JP2669233B2 - 車両用ステアリング装置 - Google Patents

車両用ステアリング装置

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JP2669233B2
JP2669233B2 JP31059791A JP31059791A JP2669233B2 JP 2669233 B2 JP2669233 B2 JP 2669233B2 JP 31059791 A JP31059791 A JP 31059791A JP 31059791 A JP31059791 A JP 31059791A JP 2669233 B2 JP2669233 B2 JP 2669233B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車の前輪を操舵
するのに用いられる車両用ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車(車両)では、油圧式のパワース
テリング装置を装備することが行われている。
【0003】従来より、このようなステアリング装置に
は、入・出力部の間にトーションバーを設けて構成され
るステアリングギヤ(例えばラック&ピニオン式et
c.)の上記入力部に、ステアリングシャフトを介して
ハンドルを連結し、上記ステアリングギヤに、トーショ
ンバーの捩じれを利用してオイルポンプからパワーシリ
ンダへ油圧を供給させて必要なアシスト力を発生させ
る、ロータリバルブを用いたアシスト系を設けた構造が
用いられている。
【0004】こうしたステアリング装置は、ステアリン
グシャフトおよびトーションバーを経て伝達されるハン
ドルの回転を、ステアリングギヤにて操舵方向の変位に
変換して前輪を操舵する。この操舵の際に生じるトーシ
ョンバーの捩じれ(路面抵抗による)にしたがいロータ
リバルブが回動変位し、パワーシリンダの右側あるいは
左側の室へ油圧が供給されて前輪を操舵した方向へ駆動
し、操舵力を軽くするようにしてある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、自動車のス
テアリング特性には、アンダステア特性という運動特性
があることは知られている。
【0006】すなわち、自動車の運動特性は、前後輪に
働くコーナリングパワー(タイヤ横力発生能力)の大小
により基本的に支配され、前輪のコーナリングパワーが
小さければ、アンダステア特性(舵角一定のまま速度を
上げると旋回半径が大きくなる)が強くなる傾向を示
し、前輪のコーナリングパワーが大きくなれば、アンダ
ステア特性が弱くなる傾向を示す。
【0007】ここで、アンダステア特性の傾向が強い
と、中低速域では曲りにくくなる反面、高速域での安定
性が高いという安定性指向の自動車となり、アンダステ
ア特性の傾向が弱いと、逆にスポーティ性指向の自動車
となる。
【0008】通常、自動車では、このような中低速域で
の曲りやすさと、高速域での安定性とを両立させるのは
困難で、安定性指向とスポーティ性指向とのどちらかを
選択することが余儀なくされている。一般には、弱いア
ンダステア特性が自動車に与えられている。このため、
自動車の運動性能を活かし切れないという事情をもって
いた。
【0009】この発明は、このような事情に着目してな
されたもので、その目的とするところは、大幅に車両の
運動特性を向上させることができる車両用ステアリング
装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
にこの発明の車両用ステアリング装置は、ステアリング
シャフトを軸方向に分割し、この分割された一方のステ
アリングシャフト部分の軸端に前記分割された他方のス
テアリングシャフト部分の軸端に向って延びるトーショ
ン板ばねを設け、このトーション板ばねにこのトーショ
ン板ばねの板面を挟み付けるようにして、同板ばねの長
手方向に沿って転動自在な一対の挟持ローラを設け、前
