JP2675573B2 - 脳機能改善剤 - Google Patents

脳機能改善剤

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JP2675573B2 JP63080498A JP8049888A JP2675573B2 JP 2675573 B2 JP2675573 B2 JP 2675573B2 JP 63080498 A JP63080498 A JP 63080498A JP 8049888 A JP8049888 A JP 8049888A JP 2675573 B2 JP2675573 B2 JP 2675573B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、脳機能改善剤、具体的には抗健忘剤および
老人性痴呆改善剤に関する。
〔従来技術〕
従来より、N,N−ジメチル−1−[1−(4−クロロ
フェニル)シクロブチル]−3−メチルブチルアミン
(以下、DCCMという)は、その薬理作用として抗うつ作
用を有することが知られており(特開昭57−181043号明
細書参照)、現在は、抗うつ剤として臨床治験が行われ
ている。
〔発明が解決しようとする課題〕
近年、高齢化社会への移行に伴ない、脳機能障害が大
きな社会問題となりつつある。脳機能障害は、脳梗塞、
脳出血、脳動脈硬化、脳静脈血栓などによる脳血管障害
および頭部外傷などによって惹起され、後遺症として、
脳機能の低下にもとづく、たとえば意識障害、記憶障
害、老人性痴呆、昏睡、注意力低下、言語障害などの種
々の症状が出現している。したがって、前記脳機能障害
の治療に際して、有効でかつ安全な薬剤が切望されてい
る。
本発明者らはかかる実情に鑑み鋭意研究した結果、驚
くべきことにDCCMが動物実験において強力な中枢神経賦
活作用を示すことによって、非常にすぐれた記憶学習効
果を有していたことから、脳機能が低下した疾患の治療
に際して新しく今まで知られていなかった可能性を開
き、脳機能改善剤として極めて有用であることを見出
し、本発明を完成するに至った。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち、本発明は、DCCMまたはその薬理学的に許容
しうる酸付加塩を有効成分として含有する脳機能改善
剤、具体的には抗健忘剤および老人性痴呆改善剤に関す
る。
〔作用および実施例〕
本発明の脳機能改善剤は、ノルエピネフリン(norepi
nephrine)およびセロトニン(serotonin)ニューロン
の賦活に加えてドーパミン(dopamine)ニューロンをも
強力に賦活することによって中枢神経賦活作用を示し、
脳機能の低下にもとづく意識障害、記憶障害(健忘)、
老人性痴呆、昏睡、注意力低下、言語障害などの治療剤
として好適に用いることができる。
さらに、本発明の脳機能改善剤はドーパミン作用を有
することから、レノックス症候群、自閉症、多動症、精
神分裂病などの治療にも用いることができる。
本発明の脳機能改善剤は、脳機能の低下にもとづく健
忘および老人性痴呆に対する治療剤として有効に用いう
る。
本発明の脳機能改善剤に有効成分として含有されるDC
CMは、遊離塩基または酸付加塩として使用できる。酸付
加塩として使用するばあいは、薬理学的に許容しうる酸
付加塩として用いなければならず、たとえば塩酸塩、硫
酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマール
酸塩、クエン酸塩および酸性アミノ酸塩(アスパラギン
酸やグルタミン酸など)などがあげられる。
本発明の脳機能改善剤は、有効成分であるDCCMを1日
あたり0.01〜30mg(経口投与:成人)の投与量で1日3
回投与されるのが好ましい。さらに、非経口および直腸
内投与も可能である。
また、本発明の脳機能改善剤は、経口投与、非経口投
