JP2681601B2 - 外部滑沢式打錠機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、粉末状又は顆粒状の材
料を圧縮して薬剤等の錠剤を製造するのに適用される外
部滑沢式の打錠機に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の打錠機としては、例えば
特公昭４１−１１２７３号公報や、特開昭５６−１４０
９８号公報に所載のものが提案されている。即ち、前者
の打錠機は、図７（ｂ）に示すように回転テーブル１ｅ
の臼２ｅ内に圧縮成形材料ｍを充填させた後に、同図
（ｃ）に示すようにその材料ｍを上杵３ｅと下杵４ｅの
両者で錠剤として圧縮成形させるものである。但し、そ
れ以前の時期においては、同図（ａ）に示すように上杵
３ｅの下端面３１、及び下杵４ｅの上端面４１側に対し
て、滑沢剤噴射用のノズル６０から滑沢剤Ｋをエア圧に
より噴射させて散布するように構成されている。

【０００３】一方、後者の打錠機は、図８（ａ）に示す
ように、回転テーブル１ｅの所定位置の臼２ｅの上方に
設けた散布器５０内に滑沢剤Ｋを散布させて、この滑沢
剤Ｋを同図（ｂ）に示すように下杵４ｅの上端面４１に
載せる。そして、その後同図（ｃ）に示すように、散布
室５１内に配置されたノズル６１から下杵４ｅに対して
圧縮エアを噴射させることにより、下杵４ｅ上の滑沢剤
Ｋを上方へ吹き飛ばして離散させ、この離散された滑沢
剤を臼２ｅの内周面２１や上杵３ｅの下端面３１に付着
させるものである。このような外部滑沢式の打錠機で
は、内部滑沢式とは異なり、圧縮成形材料ｍ中に滑沢剤
を混合させる必要がなく、また圧縮成形される圧縮成形
材料ｍが上杵３ｅや下杵４ｅ等の各部に不当に付着して
残留するような虞れを無くすことができ、錠剤の品質を
高めることができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の前者（図７）のものでは、臼２ｅの上方に配置され
たノズル６０から滑沢剤Ｋを単に上下方向に噴射させる
に過ぎないために、その噴射方向と同一方向に形成され
た臼２ｅの内周面２１に対して、滑沢剤Ｋを均一に散布
させることができないという難点が生じていた。また、
滑沢剤Ｋはエア圧によって噴射されるものであるから、
この滑沢剤Ｋが吹付けられる位置では、その中央側ほど
滑沢剤Ｋの密度が高く、周辺側ほど密度が低くなる傾向
を示す状態となる。従って、上杵３ｅの下端面３１、及
び下杵４ｅの上端面４１に対しても滑沢剤Ｋを均一に散
布させることが困難となっていた。

【０００５】一方、上記従来の後者（図８）のものは、
臼２ｅ内に配置された下杵４ｅ上の滑沢剤Ｋをエアの吹
付けによって散布室５１内で拡散させる方法であるか
ら、この滑沢剤Ｋを臼２ｅの内周面２１に対して効率よ
く散布させることが可能である。ところが、このような
方法では、下杵４ｅ上に堆積された状態の滑沢剤Ｋをノ
ズル６１からのエアの吹付けのみによって散布室５１内
で均一な状態に拡散させることは難しく、特に下杵４ｅ
上に載せられた滑沢剤Ｋを回転テーブル１ｅよりも上方
に位置する上杵３ｅの下端面３１に対して下杵４ｅと同
じ分量で散布させることは一層困難となっていた。その
結果、従来では、上記のような滑沢剤の不均一な散布に
原因し、圧縮成形材料ｍが各部に付着して錠剤の品質不
良を招くといった難点が生じており、この点で未だ改善
すべき余地があった。