記分割された他方のステアリングシャフト部分の端部に
前記挟持ローラを回転自在に支持する支持部材を前記ト
ーション板ばねの長手方向に沿って移動可能に連結し、
かつこの支持部材を前記トーション板ばねの長手方向に
沿って操作して、前記トーション板ばねの長手方向にお
ける前記挟持ローラの転接位置を連続的に可変する操作
手段を設けたことにある。
【0011】
【作用】この発明の車両ステアリング装置によると、操
作手段で支持部材をトーション板ばねの長手方向に沿っ
て移動させると、トーション板ばねの板面を挟み付けて
いる挟持ローラが同板ばねの長手方向に沿って転動す
る。この挟持ローラの移動により、トーション板ばねの
回転方向を拘束する点が変位する。このことは、ステア
リングシャフトの一部をなすトーション板ばねのねじり
方向の剛性が連続的に可変する。これにより、トーショ
ン板ばねの捩じり剛性は最も高い状態から最も低い状態
にまで変化することが可能となる。
【0012】このことは、トーション板ばねは、コンプ
ライアンス(柔らかさ=剛性の逆数)が100%活かさ
れる状態から、ほとんど生かされない状態にまで連続的
に変化させることができることになる。ここで、ステア
リング装置において、コンプライアンスは前輪のコーナ
リングパワーを低下させる作用として働くことは知られ
ている。それ故、アンダステア特性が「弱」から「強」
へ連続的に変化(あるいはオーバステア特性;「強」〜
「弱」の変化)させることが可能となる。
【0013】したがって、従来、一義的であったステア
リング特性を調節することができ、1台の自動車にアン
ダステア特性の全部(あるいはオーバステア特性の全
部)を与えることができる(車両の運動特性の向上)。
【0014】
【実施例】以下、この発明を図1ないし図5に示す第1
の実施例にもとづいて説明する。図2は、例えばこの発
明を適用した自動車(車両)のパワーステアリング装置
の外観を示す斜視図、図1はその構造を概略的にした図
を示し、1は例えばラック&ピニオン式のステアリング
ギヤである。
【0015】ステアリングギヤ1は、ケ−シング2内に
ラック3(出力部)およびそのラック3と噛合うピニオ
ン4内蔵され、このピニオン4の軸端部6(入力部)
にバルブ駆動用の第1のト−ションバ−5連結して
【0016】そして、ラック3の一方の端部がステアリ
ングロッド7、タイロッド8(いずれも図1にのみ図
示)、ナックル9を介して、左側の前輪10に連結され
る。また他方の端部はステアリングロッド11、パワー
シリンダ装置12(シリンダ12aを貫通したピストン
ロッド12bの一部にシリンダ12aを仕切るようにピ
ストン12cを設けてなるもの)、タイロッド13、ナ
ックル14を介して、右側の前輪10に連結されてい
る。
【0017】またケーシング2の上部端から突出してい
る上記軸端部6には、ステアリングジョイント16、ス
テアリングシャフト17を介してハンドル18が連結さ
れていて、ハンドル18から回転変位を入力すると、ス
テアリングシャフト17、トーションバー5、ピニオン
4、ラック3、ステアリングロッド7,11を介して、
左右前輪10,10が操舵されるようになっている。
【0018】ステアリングギア1の入力軸6とピニオン
4の端部(出力軸の端部)との間には、周知な構造のロ
ータリバルブ19(図1のみに図示)が設けられてい
る。このロータリバルブ19の流入ポート(図示しな
い)が、自動車に搭載された走行用エンジンで駆動され
るオイルポンプ(図示しない)に接続され、流出ポート
がオイルリザーバ(いずれも図示しない)に接続されて
いる。またロータリバルブ19の入出ポート(図示しな
い)は、上記パワーシリンダ装置12の仕切られた各室
に接続してある。これにより、ロータリバルブ12の変
位にしたがい、ロータリバルブ12から操舵力および操
舵方向に応じた油圧を、パワーシリンダ装置12の各室
へ供給できるようにしている(アシスト系)。
【0019】一方、図3に示されるように上記ステアリ
ングシャフト17は中間部から、軸心方向に複数、例え
