JP2668530B2 - 9Cr−Mo鋼用溶接ワイヤ - Google Patents
9Cr−Mo鋼用溶接ワイヤInfo
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- JP2668530B2 JP2668530B2 JP62061248A JP6124887A JP2668530B2 JP 2668530 B2 JP2668530 B2 JP 2668530B2 JP 62061248 A JP62061248 A JP 62061248A JP 6124887 A JP6124887 A JP 6124887A JP 2668530 B2 JP2668530 B2 JP 2668530B2
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- B23K—SOLDERING OR UNSOLDERING; WELDING; CLADDING OR PLATING BY SOLDERING OR WELDING; CUTTING BY APPLYING HEAT LOCALLY, e.g. FLAME CUTTING; WORKING BY LASER BEAM
- B23K35/00—Rods, electrodes, materials, or media, for use in soldering, welding, or cutting
- B23K35/22—Rods, electrodes, materials, or media, for use in soldering, welding, or cutting characterised by the composition or nature of the material
- B23K35/24—Selection of soldering or welding materials proper
- B23K35/30—Selection of soldering or welding materials proper with the principal constituent melting at less than 1550 degrees C
- B23K35/3053—Fe as the principal constituent
- B23K35/308—Fe as the principal constituent with Cr as next major constituent
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Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、火力発電、原子力発電のボイラー等に使用
される9Cr−Mo鋼を溶接する溶接ワイヤに関するもので
あり、さらに詳しくは高温におけるクリープ特性、耐酸
化性、靭性及び耐割れ性にすぐれた溶接金属を与えるガ
スシールドアーク溶接用ワイヤに係るものである。 〔従来の技術〕 近年、火力発電所の大型化に伴い、ボイラーが高温高
圧条件下で使用される傾向にあり、550℃を超すと耐酸
化性や高温強度の観点から通常の などの低合金鋼に変わって、18Cr−8Niステンレスなど
のオーステナイト系の高級鋼が使用されているのが現状
である。 しかしながら、ステンレス鋼などの高級鋼は低合金鋼
に比べ著しくコストが高く、ボイラー建設費が高価につ
くために、材料上の問題からボイラーの使用温度が逆に
制限されて、現在では550℃が上限となっている。従っ
て、ボイラーの効率を高めるために圧力を高めた超臨界
圧ボイラーが使用されている。 この様な状況に対して、 とオーステナイトステンレス鋼の間を埋めるための鋼材
開発研究がかなり行なわれて来ており、高温でのクリー
プ特性にすぐれ、溶接性も良好な9%Cr−1〜2%Mo系
鋼が開発、実用化されつつある。これら9%Cr−1〜2
%Mo系鋼の溶接は、従来被覆アーム溶接法やサブマージ
アーク溶接法が採用されているが、最近の構造物の大型
