JP2685889B2 - ハーメチック被覆光ファイバの製造方法 - Google Patents

ハーメチック被覆光ファイバの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔技術分野〕 本発明は、光ファイバ表面にカーボンまたはカーボン
化合物(SiC、TiC等)から成るハーメチック被覆を被覆
したハーメチック被覆光ファイバを得るための方法に関
するものである。
〔従来技術〕
最近、第4図に示すように、コア3a、クラッド3bより
なる光ファイバ3の表面にカーボンまたはカーボン化合
物からなる被覆30(以下ハーメチック被覆という)を設
け、外部から光ファイバの内部へH2OやH2が侵入を防止
する、いわゆるハーメチック被覆光ファイバ40と称され
るものが提案されている。
このハーメチック被覆光ファイバ40の特徴は、前記外
部からのH2OやH2の侵入を防止でき、その結果耐水素特
性が向上するだけでなく、光ファイバの疲労特性も向上
することが見出され、現在その製造をいかにして安定
に、かつ効率良く行うか検討が急がれている。
第5図は従来行われているハーメチック被覆光ファイ
バ40の製造方法の一例を示すものである。これは光ファ
イバ用母材1を線引炉2に導入してコア3a、クラッド3b
を有する光ファイバ3と成し、これを熱CVD用の反応炉
5に導く。この反応炉5の外側にはヒータ6が配置され
ていて、該ヒータ6により反応炉5内には加熱ゾーン7
が設定されている。符号8はハーメチック被覆用の原料
ガス導入口で、ここから原料ガス、例えばメタン、エタ
ン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン等の炭化
水素ガスが、これに通常添加されるN2ガスと共に反応炉
5へと供給される。また符号9はガスの排気口を示し、
符号10A、10Bはそれぞれ前記反応炉5の両端部を示し、
ここにはシールガス導入口11A、11Bが設けられていて、
反応炉5内への外気の導入を防ぐため前記導入口11A、1
1Bを介してシールガス、例えば不活性ガスであるN2が供
給されている。
このようにして成る反応炉5内に導かれた光ファイバ
3の表面には、前記原料ガスの熱分解によりカーボンが
生成され、これが気相化学反応により光ファイバ3の表
面上に堆積し、第4図に示すようなハーメチック被覆30
が形成される。図中の符号4は外径測定器で、この値に
より線引速度や光ファイバ用母材1の送り速度が調整さ
れ光ファイバ3の外径が一定になるように制御される。
尚、SiC、TiCからなるハーメチック被覆30を形成しよ
うとする場合は、炭化水素ガスにSiH4やTiCl4等を添加
すればよい。以下前述した一連の方法を熱CVD法と称
す。
このようにして得られたハーメチック被覆光ファイバ
40の外側には通常の方法でプラスチック被覆が形成され
る。例えば紫外線硬化性樹脂を塗布装置12でハーメチッ
ク被覆光ファイバ40上に塗布し、これを紫外線照射炉等
の硬化炉13により硬化せしめ、巻取機14で巻き取る。こ
こで塗布する樹脂として熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も
使用でき、熱硬化性樹脂を使用する場合であれば、前記
硬化炉13として加熱炉を配すればよい。
ところが前述した従来の方法では、光ファイバ3の表
面に形成されるハーメチック被覆30の厚さが光ファイバ
3の長手方向において変動し、均一厚さのものが得られ
ていない。その結果得られたハーメチック被覆光ファイ
バ40の耐水素特性や疲労特性が安定しないという問題が
あった。
〔発明の目的〕
前記問題に鑑み本発明の目的は、光ファイバ上に、長
手方向にわたって厚さの均一なハーメチック被覆を施す
ことのできる方法を提供することにある。
〔発明の構成〕
前記目的を達成すべく本発明は、光ファイバ用母材か
ら光ファイバを線引し、しかる後に該光ファイバを熱CV
D用反応炉内を通過せしめ、その表面上に熱CVD法により
カーボンまたはカーボン化合物からなるハーメチック被
覆を施すハーメチック被覆光ファイバの製造方法におい
