JP2692054B2 - 潤滑グリース組成物 - Google Patents

潤滑グリース組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般的な鉱油系グリー
スよりも高温度においての潤滑寿命が向上した改良され
た鉱油系潤滑グリース組成物に関する。
【0002】
【従来技術】グリースは、自動車、電気機器、建設機
械、工作機械等の各種機械の潤滑に広く使われている
が、年々機械の小型化、軽量化、高性能化が進んでお
り、その中でも電動機等は小型で、高速、高回転とな
り、しかも数多くの部品が集中するため雰囲気温度が上
昇し、これらに使われているグリースの潤滑条件は増々
厳しい状況となっている。このようなことから、グリー
スの高温寿命を向上させることは機械の品質の向上およ
び信頼性に大きく貢献でき、非常に重要なことである。
グリースの寿命を延長させる方法はいくつかあり、第1
の方法としては、適切な酸化防止剤をグリースに効果的
に配合することで熱安定性を向上させる方法があり、第
2の方法としては、耐熱性の優れる増ちょう剤を選定し
て、長寿命なグリースを得る方法があり、さらに第3の
方法としては、熱安定性の優れた合成潤滑油等をグリー
スの基油として使う方法あるいはこれらを組み合わせて
長寿命なグリースを得る方法等がある。本出願人は、従
来からこれらの技術について十分に研究を行なってきて
おり、例えば、特公昭63−26798号公報や特公昭
63−27398号公報においては、耐熱性の優れた増
ちょう剤を見出したことにより熱安定性のすぐれたグリ
ースを提案したし、特開平4−293999号において
はアルキルチオ−1,3,5−トリアジン系化合物を用
いた熱安定性に優れたグリースを提案している。一方、
熱安定性が良いことで知られている合成潤滑油(例え
ば、ポリ−α−オレフィン、ジフェニルエーテル、ジエ
ステル、ポリオールエステル、シリコン、フッ素化油
等)をグリースの基油として、一部あるいは全部を使用
することにより、グリースの耐熱性が向上し、寿命が延
長できることはよく知られている。しかしながら、合成
潤滑油は鉱油に比較して高価で、安価なものですら5倍
以上の値段であり、汎用のものすら10倍以上、高価な
ものだと100倍以上にもなる。これらの合成油は、そ
の組成によって耐熱性以外にも多くの特徴を有すること
は言うまでもないし、用途によってその特徴は非常に有
効に作用する。しかし、いずれにしてもその合成油の価
格に対応するだけの寿命延長効果があるわけでなく、低
価格で、より長寿命なグリースが望まれているのは当然
である。
【0003】
【解決しようとする課題】そこで本発明の目的は、鉱油
系の基油を用いてグリースの高温寿命を向上する点にあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、基油のうち、
少なくとも20重量%が (a)100℃における動粘度が2〜20mm2/秒 (b)粘度指数120以上であり、かつ (c)全炭素中アロマティックを形成している炭素の占
める割合が1%以下 (d)全炭素中パラフィンを形成している炭素の占める
割合が85%以上 という条件を満足する高度精製油であることを特徴とす
る潤滑グリース組成物に関する。
【0005】鉱油には、パラフィン系成分、アロマティ
ック(芳香族環成分)およびナフテン環成分が含まれて
いるので、 パラフィン鎖を構成する炭素原子をCP アロマティック(芳香族環)を構成する炭素原子をCA ナフテン環を構成する炭素原子をCN としたとき、 %CP = CP ÷ (CP+CA+CN) × 100 %CA = CA ÷ (CP+CA+CN) × 100 %CN = CN ÷ (CP+CA+CN) × 100 で表している(昭和59年12月石油連盟広報部発行・
石油製品の品質と規格第66頁)。本発明の前記(c)
と(d)の要件は %CP ≧ 85 %CA ≦ 1 ということである。ここで100℃における粘度が2m
2/秒未満の場合は粘度が低すぎて油膜切れを起こし
やすくなったり、また油の蒸発も多い。一方、20mm
2/秒より高いと動力損失が大きくなり、軸受等に使用