【０００６】本発明は上記の点に鑑みて提案されたもの
で、打錠機の上杵、下杵、及び臼の内周面等の所望の部
位に対して滑沢剤を均一に散布できるようにし、錠剤の
品質を高めることを、その目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に提案された本発明に係る外部滑沢式打錠機は、回転テ
ーブルに設けられた臼の移動位置のうち、臼内に圧縮成
形材料が充填される工程位置の前段側で上杵が臼の上方
に脱出し且つ下杵が臼内で降下する位置に、臼の上側周
縁部からその上方に位置する上杵の下端部を囲む状態の
散布室が設けられている打錠機であって、前記散布室内
に滑沢剤を噴霧する滑沢剤噴霧器と、この滑沢剤噴霧器
から噴霧される滑沢剤を散布室内で拡散させるための空
気脈動波を散布室内へ供給する空気脈動波発生手段とを
備えている。

【０００８】

【作用】上記構成を特徴とする本発明に係る外部滑沢式
打錠機では、回転テーブルの臼内に圧縮成形材料が充填
される以前の時期に、滑沢剤噴霧器から散布室内に滑沢
剤を噴霧させた状態で、空気脈動波発生手段からこの散
布室内に空気脈動波を供給させることができる。而し
て、この空気脈動波は、その空気圧が正圧・負圧の何れ
であるかを問わず、散布室内の全域に空気振動を生じさ
せて、散布室内に噴霧された滑沢剤の粒子を強制的に拡
散させる作用を発揮する。従って、散布室内に位置する
臼の内周面、上杵の下端面、及び下杵の上端面等の各所
に対して滑沢剤を均一な状態に散布できることとなる。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照
して説明する。図１乃至図３は本発明に係る外部滑沢式
打錠機Ａの一例を示し、図１は要部拡大断面図、図２は
概略正面断面図、図３は図２の平面断面図である。図２
及び図３に示すように、この打錠機Ａは、水平方向に沿
って回転自在な円盤状の回転テーブル１に、上下方向に
貫通した臼２が一定ピッチで複数箇所設けられ、これら
各臼２の上下に上杵３と下杵４が配置されている。これ
ら上杵３や下杵４は、例えばカム４０とカム溝４１との
係合によるカム機構等によって所定の昇降動作を行いな
がら回転テーブル１と一緒に回転し、臼２内に充填され
た圧縮成形材料ｍを圧縮するように構成されている。

【００１０】具体的には、矢印ａの位置に臼２が到達す
ると、この臼２内には、材料供給シュート５及びフィー
ドシュー６から圧縮成形材料ｍが充填される。そして、
その後段の矢印ｂの位置から矢印ｃに示す位置に到る移
動経路間で、圧縮成形材料ｍが上杵３と下杵４によって
圧縮され（矢印ｂと矢印ｃの各位置間は連続してい
る）、錠剤Ｊを成形するように構成されている。この錠
剤Ｊは、矢印ｄの位置で下杵４が上昇することにより、
臼２の上方に持ち上げられ、その後一定位置に固定され
たスクレパー７に当接することにより、回転テーブル１
の側方に設けられた排出シュート８内へ排出される。
尚、図２中、９ａ、９ｂは本圧調整用ロール、９ｃ、９
ｄは予備圧調整用ロールであり、これらの各ロール９ａ
〜９ｄの高さを調整することにより、これらのロール９
ａ〜９ｄに各々当接する上杵３と下杵４との高さを正確
に調整でき、打錠される錠剤Ｊの寸法精度を高めること
が可能である。

【００１１】上記した回転テーブル１の複数の臼２・・
の移動位置のうち、錠剤Ｊが排出される位置ｄよりも後
段側で、臼２内に圧縮成形材料ｍを充填する位置ａより
も前段側の位置（矢印ｅ）には、円筒状等の筒状体１４
が配置されて散布室１０が設けられている。また、この
散布室１０には滑沢剤噴霧器１１や空気脈動波発生装置
１２が接続されている。ここで、散布室１０は、図１に
示すように、臼２の上側周縁部２０の位置からその上方
に位置する上杵３の下端部３ａを囲む状態に形成されて
いる。尚、この散布室１０が設けられた位置では、下杵
４が出来る限り臼２内で下降するように配慮され、好ま
しくは下杵４が下死点となるように構成される。