与または直腸内投与されうるのに好適な種々の製剤形態
で投与され、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、
坐剤または注射剤などの製剤形態は当業者において既知
の技術にしたがって製造すればよい。
なお、製剤形態に種々の性質を付加するために、薬理
学的に許容しうる潤滑剤、保存剤、界面活性剤などのい
かなる添加剤を用いてもよい。
つぎに実施例にもとづいて本発明の脳機能改善剤をさ
らに詳しく説明するが、本発明はもとよりこれらに限定
されるものではない。
実施例1 (マウスの電撃痙攣ショック(electroconvulsive shoc
ks、以下ECSという)誘発による実験的記憶障害に対す
る作用) 体重19±2gの5週齢C57BL/6系雄性マウスを室温22〜2
4℃、湿度約60%の環境下で1週間飼育したのち、実験
に使用した。
実験は、明暗の二部屋に仕切った箱を用いて行なっ
た。すなわち、暗室(高さ23.5cm、幅12cm、長さ24cmの
長方形の箱)は内壁が黒色で、床には電気刺激を与える
ためのステンレス棒が施されている。一方、明室(高さ
15cm、底辺13cm、斜辺12cmの三角形の箱)は暗室と隣接
する壁以外は透明壁で、隣接壁の中央に幅3cm、高さ5cm
のギロチンドアを設け、さらに中央上部50cmより100Wの
電球を点灯した。
この明暗箱を用いて、以下の順序で実験を行なった。
馴化試行 マウスを明室内に静かに入れ、その後ギロチンドアを
開け、マウスの四肢が暗室に入ったのち、ギロチンドア
を閉じた。約10秒間マウスを放置したのち、ホームケー
ジに戻した。
獲得試行 馴化試行の30分後、マウスを明室内に再び静かに入
れ、その後ギロチンドアを開け、マウスの四肢が暗室に
入ったのち、ギロチンドアを閉じた。マウスの四肢に0.
4mAの電気ショックを3秒間与えたのち、ホームケージ
に戻した。
試験試行 獲得試行の24時間後、マウスを明室内に静かに入れ、
その後ギロチンドアを開け、マウスの四肢が暗室に入る
までの時間を反応潜時として最大300秒まで測定した。
ECS誘発による記憶障害マウスの作製 獲得試行の直後、マウスの両耳部にECS(30mA、0.5
秒)を与え、マウスに強直性痙攣を生じせしめ記憶障害
を惹起させた。そののち正向反射が回復したマウスを用
いて、その24時間後に前記の試験試行を行なった。
被検薬物の投与 DCCMの塩酸塩(以下、DCCM・HClという)0.3、1.0、
3.0および10.0mg/kgを1群あたり10匹のマウスに試験試
行の1時間前に経口投与した。
健忘試験 薬物投与の1時間後に、前記の試験試行を行ない、
各マウスの反応潜時を求めた。
なお、ECSを与えたマウス(10匹)および与えなかっ
たマウス(10匹)をそれぞれ1群とし、試験試行の1時
間前に蒸留水のみを投与して対照群として用いた。
300秒より長い反応潜時を示したマウス数を数え、健
忘率を次式より求めた。
A:用いたマウス数(10匹) B:300秒より長い反応潜時を示したマウス数(匹) その結果を第1表に示す。
第1表より、ECSの誘発により生じた記憶障害にもと
づく健忘率がDCCM・HClの投与量に比例して低下してお
り、DCCM・HClは脳機能の低下にもとづく記憶障害の治
療に用いうることがわかる。
実施例2 (レセルピン(reserpine)誘発による条件回避反応の
抑制に対する作用) 体重270〜300gの8〜9週齢Std−Wistar系雄性ラット
を室温23±2℃、湿度60±10%、照明12時間(人工照
明:午前7時〜午後7時)の環境下で1週間予備飼育し
たのち、実験に使用した。
条件回避反応測定装置は高さ25cm、幅25cm、長さ46cm
の長方形の箱の上部に条件刺激用のブザーが取り付けて
あり、高さ5cmのハードルで左右対称の二室に仕切り、