した場合のトルクが上昇し発熱も大きくなる。粘度指数
が120未満の場合は温度変化により粘度の変化が大き
く特に高温で油膜切れを起こしやすくなるため潤滑寿命
が短くなり、また使用限界温度も低くなる。さらに全炭
素中のアロマティックを形成している炭素の占める割合
が1%を超える場合や、パラフィンを形成している炭素
の占める割合が85%未満の場合は高温における酸化安
定性が悪く熱重合により粘度増加を起こしやすくなった
り、また温度変化による粘度の変化も大きくなる。前記
高度精製油は、例えばスラッグワックスを接触水素化熱
分解し、合成することにより得られる。グリースの潤滑
基油としては、前記高度精製基油の他に一般的なパラフ
ィン系鉱油、ナフテン系鉱油または合成油などを配合す
ることができる。合成油としては、ポリ−α−オレフィ
ン、ポリグリコール、ジフェニルエーテル、ジエステ
ル、ポリオールエステル、ケイ酸エステルなどがある。
【0006】増ちょう剤としては、リチウム石けん系、
カルシウム石けん系、ナトリウム石けん系、アルミニウ
ム石けん系、リチウムコンプレックス石けん系、カルシ
ウムコンプレックス石けん系、ナトリウムコンプレック
ス石けん系、バリウムコンプレックス石けん系、アルミ
ニウムコンプレックス石けん系、モノウレア系、ジウレ
ア系、トリウレア系、テトラウレア系、ウレタン系、ベ
ントナイト系、クレイ系、ナトリウムテレフタラメート
系などがあり、これらの増ちょう剤を1種以上配合する
ことができる。本発明のグリース組成物の増ちょう剤の
含有量は1〜30重量部であり、好ましくは4〜17重
量部を含有することがグリース本来の潤滑性を得るため
に適する。
【0007】また、本発明グリース組成物には必要に応
じてフェノール系、アミン系などの各種酸化防止剤、カ
ルボン酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩などの防錆剤、ポ
リアルキレングリコール、グリセリンなどの耐摩耗剤、
塩素化パラフィン、硫化油、アルキルフォスファイト、
アルキルフォスホネート、ジアルキルチオリン酸亜鉛、
各種有機モリブデン化合物などの極圧剤、高級脂肪酸、
合成エステルなどの油性向上剤、グラファイト、二硫化
モリブデンなどの固体潤滑剤などを配合することができ
る。
【0008】
【実施例】
実施例1 グリース製造釜内に表1に示す高度精製基油を90重量
%取り、10重量%の増ちょう剤配合量となるよう、リ
チウム−12−ヒドロキシステアレートを形成する割合
で12−ヒドロキシステアリン酸と水酸化リチウムを加
えて撹拌しながら加熱した。その後、グリース釜内の温
度が210℃に達した時点で加熱を停止し、急冷し、グ
リース温度が80℃に達した時に酸化防止剤のフェニル
−α−ナフチルアミンを全量に対し0.7重量%添加し
た。さらに4〜5分撹拌をつづけた後、釜内よりグリー
スを取り出し三本ロールミルによりグリースを均一に仕
上げた。このグリースの試験結果は表2に示すとおりで
あった。
【0009】実施例2 グリース製造釜内に表1に示す高度精製基油を90重量
%取り、10重量%の増ちょう剤配合量となるよう、ジ
ウレアを形成する割合でジイソシアネートと1級アルキ
ルアミンを加えて撹拌しながら加熱した。グリース釜内
の温度が170℃に達した時点よりこの温度を30分間
保持し、その後80℃まで冷却して、酸化防止剤のフェ
ニル−α−ナフチルアミンを全量に対し0.7重量%添
加した。さらに4〜5分撹拌をつづけた後、釜内よりグ
リースを取り出し三本ロールミルによりグリースを均一
に仕上げた。このグリースの試験結果は表2に示すとお
りであった。
【0010】実施例3 グリース製造釜内に表1に示す高度精製基油を88重量
%取り、12重量%の増ちょう剤配合量となるよう、ナ
トリウムテレフタラメートを形成する割合でオクタデシ
ルテレフタル酸メチルと水酸化ナトリウムを加えて撹拌
しながら加熱した。120℃〜130℃の温度で1時間
30分保持し、メチルアルコールの生成が認められなく
なったので、150℃まで加熱し、その後80℃まで冷
却して酸化防止剤のフェニル−α−ナフチルアミンを全
量に対し0.7重量%添加した。さらに4〜5分撹拌を
