と鋳造性の同時に満足
される程度には改善できていない。このことは先行技術
が正しい道を辿っているが、厳しくて信頼性の高いスク
リーニングに今一歩の精緻さを欠き窮極の最高条件へ追
い詰める実験技術の問題と範囲を総括する実験処理の巧
拙に基因するのではなかろうか。 たとえば、前記従来技術のうち、最も熱膨張係数の低
い鋳鉄系材料として評価できる特開平2-125837号公報の
材質にしても、明細書においてケイ素量が1.0%未満、
好ましくは0.5%以下が望ましいと限定し、さらに上記
熱膨張係数の増減に影響する各含有成分の強弱を表わし
た数式から、式中の各係数を比較すると、「Si量の係数
が最も大きく、ケイ素含有量が正の相関を以て熱膨張係
数に最も大きな影響を及ぼすことが判る。」と述べて低
ケイ素のメリットを標榜している。しかしながらケイ素
が鋳鉄特有の機能である鋳造性、すなわち湯流れ性の改
善に最も主要な働きを果すことも周知の事実であるか
ら、従来の低熱膨張鋼の弱点を補う主要な要素でありな
がら、肝心の熱膨張係数自体を大幅にアップさせるとい
う最悪の矛盾を克服しなければならないジレンマに陥
り、僅かにSi:0.5%前後に妥協するのでは、依然として
低熱膨張鋼の抱える課題を解決したことにはならないと
解釈せざるを得ない。 本発明は以上に述べた課題を解決するために、前記の
の両条件を併せて成立させる合金成分を開発するこ
とを課題としたもので、制振性、鋳造性、加工性に優れ
同時に、熱膨張率が1.5×10-6/℃以下を保証する低熱
膨張鋳鉄を追及したのである。 同時にNi,Coは戦略物資とも言われ、戦争などの緊急
時には入手が困難となる貴重な材料であるから、資源小
国である我が国としては、ほぼ同一の機能、すなわち同
レベルの低熱膨張性を維持する限り最低限の配合を指向
すべき技術上の使命を帯びていることは言うまでもな
い。本願発明は幾多の同種の目的を以て開発された低熱
膨張鋳鉄のうちでも、最低レベルの合金配合範囲を求め
る点に極めて大きな意義を含むものである。 [課題を解決するための手段] 本発明に係る低熱膨張鋳鉄の製造方法は、重量%でC:
1.5〜2.5、Si:0.8〜1.8、Mn:1.0以下、Ni:23〜28.5、残
部Coおよび鉄並びに不可避的不純物を含み、NiおよびCo
の含有量が 30.5≦Ni+0.75Co≦34.0% の範囲内にある成分材料を溶解して鋳型内へ鋳造後、加
熱炉内において加熱して900〜1100℃の温度に昇温し当
該温度において、1〜6時間保持した後、冷却すること
により、50〜100℃における平均熱膨張率αが1.5×10-6
/℃以下であることによって前記の課題を解決した。 また、前記の資源対策の観点からも特にCo:2.5〜7.5
重量%の範囲内に含まれるようにNiを算定した成分であ
ることが望ましく、さらに、前記の要件において、Mgま
たはCaの何れかまたは双方を合せて0.02〜0.1重量%含
み、NiおよびCoの含有率が 30.5≦Ni+0.75Co≦35.0% の範囲内にあって50〜100℃における平均熱膨張率αが
2.0×10-6/℃以下である場合も優れた実施例となる。 [作用] 本発明においては従来技術を超えた精密で系統的な実
験値を得て最高条件を特定するところに主要な意義があ
る。 鋳鉄は鋼と異なって不純物が多く、どうしてもデータ
ーのバラツキが大きくなる。一定の成分にしようとして
も溶解中に耐火性との反応やガスとの反応によって失わ
れたり或いは取り込まれたりして成分に変動を来してし
まう。更に鋳型への鋳造に際しても、使われる鋳型材料
によって鋳造組織が異なり、特に鋳物砂を用いる時は天
然のものであるので鋳型からもたらされる変動が大き
い。一方熱膨張率の測定においても、通常20〜40mmの長
さの試料を使って測定されるが、10-6オーダーの熱膨張
率であれば1℃で0.01ミクロンのオーダーの膨張代であ
り、測定機器の精度や、試料の長さを測定する場所の面
粗度や、測定荷重による試料のひずみといった点も変動
の大きな原因となる。以上のような種々の変動要因が重
なり合い、真に熱膨張率の低い合金組成がいずれにある
かがわかりにくい。そこで鋳鉄の溶解には高周波誘導電
気炉による迅速溶解法を用い、鋳造では銅金型を用い、
そして熱膨張率の測定では50〜100℃の平均熱膨張率を
用いた。 通常の溶解時間の1/10〜1/20の迅速溶解法は配合成分
からの成分変動が少なく、銅金型は金型温度を一定にす
ることによって鋳造した製品の成分偏析や鋳造組織の変
動が少ない。しかしながら銅金型で鋳造した組織は急冷
組織でカーボンが炭化物となっているので、1100℃の熱
処理炉に2時間入れたあと急冷させて黒鉛とオーステナ
イトの組織とした。そして熱膨張率を測定する際、常温
から徐々にかつ一定の昇温速度を保ちながら測定する
が、変動の多い常温付近を避け、50℃を起点として100
℃までの膨張代を測定することによって、試料の長さを
測定する場所の面粗度や、測定荷重によるひずみの熱膨
張率変動への影響を少なくできる。 これらによって変動が小さくなった結果、データーの
精度が上がり、極めて明瞭な熱膨張率のグラフが得られ
た。 試料番号1から27までは結果的に化学成分の若干のず
れが見られるが、その意図するところはNi%を22からは
じめて35まで順次増加して行き、その各々のNi%に対し
てCoを0〜17%に亘って適宜の間隔を置いて配分し両者
の組合せによる50〜100℃の平均熱膨張係数α(×10-6
