JP2666810C - - Google Patents

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JP2666810C
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は磁気記録媒体、特に磁性層が1.0μm以下の非常に薄層な磁気記録
媒体に関し、更に、詳しくは非常に電磁変換特性に優れ、かつ歩留りが良好な生
産特性の優れた磁気記録媒体に関する。特に本発明は磁気記録媒体、特に磁性層
厚みが1.0μm以下の高密度な薄層磁気記録媒体に関し、更に詳しくは本発明
は下層として非磁性層を有する磁気記録媒体、特に電磁変換特性、走行性及び耐
久性が改良された磁気記録媒体に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、ビデオテープ、オーディオテープ、磁気ディスク等の磁気記録媒体とし
ては、強磁性酸化鉄、Co変性酸化鉄、CrO2、強磁性合金粉末等を結合剤中
に分散した磁性層を非磁性支持体に塗設したものが広く用いられている。 近年、記録の高密度化と共に記録波長が短くなる傾向があり、磁性層の厚さが
厚いと出力が低下する等の記録再生時の厚み損失の問題が大きくなっている。こ
のため磁性層を薄くすることが行われているが、磁性層を約2μm以下に薄くす
ると磁性層表面に支持体の表面性の影響が現れ易くなり、電磁変換特性が悪化す
る傾向があった。 【0003】 そのため非磁性支持体表面に非磁性の厚い下層を設けてから磁性層を上層に設 けることにより、前記した支持体の表面粗さによる問題を解消すると共に磁性層
を薄層とすることによって、厚み減磁を減らし高出力を達成しようとする試みが
提案された。例えば、特開昭62−154225号公報では磁性層の厚さを0.
5μm以下にするとともに磁性層の表面電気抵抗が高くなるのを防止するため、
磁性層と基体との間に導電性微粉末を含む厚さが磁性層の厚さ以上の下塗り層を
設けた磁気記録媒体が提案されている。又、特開昭62−222427号公報に
は支持体と支持体上に設けられ、平均粒径が0.5〜3μmの研磨剤を含有する
下塗り層と、下塗り層の上に設けられた強磁性粉末を含有した膜厚1μm以下の
磁性層を具備した磁気記録媒体が提案さているが、これは下塗り層中の研磨剤の
一部分が磁性層に突き出しているので、磁気記録媒体の磁気ヘッドクリーニング
作用を併せ持つようにしたものである。このように磁性層を薄くして高密度記録
を達成し、同時に下層非磁性層に帯電防止を図るため、カーボンブラックを含め
たり、クリーニング特性や耐久性を向上するために研磨材を添加したりしている
。 【0004】 しかながら、従来の技術は、非磁性支持体に先ず下層非磁性層を塗布し、乾燥
してから場合によって、カレンダー処理をしてから上層磁性層を設けているため
、製造工程が煩雑であると共に以下のような問題があった。 即ち、磁性層を薄層化するためには、塗布量を減らすことか、もしくは磁性塗
布液に溶剤を多量に加えて濃度を薄くすることが考えられる。前者を取る場合、
塗布量を減らすと塗布後に十分なレベリングの時間がなく、乾燥が始まるために
、塗布欠陥、例えばスジや刻印のパターンが残るといった問題が発生し、歩留ま
りが非常に悪くなる。後者の方法を取った場合、磁性塗布液の濃度が希薄である
と、できあがった塗膜に空隙が多く、十分な強磁性粉末の充填度が得られないこ
と、また、空隙が多いために塗膜の強度が不十分であること等、種々の弊害をも
たらす。これらの問題を解決する一つの手段に、特開昭63−191315号公
報に記載されているように、同時重層塗布方式を用いて下層に非磁性の層を設け
、濃度の高い磁性塗布液を薄く塗布する方法が提案された。 【0005】 この同時重層塗布方式又は逐次湿潤塗布方式による場合、即ち下層が湿潤状態
にある間に上層を同時又は逐次に塗布するいわゆるWet on Wet塗布方
式の場合は、すでに重層の磁性層では様々な検討が為されている。しかしながら
下層非磁性層にこの技術を応用しても同じように良好な結果が得られなかった。
つまり、Wet on Wetにより下層非磁性層と上層磁性層を設けると、こ
れら両者の界面において乱れが生じ、ピンホールが生じたり、磁性層のハジキを
生じたりした。 【0006】 又、支持体表面に非磁性の厚い下層を設けてから磁性層を上層として磁性層を
設けるようにした場合支持体の表面粗さの影響は解消することができるが、ヘッ
ド摩耗や耐久性が改善されないという問題があった。 これは、従来、非磁性下層として熱硬化系(硬化系)樹脂を結合剤として用い
ているので、下層が硬化し、磁性層とヘッドとの接触や他の部材との接触が無緩
衝状態で行われることや、このような下層を有する磁気記録媒体がやや可撓性に
乏しい等のことに起因していると考えられる。これを解消するために、下層に非
硬化性(熱可塑性)樹脂を結合剤しとて用いることが考えられるが、従来の方式
では、下層を塗布乾燥後磁性層を上層として塗布する場合、下層が上層の塗布液
の有機溶剤により膨潤し、上層の塗布液に乱流を起こさせる等の影響を与え磁性
層の表面性を悪くし、電磁変換特性を低下させる等の問題を生じる。 【0007】 又、磁気記録媒体の記録密度を向上させるために、短波長記録が進んでおり、
8mmビデオテープで記録波長は0.54μmに達している。これに対応する磁
気記録媒体として強磁性金属薄膜を用いたものが実用化されている。金属薄膜磁
気記録媒体は磁性層厚みが非常に薄いため、厚みによる損失が小さく、このため
非常に出力の高い媒体を得ることができる。しかし、これらの媒体は金属を非磁
性支持体上に蒸着して製造するため、従来の塗布型磁気記録媒体に較べて大量生
産性に劣り、また、金属薄膜であるため、酸化されるなど長期保存性の面で問題
を持っている。これらの問題を解決するために、従来の塗布型磁気記録媒体の磁
性層を薄層化することが望まれてきた。 【0008】 しかしながら、上層磁性層を1.0μm以下の薄層で塗布しようとするために
は、磁性液を大量の溶剤で希釈せねばならず、磁性液の凝集を促しやすい。また
、乾燥時に大量の有機溶媒が蒸発するために強磁性粉末の配向性が乱れやすく、
長手記録でない媒体、例えば磁気ディスクのようなものではある程度性能を確保
できるが、テープ形状の磁気記録媒体では配向性が悪く、薄層化を達成しても、
配向性悪化と表面性悪化のために充分な電磁変換特性を確保することが困難であ
る。また、乾燥過多で多くの空隙が発生するために、磁性膜の強度が弱く、走行
耐久性の面でも不十分な結果であった。配向性をよくし、また、塗膜の空隙を少
なくするために希釈する有機溶剤を減らそうとすると塗布安定性が悪くなってし
まう。 【0009】 この様な問題に対処する手段として非磁性の粒状研磨剤、またはフィラーを下
塗層に含ませることが提案されている。(特開昭62−222427号、特開平
2−257424号) しかしながらこれらの技術の問題点として、磁性層と非磁性層を同時に塗布し
、上層の磁性体を配向するときに、磁場による磁性体の回転運動のため上下層の
界面での混合が発生し、充分な表面性があられないばかりか、配向が充分に行な
われないので充分な電磁変換特性が得られない。 【0010】 非磁性の鱗片状粒子としてグラファイトを用いた導電性中間層を形成させるこ
とによって、上層の磁性粒子の配向性を改善することが提案されている。(特開
昭55−55438号)しかしながらこの様な物質では、配向性の改善はなされ
るが、グラファイト自身には膜の補強効果がないため耐久性上不十分であるため
、モース硬度5以上の無機粉体を混合する提案もなされている。(特開昭60−
125926号) 又、非磁性の針状粒子として針状の蓚酸塩を用いた補強層を形成させることに
よって、上層の磁性粒子の配向性を改善することが提案されている。(特公昭5
8−51327号)。 【0011】 これら提案により配向性向上と耐久性の確保はなされるが、実際に媒体を製造
する段階では鱗片状粒子はスタッキングをおこしやすく、また、蓚酸塩のような
物質は結合剤への分散性がよくないため、磁性面の平滑性を損なうことが判明し
た。 又、磁気記録媒体は高密度化、高出力化のためにヘッドとのスペーシングロス
を低減するために非常に平滑な表面性が望まれている。このため、直接表面に出
ていない下層非磁性層も極力分散性が良く、同時重層塗布した場合の表面性が平
滑である必要性が増している。また、前述したように磁性層を薄層化すると更に
下層非磁性層の分散性が同時重層した場合の表面性に寄与する割合が増してきて
いる。鋭意検討した結果、単純に下層のみの分散性を向上させても、同時重層し
た結果、表面が荒れることが判明した。 【0012】 また磁性層の保磁力が低いと自己減磁損失が大きく、短波長記録には適さない
ので、相当のHcを有することが必要である。この様な目的に使用できる手段と
して非磁性支持体と磁性層の間に0.5μm〜5.0μmの下塗層を設け、磁性
層のHcを1000Oeにすることが提案されている。(特開昭57−1985
36) しかしながら従来公知の技術では、この目的を達成するには次にあげる問題が
ある。前述の特開昭57−198536で開示さている技術で、本件の特徴であ
る上下層の同時重層塗布を行なうと上下層の混合が起きて表面性が悪くあるばか
りか配向が乱れる。また同時重層塗布において配向性を改善する技術としては特
開平3−49032にカーボンブラックを分散した層を下層に用い、多段配向を
することが開示さているが、カーボンブラックのような真比重の小さなフィラー
は、配向時の磁性体の回転運動によって、同時重層塗布の時に上下層の界面が乱
れ、面内方向に測定したSQは高いものの、本件の目的である磁性層法線方向の
残留保磁力の改善は不十分であった。 【0013】 この様な技術に対する公知技術として特開昭62−1115がある。しかしな がら同時重層塗布において、この公知技術を適応すると次のような問題がある。 すなわち、非磁性の下層低比重のカーボンブラックを用いて同時重層塗布をし
た場合には、塗布過程あるいは、配向過程において該非磁性下層と磁性層の混合
、あるいは乱流による2層界面の乱れを引き起こす。このような2層間の混合、
乱れは磁性層中の磁性体の配向性を極度に低下させる。 【0014】 さらに長軸長が短く、かつ針状比の小さい磁性体は流動配向しにくいので、磁
性体の配向性はさらに低下し、充分な電磁変換特性が得られなくなる。 近年、磁性層に含まれる磁性体は高密度化のために微粒子化が進んでいる。微
粒子にすることにより、磁性層の強度が劣るようになり、例えば製造工程やビデ
オデッキ内で高いテンションを被るとテープが伸びてしまい、スキュー(SKE
W)歪が大きくなるようになる。これを対策するために支持体の熱収縮率を小さ
くしたり強度を高くすることが図られているが、限界がある。また、同時重層塗
布方式を採用すると逐次重層塗布方式に比べて熱収縮率が大きくなりSkew歪
が増加することも問題になっている。これは、逐次重層塗布の場合、下層塗布後
カレンダーや硬化処理して下層を硬くして媒体が伸び縮みしにくくしていたので
あるが、同時重層塗布方式では下層と上層を一度に塗布するため、下層によって
媒体の伸び縮みを抑制することができないからである。特開昭63−18741
8や特開昭63−191315に同時重層塗布方式による発明が開示されている
が、このような欠点があった。 【0015】 また、同様に長時間化を図るためにテープ厚みを薄くしている傾向もある。テ
ープ厚みを薄くするとテープスチフネスが低下して、ヘッドとの良好な接触が保
てなくなり、電磁変換特性の低下を来すことになる。特に、近年普及している8
mmビデオテープやVHSの長時間テープでは全厚みが14μ以下と薄いために
ヘッド当りを確保することが困難となっている。従来、媒体厚みが厚いものでは
むしろ下層非磁性層の強度を下げて滑らかな接触状態を保つことが効果的であっ
たが、近年の回転ヘッドによる記録再生装置における薄手テープでは下層非磁性
層のスチフネスを高くしないとヘッド当りを確保できにくくなっている。非磁性 支持体の延伸方法でこのスチフネスを制御する方法もあるが、幅方向スチフネス
が低下して走行耐久性に好ましくない。 【0016】 特開昭63−191315で示されているようにヘッド当りを良好にするため
に、下層非磁性層にポリイソシアネートを含まないことに効果を認めたが、その
ため高温高湿の保存性に劣る結果となっている。そのために、保存を重視しない
システムでは有効であるが、業務用やデータ保存のような保存を重視するシスム
では使用しにくい方法である。特開昭63−187418についても同様に磁性
層を薄層化し、電磁変換特性を向上させることが開示されているが、該発明では
電磁変換特性的に未だ不十分なものがあった。特開昭50−803にもモース硬
度6以上の細粒状非磁性顔料を磁性層と支持体との間に設けるという発明がある
が、この発明の骨子はアルミニウム基盤をモース硬度6以上の非磁性粉体で研磨
して基盤の平面性を増すことを目的としている。 【0017】 又、これらの方法では近年の長時間化、高密度化に伴う磁気記録媒体の薄層化
の要請に答えることが困難で、これらの方法では優れた電磁変換特性と走行耐久
性を両立することが不十分であった。特に薄手テープで走行耐久性を向上させる
にはテープエッヂダメージを少なくすることが必要であり、特開昭63−191
315や特開昭63−187418の発明では不十分であった。 【0018】 次に上層が磁性層で下層が非磁性で、かつWet on Wetの方式で磁気
記録媒体を得ることについては種々の特許出願がされている。例えば特開昭50
−104003号公報ではWet on Wetを示唆する記載はあるが非磁性
層はカーボンブラックのみの例であり、構造粘性が強すぎて、界面の乱れが激し
かった。 【0019】 又特開昭62−212922号公報(US4916024号明細書)には導電
性層(中間層)にカーボンブラックの5%〜25%の強磁性粉末を含有する磁気
記録媒体が開示されている。これはカーボンブラックの分散性を改良するために 加えているものであるが、中間層に加える強磁性粉末は磁性層中のものと同程度
のものを使用しているため、界面の乱れは良好に防止することはできなかった。
又特開昭62−214524号公報には隣接した複数層の各塗布液組成の溶媒及
び溶質に対し相互溶解性を有するように各塗布液組成を選定しWet on W
etで塗布、乾燥する磁気記録媒体の製造方法が開示されている。しかしながら
上層磁性層、下層非磁性層の組合せの例示はあるが、結合剤のみの例であり、又
カーボンブラックも中間層に含むことを示唆はしているが、このような開示に基
づいては界面の乱れを解消することはできなかった。 又特開昭62−2411
30号公報(US4839225号明細書)には中間層が水酸基及び/又はアミ
ノ基を含む結合剤の少なくとも1つを含みかつ該磁性層がイソシアネート化合物
を含む磁気記録媒体であり、これは両者を化学的に結合させて中間層と磁性層の
密着強度を向上させることを開示している。中間層にはカーボンブラックを添加
してもよいこと及びWet on Wet法により塗布してもよいとしているが
、このような開示では界面変動を解決することはできなかった。 【0020】 更に特開昭63−88080号公報(US4854262号明細書)にはドク
ターエッジを改良した塗布装置が開示されている。この中には高剪断速度(10
4sec-1)での粘度の開示はあるが、単に上層、下層液の粘度を示したに過ぎ
ずこのような開示では界面変動を充分抑えることはできなかった。 又特開昭63−146210号公報には下層の磁性層又は非磁性層の結合剤が
非硬化系結合剤であり、最上層の磁性層の結合剤が電子線硬化型樹脂である磁気
記録媒体が開示されている。しかしながら下層非磁性塗料にはカーボンブラック
を含んだ例のみであり、界面の乱れを解決することはできなかった。更に特開昭
63−164022号公報にはエクストルージョン型ヘッドのスロット内で磁性
液層を中央に磁性液層より低粘度の非磁性液層をスロット前後壁面側に形成して
多重層の押出塗布をする磁性液の塗布方法が開示されている。高い粘度の磁性層
液を低い粘度の非磁性層バインダー溶液を包み、高速薄層塗布性を増したことを
発明しており、磁性層塗布液ビードとギーサー間の間隙を少なくする目的である
。このような開示のみでは界面の乱れを充分解決することはできなかった。又特 開昭63−187418号公報(US4863793号明細書)には上層磁性層
に含まれる強磁性粉末の透過型電子顕微鏡による平均長軸長が0.30μm未満
、X線回折法による結晶子サイズが300Å未満である磁気記録媒体が開示され
ている。下層の非磁性層にはカーボンブラック、グラファイト、酸化チタンなど
を含むことができると開示され、具体例としてはα−Fe23100重量部と導
電性カーボン10部の組合せが開示されている。しかしながらカーボンの使用量
が少ないこと、α−Fe23の粒子サイズが記載されていないため、これら公報
の開示では界面の乱れを十分解決することはできなかった。 【0021】 更に特開昭63−191315号公報(US4963433号明細書)には下
層の結合剤が熱可塑性結合剤であり、且つ下層の厚さが乾燥厚みで0.5μm以
上である磁気記録媒体が開示されている。下層非磁性層に含まれる非磁性粉の具
体例としては前記の特開昭63−187418号公報と同じくα−Fe2310
0重量部と導電性カーボン10部の組合せが開示されている。しかしながらカー
ボンの使用量が少ないことやα−Fe23の粒子サイズが記載されていないため
、これらの公報の開示では界面の乱れを解決することができなかった。 【0022】 更に特開平2−254621号公報にはカーボンブラックを主成分とする非磁
性層を設け、その上にFe−Al系強磁性粉末を含む磁性層をウェット・オン・
ウェット重層塗布方式で形成した磁気記録媒体が開示されている。しかしながら
下層の例示はカーボンブラックのみであり、これでは構造粘性が強すぎて、界面
の乱れを解決することはできなかった。 【0023】 更に特開平2−257424号公報には非磁性層に平均粒径が50mμ以上の
フィラーを含む磁気記録媒体が開示されている。 フィラーとしては、カーボンブラックやAl23,SiCのような研磨剤を挙
げている。しかしながらその具体例はカーボンブラックのみ、Al23のみ、S
iCのみの使用であり、このような組合せでは界面の乱れを解決することができ
なかった。 【0024】 次に特開平2−257425号公報には動摩擦係数が0.25以下であり、か
つ表面比抵抗が1.0×109Ω/sq以下である複数の層を設けた磁気記録媒
体が開示されている。しかしながら下層の非磁性粉の例示はSnO2のみ、カー
ボンブラックのみであり、界面の乱れを解決することはできなかった。又特開平
2−260231号公報には非磁性支持体上に第1の非磁性層と、第1の磁性層
と、第2の非磁性層と、第2の磁性層とがこの順に積層されている磁気記録媒体
が開示されている。この非磁性層は結合剤のみの例示であり、界面の乱れを解決
することはできなかった。 【0025】 更に特開平3−49032号公報(US5051291号明細書)には磁性層
の膜厚が1.5μm以下であり、かつ該磁性層の角型比が0.85以上である磁
気記録媒体が開示されている。これは多段配向により角型比を向上させるもので
あるが、下層はカーボンブラックのみを使用する層であり、構造粘性が強すぎて
界面乱れを解決することはできなかった。 【0026】 近年Hi8テープの研究がされ、その究極のニーズはME(蒸着)テープとM
P(メタル)テープのメリットの両立にあり、それをMPテープで実現するには
MPテープの本来の優れた走行性、耐久性、生産適性を維持すると共に、如何に
蒸着テープのような短波長領域(高域の輝度信号)の高C/N化を達成するかで
あり、最も重要な課題であった。 【0027】 従来、ダブルコーティング技術は、VTRの信号記録メカニズム、すなわち各
信号の記録深さに着目し、それぞれに最適な上、下磁性層の設計とすることで性
能向上を図ってきた。VHSのダブルコーティングは上層と下層にそれぞれサイ
ズや磁気特性の異なる強磁性粉末を採用した2層構造で輝度、色、音の全ての帯
域における高出力、低ノイズが実現されてきた。 【0028】 そしてHi8MPの重層テープでは上層磁性層に高密度記録に対応する金属磁 性体を用い、下層磁性層には、中、低域特性に優れた酸化鉄磁性体を用い、まっ
たく種類の異なる磁性体を用いたいわゆるハイグリッドダブルコーティングが開
発され、鮮鋭度高い映像と、鮮やかな色が再現するなど大巾な画質向上が図られ
た。 【0029】 しかしながらHi8MPでの更なる超高密度記録を追求し、高域特性を飛躍的
に向上させるためには従来の技術や考え方だけでは限界があった。そこで本発明
者らは磁気記録そのものの原理、メカニズムまで踏み込んで解析、研究を行ない
、蒸着テープ以上の高域特性を実現するために鋭意検討を行なった。 【0030】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の第1の目的は、塗布型でありながら蒸着テープに匹敵する高域の出力
を発揮すると同時に走行耐久性、保存性を有する高密度磁気記録媒体を提供する
ことである。 本発明の第2の目的は、塗布型本発明の第1の目的は、歩留り良くかつ生産効
率を確保して出力、C/N比等の電磁変換特性の優れた薄層磁気記録媒体を提供
することであり、またヘッド当りが良好でかつ保存安定性が良好な薄層磁気記録
媒体を提供することである。 【0031】 本発明の第3の目的は電磁変換特性が良好で走行耐久性に優れる磁気記録媒体
を提供することである。とりわけ、短波長記録における出力が高く、また、生産
における歩留まりのよい磁気記録媒体を提供することである。 本発明の第4の目的は、RF出力が高く、かつ走行耐久性に優れドロップアウ
トが少なく、ブロックエラーレート(BER)が低い磁気記録媒体を提供するこ
とにある。 【0032】 本発明の第5のは電磁変換特性が良好でかつ走行性が良好なる磁気記録媒体を
提供することであり、とりわけ同時重層塗布方式で表面粗さが良好で高い電磁変
換特性を有する磁気記録媒体を提供することである。 本発明の第6の目的は電磁変換特性が良好な磁気記録媒体を提供することであ