つづけた後、釜内よりグリースを取り出し三本ロールミ
ルによりグリースを均一に仕上げた。このグリースの試
験結果を表2に示す。
【0011】実施例4 グリース製造釜内に表1の高度精製基油35重量%とパ
ラフィン系鉱油55重量%取り、10重量%の増ちょう
剤配合となるようジイソシアネートと1級アルキルアミ
ンを加えて撹拌しながら加熱した。以下は実施例2と同
じ方法にてグリースを得た。このグリースの試験結果を
表2に示す。 実施例5 グリース製造釜内に表1の高度精製基油70重量%とナ
フテン系鉱油20重量%取り、以下は実施例3と同じ方
法にてグリースを得た。このグリースの試験結果を表3
に示す。 実施例6 グリース製造釜内に表1の高度精製基油50重量%とポ
リオールエステル合成油を40重量%取り、以下は実施
例1と同じ方法にてグリースを得た。このグリースの試
験結果を表3に示す。 実施例7 グリース製造釜内に表1の高度精製基油30重量%、ナ
フテン系鉱油20重量%、ポリ−α−オレフィン合成油
40重量%を取り、以下は実施例2と同じ方法にてグリ
ースを得た。このグリースの試験結果を表3に示す。
【0012】比較例1および2 増ちょう剤のタイプおよび配合方法は、実施例1に同じ
であり、その配合量は表4に示したとおりである。比較
例1は基油にパラフィン系鉱油を使用し、比較例2はパ
ラフィン系鉱油とナフテン系鉱油を併用した混合油を基
油に使用した。その試験結果は表4に示す。 比較例3 増ちょう剤のタイプおよび方法は、実施例2に同じであ
り、その配合および量は表4に示したとおりである。そ
の試験結果を表4に示す。 比較例4 増ちょう剤のタイプおよび方法は、実施例3に同じであ
り、配合および量は表4に示したとおりである。その試
験結果を表4に示す。 比較例5〜7 当社および他社より市販されている汎用のグリースを示
し、グリースのタイプは表5に示したとおりである。そ
の試験結果を表5に示す。
【0013】評価 実施例に示すように本発明のグリースは150℃におけ
るグリースの潤滑寿命が明らかに長く、各種産業におい
てコロガリ軸受等を用いているグリース潤滑個所で、潤
滑寿命が延長でき、器機の品質の向上並びに信頼性に大
きく貢献できる効果が得られている。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【表3】
【0016】
【表4】
【表5】 1 100℃における動粘度が6.04mm2/秒のポ
リ−α−オレフィン系合成潤滑油。 *2 100℃における動粘度が4.30mm2/秒のト
リメチロールプロパンより合成されたポリオールエステ
ル系合成潤滑油。
【0017】
【効果】本発明における高度精製基油は、合成油に匹敵
する粘度指数を有し、高温度において粘度変化が小さ
く、鉱油に比較して、蒸発が少なく、また酸化安定性や
スラッジの生成が少ないので、本発明によるグリースは
一般の鉱油系グリースに比較して高温下でのグリース寿
命が特に長い。また、価格的にも合成油を基油に使用し
たグリースに比べ格段に安く供給できることから産業で
の利用分野は極めて広く、各種の機器に使用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10M 117:10) C10N 20:02 30:08 30:10 40:02 50:10 (56)参考文献 特開 平5−86389(JP,A) 特開 昭60−44593(JP,A) 特開 昭60−47100(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)100℃における動粘度が2〜2
    0mm2/秒 (b)粘度指数120以上であり、かつ (c)全炭素中アロマティックを形成している炭素の占
    める割合が1%以下 (d)全炭素中パラフィンを形成している炭素の占める
    割合が85%以上 という条件を満足する高度精製油により基油の少なくと
    も20重量%を占めることを特徴とする潤滑グリース組
    成物。
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