【００１２】滑沢剤噴霧器１１としては、エア圧の供給
によって散布室１０内に所望の滑沢剤Ｋを噴霧するもの
が適用される。この滑沢剤噴霧器１１としては、カート
リッジ式、圧力タンク式、ミニホッパ式等の様々なタイ
プのものがあるが、何れを適用してもよい。滑沢剤Ｋと
しては、例えばアテアリン酸マグネシウム、ステアリン
酸カルシウム、或いはタルク等が適用されるが、これは
圧縮成形材料ｍの材質等に応じて適宜選択すればよい。

【００１３】空気脈動波発生装置１２は、散布室１０と
導波管１３を介して接続されており、この導波管１３か
らは負圧の空気脈動波を散布室１０内に付与することが
可能である。即ち、この空気脈動波発生装置１２は、導
波管１３を介して散布室１０内の空気を一定の時間間隔
で間歇的に吸気し、例えば図４（ａ）に示すような圧力
波形の空気脈動波を発生させる。この空気脈動波発生装
置１２としては、例えばブロアーによって散布室１０内
の空気吸入とその空気吸入の停止とを繰り返して実行す
るように構成されたものが適用される。尚、図４（ａ）
に示す圧力波形の空気脈動波に代えて、同図（ｂ）に示
すように負圧状態を維持したままその圧力が変動する態
様の空気脈動波を発生させてもよい。

【００１４】次に、上記構成の外部滑沢式打錠機Ａの作
用について説明する。先ず、回転テーブル１が回転して
複数の臼２・・が順次回転移動する状態において、図２
の矢印ｅに示す散布室１０が設けられた箇所へ臼２が移
動してきたときには、図１に示すように、滑沢剤噴霧器
１１に圧縮空気を供給させて滑沢剤Ｋを散布室１０内に
噴霧させる。また、この散布室１０内には空気脈動波発
生装置１２で発生された負圧の空気脈動波を作用させて
おく。この空気脈動波は散布室１０内に常時作用させて
いてもよい。

【００１５】このようにして、散布室１０内に空気脈動
波が作用した状態では、この散布室１０内の全域に空気
振動が生じた状態となる。従って、散布室１０内に噴霧
された滑沢剤Ｋの粒子は、かかる空気振動に伴って振動
し、散布室１０内の全域へ強制的に拡散される。その結
果、この滑沢剤Ｋは、下杵４の上端面４Ａ、臼２の内周
面２Ａ、及び上杵３の下端面３Ａ等の各所に対して均一
な状態で散布され、付着する。散布室１０内の余分な滑
沢剤Ｋは、導波管３を介して空気脈動波発生装置１２に
吸気され、散布室１０の外部に排出されるから、回転テ
ーブル１の上面位置等へ多量の滑沢剤Ｋが不必要に累積
するような不具合がなく、適量の滑沢剤Ｋを下杵４の上
端面４Ａやその他の各所に散布することが可能となる。

【００１６】上記のようにして、滑沢剤Ｋが上杵３、下
杵４、及び臼２の所定位置へ均一に散布されれば、その
後この臼２内に圧縮成形材料ｍを充填させて上杵３及び
下杵４によって圧縮させる際に、この圧縮成形材料ｍが
これら各部に不当に付着するようなことを適切に防止で
き、品質の高い錠剤Ｊを打錠することができる。

【００１７】上記実施例では、図４（ａ）、（ｂ）に示
すような負圧の空気脈動波を散布室１０内に付与させる
場合について説明したが、本発明は決してこれに限定さ
れない。即ち、図５は本発明に係る外部滑沢式打錠機Ａ
ａの他の実施例を示す要部拡大断面図である。この打錠
機Ａａは、正圧の空気脈動波を発生させる空気脈動波発
生装置１２Ａを、導波管１３Ａを介して散布室１０に接
続すると共に、この導波管１３Ａに滑沢剤噴霧器１１を
装着して、滑沢剤Ｋがこの導波管１３Ａ内を通過して散
布室１０内へ噴霧されるように構成している。また、散
布室１０には、この散布室１０内のエアを外部に排気さ
せるためのブロアー１５が配管１６を介して接続されて
いる。