化及び厚肉化が進むにつれ、溶接能率の高いガスシール
ドアーク溶接法が採用される様になって来た。しかし、
9%Cr−1〜2%Mo鋼構造物をガスシールドアーク溶接
する場合、溶接金属を母材と同一組成の合金成分系とす
れば溶接部の耐酸化性、耐食性は母材と同程度に維持さ
れるものの、クリープ破断強度が低く、靭性も十分に高
い値を得ることが困難で、さらに溶接性も悪化している
のが実情である。 このような観点からクリープ強度特性、靭性及び溶接
性特に耐割れ性に優れたガスシールドアーク溶接用ワイ
ヤの開発が必要となっている。例えば、特開昭55−3035
4号及び特公昭55−7115号公報に開示されている如く、
9%Cr−Mo系鋼の溶接用ワイヤ中のC,Si,Mn,Cr,Mo,Ni添
加量を限定し、強度及び靭性を高めた技術を示している
が、大巾なクリープ強度を向上しようとするものではな
く、クリープ強度や耐割れ性に優れる9%Cr−1〜2%
Mo鋼用ガスシールドアーク溶接ワイヤを提供するに至っ
ていない。また、特開昭58−221695号公報に記載のもの
では、C,Si,Mn,Cr,Mo,N添加量を限定し、さらに(Mn+S
i),Mn/Si,Oを規制することによってNiを含まない成分
系で強度及び靭性を高める技術を示しているが、大幅な
クリープ強度を向上しようとするものではない。特開昭
60−257991号公報に記載のものではC,Si,Mn,Cr,Mo,Ni添
加量を限定し、Nb,Vの1種以上を添加し(Nb+V)を規
制することによって強度、靭性及び溶接性を良好にする
ための技術を示しているが、十分な強度・靭性や耐割れ
性に優れたワイヤを提供するものではない。特公昭61−
11157号公報に記載のものではC,Si,Mn,Cr,Mo添加量を限
定し、Oを規制することによってフェライト相の析出抑
制による強度、靭性及び溶接性を高めた技術を示してい
るが、大幅なクリープ強度を向上しようとするものでは
なく、クリープ強度や耐割れ性に優れたものではない。
特開昭61−88997号公報に記載のものでは、C,Si,Mn,Cr,
Mo,Niを限定し、Nb,V,Tiを1種以上添加し、(Mo+Ni)
を規制することによって、耐時効脆弱性及び耐高温割れ
性を高めた技術を示しているが、クリープ強度や十分な
靭性を得るガスシールドアーク溶接ワイヤを提供するに
至っていない。さらに、特開昭59−82189号、特開昭59
−274113号及び特開昭61−231591号公報に記載のもので
は、潜弧溶接用ワイヤについて開示されているが、ガス
シールドアーク溶接用ワイヤとしては、適用鋼種が同種
であっても溶接プロセス自体異なり使用することは出来
ない。すなわち同一の溶接金属成分及び性能を得ようと
した場合、ガスシールドアーク溶接法ではワイヤ成分に
よってほぼ決定されるが潜弧溶接法ではワイヤ単独で使
用するのではなく、フラックスと常に一緒に使用するた
めワイヤとフラックスの組合せによって種々な成分及び
性能が得られる。 以上の様な観点から高温高圧下で使用される構造物の
ガスシールドアーク溶接材料としては問題があった。 〔発明が解決しようとする問題点〕 本発明はこの様な事情にかんがみ溶接性特に耐割れ性
を向上させ、なおかつ、クリープ強度特性及び靭性の優
れた9%Cr−1〜2%Mo鋼用ガスシールドアーク溶接ワ
イヤを提供することを目的とするものである。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明はかかる研究の結果達成されたものであって、
本発明の特徴とするところは、耐割れ性を向上させるた
めにC量をかなり低めにコントロールし、C量低下によ
る強度不足を適正な炭化物の析出によって補う点にあ
る。即ち、C量を耐割れ性の点から0.09%未満に抑え、
且つそのような低炭素量でもクリープ破断強度が確保出
来るように、C量との兼ね合いでNb及びV量を適正に制
御し、NbC,V4C3を微細に析出させ、それに伴なって後よ
り析出するM23C6,M6C(但しMは金属元素を指す)の析
出状態を長時間使用後も粗大化しにくいようにコントロ