ば二つに分割されている。ここで、分割したステアリン
グシャフト17のうち、上側をシャフト部分17aと
し、下側をシャフト部分17bとする。これら分割した
シャフト部分17a,17b間には、図5にも示すよう
にトーションリーフ20(この発明のトーション板ばね
に相当)がかけ渡されている。
【0020】すなわち、トーションリーフ20は、所定
長さをもつ帯板状の板ばねから構成されている。そし
て、このトーションリーフ20の一端部が図4の(b)
でも示すようにシャフト部分17bの軸端中央に設けた
フォークエンド形状の連結部21aにボルト21bで固
定され、トーションリーフ20の他端部をシャフト部分
17aの軸端に向かって延ばしている。またこのトーシ
ョンリーフ20の他端部も、先の一端部のときと同様、
シャフト部分17aの軸端中央に設けたフォークエンド
形状の連結部21cにボルト21dで固定され、トーシ
ョンリーフ20の全体がステアリングシャフト17の一
部をなすようにしてある。
【0021】このトーションリーフ20には、図4の
(a)にも示されるように一対の挟持ローラ22,22
が、同トーションリーフ20の板面を挟み付けるように
して転動自在に設けられている。また挟持ローラ22,
22は、トーションリーフ20の長手方向と直角な方向
に沿って並行に配置されていて、トーションリーフ20
の長手方向に沿って転動できるようにしている。これら
挟持ローラ22,22は、スライダ構造を介して、シャ
フト部分17aの軸端部に支持されている。
【0022】ここで、このスライダ構造について説明す
れば、23はスライダ(この発明の支持部材に相当)で
ある。スライダ23は、例えばステアリングシャフト1
7の外径に対応した内径をもつ筒状部分24を有してい
る。この筒状部分24は、所定長を有していて、外周面
にはおねじ部24aが刻設されている。また筒状部分2
4の右側端には、図4の(c)で示すように大きな幅寸
のスリット25(ローラ嵌入用)で左右に2分割された
大径筒部26が形成されている。このスリット25で分
割された左右周壁26a,26a間の上下部には、所定
の間隔で一対の支持ローラ27,27が回転自在に支持
されている。各支持ローラ27,27は大径筒部26の
軸心方向と直角な方向に沿って並行に配置してある。こ
れら支持ローラ27,27間には、図4の(c)で示す
ようにシャフト部分17aの軸端に形成された平板状部
分28、すなわちシャフト部分17aの上下方向端を切
欠してなる所定長の平板状部分28が嵌め込まれてい
る。つまり、支持ローラ27,27を、平板状部分28
の上下に形成された帯状な平坦面上をシャフト部分17
aの軸心方向に沿って転動するようにしてある。これに
よって、筒状部分24をシャフト部分17aに対し、回
転方向に対しては規制し、トーションリーフ20の長手
方向に対しては移動(スライド)自在となるように連結
している。つまり、筒状部分24はハンドル操作にした
がって回転する。なお、本実施例では、組合う支持ロー
ラ27,27と平板状部分28との位置関係を所定に保
つために、図4の(c)に示すように各左右周壁26a
の中段にスリット29を設け、このスリット29で分け
た上下壁部分26bをボルトナット30で締結してあ
る。但し、31は支持ローラ27を回転自在に軸支する
ためのシャフト、32は同じく軸受を示す。
【0023】筒状部分24の左側端には、図4の(a)
で示すようにトーションリーフ20の幅寸法と対応した
間隔で、左右一対の側壁33,33が突設されている。
これら側壁33,33間の上下部に上記挟持ローラ2
2,22が回転自在に支持され、筒状部分24のスライ
ドにしたがって挟持ローラ22,22をトーションリー
フ20の長手方向沿いに走行可能にしてある。なお、本
実施例では、組合う挟持ローラ22,22とトーション
リーフ20との位置関係を所定に保つために、図4の
(a)に示すように側壁33,33にその側壁33,3
3の壁面と直角な方向から箱形の一対のカバー34,3