り、かつ熱収縮率が小さく、長期保存性に優れる磁気記録媒体を提供することで
ある。 本発明の第7の目的は電磁変換特性が良好な磁気記録媒体を提供することであり
、かつ繰り 返し走行によるエッヂダメージ少ない走行耐久性に優れる媒体を提
供することである。 【0033】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは鋭意検討した結果、従来同時重層塗布技術を部分的には、基本と
しながらも、その枠を越え、短波長記録になるほど大きくなる「信号損失」を
徹底的に少なくすることとそのための磁性層の薄層化、磁性層の磁気エネルギ
ーを限りなく高めるために新磁性体の開発と高密度充填化という2点が重要点で
あることを見出した。先ず第1に信号損失の徹底低減を行なった。磁気記録では
、その記録再生の過程でさまざまな「損失」が発生するが本発明者らは今までM
P(メタル)テープでは避け難いと考えていた「自己減磁損失」を低減すること
によって高域特性を向上させるという、従来にないまったく新しい考え方を見出
した。 【0034】 すなわち本発明の第1のポイントは上層磁性層と下層非磁性層の塗布液のチキ
ントロピー性を同一もしくは近似したものにすること又は下層非磁性粉の形状を
調節することによって界面に混合領域をなくすことにより磁性層の厚み1μm以
下、厚み変動の平均値を厚みの1/2以下、厚み測定値の標準偏差を0.2μm
以下という従来にない均一な薄層磁性層を実現し、短波長領域での自己減磁損失
を大幅に低減したものである。 【0035】 更に本発明の第2のポイントは上記界面の乱れを極めて低く押さえると共に上
層磁性層の強磁性粉末のサイズ、形状と下層非磁性層の非磁性粉のサイズ、形状
を調整し、又非磁性粉末自体に分散性を向上する発明を加えることにより、より
均一な変動の少ない界面が実現できたと共に超平滑な磁性層表面を完成した。こ の平滑な磁性層表面が「スペース損失」を徹底追放し、高域出力が向上した。 【0036】 又本発明の第3のポイントは磁性層の高エネルギー化である。上層磁性層にH
r、Hc共に高くした微粒子の強磁性粉末を用いることにより高磁気エネルギー
化、高抗磁力化を図り、ME(蒸着)テープ同等以上の高域出力を発揮すること
を見出した。 本発明の第4のポイントは高密度充填である。従来の技術では磁性層を単純に
薄層化すると低域出力が低下し、カラー特性が悪化するが、本発明では厚み方向
の剛性が極めて高い微粒子無機粉がカレンダー処理による充填効果を大巾に向上
し、高エネルギー強磁性粉末を高密度充填することにより、優れた中、低域特性
も実現できることを見出した。 【0037】 更に本発明の第5のポイントはME(蒸着)テープでは達成できない優れた耐
久性を確保する粘弾性特性、密着強度、鋼球摩耗、残留溶剤、ゾル分率などの特
性にある。 以上本発明の第1〜第5のポイントが相互に有機的に補充的に、相剰的に更に
は総合的に作用し合い、今までにない新たな層構成が超薄層、超平滑、超高充填
を可能とし従来の単層塗布技術では困難だった画期的な高域特性と、優れた中、
低域特性が実現したものである。 【0038】 まず本発明の第1のポイントについて述べる。 すなわち本発明の上記目的は非磁性支持体上に少なくとも非磁性粉末を結合剤
に分散した下層非磁性層を設け、その上に前記下層非磁性層が湿潤状態のうちに
、強磁性粉末を結合剤に分散した上層磁性層を設けた少なくとも二層以上の複数
の層を有する磁気記録媒体において、前記上層磁性層の乾燥厚み平均値(d)が
1.0μm以下であり、かつ前記上層磁性層と下層非磁性層の界面における厚味
変動の平均値ΔdがΔd≦0.50dの関係にあることを特徴とする磁気記録媒
体によって達成できる。 【0039】 すなわち本発明の第1のポイントは超薄層磁性層を実現したものである。自己
減磁の原理から磁性層の断面積が小さくなるほど損失は小さくなるので短波長信
号の出力アップのためには、磁性層の超薄層化が不可欠であることを見出したも
のである。しかも1μm以上の厚みでは効果が小さく、一般に記録波長の1/4
といわれている有効記録厚みに近づくほど、すなわち飽和記録に近づくほど、そ
の効果が大きくなるため、サブミクロン単位の超薄層化が必要である。 【0040】 従来の単層塗布技術では、サブミクロン領域の薄層塗布自体が難しい上、薄層
にすればするほど均一な厚みの確保や超平滑化が難しく、また、安定して大量に
供給することが極めて困難であった。 しかし従来のダブルコーティング技術を革新し、下層で微粒子無機粉を含む非
磁性層をWet on Wetで設け、磁性層の厚み変動の平均値が厚みの1/
2以下、磁性層厚みの標準偏差を0.2μm以下とすることにより従来の一般的
なHi8 MPテープの1/3〜1/10以下という従来の技術では困難であっ
た画期的な超薄層磁性層が自己減磁損失を低減させ、輝度信号出力の大巾な向上
を実現したものである。 【0041】 自己減磁の原理は以下のようである。 磁化された磁石の磁極は、磁石の外部だけでなく、内部にも磁界を作る。磁石
内部の磁界は、磁化の方向と逆向きであり、磁化を減少させる方向に働く。この
内部磁界のことを「反磁界」と言い、これによって生じる磁化の減少が「自己減
磁」である。 【0042】 そして、その大きさは、磁石の形状に依存する。つまり、断面積が小さいほど
、また磁極間の距離が大きいほど反磁界が小さくなり、自己減磁は起きにくくな
る。 全く形状の異なる、縫い針とパチンコ玉を例にとって説明すると、いずれも鉄
製で、磁石にくっつくが、縫い針は自己減磁が小さいのでそれ自信が磁石になり
易く、一方、パチンコ玉は自己減磁が大きいので、自分自身は磁石にはなりにく い性質を持っている。 【0043】 これを磁気テープに置き換えた場合、長波長(低域)記録では反磁界は小さい
が、短波長(高域)記録になるほど、磁化の磁極間距離が小さくなって反磁界が
増大し、自己減磁による損失が大きくなる。これが、テープの高域特性を劣化さ
せる一つの大きな要因である。 この自己減磁損失を小さくするためには、自己減磁の原理に従って、断面積を
小さくすること、すなわち磁性層の厚みを薄くすることが有効である。しかも、
自己減磁損失は飽和記録に近づくほど小さくなって出力が向上するため、記録波
長の1/4といわれる有効磁性層厚みに近づける。サブミクロン領域の超薄層化
が必要である。 【0044】 Hi8の最短記録波長は0.49μmと、極めて短波長であり、これが磁性層
厚み約0.2μmと極めて薄いME(蒸着)テープと同様に優れた高域特性をも
つ理由のひとつである。 一方、塗布型MPテープの磁性層厚みは約3μmであり、これまでの塗布方式
では記録波長よりかなり厚くならざるをえず、自己減磁損失による高域特性の劣
化が、画質向上をはかる上で避けられない大きな壁であった。 【0045】 しかし本発明により、このような壁を大きく打ち破ったのである。またスペー
ス損失も重要な要因である。 自己減磁と並び、高域特性劣化のもうひとつの大きな原因となっているのがス
ペース損失である。短波長ほどテープ表面に出る磁束が弱まるため、テープとビ
デオヘッドのごく僅かなスペーシングでも、大きな損失となる。スペース損失に
は、磁性層表面の粗さに起因するミクロ的なものと、テープの剛性に起因するマ
クロ的なものがある。前者は、いかに超平滑性を実現しながら安定した走行性を
確保するかが課題であり、特にHi8のように、最短記録波長がVHSの約40
%という高密度記録では、その重要性がきわめて高くなる。後者はいわゆる「ヘ
ッド当り」と言われているもので、優れたテープ強度としなやかさをいかに両立 するかが課題である。これは短波長記録に限らず画質への影響が非常に大きくな
るものである。本発明はこのスペース損失の問題も一挙に解決したものである。 【0046】 次に本発明の第2のポイントについて述べる。 すなわち本発明は、前記上層磁性層の乾燥厚みdが1.0μm以下であり、且
つ前記上層磁性層表面の走査型トンネル顕微鏡(STM)法による2乗平均粗さ
rmsが前記上層磁性層の乾燥厚みdとの間に30≦d/Rrmsの関係があるこ
とが好ましい。 【0047】 本発明の第2のポイントは、磁性層表面の超平滑化である。ダブルコーティン
グ技術は、元来、優れた平滑性を実現できる技術である。それは、ベースフィル
ム表面の凹凸を下層磁性層が吸収し、上層へその凹凸の影響を伝えにくくするか
らである。 しかし、0.5μm以下の、より短波長でのごく僅かなスペース損失をも問題
にし、さらなる平滑性を目指した時、従来技術だけでは限界があった。 【0048】 記録メカニズム上、上層には高域特性に優れた超微粒子磁性体を使用する必要
があり、比較的大きな下層非磁性粉末によって起こる粒子サイズ単位のごく微小
な上下層界面の乱れさえも、徹底的に追求する必要があるからである。特に、上
層を超薄層にするほど、界面の平滑性が磁性層表面の平滑性に与える影響が大き
くなり、この課題の解決が一段と重要であった。 【0049】 本発明では、上下層界面の超平滑化をはかるため、下層非磁性粒子の超微粒子
化と、その高密度充填化を追求した。 しかし一方では、きわめて微粒子のため、そのままでは均一に、かつ高密度に
充填させることが困難であり、そこで超微粒子のひとつひとつの表面に特殊表面
処理を施し、分散性を高めることで、高密度充填を実現し、上下層界面の平滑さ
を飛躍的に高めたものである。 【0050】 また、この非磁性層は高密度充填層であるため、テープの面方向に対しては自
由度が高く、優れたしなやかさを持ちながら、厚み方向の力に対しては、きわめ
た高い剛性を発揮し、カレンダー処理による平滑化効果を、一段と高めたもので
ある。 その結果、Hi8 MP−DCに比べ、さらに20%もの平滑化を実現し、磁
性層の表面粗さ2.5nmを達成した。下層に非磁性層を設けたWet onW
etだからこそ実現できた超平滑性が、短波長領域におけるスペース損失を大巾
に低減し、高域特性を向上させることができたものである。 【0051】 次に本発明の第3のポイントについて述べる。 すなわち本発明は、前記上層磁性層に含まれる強磁性粉末が、長軸長が0.3
μm以下で、且つHcが1500Oe以上の針状強磁性合金粉末あるいは板径0
.3μm以下の粉末であり、且つHcが1000Oe以上の板状強磁性粉末であ
ることが好ましい。 【0052】 すなわち本発明の第3のポイントは、磁気テープの性能向上技術の基本である
磁性層の高出力・低ノイズ化である。短波長での特性向上を徹底追求するために
は、信号損失の極小化とともに、「磁性体の超微粒子化、高エネルギー化と、そ
の高密度充填化」による磁性層自体の高出力、低ノイズ化が不可欠である。 次に本発明の第4のポイントについて述べる。 【0053】 すなわち本発明は、前記磁気記録媒体の塗布方向ステイフネスSMDと塗布方向
に対して幅方向のステイフネスSTDとの比SMD/STDが1.0〜1.9であるこ
とが好ましい。具体的には前記下層非磁性層に含まれる無機質粉末のモース硬度
が6以上、平均粒径が0.15μm以下の球状から立方体状までの多面体状無機
質粉末からなることが好ましい。 【0054】 又、本発明は、前記磁気記録媒体の80℃、30分間に於ける熱収縮率が0.
4%以下であることが好ましく、具体的には前記下層非磁性層の乾燥厚みが前記 上層磁性層の乾燥厚みの1倍〜30倍であり、且つ前記下層非磁性層の粉体体積
比率と前記上層磁性層の粉体体積比率との差が、−5%〜+20%の範囲にある
ことが好ましい。 【0055】 すなわち本発明の第4のポイントは高密度充填であり、本発明の磁性体の高密
度充填を可能にしたのが下層の非磁性層である。平滑で、かつ厚み方向に対して
きわめて剛性の高い非磁性層が、スーパーHDP(High Density
Packing)カレンダーの強力な圧力をしっかりと受け止め、従来にない画
期的な高密度充填を実現した。 【0056】 又磁性層の超薄層化によって高域特性を徹底追求すると、従来の技術では中・
低域特性が低下し、優れたカラー特性が得られなくなる。しかし、本発明の下層
非磁性層がこれを解決した高エネルギー磁性体の画期的な高充填化を可能にし、
高域出力の大幅な向上と同時に、高い中・低域特性を確保し優れたカラー出力を
実現できたものである。 【0057】 すなわち本発明では従来塗布型の磁気記録媒体では不可能と考えられていた蒸
着テープに匹適するほどの高密度記録が達成できたものであり、これは前記下層
非磁性層が湿潤状態のうちに前記上層磁性層を設けるいわゆるWet on W
et法によって、均一な上層磁性層を乾燥厚み1.0μm以下という薄層で形成
できたこと、及び、従来このようなWet on Wet法による磁気記録媒体
法では達成されていなかった上層磁性層の乾燥厚みの平均値が1μm以下であり
、かつ前記上層磁性層と下層非磁性層の界面における厚み変動の平均値ΔdをΔ
d≦d/2の関係にしたことによって初めて現実に実用可能な、塗布型で蒸着テ
ープに匹敵する高密度記録媒体が得られたものである。従来乾燥厚さ1.0μm
以下の上層磁性薄層、下層非磁性層の磁気記録媒体は特許出願として散見される
のみであり、今だかつて現実に市販されるような製品は見出されていなかった。
本発明はこのような従来の常識を初めて破る画期的な発明である。 【0058】 ここでΔdの定義、測定方法は以下の通りである。 ここで上層磁性層の厚みと界面変動Δdの求め方は以下の通りである。 すなわち磁気記録媒体を長手方向にわたってダイアモンドカッターで約0.1
μmの厚みに切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率10000〜100000倍好
ましくは20000〜50000倍で観察し、その写真撮影を行った。写真のプ
リントサイズはA4〜A5で行った。その後、上層磁性層、下層非磁性層の磁性
体や非磁性粉末の形状差に注目して界面を目視判断して黒くふちどり、かつ磁性
層表面も同様に黒くふちどりをした。その後Zeiss社製画像処理装置IBA
S2にてふちどりした線の間隔の長さを測定した。これにより上層磁性層厚みの
平均値を求めた。間隔の長さは長さ21cmの間隔を100〜300にセグメン
ト化してその長さを測定した。 【0059】 上層磁性層と下層非磁性層との界面における厚み変動の平均値Δdは、長さ2
0μm(実長)中の磁性層と下層非磁性層の前記ふちどりをした界面が形成する
山の頂きと谷の底部の厚さ方向の距離(Δdi)を10〜20ヵ所(20μm中
全て)求めその総和の平均値とした。 即ち、本発明においては、該界面を形成する曲線は理想的にはdが一定な直線
であることが最も好ましい態様であるが、現実的には従来に比べ振幅の小さなか
つ山と谷の間隔が長い滑らかなサイン曲線に類似した曲線が形成されたものが好
ましく、山及び谷の数は、20μm長に最大各10〜20個程に制限されること
が好ましい(図1参照)。 【0060】 即ちΔdは下式より求まる。 Δd=(Δd1 +Δd2 +… +Δdm)/m (m=10〜20) 又、界面が形成する曲線の山−山間の距離(L)は、好ましくは1μm以上、
特に好ましくは2μm以上が好ましい。 又、本発明においては、前記100〜300にセグメント化した各磁性層厚み
の値を統計処理で用いるものと全く同じものを使用して標準偏差σを求めること
ができる。この標準偏差σは0.2μm以下であることが好ましい。 【0061】 本発明の第1のポイントは、非磁性支持体上に少なくとも非磁性粉末を結合剤
に分散した下層非磁性層を設け、その上に前記下層非磁性層が湿潤状態のうちに
、強磁性粉末を結合剤に分散した上層磁性層を設けた少なくとも二層以上の複数
の層を有する磁気記録媒体において、前記上層磁性層の乾燥厚み平均値(d)が
1.0μm以下であり、かつ前記上層磁性層と下層非磁性層の界面における厚味
変動の平均値ΔdがΔd≦0.5dの関係にあることを特徴とする磁気記録媒体
によって達成でき、好ましくは、前記上層磁性層の乾燥厚味の測定値の平均値の
標準偏差σが0.2μm以下であることを特徴とする磁気記録媒体によって達成
できる。 【0062】 上記規定を達成するための具体的手段としては、以下の2つがある。 第1の態様は、磁性層の磁性塗料と下層非磁性層の各分散液のチキソトロピー
性を互いに近似するように制御することであり、第2の態様は、下層非磁性層と
磁性層に含まれる粉体のサイズ、形状を規定して力学的に上層および下層に混合
領域が生じないように制御することである。 【0063】 第1の態様の具体的方法としては、非磁性粉末を結合剤中に分散してなる分散
液が、チキソトロピー性を持ち、剪断速度104sec-1での剪断応力 A104
と剪断速度10sec-1での剪断応力 A10との比A104/A10を100
≧A104/A10≧3に調整することである。 このようなチキソトロピー性を有するための具体的な手段としては以下の4つ
がある。本発明の磁気記録媒体はこの4つに限定されるものではなく、あくまで
もその本質とするところは前記分散液のチキソトロピー性を前記磁性塗料のチキ
ソトロピー性と同一又は近似した値にすることであり、更に具体的にはA104
/A10の値の範囲とすることにある。 (A)下層非磁性層の前記粉末が少なくともカーボンブラックと前記下層非磁性
層の乾燥厚みより小さい平均一次粒子径の無機粉末を含みかつ前記下層非磁性層
と上層磁性層に熱硬化系ポリイソシアネートを結合剤中に10〜70重量%含む こと。 (B)下層非記録層の粉末が平均一次粒子径0.08μm以下である非金属無機
粉末を含むこと。 (C)上層磁性層の乾燥厚みが1.0μm以下で、且つ前記下層非磁性層の飽和
最大磁束密度Bmが30〜500ガウスであるようにチキソトロピー性を付与す
る磁性粉末を使用すること。ただし、下層非磁性層は記録に関与しない。 (D)上層磁性層の強磁性粉末が長軸長が0.3μm以下、結晶子サイズが30
0nm以下であり、下層に非磁性粉末として非磁性金属酸化物粉末と平均粒径が
20nm未満のカーボンブラックを95/5〜60/40の割合で含み、かつ少
なくとも下層に一分子中に3個のOH基を有するポリウレタンとポリイソシアネ
ート化合物を含むこと。 【0064】 これら、(A)〜(D)は、A104/A10を前記範囲に調整するための好
適な手段を示したものであるが、これらは、例えば、下記の因子とも互いに関係
(重複した記載も含む)があり、種々選定することにより、所望のA104/A
10を有する分散液、磁性塗料を得、ひいては所期の特性を有する磁気記録媒体
を製造することができる。 【0065】 該因子としては、例えば、分散される無機粉末あるいは磁性粉末に関しては、
(1)粒子サイズ(比表面積、平均一次粒子径等)、(2)構造(吸油量、粒子
形態等)、(3)粉体表面の性質(pH、加熱減量等)、(4)粒子の吸引力(
σs等)等、結合剤に関しては、(1)分子量、(2)官能基の種類等、溶剤に
関しては(1)種類(極性等)、(2)結合剤溶解性、(3)溶剤処方量等、含
水率等が挙げられる。 【0066】 次に第2の態様の具体的手段としては、下記(E)〜(G)が挙げられるが、
あくまでもその本質とするところは前記下層非磁性層と上層磁性層の間に混合領
域をなくすことにあり、これらは単なる例示にすぎない。 (E)下層に含有される非磁性粉末の最も長い軸長r1と最も短い軸長r2との 比r1/r2を2.5以上にすること。 (F)非磁性粉末が針状比が2.5以上であり、かつ強磁性粉末の最も長い軸長
の平均径を0.3μm以下とすること。 (G)下層非磁性層に鱗片状の非磁性粉末と分子量3万以上のエポキシ基を含む
結合剤を含ませ、かつ上層磁性層に針状の強磁性粉末又は板状の強磁性粉末を含
ませること。 【0067】 これらは、下層非磁性層と上層磁性層との界面において混合領域が生じないよ
うにするため、下層非磁性層に針状非磁性粉末あるいは鱗片状非磁性粉末を用い
ている。従来の粒状の非磁性粉末に比べ、針状の非磁性粉末が整列して存在する
と未乾燥状態でも強固な塗膜を形成し、上層磁性層の強磁性粉末が回転しても、
その界面で混合を生じない。又、混合領域が生じないようにするためのもう1つ
の手段は下層非磁性層に鱗片状の非磁性粉末を用いて、いわばタイル状に敷きつ
めることであり、上記と同様、上層磁性層の強磁性粉末が回転してもその界面で
混合が生じない。 【0068】 このタイル状に敷き詰めることは、分散性を改良するため分子量3万以上のエ
ポキシ基を含む結合剤を用いることが好ましい。 このように下層非磁性層に形状的に特徴のある非磁性粉末を用い、その上に上
層磁性層を設けることにより、界面に混合領域が生じず、従って、極めて薄層な
、かつ平滑な磁性層が得られる。 【0069】 また、本発明の磁気記録媒体は、磁性層の乾燥厚味平均値dが最短記録波長λ
に対してλ/4≦d≦3λかつ前記磁性層の表面粗さRaがRa≦λ/50の関
係にあることが好ましい。 このための好適な粉体構成は、磁性層中の前記強磁性粉末は長軸長が0.3μ
m以下の針状強磁性粉末あるいは板径が0.3μm以下の板状強磁性粉末である
こと、下層非磁性層中の非磁性粉末が、平均粒径がλ/4以下の粒状粒子、もし
くは長軸長が0.05〜1.0μmで針状比が5〜20の針状粒子、又は板径が 0.05〜1.0μmで、かつ板状比が5〜20の板状粒子であることが好まし
い。 【0070】 このような本発明の表面性を達成するのは、前記上層磁性層平均厚味の標準偏
差を0.2μm以下にする発明もベースにすると共に以下の(H)〜(J)の4
つの手段によって達成できる。 (H)下層非磁性層に含まれる非磁性粉末がモース硬度3以上の無機質粉末を含
み、上層磁性層に含まれる強磁性粉末が針状の強磁性粉末であり、前記無機質粉
末の平均粒径が針状の強磁性粉末の結晶子サイズの1/2〜4倍であること。 (I)下層非磁性層に含まれる非磁性粉末がモース硬度3以上の無機質粉末を含
み、上層磁性層に含まれる強磁性粉末が針状の強磁性粉末であり、前記無機質粉
末の平均粒径が針状の強磁性粉末の長軸長の1/3以下であること。 (J)上層磁性層に含まれる強磁性粉末が、磁化容易軸が平板の垂直方向にある
六角板状の強磁性粉末であり、且つ下層非磁性層に含まれる非磁性粉末が無機質
粉末を含み、その平均粒径が前記上層磁性層に含まれる強磁性粉末の板径以下で
あること。 (K)下層非磁性層に含まれる無機質粉末が無機質酸化物で被覆された表面層を