ールして、低炭素でありながらクリープ破断強度を著し
く高め合せて靭性特性にも優れている。 上記のようなM23C6,M6Cの析出状態を適当にコントロ
ールするためには、それに先立つNbC,V4C3の析出を抑制
する必要があり、そのためには自から最適なNb量、V量
の範囲が存在する。また一方ではこの用途の溶接部は高
温で長時間使用されるため、その間に溶接部が脆化する
ことを抑制しなければならない。本発明ではそのような
観点から適正な炭化物分布に適したC量、Nb量、V量の
関係を決定し、また使用中での脆化を軽減するために適
量のNiを含有させることが有効であることを突き止め、
その事実にもとづいて新規な成分の溶接ワイヤを開発す
ることに成功した。 本発明の要旨は、重量%でC:0.005〜0.09%未満、Si:
0.10〜0.60%、Mn:0.80超〜1.5%、Cr:8〜10%、Ni:0.1
〜1.2%、Mo:0.90〜2.50%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.01
〜0.20%を含み、O:0.012%以下で、(Nb+V)が0.21
〜0.30%であり、残部が鉄及び不可避的不純物よりなる
ことを特徴とする9Cr−Mo鋼ガスシールドアーク溶接用
ワイヤである。 次に各成分の限定理由について述べる。Cは強度の保
持に必要であるが、溶接性の点から0.09%未満とした。
すなわち、後述するCr量との関係で9Cr−1〜2Mo鋼は非
常に焼入性がよく溶接熱影響部が著しく硬化し、溶接時
低温割れの原因となる。従って溶接を安全に行うために
は、かなりの高温の予熱を必要とし、ひいては溶接作業
性が著しく損われる。しかるにC量を0.09%未満に保て
ば溶接熱影響部の最高硬さが低下し、溶接割れの防止が
容易に行いうるので定めた。0.005%未満では強度が保
持できないので、下限を0.005%とした。Siは脱酸剤と
して添加されるものであるが、また耐酸化性を向上させ
る元素でもある。そこで溶接性及び靭性確保の点から上
限を0.6%と定めた。下限は脱酸不足によるブローホー
ル等の溶接欠陥防止の点から0.10%とした。 Mnは脱酸のためのみでなく、強度保持上も必要な成分
である。0.8超〜1.5%としたのは、0.8%以下ではその
効果は期待できない。1.5%超では、靭性低下が著しく
なるからである。 Crは耐酸化性に不可欠の元素であり、耐熱鋼用ワイヤ
には必ず添加されているが、その他に本発明ではM23C6,
M6Cの微細析出によりクリープ破断強度を高めているの
で下限はM23C6の析出限界である8%とし、上限は溶接
性及び靭性確保の点から上限は10%と定めた。 Moは固溶体硬化により、クリープ破断強度を顕著に高
める元素であるので使用温度、圧力を上昇させる目的で
添加するが、高価である事と溶接性、耐酸化性を損なう
ので上限を2.50%とし、下限はクリープ破断強度の向上
に顕著な効果があるのは0.90%以上からであるので0.90
%と定めた。Oは0.012%を超えると溶接金属中に非金
属介在物を析出させ、靭性を著しく劣化させると同時に
溶接性に悪影響を与えるので0.012%以下と定めた。 Niは使用中脆化の軽減に有効な元素であり、高温高圧
下で長時間使用される本発明溶接ワイヤのような用途に
対しては0.1%未満では効果が無く1.2%を超すと高温で
のクリープ破断強度特性を劣化させるので上限を1.2
%、下限を0.1%と定めた。 Nb,Vは本発明の主眼をなすものであるが、前述のM23C
6,M6Cの析出分散状態をコントロールし、クリープ破断
強度を確保する上で極めて重要な元素である。しかもN
b,Vはそれぞれ単独ではM23C6,M6Cの析出制御に対する効
果が充分でなく、両者が共存することにより互いにNbC,
V4C3の析出状態を微細にコントロールし、それに続くM
23C6,M6Cの析出状態を使用温度で長時間使用後も粗大化
しにくい分布に制御するものである。 Nb,V量は後述する範囲内において、しかもNbとVの和
が0.21〜0.30%の範囲で、クリープ破断強度が優れてい