4を被せ、これらカバー34,34の相互をボルトナッ
ト35,35で締結してある。但し、36は挟持ローラ
22を回転自在に軸支するためのシャフト、37は同じ
く軸受を示す。
【0024】また上記各側壁33,33の先端部は前方
に延びている。この延びた側壁部分38,38は、図5
に示すようにシャフト部分17bの外形と対応した円弧
形にそれぞれ形成されている。そして、この延出した側
壁部分38,38がシャフト部分17bに摺動自在に嵌
挿され、同側壁部分38,38をガイドとして、挟持ロ
ーラ22,22を目標となる地点に正しく導くことがで
きるようにしてある。なお、側壁部分38,38の外周
面には、同側壁部分38,38によるガイド機能を常に
維持するために筒形のスリーブ39が嵌挿してある。
【0025】但し、40は筒状部分24および側壁部分
38,38の内周面に設けた摺動スリーブ、41は側壁
部分38の外周面に設けた当接部材、42はシャフト部
分17bを覆う下部コラムカバー、43は筒状のスライ
ダレール44を用いて下部コラムカバー42の外周面に
回転方向に対しては自在で軸方向に対しては動きが拘束
されるように設けた筒状の支持用部材、45は上記当接
部材41に対応して下部コラムカバー42の内周面に設
けた上記スライダ23の前方方向の移動を規制するスト
ッパーである。こうして構成されたスライダ23の筒状
部分24には、送りユニット47が設けられている。
【0026】この送りユニット47は、駆動部49、筒
状部分24に設けたアクチェータ部50、駆動部49を
制御する制御系51(図1にのみに図示)の組合わせか
らなる。
【0027】駆動部49は、例えば筒状部分24の周辺
にある、自動車の車体(図示しない)を構成するフレー
ムなどの部材48に、減速機付モータ52をスライダ2
3の軸心と並行に据え付けてなる。但し、52aは減速
機付モータ52のモータ部を示し、52bは歯車式の減
速機構部を示す。減速機付モータ52の出力軸には駆動
用のギヤ53が取着され、また同出力軸側の前面には図
5にも示すように外周部の一部が切欠(ギヤ噛合い用)
したギヤカバー54が取着されている。但し、図中54
aはギヤカバー54の切欠部を示す。
【0028】アクチェータ部50について説明すれば、
55は筒状部分24の周囲に当該筒状部分24の軸心と
並行に外挿されたリングケーシングである。リングケー
シング55は、内方が開口したコ字形の断面をもち、外
周部には図5にも示すようにこの外周部の一部を切欠し
てなるギヤ噛合い用のための切欠部55aが形成してあ
る。
【0029】リングケーシング55内には従動ギヤ56
が回転自在に収容されている。従動ギヤ56は、内周面
にめねじ部56aを有し、外周面にギヤ部56bを有し
て構成されている。なお、57,57は従動ギヤ56を
回転自在に受ける一対のスラストワシャ、58は同スラ
ストワッシャ57,57の間隔を設定するための調整用
ボルトである。そして、この従動ギヤ56のめねじ部5
6aが筒状部分24のおねじ部24aに回転自在に噛合
っている。
【0030】またリングケーシング55と上記減速機付
モータ52のギヤカバー54とは、切欠部同志が組合う
ようにして、相互がボルト59で締結されている。そし
て、この締結にしたがい、リングケーシング55の従動
ギヤ56のギヤ部56bと減速機付モータ52のギヤ5
3とは噛合していて、減速機付モータ52で従動ギヤ5
6を回転させるようにしてある。
【0031】つまり、減速機付モータ52を駆動すれ
ば、従動ギヤ56の回転にしたがって筒状部分24、す
なわちスライダ23をトーションリーフ20の長手方向
に沿ってスライドできるようにしている。
【0032】これにより、挟持ローラ22,22によっ
てトーションリーフ20の回転方向が拘束される位置
を、トーションバー20の一端からそれとは反対の他端
までの広い範囲において変えることができるようにして
いる。そして、このトーションリーフ20の規制する位
置の可変によって、トーションリーフ20の捩じり方向
の剛性を連続的に可変できるようにしている。なお、ト