有する無機質非磁性粉末を含むこと。 【0071】 上記に述べた夫々の作用効果は以下の通りである。 先ず、(H)について述べる。 上層磁性層を1μm以下の極薄層に塗布するためには湿潤重層塗布が必要であ
るが、その際、下層非磁性層に含まれる無機質粉末の粒子径と上層磁性層に含ま
れる強磁性粉末の結晶子サイズとが関連して細かい表面粗さが決定される。結晶
子サイズは針状の強磁性粉末の場合は、概ね短軸径に対応する。下層非磁性層の
無機質粉末の平均粒径が針状の強磁性粉末の結晶子サイズの1/2以下であると
分散そのものが困難になり、平滑な下層表面が得られないので、できあがった磁
気記録媒体の表面平滑性も不十分になる。逆に下層の無機質粉末の平均粒径は強
磁性粉末の結晶子サイズの4倍を越えると下層粉体粒子間の粒子間距離が広がる ために、上層強磁性粉末が下層の表面性の影響を受けるので十分な表面性を得る
ことができない。実施例に示すように十分な表面性を得るためには上層針状強磁
性粉末結晶子サイズの1/2〜4倍、更に好ましくは2/3〜2倍の平均粒径を
有する無機質粉末が好ましいのである。無機質粉末の形状としては、球状、サイ
コロ状が好ましい。また、モース硬度は3以上、好ましくは4以上、更に好まし
くは6以上である。 【0072】 又、無機質粉末の下層における体積充填率が20〜60%、更に好ましくは2
5〜55%の範囲であることが望ましい。 上記のような下層非磁性粉末粒子径と上層強磁性粉末の結晶子サイズとの関係
で表面粗さを小さくするためには下層粉体の体積充填率に好ましい範囲がある。
体積充填率が20%以下であると下層粉体粒子間の距離が大きくなり、上層磁性
層表面が下層粉体表面の粗さの影響を被るようになり、また、下層に上層強磁性
粉末が混入することにもなり、非常に激しく表面が粗くなる。また、角形比が低
下することにもなる。また、体積充填率が60%以上であると分散液の粘度が非
常に高くなり、実質的に塗布することが不可能になる。塗布されても走行耐久性
の面で粉落ち等の問題を生ずる また、無機質粉末は、非磁性粉末のうち重量比率で60%以上含むことが好ま
しく、無機質粉末としては、金属酸化物、アルカリ土類金属塩等であることが好
ましい。また、カーボンブラックを添加することにより公知の効果(例えば、表
面電気抵抗を低減する)を期待できるので、上記無機質粉末と組み合わせて使用
することが好ましいが、カーボンブラックは分散性が非常に悪いので、カーボン
ブラック単独では十分な電磁変換特性を確保することができない。良好な分散性
を得るためには重量比率で60%以上を金属酸化物、金属、アルカリ土類金属塩
から選択する必要がある。無機質粉末が非磁性粉末の重量比率で60%未満、カ
ーボンブラックが非磁性粉末の40%以上であると分散性が不十分となり所望の
電磁変換特性を得ることができなくなる。 【0073】 次に(I)について以下に説明する。 湿潤重層塗布で電磁変換特性を良好に保つためには角形比を大きくする必要が
あるが、上層強磁性粉末に対して下層非磁性層の無機質粉末の平均粒径が大きい
と下層粒子間の間隙が大きくなり、特に上層と下層との界面で強磁性粉末の配向
の乱れが生じ、(H)と同様に磁性層表面性を悪化させる。配向の乱れを少なく
するためには強磁性粉末長軸方向に渡って細かい非磁性粉末を並べるようにして
、強磁性粉末の長手方向に渡って配向が乱れないように支えてやる必要がある。
そのための要件を実験的に確認したところ、角形比が単層磁性層と同等になるの
は針状強磁性粉末の場合、長軸長の1/3以下、更に好ましくは1/3〜1/2
0の無機質粉末を使用すると良好な表面性と角形比を得ることができる。 【0074】 また、(J)では上記針状強磁性粉末に代わって同様な考え方で6角板状強磁
性粉末を使用すると垂直方向に配向して界面の乱れが少なくなり、角形比を高く
することができる。下層に使用する無機質粉末は、その板径以下、更に好ましく
は板径以下から板径の1/5以上であることが好ましい。 (I)及び(J)では、(H)と同様な理由から、無機質粉末の下層における
体積充填率は20〜60%が好ましい。 【0075】 また、磁性層の厚味が長軸長の5倍以下であるとカレンダーによる充填度向上
がめざましく、より電磁変換特性の優れた磁気記録媒体が得られる。 無機質粉末の好ましい種類、性質は、(H)と同様である。 次に(K)について説明する。 下層非磁性層に含まれる無機質粉末の表面に被覆される無機質酸化物としては
、好ましくはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、Zn
O等が好ましく、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これら
は、組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。又、目的に応
じて共沈させた表面処理槽を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその
表層をシリカで処理する構造、その逆の構造を取ることもできる。また、表面処
理層は、目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般に
は好ましい。 【0076】 例えば、非磁性無機質粉末の表面処理は、非磁性無機質粉末素材を乾式粉砕後
、水と分散剤を加え、湿式粉砕、遠心分離により粗粒分級が行われる。その後、
微粒スラリーは表面処理槽に移され、ここで金属水酸化物の表面被覆が行われる
。まず、所定量のAl、Si、Ti、Zr、Sb、Sn、Znなどの塩類水溶液
を加え、これを中和する酸、またはアルカリを加えて、生成する含水酸化物で無
機質粉末粒子表面を被覆する。副生する水溶性塩類はデカンテーション、濾過、
洗浄により除去し、最終的にスラリーpHを調節して濾過し、純水により洗浄す
る。洗浄済みケーキはスプレードライヤーまたはバンドドライヤーで乾燥される
。最後にこの乾燥物はジェットミルで粉砕され、製品になる。また、水系ばかり
でなくAlCl3、SiCl4の蒸気を非磁性無機質粉末に通じ、その後水蒸気を
流入してAl、Si表面処理を施すことも可能である。 【0077】 その他の表面処理法については、「Characterization of Powder Surfaces」
,Academic Pressを参考にすることができる。 本態様は、記録波長に応じた磁性層の最適厚み範囲と下層非磁性層と磁性層界
面における厚み変動(即ち、該界面の厚み方向における変動幅)を規定すること
により、磁性層表面粗さが規定かつ改善され、ひいては磁性層の厚みを薄くかつ
均一、一様に形成されるので記録波長が短くなっても再生出力変動、振幅変調ノ
イズを防止し、高再生出力、高C/Nを実現することができる。 【0078】 言い換えれば、従来、磁性層が薄くなった時、記録波長が短くなると磁性層全
層が記録再生に寄与するので、磁性層の厚さが変動すると再生出力変動、振幅変
調ノイズがみられたが、本発明はこの欠点を解決したものである。 【0079】 本発明において、最短記録波長λは、磁気記録媒体の種類により種々異なるが
、例えば、8mmメタルビデオでは0.7μm、デジタルビデオでは、0.5μ
m、デジタルオーディオでは0.67μmが挙げられる。 【0080】 本発明の磁性層の厚みdの範囲は、λ/4≦d≦3λ、好ましくは、λ/4≦
d≦2λ(即ち、0.25≦d/λ≦2)である。また、本発明の磁性層の厚み
平均値dは、通常0.05μm≦d≦1μm、好ましくは、0.05μm≦d≦
0.8μmの範囲である。 【0081】 該磁性層厚みは、前記の通り実測して求められるが、蛍光X線で磁性層中に特
有に含まれる元素について、既知厚みの磁性層サンプルを測定し、検量線を作成
し、次いで、未知資料のサンプルの厚みを蛍光X線の強度から求めることもでき
る。 本発明は、Δdを0.50d以下、即ち、Δd/dを0.50以下、好ましく
は、0.3以下、更に好ましくは0.25以下に制御する。また、Δdの範囲は
、0.001〜0.5μm、好ましくは0.03〜0.3μm、更に好ましくは
0.05〜0.25である。これにより、磁性層厚みの一様性を確保すると共に
表面粗さRaをRa≦λ/50、即ちλ/Raを50以上、好ましくは75以上
、更に好ましくは80以上に規制することができる。また、本発明においてRa
は、光干渉粗さ計を用いて測定した中心線平均粗さを測定した値をさす。 【0082】 本発明の磁気記録媒体は、下層非磁性層が湿潤状態の内に上層磁性層を塗布し
て形成されるが、この場合、同時重層塗布でも逐次でも下層非磁性層が湿潤状態
であればかまわないが、同時重層塗布が好ましい。 【0083】 即ち、本発明により、例えば、1μm以下の磁性層を下層非磁性層と同時塗布
することで、磁性層を単独で薄くした場合あるいは、下層非磁性層が乾燥状態の
逐次で積層した場合問題となる塗布欠陥を防止できる。 【0084】 本発明において、磁性層の厚みに関しては、単に薄くすればよいとは言えず、
本発明者らは、最短記録波長λに対して最適な範囲があることを見出した。すな
わち、磁性層厚みがλ/4より薄くなると再生に寄与する磁束が減少し出力は低
下する。また、3λを越えると同時に記録する記録波長が長い成分の深層記録磁 界により短波長成分が減磁するので、出力が低下する。従って、d≦3λ、好ま
しくは、d≦2λが良い。 【0085】 また、媒体の基本性能であるC/Nをとらえた場合には、従来の厚膜磁性層で
問題とされた磁性層表面の凹凸(いわゆる表面粗さ)に加えて、非磁性層と磁性
層界面での厚み変動が問題となり、これは、磁性層厚みdがλ/4≦d≦3λの
範囲になると、再生出力は磁性層全体の磁束量の影響を受ける様になるためで、
従来の厚膜磁性層では問題ではなかったことである。本発明は、この問題に対し
て、下層非磁性層と磁性層界面の厚み変動の平均値Δdが磁性層厚みdの1/2
以下であることが要求されることを見出したものである。また、磁性層表面の粗
さに関しては従来の厚膜磁性層と同様に平滑なことが要求され、表面粗さRaが
、Ra≦λ/50の関係を満たすことが必要である。 【0086】 この発明によって、真空中での処理が前提であり、腐食に弱い金属薄膜媒体の
生産性、信頼性の問題がなく、電磁変換特性が金属薄膜に匹敵し、しかも生産性
に優れた高性能塗布型磁気記録媒体を得ることができる。 本発明の第2のポイントを達成する態様は、磁性層表面の走査型トンネル顕微
鏡(STM)法による2乗平均粗さ Rrmsが前記磁性層の乾燥厚味平均値dと
の間に30≦d/Rrmsの関係があることである。 【0087】 磁性層厚味が薄くなると、自己減磁損失が低減して出力向上が図れるはずであ
るが、磁性層厚味低減により押されしろが少なくなるためにカレンダー成形性が
悪くなり、表面粗さが大きくなる。自己減磁損失低減による出力向上を図るため
には上式の関係を満たすSTMによる表面粗さが好ましい。 AFMによるRrmsは、10nm以下が好ましい。3d−MIRAUで測定し
た光干渉表面粗さRaは1〜4nm、P−V値(Peak−Valley)値は
、80nm以下であることが好ましい。 【0088】 磁性層表面の光沢度は、カレンダー処理後で250〜400%が好ましい。 また本発明の第3のポイントを達成するためには、前記上層磁性層に含まれる
強磁性粉末が、長軸長が0.3μm以下で、且つHcが1500Oe以上の針状
強磁性合金粉末あるいは板径0.3μm以下で、且つ粉末であり、且つHcが1
000Oe以上の板状強磁性粉末であることが好ましい。 【0089】 該強磁性粉末としては、針状強磁性合金粉末、及び板状の六方晶フェライト系
強磁性体(Baフェライト、Srフェライト等)、及び板状Co合金粉末が使用
できる。Hc,飽和磁化(σs)、は適宜選択してよいが、特に最短記録波長が1
μm以下の短波長記録には、Hcが1500(Oe)以上が好ましい。磁性体の
サイズは一般的に高密度記録に対して適合するための針状のもので長軸長0.3
μm以下、板状のもので板径0.3μm以下のものを用いる。 【0090】 本発明の第4のポイントを達成するためには、前記磁気記録媒体の塗布方向ス
テイフネスSMDと塗布方向(長手方向)に対して幅方向のステイフネスSTDとの
比SMD/STDが1.0〜1.9であることが好ましい。 ステイフネスを上記値とするためには前記下層非磁性層に含まれる無機質粉末
のモース硬度が6以上、平均粒径が0.15μm以下の球状から立方体状までの
多面体状無機質粉末のものを使用することが好ましい。 【0091】 スチフネスの発明の作用機構は以下の通りである。 本態様は、磁気記録媒体のSMD/STDを制御することにより、磁気記録媒体の
力学的特性を制御して、磁気記録媒体のヘッド当たりを改善すると共に特に短波
長記録における電磁変換特性を改善したものである。 即ち、本態様は、SMD/STDを1.0〜1.9に制御するものである。 【0092】 塗布方向のスティフネスSMD及び幅方向のスティフネスSTDは、共に市販のス
ティフネステスターを使用して測定できる。例えば、東洋精機社製ループスティ
フネステスターを使用し、製造した磁気記録媒体を幅8mm、長さ50mmの試
料をSMDの測定用には試料長さ方向が磁気記録媒体の塗布方向と同じになるよう に、STDの測定用には試料長さ方向が磁気記録媒体の幅方向と同じになるように
切り出してこれを円環として、内径方向に変位速度3.5mm/秒で変位5mm
を与えるに要する力をmgで表した値を各SMD、STDとすることができる。 【0093】 ここで、SMD/STDは、1.0〜1.9、好ましくは1.1〜1.85に制御
される。また、全厚み13.5±1μmの磁気記録媒体においてはSMDは、50
〜200mg、好ましくは50〜150mg、STDは、40〜150mg、好ま
しくは50〜130mgである。 SMD/STDの値を制御する手段は特に制限はないが、好ましくは下層無機質粉
末の形状及びモース硬度を選択することが望ましく、下層に含まれる無機質粉末
として、モース硬度が6以上、好ましくは6.5以上、平均粒径が0.15μm
以下、好ましくは0.12μm以下の球状から立方体状までの多面体状無機質粉
末を選択することが望ましい。 【0094】 磁気記録媒体のヘッド当たりを良好にするためにはテープの各スティフネスを
ある程度高くすることが必要であり、そのためには、配合する粉体の硬さは硬い
方が好ましい。モース硬度が6未満であると各スティフネスが低くなり、良好な
ヘッド当たりが確保できない。また、平均粒径が0,15μm以下と小さい方が
、ヘッド当たりが良好である。これは、結合剤との接触界面が増加するために変
形に強くなり、各スティフネスSMD、STDが向上するためと考えられる。本発明
においては、このSMD/STDを上述の範囲に調整する。 【0095】 特に、電磁変換特性に効果が高いのは、STDがSMDに近いこと、即ち1に近い
ことである。下層に含まれる無機質粉末を球状から立方体までの多面体形状にす
ると塗膜の力学物性が等方的になるので、STDを向上させるのに都合がよい。 ここで、多面体形状とは、具体的には球状、一面が正方形、正5角形、正6角
形等の正n角形あるいは単なるn角形等から1種以上選択される正多面体あるい
は非正多面体等が例示できるが、好ましくは任意に選択した2つの軸比が0.6
〜1.4、好ましくは0.7〜1.3の範囲にあるものが望ましい。 【0096】 本発明の第4のポイントを達成するための他の態様としては、前記磁気記録媒
体の80℃、30分間に於ける熱収縮率が0.4%以下であることであり、具体
的には前記下層非磁性層の乾燥厚みが前記上層磁性層の乾燥厚みの1倍〜30倍
であり、且つ前記下層非磁性層の粉体体積比率と前記上層磁性層の粉体体積比率
との差が−5%〜+20%の範囲にあること、前記上層磁性層に含まれる強磁性
粉末の結晶子サイズが300オングストローム以下であり、且つ前記下層非磁性
層に含まれる無機質粉末の平均粒子サイズが0.15μm未満である粒状物、も
しくは平均長軸径0.6μm未満である針状物であること、前記下層非磁性層に
含まれる無機質粉末が酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸ストロ
ンチウム、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、α酸化鉄から選ばれた少なくとも1種
であること、前記下層非磁性層が平均粒径30mμ以下であり、かつDBP吸油
量が30〜300ml/100gで、BET法による比表面積が150〜400
2/gであるカーボンブラックを第二成分として前記無機質粉末100重量部
に対し、50重量部未満の割合で含むことである。 【0097】 本態様は、磁性層厚味が1μm以下の自己減磁損失が改善された塗布型磁気記
録媒体がピンホール、すじなどの塗布欠陥なく生産性よく製造でき、かつ磁気記
録媒体の熱収縮を所定の値以下に抑制したものである。 即ち、本態様は70℃、48時間保存後における熱収縮率を0.4%以下に制
御したことにより、スキュー歪みを改善、低減し、しかも強磁性金属薄膜に匹敵
する電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供するものである。 【0098】 言い換えれば、本態様は、磁性層が極めて薄い磁気記録媒体を生産性よく製造
し、かつスキュー歪みを小さくする適切な磁気記録媒体の強度を上記熱収縮率で
規定できることを見出したものである。 ここで、該熱収縮率は、100×(加熱前の室温における磁気記録媒体の長さ
−70℃の環境下48時間磁気記録媒体をテンションを与えずに保持した後の長
さ)÷(加熱前の室温における磁気記録媒体の長さ)で示される値である。 【0099】 本態様において熱収縮率を制御する手段としては、特に制限なく、任意の方法
が適用できる。該制御手段としては、具体的には下記に挙げる例が好ましい。 下層非磁性層の乾燥厚味を上層磁性層の乾燥厚味の1倍〜30倍、好ましくは
2〜20倍に制御し、磁気記録媒体の伸び縮みを下層及び上層の膜強度で制御す
ることが挙げられる。該厚味比が1倍以下であると磁性層微粒子化による強度劣
化による熱収縮率増大を防ぐことができない。また、該厚味比が30倍以上では
、塗布厚味が厚くなるために、残留溶剤が増加し、膜が可塑化する等の弊害がで
る。 【0100】 また、下層及び上層の膜強度を調整する手段としては、下層非磁性層の粉体体
積比率と前記上層磁性層の粉体体積比率との差を−5%〜+20%、好ましくは
0〜15%の範囲に制御することが挙げられる。ここで、−5%以下であると磁
性層の熱収縮率増大を抑止できず、また、20%以上増量すると媒体自体が硬く
なりすぎて、粉落ちが多くなり、好ましくない。 【0101】 また、本発明において、上層の粉体体積比率は、10〜50%、好ましくは、
20〜45%の範囲が例示され、下層の粉体体積比率は、20〜60%、好まし
くは、25〜50%の範囲が例示される。 この各層の粉体体積比率は、添加する粉体と結合剤の各量を変更すること、各
層の粉体の粒子サイズ、形状で制御できる。結合剤量を増量すると相対的に粉体
体積比率が減少する。また、粉体の粒子サイズは細かい程、熱収縮率低減に効果
があるが、細かすぎると分散が困難になる。 【0102】 本態様において、好ましい態様を挙げると、例えば、強磁性粉末の粒子サイズ
としては、結晶子サイズが300Å以下、好ましくは100〜250Å、平均長
軸径が0.005〜0.4μm、好ましくは0.1〜0.3μmの範囲が望まし
く、平均長軸径/結晶子サイズは、3〜25、好ましくは5〜20の範囲が挙げ
られる。強磁性粉末をBET法による比表面積で表せば25〜80m2/gであ り、好ましくは30〜70m2/gである。25m2/g以下ではノイズが高くな
り、80m2/g以上では表面性が得にくく好ましくない。 【0103】 また、下層の無機質粉末の粒子サイズ、形状としては、平均粒径が0.15μ
m未満、好ましくは0.005〜0.7μmである粒状物、平均長軸径が0.6
μm未満、好ましくは0.1〜0.3μmであり、平均長軸径/短軸長で表され
る針状比が4〜50、好ましくは5〜30である針状物等が例示される。 無機質粉末としては、ルチル型酸化チタン、α酸化鉄、ゲータイトが好ましい
。 【0104】 また、下層に使用される粉体としては、カーボンブラックが挙げられる。この
カーボンブラックとしては、平均粒径が30mμ以下、好ましくは5〜28mμ
であり、且つDBP吸油量が30〜300ml/100g、好ましくは50〜2
50ml/100gで、BET法による比表面積が150〜400m2/g、好
ましくは170〜300m2/g、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、
タップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。 【0105】 このカーボンブラックは、前記無機質粉末100重量部に対し、50重量部未
満、好ましくは13〜40重量部の割合で下層に添加されることが好ましい。 該カーボンブラックは、磁気記録媒体の帯電防止、膜強度の強化等の機能の他
、空隙率を制御することにより下層の粉体体積比率を制御するためにも使用され
る。即ち、空隙率が高いと相対的に粉体体積比率は低下するためである。このよ
な空隙率を制御するためのカーボンブラックとしては、構造を持ったカーボンブ
ラックや中空状カーボンブラックを使用すると効果がある。 【0106】 下層の空隙率は、上層の空隙率±10%の範囲が好ましい。又、下層の空隙率
は、10〜30%の範囲にあることが好ましい。 本発明の第5のポイントは耐久性に係わるものである。 本発明の磁気記録媒体を引張り試験試験機で測定したヤング率が300〜20 00Kg/mm2、好ましくは、400〜1500Kg/mm2であり、前記磁性
層のヤング率が400〜5000Kg/mm2、好ましくは500〜4000K
g/mm2、降伏応力は3〜20Kg/mm2、好ましくは4〜18Kg/mm2
、降伏伸びが0.2〜8%、好ましくは0.5〜5%であることが望ましい。 【0107】 これは、強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、無機質粉末、支持体が係わ
ってくるので、耐久性に影響する。 又、本発明の磁気記録媒体の曲げ剛性(円環式スティフネス)は全厚が11.