るので(Nb+V)を0.21〜0.30%とした。 また、Nb,Vの個々の値については、まずNbについては
0.005%未満ではV量が充分含有されていても炭化物形
状、分布が適正でなくクリープ破断強度の向上に効果が
ないので下限を0.005%とし、上限は0.20%を超えるとN
bC自体も粗大化し、他の炭化物の形状分布及び延性にも
悪影響を及ぼすので0.20%とした。 同様にVについてもNbとの複合において0.01%未満で
はその効果が現われず0.20%を超すと粗大化が起り、M
23C6,M6Cの析出状態に悪影響を及ぼし、クリープ強度が
低下すると同時に溶接性も低下させるので上限を0.20
%、下限を0.01%と定めた。以上が本発明ワイヤの基本
成分であるが、さらに本発明ワイヤではワイヤ自身には
特に添加しないが防錆のためワイヤ表面に銅メッキされ
る程度の量のCuが入ることがある。本発明ワイヤは通常
のワイヤと同じように鋼塊を圧延、伸線し必要に応じて
銅メッキを施して製造することが出来る。 〔実施例〕 以下に本発明ワイヤの効果を実施例により説明する。 第1表に示す成分組成のワイヤを用いて第1図に示す
ような被溶接材1の開先(厚さH=12.5mm,開先開度θ
=45゜,ルートギャップD=5mm)に形成した試験板に
第2表に示す溶接条件でガスシールドアーク溶接を行っ
た。図中2は裏当金である。溶接終了後750℃×5hrの溶
接後熱処理を施し、試験材の開先中央溶接金属部から機
械試験片を採取、機械適性能を調査した。第3表に上記
試験結果及び溶接性を示す。 第1表に示すもののうちワイヤ記号B〜C,Eは本発明
ワイヤに属するものであり、その他は比較ワイヤであ
る。 ワイヤ記号Gは、Si及びMo量が少なくO量の多い比較
例であるが、脱酸不足によるブローホールが発生すると
ともに靭性が劣化した。 ワイヤ記号Hは、C,Ni,V,Nb等については本発明の成
分範囲にあるが、Mn,Cr,Mo量が本発明の成分範囲を超え
た場合の比較例であり、その結果靭性が劣化している。 ワイヤ記号Iは、Mn及びMo量が本発明の成分範囲より
低く、Vを多量に単独添加した場合の比較例であるが、
強度は得られるものの、靭性が劣化している。 ワイヤ記号Jは、C,Ni及びO量が本発明の成分範囲を
超え、さらにV,Nbの複合添加をしなかった場合の比較で
あるが、C単独添加では高い強度は得られず高温割れが
発生するなど耐割れ性に難点がある。 ワイヤ記号Kは、V,Nb量が本発明の成分範囲を外れ、
(V+Nb)量も大巾に超えた場合の比較例であり、その
結果高強度が得られるものの高温割れが発生する難点が
ある。 ワイヤ記号Lは、Si量が本発明の成分範囲を超え少量
のVのみを添加し、Ni,Nbを含有しない場合の比較であ
るが、靭性に乏しかった。 ワイヤ記号Mは、C,V,Mn及びO量が本発明の成分範囲
を外れ(V+Nb)量も大幅に超えた場合の比較であり、
強度は高いものの、靭性に乏しく高温割れが発生するな
どの耐割れ性に難点がある。 なお、本発明ワイヤはシールドガス組成に特に規制さ
れることなく、Arを主成分とする、例えばAr−CO2、Ar
−O2等混合ガスにおいても良好な溶接作業性及び優れた
性能を有する。 〔発明の効果〕 以上の様に、本発明ワイヤは実施例に示された通り、
溶接性特に耐割れ性を向上させるため、C量を下げると
ともにNb,Vを複合添加して炭化物の析出、分散を最良の
状態に保ってクリープ強度を確保すると同時にNiの適量
添加によって使用中脆化の軽減及び靭性向上を図ったも
のである。 よって各種発電ボイラー、化学プラントの圧力容器等
に使用される9Cr−1〜2Mo鋼をガスシールドアーク溶接
する場合、本発明に係る溶接ワイヤを使用することによ
り、溶接継手の信頼性を大幅に向上させることが出来
る。
される9Cr−Mo鋼を溶接する溶接ワイヤに関するもので
あり、さらに詳しくは高温におけるクリープ特性、耐酸
化性、靭性及び耐割れ性にすぐれた溶接金属を与えるガ
スシールドアーク溶接用ワイヤに係るものである。 〔従来の技術〕 近年、火力発電所の大型化に伴い、ボイラーが高温高