ーションリーフ20の一端の符号Xで示す地点は、トー
ションリーフ20のコンプライアンスが100%、活か
される地点(コンプライアンス:100%)で、符号Y
で示す地点は、トーションリーフ20のコンプライアン
スがほとんど活かされない地点(コンプライアンス:0
%)を示し、Sはトーションリーフ20のコンプライア
ンスが「0%〜100%」の範囲で連続的に可変するス
トロークを示している(いずれも図3にのみ図示)。
【0033】ここで、上記支持用部材43の外周面に
は、図5にも示されるようにプランジャタイプのストロ
ークセンサ60がブラケット61を介して据え付けられ
ている。このストロークセンサ60は、シャフト部分1
7bの軸心と並行に配置されている。またこのストロー
クセンサ60の先端部の作動子60aは、上段側のカバ
ー34に立設されたブラケット62にねじ止め固定され
ている。これにより、ストロークセンサ60は、スライ
ダ23の動きに追従して移動する作動子60aの位置か
ら、トーションリーフ20における挟持ローラ位置を検
出できるようにしている。
【0034】制御系51について説明すれば、63は制
御部(図1にのみ図示)である。制御部63は、例えば
マイクロコンピュータおよびその周辺回路から構成され
る。制御部63には、コンプライアンスを可変操作する
ための例えばダイヤル式の操作部64が接続されてい
る。この操作部64は、例えば「コンプライアンス:1
00%〜コンプライアンス0%」の範囲で操作可能なダ
イヤルから構成してある。また制御部63には、上記減
速機付モータ52に組込んであるモータ部52aの駆動
回路63aおよび上記ストロークセンサ60が接続され
ている。
【0035】制御部63の記憶機能には、例えばトーシ
ョンリーフ20のコンプライアンスに応じたトーション
リーフ20(X〜Yの範囲)における挟持ローラ位置を
示すマップが設定されている。
【0036】また制御部63には、例えば操作部64か
ら入力されるコンプライアンスと、ストロークセンサ6
0の出力信号にしたがって上記マップから読取ったコン
プライランスとを比較する機能と、この比較結果の差が
「0」になるように駆動回路65を制御する機能とが設
定されていて、操作部64で設定したコンプライアンス
となる所定位置(トーションリーフ20の「X〜Y間の
ある位置」)に挟持ローラ22,22を位置決めるよう
にしてある。
【0037】これにより、この操作部64のダイヤル操
作にしたがい、「コンプライアンス:100%〜コンプ
ライアンス0%」の範囲で、トーションリーフ20のコ
ンプライアンスを任意に設定できるようにしてある(こ
の発明の操作手段に相当)。なお、図中、66はシャフ
ト部分17aの周囲を覆うように設けた上部コラムカバ
ーである。
【0038】しかして、このように構成されたステアリ
ング装置は、ハンドル18を回転させると、その回転が
シャフト部分17a、トーションリーフ20、シャフト
部分17bおよびトーションバー5を順に経てピニオン
4に伝達され、ラック3をハンドル18で操舵した方向
へ駆動する。
【0039】このとき、トーションバー5は路面抵抗に
よって捩じられる。この捩じりにしたがってロータリバ
ルブ19が回動変位し、このロータリバルブ19の回転
差によってオイルポンプからの油圧がパワーシリンダ装
置12の右側の室あるいは左側の室に供給され、前輪1
0,10をハンドル18で操舵した方向に駆動して、操
舵力を軽くする。
【0040】こうしたステアリング装置において、今、
例えば最も強いアンダステア特性に変えたい場合には、
運転者が操作部64のダイヤルを「コンプライアンス:
100%」の位置まで回転させる。
【0041】すると、制御部63は、現在のトーション
リーフ20のコンプライアンスを、ストロークセンサ6
0から検出される信号にしたがって「コンプライアンス
ー挟持ローラ位置」のマップから読取り、操作部64か
ら入力されたコンプライアンスと比較する。
【0042】制御部63は、この差に応じた制御信号を