5μmより厚い場合は好ましくは40〜300mg全厚が10.5±1μmでは
好ましくは20〜90mg又全厚が9.5μmより薄い場合は好ましくは10〜
70mgである。 【0108】 これは、主として支持体に関連するもので耐久性を確保する上で重要である。 また、本発明磁気記録媒体の23℃、70%RHで測定したクラック発生伸度
が好ましくは20%以下が望ましい。 また、本発明磁気記録媒体をX線光電子分光装置を用いて測定した前記磁性層
表面のCl/Feスペクトルαが好ましくは0.3〜0.6、N/Feスペクト
ルβが好ましくは0.03〜0.12である。 【0109】 これは、強磁性粉末、無機質粉末及び結合剤と関連し、耐久性を得る上で重要
である。 また、本発明磁気記録媒体を動的粘弾性測定装置を用いて測定した前記磁性層
のガラス転移温度Tg(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極
大点)が好ましくは40〜120℃であり、貯蔵弾性率E′(50℃)が好まし
くは0.8×1011〜11×1011dyne/cm2であり、損失弾性率E′′
(50℃)が好ましくは0.5×1011〜8×1011dyne/cm2であるこ
とが望ましい。また損失正接は、0.2以下であることが好ましい。損失正接が
大きすぎると粘着故障が出やすい。これらは、バインダー、カーボンブラック、 や溶剤と関連し、耐久性に関連する重要な特性である。 【0110】 また、前記非磁性支持体と前記磁性層との23℃、70%RHでの8mm幅テ
ープの180°密着強度が好ましくは10g以上であることが望ましい。 また、上層磁性層表面の23℃、70%RHの鋼球磨耗が好ましくは0.7×
10-7〜5×10-73であることが望ましい。これは、直接に磁性層表面の磨
耗を見るもので主に強磁性粉末に関連する耐久性の尺度である。 【0111】 又、本発明磁気記録媒体をSEM(電子顕微鏡)で倍率50000倍で5枚撮
影した前記磁性層表面の研磨剤の目視での数が好ましくは0.1個/μm2以上
であることが望ましい。又、本発明の磁気記録媒体の上層磁性層端面に存在する
研磨剤は5個/100μm2以上が好ましい。これらは、磁性層の研磨剤と結合
剤により影響を受け、耐久性に効果を発揮する尺度である。 【0112】 また、本発明磁気記録媒体をガスクロマトグラフィーを用いて測定した前記磁
気記録媒体の残留溶剤が好ましくは50mg/m2以下であることが望ましい。 又、上層中に含まれる残留溶媒は好ましくは20mg/m2以下、さらに好ま
しくは10mg/m2以下であり、上層に含まれる残留溶媒が下層に含まれる残
留溶媒より少ないほうが好ましい。 【0113】 また、本発明磁気記録媒体よりTHFを用いて抽出された可溶性固形分の磁性
層重量に対する比率であるゾル分率が15%以下であることが望ましい。これは
、強磁性粉末と結合剤により影響を受けるもので、耐久性の尺度となる。 本発明の磁気記録媒体は、その上層磁性層に1MHzの短波長記録をし、フェ
リコロイドを用いて磁気現像し、微分干渉顕微鏡を用いて10倍で観察した5m
m幅のサンプルの中に連続した黒又は白い線が5本以内であることが好ましい。 【0114】 本発明の磁気記録媒体の摩擦係数(μ)は、磁性面で0.15〜0.4が好ま
しく、特に好ましくは0.2〜0.35であり、又、バック層面は0.15〜0 .4が好ましく、特に好ましくは0.2〜0.35である。 又、本発明の磁気記録媒体の接触角は、60〜130であることが好ましく、
特に80〜120が好ましい。又、ヨウ化メチレンの場合、好ましくは10〜9
0°であり、特に好ましくは20〜70°である。 【0115】 これら接触角は特に潤滑剤や分散剤によって定まる値である。 本発明の磁気記録媒体の磁性層及びバック層の表面自由エネルギーは、10〜
100dyne/cmが、特に好ましい。 本発明の磁気記録媒体の表面電気抵抗は、磁性層表面及びバック層表面共に1
×109Ω/sq以下が好ましく、1×108Ω/sq以下が特に好ましい。 【0116】 以下、本発明が選択可能な一般的事項について述べる。 本発明に使用できる非磁性無機質粉末は、例えば、金属、金属酸化物、金属炭
酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の非磁性無機質粉末
が挙げられる。具体的にはTiO2(ルチル、アナターゼ)、TiOx、酸化セリ
ウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α
化率90%以上のるαアルミナ、βアルミナ、γアルミナ、α酸化鉄、ゲータイ
ト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化硼素、
2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、B
aSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独または組み合わせて使用される。こ
れら無機質粉末の形状、サイズ等は任意であり、これらは必要に応じて異なる無
機質粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布等を選択することも
できる。 【0117】 粒子サイズは、前記(A)〜(K)までの具体的方法に基づくことが好ましい
が、一般的には、粒状、球状、多面体状の場合、0.01〜0.7μmであり、
最短記録波長λの1/4以下にすることが好ましい。針状または板状の場合は、
長軸長0.05〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.5で針状比が5〜20
、好ましくは5〜15、あるいは板径0.05〜1.0μm、好ましくは、0. 05〜0.5μm、板状比(板径と厚みの比)が5〜20、好ましくは10〜2
0のものが用いられる。 【0118】 無機質粉末としては、次のものが好ましい。タップ密度は0.05〜2g/c
c、好ましくは0.2〜1.5g/cc。含水率は0.1〜5%、好ましくは0
.2〜3%。pHは2〜11、特に4〜10が好ましい。比表面積は、1〜10
0m2/g、好ましくは5〜70m2/g、更に好ましくは7〜50m2/gであ
る。結晶子サイズは0.01μm〜2μmが好ましい。DBPを用いた吸油量は
5〜100ml/100g、好ましくは10〜80ml/100g、更に好まし
くは20〜60ml/100gである。SA(ステアリン酸)吸着量は1〜20
μmol/m2、更に好ましくは2〜15μmol/m2である。粉体表面のラフ
ネスファクターは0.8〜1.5が好ましく、更に好ましくは2〜15μmol
/m2である。25℃での水への湿潤熱は200erg/cm2〜600erg/
cm2が好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる
。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である
。水中での等電点のpHは3〜9の間にあることが好ましい。比重は1〜12、
好ましくは3〜6である。 【0119】 上記の無機質粉末は必ずしも100%純粋である必要はなく、目的に応じて表
面を他の化合物、例えば、Al、Si、Ti、Zr、Sn、Sb、Zn等の各化
合物で処理し、それらの酸化物を表面に形成してもよい。その際、純度は70%
以上であれば効果を減ずることにはならない。強熱減量は20%以下であること
が好ましい。 【0120】 本発明に用いられる無機質粉末の具体的な例としては、昭和電工社製UA56
00、UA5605、住友化学社製AKP−20、AKP−30、AKP−50
、HIT−55、HIT−100、ZA−G1、日本化学工業社製G5、G7、
S−1、戸田工業社製TF−100、TF−120、TF−140、R516、
石原産業社製TTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55 C、TTO−55S、TTO−55S、TTO−55D、FT−1000、FT
−2000、FTL−100、FTL−200、M−1、S−1、SN−100
、R−820、R−830、R−930、R−550、CR−50、CR−80
、R−680、TY−50、チタン工業社製ECT−52、STT−4D、ST
T−30D、STT−30、STT−65C、三菱マテリアル社製T−1、日本
触媒社製NS−O、NS−3Y、NS−8Y、テイカ社製MT−100S、MT
−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100
E、堺化学社製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、BF−
1L、BF−10P、同和工業社製DEFIC−Y、DEFIC−R、チタン工
業社製Y−LOP及びそれを焼成した物である。 【0121】 本発明に使用される非磁性無機質粉末としては、特に酸化チタン(特に二酸化
チタン)が好ましい。以下、この酸化チタンの製法を詳しく記す。酸化チタンの
製法は主に硫酸法と塩素法がある。硫酸法は、イルミナイトの原鉱石を硫酸で蒸
留し、Ti、Feなどを硫酸塩として抽出する。硫酸鉄を晶析分離して除き、残
りの硫酸チタニル溶液を濾過精製後、熱加水分解を行って、含水酸化チタンを沈
殿させる。これを濾過洗浄後、夾雑物質を洗浄除去し、粒径調節剤などを添加し
た後、80〜1000℃で焼成すれば粗酸化チタンとなる。ルチル型とアナター
ゼ型は加水分解の時に添加される核材の種類によりわけられる。この粗酸化チタ
ンを粉砕、整粒、表面処理などを施して作成する。塩素法は原鉱石天然ルチルや
合成ルチルが用いられる。鉱石は高温還元状態で塩素化され、TiはTiCl4
にFeはFeCl2となり、冷却により固体となった酸化鉄は液体のTiCl4
分離される。得られた粗TiCl4は精留により精製した後、核生成剤を添加し
、1000℃以上の温度で酸素と瞬間的に反応させ、粗酸化チタンを得る。この
酸化分解工程で生成した粗酸化チタンに顔料的性質を与えるための仕上げ方法は
硫酸法と同じである。 【0122】 また、本発明は下層にカーボンブラックを使用することができ、公知の効果で
あるRs(表面電気抵抗)等を下げることもできる。このカーボンブラックとし てはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラッ
ク、等を用いることができる。比表面積は100〜500m2/g、好ましくは
150〜400、DBP吸油量は20〜400ml/100g、好ましくは30
〜200ml/100gである。平均粒径は5mμ〜80mμ、好ましくは10
〜50mμ、更に好ましくは10〜40mμである。pHは2〜10、含水率は
0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。 【0123】 本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、
BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、、
880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050、#
3150、#3250、#3750、#3950、#2400B、#2300、
#1000、、#970、#950、、#900、#850、#650、#40
、MA40、MA−600、コロンビアカーボン社製、CONDUCTEX S
C、RAVEN社製8800、8000、7000、5750、5250、35
00、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾ
ー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。カーボンブラックを分散剤な
どで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても表面の一部をグラファイ
ト化したものを使用しても構わない。また、カーボンブラックを非磁性塗料に添
加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラッ
クは単独、または組み合わせて使用することができる。 【0124】 本発明で使用できるカーボンブラックは、例えば(「カーボンブラック便覧」
、カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。 本発明に使用される非磁性有機質粉末は、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベン
ゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられ
るが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂
粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末が使用される。その
製法は、特開昭62−18564号、同60−255827号の各公報に記載さ
れているようなものが使用できる。 【0125】 これらの非磁性粉末は、通常、結合剤に対して、重量比率で20〜0.1、体
積比率で10〜0.1の範囲で用いられる。 なお、一般の磁気記録媒体においては下塗層を設けることが行われているが、
これは支持体と磁性層等の接着力を向上させるために設けられるものであって、
厚さも0.5μm以下で本発明の下層非磁性層とは異なるものである。本発明に
おいても下層と支持体との接着性を向上させるために下塗層を設けることが好ま
しい。 【0126】 本発明の磁性層に使用する強磁性粉末としては磁性酸化鉄FeOx(x=1.
