JP2683908B2 - 雰囲気の酸化防止方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は熱処理における雰囲気の酸化防止方法に関す
るもので、特に加熱室にキヤリアガスを供給せず、ある
いはキヤリアガス流量を減量した熱処理方法に有効な雰
囲気の酸化防止方法に関するものである。

〔従来の技術〕 従来の熱処理方法は一般に被処理品の炉内装入位置の
差による硬化層の不均一及び負圧になつて炉内への外気
あるいは冷却室側からの雰囲気流入による加熱室内の雰
囲気の乱れを防止するため炉内雰囲気が１時間当り、５
〜10回置換えられるようにエンドサーミツクガス等のキ
ヤリアガスを大量に供給し、所定量を排気筒より流出燃
焼させ、炉内圧を保つていた。したがつて、従来の一般
的な熱処理方法においては炉内の負圧回復も早いもので
あつた。しかしながら、その後、変成炉（キヤリアガ
ス）を使用せず、雰囲気炉内に直接炭化水素ガス等の原
料ガスと空気を供給する方法、あるいはキヤリアガス流
量を減量した熱処理方法が提供されている（特開昭59−
222571号、特開昭61−159567号等）。

この方法にあつては変成炉も不要であり、炉内に供給
するガス量も例えば１分間に５程度と極めて少なく経
済的であるが、常温ワークの装入、加熱処理後の高温ワ
ークの移動等により炉内が負圧になり、一般に比較的ラ
フに構成されている各扉のパツキン部分等から外気（酸
素）を吸込み、雰囲気が乱され、場合（炉内温度が例え
ば、760℃以下になった場合）によっては爆発等の危険
もあつた。

そのため、本件出願人は炉内負圧が想定される時点に
開閉弁を開き外気の導入を可能とし、該外気の導入に際
してリングバーナーにより外気中の酸素を燃焼させて導
入する炉圧調整装置（実開昭62−28868号）を提供し
た。

〔発明が解決しようとする課題〕

上記本件出願人の提供した炉圧調整装置は従来焼入れ
ベステイブル、冷却室等（以下単に「冷却室」とい
う。）の温度の低い部分に設けられていた。

すなわち、雰囲気の乱れを嫌う加熱室に設けることは
妥当でなく、さらに焼入れベステイブル等、高温から低
温（膨張から収縮（負圧））への変化の激しいところに
設けられていた。

ところが、高温ワークが加熱室から中間扉等を経て冷
却室に移動させられた際には加熱室が負圧となり、外気
流入の可能性があり、さらに冷却室が一時的に高圧状態
となり、冷却室側から雰囲気が流入して加熱室の雰囲気
が乱されることがあつた。

本発明は上記のごとき欠点を除去することを目的とす
るものである。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は上記目的を達成するため、加熱室及び冷却室
を有し、加熱室にキヤリアガスを供給せず、あるいはキ
ヤリアガス流量を減量した熱処理方法において、加熱室
負圧想定時に炎の長さを調整した生ガス燃焼リングバー
ナの中央部を通して適切な混合比の生ガスと空気を吸入
させ、該生ガスと空気の熱分解により加熱室内に還元性
ガスを生成させるものである。

〔作 用〕

本発明では加熱室負圧が想定される場合、すなわち、
加熱処理後の高温ワークの冷却室への移動に合せてソレ
ノイドバルブ（14）（15）が開かれ、パイロツトバーナ
ー（16）によりリングバーナー（11）（13）に着火が行
われ、つぎにソレノイド（７）に通電されて開閉弁
（２）が開放される。

その結果、炉内には酸素を含まない外気が流入させら
れるものであるが、本発明では故意に適切な混合比の生
ガスと空気（酸素）を流入させるものである。

すなわち、ソレノイドバルブ（14）（15）の開度を調
整し、リングバーナー（11）の燃焼によつては空気（酸
素）が少し残された状態とし、リングバーナー（13）で
は着火するが燃焼口（12）部の空気（酸素）不足で不完
全な燃焼となるよう設定されるものである。

上記設定は具体的にはリングバーナー（11）（13）の
炎の長さを調整することにより行われる。

すなわち、リングバーナー（11）の炎をリングバーナ
ー（11）の中央部に届かない長さとすれば、適量の空気
（酸素）は燃焼に供されることがなく、リングバーナー
（13）側に吸引される。そして、リングバーナー（13）
部においては十分な空気（酸素）がないため生ガスの完
全燃焼が困難であり、したがつて炎も短く、リングバー
ナー（13）の中央部に届かずそこに存在する限られた空
気（酸素）を燃焼に供することなく完然燃焼させられな
いまま加熱室に吸入させられるものである。