駆動回路65に出力して、モータ部52aを駆動する。
すると、従動ギヤ54が回転し、ねじ送り作用でスライ
ダ23をシャフト部分17a側へ送る(スライド)。こ
れにより、挟持ローラ22,22は、トーションリーフ
20をシャフト部分17a側に向かって走行(転動)す
る。すなわち、トーションリーフ20の回転方向を規制
する位置は連続的に変化していく。
【0043】制御部63は、比較した差が「0」になる
と、モータ部52aを停止する。これにより、スライダ
ー25は符号Xの地点、すなわち「コンプライアンス:
100%」に位置決められる。これにより、トーション
リーフ20はコンプライアンスが100%、活かされる
状態(捩じり剛性:小)に設定される。
【0044】ここで、トーションリーフ20は、ステア
リングギヤ1のトーションバー5と直列のばね要素であ
り、ステアリング装置の全体のコンプライアンスのかな
りの部分を占める。しかも、このコンプライアンスは前
輪10,10のコーナリングパワーを低下させる要素と
して働くものである。それ故、上記設定によって、ステ
アリング装置は強いアンダーステア特性の傾向に変更さ
れることになる。
【0045】また、最も弱いアンダステア特性に変えた
い場合には、操作部64のダイヤルを「コンプライアン
ス:0%」の位置まで回転させれば、先の「「コンプラ
イアンス:100%」のときと同様の作用で、今度は挟
持ローラ22,22の位置は符Yの地点、すなわち「コ
ンプライアンス:0%」に位置決められる。
【0046】これにより、トーションリーフ20はコン
プライアンスがほとんど活かされない状態(捩じり剛
性:大)に設定され、ステアリング装置は弱いアンダー
ステア特性の傾向に変更される。
【0047】さらにまた例えば中間のアンダステア特性
に可変する場合には、操作部64をのダイヤルを、例え
ば「コンプライアンス:50%」程度の位置まで回転さ
せれば、今度は挟持ローラ22,22は符号Xと符号Y
との中間のある部位に位置決められる。
【0048】これにより、トーションリーフ20のコン
プライアンスは50%程度、活かされる状態(ねじり剛
性:中)に設定され、中間のアンダーステア特性の傾向
に変更される。
【0049】それ故、運転者の好みに応じて、ステアリ
ング装置のステアリング特性を変更でき、自動車に安定
性指向とスポーティ性指向との双方の運動特性をもたら
すことができる。
【0050】よって、大幅に自動車の運動特性を向上さ
せることができ、従来、困難とされていた中低速域での
曲りやすさと高速域での安定性といった両方の性能を両
立させることができる。しかも、トーションリーフ20
を挟持ローラ22,22が走行するので、トーションリ
ーフ20のコンプライアンスの可変はスムーズである。
図6は、この発明の第2の実施例を示す。
【0051】第2の実施例は、減速機付モータ52の駆
動力が、ハンドル18の操舵方向に加わるのを防ぐ構造
を採用した点で、上記第1の実施例とは異なっているも
のである。具体的には、本実施例はスライダ23の筒状
部分24の構造を、つぎのようにしている。
【0052】すなわち、筒状部分24は、おねじ部24
aがある第1の筒状部70と、それ以外の本体部分とな
る径の小さな第2の筒状部71とに分割されている。そ
して、これら第1の筒状部70が、滑り軸受を構成する
筒状の滑りブッシュ72,72を介して、第2の筒状部
70(大径筒部26とカバー34,34で挟まれた部
位)に回転自在に嵌挿されている。そして、この第1の
筒状部70のおねじ部24aを従動ギヤ56に噛み合わ
せるようにしている。
【0053】こうした構造にすると、第1の筒状部70
と第2の筒状部71との周方向における摺動により、ス
ライダ23の本体となる第2筒状部71bには、ねじ送
り作用で発生するトーションリーフ20の長手方向に沿
う外力のみが伝達されることになる。つまり、第1の筒
状部70が第2の筒状部71の外周面を自在に回転(摺
動)することで、スライダ23に伝達される伝達力のう