/℃)を測定した点にある(他の成分はほぼ統一)。こ
こで全体を観察してαが2×10-6/℃以下のグループを
A、それ以上のグループをBとして備考欄に記入してま
とめたのが第1表である。 次の作業として各Ni%別のCo%の変動と平均熱膨張係
数αとの相関を図表にプロットすることである。すなわ
ち第1図の22の曲線はNi:22%を目標とした試料番号1
〜4までのCo%とαとの関係を曲線で結んだものであ
り、各Ni%群ごとにそれぞれ顕著な最小点が形成されて
いる。各曲線ごとの最小点ばかりを拾い出してNi%とCo
%とで成立する直線を図式化したところ、 Ni+0.75Co=K となる。 本発明における適正配合のスクリーニングの特徴は前
記第1図の慣用的な実験資料の処理とともに、さらに高
度なコンピュータによるデータ処理を追加してその結果
の適否を追試した点にあり、この点が他の従来技術の全
てを凌駕する有効性の向上に繋がっている。すなわち、
第3図に示すように縦軸にCo%、横軸にNi%をそれぞれ
目盛り、両成分の二元的な変動が平均熱膨張率αにどの
ような変動を起こすかを等高線として、区分して表示し
た点に特徴がある。この手法はナイス(NAIS)と呼ばれ
る最適化手法で、未知の合金の開発に威力を発揮する。
この原理は、例えば2変数(xi,yi)の条件で合金を作
成し、特性値Ziが測定されたとする。Zi(xi,yi)のn
個の組についてすべてのZi(xi,yi)を通る最も滑らか
な曲面を得ることが本手法の骨子となっている。この曲
面を決める因子は、n個のZi(xi,yi)から統計的に求
めた「曲面の平均高さ(μ)」と、「曲面の滑らかさ
(ρ)」の二つである。実験式を通る曲面のうちで、最
も滑らかなものを最適化手法で選び、そのときのμとρ
を最適値とする。そしてこのμとρが得られると等高線
図、極値の大きさや未溶製材の特性値の予測ができる合
金開発の有力な示唆が得られるとしている。 この第3図で(1)は平均熱膨張率αが1×10-6/℃
以下の領域を示し、(2)は2×10-6/℃以下、(3)
は3×10-6/℃以下、(4)は4×10-6/℃以下と続
き、7×10-6/℃以下の領域(7)の表示まで至ってい
る。すなわち、前の慣用的なスクリーニングに加え、各
実測値をコンピュータ処理して平均熱膨張率αが1〜2
×10-6/℃の領域(谷部)を確認したものであり、先の
第1図において実験式的に設定した最低の低熱膨張率の
限界領域を見事に裏付けた整合性を示している。 いま第1表の試料について、Ni%+0.75Co%をそれぞ
れ計算した結果を示したのが第2表である。備考欄のA
は第1表の備考欄をそのまま転載した。 第2表を見るとAランクにある試料はすべて30.5から
35.0の間にある。さらに限定区分すればMg処理したダク
タイル鋳鉄系(試料8)を除けば34.0以下であると断定
できる。すなわち、少なくとも該不等式の上限34.0は本
発明の第一の必須要件であると認められる。しかしその
逆は真ならずで不等式内に含まれてもBランクに入らな
い試料もある。たとえば試料番号1,2,3,20,22〜27であ
る。 このことはこの種類のオーステナイト鋳鉄にとってNi
の最低と最高に厳密な臨界値があり、この前後にある成
分では要件に外れることを示唆しているので、Aランク
との整合性を検し、さらに従来技術よりも低Ni側に位置
するという本願の趣旨からNi%を23〜28.5%に限定し
た。 なおその他の成分元素について簡単に言及すると、 C: カーボンを添加することによって合金の融点が下が
り、鋳造性が向上する。さらに組織中に黒鉛が晶出する
ことによって切削加工性が良くなり、制振性が向上す
る。 1.5%より少ないと融点が高くなるとともに組織中へ
の黒鉛の晶出が著しく少なくなり、鋳造性や切削加工
性,制振性が良いという利点が無くなる。3.0%を越え
ると鋳造欠陥が出やすくなるとともに黒鉛が大きくなり
材質強度も低下する。 Si: 合金の融点を下げるので鋳造性が向上する。さら
にカーボンの黒鉛化を助けるために、切削性、加工性が
良くなり、その結果、制振性も向上する。特に悪いこと
は熱膨脹係数を直ちに上げて低熱膨張鋳鉄としての機能
を台無しにする元凶がこのSiであるから、従来技術のす
べてはこの成分決定に苦悩してきたが、0.5%より少な
いと鋳造性が悪くて少し複雑な形状の鋳造が困難とな
り、その用途を著しく制限する原因となり、熱膨張鋼か
らの改善という趣旨に背反する結果となる。なお、1.8
%を超えると最早本発明が求める熱膨張率の範囲から逸
脱するから、これがぎりぎりの上限となる。 Mn: 材質強度の向上には役立つが偏析し易く、熱膨張
率も増大させるので1.0%以下に限定される。 Co: Coについては前記の不等式と対応するNiから自か
ら定まってくるために単独成分の限定は行なわないで領
域を限定することに改めた。 以上の化学成分を特定した上で第二の必須要件として
熱処理を加えることが課題解決の手段である。 加熱の目的は鋳造組織の中に残る熱膨張率に有害な炭
化物の分解と、鋳造組織中に偏析しているニッケル,コ
バルト,シリコンやマンガンを拡散させ均一合金相にす
ることである。この熱処理を行わないと熱膨張率は高く
なるとともにバラツキが大きくなる。特に従来技術の中
には低熱膨張率のために低Siを前提とするものであり、
単に熱膨張率の低下防止策としては有効であるにして
も、湯流れ不良の解消にはなお、不充分であると解され
るから、本発明では比較的高Siを許容して湯流れの改善