一方加熱室は高温であり、そこに吸入された生ガスと
空気（酸素）は熱分解させられ還元性ガス、いわゆる、
発熱型ガス（DXガス）として酸化防止効果を発揮し、同
時に炉内負圧が迅速に解消されるため外気あるいは冷却
室側の雰囲気の流入を防止でき、適切な混合比の生ガス
と空気（酸素）の流入により加熱室の雰囲気の乱れを防
止できるものである。なお、本発明における生ガスと空
気の吸入部分は上記加熱室に限らず熱分解可能な高温各
部に設けることができる。

〔実施例〕

以下に本発明の一実施例を詳細に説明する。

第１図、第２図には本発明の方法の実施に適した装置
の一例が示されている。

図中（１）は排気筒であり、加熱室（Ｈ）の天井部に
設けられ、上端が外方になだらかに彎曲及び起立させら
れ、太径部（1a）が構成されている。

つぎに、該太径部（1a）の内部には上記彎曲部に載置
する開閉弁（２）が設けられる。

さらに、該開閉弁（２）の中央には吊杆（３）が設け
られる。

なお、開閉弁（２）は吊杆（３）により上方を押えら
れることなく、上方にスライド自在とされ、炉内が必要
以上に加圧状態となつた場合に浮上り、炉内ガスを自動
排出するように構成されている。

つぎに、排気筒（１）側に略中央を軸支（４）した支
持杆（５）の一端に上記吊杆（３）の一端が軸止め
（６）され、他端に排気筒（１）側に設けたソレノイド
（７）のプランジヤー（８）が軸止め（９）により連結
される。

さらに、上記太径部（1a）の上方には多数の燃焼口
（10）を内方に設けた生ガス燃焼リングバーナ（以下単
に「リングバーナ」と言う。）、リングバーナー（11）
が設けられ、内部には多数の燃焼口（12）を内方に設け
たリングバーナー（13）が設けられ、上記それぞれのリ
ングバーナー（11）（13）にはそれぞれソレノイドバル
ブ（14）（15）を介してメタン、プロパン等の生ガスを
適時に供給できるようになつている。

そして、さらに、上記ソレノイド（７）による開閉弁
（２）の開放に先立ち、ソレノイドバルブ（14）（15）
が開かれ、パイロツトバーナー（16）によりリングバー
ナー（11）（13）に着火が行われるよう構成されてい
る。

上記構成の装置を利用すれば、すでに述べたごとく、
生ガスの供給及び制御のみで加熱室内に適切な混合比で
生ガスと空気を吸入させることができ、その結果、加熱
室の負圧の迅速解消とともに加熱室内に還元性ガスを生
成させることができるものである。

〔発明の効果〕

本発明によれば加熱室内に酸化性雰囲気の流入等が防
止され、雰囲気の乱れを防止でき、特に加熱室に直接原
料ガスを供給する熱処理方法に有効である効果が得られ
るものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施に使用する装置の一例を示し、第１
図は不使用時の一部切欠正面図、第２図は使用状態を示
す一部切欠正面図である。 （１）……排気筒、（２）……開閉弁、（３）……吊
杆、（11）（13）……リングバーナー、（14）（15）…
…ソレノイドバルブ。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 一良 神奈川県横浜市港北区箕輪町字舟下785 番地 東京熱処理工業株式会社内 (72)発明者 北本 健一 神奈川県横浜市港北区箕輪町字舟下785 番地 東京熱処理工業株式会社内 (72)発明者 小長谷 弘之 神奈川県横浜市港北区箕輪町字舟下785 番地 東京熱処理工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−152621（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−149417（ＪＰ，Ａ) 実開 昭62−28868（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】加熱室及び冷却室を有し、加熱室にキャリ
   アガスを供給せず、あるいはキャリアガス流量を減量し
   た熱処理方法において、加熱室負圧想定時に炎の長さを
   調整した生ガス燃焼リングバーナの中央部を通して適切
   な混合比の生ガスと空気を吸入させ、該生ガスと空気の
   熱分解により加熱室内に還元性ガスを生成させることを
   特徴とする雰囲気の酸化防止方法。