て、前記熱CVD用反応炉に入る直前の前記光ファイバの
表面温度を測定し、この測定値により前記熱CVD用反応
炉へ供給する原料ガスの流量を調整することを特徴とす
るものである。
〔発明の実施例〕
以下に本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明す
る。本発明者は前述した従来の製造方法を充分に検討し
た結果、ハーメチック被覆30の厚さが光ファイバ3の長
手方向においてばらつく原因は以下の理由によると推定
した。
すなわち、通常光ファイバ用母材1から第5図のよう
に光ファイバ3を線引する場合、外径測定器4により光
ファイバ3の外径を測定し、この値が一定になるように
巻取機14の巻き取り速度(引取機がある場合は引取速
度)あるいは光ファイバ用母材1の線引炉2への送り速
度を制御しているが、この方法だと、例えば光ファイバ
用母材1がその長手方向に外径変動を有していると経時
的にかなりの頻度で線引速度制御が必要となる。このよ
うに線引速度が変化すると必然的に熱CVD用の反応炉5
に入る直前の光ファイバ3の表面温度も変化するが、こ
の変化により、反応炉5内における光ファイバ3の表面
近傍での原料ガスの熱分解速度が変化し、光ファイバ3
表面に形成されるハーメチック被覆30の厚さも変化す
る、というように推定した。
そこで本発明者は、前記制御方法を採用する限り、光
ファイバ3の反応炉5に入る直前の表面温度を一定にす
ることは困難であるから、表面温度が下がったらその分
反応炉5に供給する原料ガスの量を増やすことを検討し
た。もちろん光ファイバ3の表面温度が所定の温度より
も上がった場合は、この逆の制御を行う。
そこでまず原料ガス量と形成されるハーメチック被覆
30の厚さの関係を実験により求めたところ第1図のよう
に、両者の間にはほぼ直線関係があることが判明した。
この関係を用いてハーメチック被覆30の厚さを制御すべ
く、第2図のような装置を設置した。尚、この図では第
5図と名称が同じものは同一符号を付与してある。
第2図は本発明の方法を実現するための装置の一実施
例で、この特徴は、従来の装置の熱CVD用反応炉5の直
前に光ファイバ3の表面温度を測定するための、例えば
赤外線放射温度計等の温度計16を設置せしめ、ここで反
応炉5に入る直前の光ファイバ3の表面温度を測定し、
この測定値に基づいて原料ガス導入口8を介して反応炉
5に供給する原料ガス、例えばC2H4等の原料ガスの量を
調整する点にある。ここで符号17はマスフローコントロ
ーラ等から成る流量制御装置、符号15は前記流量制御装
置17を前記温度計16の信号に基づいて制御するコンピュ
ータ(CPU)である。また符号18は反応炉5に結合され
た芯出し装置で、これにより光ファイバ3の走行方向を
Z軸とした場合、このZ軸方向への炉5の移動は勿論の
こと、X軸、Y軸方向の軸合わせ及びZ軸に対する傾き
角度の調整もできるようになっていて、光ファイバ3が
反応炉5の中心を走行するように調整できる。
このようにしてなる装置において、本発明の方法を説
明すると、例えば光ファイバ用母材1の外径が通常の部
分よりも細くなって、光ファイバ3の外径が小さくなる
と、この値を拾った外径測定器4の信号によりコンピュ
ータ20は巻取機14の巻き取り速度を落とすように指示す
る。このように巻取機14による巻き取り速度が小さくな
ると、線引炉2から反応炉5までの距離は一定であるか
ら、必然的にこの距離を通過する時間、すなわち冷却時
間が長くなり、反応炉5に入る直前の光ファイバ3の表
面温度は下がる。このように光ファイバ3の表面温度が
下がったことを温度計16が検知したら、その差に応じて
コンピュータ15は流量制御装置17を介して反応炉5へ供
給する原料ガスの量を増やしてやる。このように原料ガ
ス量が増えれば、形成されるハーメチック被覆30の厚さ
は前述した第1図にしたがって厚くなって正常厚さに復
帰する。
一方光ファイバ用母材1の外径が通常の部分よりも太
くなって、外径測定器4で測定された光ファイバ3の外
径が設定値よりも大きくなった場合は、線引速度が速く
なり、その結果反応炉5に入る直前の光ファイバ3の表