を優先すると共に、熱膨張率の低下傾向を熱処理によっ
て補うという手法で対応したのである。この場合、900
℃以下であると効果がなく1150℃以上であると変形が大
きくなるので好ましくない。加熱時間は温度が高いほど
短時間で良い。一般的に言えば1時間以内であると元素
の十分な拡散がなく鋳放しの組織が改善されない懸念が
大きい。また、6時間以上に及ぶと結晶粒の粗大化が始
まり強度を低下するとともに熱処理時間の長期化は経済
的なロスに繋がる。適切な保持温度と保持時間は上記の
範囲内で一般的な通則とされる製品の肉厚と形状の要素
を勘案して設定することが望ましい。すなわち、薄肉製
品の場合には比較的低温で長時間、厚肉製品の場合は比
較的高温で短時間の保持を原則とし、当然肉厚に比例し
た時間を費やすべきである。冷却速度については急冷、
徐冷の差と熱膨張率との優劣関係は実証されなったか
ら、製品の肉厚、形状などに応じて熱処理の一般原則に
照して選択すれば十分である。 次に実施態様によっては多少の低熱膨張性を犠牲にし
てもより強靱な機械的性質の向上を優先する場合もあ
る。 MgまたはCa: 黒鉛を球状化し鋳鉄の強度を向上す
る。しかし、このうち1種または2種を合わせて0.02%
以上ないと、黒鉛が球状化しないので顕著な強度の向上
がない、一方0.1%以上であると熱膨張率が大きくなる
ので0.1%以下に限定される。強度を要求されるときだ
け加え、通常は加えない。 Mg,Caを添加するという第三の要件は低熱膨張性に着
目したときはむしろマイナスの要因となる。凝固後まで
残留したMg,Caはミクロ的な偏析を生じていてα降下の
阻害要因となっていると判断されるので、従来のダクタ
イルオーステナイト鋳鉄の最高の成績でも定常的にα<
2×10-6/℃を維持できるという報告は見当らない。 本発明では強靱性を特に求めるこの実施態様に限り前
記の三要件のうち、不等式の上限を35.0とすることによ
って材質的な強度を強め、かつ、平均熱膨張率αが2×
10-6/℃以下を保証する低熱膨張鋳鉄の製造方法を完成
した。 [実施例] 以上のとおり特に精密さと正確さを指向した実験によ
って望ましい成分範囲を特定できたが、発明を実施する
に当たっては前記実験をそのまま踏襲できる訳ではなく
通常溶解の通常砂型鋳造と云う公知手段に戻らなければ
ならない。 ここに本発明を実施し、既に引用した従来技術との比
較によって改善の是非を評価することとする。 原料に電解ニッケル,電解コバルト,ケベック銑,電
解鉄,フェロシリコン(75%Si)を用い、配合率を変え
て原料を精密秤量し、配合した10kgの原料を55KVAの高
周波誘導電気炉に入れ、大気中で溶解し、珪砂を使った
CO2型で作ったJIS-G5122のB号テストピース鋳型に鋳造
した。その後、1100℃の炉に2時間入れてから水冷した
テストピースと炉冷したテストピースおよびアズキャス
トのテストピースより、それぞれ5mmΦ×20mmLの熱膨張
率測定用試料を切削加工し、上記と同様に熱膨張率の測
定を行った。 顕微鏡で観察すると、試料A,B,Cともにセメンタイト
はなく片状黒鉛の析出したオーステナイト組織であっ
た。 一方試料Dは本発明の別の実施例であり、Mg処理によ
って黒鉛を球状化し、鋳造後オーステナイト領域まで加
熱,保持した後急冷又は徐冷した成績である。 比較材はすべて公開文献の資料のうちから抜きんでて
優良な成績を謳ったものをそのまま引用した。すなわち
aはインバー、bは特開平1-306540号公報、表1から、
cは特公昭60-51547号公報、表1から、dは特開平1-28
3342号公報、第1表,第2表から、eは特開平2-125837
号公報、第3表、第4表からそれぞれ公開された数値
(複数の場合は最高と最低値)をそのまま転載して第3
表にまとめた。 なお第4表は本発明実施例のうち、B(熱処理、アズ
キャスト)とD(熱処理)についての機械的性質を例示
したもので、周知のとおりほぼ同一成分であっても、黒
鉛の球状化による材力の目ざましい向上を示している。 [発明の効果] 本発明の熱処理品は他の低熱膨張鋳鉄と同様に制振
性,鋳造性,において従来の低Cの低熱膨張合金鋼より
も優れているという一般原則が適用できる筈であるが、
それにも拘わらず第3表を通覧すれば明瞭なように、熱
膨張率に関してもインバー(a)や低炭素品(b)とほ
ぼ同等、場合によっては遥かに凌駕する低いレベルにあ
る。また他の鋳鉄系の従来品に比べると資料eを除いて
1/8〜1/2の間に納まる好成績を示す。 これらの差は言うまでもなくC,Ni,Co含有量やNi+0.7
5Coの値、さらに熱処理条件を加えた結果招来したこと
は疑う余地なく、因みに比較例のaはC,Ni%と不等式に
おいて、同bはCにおいて、同cはNi%および不等式に
おいて、同dの一つはNi%と不等式、残る一つは不等式
において、同eは不等式およびNi,Coの相互の領域にお
いて、それぞれ本発明の要件から外れており、特に本発
明のように熱処理を必須の要件に加重した従来技術がな
いことと共に、本発明のスクリーニング手法とデータ処
理の卓抜した優位性を裏付ける結果となっている。 第2図は本発明の請求範囲と従来技術との各範囲を
重ねて表示したもので、は特公昭60-51547号公報(比
較例c)、は特開平1-306540号公報(比較例b)、
は特開平1-28334号公報(比較例d)、は特開平2-125
837号公報(比較例e)である。特に比較例eは0〜2
