JP2689544B2 - 超磁歪合金および超磁歪材料の製造方法 - Google Patents

超磁歪合金および超磁歪材料の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
本発明は、テルビウム基磁歪合金の改良に関し、その
合金から磁歪を高めた材料を製造する方法にも関する。
【従来の技術】
磁歪現象の認められる合金のうち、稀土類と鉄の金属
間化合物が、在来のニッケル基合金などとは桁ちがいに
高い変位量をもつため、超磁歪合金とよばれて注目され
ている。Tb−Fe系や、Tb−Dy−Fe系超磁歪合金はその代
表であり、種々の改良が行なわれている。たとえば後者
に関して、適量のMnを加えるとともにTb/Dy比を選択す
ることにより、磁歪特性と機械的性質を改善することが
提案された(特公昭61−33892号)。 磁歪材料の応用面、たとえば精密機械の微少変位制御
装置の駆動機構において、磁歪材料に対して加えること
のできる磁界の強さには種々の理由で制約があることが
多いし、変換効率の点からも、一般に低磁界領域におけ
る磁歪が大きいことが望まれる。 いまひとつ磁歪材料に要求されることは、価格の引き
下げである。稀土類は一般に高価であるが、金属によっ
てかなりの差があり、Tbは高い方であるから、これを低
価格のもので置き換えられれば、値下げが可能になる。
【発明が解決しようとする課題】
本発明の基本的な目的は、上記の諸要求にこたえ、テ
ルビウム基超磁歪合金において、より高い磁歪、とくに
低磁界領域における磁歪を高めるとともに、原価を低減
した合金を提供することにある。 本発明の付加的な目的は、上記の超磁歪合金を材料と
し、その特性を十分に発揮させる、超磁歪材料の製造方
法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明の超磁歪合金は、式 Tb1-xSmxFe2 (0<x≦0.4) の組成を有する。xは上記のうち、特に0.05〜0.2の範
囲が好ましい。 上記の超磁歪合金は、Feの全部または一部をMnで置換
することができる。そのような磁歪合金は、式 Tb1-xSmxFe2-yMny (0<x≦0.4,0<y≦2) の組成を有する。 上記2種の磁歪合金の製造は、溶製法によって行なえ
ることはもちろんであるが、つぎに述べる「メカニカル
アロイ法」とよばれる方法で製造した合金粉末の焼結に
よることが有利である。すなわち、本発明の超磁歪材料
の製造方法は、上記のいずれかの超磁歪合金の組成を与
える各成分材料と粉砕して微粉末としたものを混合して
合金化し、プレス成形したのち、500〜800℃の温度で、
真空または不活性ガス雰囲気中で焼結することからな
る。 本発明の超磁歪材料のいまひとつの製造方法は、上記
いずれかの組成を有する超磁歪合金を、600℃以上であ
って融点よりは低く温度に、1〜数10時間加熱して磁歪
を高めることからなる。
【作用】
金属間化合物TbFe2のTbの一部をDyで置き換えた超磁
歪合金が知られていることは、前記のとおりである。一
方、Tbの一部をSmで置き換えることは、試みられなかっ
た。その理由は、おそらくSmFe2の磁歪 の値がマイナスになるため、Tbに代ってSmが入ることは
磁歪を低下させると予想されたからであろう。 事実、上式においてx>0.4の領域では磁歪の値は小
さくなって、超磁歪合金としての意義が失われる。しか
し、0<x≦0.4の範囲とくに0.05≦x≦0.2の領域にお
いては、磁歪の値がTbFe2のそれを上回る。この差は、
磁界の強度が5〜15KOeの比較的低磁界側で顕著であ
る。 前記Tb−Sm−Fe超磁歪合金のFeの一部または全部をMn
で置換すると、さらに磁気特性および機械的特性が向上
する。 焼結法により得た超磁歪材料は、溶製法による材料よ
り、磁歪特性がすぐれている。 熱処理による磁歪の増大は、既知のTbFe2などの超磁
歪合金に関しては認められなかったが、本発明の超磁歪
合金では明瞭な向上が得られる。加熱温度600℃以上で
効果が著しく、恒温の方が効果は高い。前記組成の合金
の融点は850℃近辺にあるが、実用上は800℃までの加熱
が好適であろう。
【実施例1】 式Tb1-xSmxFe2において、xの値を0〜0.5の範囲で種