床には無条件刺激用の直径2mmのステンレススチール製
のグリッドを1mm間隔で設けた箱である。条件回避反応
のスケジュールコントロールおよび回避反応の観察はパ
ーソナルコンピューターにより自動記入させた。
条件回避反応の条件は、条件刺激としてブザーを5秒
間与え、そののち無条件刺激として電気ショックを5秒
間床のグリッドよりラットに与え、条件刺激時または無
条件刺激時にラットがハードルを越えて他方の部屋に移
動すればいずれの刺激もただちに中止され、1試行の間
隔を30〜40秒に固定した。回避反応は条件刺激時にラッ
トがハードルを越えて他方へ移動したばあいを反応あり
とし、1日50試行の回避学習を行なった。実験には条件
回避率80%以上を示したラットを使用した。
実験は、以下のように行なった。すなわち、ラットを
群分け(1群6匹)し、レセルピンの投与前に25試行
行ない、レセルピン投与(1mg/kg、腹腔内投与)の18
〜20時間後に15試行行なったのち、それぞれの群に被
検薬物として、DCCM・HCl(10mg/kg)ならびに比較薬物
であるアミトリプチリン(amitriptyline)(10、40mg/
kg)およびアマンタジン(amantadine)(10、50mg/k
g)をレセルピン投与の24〜26時間後に経口投与し、被
検薬物投与の1時間後に25試行の回避反応を見た。な
お、蒸留水のみを投与したラット(6匹)を対照群とし
て用いた。
レセルピン投与前の25試行、レセルピン投与18〜20時
間後の15試行および被検薬物または蒸留水投与1時間後
の25試行におけるそれぞれの条件回避率を次式によりラ
ット1匹あたりについて求めた。
A:試行回数 B:ラットの条件回避反応がみられた試行回数 各実験試行段階における各群のラットの条件回避率の
平均値を求めた。その結果を第2表に示す。
第2表より、レセルピンの投与による条件回避率の低
下が、DCCM・HClの投与により改善されており、DCCM・H
Clが中枢神経の賦活作用を有していることがわかる。
実施例3 (1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロ
ピリジン(以下、MPTPという)投与による脳内ドーパミ
ンの枯渇に対する作用) 1群7〜10匹のSlc:ddY系雄性マウスに被検薬物を経
口投与し、30分後にMPTP50mg/kgを皮下投与した。
その1週間後、マウスを断頭して全脳を摘出した。摘
出脳に0.06M過塩素酸(2ml)および内部標準物質として
3,4−ジヒドロキシベンジルアミン(10μg/ml)を加え
てホモジナイズし、遠心分離(20000×g、20分)を行
なった。
上清中のドーパミンを電気化学検出器付高速液体クロ
マトグラフィーを用いて定量した。実験は3組に分けて
行ない、被検薬物として、実験IではDCCM・HCl(1
0、30mg/kg)ならびに比較薬物であるドスレピン(dosu
lepin)(10、30mg/kg)、アミトリプチリン(10、30mg
/kg)、イミプラミン(imipramine)(10、30mg/kg)、
デシプラミン(desipramine)(10、30mg/kg)、ミアン
セリン(mianserin)(10、30mg/kg)、マプロチリン
(maprotiline)(10、30mg/kg)、クロミプラミン(cl
omipramine)(10、30mg/kg)およびメタンフェタミン
(methamphetamine)(3mg/kg)用い、実験IIではDCC
M・HCl(10mg/kg)ならびに比較薬物であるアマンタジ
ン(10、30mg/kg)およびメタンフェタミン(3mg/kg)
を用い、また実験IIIではスフォキサジン(sufoxazin
e)(10、30mg/kg)、インデロキサジン(indeloxazin
e)(10、30mg/kg)およびメタンフェタミン(3mg/kg)
を用いた。
なお、蒸留水のみ(実験I、IIおよびIII)または5