00℃間の平均熱膨張係数から推理して0〜100℃間の本
発明の実績値とほぼ拮抗するものと評価されるが、領
域は低Ni側に位置しているから、高Siによる鋳造性、
すなわち、湯流れ性の顕著な改善効果を別にしても経済
的に優越し、さらにその中でも第2図の
ち、機能上熱膨張率のきわめて小さい材料を求められる
場合がある。たとえば、精密機械の部品や金型,ラッピ
ングプレートなどは、外的温度の変化に伴う膨張量が小
さくないと、精緻な仕上状態に狂いが生じたり、製品の
サイズにばらつきが生じて品質上の信頼性に悪い影響を
及ぼしたりする。 このために特定の部材のために低熱膨張材料が開発さ
れ既に多種類の材質が実地に提供されている。 一般の鉄系合金は、通常熱膨張係数が10〜18×10-6/
℃であるのに対し、種々の合金元素を添加してこの数値
を大幅に引き下げようとする試みが加えられ、最も著名
な材質としてインバーが完成した。 インバーはCが0.10以下の鋼系でNiを35〜37%含み、
その他Cr,Mo,Coを若干量添加された材料で常温〜100℃
における平均熱膨張係数は鍛造のままで1.66×10-6/℃
で、830℃焼入れ後で0.64×10-6/℃、830℃焼入れ焼戻
し後で、1.02×10-6/℃また830℃から炉冷した場合で
も、2.01×10-6/℃の低い熱膨張率が報告されている。 さらにその後の開発に係るスーパーインバー(Fe-32N
i-5Co)に至ると0.1×10-6/℃と、ほぼ0に近い数値を
示す。(以上、生井 亨「新しい素形材−低熱膨張鋳造
材」:鋳鍛造と熱処理89年1月号21〜28頁) 一方鋳鉄系についても同様の試みが続けられ、たとえ
ば特公昭60-51547号公報においては、C:0.8〜3.0%、N
i:30.0〜34.0%、Co:4.0〜6.0%のダクタイルオーステ
ナイト鋳鉄を提案している。当該従来技術における実施
例を引用するとC:2.56%、Ni:32.48%、Co:4.91%の鋳
鉄材で0〜100℃の平均熱膨張係数αが3.4×10-5/℃
(出願人注、10-6/℃のミスと思われる。)また、C:2.
37%、Ni:31.75%、Co:5.34%では同じくαが2.6×10-5
/℃(同)であったことを提示している。 何れにしても熱膨張係数は、3.9×10-6/℃位(25℃
〜100℃の平均値)となったことを謳う。 鋳鉄系の別の提案として特開平1-283342号公報を引用
して見ると、C:3.0%以下、Ni:25.0〜40.0%、Co:6.9〜
12.0%の範囲を特定するオーステナイト鋳鉄であるが、
その実施例においてはC:1.74%、Ni:33.7%、Co:2.02%
で常温(100℃までの平均)のαが4.5×10-6/℃、一番
よい成績として、C:1.82%、Ni:29.7%、Co:7.48%の試
料では同3.2×10-6/℃であり3.2〜4.5×10-6/℃の範
囲に納まる成績を例示している。 その他、低C系では特開平1-306540号公報において、
C:0.3〜2.0%(実質的にはCは1.0%以下)、Ni:28〜36
%を主成分とし、熱膨張率については、たとえば1.055
×10-6/℃とか1.29×10-6/℃の測定結果を例示して、
水準の高い低熱膨張材を提示している。また高Cの鋳鉄
系としては特開平2-125837号公報において、Cが1.0〜
3.5%、珪素が1.0%未満、Niが29〜34%、Coが4〜8%
を主要成分とし、その特徴はNiとCoの合計含有量を変化
させた場合における温度と熱膨張率との関係では、各Ni
+Co量の割合に応じて熱膨脹率の温度依存性が急に立ち
上がる屈曲点が現れ、その屈曲点が両成分の増加ととも
に高温側へ移行することに着目した点にあるとしてい
る。引例では各成分量と熱膨張率の他、機械的強度との
関係を実験式的に捉えて、特にCFRP用金型に使用するこ
とを眼目とした屈曲点温度の上昇と成分の特定を目指し
たものと読み取れる。しかし、この従来技術において
は、特にCFRP成形用金型材料として優れた鋳造性、被削
性、を保有し、かつ熱膨張係数が1.5×10-6/℃以下と
なる低熱膨張鋳鉄を提供することを目的として掲げてお
り、主な用途を前記のプラスチックの金型材料に対象を
絞っていることもあって、測定は0〜200℃間の平均熱
膨張係数として表示され、そのうちの実施5例は2〜3
×10-6/℃以上の範囲に留まっているから、該発明が0
〜100℃までの温度範囲では本発明が目標とする数値に
ほぼ達し得たのではないかとも推定できる。 [発明が解決しようとする課題] インバーを起点とする低熱膨張率材料は添加元素の調
整を主体にさまざまな発展を遂げてきた。 成分的にみればFe-Pt系、Fe-Pd系、Zr-Nb-Fe系、Cr-F
e-Mn系など多岐に亘るが、実用上鉄系としてはFe-Ni-Co
をベースとする材料が中心となって研究されてきた。 しかしインバーを筆頭にC%が低いオーステナイト鋼
は望むならば熱膨張率をほぼ0にさえすることが可能と
なったが、非常に軟弱で機械や装置を構成する部材とし
ては難点となることがある。しかも低炭素系オーステナ
イト鋼の共通要素として鋳造性がきわめて劣悪であり、
溶解温度の高いにも拘らず溶湯の流動性が悪く、鋳造技
術の向上した今日においても複雑な形状の部材を健全に
鋳造することが難しい。 また機械的性質が前記のように軟弱である上、低炭素
鋼共通の要素である制振性の小さい点も適用しようとす
る装置などの機能にマイナスの要因を与える。低熱膨張