33〜1.5)、Co変性FeOx(x=1.33〜1.5)、FeまたはNi
またはCoを主成分(75%以上)とする強磁性合金粉末、バリウムフエライト
、ストロンチウムフエライトなど公知の強磁性粉末が使用できるが、強磁性合金
粉末が更に好ましい。。これらの強磁性粉末には所定の原子以外にAl、Si、
S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、
Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、N
d、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。
これらの強磁性粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤
などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44
−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号、特公
昭47−22513号、特公昭46−28466号、特公昭46−38755号
、特公昭47−4286号、特公昭47−12422号、特公昭47−1728
4号、特公昭47−18509号、特公昭47−18573号、特公昭39−1
0307号、特公昭48−39639号、米国特許第3026215号、同30
31341号、同3100194号、同3242005号、同3389014号
などに記載されている。 【0127】 上記強磁性粉末の中で強磁性合金粉末については少量の水酸化物、または酸化
物を含んでもよい。強磁性合金粉末の公知の製造方法により得られたものを用い ることができ、下記の方法をあげることができる。複合有機酸塩(主としてシュ
ウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気
体で還元してFeあるいはFe−Co粒子などを得る方法、金属カルボニル化合
物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン
酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不
活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた
強磁性合金粉末は公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させ
る方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成
したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整
して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができ
る。 【0128】 本発明の上層磁性層の強磁性粉末をBET法による比表面積で表せば25〜8
0m2/gであり、好ましくは40〜70m2/gである。25m2/g以下では
ノイズが高くなり、80m2/g以上では表面性が得にくく好ましくない。本発
明の上層磁性層の強磁性粉末の結晶子サイズは450〜100Åであり、好まし
くは350〜100Åである。酸化鉄磁性粉末のσsは50emu/g以上、好
ましくは70emu/g以上であり、強磁性金属粉末の場合は100emu/g
以上が好ましく、更に好ましくは110emu/g〜170emu/gである。
抗磁力は1100Oe以上、2500Oe以下が好ましく、更に好ましくは14
00Oe以上2000Oe以下である。強磁性粉末の針状比は18以下が好まし
く、更に好ましくは12以下である。 【0129】 強磁性粉末のr1500は1.5以下であることが好ましい。さらに好ましく
はr1500は1.0以下である。r1500とは磁気記録媒体を飽和磁化した
のち反対の向きに1500Oeの磁場をかけたとき反転せずに残っている磁化量の
%を示すものである。 強磁性粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によ
って強磁性粉末の含水率は最適化するのが好ましい。γ酸化鉄のタップ密度は0 .5g/cc以上が好ましく、0.8g/cc以上がさらに好ましい。合金粉末
の場合は、0.2〜0.8g/ccが好ましく、0.8g/cc以上に使用する
と強磁性粉末の圧密過程で酸化が進みやすく、充分な飽和磁化(σs)を得ること
が困難になる。0.2cc/g以下では分散が不十分になりやすい。 【0130】 γ酸化鉄を用いる場合、2価の鉄の3価の鉄に対する比は好ましくは0〜20
%であり、さらに好ましくは5〜10%である。また鉄原子に対するコバルト原
子の量は0〜15%、好ましくは2〜8%である。 強磁性粉末のpHは用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい
。その範囲は4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性粉末は必要
に応じ、Al、Si、Pまたはこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわ
ない。その量は強磁性粉末に対し0.1〜10%であり表面処理を施すと脂肪酸
などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性粉末には可
溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、5
00ppm以下であれば特に特性に影響を与えない。 【0131】 また、本発明に用いられる強磁性粉末は空孔が少ないほうが好ましくその値は
20容量%以下、さらに好ましくは5容量%以下である。また形状については先
に示した条件を満足するように針状、粒状、米粒状、板状等から選択される。強
磁性粉末のSFD0.6以下を達成するためには、強磁性粉末のHcの分布を小
さくする必要がある。そのためには、ゲータイトの粒度分布をよくする、γ−ヘ
マタイトの焼結を防止する、コバルト変性の酸化鉄についてはコバルトの被着速
度を従来より遅くするなどの方法がある。 【0132】 本発明にはまた、磁化容易軸が平板の垂直方向にある六角板状の強磁性粉末と
して、板状六方晶フエライト等が例示され、バリウムフエライト、ストロンチウ
ムフエライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等
、六方晶Co粉末が使用できる。具体的にはマグネトブランバイト型のバリウム
フェライト及びストロンチウムフェライト、更に一部スピネル相を含有したマグ ネトブランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙
げられ、特に好ましいものとしてはバリウムフェライト、ストロンチウムフェラ
イトの各置換体である。また、抗磁力を制御するために上記六方晶フェライトに
Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Ir−
Zn等の元素を添加した物を使用することができる。 【0133】 バリウムフェライトを用いる場合、板径は六角板状の粒子の板の幅を意味し、
電子顕微鏡を使用して測定する。本発明ではこのを板径を0.001〜1μmで
、板厚を直径の1/2〜1/20とするとよい。比表面積(SBET)は、1〜6
0m2/gが好ましく、比重は4〜6が好ましい。 本発明の下層非磁性層、上層磁性層に使用される結合剤としては従来公知の熱
可塑系樹脂、熱硬化系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用される。熱可塑
系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150℃、数平均分子量が100
0〜200000、好ましくは10000〜100000、重合度が約50〜1
000程度のものである。このような例としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビ
ニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデ
ン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタ
ジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等
を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹
脂がある。また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂としてはフエノール樹脂、エポ
キシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、
アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリ
アミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエ
ステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシア
ネートの混合物等があげられる。 【0134】 これらの樹脂については朝倉書店発行の「プラスチックハンドブック」に詳細
に記載されている。 また、公知の電子線硬化型樹脂を下層、または上層に使用することも可能であ る。これらの例とその製造方法については特開昭62−256219号に詳細に
記載されている。 【0135】 以上の樹脂は単独または組合せて使用できるが、好ましいものとして塩化ビニ
ル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニルビニルアルコール樹
脂、塩化ビニル酢酸ビニル無水マレイン酸共重合体の群から選ばれる少なくとも
1種とポリウレタン樹脂の組合せ、またはこれらにポリイソシアネートを組合せ
たものがあげられる。 【0136】 ポリウレタン樹脂の構造はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレ
タン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン
、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタ
ンなど公知のものが使用できる。 ここに示したすべての結合剤について、より優れた分散性と耐久性を得るため
には必要に応じ、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(OM1)(
OM2)、−OP=O(OM1)(OM2)、−NR4X(ここで、M、M1、M2
、H、Li、Na、K、−NR4、−NHR3を示し、Rはアルキル基もしくはH
を示し、Xはハロゲン原子を示す。)、OH、NR2、N+3、(Rは炭化水素
基)、エポキシ基、SH、CNなどから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を
共重合または付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性
基の量は10-1〜10-8モル/gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gで
ある。 【0137】 塩化ビニル系共重合体としては、好ましくは、エポキシ基含有塩化ビニル系共
重合体が挙げられ、塩化ビニル繰返し単位と、エポキシ基を有する繰返し単位と
、所望により−SO3M、−OSO3M、−COOMおよび−PO(OM)2(以
上につきMは水素原子、またはアルカリ金属)等の極性基を有する繰返し単位と
を含む塩化ビニル系共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する繰返し単位との
併用では、−SO3Naを有する繰返し単位を含むエポキシ基含有塩化ビニル 系共重合体が好ましい。 【0138】 極性基を有する繰返し単位の共重合体中における含有率は、通常0.01〜5
.0モル%(好ましくは、0.5〜3.0モル%)の範囲内にある。 エポキシ基を有する繰返し単位の共重合体中における含有率は、通常1.0〜
30モル%(好ましくは1〜20モル%)の範囲内にある。そして、塩化ビニル
系重合体は、塩化ビニル繰返し単位1モルに対して通常0.01〜0.5モル(
好ましくは0.01〜0.3モル)のエポキシ基を有する繰返し単位を含有する
ものである。 【0139】 エポキシ基を有する繰返し単位の含有率が1モル%より低いか、あるいは塩化
ビニル繰返し単位1モルに対するエポキシ基を有する繰返し単位の量が0.01
モルより少ないと塩化ビニル系共重合体からの塩酸ガスの放出を有効に防止する
ことができないことがあり、一方、30モル%より高いか、あるいは塩化ビニル
繰返し単位1モルに対するエポキシ基を有する繰返し単位の量が0.5モルより
多いと塩化ビニル系共重合体の硬度が低くなることがあり、これを用いた場合に
は磁性層の走行耐久性が低下することがある。 【0140】 また、特定の極性基を有する繰返し単位の含有率が0.01モル%より少ない
と強磁性粉末の分散性が不充分となることがあり、5.0モル%より多いと共重
合体が吸湿性を有するようになり耐候性が低下することがある。 通常、このような塩化ビニル系共重合体の数平均分子量は、1.5万〜6万の
範囲内にある。 【0141】 このようなエポキシ基と特定の極性基を有する塩化ビニル系共重合体は、例え
ば、次のようにして製造することができる。 例えばエポキシ基と、極性基として−SO3Naとが導入されている塩化ビニ
ル系共重合体を製造する場合には、反応性二重結合と、極性基として−SO3
aとを有する2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナト リウム(反応性二重結合と極性基とを有する単量体)およびジグリシジルアクリ
レートを低温で混合し、これと塩化ビニルとを加圧下に、100℃以下の温度で
重合させることにより製造することができる。 【0142】 上記の方法による極性基の導入に使用される反応性二重結合と極性基とを有す
る単量体の例としては、上記の2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパ
ンスルホン酸ナトリウムの外に2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパ
ンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそのナトリウムあるいはカリウム塩、(
メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチルおよびナトリウムあるいはカリウム塩
、(無水)マレイン酸および(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸−2−リ
ン酸エステルを挙げることができる。 【0143】 また、エポキシ基の導入には、反応性二重結合とエポキシ基とを有する単量体
として一般にグリシジル(メタ)アクリレートを用いる。 なお、上記の製造法の外に、例えば、塩化ビニルとビニルアルコールなどとの
重合反応により多官能−OHを有する塩化ビニル系共重合体を製造し、この共重
合体と、以下に記載する極性基および塩素原子を含有する化合物とを反応(脱塩
酸反応)させて共重合体に極性基を導入する方法を利用することができる。 【0144】 ClCH2 CH2 SO3 M、 ClCH2 CH2 OSO3 M、 ClCH2 COOM、 ClCH2 PO(OM)2 また、この脱塩酸反応を利用するエポキシ基の導入には通常はエピクロルヒド
リンを用いる。 【0145】 なお、該塩化ビニル系共重合体は、他の単量体を含むものであってもよい。他
の単量体の例としては、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル、イソブチ ルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル)、α−モノオレフィン(例、エチ
レン、プロピレン)、アクリル酸エステル(例、(メタ)アクリル酸メチル、ヒ
ドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を含有する(メタ)アクリル酸
エステル)、不飽和ニトリル(例、(メタ)アクリロニトリル)、芳香族ビニル
(例、スチレン、α−メチルスチレン)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、プ
ロピオン酸ビニル等)が例示される。 【0146】 本発明に用いられるこれらの結合剤の具体的な例としてはユニオンカーバイト
社製:VAGH、VYHH、VMCH、VAGF、VAGD、VROH、VYE
S、VYNC、VMCC、XYHL、XYSG、PKHH、PKHJ、PKHC
、PKFE、日信化学工業社製:MPR−TA、MPR−TA5、MPR−TA
L、MPR−TSN、MPR−TMF、MPR−TS、MPR−TM、MPR−
TAO、電気化学社製:1000W、DX80、DX81、DX82、DX83
、100FD、日本ゼオン社製:MR105、MR110、MR100、400
X110A、日本ポリウレタン社製:ニッポランN2301、N2302、N2
304、大日本インキ社製:パンデックスT−5105、T−R3080、T−
5201、バーノックD−400、D−210−80、クリスボン6109、7
209、東洋紡社製:バイロンUR8200、UR8300、UR8600、U
R5500、UR4300、RV530、RV280、大日精化社製:ダイフエ
ラミン4020、5020、5100、5300、9020、9022、702
0、三菱化成社製:MX5004、三洋化成社製:サンプレンSP−150、旭
化成社製:サランF310、F210などがあげられる。 【0147】 本発明の上層磁性層に用いられる結合剤は強磁性粉末に対し、5〜50重量%
の範囲、好ましくは10〜35重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を
用いる場合は、5〜30重量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜20重量
%、ポリイソシアネートは2〜20重量%の範囲でこれらを組合せて用いるのが
好ましい。 【0148】 本発明の下層非磁性層に用いられる結合剤は、非磁性粉末に対し、合計で5〜
50重量%の範囲、好ましくは10〜35重量%の範囲で用いられる。また、塩
化ビニル系樹脂を用いる場合は、3〜30重量%、ポリウレタン樹脂を用いる場
合は3〜30重量%、ポリイソシアネートは0〜20重量%の範囲でこれらを組
合せて用いるのが好ましい。 【0149】 また、本発明において分子量3万以上のエポキシ基含有樹脂を非磁性粉末に対
し3〜30重量%使用する場合は、エポキシ基含有樹脂以外の樹脂を非磁性粉末
に対し3〜30重量%使用でき、ポリウレタン樹脂を用いる場合は、3〜30重
量%、ポリイソシアネートは0〜20重量%使用できるが、エポキシ基は結合剤
(硬化剤を含む)全重量に対し、4×10-5〜16×10-4eq/gの範囲で含
まれることが好ましい。 【0150】 本発明において、ポリウレタン樹脂を用いる場合はガラス転移温度が−50〜
100℃、破断伸びが100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/c
2、降伏点は0.05〜10Kg/cm2が好ましい。 本発明の磁気記録媒体は二層からなる。従って、結合剤量、結合剤中に占める
塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート、あるいはそれ以外
の樹脂の量、磁性層を形成する各樹脂の分子量、極性基量、あるいは先に述べた
樹脂の物理特性などを必要に応じ下層と上層磁性層とで変えることはもちろん可
能である。 【0151】 本発明に用いるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4
−4′−ジフエニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート
、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−
トルイジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフエニルメタン
トリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類と
ポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポ
リイソシアネート等を使用することができる。これらのイソシアネート類の市販 されている商品名としては、日本ポリウレタン社製:コロネートL、コロネート
HL、コロネート2030、コロネート2031、ミリオネートMR、ミリオネ
ートMTL、武田薬品社製:タケネートD−102、タケネートD−110N、
タケネートD−200、タケネートD−202、住友バイエル社製:デスモジュ
ールL、デスモジュールIL、デスモジュールN、デスモジュールHL等があり
、これらを単独または硬化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上の組合せ
で下層非磁性層、上層磁性層ともに用いることができる。 【0152】 本発明の上層磁性層に使用されるカーボンブラックはゴム用フアーネス、ゴム
用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック、等を用いることができる
。比表面積は5〜500m2/g、DBP吸油量は10〜400ml/100g
、粒子径は5mμ〜300mμ、pHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タ
ップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。本発明に用いられるカーボンブラッ
クの具体的な例としてはキャボット社製:BLACKPEARLS 2000、
1300、1000、900、800、700、VULCAN XC−72、旭
カーボン社製:#80、#60、#55、#50、#35、三菱化成工業社製:
#2400B、#2300、#900、#1000、#30、#40、#10B
、コンロンビアカーボン社製:CONDUCTEX SC、RAVEN 150
、50,40,15などがあげられる。カーボンブラックを分散剤などで表面処
理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラフアイト化した
ものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前
にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは単独
、または組合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合は強
磁性粉末に対する量の0.1〜30%で用いることが好ましい。カーボンブラッ
クは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあ
り、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。従って本発明に使用される
これらのカーボンブラックは下層、上層でその種類、量、組合せを変え、粒子サ
イズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い
分けることはもちろん可能である。本発明の上層で使用できるカーボンブラック は例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にするこ
とができる。 【0153】 本発明の上層磁性層に用いられる研磨剤としてはα化率90%以上のα−アル
ミナ、β−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、コ
ランダム、人造ダイアモンド、窒化珪素、炭化珪素、チタンカーバイト、酸化チ
タン、二酸化珪素、窒化ホウ素、など主としてモース硬度6以上の公知の材料が
単独または組合せで使用される。また、これらの研磨剤どうしの複合体(研磨剤
を他の研磨剤で表面処理したもの)を使用してもよい。これらの研磨剤には主成
分以外の化合物または元素が含まれる場合もあるが主成分が90%以上であれば
効果にかわりはない。これら研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましい
が、必要に応じて粒子サイズの異なる研磨剤を組合せたり、単独の研磨剤でも粒
径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。タップ密度は0.3〜2
g/cc、含水率は0.1〜5%、pHは2〜11、比表面積は1〜30m2
g、が好ましい。本発明に用いられる研磨剤の形状は針状、球状、サイコロ状、
のいずれでも良いが、形状の一部に角を有するものが研磨性が高く好ましい。 【0154】 本発明に用いられる研磨剤の具体的な例としては、住友化学社製:AKP−2
0,AKP−30,AKP−50,HIT−50、日本化学工業社製:G5,G
7,S−1、戸田工業社製:TF−100、TF−140、100ED、140
EDなどがあげられる。本発明に用いられる研磨剤は下層、上層で種類、量およ
び組合せを変え、目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。これらの
研磨剤はあらかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加してもかまわな
い。 【0155】 本発明に使用される、添加剤としては潤滑効果、帯電防止効果、分散効果、可
塑効果、などをもつものが使用される。二硫化モリブデン、二硫化タングステン
、グラフアイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基をもつシ
リコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコー ル、フッ素含有エステル、ポリオレフイン、ポリグリコール、アルキル燐酸エス
テルおよびそのアルカリ金属塩、アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属
塩、ポリフエニルエーテル、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカ
リ金属塩、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を含んでも、また分
岐していてもかまわない)、および、これらの金属塩(Li,Na,K,Cuな
ど)または、炭素数12〜22の一価、二価、三価、四価、五価、六価アルコー
ル(不飽和結合を含んでも、また分岐していてもかまわない)、炭素数12〜2
2のアルコキシアルコール、炭素数10〜24の一塩基性脂肪酸(不飽和結合を
含んでも、また分岐していてもかまわない)と炭素数2〜12の一価、二価、三
価、四価、五価、六価アルコールのいずれか一つ(不飽和結合を含んでも、また
分岐していてもかまわない)とからなるモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エス
テルまたはトリ脂肪酸エステル、アルキレンオキシド重合物のモノアルキルエー
テルの脂肪酸エステル、炭素数8〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪
族アミン、などが使用できる。これらの具体例としてはラウリン酸、ミリスチン
酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸
、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ステアリン酸オクチル、ステアリン
酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ステアリン酸ブ
トキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタン
ジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート、オレイルアルコール
、ラウリルアルコール、があげられる。 【0156】 また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフ
エノールエチレンオキサイド付加体、等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エ
ステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホス
ホニウムまたはスルホニウム類、等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スル
フォン酸、燐酸、硫酸エステル基、燐酸エステル基、などの酸性基を含むアニオ
ン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸また
は燐酸エステル類、アルキルベダイン型、等の両性界面活性剤等も使用できる。
これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行) に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも100%純
粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、等の
不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さら
に好ましくは10%以下である。 【0157】 本発明で使用されるこれらの潤滑剤、界面活性剤は下層非磁性層、上層磁性層
でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、下層非磁性層、
上層磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や
極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を
調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を下層非磁性層で多
くして潤滑効果を向上させるなどが考えられ、無論ここに示した例のみに限られ
るものではない。 【0158】 また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性塗料製造のど
の工程で添加してもかまわない、例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場
合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加
する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。本発明
で使用されるこれら潤滑剤の商品例としては、日本油脂社製:NAA−102,
NAA−415,NAA−312,NAA−160,NAA−180,NAA−
174,NAA−175,NAA−222,NAA−34,NAA−35,NA
A−171,NAA−122,NAA−142,NAA−160,NAA−17
3K,ヒマシ硬化脂肪酸,NAA−42,NAA−44,カチオンSA,カチオ
ンMA,カチオンAB,カチオンBB,ナイミーンL−201,ナイミーンL−
202,ナイミーンS−202,ノニオンE−208,ノニオンP−208,ノ
ニオンS−207,ノニオンK−204,ノニオンNS−202,ノニオンNS
−210,ノニオンHS−206,ノニオンL−2,ノニオンS−2,ノニオン
S−4,ノニオンO−2,ノニオンLP−20R,ノニオンPP−40R,ノニ
オンSP−60R,ノニオンOP−80R,ノニオンOP−85R,ノニオンL
T−221,ノニオンST−221,ノニオンOT−221,モノグリMB,ノ ニオンDS−60,アノンBF,アノンLG,ブチルステアレート,ブチルラウ
レート,エルカ酸、関東化学社製:オレイン酸、竹本油脂社製:FAL−205
,FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブLO,エヌジョルブIPM,
サンソサイザーE4030、信越化学社製:TA−3,KF−96,KF−96
L,KF−96H,KF410,KF420,KF965,KF54,KF50
,KF56,KF−907,KF−851,X−22−819,X−22−82
2,KF−905,KF−700,KF−393,KF−857,KF−860
,KF−865,X−22−980,KF−101,KF−102,KF−10
3,X−22−3710,X−22−3715,KF−910,KF−3935
、ライオンアーマー社製:アーマイドP,アーマイドC,アーモスリップCP、
ライオン油脂社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成
社製:プロフアン2012E,ニューポールPE61,イオネットMS−400
,イオネットMO−200,イオネットDL−200,イオネットDS−300
,イオネットDS−1000,イオネットDO−200などがあげられる。 【0159】 本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、
メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン
、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール
、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロ
ヘキサノール、などのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル
、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコール
ジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、などのグリコ
ールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン
、などの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化
炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン、等の塩素化
炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等のものが使用できる。
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応
物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分がふくまれてもかまわない。こ
れらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下で ある。本発明で用いる有機溶媒は必要ならば上層と下層でその種類は同じである
ことが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。下層に表面張力の高い溶媒
(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性をあげる、具体的に
は上層溶剤組成の算術平均値が下層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝
要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、下層
非磁性層と上層磁性層の塗布液に用いた溶剤がいずれも溶解パラメーターが8〜
11であり、20℃での誘電率が15以上の溶剤が15%以上含まれることが好
ましい。 【0160】 本発明の磁気記録媒体の厚み構成は非磁性支持体が1〜100μm、好ましく
は4〜80μm、下層が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μm、上層は0.