圧条件下で使用される傾向にあり、550℃を超すと耐酸
化性や高温強度の観点から通常の などの低合金鋼に変わって、18Cr−8Niステンレスなど
のオーステナイト系の高級鋼が使用されているのが現状
である。 しかしながら、ステンレス鋼などの高級鋼は低合金鋼
に比べ著しくコストが高く、ボイラー建設費が高価につ
くために、材料上の問題からボイラーの使用温度が逆に
制限されて、現在では550℃が上限となっている。従っ
て、ボイラーの効率を高めるために圧力を高めた超臨界
圧ボイラーが使用されている。 この様な状況に対して、 とオーステナイトステンレス鋼の間を埋めるための鋼材
開発研究がかなり行なわれて来ており、高温でのクリー
プ特性にすぐれ、溶接性も良好な9%Cr−1〜2%Mo系
鋼が開発、実用化されつつある。これら9%Cr−1〜2
%Mo系鋼の溶接は、従来被覆アーム溶接法やサブマージ
アーク溶接法が採用されているが、最近の構造物の大型
化及び厚肉化が進むにつれ、溶接能率の高いガスシール
ドアーク溶接法が採用される様になって来た。しかし、
9%Cr−1〜2%Mo鋼構造物をガスシールドアーク溶接
する場合、溶接金属を母材と同一組成の合金成分系とす
れば溶接部の耐酸化性、耐食性は母材と同程度に維持さ
れるものの、クリープ破断強度が低く、靭性も十分に高
い値を得ることが困難で、さらに溶接性も悪化している
のが実情である。 このような観点からクリープ強度特性、靭性及び溶接
性特に耐割れ性に優れたガスシールドアーク溶接用ワイ
ヤの開発が必要となっている。例えば、特開昭55−3035
4号及び特公昭55−7115号公報に開示されている如く、
9%Cr−Mo系鋼の溶接用ワイヤ中のC,Si,Mn,Cr,Mo,Ni添
加量を限定し、強度及び靭性を高めた技術を示している
が、大巾なクリープ強度を向上しようとするものではな
く、クリープ強度や耐割れ性に優れる9%Cr−1〜2%
Mo鋼用ガスシールドアーク溶接ワイヤを提供するに至っ
ていない。また、特開昭58−221695号公報に記載のもの
では、C,Si,Mn,Cr,Mo,N添加量を限定し、さらに(Mn+S
i),Mn/Si,Oを規制することによってNiを含まない成分
系で強度及び靭性を高める技術を示しているが、大幅な
クリープ強度を向上しようとするものではない。特開昭
60−257991号公報に記載のものではC,Si,Mn,Cr,Mo,Ni添
加量を限定し、Nb,Vの1種以上を添加し(Nb+V)を規
制することによって強度、靭性及び溶接性を良好にする
ための技術を示しているが、十分な強度・靭性や耐割れ
性に優れたワイヤを提供するものではない。特公昭61−
11157号公報に記載のものではC,Si,Mn,Cr,Mo添加量を限
定し、Oを規制することによってフェライト相の析出抑
制による強度、靭性及び溶接性を高めた技術を示してい
るが、大幅なクリープ強度を向上しようとするものでは
なく、クリープ強度や耐割れ性に優れたものではない。
特開昭61−88997号公報に記載のものでは、C,Si,Mn,Cr,
Mo,Niを限定し、Nb,V,Tiを1種以上添加し、(Mo+Ni)
を規制することによって、耐時効脆弱性及び耐高温割れ
性を高めた技術を示しているが、クリープ強度や十分な
靭性を得るガスシールドアーク溶接ワイヤを提供するに
至っていない。さらに、特開昭59−82189号、特開昭59
−274113号及び特開昭61−231591号公報に記載のもので
は、潜弧溶接用ワイヤについて開示されているが、ガス
シールドアーク溶接用ワイヤとしては、適用鋼種が同種
であっても溶接プロセス自体異なり使用することは出来
ない。すなわち同一の溶接金属成分及び性能を得ようと
した場合、ガスシールドアーク溶接法ではワイヤ成分に
よってほぼ決定されるが潜弧溶接法ではワイヤ単独で使
用するのではなく、フラックスと常に一緒に使用するた
めワイヤとフラックスの組合せによって種々な成分及び
性能が得られる。 以上の様な観点から高温高圧下で使用される構造物の
ガスシールドアーク溶接材料としては問題があった。 〔発明が解決しようとする問題点〕 本発明はこの様な事情にかんがみ溶接性特に耐割れ性