ち、回転方向の力を吸収する。これにより、減速機付モ
ータ52の回転がハンドル18の操舵方向に加わるのを
防ぐことができる。
【0054】このようにすると、ハンドル18の操舵
中、自動車が直進走行中、減速機付モータ52が作動し
ても、ハンドル18を握っている運転者に不快感を与え
ずにすむという効果をもたらす。
【0055】なお、本実施例では、ガイドシャフト73
でブラケット61とリングケーシング55とは締結され
ていて、これによりストロークセンサ60の回り止めを
している。図7および図8は、この発明の第3の実施例
を示す。
【0056】第3の実施例は、スライダ23とは別途に
ねじ軸75を設けて、スライダ23を移動させる構造を
採用した点で、上述した第1および第2の実施例とは異
なっている。具体的には、本実施例は送りユニット47
の構造を、つぎのようにしている。
【0057】すなわち、スライダ23の筒状部分24の
外周面には、おねじ部ではなく、フランジ状に形成され
た受部76が取着されている。またスライダ23の筒状
部分24の周辺の車体を構成する部品(いずれも図示し
ない)には、筒状部分24の軸心と並行に、ねじ軸7
5、摺動タイプのストロークセンサ77が上下に並んだ
状態で据付けられている。なお、78はねじ軸75の端
部を回転自在に支持する軸受である。そして、このねじ
軸75の一方の端部には、制御部63で制御されるモー
タ80が連結され、制御部63からの制御信号にしたが
って回転するようにしてある。
【0058】このねじ軸75には図8に示されるように
第2のスライダ79が回転自在に螺挿されている。この
第2のスライダ79の外周一部には凸部79aが形成さ
れていてる。この凸部79aがストロークセンサ77の
検出溝77aに挿入され、同溝で同スライダ79の回転
方向の動きを規制している。そして、この第2のスライ
ダ79に形成したコ字形の係止溝79bに上記受部76
の外周の一部が摺動自在に嵌挿され、第2のスライダ7
9のスライドにしたがってスライダ23をトーションリ
ーフ20の軸心方向に沿ってスライドできるようにして
いる。なお、図中81はモータ80の出力軸とねじ軸7
5とを接続するための継手を示す。
【0059】こうした送りユニット47の構造は、モー
タ80が作動すると、第2のスライダ79は回転するこ
となしに、ねじ軸75の送りでトーションリーフ20の
長手方向に沿って移動し、受部76を介してスライダ2
3をトーションリーフ20の長手方向に沿って移動させ
る。したがって、先の第1および第2の実施例と同様、
トーションリーフ20のコンプライアンスを連続的に可
変することができるものである。なお、第2および第3
の実施例において、上記第1の実施例と同じ構成部品に
は同一符号を付してその説明を省略した。
【0060】なお、上述したいずれの実施例共、アンダ
ステア特性を可変するものを一例に挙げて述べたが、同
一構造でオーバステア特性も可変できることはいうまで
もない。
【0061】また、上述した実施例共、トーションリー
フ20を、分割したシャフト部分17aとシャフト部分
17bとの間にかけ渡すように設けた構造を一例に挙げ
たが、これに限らず、シャフト部分17a,17bの一
方の軸端にトーションリーフ20を連結しただけとし、
他方の軸端にスライダ23を設けて、挟持ローラ22,
22の移動にしたがってトーションリーフ20のコンプ
ライアンスを変えるようにしてもよい。
【0062】さらに上述した実施例は、筒状部分24を
もつスライダ23を用いた構造で挟持ローラ22,22
を支持させたが、これに限らず、他の構造で挟持ローラ
22,22を支持させるようにしてもよい。
【0063】さらにまた、上述したいずれの実施例共、
この発明をパワーステアリング装置に適用したが、これ
に限らず、マニュアル式のステアリング装置に適用して
もよい。
【0064】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、
トーションリーフのコンプライアンスの連続的な可変に