05μm以上1.0μm以下、好ましくは0.05μm以上0.6μm以下、さ
らに好ましくは0.05μm以上、0.3μm以下である。上層磁性層は、下層
非磁性層より薄いことが好ましい。上層と下層を合わせた厚みは非磁性支持体の
厚みの1/100〜2倍の範囲で用いられる。また、非磁性支持体と下層の間に
密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。これらの厚みは0.01〜
2μm、好ましくは0.05〜0.5μmである。また、非磁性支持体の磁性層
側と反対側にバックコート層を設けてもかまわない。この厚みは0.1〜2μm
、好ましくは0.3〜1.0μmである。これらの下塗り層、バックコート層は
公知のものが使用できる。 【0161】 本発明に用いられる非磁性支持体はポリエチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート、等のポリエステル類、ポリオレフイン類、セルローストリアセ
テート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ
スルフオン、アラミド、芳香族ポリアミドなどの公知のフイルムが使用できる。
これらの支持体にはあらかじめコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱
処理、除塵処理、などをおこなっても良い。本発明の目的を達成するには、非磁
性支持体として中心線平均表面粗さが0.03μm以下、好ましくは0.02μ
m以下、さらに好ましくは0.01μm以下のものを使用する必要がある。また 、これらの非磁性支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、1μ
以上の粗大突起がないことが好ましい。また、表面の粗さ形状は、必要に応じて
支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由にコントロールされるもの
である。これらのフィラーとしては一例としてはCa、Si、Tiなどの酸化物
や炭酸塩の他、アクリル系などの有機微粉末が挙げられる。 【0162】 また、非磁性支持体のテープ走行方向のF−5値は、好ましくは5〜50Kg
/mm2、テープ幅方向のF−5値は、好ましくは3〜30Kg/mm2であり、
テープ長手方向のF−5値がテープ幅方向のF−5値より高いのが一般的である
が、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りではない。 また、非磁性支持体のテープ走行方向および幅方向の100℃30分での熱収
縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下、80℃30分での
熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。破断強
度は両方向とも5〜100Kg/mm2、弾性率は100〜2000Kg/mm2
が好ましい。 【0163】 本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分
散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個
々の工程はそれぞれ2段階以上にわかれていてもかまわない。本発明に使用する
強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤な
どすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個
々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレ
タンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入
してもよい。 【0164】 本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として
用いることができることはもちろんであるが、混練工程では連続ニーダや加圧ニ
ーダなど強い混練力をもつものを使用することにより本発明の磁気記録媒体の高
いBrを得ることができる。連続ニーダまたは加圧ニーダを用いる場合は強磁性 粉末と結合剤のすべてまたはその一部(ただし全結合剤の30重量%以上が好ま
しい)および強磁性粉末100部に対し15〜500部の範囲で混練処理される
。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号、特開昭64−
79274号に記載されている。また、下層非磁性層液を調製する場合には高比
重の分散メディアを用いることが望ましく、ジルコニアビーズ、金属ビーズが好
適である。 【0165】 本発明では、特開昭62−212933号に示されるような同時重層塗布方式
を用いることにより、より効率的に生産することができる。本発明のような重層
構成の磁気記録媒体を塗布する装置、方法の例として以下のような構成を提案で
きる。 1.磁性塗料の塗布で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード
塗布、エクストルージョン塗布装置等により、まず下層を塗布し、下層がウエッ
ト状態のうちに特公平1−46186号や特開昭60−238179号、特開平
2−265672号に開示されている支持体加圧型エクストルージョン塗布装置
により上層を塗布する。 2.特開昭63−88080号、特開平2−17921号、特開平2−2656
72号に開示されているような塗布液通液スリットを二つ内蔵する一つの塗布ヘ
ッドにより上層及び下層をほぼ同時に塗布する。 3.特開平2−174965号に開示されているバックアップロール付きエキス
トルージョン塗布装置により上層及び下層をほぼ同時に塗布する。 なお、強磁性粉末の凝集による磁気記録媒体の電磁変換特性等の低下を防止する
ため、特開昭62−95174号や特開平1−236968号に開示されている
ような方法により塗布ヘッド内部の塗布液に剪断を付与することが望ましい。さ
らに、塗布液の粘度については、特願平1−312659号に開示されている数
値範囲を満足することが好ましい。 【0166】 本発明では、上記の下層用塗布液を湿潤状態で重畳して塗布する、所謂ウェッ
ト・オン・ウェット塗布方式によって、非磁性支持体上に設ける。 本発明で下層と上層を設けるに用いるウェット・オン・ウェット塗布方式とは
、初め一層を塗布した後に湿潤状態で可及的速やかに次の層をその上に塗布する
所謂逐次塗布方法、及び多層同時にエクストルージョン塗布方式で塗布する方法
等をいう。 ウェット・オン・ウェット塗布方式としては、特開昭61−139929号公報
に示した磁気記録媒体塗布方法が使用できる。 【0167】 図2は、本発明で両層を設けるのに用いられる逐次塗布方式の一例を示す説明
図であって、連続的に走行するポリエチレンテレフタレート等の可撓性支持体1
に塗布機(A)3にて下層用塗布液(a)をプレコートし、その直後にスムージ
ングロール4にて該塗布面を平滑化し、該塗布液2が湿潤状態にある状態で別の
押し出し塗布機(B)6により次なる上層用塗布液(b)を塗布する。 【0168】 図3は、本発明で両層を設けるのに好ましく用いられるエクストルージョン型
同時塗布方式の一例を示す説明図であって、可撓性支持体1上に同時多層塗布器
8を用いた下層用塗布液(a)2と上層用塗布液(b)5とを同時に塗布する状
態を説明するものである。両層を塗布した後に、磁場配向、乾燥、平滑化処理を
施して磁気記録媒体とする。 【0169】 本発明の媒体を得るためには強力な配向を行う必要がある。1000G(ガウ
ス)以上のソレノイドと2000G以上のコバルト磁石を併用することが好まし
く、さらには乾燥後の配向性が最も高くなるように配向前に予め適度の乾燥工程
を設けることが好ましい。また、ディスク媒体として、本発明を適用する場合は
むしろ配向をランダマイズするような配向法が必要である。 【0170】 さらに、カレンダ処理ロールとしてエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリ
イミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロールを使用する。また、金属ロー
ル同志で処理することもできる。処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好
ましくは80℃以上である。線圧力は好ましくは200kg/cm、さらに好ま しくは300kg/cm以上、その速度は20m/分〜700m/分の範囲であ
る。本発明の効果は80℃以上の温度で300kg/cm以上の線圧でより一層
効果を上げることができる。 【0171】 カレンダー処理後、磁性層、バック層、非磁性層の硬化を促進するために、4
0℃〜80℃のサーモ処理を施してもかまわない。 本発明の磁気記録媒体の上層およびその反対面のSUS420Jに対する摩擦
係数は好ましくは0.5以下、さらに0.3以下、磁性層表面固有抵抗は104
〜1011オーム/sq、下層を単独で塗布した場合の表面固有抵抗は104〜1
8オーム/sq、BC層の表面電気抵抗は103〜109が好ましい。 【0172】 上層、下層が有する空隙率は、ともに好ましくは30容量%以下、さらに好ま
しくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ま
しいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返
し用途が重視されるデータ記録用磁気記録媒体では空隙率が大きい方が走行耐久
性は好ましいことが多い。これらの値を目的に応じた適当な範囲に設定すること
は容易に実施できることである。 【0173】 本発明の磁気記録媒体の磁気特性は磁場5KOeで測定した場合、テープ走行
方向の角形比は0.70以上であり、好ましくは0.80以上さらに好ましくは
0.90以上である。テープ走行方向に直角な二つの方向の角型比は走行方向の
角型比の80%以下となることが好ましい。磁性層のSFDは0.6以下である
ことが好ましい。 【0174】 本発明の磁気記録媒体は、下層と上層を有するが、目的に応じ下層と上層でこ
れらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。 本発明の磁気記録媒体は基本的には上層磁性層と下層非磁性層の二層からなる
が、三層以上であってもよい。三層以上の構成としては、上層磁性層を2層以上
の複数の磁性層することである。この場合、最上層の磁性層と下層磁性層との関 係は通常の複数の磁性層の考え方が適用できる。例えば、最上層の磁性層の方が
下層磁性層よりも、抗磁力が高く、平均長軸長や結晶子サイズの小さい強磁性粉
末を用いるなどの考え方が適用できる。又、下層非磁性層を複数の非磁性層で形
成してもかまわない。しかし、大きく分類すれば、上層磁性層、下層非磁性層と
いう構成である。 【0175】 【実施例】 次に実施例と比較例を示し、本発明を更に具体的に説明する。各例において、
「部」は特に指定しない限り、「重量部」を意味する。 【0176】 以下の処方で上層磁性層用塗布液及び下層非磁性層用塗布液を調製した。 実施例1 上層磁性層用塗布液処方 強磁性粉末:Fe合金粉末 100部 組成;Fe 93重量%、Ni 3重量%、Co 3重量%、その 他Zn,Cr等 Hc 1600Oe、σs 135emu/g 長軸長 0.18μm,針状比 9 塩化ビニル共重合体 10部 −SO3Na,エポキシ基含有 ポリウレタン樹脂 5部 −SO3Na含有,分子量 45000 αアルミナ(平均粒径0.2μm) 5部 シクロヘキサノン 150部 メチルエチルケトン 200部 上記組成物をサンドミル中で6時間混合分散したのち、ポリイソシアネート(
コロネートL)及びステアリン酸5部、ステアリン酸ブチル10部を加えて磁性
塗布液を得た。 【0177】 下層非磁性層用塗布液処方 粒状TiO2 100部 平均粒径 0.09μm カーボンブラック 5部 平均粒径 20mμ 塩化ビニル共重合体 8部 −SO3Na,エポキシ基含有 分子量 50000 ポリウレタン樹脂 5部 −SO3Na含有、分子量 45000 αアルミナ(平均粒径 0.2μm) 5部 シクロヘキサノン 150部 メチルエチルケトン 50部 上記組成物をサンドミル中で4時間混合分散したのち、ポリイソシアネート(
コロネートL)5部、ステアリン酸1部、ステアリン酸ブチル1部を加えて下層
非磁性層用塗布液を得た。 【0178】 上記の塗布液をギャップの異なる2つのドクターを用いて、湿潤状態で塗布し
たのち、永久磁石にて配向処理後、乾燥した。非磁性支持体は9.8μmのポリ
エチレンテレフタレートフィルムを用い、支持体の磁性層と反対面にはカーボン
ブラックを含有するバック層を設けた。その後にスーパーカレンダー処理を行っ
た。塗布厚みは磁性層0.3μm、非磁性層3.0μmであった。この様にして
得られた原反を3.81mm幅に裁断し実施例1−1のデジタルオーディオテー
プ(DAT)を作成した。 【0179】 その他の実施例、比較例は実施例1−1に対して表1に示す因子を変更してテ
ープを作成した。これらのテープは以下の方法で評価し、結果を表2に示した。 磁性層平均値d、dの標準偏差σ:テープ断面を透過型電子顕微鏡(TEM)
にて撮影(倍率20000倍)し、前記の定義に従って求めた。 厚み変動の平均値(Δd):テープ断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮
影(倍率20000倍)、長さ20μm(実長)中の磁性層と下層非磁性層の変
位を測定し、山と谷の変位差の平均値を求めΔdとした。 【0180】 尚、比較例の逐次重層とは、下層非磁性層を塗布し、乾燥後上層磁性層を塗布
することを言う。 電磁変換特性 使用デッキ:SONY製DTC−1000 再生出力:4.7MHz単一周波数の信号を入力し、再生信号をスペクトラム アナライザーに出力させ、信号のピーク値を読みとった。 【0181】 C/N:再生出力測定時にノイズスペクトラムをとり、再生出力と中心記録周 波数(4.7MHz)から0.1MHz離れたノイズレベルの比から C/Nを求めた。スペクトルアナライザーは、HP−3585A、0 dBは比較例1の磁性層単層のテープ BER(ブロックエラーレート):10000トラック中のエラーフラッグの
数を言い、次の式で表される。 【0182】 BER=エラーフラッグ/10000×128ブロック DAT信号構成は、アナログ信号を符号化し、1符号は8ビット、1ブロック
は32シンボル×8ビット=256ビットであるので、1トラックは128ブロ
ックで構成される。2トラックすなわち128×2ブロックの信号をメモリー上
に取り込み、シャッフルし、エラー検出をする。ソニー社製のDATデッキを用
い、カウンターとしてヒューレットパッカード社製のHP5328Aを使用し、
パソコンに接続して測定した。 【0183】 ドロップアウト:4.7MHz単一周波数の信号を入力、スレッシュホールド (DO) レベル−10dBで長さ0.5μSECのドロップアウトを ドロップアウトカウンターで測定した。 【0184】 【表1】 【0185】 【表2】【0186】 作成したDATの最短記録波長λは、0.67μmである。従って、λ/4≦ d≦3λより、磁性層の厚み範囲は、0.17μm≦d≦2.01μmとなるが
、本発明は、0.17μm≦d≦1.0μmの範囲である。また、Δd/d≦0
.50の関係がある。 【0187】 実施例1−1〜1−3は、下層非磁性層厚みと上層磁性層厚みを変え、かつ上
下層厚み比率を変えたもので実施例1−1は磁性層厚のほぼ下限、実施例1−2
は同厚の中位、実施例1−3はほぼ上限に設定したものである。実施例1−4は
、下層非磁性層厚を薄くして下限近くにした構成である。実施例1−5〜1−7
は、下層非磁性層の非磁性粉末の種類を変えた例であり、本発明の規定内でRa
に影響を与えることがわかる。実施例1−9は、上層磁性層厚を上限近くとした
例であり、この系では他の実施例に比較して特性が劣る。 【0188】 比較例1−1は、単層厚膜の磁性層を有する磁気記録媒体である。比較例1−
2は、下層非磁性層の非磁性粉末として粗大なベンガラ(平均粒径が0.25で
、λ/4=0.1675より大)を用いているので、Δdが大きくC/Nが劣る
。比較例1−3は、長軸長の長い針状ベンガラを使用しているため、Δdが大き
く、Raが劣る。比較例1−4は、下層塗布後、乾燥し、その下層の上に上層を
塗布した逐次重層の例デアリ、ピンホールが多い。 【0189】 実施例1〜8は、d、Δd、σ、及びRaのうち少なくともd及びΔdの各範
囲を満足しているので、比較例に比べ、再生出力、C/N、BER、DO、塗布
成形性何れも優れていることがわかる。 【0190】 本発明により、薄い磁性層(最短記録波長の3倍以下)を下層非磁性層と同時
塗布することで、磁性層を単独で薄くした場合に問題となる塗布欠陥を防止でき
る。同時に記録システムに応じて最短記録波長に対する磁性層の厚みを最適化す
ることで再生出力が向上し、かつ薄膜化した磁性層の厚み変動を小さくし、かつ
磁性層表面を平滑にすることでC/Nが向上する。 【0191】 この発明によって、金属薄膜磁気記録媒体に匹敵する電磁変換特性が得られる
と同時に金属薄膜磁気記録媒体が有する生産性、保存信頼性の問題を解決した塗
布型磁気記録媒体を供給することができる。 実施例2 以下の処方で上層磁性層用塗布液及び下層非磁性層用塗布液を調製した。 下層非磁性層用塗布液 無機質粉末 TiO2 90部 平均粒径 0.035μm 結晶系 ルチル TiO2含有量 90%以上 表面処理剤 Al23 BET法による比表面積 35〜45m2/g DBP吸油量 27〜38g/100g pH 6.5〜8 カーボンブラック 10部 平均粒径 16mμ DBP吸油量 80ml/100g pH 8.0 BET法による比表面積 250m2/g 揮発分 1.5% 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 12部 −N(CH33 +Cl-の極性基を5×10-6eq/g含む 組成比 86:13:1 重合度 400 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 1部 メチルエチルケトン 200部 シクロヘキサノン 80部 上層磁性層用塗布液 強磁性金属微粉末 組成 Fe/Zn/Ni=92/4/4 100部 Hc 1600Oe BET法による比表面積 60m2/g 結晶子サイズ 195Å 平均長軸長 0.20μm、針状比 10 飽和磁化(σs):130emu/g 塩化ビニル系共重合体 12部 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有、重合度300 ポリエステルポリウレタン樹脂 3部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 α−アルミナ(平均粒径 0.2μm) 2部 カーボンブラック(平均粒径 0.10μm) 8部 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2部 メチルエチルケトン 200部 上記2つの塗料のそれぞれについて、各成分を連続ニーダーで混練した後、サ
ンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを下層非磁
性層の塗布液には1部、上層磁性層の塗布液には3部を加え、さらにそれぞれに
酢酸ブチル40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し
、下層非磁性層用及び上層磁性層用の塗布液をそれぞれ調製した。 【0192】 得られた下層非磁性層塗布液を乾燥後の厚さが3μmになるように更にその直
後にその上に上層磁性層の厚さが0.5μmになるように、厚さ7μmで中心平 均表面粗さが0.01μmのポリエチレンナフタレート支持体上に同時重層塗布
を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに3000ガウスの磁力をもつコバルト
磁石と1500ガウスの磁力をもつソレノイドにより配向させ、乾燥後、金属ロ
ールのみから構成される7段のカレンダーで温度90℃にて処理を行い、8mm
の幅にスリットし、実施例2−1の8mmビデオテープを製造した。 【0193】 また、同様に表3〜4に記載の因子を変更して試料、実施例2−2〜2−9、
比較例2−1〜2−7を作成し、性能を下記により評価し、その結果を表3−4
に示した。 1.下層無機質粉末の体積比率(充填率) ダイヤモンドカッターで媒体を約0.1μmに切り出して試験片を作成し、こ
れを透過型電子顕微鏡で観察した。この透過型電子顕微鏡写真映像から1μm2
当たりの無機質粉末粒子個数を勘定して、切り出した試験片の厚味を計算に入れ
て、単位体積当たりに含まれる無機質粉末の粒子個数を計測し、また、同じ写真
から求めた粉体粒子径より1個当たりの体積を求めて単位体積当たりに含まれる
無機質粉末粒子個数を乗じて、無機質粉末の体積比率を求めた。計算式は以下の
通り。 【0194】 下層無機質粉末の体積比率 =4π/3(D/2)3 (n/t)×100(%) D:切片写真から求めた粉体の粒子径(μm) n:切片写真から求めた単位面積当たりに含まれる粉体の個数(個/μm2) t:切片の厚味(μm) 2.上層磁性層の粉体体積比率 強磁性粉末密度は下式から求めることができる。 【0195】 dM=Bm/4πσS ここで、Bm(ガウス):残留磁束密度 dM(g/cc):強磁性粉末密度 σS(emu/g):強磁性粉末の持つ磁化量 強磁性粉末の上層における体積比率は、上記密度を強磁性粉末の比重で割るこ
とにより、求まる。また、磁性層中の他の粉体成分及び結合剤の密度は磁性層処
方量より算出し、各粉体成分の比重で割ることにより、各粉体成分の体積比率が
求まり、これらを合計することにより、上層の粉体体積比率が求まる。 3.無機質粉末の平均粒径 透過型電子顕微鏡より長軸の平均粒子径を求めた。 4.強磁性金属粉末の結晶子サイズ X線回折により(1,1,0)面と(2,2,0)面の回折線の半値幅のひろ
がり分から求めた。 5.表面粗さRrms 走査型トンネル顕微鏡(STM)の測定は、Digital Instrument社製のNanosc
ope IIを用いトンネル電流10A、バイアス電圧400mVの条件で6μm×6
μmの範囲をスキャンして下式数1より求めた。 【0196】 【数1】 【0197】 6.σ;実施例1と同じ方法である。 7.7MHz出力 富士写真フィルム社製FUJIX8 8mmビデオデッキを用いて7MHzの
信号を記録し、この信号を再生したときの7MHz信号再生出力をオシロスコー
プで測定した。リファレンスは富士写真フィルム(株)社内リファレンスである
。 8.ピンホール 磁性層塗布後でバック層を塗布する前に透過光で磁性層を目視観察して100
2当たりのピンホールを測定した。100m2当たり1個以内であることが望ま
しい。 【0198】 【表3】 【0199】 【表4】 【0200】 表3〜4に示す通り、実施例試料は、下層非磁性層に含まれる無機質粉末の平
均粒径が、上層磁性層に含まれる強磁性粉末の結晶子サイズの1/2倍〜4倍で
あるために表面粗さRrmsが小さく、かつd/Rrmsが30以上、と一様かつ表面
性が優れた磁性層が形成され、再生出力が高く、かつピンホールが極めてすくな
い優れた磁気記録媒体である。一方、比較例2−1は、(無機質粉末の平均粒径
/強磁性粉末の結晶子サイズ)が所定の範囲より大きすぎるためにRrmsが大き
くなり、再生出力が改善されない。比較例2−2は、(無機質粉末の平均粒径/
強磁性粉末の結晶子サイズ)が所定の範囲より小さすぎるためにRrmsが大きく
なり、再生出力が改善されない。比較例2−3は、磁性層の厚味dは1.2μm
と厚いために再生出力がやや劣る。比較例2−4は、磁性層のみの単層磁気記録
媒体である。比較例2−5は、無機質粉末の添加量が少ないためにRrmsが大き
くなり、電磁変換特性が改善されない。比較例2−6は、粉体の体積比率が小さ
すぎるため、Rrmsが大きく、電磁変換特性が改善されない。比較例2−7は無
機質粉末の体積比率が大きすぎるために塗布が不可能であった。 【0201】 実施例3 以下の処方で上層磁性層用塗布液及び下層非磁性層用塗布液を調製した。 下層非磁性層;実施例2−1と同じ 上層磁性層用塗布液 Co変性γFe23 100部 Hc 700Oe BET法による比表面積 42m2/g 結晶子サイズ 300Å 飽和磁化(σs) 75emu/g 塩化ビニル系共重合体 9部 −SO3Na基 1×10-5eq/g含有、重合度300 微粒子研磨剤(Cr2O、平均粒径 0.3μm) 7部 トルエン 30部 メチルエチルケトン 30部 上記の組成物をニーダーで約1時間混練した後に更に下記組成物を加えニーダ
ーで約2時間分散を行った。 【0202】 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 平均分子量 35000 トルエン 200部 メチルエチルケトン 200部 次いで下記カーボンブラック、粗粒子研磨剤を添加、サンドグラインダーにて
分散処理を行った。 【0203】 カーボンブラック(平均粒径 20〜30mμ) 5部 ライオンアクゾ社製ケッチェンブラックEC 粗粒子研磨剤 2部 α−アルミナ(住友科学社製AKP−12、平均粒径 0.5μm) さらに下記組成物を加え、再度サンドグラインダー分散し、上層磁性層用塗布
液を得た。 【0204】 ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 6部 トリデシルステアレート 6部 以上のようにして得られた上層磁性層用塗布液と下層非磁性層用塗布液を厚さ
75μmのポリエチレンテレフタレート上にまず、下層非磁性層用塗布液を、次
に湿潤状態にある内に上記上層磁性層用塗布液を塗布し、裏面にも同様に処理し
た。乾燥膜厚で下層非磁性層の厚味が1.5μm、磁性層の厚味が0.5μmと
なるようにした。その後、カレンダー処理を施して磁気記録媒体を得た。しかる
のちに、この磁気記録媒体を3.5吋に打ち抜き、ライナーが内側に設置済みの
3.5吋カートリッジに入れ、所定の機構部品を付加し、実施例3−1の3.5 吋フロッピーディスクを得た。また、同様に表5に記載の因子を変更して試料、
実施例3−2〜3−5、比較例3−1〜3−3を作成し、性能を下記により評価
し、その結果を表5に示した。 1.下層無機質粉末の体積比率(充填率);実施例2と同じ 2.無機質粉末の平均粒径;実施例2と同じ 3.酸化鉄磁性粉の結晶子サイズ;X線回折により、(4.4.0)面と(2.