材料が測定機器の標準尺にはじまり電子機器(たとえば
IC基盤、サーモスタット素子)や定温機器(LPGタン
ク:超電導システム)と用途を拡大するにつれ低熱膨張
性が満足できても制振性が小さいために折角の機能を減
殺されることは少なからずある。 次に比較的炭素含量の高いオーステナイト鋳鉄におい
ては周知のとおり制振性は優れ、切削性は格段に向上す
る。必要とあれば黒鉛を球状化して高強度高靱性を与え
ることもできる。しかし既に述べたようにまだ鋼系の低
熱膨張材に比べるとその低熱膨張率において到底同一レ
ベルの範囲に達しているとは言い難い。結局、インバー
からスタートしたNi、Co系の低熱膨張合金に関する従来
技術のすべてを総覧し、共通する事項を整理して挙げる
と次の項目に集約される。 Cが1.0%以下では熱膨張率は1.5×10-6/℃以下で
あるが、制振性、鋳造性、加工性がきわめて悪い。 Cが1.0%以上では制振性、鋳造性、加工性は改善
されるが、なお、熱膨張率の低下と鋳造性の同時に満足
される程度には改善できていない。このことは先行技術
が正しい道を辿っているが、厳しくて信頼性の高いスク
リーニングに今一歩の精緻さを欠き窮極の最高条件へ追
い詰める実験技術の問題と範囲を総括する実験処理の巧
拙に基因するのではなかろうか。 たとえば、前記従来技術のうち、最も熱膨張係数の低
い鋳鉄系材料として評価できる特開平2-125837号公報の
材質にしても、明細書においてケイ素量が1.0%未満、
好ましくは0.5%以下が望ましいと限定し、さらに上記
熱膨張係数の増減に影響する各含有成分の強弱を表わし
た数式から、式中の各係数を比較すると、「Si量の係数
が最も大きく、ケイ素含有量が正の相関を以て熱膨張係
数に最も大きな影響を及ぼすことが判る。」と述べて低
ケイ素のメリットを標榜している。しかしながらケイ素
が鋳鉄特有の機能である鋳造性、すなわち湯流れ性の改
善に最も主要な働きを果すことも周知の事実であるか
ら、従来の低熱膨張鋼の弱点を補う主要な要素でありな
がら、肝心の熱膨張係数自体を大幅にアップさせるとい
う最悪の矛盾を克服しなければならないジレンマに陥
り、僅かにSi:0.5%前後に妥協するのでは、依然として
低熱膨張鋼の抱える課題を解決したことにはならないと
解釈せざるを得ない。 本発明は以上に述べた課題を解決するために、前記の
の両条件を併せて成立させる合金成分を開発するこ
とを課題としたもので、制振性、鋳造性、加工性に優れ
同時に、熱膨張率が1.5×10-6/℃以下を保証する低熱
膨張鋳鉄を追及したのである。 同時にNi,Coは戦略物資とも言われ、戦争などの緊急
時には入手が困難となる貴重な材料であるから、資源小
国である我が国としては、ほぼ同一の機能、すなわち同
レベルの低熱膨張性を維持する限り最低限の配合を指向
すべき技術上の使命を帯びていることは言うまでもな
い。本願発明は幾多の同種の目的を以て開発された低熱
膨張鋳鉄のうちでも、最低レベルの合金配合範囲を求め
る点に極めて大きな意義を含むものである。 [課題を解決するための手段] 本発明に係る低熱膨張鋳鉄の製造方法は、重量%でC:
1.5〜2.5、Si:0.8〜1.8、Mn:1.0以下、Ni:23〜28.5、残
部Coおよび鉄並びに不可避的不純物を含み、NiおよびCo
の含有量が 30.5≦Ni+0.75Co≦34.0% の範囲内にある成分材料を溶解して鋳型内へ鋳造後、加
熱炉内において加熱して900〜1100℃の温度に昇温し当
該温度において、1〜6時間保持した後、冷却すること
により、50〜100℃における平均熱膨張率αが1.5×10-6
/℃以下であることによって前記の課題を解決した。 また、前記の資源対策の観点からも特にCo:2.5〜7.5
重量%の範囲内に含まれるようにNiを算定した成分であ
ることが望ましく、さらに、前記の要件において、Mgま
たはCaの何れかまたは双方を合せて0.02〜0.1重量%含
み、NiおよびCoの含有率が 30.5≦Ni+0.75Co≦35.0% の範囲内にあって50〜100℃における平均熱膨張率αが
2.0×10-6/℃以下である場合も優れた実施例となる。 [作用] 本発明においては従来技術を超えた精密で系統的な実
験値を得て最高条件を特定するところに主要な意義があ
る。 鋳鉄は鋼と異なって不純物が多く、どうしてもデータ
ーのバラツキが大きくなる。一定の成分にしようとして
も溶解中に耐火性との反応やガスとの反応によって失わ
れたり或いは取り込まれたりして成分に変動を来してし
まう。更に鋳型への鋳造に際しても、使われる鋳型材料
によって鋳造組織が異なり、特に鋳物砂を用いる時は天
然のものであるので鋳型からもたらされる変動が大き
い。一方熱膨張率の測定においても、通常20〜40mmの長
さの試料を使って測定されるが、10-6オーダーの熱膨張
率であれば1℃で0.01ミクロンのオーダーの膨張代であ
り、測定機器の精度や、試料の長さを測定する場所の面
粗度や、測定荷重による試料のひずみといった点も変動
の大きな原因となる。以上のような種々の変動要因が重
なり合い、真に熱膨張率の低い合金組成がいずれにある
かがわかりにくい。そこで鋳鉄の溶解には高周波誘導電
気炉による迅速溶解法を用い、鋳造では銅金型を用い、
そして熱膨張率の測定では50〜100℃の平均熱膨張率を
用いた。 通常の溶解時間の1/10〜1/20の迅速溶解法は配合成分
からの成分変動が少なく、銅金型は金型温度を一定にす