より、ステアリング装置のステアリング特性を連続的に
可変することができ、車両の運動性能を連続的にコント
ロールすることができる。
【0065】したがって、車両に安定性指向とスポーテ
ィ性指向との双方の運動特性をもたらすことができ、大
幅に自動車の運動特性を向上させることができるように
なり、従来、困難とされていた中低速域での曲りやすさ
と、高速域での安定性とを両立させることができる。し
かも、トーションリーフにローラを走行させる構造は、
トーションリーフのコンプライアンスを連続的に可変す
る上でスムーズである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例のステアリング装置の
概略的な構成を、制御系と共に示す図。
【図2】同実施例のステアリング装置の構成を示す斜視
図。
【図3】ステアリング装置のステアリングシャフトに組
込んだコンプライアンスを可変する構造を示す断面図。
【図4】(a)は、図3中、A−A線に沿う断面図。
(b)は、図3中、B−B線に沿う断面図。(c)は、
図3中、C−C線に沿う断面図。
【図5】コンプライアンスを可変する構造の分解斜視
図。
【図6】この発明の第2の実施例の要部となるコンプラ
イアンスを可変する構造を示す断面図。
【図7】この発明の第3の実施例の要部となるコンプラ
イアンスを可変する構造を示す断面図。
【図8】図7中、D−D線に沿う断面図。
【符号の説明】
1…ステアリングギヤ、3…ラック、4…ピニオン、5
…トーションバー、12…パワーシリンダ装置、17…
ステアリングシャフト、17a,17b…シャフト部
分、18…ハンドル、19…ロータリバルブ、20…ト
ーションリーフ(トーション板ばね)、22…挟持ロー
ラ、23…スライダー(支持部材)、24a…おねじ
部、27…支持ローラ、47…送りユニット、53…ギ
ヤ、56…従動ギヤ、56a…めねじ部、60…ストロ
ークセンサ、63…制御部、64…操作部、65…駆動
回路。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大崎 正喜 東京都港区芝五丁目33番8号 三菱自動 車工業株式会社内 (72)発明者 増田 広之 愛知県岡崎市橋目町字中新切1番地 三 菱自動車エンジニアリング株式会社岡崎 事業所内 (72)発明者 杉浦 正 愛知県岡崎市橋目町字中新切1番地 三 菱自動車エンジニアリング株式会社岡崎 事業所内 (72)発明者 後藤 伸一 愛知県岡崎市橋目町字中新切1番地 三 菱自動車エンジニアリング株式会社岡崎 事業所内 (56)参考文献 特開 昭60−71370(JP,A) 実開 昭62−170374(JP,U) 実開 昭61−78780(JP,U) 実開 昭61−81015(JP,U)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前輪につながるステアリングギヤと、 ハンドルの変位を前記ステアリングギヤに伝えるため
    の、軸方向に分割されたステアリングシャフトと、 この分割された一方のステアリングシャフト部分の軸端
    に設けられ、前記分割された他方のステアリングシャフ
    ト部分の軸端に向って延びるトーション板ばねと、 このトーション板ばねにこのトーション板ばねの板面を
    挟み付けるようにして設けられた、当該板ばねの長手方
    向に沿って転動自在な一対の挟持ローラと、 前記分割された他方のステアリングシャフト部分の端部
    に前記トーション板ばねの長手方向に沿って移動可能に
    連結されてなり、前記挟持ローラを回転自在に支持する
    支持部材と、 この支持部材を前記トーション板ばねの長手方向に沿っ
    て操作して、前記トーション板ばねの長手方向における
    前記挟持ローラの転接位置を連続的に可変する操作手段
    とを具備したことを特徴とする車両用ステアリング装
    置。
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