2.0)面の回折線の広がり分から求めた。 4.表面粗さRrms;実施例2と同じ 5.σ;実施例1と同じ方法である。 6.最内周2F出力相対値(%);実施例3−1の初期2F出力値として算出し
た。使用ドライブはPD211 東芝株式会社製である。 【0205】 【表5】 【0206】 表5より明らかなとおり、実施例試料は、下層非磁性層に含まれる無機質粉末
の平均粒径が、上層磁性層に含まれる強磁性粉末の結晶子サイズの1/2倍〜4
倍であるために表面粗さRrmsが小さく、かつd/Rrmsが30以下、σが0.2
μm以下と一様かつ表面性が優れた磁性層が形成され、再生出力が高く、かつピ
ンホールが極めてすくない優れた磁気記録媒体である。一方、比較例3−1は、
(無機質粉末の平均粒径/強磁性粉末の結晶子サイズ)が所定の範囲より大きす
ぎるためにRrmsが大きくなり、出力が改善されない。比較例3−2は、(無機
質粉末の平均粒径/強磁性粉末の結晶子サイズ)が所定の範囲より小さすぎるた
めにRrmsが大きくなり、出力が改善されない。比較例3−3は、磁性層の厚味
dは1.2μmと厚いために再生出力がやや劣る。 【0207】 実施例4 実施例2−1と同様の上層磁性層及び下層非磁性層用塗布液組成において、表
6〜7に記載の因子(特に下層非磁性層の無機質粉末平均粒径と上層磁性層の強
磁性粉末の長軸長の比)を変更して各種の試料を作成し、性能を実施例2と同様
に評価し、その結果を表6〜7に示した。 【0208】 角形比:振動試料型磁束計(VNM;東英工業製)を用いてHm5kOeで測
定した時の塗布方向Br/Bmを角形比とした。 【0209】 【表6】 【0210】 【表7】 【0211】 上表から明らかなとおり、実施例試料は、△d≦0.50dを満足し、下層非
磁性層に含まれる無機質粉末の平均粒径が、上層磁性層に含まれる強磁性粉末の
長軸長の1/3倍以下であるためにd/Rrmsが30以上であり、一様な磁性層
が形成され、再生出力が高く、かつピンホールが極めてすくない優れた磁気記録
媒体である。一方、比較例は、△d≦0.50dを満足しない。比較例4−2は
、磁性層の厚味dが1.3μmと厚いために再生出力が劣る。比較例4−3は、
磁性層単層の例であり、下層非磁性層がなくdが薄いために塗布性、電磁変換特
性が劣悪である。比較例4−4は下層乾燥後の逐次重層であるために塗布性が改
善されない。参考例4−1は、磁性層単層でdが厚いために塗布性は良好である
が電磁変換特性が改善されない。比較例4−5は、下層に無機質粉末を使用して
いないので、上層及び下層の界面変動が大きくなるためΔdが高く電磁変換特性
が悪い。比較例4−6は、下層に含まれるカーボンブラックが多すぎるので、や
はりΔdが高くなり、電磁変換特性が悪い。 【0212】 実施例5 実施例3−1の上層磁性層用塗布液組成の内Co変性γFe23を下記強磁性
粉末に変更した他は実施例3−1と同じ上層磁性層用塗布液及び実施例3−1の
下層非磁性層用塗布液と同じ塗布液を作成し、実施例5−1の試料を作成した。 【0213】 強磁性粉末(六方晶バリウムフェライト) 平均板径 0.05μm 、板状比 4 BET法による比表面積 39m2/g Hc 1100Oe 又、表8に記載の因子(特に下層非磁性層の無機質粉末平均粒径と上層磁性層
の強磁性粉末の平均板径の比)を変更して試料、実施例5−2〜5−3、比較例
5−2を作成し、性能を実施例3と同様に評価し、その結果を表8に示した。 【0214】 垂直方向角形比:振動試料型磁束計を用いて塗布面に対して垂直方向のBr/
Bmを測定した。 D50(kfci):出力が長波長記録再生出力の50%となる記録密度。こ
のD50は、装置として実現可能な最大記録密度の目安となる。 【0215】 【表8】 【0216】 表8より、実施例試料は、下層非磁性層に含まれる無機質粉末の平均粒径が、
上層磁性層に含まれる板状強磁性粉末の平均板径以下であるために垂直方向角形
比が高く、Δdが0.50d以下と一様な磁性層が形成されている。従って、実
施例試料は、D50が高く、かつピンホールが極めてすくない優れた磁気記録媒
体である。比較例5−2は、下層非磁性層のない磁性層単層の例であり、D50
が悪い。 【0217】 実施例6 以下の処方で上層磁性層用塗布液及び下層非磁性層用塗布液を調製した。 実施例6−1 下層非磁性層用塗布液 無機質粉末 TiO2 80部 平均粒径 0.035μm 結晶系 ルチル TiO2含有量 90重量% 無機質粉末表面処理層 Al23(10重量%) BET法による比表面積 40m2/g DBP吸油量 27〜38g/100g pH 7 カーボンブラック 20部 平均粒径 16mμ DBP吸油量 80ml/100g pH 8.0 BET法による比表面積 250m2/g 揮発分 1.5% 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 12部 −N(CH33 +Cl-の極性基を5×10-6eq/g含む 組成比 86:13:1 重合度 400 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 1部 メチルエチルケトン 100部 シクロヘキサノン 50部 トルエン 50部 上層磁性層用塗布液 強磁性金属微粉末 組成 Fe/Zn/Ni=92/4/4 100部 Hc 1600Oe BET法による比表面積 60m2/g 結晶子サイズ 195Å 平均長軸長 0.20μm、針状比 10 飽和磁化(σs):130emu/g 表面処理剤:Al23、SiO2 塩化ビニル系共重合体 12部 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有、重合度300 ポリエステルポリウレタン樹脂 3部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 α−アルミナ(平均粒径 0.3μm) 2部 カーボンブラック(平均粒径 0.10μm) 0.5部 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2部 メチルエチルケトン 90部 シクロヘキサノン 50部 トルエン 60部 上記2つの塗料のそれぞれについて、各成分を連続ニーダーで混練した後、サ
ンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを下層非磁
性層の塗布液には1部、上層磁性層の塗布液には3部を加え、さらにそれぞれに
酢酸ブチル40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し
、下層非磁性層用及び上層磁性層用の塗布液をそれぞれ調製した。 【0218】 得られた下層非磁性層塗布液を乾燥後の厚さが2μmになるように更にその直
後にその上に上層磁性層の厚さが0.5μmになるように、厚さ7μmで中心平
均表面粗さが0.01μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に同時重層塗
布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに3000ガウスの磁力をもつコバル
ト磁石と1500ガウスの磁力をもつソレノイドにより配向させ、乾燥後、金属
ロールのみから構成される7段のカレンダーで温度90℃にて処理を行い、8m
mの幅にスリットし、実施例6−1の8mmビデオテープを製造した。 【0219】 また、同様に表9〜10に記載の因子を変更して試料、実施例6−2〜6−1
2、比較例6−1〜6−3を作成し、性能を前述と同様に評価し、その結果を表
9〜10に示した。尚、8mmビデオの相対速度は38m/secであり、7M
Hz記録波長は0.54μmである。従って、λ/50は10.8nmとなる。 中心線平均表面粗さ(Ra):WYKO社製TOYO3Dを用いてMIRAU
法で約250×250nmの面積Raを測定した。測定波長は約650nmにて
球面補正。円筒補正を加えた。 【0220】 【表9】 【0221】 【表10】 【0222】 上表より明らかなとおり、実施例試料は、無機質粉末表面にAl23、SiO
2、ZrO2等の処理層を上表に示す通り含むために分散性が改善され、Raが低
く、λ/50(10.8nm)以下であり、電磁変換特性が良好である。比較例
6−1は、無機質粉末に処理層が含まれないので、分散性が悪く、Raおよびσ
、Δdが高くなり、電磁変換特性が劣る。比較例6−2は、磁性層が厚いために
電磁変換特性が悪い。比較例3は、逐次重層のため試料が作成できなかった。 【0223】 実施例7 以下の処方で上層磁性層用塗布液及び下層非磁性層用塗布液を調製した。 実施例7−1 下層非磁性層用塗布液;実施例6−1と同じ 上層磁性層用塗布液 Co置換バリウムフェライト 100部 BET法による比表面積 35m2/g 平均粒径 0.06、板状比 5 塩化ビニル系共重合体 9部 −SO3Na基 1×10-5eq/g含有、重合度300 微粒子研磨剤(Cr2O、平均粒径 0.3μm) 7部 トルエン 30部 メチルエチルケトン 30部 上記の組成物をニーダーで約1時間混練した後に更に下記組成物を加えニーダ
ーで約2時間分散を行った。 【0224】 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 平均分子量 35000 メチルエチルケトン 200部 シクロヘキサノン 100部 トルエン 80部 次いで下記カーボンブラック、粗粒子研磨剤を添加、サンドグラインダーにて
2000回転、約2時間分散処理を行った。 【0225】 カーボンブラック(平均粒径 20〜30mμ) 5部 ライオンアクゾ社製ケッチェンブラックEC 粗粒子研磨剤 2部 α−アルミナ(住友化学社製AKP−12、平均粒径 0.5μm) さらに下記組成物を加え、再度サンドグラインダー分散し、上層磁性層用塗布
液を得た。 【0226】 ポリイソシアネート(日本ポリウレタン社製コロネートL) 6部 トリデシルステアレート 6部 以上のようにして得られた上層磁性層用塗布液と下層非磁性層用塗布液を厚さ
75μmのポリエチレンテレフタレート上にまず、下層非磁性層用塗布液を、次
に湿潤状態にある内に上記上層磁性層用塗布液を塗布し、裏面にも同様に処理し
た。乾燥膜厚で下層非磁性層の厚味が1.5μm、磁性層の厚味が0.5μmと
なるようにした。その後、カレンダー処理を施して磁気記録媒体を得た。しかる
のちに、この磁気記録媒体を3.5吋に打ち抜き、ライナーが内側に設置済みの
3.5吋カートリッジに入れ、所定の機構部品を付加し、実施例7−1の3.5
吋フロッピーディスクを得た。また、同様に表11に記載の因子を変更して試料
、実施例7−2〜7−7、比較例7−1を作成し、性能を評価し、その結果を表
11に示した。 【0227】 初期最内周2F出力:実施例7−1のサンプルを100として相対値として算
出した。使用ドライブはPD211(東芝社製)である。尚、記録波長は、14
28μmである。従って、λ/50は28.5nmである。 表面粗さ:Raを実施例6と同様の方法で測定した。 【0228】 【表11】 【0229】 上表から、実施例6と同様に実施例試料は、無機質粉末表面にAl23、Si
2、ZrO2等の処理層を上表に示す通り含むために分散性が改善され、Raが
低く、電磁変換特性が良好である。比較例7−1は、無機質粉末に処理層が含ま
れないので、分散性が悪く、Raおよびσ、Δdが高くなり、電磁変換特性が劣
る。 【0230】 実施例8 以下の処方で上層磁性層用塗布液及び下層非磁性層用塗布液を調製した。 実施例8−1 下層非磁性層用塗布液 無機質粉末 TiO2 80部 平均粒径 0.035μm 結晶系 ルチル TiO2含有量 90%以上 比表面積 40m2/g DBP吸油量 27〜38g/100g pH 7 カーボンブラック 20部 平均粒径 16mμ DBP吸油量 80ml/100g pH 8.0 BET法による比表面積 250m2/g 揮発分 1.5% 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 12部 −N(CH33 +Cl-の極性基を5×10-6eq/g含む 組成比 86:13:1 重合度 400 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 1部 メチルエチルケトン 200部 上層磁性層 強磁性金属微粉末 組成 Fe/Zn/Ni=92/4/4 100部 Hc 1600Oe BET法による比表面積 60m2/g 結晶子サイズ 195Å 平均長軸径 0.20μm、針状比 7 飽和磁化(σs):128emu/g 塩化ビニル系共重合体 12部 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有、重合度300 ポリエステルポリウレタン樹脂 3部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 α−アルミナ(平均粒径 0.2μm) 2部 カーボンブラック(平均粒径 0.10μm) 0.5部 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2部 メチルエチルケトン 200部 上記2つの塗料のそれぞれについて、各成分をオープンニーダーで混練した後
、サンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを下層
非磁性層の塗布液には1部、上層磁性層の塗布液には3部を加え、さらにそれぞ
れに酢酸ブチル40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾
過し、下層非磁性層用及び上層磁性層用の塗布液をそれぞれ調製した。 【0231】 得られた下層非磁性層塗布液を乾燥後の厚さが3μmになるように更にその直
後にその上に上層磁性層の厚さが0.5μmになるように、厚さ7μmで中心平
均表面粗さが0.01μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に同時重層塗
布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに3000ガウスの磁力をもつコバル
ト磁石と1500ガウスの磁力をもつソレノイドにより配向させ、乾燥後、金属
ロールのみから構成される7段のカレンダーで温度90℃にて処理を行い、8m
mの幅にスリットし、実施例8−1の8mmビデオテープを製造した。 【0232】 また、同様に表12〜17に記載の因子を変更して試料、実施例8−2〜8−
6、比較例8−1〜8−4を作成した。また、実施例8−4、比較例8−1の磁
性層は強磁性粉末の充填密度を上げるために混練に連続ニーダーを用いた。 その試料の特性を評価し、その結果を表16、17に示した。 評価方法 7MHz出力 富士写真フィルム社製FUJIX8 8mmビデオデッキを用いて7MHz信
号を記録し、この信号を再生したときの7MHz信号再生出力をオシロスコープ
で測定した。対照は富士写真フィルム社製8ミリテープSAG P6−120で
ある。 【0233】 C/N比 富士写真フィルム社製FUJIX8 8mmビデオデッキを用いて7MHz信
号を記録し、この信号を再生したときの6MHzで発生するノイズをスペクトル
アナライザーで測定し、このノイズに対する再生信号の比を測定した。 テープ熱収縮率 試料テープを70℃の恒温槽に48分間保存し、その前後の長さの変化をもっ
て熱収縮率とした。テープ長は約100mmでコンパレーターで長さを測定した
。恒温槽に保存中はテンションをかけなかった。 【0234】 スキュー歪み 予め、カラーバー信号を記録し、その後70℃の恒温槽中に48時間保存した
後、十分室温に戻ったのを確認した後、再生して画面上でのカラーバー信号の変
化より求めた。カラーバー1本が7.48μsecである。 走行耐久性 試料を23℃、70%RHの雰囲気で富士写真フィルム社製8mmビデオデッ
キFUJIX8 10台でP6−120を100回走行させた。その間、出力低
下を測定し、また走行後のデッキ内各部の汚れを評価した。○は、汚れが付着し
ている部分が5ヵ所以内であることを示し、△は、汚れが付着している部分が5
ヵ所以上であるが、目詰まりの実害はないことを示し、×は、汚れが付着してい
る部分が5ヵ所以上であり、目詰まりの実害があることを示す。尚、○△は、○
と△の中間の性能を意味する。 【0235】 【表12】 【0236】 【表13】 【0237】 【表14】 【0238】 【表15】 【0239】 【表16】 【0240】 【表17】 【0241】 上表より、各実施例に示される本発明の磁気記録媒は、Δd≦0.50dを満
足し、比較例に比べ、スキュー歪みが小さく、σ、Δdも小さいので再生出力、
C/N比、走行耐久性も良好であった。比較例8−1は、上層厚味が、1.2μ
mと厚いために電磁変換特性が劣る。 【0242】 本実施例は、磁気記録媒体の70℃、48時間における熱収縮率を0.4%以
下に制御したことによりスキュー歪みを低減すると共に走行耐久性、更にC/N
、再生出力を良好に確保できる優れた特性を有する極めて磁性層の薄い塗布型磁
気記録媒体であり、しかも塗布欠陥なく大量に製造できることがわかる。 実施例9 下記処方により下層非磁性層用塗布液及び上層磁性層用塗布液を調製した。 下層非磁性層用塗布液 無機質粉末 TiO2 80部 平均粒径 0.035μm 結晶系 ルチル TiO2含有量 90%以上 BET法による比表面積 40m2/g DBP吸油量 27〜38g/100g pH 7 カーボンブラック 20部 平均粒径 16mμ DBP吸油量 80ml/100g pH 8.0 BET法による比表面積 250m2/g 揮発分 1.5% 塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 12部 −N(CH33 +Cl-の極性基を5×10-6eq/g含む 組成比 86:13:1 重合度 400 ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 1部 メチルエチルケトン 200部 上層磁性層(a) 強磁性金属微粉末 組成 Fe/Zn/Ni=92/4/4 100部 Hc 1600Oe BET法による比表面積 60m2/g 結晶子サイズ 195Å 平均長軸長 0.20μm、針状比 10 飽和磁化(σs):130emu/g 塩化ビニル系共重合体 12部 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有、重合度300 ポリエステルポリウレタン樹脂 3部 ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1 −SO3Na基 1×10-4eq/g含有 α−アルミナ(平均粒径 0.3μm) 2部 カーボンブラック(平均粒径 0.10μm) 0.5部 ブチルステアレート 1部 ステアリン酸 2部 メチルエチルケトン 200部 上記2つの塗料のそれぞれについて、各成分を連続ニーダーで混練した後、サ
ンドミルを用いて分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを下層非磁
性層の塗布液には1部、上層磁性層の塗布液には3部を加え、さらにそれぞれに
酢酸ブチル40部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し 、下層非磁性層用及び上層磁性層用の塗布液をそれぞれ調製した。 【0243】 得られた下層非磁性層塗布液を乾燥後の厚さが2.5μmになるように更にそ
の直後にその上に上層磁性層の厚さが0.5μmになるように、厚さ7μmで中
心平均表面粗さが0.01μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に同時重
層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに3000ガウスの磁力をもつコ
バルト磁石と1500ガウスの磁力をもつソレノイドにより配向させ、乾燥後、
金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで温度90℃にて処理を行い、
8mmの幅にスリットし、実施例9−1の8mmビデオテープを製造した。 【0244】 また、同様に表18〜19に記載の因子を変更して試料、実施例9−2〜9−
6、比較例9−1〜9−4を作成した。 上記試料を評価し、その結果を表18〜19に示す。 SMD、STD、スチフネス比率 東洋精機製ループスチフネステスターを用いて、幅8ミリ、長さ50ミリの試
料をSMD用及びSTD用に切り出してこれを円環として、内径方向に変位速度3.