を向上させ、なおかつ、クリープ強度特性及び靭性の優
れた9%Cr−1〜2%Mo鋼用ガスシールドアーク溶接ワ
イヤを提供することを目的とするものである。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明はかかる研究の結果達成されたものであって、
本発明の特徴とするところは、耐割れ性を向上させるた
めにC量をかなり低めにコントロールし、C量低下によ
る強度不足を適正な炭化物の析出によって補う点にあ
る。即ち、C量を耐割れ性の点から0.09%未満に抑え、
且つそのような低炭素量でもクリープ破断強度が確保出
来るように、C量との兼ね合いでNb及びV量を適正に制
御し、NbC,V4C3を微細に析出させ、それに伴なって後よ
り析出するM23C6,M6C(但しMは金属元素を指す)の析
出状態を長時間使用後も粗大化しにくいようにコントロ
ールして、低炭素でありながらクリープ破断強度を著し
く高め合せて靭性特性にも優れている。 上記のようなM23C6,M6Cの析出状態を適当にコントロ
ールするためには、それに先立つNbC,V4C3の析出を抑制
する必要があり、そのためには自から最適なNb量、V量
の範囲が存在する。また一方ではこの用途の溶接部は高
温で長時間使用されるため、その間に溶接部が脆化する
ことを抑制しなければならない。本発明ではそのような
観点から適正な炭化物分布に適したC量、Nb量、V量の
関係を決定し、また使用中での脆化を軽減するために適
量のNiを含有させることが有効であることを突き止め、
その事実にもとづいて新規な成分の溶接ワイヤを開発す
ることに成功した。 本発明の要旨は、重量%でC:0.005〜0.09%未満、Si:
0.10〜0.60%、Mn:0.80超〜1.5%、Cr:8〜10%、Ni:0.1
〜1.2%、Mo:0.90〜2.50%、Nb:0.005〜0.20%、V:0.01
〜0.20%を含み、O:0.012%以下で、(Nb+V)が0.21
〜0.30%であり、残部が鉄及び不可避的不純物よりなる
ことを特徴とする9Cr−Mo鋼ガスシールドアーク溶接用
ワイヤである。 次に各成分の限定理由について述べる。Cは強度の保
持に必要であるが、溶接性の点から0.09%未満とした。
すなわち、後述するCr量との関係で9Cr−1〜2Mo鋼は非
常に焼入性がよく溶接熱影響部が著しく硬化し、溶接時
低温割れの原因となる。従って溶接を安全に行うために
は、かなりの高温の予熱を必要とし、ひいては溶接作業
性が著しく損われる。しかるにC量を0.09%未満に保て
ば溶接熱影響部の最高硬さが低下し、溶接割れの防止が
容易に行いうるので定めた。0.005%未満では強度が保
持できないので、下限を0.005%とした。Siは脱酸剤と
して添加されるものであるが、また耐酸化性を向上させ
る元素でもある。そこで溶接性及び靭性確保の点から上
限を0.6%と定めた。下限は脱酸不足によるブローホー
ル等の溶接欠陥防止の点から0.10%とした。 Mnは脱酸のためのみでなく、強度保持上も必要な成分
である。0.8超〜1.5%としたのは、0.8%以下ではその
効果は期待できない。1.5%超では、靭性低下が著しく
なるからである。 Crは耐酸化性に不可欠の元素であり、耐熱鋼用ワイヤ
には必ず添加されているが、その他に本発明ではM23C6,
M6Cの微細析出によりクリープ破断強度を高めているの
で下限はM23C6の析出限界である8%とし、上限は溶接
性及び靭性確保の点から上限は10%と定めた。 Moは固溶体硬化により、クリープ破断強度を顕著に高
める元素であるので使用温度、圧力を上昇させる目的で
添加するが、高価である事と溶接性、耐酸化性を損なう
ので上限を2.50%とし、下限はクリープ破断強度の向上
に顕著な効果があるのは0.90%以上からであるので0.90
%と定めた。Oは0.012%を超えると溶接金属中に非金
属介在物を析出させ、靭性を著しく劣化させると同時に
溶接性に悪影響を与えるので0.012%以下と定めた。 Niは使用中脆化の軽減に有効な元素であり、高温高圧