(W/V)%アラビアゴム水溶液(実験III)を投与したマ
ウスを対照群としてそれぞれの実験において用いた。
無処置群(正常マウス)のドーパミン含量に対する被
検薬物投与群および対照群それぞれのトーパミン含量の
百分率(%)を求めた。その結果を第3表に示す。
第3表より、MPTPによる脳内ドーパミンの枯渇がDCCM
・HClにより改善されており、DCCM・HClがドーパミンニ
ューロンでのドーパミンの取り込み阻害作用を有してい
ることがわかる。
実施例4 (3H−ドーパミンの再取込みに対する作用) 1群6匹の雄性Std:Wistar系ラットの全脳からP2フラ
クションを調製した。このP2フラクションのシナプトゾ
ーム懸濁液0.85mlに種々の濃度の被検薬物0.1mlと3H−
ドーパミン(比放射能:33.3Ci/mmol、最終濃度5×10-8
M)の0.05mlを加えて37℃で20分間インキュベーション
したのち、ホワットマンGF/Bのろ紙で吸引ろ過した。ろ
紙をトルエン系シンチレーター10mlの入ったバイアルに
入れ液体シンチレーションカウンターで放射活性を測定
した。
実験は2組に分けて行ない、被検薬物として実験I
ではDCCM・HClおよび比較薬物であるアミトリプチリ
ン、実験IIでは比較薬物であるアミトリプチリン、ド
スレピン、イミプラミンおよびマプロチリンを用いた。
なお、37℃でのインキュベーションにもとづく3H−ド
ーパミンの取込み量を示す放射活性値から、0℃でのイ
ンキュベーションにもとづく3H−ドーパミンの取込み量
を示す放射活性値をブランク値として差引いた値を3H−
ドーパミンの実質的な特異的再取込み量とした。
3H−ドーパミンの再取込み量を50%抑制するのに必要
な被検薬物の濃度(μM)をIC50として求めた。その結
果を第4表に示す。
第4表より、3H−ドーパミンの再取込みがDCCM・HCl
の極めて低い濃度で抑制されており、DCCM・HClがドー
パミンの作用増強効果を有していることがわかる。
実施例5 (6−ヒドロキシドーパミン投与によるラット心臓ノル
エピネフリン枯渇に対する作用) 雄性Std:Wistar系ラット(1群6匹)に被検薬物を経
口投与し、その30分後に6−ヒドロキシドーパミン20m
g:kgを腹腔内投与した。被検薬物としては、DCCM・HCl
(0.625、1.25、2.5mg/kg)および比較薬物であるデシ
プラミン(desipramine、(0.625、1.25、2.5mg/kg))
を用いた。また、蒸留水のみを経口投与したラットを対
照群として用いた。
6−ヒドロキシドーパミン投与16時間後にラットを屠
殺し、摘出した心臓に0.05M過塩素酸(2ml)および内部
標準物質としてイソプロテレノール(10μg/ml)を加え
てホモジナイズし、遠心分離(20000×g、15分)を行
なったのち、えられた上清中のノルエピネフリンを電気
化学検出器付高速液体クロマトグラフィーを用いて定量
した。
被検薬物投与群および対照群とともに、無処置群(正
常ラット)におけるラット心臓1gあたりのノルエピネフ
リン含量(ng/g)の測定してえられた結果を第5表に示
す。
第5表より、6−ヒドロキシドーパミン投与によるラ
ット心臓ノルエピネフリンの枯渇がDCCM・HClの投与に
より抑制されており、DCCM・HClがノルエピネフリンニ
ューロン賦活作用を有していることがわかる。
実施例6 (p−クロロアンフェタミン(p−chloroamphetamin
e)投与によるマウス脳内セロトニン枯渇に対する作
用) 雄性Slc:ddY系マウスに被検薬物を経口投与し、その6
0分後にp−クロロアンフェタミン10mg/kgを腹腔内投与
した。被検薬物としては、DCCM・HCl(3、10mg/kg)お
よび比較薬物であるアミトリプチリン(10、30、90mg/k
g)を用いた。また、蒸留水のみを経口投与したラット
