JP2676646B2 - 船舶の横転防止装置 - Google Patents

船舶の横転防止装置

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JP2676646B2
JP2676646B2 JP2202256A JP20225690A JP2676646B2 JP 2676646 B2 JP2676646 B2 JP 2676646B2 JP 2202256 A JP2202256 A JP 2202256A JP 20225690 A JP20225690 A JP 20225690A JP 2676646 B2 JP2676646 B2 JP 2676646B2
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稚晴 中村
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稚晴 中村
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Description

【発明の詳細な説明】 イ.発明の目的と在来技術 船舶が急回転や横波・横風等によって横転する事故が
後を断たないが、これは畢竟、船員が積荷や漁獲の多寡
等による重量の変化や重心・浮心の変動等を適確に知る
事が出来ず、横方向の力との関係を経験から来る勘によ
ってしか判断せず、科学的に適切な対応を欠くからに他
ならない。
本発明は、船員の勘に頼らず、簡単な検出機構と電算
機によって状況が素早く判断され、適切な対処がなされ
る様な手段を提供するものである。
ロ.発明の構成・作用 船が旋回しつつある時にはその重心Gに遠心力mα
(mは船全体の質量、αは法線加速度)が働く。これに
対して、これに等しく、反対の向に水の抵抗が生じて船
の横方向の移動を止めると同時に、両者が偶力となって
(水の抵抗は浮心Cに集中して働くと考えられる)船を
回転させようとし、その結果船は外方に傾く(浮心より
重心が低ければ内方に傾く)。これに伴って浮心が第1
図Cから第2図C1の様に移動し、浮力(総重量Wに等し
い)と船の総重量W(=mg)とが船を逆方向に回転させ
ようとする偶力を生ずる。
船がそのまゝの姿勢を維持している状態であれば(即
ち、傾きが変わらない様であれば)両モーメントが釣合
っている訳だから mαH=mgD ∴α=gD/H (1) である。従って α>gD/H (2) であれば船は更に傾き、浮心も更に移動し、その状態で
尚(2)式が成立てば船の傾きは一層増大し、これを繰
返す様であればついには転覆する事になる。
即ち、(1)式でHが最小でDが最大の時(勿論、両
者の変動は関連しているから、それぞれの最小値・最大
値ではない)が復元性が最大であり、従ってαが α>g(D/H)max (3) となる様であれば船は転覆する事になる(横波・横風に
よる場合も同一算式となる)。
従ってα・D・Hを検出乃至算出し(gは一定として
扱ってよい)、演算を行って(3)式の成立を回避する
様に安全措置をとらねばらねばならない。
この内、旋回運動に伴う法線加速度としてのαは、線
速度をVe、旋回半径をRとすれば α=Ve 2/R (4) であり、Veは速度検出機構で、Rは舵輪の回転角と1:1
で対応するので舵輪回転角検出機構から求められるの
で、これ等から演算機によって瞬時に算出される。
横波・横風等による場合の加速度は適宜な加速度検出
機構で検出出来るが、検出機構の設置位置が重心点と合
致するとは限らないので、重心点でのαに換算せねばな
らない(旋回の場合にVeとRから算出したαはそのまゝ
重心点での加速度であって換算の必要はない。勿論、加
速度検出機構による方法を採用してもよい)。説明は後
記。
D・Hを得るには先ず重心位置・浮心位置を知らねば
ならない。
設計で船形が決まれば、吃水Drと排水容積Vとは1:1
で対応するので、吃水の値の変動に応じたVを計算出来
る。そして排水容積Vは傾きの如何によって変わらない