下で長時間使用される本発明溶接ワイヤのような用途に
対しては0.1%未満では効果が無く1.2%を超すと高温で
のクリープ破断強度特性を劣化させるので上限を1.2
%、下限を0.1%と定めた。 Nb,Vは本発明の主眼をなすものであるが、前述のM23C
6,M6Cの析出分散状態をコントロールし、クリープ破断
強度を確保する上で極めて重要な元素である。しかもN
b,Vはそれぞれ単独ではM23C6,M6Cの析出制御に対する効
果が充分でなく、両者が共存することにより互いにNbC,
V4C3の析出状態を微細にコントロールし、それに続くM
23C6,M6Cの析出状態を使用温度で長時間使用後も粗大化
しにくい分布に制御するものである。 Nb,V量は後述する範囲内において、しかもNbとVの和
が0.21〜0.30%の範囲で、クリープ破断強度が優れてい
るので(Nb+V)を0.21〜0.30%とした。 また、Nb,Vの個々の値については、まずNbについては
0.005%未満ではV量が充分含有されていても炭化物形
状、分布が適正でなくクリープ破断強度の向上に効果が
ないので下限を0.005%とし、上限は0.20%を超えるとN
bC自体も粗大化し、他の炭化物の形状分布及び延性にも
悪影響を及ぼすので0.20%とした。 同様にVについてもNbとの複合において0.01%未満で
はその効果が現われず0.20%を超すと粗大化が起り、M
23C6,M6Cの析出状態に悪影響を及ぼし、クリープ強度が
低下すると同時に溶接性も低下させるので上限を0.20
%、下限を0.01%と定めた。以上が本発明ワイヤの基本
成分であるが、さらに本発明ワイヤではワイヤ自身には
特に添加しないが防錆のためワイヤ表面に銅メッキされ
る程度の量のCuが入ることがある。本発明ワイヤは通常
のワイヤと同じように鋼塊を圧延、伸線し必要に応じて
銅メッキを施して製造することが出来る。 〔実施例〕 以下に本発明ワイヤの効果を実施例により説明する。 第1表に示す成分組成のワイヤを用いて第1図に示す
ような被溶接材1の開先(厚さH=12.5mm,開先開度θ
=45゜,ルートギャップD=5mm)に形成した試験板に
第2表に示す溶接条件でガスシールドアーク溶接を行っ
た。図中2は裏当金である。溶接終了後750℃×5hrの溶
接後熱処理を施し、試験材の開先中央溶接金属部から機
械試験片を採取、機械適性能を調査した。第3表に上記
試験結果及び溶接性を示す。 第1表に示すもののうちワイヤ記号B〜C,Eは本発明
ワイヤに属するものであり、その他は比較ワイヤであ
る。 ワイヤ記号Gは、Si及びMo量が少なくO量の多い比較
例であるが、脱酸不足によるブローホールが発生すると
ともに靭性が劣化した。 ワイヤ記号Hは、C,Ni,V,Nb等については本発明の成
分範囲にあるが、Mn,Cr,Mo量が本発明の成分範囲を超え
た場合の比較例であり、その結果靭性が劣化している。 ワイヤ記号Iは、Mn及びMo量が本発明の成分範囲より
低く、Vを多量に単独添加した場合の比較例であるが、
強度は得られるものの、靭性が劣化している。 ワイヤ記号Jは、C,Ni及びO量が本発明の成分範囲を
超え、さらにV,Nbの複合添加をしなかった場合の比較で
あるが、C単独添加では高い強度は得られず高温割れが
発生するなど耐割れ性に難点がある。 ワイヤ記号Kは、V,Nb量が本発明の成分範囲を外れ、
(V+Nb)量も大巾に超えた場合の比較例であり、その
結果高強度が得られるものの高温割れが発生する難点が
ある。 ワイヤ記号Lは、Si量が本発明の成分範囲を超え少量
のVのみを添加し、Ni,Nbを含有しない場合の比較であ
るが、靭性に乏しかった。 ワイヤ記号Mは、C,V,Mn及びO量が本発明の成分範囲
を外れ(V+Nb)量も大幅に超えた場合の比較であり、
強度は高いものの、靭性に乏しく高温割れが発生するな
どの耐割れ性に難点がある。 なお、本発明ワイヤはシールドガス組成に特に規制さ
れることなく、Arを主成分とする、例えばAr−CO2、Ar
−O2等混合ガスにおいても良好な溶接作業性及び優れた
性能を有する。 〔発明の効果〕 以上の様に、本発明ワイヤは実施例に示された通り、