面温度は高くなるから、前者の場合とは逆に反応炉5に
供給する原料ガスの量を減らしてやればよい。
第3図は前述した第2図に示す装置による本発明の方
法と、第5図の装置による従来方法とで各々ハーメチッ
ク被覆光ファイバ40を製造した場合のハーメチック被覆
30の長手方向厚さ分布を示すものである。ここで○は本
発明の方法によって得られたもの、△は従来方法により
得られたものを示している。
尚、実施例及び比較例の製造条件は以下のとおりであ
る。
実施例 石英ガラス系の光ファイバ用母材1を設定線引速度60
0m/minで線引し、光ファイバ3となし、これを熱CVD法
用の反応炉5に導いた。該反応炉5に原料ガスとしてC2
H4ガスを原料ガス導入口8から2.0/minで供給した。
この際反応炉5を外気からシールするためにシールガス
導入口11AからN2ガスを5.0/min、シールガス導入口11
Bから同ガスを2.0/min流した。このような条件で外径
125μmのハーメチック被覆光ファイバ40を製造せし
め、これに紫外線硬化製樹脂を塗布装置12により塗布せ
しめ、これを紫外線照射装置からなる硬化炉13により硬
化せしめて外径250μmの光ファイバ心線を得た。この
際、温度計16の信号に基づき流量制御装置17を介して、
反応炉5に供給する原料ガス量を調整した。尚、本実施
例ではヒータ6による加熱はしていない。
比較例 前記実施例と異なる点は唯一流量制御装置17による反
応炉5への原料ガス供給量調整を行わなかった点のみ
で、他は実施例と同一条件である。
以上の結果、第3図が示すように、本発明の実施例の
ものでは、その長手方向に約600Å厚さのハーメチック
被覆30が極めて均一な厚さにて被覆されている。これに
対して比較例のものでは平均約500Å厚さのハーメチッ
ク被覆30が形成されているが、その厚さの長手方向の変
動は前記実施例に比較してかなり大きい。
尚、前記実施例では、エチレンガスを原料ガスとして
使用しているが、この他に前述したメタン、エタン、プ
ロパン、ブタンあるいはアセチレン等の炭化水素ガスあ
るいはこれらにSiH4やTiCl4等を添加したものも使用で
きる。同時にこれら原料ガスにN2ガス等の不活性ガスを
希釈ガスとして添加してもよい。
また前記実施例では、ヒータ6を使用しなかったが、
熱分解温度が高い原料ガスを使用する場合、あるいはよ
りハーメチック被覆30を高速で形成しようとする場合は
適宜採用すればよい。
〔発明の効果〕
以上の如く本発明の方法によれば、光ファイバの長手
方向にハーメチック被覆を均一厚さにて形成でき、もっ
て品質の安定なハーメチック被覆光ファイバを製造する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は形成されるハーメチック被覆厚さと原料ガス濃
度の関係を示すグラフ、第2図は本発明の方法の一実施
例を示す概略図、第3図は本発明の方法及び従来方法に
て得られたハーメチック被覆光ファイバのハーメチック
被覆の長手方向厚さ分布を示すグラフ、第4図はハーメ
チック被覆光ファイバの一例を示す横断面図、第5図は
従来の方法を示す概略図である。 1〜光ファイバ用母材、2〜線引炉、3〜光ファイバ、
5〜反応炉、6〜ヒータ、8〜原料ガス導入口、11A、1
1B〜シールガス導入口、16〜温度計、17〜流量制御装
置、18〜芯出し装置

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光ファイバ用母材から光ファイバを線引
    し、しかる後に該光ファイバを熱CVD用反応炉内を通過
    せしめ、その表面上に熱CVD法によりカーボンまたはカ
    ーボン化合物からなるハーメチック被覆を施すハーメチ
    ック被覆光ファイバの製造方法において、前記熱CVD用
    反応炉に入る直前の前記光ファイバの表面温度を測定
    し、この測定値により前記熱CVD用反応炉へ供給する原
    料ガスの流量を調整することを特徴とするハーメチック
    被覆光ファイバの製造方法。
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