ので、傾斜角毎に浮心位置を計算で求める事が出来る。
また浮心位置が分ればその傾斜角での浮心を通る鉛直線
と船の中心線との交点即ち傾心Mが求められる。
然しながらこの計算は結構面倒で、可成ラフな近似や
省略が行われるのが実際である。
そこで、より有力な、実験による手法を提供する。
先ず外郭だけの縮尺模型を作る。甲板も要らない。実
験の際に重量や容積を無視し得る程度に極力薄く、軽く
作る。これを実際の船が正立して浮かぶのと同じ姿勢
に、支えるなり吊るなりして保持し、船体中心に棒を立
てる。船体に水或は適宜な液体を入れ、水面と棒及び船
殻の接する線に適宜印を付ける。水量が排水容積に、印
を結ぶ線がその時の吃水線に相当するから、水量と水深
を測り、実物大に換算し、これ等を図表にプロットし、
水量を変えて同様の手順を繰返せば排水容積と吃水との
関係を示す図表が出来る。これを数式に表す事も出来
る。なほ、W=ρV(ρは液体の比重)だから、Vを測
る代わりに、総重量Wを測ってρで割ってもよい。この
場合、模型の重量による誤差を避ける為に、液体には比
重が大きく、模型には比重の小さいものを用いるか、両
者の比重を等しいものにするのがよい。
次に、第3図に示す様に水を入れた状態で、総重量を
測定して置くか、既知の量の水を入れるかし、キールを
支点にして傾け、側端Bをバネ秤で吊る。水の重量はそ
の重心(浮心に相当する)に集中して働くと考えられ、
また釣合状態では、水の重量の支点に関するモーメント
とバネ秤にかゝる力の支点に関するモーメントが等しい
から We=Pl であり、lはl=ABsin(θ+δ)で、或は実測で簡単
に求められるから、e即ちこの傾斜角での浮心とキール
との間隔の水平成分が算出出来る。また同時に傾心の位
置も求められ、その船底からの距離Hm=e/sinθ(θは
傾斜角)が得られるから、傾斜角をθ・θ・θ
…と少しづつ変えて行き、その都度e、Hmを算出、三者
を対比して作表・作図して置く。傾けるのはB点から水
が零れ出さんとする所までゝ、実際の状態で甲板から浸
水し始めようとする事態に相当する。この時のθをθ
maxとする。
次に、水を明けて空にした模型を水に浮かべ、排水容
積が前記の実験の時と同じになるまで船底に錘を吊下げ
る。第4図に示す様に、船が前記実験と同じ角θだけ
傾く様に水平の力Q1を加える(着力点は何処でもよい
が、後の計算の為には傾心Mがよい。なほθが変ればM
の位置も変るが、前記の様に、その位置は直ちに得られ
る。だからθにこだわらず、θを少しづつ変えてQを
測定し、両者の関係を図表化乃至数式化、これからθ
・Q1を選んでもよい)。釣合状態では Q1h=We(hは傾心と浮心の高度差) だから、これからhが求められ、hとeとで浮心の位置
が定まる(Wが変らなければ、傾斜角の如何に拘らずV
は一定である。またVとθが決まれば水の比重に関係な
く浮心の位置は定まる。
比重が異なれば同じ排水容積Vにする為の錘の重さ、
従って浮力も変って来る訳だが、その時は同じ傾斜角θ
まで傾けるに要する力Qがこれに応じて変って来るの
で、上式から得られる結果に比重は影響しない)。従っ
て傾斜角がθ・θ……になる様にQを変えてその都
度浮力の位置(hとeの組合せ)を算出し、これを実物
大に換算し、或る排水容積に於ける傾斜角と浮心の位置
の関係を表す図表や式を作る事が出来る。そしてVを少
しづつ変えながらこれ等の手順を繰返す事で得られるデ
ータを演算機に記憶させて置けば、実際上のVとθから
瞬時に浮心の位置が求められる。
この時の演算は、e及びhを2変数V、θの函数とす
るe=f(V,θ)或はh=ψ(V,θ)を作って演算機に
設定して置くか、1変数の函数e=f1(θ)或はh=ψ
(θ)をV1,V2,V3……毎に用意して設定(この場合V
は不連続)、例えばVの実測値がVnとVn+1の間にあって
傾斜角がθであった場合には、Vnに於けるfn(θ
とVn+1に於けるfn+1(θ)を案分比例してeを求める
などする(hについても同様)。
先に、吃水から排水容積を知る方法を説明したが、実