を対照群として用いた。
被検薬物投与6時間後にマウスを断頭して全脳を摘出
し、摘出した全脳に0.06M過塩素酸(2ml)および内部標
準物質としてN−メチルセロトニン(10μg/ml)を加え
てホモジナイズし、遠心分離(20000×g、20分)を行
なったのち、えられた上清中のセロトニンを電気化学検
出器付高速液体クロマトグラフィーを用いて定量した。
無処置群(正常ラット)のセロトニン含量に対する被
検薬物投与群および対照群それぞれのセロトニン含量の
百分率(%)を求めた。その結果を第6表に示す。
第6表より、p−クロロアンフェタミン投与によるマ
ウス脳内セロトニンの枯渇がDCCM・HClの投与により抑
制されており、DCCM・HClがセロトニンニューロンの賦
活作用を有していることがわかる。
実施例7 (6−ヒドロキシドーパミン投与による片側黒質破壊ラ
ットの旋回行動に対する作用) 雄性Std:Wistar系ラットを1群あたり8匹用いて実験
を行なった。
ラットの右側黒質に6−ヒドロキシドーパミン8μg/
4μを注入して、片側黒質破壊ラットを作製し、片側
黒質破壊ラットに被検薬物を経口投与した。被検薬物と
しては、DCCM・HCl(3、10mg/kg)および比較薬物であ
るアマンタジン(50mg/kg)を用いた。また、蒸留水の
みを経口投与したラットを対照群として用いた。
被検薬物投与2時間後に、10分間の間のラットの旋回
数を数えた。その結果を第7表に示す。
第7表より、6−ヒドロキシドーパミン投与による片
側黒質破壊ラットの旋回数がDCCM・HClの投与により増
加しており、DCCM・HClがドーパミンニューロンの賦活
作用を有していることがわかる。
実施例8 (チオペンタールナトリウム投与によるラットの麻酔の
持続時間に対する作用) 雄性Std:Wistar系ラット(1群6匹)にDCCM・HCl(1
0、30mg/kg)を経口投与し、その60分後にチオペンター
ルナトリウム40mg/kgを静脈内投与した。なお、蒸留水
のみを経口投与したラットを対照群として用いた。
チオペンタールナトリウムをラットに静脈内投与して
から正向反射が回復するまでの時間を測定し、それを麻
酔の持続時間(秒)とした。その結果を第8表に示す。
第8表より、チオペンタールナトリウム投与による麻
酔の持続時間がDCCM・HClの投与により短縮しているこ
とがわかる。したがって、DCCM・HClが中枢神経の賦活
作用を有し、昏睡の治療に用いうることがわかる。
実施例9 (マウスの自発運動に対する作用) 雄性Slc:ddY系マウスに被検薬物を経口投与し、その
直後より位置移動測定型自発運動測定装置を用いて、1
時間毎に16時間後まで経時的にマウスの運動量を測定し
た。
被検薬物としては、DCCM・HCl(10、40mg/kg)および
比較薬物であるメタンフェタミン(10、40mg/kg)を用
いた。また、蒸留水のみを経口投与したマウスを対照群
として用いた。
DCCM・HCl(X、第1図参照)およびメタンフェタミ
ン(M、第1図参照)をそれぞれ10または40mg/kg投与
したマウスならびに蒸留水(C、第1図参照)を投与し
た各マウスの1、2、4、8および16時間後における運
動量の値は、自然対数変換値の平均値としてもとめた。
その結果を平均値と標準偏差を示すバー とともに第1図に示す。
用いたマウス数はDCCM・HCl(X)10mg/kg投与群で7
匹、40mg/kg投与群で12匹、メタンフェタミン(M)10m
g/kg投与群で7匹および40mg/kg投与群で10匹、さらに
蒸留水(C)投与群(対照群)では12匹であった。ただ
し、16時間後の測定時のみ、マウス数はDCCM・HCl
(X)およびメタンフェタミン(M)の10mg/kg投与群
でそれぞれ5匹ならびに40mg/kg投与群および蒸留水
(C)の投与群でそれぞれ10匹であった。
なお、第1図において、有意差はダネットt−検定に