【００１８】上記構成の打錠機Ａａでは、空気脈動波発
生装置１２Ａを稼働させて、図６（ａ）又は（ｂ）に示
すような圧力波形の正圧の空気脈動波を発生させると、
滑沢剤噴霧器１１から導波管１３Ａ内に噴霧される滑沢
剤Ｋは、この空気脈動波と共に散布室１０内に供給され
る。そして、この滑沢剤Ｋは、散布室１０内に付与され
た空気振動によってやはり散布室１０内の全域へ強制的
に拡散される。また、余分な滑沢剤Ｋは、ブロアー１５
によって外部に排出される。従って、上記図１で示した
実施例と同様に、下杵４の上端面４Ａ、臼２の内周面２
Ａ、及び上杵３の下端面３Ａの各所に対し、適量の滑沢
剤Ｋを均一な状態に散布させることが可能である。この
ように、本発明では、散布室１０内に供給させる空気脈
動波は、正圧、負圧の何れであってもよい。また、本発
明では、空気脈動波としては例えば１０〔Ｈｚ〕程度の
低周波域の脈動波が好ましいが、その具体的な周波数も
限定されない。

【００１９】その他、本発明では、圧縮成形材料ｍの具
体的な材質、種類等も限定されず、粉末状又は顆粒状等
の薬品、食料品、金属等の様々な錠剤の製造に適用でき
る。

【００２０】

【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発
明に係る外部滑沢式打錠機によれば、散布室内へ噴霧さ
れた滑沢剤を空気脈動波による空気振動によって散布室
内の全域へ強制的に拡散させることができるので、従来
の単なる滑沢剤の噴射や、下杵に載せられた滑沢剤をエ
アによって吹き飛ばすような手段に比較して、上杵、下
杵、及び臼の内周面等の所望の部位に対して滑沢剤を均
一な状態に散布でき、錠剤の品質を高めることができる
という格別な効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る外部滑沢式打錠機の一例を示す要
部拡大断面図。

【図２】本発明に係る外部滑沢式打錠機の一例を示す概
略正面断面図。

【図３】本発明に係る外部滑沢式打錠機の一例を示す要
部概略平面図。

【図４】（ａ），（ｂ）は負圧の空気脈動波の具体例を
示す説明図。

【図５】本発明に係る外部滑沢式打錠機の他の例を示す
要部拡大断面図。

【図６】（ａ），（ｂ）は正圧の空気脈動波の具体例を
示す説明図。

【図７】（ａ）〜（ｃ）は従来の外部滑沢式打錠機の一
例を示す要部断面図。

【図８】（ａ）〜（ｃ）は従来の外部滑沢式打錠機の他
の例を示す要部断面図。

【符号の説明】

１ 回転テーブル ２ 臼 ２Ａ 臼の内周面 ３ 上杵 ３ａ 上杵の下端部 ３Ａ 上杵の下端面 ４ 下杵 ４Ａ 下杵の上端面 １０ 散布室 １１ 滑沢剤噴霧器 １２，１２Ａ 空気脈動波発生装置 １３，１３Ａ 導波管 １４ 筒状体 ２０ 臼の上側周縁部 ｍ 圧縮成形材料 Ｊ 錠剤

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転テーブルに設けられた臼の移動位置の
   うち、臼内に圧縮成形材料が充填される工程位置の前段
   側で上杵が臼の上方に脱出し且つ下杵が臼内で降下する
   位置に、臼の上側周縁部からその上方に位置する上杵の
   下端部を囲む状態の散布室が設けられている打錠機であ
   って、 前記散布室内に滑沢剤を噴霧する滑沢剤噴霧器と、この
   滑沢剤噴霧器から噴霧される滑沢剤を散布室内で拡散さ
   せるための空気脈動波を散布室内へ供給する空気脈動波
   発生手段とを備えていることを特徴とする外部滑沢式打
   錠機。