際上、船腹の水線を一々観察したり、測定したりは難し
いし、システムの効果を殺ぐ。
そこで次の様な手段を提供する。即ち、船底に孔を明
け、その回りを水線より高い壁で囲み、その水位を静電
容量・音波・超音波・放射線等適宜な検出機構Ddによっ
て自動的に測定(第6・7図参照)、その結果を演算機
に送る。演算機には前記の様な、設計値から、或は模型
実験から得た吃水と排水容積の函数が記憶させてあり、
瞬時に排水容量を出力する。(これと水の比重とで船の
総重量も得られる)。
次に重心位置だが、浮心位置が排水容積と傾斜角で定
まるのに対し、重心位置は総重量が変らなくても積荷の
位置が変れば変って来る。例えば、積荷が船底部にある
か高所にあるかで異なるのである。その代り船の姿勢が
変ってもそのまゝで、移動しない。
設計上で空船時の重心位置は分るから、積荷の増減毎
にその重量と位置で補正して行けばよい訳だが、大変な
労力だし、計算洩れ間違いも起こし易いから、こゝで実
際の積荷の状態で実験的に知る方法を示す。
一般に、船が傾く様な積み方はしないから、船の中心
線上に重心があるものとする。
前記の様に、船を旋回させると重心に遠心力が働いて
船が傾くが、線速度や旋回半径が変らなければ遠心力に
よる横転のモーメントと浮力による復元のモーメントが
釣合って、それに応じた角度で傾きは安定する。その時
(1)式が成立し、またそのαは(4)式で示される。
そして重心と傾心との距離をSとすれば D=Ssinθ (5) H=h−Scosθ (6) であり、θは傾斜角検出機構から刻々送られて来るし、
前記の様にVとθからhも瞬時に得られるので、これ等
4式からD、H、Sが求められ、重心Gの位置も定まる
(船底と重心との距離Hg=Hm−Sはθの変化に拘わらず
一定)。
所で、以上の説明から分る様に、排水容積と重心位置
が与えられゝば、その排水容積、その重心位置に於ける
傾斜角θのとり得る種々の値に対応するD/H′の変化が
総て、予め机上で求め得られ(θの変化に従ってHmも変
るが、Hgが一定だからその都度のSが止められ、式
(5)(6)からθ毎のD/Hが得られる)、これ等から
(D/H)maxも容易に得られる。だから、重心位置を少し
づつ変えて同様の計算を行えば、それぞれの重心位置の
場合に対応する(D/H)}maxが求められる。更に排水容
積を変えて同様の計算を行って、排水容積・重心位置・
(D/H)max等三者の関係を演算機に記憶させて置けば、
船上ではVと重心位置の入力で直ちに(D/H)maxが得ら
れるのである(勿論、DrとHgの入力で、θを種々に変え
てD/Hの演算を行う事で(D/H)maxを得る様にしてもよ
い)。
次に重心点での加速度であるが、前記の様に、加速度
検出装置の設置位置を重心点に合せる事は至難である。
積荷の増減毎に重心位置が移動する事を考えれば尚更で
ある。そこで次の様にして重心点での加速度を得る。
重心点を含む鉛直線上に間隔を置いて2基の検出機構
D1、D2を設置する(鉛直線上でなくても高低差が判然し
ていればよい)。此の位置関係を第5図の様に示し、
D1、D2、Gを通る平行線を引き、D1、D2を頭とする線分
の長さをそれぞれでの加速度検出値α、αに比例し
てとってその端末を結ぶ。Gを通る平行線が切られて残
る線分がG点での加速度αを表す。この関係は相似関
係から簡単に演算式が立てられるのでα、αを入力
として演算機により容易にαが求められる。
以上で何時でも(3)式の演算が行える訳だが、実際
の場では安全性をより確実にする為に安全率を考慮に入
れるのが望ましい。同式でgは一定と見てよいから、こ
れを含めて安全率をkとすれば、同式は α>k(D/H)max (7) となる。
以上の演算装置の機能構成の1例を第8図にブロック
ダイヤグラムで示す。説明は上記で自明だから省略す
る。
なほ、以上の間に於いて、各入力の単位は同一歩調を
取る様整合されねばならないのは勿論である。また、演
算機は対応機能を適宜分割或は集約してよいし、各式を
等価で変換(例えば移項するなど)して、これに合せて