より対照群との比較の結果えられた危険率(p)を用い
て示し、1%の危険率(p≦0.01)で有意差を示した投
与群に印(**)を付している。
第1図より、DCCM・HClの投与により自発運動量が増
加しており、DCCM・HClが中枢神経の賦活作用を有して
いることがわかる。
毒性試験 雄性Slc:ddY系マウスを1群あたり10匹用いた。被検
薬物として、DCCM・HCl(200、800mg/kg)および比較と
して、抗うつ薬であるデシプラミン(200、800mg/kg)
を用い、被検薬物の経口投与の0.5、1、2、4、18お
よび24時間後に死亡したマウスの数を求めた。その結果
を第9表に示す。
第9表より、DCCM・HClのLD50値が346mg/kg(経口投
与)であることがわかる。
つぎに、DCCM・HClを有効成分とする本発明の脳機能
改善剤の製剤例を示す。
製剤例1 下記の成分を有する錠剤(150mg/錠)を通常の方法に
したがって調製した。
製剤例2 下記の成分を有するカプセル剤(100mg/5号カプセ
ル)を通常の方法にしたがって調製した。
製剤例3 DCCM・HCl10mgを生理食塩水1mlに溶解したのち、通常
の方法にしたがって注射剤を調製した。
〔発明の効果〕
本発明の脳機能改善剤、具体的には抗健忘剤および老
人性痴呆改善剤は、非常にすぐれた中枢神経賦活作用と
同時に自発運動増加およびドーパミン作用増強作用を示
すことにより、知的機能または自発運動機能が低下した
疾患、たとえば健忘症、老人性痴呆症などの治療におい
て極めてすぐれた治療効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例9でえられた、被検薬物(DCCM・HCl
(10、40mg/kg)およびメタンフェタミン(10、40mg/k
g))および蒸留水のそれぞれを投与されたマウス群と
1、2、4、8および16時間後における各投与群のマウ
スの運動量(自然対数変換値)との関係を示すグラフで
ある。 第1図において、XはDCCM・HCl、Mはメタンフェタミ
ンおよびCは蒸留水、またバー は各投与群の標準偏差をそれぞれあらわしている。 また、第1図において、用いたマウス数はDCCM・HClの1
0mg/kg投与群で7匹、40mg/kg投与群で12匹、メタンフ
ェタミンの10mg/kg投与群で7匹、40mg/kg投与群で10匹
および蒸留水投与群で12匹であった。ただし、16時間後
の測定時のみマウス数はDCCM・HClおよびメタンフェタ
ミンの10mg/kg投与群でそれぞれ5匹ならびに40mg/kg投
与群および蒸留水投与群でそれぞれ10匹であった。 なお、第1図において、印(**)が付された投与群
は、ダネットt−検定により対照群と比較た結果1%の
危険率(p≦0.01)で有意差を示す投与群である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中川 照丈 滋賀県大津市一里山3丁目1番4号 ハ イツ山ノ神105号 (56)参考文献 特開 昭57−181043(JP,A) 特開 昭59−89659(JP,A) 特開 昭61−19754(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】N,N−ジメチル−1−[1−(4−クロロ
    フェニル)シクロブチル]−3−メチルブチルアミンま
    たはその薬理学的に許容しうる酸付加塩を有効成分とし
    て含有する抗健忘剤。
  2. 【請求項2】N,N−ジメチル−1−[1−(4−クロロ
    フェニル)シクロブチル]−3−メチルブチルアミンま
    たはその薬理学的に許容しうる酸付加塩を有効成分とし
    て含有する老人性痴呆改善剤。
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