々変化させた超磁歪合金を、真空誘導炉で溶解製造し、
真空中で鋳造した。 一辺15mmの正方形断面×長さ15mmの試片を切り出し、
歪ゲージを貼って強度10KOeの磁界を印加し、ガウスメ
ーターにより磁歪を測定した。 その結果は、第1図のグラフに示すとおりであって、
x=0.05〜0.2でとくに大きな磁歪が認められた。
【実施例2】 実施例1で用意した超磁歪合金のうちでほご最大の磁
歪を示したTb0.9Sm0.1Fe2の超磁歪合金組成をもつもの
を対象に、0〜20KOeの範囲で磁界を印加し、磁歪を測
定した。 その結果を、x=0すなわち既知のTbFe2超磁歪合金
と対比して示せば、第2図のとおりである。本発明の合
金が、とくに低磁界領域で高い磁歪を示すことがわか
る。
【実施例3】 Tb0.9Sm0.1Fe1.95Mn0.05の合金を、実施例1と同様に
して溶解し鋳造した。 この超磁歪合金に10KOeの磁界を印加して磁歪を測定
し、 の値を得た。 機械的強度を測定したところ、引張り強さは12Kgf/mm
2、伸びは20%であって、Feの一部をMnで置換しないも
のにくらべて、ともに矢印30%の向上が認められた。
【実施例4】 Tb0.9Sm0.1Fe2の合金組成を与えるように各成分を配
合し、真空ボールミルで微粉砕した。40時間にわたる微
粉砕と混合により、合金化が行なわれた。 このようにして得たメカニカルアロイの微粉末をプレ
ス成形し、温度700℃、真空中で焼結した。 焼結体に磁界を印加して磁歪を測定した結果は、第3
図に「メカニカルアロイ法」として示すとおりである。
第3図には、比較のため、溶解鋳造法による鋳塊、溶湯
の一方向凝固による鋳塊、およびゾーンメルティング法
によるものについての測定結果を、あわせて示した。こ
れらのデータから、メカニカルアロイ法によるものが、
とくに低磁界領域から高い磁歪を示すことがわかる。
【実施例5】 実施例2のTb0.9Sm0.1Fe2合金の鋳造片を真空中で種
々の温度に24時間加熱し、冷却後に0〜20KOeの磁界を
印加して磁歪を観察した。 結果は第4図に示すとおりであって、熱処理による磁
歪の増大が、このグラフから確認できる。
【発明の効果】
本発明の超磁歪合金は、既知のTbFe2合金にくらべて
高い磁歪を、とくに低磁界領域において示す。その組成
は、高価なTbを、一部分ではあるが遥かに安価なSmで置
き換えたものであるため、原料費が節約でき、低い価格
で提供できる。この超磁歪合金の磁歪は、熱処理を施し
て高めることにより最大限発揮させることができる。 従って本発明が与える磁歪材料は、前記した精密機械
の微少変位制御部の駆動材料や、超音波発生手段として
好適なのはもちろんのこと、そのほかの磁歪現象を利用
する多くの用途に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
図面はいずれも本発明の実施例におけるデータを示すグ
ラフであって、 第1図は本発明の超磁歪合金の組成と磁歪の値の関係を
あらわし、 第2図は印加する磁界の強弱と磁歪の関係をあらわし、 第3図は磁歪合金の製造方法による磁歪の表をあらわ
し、 第4図は熱処理が磁歪の増大に及ぼす影響をあらわす。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式 Tb1-xSmxFe2 (0<x≦0.4) の組成を有する超磁歪合金。
  2. 【請求項2】式 Tb1-xSmxFe2-yMny (0<x≦0.4,0<y≦2) の組成を有する超磁歪合金。
  3. 【請求項3】請求項1または2の合金組成を与える各成
    分材料を粉砕して微粉末としたものを混合して合金化
    し、プレス成形したのち、500〜800℃の温度で、真空ま
    たは不活性ガス雰囲気中で焼結することからなる請求項
    1または2の超磁歪材料の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1または2の超磁歪合金を、600℃
    以上であって融点よりは低い温度に加熱して磁歪を高め
    ることからなる請求項1または2の超磁歪材料の製造方
    法。
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