ることによって鋳造した製品の成分偏析や鋳造組織の変
動が少ない。しかしながら銅金型で鋳造した組織は急冷
組織でカーボンが炭化物となっているので、1100℃の熱
処理炉に2時間入れたあと急冷させて黒鉛とオーステナ
イトの組織とした。そして熱膨張率を測定する際、常温
から徐々にかつ一定の昇温速度を保ちながら測定する
が、変動の多い常温付近を避け、50℃を起点として100
℃までの膨張代を測定することによって、試料の長さを
測定する場所の面粗度や、測定荷重によるひずみの熱膨
張率変動への影響を少なくできる。 これらによって変動が小さくなった結果、データーの
精度が上がり、極めて明瞭な熱膨張率のグラフが得られ
た。 試料番号1から27までは結果的に化学成分の若干のず
れが見られるが、その意図するところはNi%を22からは
じめて35まで順次増加して行き、その各々のNi%に対し
てCoを0〜17%に亘って適宜の間隔を置いて配分し両者
の組合せによる50〜100℃の平均熱膨張係数α(×10-6
/℃)を測定した点にある(他の成分はほぼ統一)。こ
こで全体を観察してαが2×10-6/℃以下のグループを
A、それ以上のグループをBとして備考欄に記入してま
とめたのが第1表である。 次の作業として各Ni%別のCo%の変動と平均熱膨張係
数αとの相関を図表にプロットすることである。すなわ
ち第1図の22の曲線はNi:22%を目標とした試料番号1
〜4までのCo%とαとの関係を曲線で結んだものであ
り、各Ni%群ごとにそれぞれ顕著な最小点が形成されて
いる。各曲線ごとの最小点ばかりを拾い出してNi%とCo
%とで成立する直線を図式化したところ、 Ni+0.75Co=K となる。 本発明における適正配合のスクリーニングの特徴は前
記第1図の慣用的な実験資料の処理とともに、さらに高
度なコンピュータによるデータ処理を追加してその結果
の適否を追試した点にあり、この点が他の従来技術の全
てを凌駕する有効性の向上に繋がっている。すなわち、
第3図に示すように縦軸にCo%、横軸にNi%をそれぞれ
目盛り、両成分の二元的な変動が平均熱膨張率αにどの
ような変動を起こすかを等高線として、区分して表示し
た点に特徴がある。この手法はナイス(NAIS)と呼ばれ
る最適化手法で、未知の合金の開発に威力を発揮する。
この原理は、例えば2変数(xi,yi)の条件で合金を作
成し、特性値Ziが測定されたとする。Zi(xi,yi)のn
個の組についてすべてのZi(xi,yi)を通る最も滑らか
な曲面を得ることが本手法の骨子となっている。この曲
面を決める因子は、n個のZi(xi,yi)から統計的に求
めた「曲面の平均高さ(μ)」と、「曲面の滑らかさ
(ρ)」の二つである。実験式を通る曲面のうちで、最
も滑らかなものを最適化手法で選び、そのときのμとρ
を最適値とする。そしてこのμとρが得られると等高線
図、極値の大きさや未溶製材の特性値の予測ができる合
金開発の有力な示唆が得られるとしている。 この第3図で(1)は平均熱膨張率αが1×10-6/℃
以下の領域を示し、(2)は2×10-6/℃以下、(3)
は3×10-6/℃以下、(4)は4×10-6/℃以下と続
き、7×10-6/℃以下の領域(7)の表示まで至ってい
る。すなわち、前の慣用的なスクリーニングに加え、各
実測値をコンピュータ処理して平均熱膨張率αが1〜2
×10-6/℃の領域(谷部)を確認したものであり、先の
第1図において実験式的に設定した最低の低熱膨張率の
限界領域を見事に裏付けた整合性を示している。 いま第1表の試料について、Ni%+0.75Co%をそれぞ
れ計算した結果を示したのが第2表である。備考欄のA
は第1表の備考欄をそのまま転載した。 第2表を見るとAランクにある試料はすべて30.5から
35.0の間にある。さらに限定区分すればMg処理したダク
タイル鋳鉄系(試料8)を除けば34.0以下であると断定
できる。すなわち、少なくとも該不等式の上限34.0は本
発明の第一の必須要件であると認められる。しかしその
逆は真ならずで不等式内に含まれてもBランクに入らな
い試料もある。たとえば試料番号1,2,3,20,22〜27であ
る。 このことはこの種類のオーステナイト鋳鉄にとってNi
の最低と最高に厳密な臨界値があり、この前後にある成
分では要件に外れることを示唆しているので、Aランク
との整合性を検し、さらに従来技術よりも低Ni側に位置
するという本願の趣旨からNi%を23〜28.5%に限定し
た。 なおその他の成分元素について簡単に言及すると、 C: カーボンを添加することによって合金の融点が下が
り、鋳造性が向上する。さらに組織中に黒鉛が晶出する
ことによって切削加工性が良くなり、制振性が向上す
る。 1.5%より少ないと融点が高くなるとともに組織中へ
の黒鉛の晶出が著しく少なくなり、鋳造性や切削加工
性,制振性が良いという利点が無くなる。3.0%を越え
ると鋳造欠陥が出やすくなるとともに黒鉛が大きくなり
材質強度も低下する。 Si: 合金の融点を下げるので鋳造性が向上する。さら
にカーボンの黒鉛化を助けるために、切削性、加工性が
良くなり、その結果、制振性も向上する。特に悪いこと
は熱膨脹係数を直ちに上げて低熱膨張鋳鉄としての機能
を台無しにする元凶がこのSiであるから、従来技術のす
べてはこの成分決定に苦悩してきたが、0.5%より少な
いと鋳造性が悪くて少し複雑な形状の鋳造が困難とな
り、その用途を著しく制限する原因となり、熱膨張鋼か
らの改善という趣旨に背反する結果となる。なお、1.8