演算機の内容や組合わせを変えてもよい。
安全措置は減速、旋回の弱化(旋回半径を大きくす
る)等を自動的に行わせたり、安全機構を働かせたり、
警報を発したりなどがある。
安全機構の1例として第6・7図にスタビライザーに
よる例を示す。
船底にキールに沿って孔を明け、その周りを水線より
高い壁で囲み(前記の水位検出機構と兼用にしてもよ
い)、中に板状のスタビライザーを適宜な方法で支持し
て置き(例えば磁力・楔・チェーン等で)、(4)式が
成立った瞬間に支持を断つてスタビライザーを落下又は
降下させるのである。
ハ.発明の効果 以上に例示した様に、本発明によれば、従来は操縦者
の勘のみが頼りであった横転事故防止が自動的になされ
る訳で、事故による損失を未然に防げるばかりでなく、
操縦者の疲労を軽減出来、それがまた事故防止効果を高
めるなど、社会生活上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は直立状態に於ける船の、重心点を含む横垂直断
面図。細部を省略して示す。第2図は同上から傾いた状
態を示す図。第3図は船の外殻のみで成る縮尺模型に水
を入れて傾けた状態を示す図。釣合条件から浮心・傾心
の位置を求める為の実験の説明図。重心点を含む横垂直
断面図。第4図は同模型を水に浮かべて傾けた状態を示
す図。釣合条件から浮心の位置(垂直方向)を求める実
験の説明図。第5図は重心点での加速度算出法の説明
図。第6図は安全機構(水位検出機構兼用)の1例を示
す第7図B−B矢視の横垂直断面図。船底の孔を明示す
る為断面図のみを示す。第7図は同上の第6図A−A矢
視の図。第8図は本発明の機能構成の1例を示すブロッ
クダイヤグラム。 1:船体。2:船底に設けた孔。3:孔を囲む壁。4:スタビラ
イザー。5:水位検出機構。11,12,13,14,15,16,17,18,1
9,20,21はそれぞれ演算機。31,32,33,34,35,36はそれぞ
れ検出機構。37は設定機構。41は安全機構。G:重心。C:
浮心。M:傾心。D1,D2はそれぞれ加速度検出機構。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】船舶が、旋回によって生ずる遠心力又は横
    波・横風等側方から働く力によって傾く時、演算機によ
    り、これらの力によって生ずる重心点における加速度α
    を、走行船舶の線速度Ve、旋回半径R等から算出する
    か、加速度検出機構で得た検出値を重心点での加速度に
    換算するかして得ると共に、傾斜角検出値θと排水容積
    算出値Vとから得られる浮心の位置と、別に求めた重心
    位置とから、両者の間の距離の水平方向成分D、鉛直方
    向成分Hを得て、これ等と、重力加速度gを含めて妥当
    と定めた安全率kとの間で α>k(D/H)max 又はこれと等価な算式が成立する場合には直ちに安全装
    置が働く様にした事を特徴とする横転防止装置。
JP2202256A 1990-07-30 1990-07-30 船舶の横転防止装置 Expired - Lifetime JP2676646B2 (ja)

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JPS5135367A (ja) * 1974-09-19 1976-03-25 Yoshikuni Kususe Sennaiseimitsukitsusuisokuteisochi
JPS61271196A (ja) * 1985-05-24 1986-12-01 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 浮体の姿勢制御装置

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JPH0487894A (ja) 1992-03-19

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