溶接性特に耐割れ性を向上させるため、C量を下げると
ともにNb,Vを複合添加して炭化物の析出、分散を最良の
状態に保ってクリープ強度を確保すると同時にNiの適量
添加によって使用中脆化の軽減及び靭性向上を図ったも
のである。 よって各種発電ボイラー、化学プラントの圧力容器等
に使用される9Cr−1〜2Mo鋼をガスシールドアーク溶接
する場合、本発明に係る溶接ワイヤを使用することによ
り、溶接継手の信頼性を大幅に向上させることが出来
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明実施例の開先形状を示す断面図である。
1……被溶接材
2……裏当金
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 昭61−88997(JP,A)
特開 昭60−257991(JP,A)
特開 昭58−141892(JP,A)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 1.重量%で、 C:0.005〜0.09%未満、 Si:0.10〜0.60%、 Mn:0.80超〜1.5%、 Cr:8〜10%、 Ni:0.1〜1.2%、 Mo:0.90〜2.50%、 Nb:0.005〜0.20%、 V:0.01〜0.20%を含み、 O:0.012%以下で、 (Nb+V)が0.21〜0.30%で、残部が鉄及び不可避的不
純物よりなることを特徴とする9Cr−Mo鋼ガスシールド
アーク溶接用ワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62061248A JP2668530B2 (ja) | 1987-03-18 | 1987-03-18 | 9Cr−Mo鋼用溶接ワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP62061248A JP2668530B2 (ja) | 1987-03-18 | 1987-03-18 | 9Cr−Mo鋼用溶接ワイヤ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS63230296A JPS63230296A (ja) | 1988-09-26 |
JP2668530B2 true JP2668530B2 (ja) | 1997-10-27 |
Family
ID=13165738
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP62061248A Expired - Lifetime JP2668530B2 (ja) | 1987-03-18 | 1987-03-18 | 9Cr−Mo鋼用溶接ワイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2668530B2 (ja) |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS58141892A (ja) * | 1982-02-19 | 1983-08-23 | Sumikin Yousetsubou Kk | 9Cr―2Mo鋼用溶接材料 |
JPS60257991A (ja) * | 1984-06-05 | 1985-12-19 | Babcock Hitachi Kk | 9Cr−Mo系鋼用溶接ワイヤ |
JPH0237830B2 (ja) * | 1984-10-01 | 1990-08-27 | Kobe Steel Ltd | 9crr1mokoyosetsuyowaiya |
-
1987
- 1987-03-18 JP JP62061248A patent/JP2668530B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS63230296A (ja) | 1988-09-26 |
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