%を超えると最早本発明が求める熱膨張率の範囲から逸
脱するから、これがぎりぎりの上限となる。 Mn: 材質強度の向上には役立つが偏析し易く、熱膨張
率も増大させるので1.0%以下に限定される。 Co: Coについては前記の不等式と対応するNiから自か
ら定まってくるために単独成分の限定は行なわないで領
域を限定することに改めた。 以上の化学成分を特定した上で第二の必須要件として
熱処理を加えることが課題解決の手段である。 加熱の目的は鋳造組織の中に残る熱膨張率に有害な炭
化物の分解と、鋳造組織中に偏析しているニッケル,コ
バルト,シリコンやマンガンを拡散させ均一合金相にす
ることである。この熱処理を行わないと熱膨張率は高く
なるとともにバラツキが大きくなる。特に従来技術の中
には低熱膨張率のために低Siを前提とするものであり、
単に熱膨張率の低下防止策としては有効であるにして
も、湯流れ不良の解消にはなお、不充分であると解され
るから、本発明では比較的高Siを許容して湯流れの改善
を優先すると共に、熱膨張率の低下傾向を熱処理によっ
て補うという手法で対応したのである。この場合、900
℃以下であると効果がなく1150℃以上であると変形が大
きくなるので好ましくない。加熱時間は温度が高いほど
短時間で良い。一般的に言えば1時間以内であると元素
の十分な拡散がなく鋳放しの組織が改善されない懸念が
大きい。また、6時間以上に及ぶと結晶粒の粗大化が始
まり強度を低下するとともに熱処理時間の長期化は経済
的なロスに繋がる。適切な保持温度と保持時間は上記の
範囲内で一般的な通則とされる製品の肉厚と形状の要素
を勘案して設定することが望ましい。すなわち、薄肉製
品の場合には比較的低温で長時間、厚肉製品の場合は比
較的高温で短時間の保持を原則とし、当然肉厚に比例し
た時間を費やすべきである。冷却速度については急冷、
徐冷の差と熱膨張率との優劣関係は実証されなったか
ら、製品の肉厚、形状などに応じて熱処理の一般原則に
照して選択すれば十分である。 次に実施態様によっては多少の低熱膨張性を犠牲にし
てもより強靱な機械的性質の向上を優先する場合もあ
る。 MgまたはCa: 黒鉛を球状化し鋳鉄の強度を向上す
る。しかし、このうち1種または2種を合わせて0.02%
以上ないと、黒鉛が球状化しないので顕著な強度の向上
がない、一方0.1%以上であると熱膨張率が大きくなる
ので0.1%以下に限定される。強度を要求されるときだ
け加え、通常は加えない。 Mg,Caを添加するという第三の要件は低熱膨張性に着
目したときはむしろマイナスの要因となる。凝固後まで
残留したMg,Caはミクロ的な偏析を生じていてα降下の
阻害要因となっていると判断されるので、従来のダクタ
イルオーステナイト鋳鉄の最高の成績でも定常的にα<
2×10-6/℃を維持できるという報告は見当らない。 本発明では強靱性を特に求めるこの実施態様に限り前
記の三要件のうち、不等式の上限を35.0とすることによ
って材質的な強度を強め、かつ、平均熱膨張率αが2×
10-6/℃以下を保証する低熱膨張鋳鉄の製造方法を完成
した。 [実施例] 以上のとおり特に精密さと正確さを指向した実験によ
って望ましい成分範囲を特定できたが、発明を実施する
に当たっては前記実験をそのまま踏襲できる訳ではなく
通常溶解の通常砂型鋳造と云う公知手段に戻らなければ
ならない。 ここに本発明を実施し、既に引用した従来技術との比
較によって改善の是非を評価することとする。 原料に電解ニッケル,電解コバルト,ケベック銑,電
解鉄,フェロシリコン(75%Si)を用い、配合率を変え
て原料を精密秤量し、配合した10kgの原料を55KVAの高
周波誘導電気炉に入れ、大気中で溶解し、珪砂を使った
CO2型で作ったJIS-G5122のB号テストピース鋳型に鋳造
した。その後、1100℃の炉に2時間入れてから水冷した
テストピースと炉冷したテストピースおよびアズキャス
トのテストピースより、それぞれ5mmΦ×20mmLの熱膨張
率測定用試料を切削加工し、上記と同様に熱膨張率の測
定を行った。 顕微鏡で観察すると、試料A,B,Cともにセメンタイト
はなく片状黒鉛の析出したオーステナイト組織であっ
た。 一方試料Dは本発明の別の実施例であり、Mg処理によ
って黒鉛を球状化し、鋳造後オーステナイト領域まで加
熱,保持した後急冷又は徐冷した成績である。 比較材はすべて公開文献の資料のうちから抜きんでて
優良な成績を謳ったものをそのまま引用した。すなわち
aはインバー、bは特開平1-306540号公報、表1から、
cは特公昭60-51547号公報、表1から、dは特開平1-28
3342号公報、第1表,第2表から、eは特開平2-125837
号公報、第3表、第4表からそれぞれ公開された数値
(複数の場合は最高と最低値)をそのまま転載して第3
表にまとめた。 なお第4表は本発明実施例のうち、B(熱処理、アズ
キャスト)とD(熱処理)についての機械的性質を例示
したもので、周知のとおりほぼ同一成分であっても、黒
鉛の球状化による材力の目ざましい向上を示している。 [発明の効果] 本発明の熱処理品は他の低熱膨張鋳鉄と同様に制振
性,鋳造性,において従来の低Cの低熱膨張合金鋼より
も優れているという一般原則が適用できる筈であるが、
それにも拘わらず第3表を通覧すれば明瞭なように、熱
膨張率に関してもインバー(a)や低炭素品(b)とほ
ぼ同等、場合によっては遥かに凌駕する低いレベルにあ
る。また他の鋳鉄系の従来品に比べると資料eを除いて
1/8〜1/2の間に納まる好成績を示す。 これらの差は言うまでもなくC,Ni,Co含有量やNi+0.7
5Coの値、さらに熱処理条件を加えた結果招来したこと
は疑う余地なく、因みに比較例のaはC,Ni%と不等式に
おいて、同bはCにおいて、同cはNi%および不等式に
おいて、同dの一つはNi%と不等式、残る一つは不等式
において、同eは不等式およびNi,Coの相互の領域にお
いて、それぞれ本発明の要件から外れており、特に本発
明のように熱処理を必須の要件に加重した従来技術がな
いことと共に、本発明のスクリーニング手法とデータ処
理の卓抜した優位性を裏付ける結果となっている。 第2図は本発明の請求範囲と従来技術との各範囲を
重ねて表示したもので、は特公昭60-51547号公報(比
較例c)、は特開平1-306540号公報(比較例b)、
は特開平1-28334号公報(比較例d)、は特開平2-125
837号公報(比較例e)である。特に比較例eは0〜2
00℃間の平均熱膨張係数から推理して0〜100℃間の本
発明の実績値とほぼ拮抗するものと評価されるが、領
域は低Ni側に位置しているから、高Siによる鋳造性、
すなわち、湯流れ性の顕著な改善効果を別にしても経済
的に優越し、さらにその中でも第2図の
【1】の領域
(請求項2に規定する範囲)は、低Ni側にありながらCo
についてもの領域(4.0〜8.0%)以下に抑制している
から、その効果はさらに重複助長され、この優越性は熱
処理費用を差し引いてもなお、有余るメリットである。
たとえばNiの上限の28.5%としたときのCoは、2.7〜7.3
%と計算され、何れものCoの上限下限よりも低い配合
で実施可能となり、当初から求めていた我が国独特の課
題解決の象徴となっている。
(請求項2に規定する範囲)は、低Ni側にありながらCo
についてもの領域(4.0〜8.0%)以下に抑制している
から、その効果はさらに重複助長され、この優越性は熱
処理費用を差し引いてもなお、有余るメリットである。
たとえばNiの上限の28.5%としたときのCoは、2.7〜7.3
%と計算され、何れものCoの上限下限よりも低い配合
で実施可能となり、当初から求めていた我が国独特の課
題解決の象徴となっている。
第1図は本発明を特定するための実験結果をプロットし
た図、第2図は本発明と4件の異なる従来技術の範囲を
示す図、第3図は本発明の適正成分範囲の特定に適用し
たコンピュータによるデータ処理結果を示す図。
た図、第2図は本発明と4件の異なる従来技術の範囲を
示す図、第3図は本発明の適正成分範囲の特定に適用し
たコンピュータによるデータ処理結果を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松尾 国彦 大阪府大阪市西区北堀江1丁目12番19号 株式会社栗本鐵工所内 (72)発明者 中村 幸吉 大阪府富田林市高辺台1丁目10番6号 (72)発明者 炭本 治喜 京都府相楽郡加茂町大字例幣小字板谷垣 内25番地 (56)参考文献 特開 昭58−210149(JP,A) 特開 平2−125837(JP,A) 特開 平1−306540(JP,A) 特開 平1−283342(JP,A)
Claims (3)
- 【請求項1】重量%でC:1.5〜2.5、Si:0.8〜1.8、Mn:1.
0以下、Ni:23〜28.5、残部Coおよび鉄並びに不可避的不
純物を含み、NiおよびCoの含有率が 30.5≦Ni+0.75Co≦34.0% の範囲内にある成分材料を溶解して鋳型内へ鋳造後、加
熱炉内において加熱して900〜1100℃の温度に昇温し当
該温度において、1〜6時間保持した後、冷却すること
により、50〜100℃における平均熱膨張率αが1.5×10-6
/℃以下であることを特徴とする低熱膨張鋳鉄の製造方
法。 - 【請求項2】請求項1において、Co:2.5〜7.5重量%の
範囲内に含まれるようにNiを算定した成分であることを
特徴とする低膨張鋳鉄の製造方法。 - 【請求項3】請求項1または2において、MgまたはCaの
何れかまたは双方を合せて0.02〜0.1重量%含み、Niお
よびCoの含有率が 30.5≦Ni+0.75Co≦35.0% の範囲内にあって50〜100℃における平均熱膨張率αが
2.0×10-6/℃以下であることを特徴とする低熱膨張鋳
鉄の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2256463A JP2694239B2 (ja) | 1990-09-25 | 1990-09-25 | 低熱膨張鋳鉄の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2256463A JP2694239B2 (ja) | 1990-09-25 | 1990-09-25 | 低熱膨張鋳鉄の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04136136A JPH04136136A (ja) | 1992-05-11 |
JP2694239B2 true JP2694239B2 (ja) | 1997-12-24 |
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ID=17292989
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