5mm/秒で変位5mmを与えるのに要する各力をmgでSMD、STDを求めスチ
フネス比率SMD/STDを求めた。 エンベロープ平坦度 富士写真フィルム社製FUJIX8 8mmビデオデッキを用いて7MHz信
号を記録し、この信号を再生した時7MHz信号再生出力をオシロスコープで観
察し、1フィールド中で最大出力と最小出力との差をもって表す。 7MHz出力 富士写真フィルム社製FUJIX8 8mmビデオデッキを用いて7MHz信
号を記録し、この信号を再生したときの7MHz信号再生出力をオシロスコープ
で測定した。対照は富士写真フィルム社製8ミリテープSAG P6−120で
ある。 C/N比 富士写真フィルム社製FUJIX8 8mmビデオデッキを用いて7MHz信 号を記録し、この信号を再生したときの6MHzで発生するノイズをスペクトル
アナライザーで測定し、このノイズに対する再生信号の比を測定した。 走行耐久性測定法 試料を23℃、70%RH雰囲気で富士写真フィルム社製8mmビオデデッキ
FUJIX8 10台でP6−120を100回走行させた。その間、出力低下
を測定した。 【0245】 ○は、出力低下2dB以内 △は、出力低下2〜4dB ×は、出力低下4dB以上又は目詰まり発生 ピンホール 磁性層塗布後、バック層を塗布する前に、透過白色光で磁性層を目視観察して
100m2当たりのピンホールを測定した。100m2に1個以下が好ましい。 【0246】 【表18】 【0247】 【表19】 【0248】 上表より、本発明の実施例は、SMD/STDが1.0〜1.9に制御されている
ために比較例に比べ、ヘッド当たりが改善され、エンベロープ平坦度が小さい。
また、実施例は塗布欠陥がなくかつσが小さいので走行耐久性、出力、C/Nに
優れることが分かる。比較例9−1は、下層に無機質粉末でなくモース硬度2の
カーボンを使用しているためにSTDが低く所定のSMD/STDが得られず、エンベ
ロープ平坦度、σ、走行耐久性が改善されない。比較例9−2は、平均粒径の大
きな無機質粉末を使用したために所定のSMD/STDが得られず、エンベロープ平
坦度、σが改善されない。比較例9−3は、下層を設けない例であり、磁性層は
塗布欠陥が生じ評価試料はできなかった。比較例9−4は、磁性層の厚味は1.
2と厚いために他の実施例に比べ電磁変換特性が劣るものの、エンベロープ平坦
度、走行耐久性は改善された。 【0249】 実施例10 非磁性粉体としてポリエチレンテレフタレート(厚味10μmNF5値:MD
方向 20Kg/mm2、TD方向 14Kg/mm2、ヤング率:MD方向 7
50Kg/mm2、TD方向 470Kg/mm2)又はポリエチレンテレナフタ
レート(厚味 7μm、F5値:MD方向 22Kg/mm2、TD方向 18
Kg/mm2、ヤング率:MD方向 750Kg/mm2、TD方向 750Kg
/mm2)を用い、その上に以下の処方でディスパ攪拌機で12時間攪拌して下
塗液を調製した。 【0250】 ポリエステル樹脂(−SO3Na基含有) 100部 Tg 65℃ Na含量 4600ppm シクロヘキサノン 9900部 得られた下塗液を用いてバーコートにより前記非磁性支持体上に乾燥厚味 0
.1μmで塗布した。 【0251】 一方、以下の処方で上層磁性層用塗布液及び下層非磁性層用塗布液を調製した
。 上層磁性層用塗布液処方 強磁性粉末:Fe合金粉末(Fe−Co−Ni) 100部 組成;Fe:Co:No:Ni=92:6:2 焼結防止剤としてAl23を使用 Hc 1600Oe、σs 119emu/g 長軸長 0.13μm,針状比 7 結晶子サイズ 172Å、含水率 0.6重量% 塩化ビニル共重合体 13部 −SO3Na 8×10-5eq/g、−OH、エポキシ基含有 Tg 71℃、重合度 300、数平均分子量(Mn)12000 重量平均分子量(Mw)38000 ポリウレタン樹脂 5部 −SO3Na 8×10-5eq/g含有 −OH 8×10-5eq/g含有 Tg 38℃、Mw 50000 αアルミナ(平均粒径0.15μm) 12部 SBET8.7m2/g、pH 8.2、含水率 0.06重量% シクロヘキサノン 150部 メチルエチルケトン 150部 上記組成物をサンドミル中で6時間混合分散したのち、ポリイソシアネート(
コロネートL)を5部及びオレイン酸 1部、ステアリン酸1部、ステアリン酸
ブチル1.5部を加えて上層磁性層用塗布液を得た。 【0252】 下層非磁性層用塗布液処方 TiO2 85部 平均粒径 0.035μm 結晶系 ルチル TiO2含有量 90%以上 表面処理剤 Al23BET 35〜45m2/g 真比重 4.1 pH 6.5〜8.0 カーボンブラック 5部 平均粒径 16mμ DBP吸油量 80ml/100g pH 8.0 SBET 250m2/g 着色力 143% 塩化ビニル共重合体 13部 −SO3Na 8×10-5eq/g、−OH、エポキシ基含有 Tg 71℃、重合度 300、数平均分子量(Mn)12000 重量平均分子量(Mw)38000 ポリウレタン樹脂 5部 −SO3Na 8×10-5eq/g含有 −OH 8×10-5eq/g含有 Tg 38℃、Mw 50000 シクロヘキサン 100部 メチルエチルケトン 100部 上記組成物をサンドミル中で4時間混合分散したのち、ポリイソシアネート(
コロネートL)5部、オレイン酸1部、ステアリン酸1部、ステアリン酸ブチル
1.5部を加えて下層非磁性層用塗布液を得た。 【0253】 上記の塗布液をギャップの異なる2つのドクターを用いて、湿潤状態で塗布し
たのち、永久磁石3500ガウス、次いでソレノイド 1600ガウスにて配向
処理後、乾燥した。その後、金属ロールと金属ロールによるスーパーカレンダー
処理を温度80℃で行った。塗布厚みは磁性層0.3μm、非磁性層3.0μm であった。 【0254】 次いで以下の処方により塗布液を調製した。 BC層処方 カーボンブラック 100部 SBET 220m2/g 平均粒径 17mμ DBP吸油量 75ml/100g 揮発分 1.5% pH 8.0 嵩密度 15 lbs/ft3 ニトロセルロース RS1/2 100部 ポリエステルポリウレタン 30部 ニッポラン(日本ポリウレタン社製) 分散剤 オレイン酸銅 10部 銅フタロシアニン 10部 硫酸バリウム(沈降性) 5部 メチルエチルケトン 500部 トルエン 500部 上記組成を予備混練し、ロールミルで混練した。次に上記分散物100重量部
に対して、 カーボンブラック 100部 SBET 200m2/g 平均粒径 200mμ DBP吸油量 36ml/100g pH 8.5 α−Al23(平均粒径 0.2μm) 0.1部 を添加した組成にてサンドグラインダーで分散を行い、濾過後、上記分散物10
0重量部に対して以下の組成を添加し、塗布液を調製した。 【0255】 メチルエチルケトン 120部 ポリイソシアネート 5部 得られた塗布液をバーコーターにより、前記磁性層を設けた非磁性支持体の反
対側に乾燥厚味0.5μmになるよう塗布した。このようにして得られた原反を
8mm幅に裁断し試料1(PET支持体)及び試料2(PEN支持体)の8mm
ビデオテープを作成した。 【0256】 得られた8mmビデオテープについて以下の測定を行い、その測定結果を得た
。 (1)TEM(透過型電子顕微鏡) 磁性層の超薄切片を観察した。 ダイヤモンドカッターで媒体を約0.1μm厚味に切り出し、これを透過型電
子顕微鏡で観察し、写真撮影した。撮影した写真の上下層の界面と磁性層表面を
隈取りし、IBASII画像処理装置で磁性層厚味を測定し、その平均値dと標準
偏差σとを求めた。 【0257】 磁性層厚味の平均値dは0.45μmであった。実用上は1μm以下、特に好
ましくは0.6μm以下であることがわかった。磁性層厚味変動△dは、0.0
7μmで、△d≦0.5dを満足し、磁性層厚味の標準偏差σは、0.08μm
以下であった。実用上はσは0.2μm以下、特に好ましくは0.1μm以下で
あることがわかった。 同様に実施例2−4は、σが0.06であった。 【0258】 前記磁気テープを延伸して磁性層を支持体から浮いた状態にし、カッター刃で
しごいて磁性層を剥離した。この剥離した磁性層500mgを1N−NaOH/
メタノール溶液100ml中で2時間環流し、結合剤を加水分解した。強磁性粉
末は比重が大きいために底に沈むので上澄み液を除去した。 次いでデカンテーションにより3回水洗、その後THFで3回洗浄した。得ら れた強磁性粉末は50℃の真空乾燥機で乾燥した。次に得られた強磁性粉末をコ
ロジオン中に分散し、TEMを用いて6万倍で観察した。その結果、強磁性粉末
の粒子長軸長0.13μmであり、針状比は10であった。同様に実施例2−2
では長軸長0.25μmで、針状比は15であった。実用上は粒子長軸長は0.
4μm以下が必要であり、好ましくは0.3μm以下であることがわかった。又
実用上、針状比は2〜20が必要であり、好ましくは2〜15であることがわか
った。 (2)AFM(Atomic Force Micro Scope) 表面粗さRrmsを測定した。磁性層表面をDigital Instrume
nt社のNanoscopeIIを用い、トンネル電流10nA、バイアス電圧
400mVで6μm×6μmの範囲を走査した。表面粗さはこの範囲のRrms
求めた。 【0259】 その結果、Rrmsは6nmであった。実用上は20nm以下が必要であり、好
ましくは10nm以下であることがわかった。同様に実施例2も参考にできる。 (3)表面粗さ計 3d−MIRAUを用いた表面粗さを測定した。WYKO社製TOPO3Dを
用いてMIRAU法で約250×250μm2の面積のRa、Rrms、Peak−
Valley値を測定した。測定波長約650nmにて球面補正、円筒補正を加
えている。この方式は光干渉にて測定する非接触表面粗さ計である。Raは、2
.7nmであった。実用上、Raは1〜4nmが好ましく、更に好ましくは2〜
3.5nmであることがわかった。Rrmsは3.5nmであった。実用上は1.
3〜6nmが好ましく、更に好ましくは1.5〜5nmであることがわかった。
P−V値は20〜30nmであった。実用上は80nm以下が好ましく、更に好
ましくは10〜60nmであることがわかった。 (4)VSM(振動試料型磁束計) VSMを用いて得られた磁気テープの磁性層の磁気特性を測定した。東英工業
社製の振動試料型磁束計を用いてHm 5kOeで測定した。 【0260】 その結果、Hcは1620Oe、Hr(90°)は1800Oe、Br/Bm
は0.82、SFDは、0.583であった。実用上Hcは1500〜2500
Oeが必要で、好ましくは1600〜2000Oeであることがわった。Hr(
90°)は実用上、1000〜2800Oeが必要で、好ましくは1200〜2
500Oeであることがわかった。Br/Bmは、実用上0.75以上が必要で
、好ましくは0.8以上であることがわかった。SFDは実用上0.7以下が必
要で、好ましくは0.6以下であることがわかった。 【0261】 実施例4も同様の結果を得た。 (5)X線回折 前述の(1)で磁性層より取り出した強磁性粉末を用いて、X線回折をした。 磁気テープを直接にX線回折装置にかけ、(1,1,0)面と(2,2,0)
面との回折線の半値幅の広がりから求めた。その結果、結晶子サイズは180Å
であることがわかった。実用上好ましくは400Å以下であり、特に好ましくは
100〜300Åであることがわかった。同様に実施例6−2を測定すると28
0Åであった。 (6)引っ張り試験 引っ張り試験機で得られた磁気テープのヤング率、降伏応力、降伏伸びを測定
した。引っ張り試験機(東洋ボールドウィン社製万能引っ張り試験機STM−T
−50BP)を用いて雰囲気23℃、70%RHで引っ張り速度10%/分で測
定した。 【0262】 その結果、磁気テープのヤング率は700Kg/mm2、降伏応力 6〜7K
g/mm2、降伏伸びが0.8%であった。実用上好ましくはヤング率は400
〜2000Kg/mm2、特に好ましくは500〜1500Kg/mm2であるこ
とがわかった。降伏応力は、実用上好ましくは3〜20Kg/mm2、特に好ま
しくは4〜15であることがわかった。降伏伸びは実用上好ましくは0.2〜8
%であり、特に好ましくは0.4〜5%であることがわかった。 (7)曲げ剛性、円環式スティフネス ループスティフネステスタを用いて、幅8mm、長さ50mmの試料を円環と
し、変位速度約3.5mm/秒で変位5mmを与えるのに要する力をmgで表す
。 【0263】 その結果、8mmのp6−120のテープでは厚さが10.5μmであり、ス
ティフネスは40〜60mmであった。実用上厚さが10.5±1μmでは好ま
しくは、スティフネスは20〜90mgであり、特に好ましくは30〜70mg
であることがわかった。厚さが11.5μm以上の場合は実用上好ましくは40
〜200mgであることがわかった。厚さが9.5μm以下の場合は、実用上好
ましくは10〜70mgであることがわかった。 (8)延伸破壊 クラック発生伸度を23℃、70%RHで測定した。 【0264】 テープ長さ10cmの試験片の両端を0.1mm/秒の引っ張り速度で引っ張
り、400倍で磁性層表面を顕微鏡観察して、磁性層表面に5個以上の明らかな
亀裂が発生した伸度を測定する。同様にして実施例8−4は12%であった。 その結果、発生伸度は4%であった。実用上好ましくは20%以下、特に好ま
しくは10%以下であることがわかった。 (9)ESCA Cl/FeスペクトルαとN/Feスペクトルβを測定した。 【0265】 α及びβの測定には、X線光電子分光装置(PERKIN−FLMER社製)
を用いた。X線源はMgアノードを用い、300Wで測定した。まず、ビデオテ
ープの潤滑剤をn−ヘキサンを用いて洗い流した後、X線光電子分光装置にセッ
トした。X線源と試料とも距離は1cmとした。試料を真空に排気して5分後か
らCl−2Pスペクトル、N−1SスペクトルとFe−2P(3/2)スペクト
ルを10分間積算し測定した。なお、バスエネルギーは100eVで一定とした
。測定したCl−2PスペクトルとFe−2P(3/2)スペクトルとの積分強
度比を計算で求め、αとした。 【0266】 又、N−1SスペクトルとFe−2P(3/2)スペクトルとの積分強度比を
計算で求めβとした。 その結果αは、0.45であり、βは0.07であった。また、実施例3−5
を測定するとαは0.32、βは、0.10であった。実用上αは好ましくは0
.3〜0.6であり、特に好ましくは0.4〜0.5であることがわかった。実
用上βは好ましくは0.03〜0.12であり、特に好ましくは0.04〜0.
1であることがわかった。 (11)レオバイブロン 110Hzの動的粘弾性を測定した。 【0267】 動的粘弾性測定装置(東洋ボールドウィン社製レオバイブロン)を用い、周波
数110Hzでテープの粘弾性を測定した。TgはE′′のピーク温度とした。
この方法はテープの一端から振動を加え他端に伝播する振動を測定する。 その結果、Tgは73℃、E′(50℃)は4×1010dyne/cm2、E
′′(50℃)は1×1011であった。実用上Tgは好ましくは40〜120℃
、特に好ましくは50〜110℃であることがわかった。実用上E′(50℃)
は0.8×1011〜11×1011dyne/cm2であり、特に好ましくは、1
×1011〜9×1011dyne/cm2であることがわかった。実用上E′′(
50℃)は好ましくは0.5×1011〜8×1011dyne/cm2であり、特
に好ましくは0.7×1011〜5×1011dyne/cm2であることがわかっ
た。 (12)密着強度 180°剥離法により支持体と磁性層との密着強度を測定した。 【0268】 8mm幅にスリットしたテープを3M製粘着テープにはりつけ、23℃、70
%RHで180剥離強度を測定した。 得られた結果は50gであった。又、実施例3−1を同様に測定すると25g
であった。実用上好ましくは密着強度は10g以上であり、特に好ましくは20 g以上であることがわかった。 (13)磨耗 磁性層表面の23℃、70%RHの鋼球磨耗を測定した。 【0269】 プレパラートガラス上に試料をその両端を接着テープで張り付けて固定し、6
.25mmφの鋼球に荷重50gを加えて摺動させた。その際、20mmの距離
を速度20mm/secで1回走行させた後、新しい磁性面に鋼球を移動させて
同じ操作を20回繰り返した。その後、鋼球の摺動面を40倍の顕微鏡で観察し
、その面が円であると仮定して直径を求め、その直径から磨耗量を計算した。 【0270】 得られた結果は、0.7×10-5〜1.1×10-5mm3であった。また、実
施例3−2は、4×10-5mm3であった。実用上好ましくは0.1×10-5
5×10-5mm3であり、特に好ましくは0.4×10-5〜2×10-5mm3であ
った。 (14)SEM(Scanning Electronic Microsco
pe) SEMで磁性層表面状況を観察した。 【0271】 日立製電子顕微鏡S−900にて倍率5000倍で5枚撮影して表面の研磨剤
を測定した。 その結果、研磨剤個数は0.2個/μm2であった。また、実施例4−6を測
定すると0.4個/mm2であった。 実用上、研磨剤個数は0.1個/μm2以上であり、特に好ましくは0.12
個/μm2〜0.5個/μm2であることがわかった。 (15)GC(ガスクロマトグラフィー) GCで磁気テープの残留溶剤を測定した。 【0272】 島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14Aを用いて、20cm2の試
料を120℃まで加熱して、媒体中の残留溶剤を測定した。 その結果、残留溶剤は8mg/m2であった。また、実施例1−1を同様に測
定すると18mg/m2であった。実用上、好ましくは50mg/m2以下であり
、特に好ましくは20mg/m2以下であることがわかった。 (16)ゾル分率 磁気テープの磁性層よりTHFにて抽出された可溶固形分の磁性層重量に対す
る比率を求めた。その結果ゾル分率は7%であった。また、実施例1−1を同様
に測定すると5%であった。実用上、ゾル分率は好ましくは15%以下であり、
特に好ましくは10%以下であることがわかった。 (17)磁気現像パターン 得られた8mm幅の磁気記録媒体をSONY社製VTR EVO−9500を
用い、1MHzの短波長記録をし、記録された部分のみ5mm幅にスリットし、
フェリコロイド(約100Åφ)(タイホウ工業社製)の液を流して磁気現像し
、リグロイン液中に24時間浸漬処理したものを日本光学(株)製微分干渉顕微
鏡を用い、干渉色をブルーにして10倍で撮影した。写真を目視で観察すると、
磁性層の厚味の平均したサンプルは、黒又は白の線は現れないが、磁性層の厚み
変動が大きくなってくると黒又は白の線が現れてくる。この線は厚みにむらがあ
る部分であり、このような黒又は白の線は5mm幅の内に5本以内であることが
好ましい。更にそれらの線をミクロデンシトメーターで測定した黒と白の線の濃
度差が、好ましくは0.2以下、特に0.1以下が好ましい。 (18)摩擦係数(μ) 8mm幅テープとsus420J、4mmφの棒とを20g(T1)の張力で
ラップ角約180°で接触させて、この条件下でテープを14mm/secの速
度で走行させるのに必要な張力(T2)を測定し、下式により求めた。 【0273】 μ=(1/π)・1n(T1/T2) その結果、磁性面のμは0.3であった。実用上、磁性面のμは0.15〜0
.4が好ましく、特に好ましくは0.2〜0.35であることがわかった。又、
バック層面のμは0.2であった。実用上、バック層面のμは0.15〜0.4
が好ましく、特に好ましくは0.2〜0.35であることがわかった。 【0274】 この摩擦係数は、磁性体、研磨剤、カーボンブラック、潤滑剤、分散剤等が関
係して定まる。 (19)接触角 磁性層上に水、ヨウ化メチレンの液滴を落とし、顕微鏡でその接触角を測定し
た。水の場合、90°であった。実用上60〜130°であることが好ましく、
特に80〜120°が好ましいことがわかった。 【0275】 又ヨウ化メチレンの場合、接触角は、20°であった。実用上、好ましくは1
0〜90°であり、特に好ましくは10〜70°であった。 これら接触角は特に潤滑剤や分散剤によって定まる値である。 (20)磁性層及びバック層の表面自由エネルギー 特開平3−119513号公報、D.K.Owens,J.Appl.polymer Sci.,13(1
969)とJ.Panzer J.Colloid & Interfacial Sci.,44,No1に記載さふぇている
方法に基づく。 【0276】 この結果、磁性層及びバック層共に40dyne/cmであった。実用上10
〜100dyen/cmが、特に好ましいことがわかった。 この表面自由エネルギーは特に潤滑剤や分散剤によって定まってくる値である
。 (21)表面電気抵抗 8mm幅の試料を半径10mmの四分円の断面を持ち8mmの間隔で置かれた
2個の電極に渡して、デジタル表面電気抵抗計TR−8611A(タケダ理研製
)で測定した。 【0277】 その結果、磁性層表面及びバック層表面共に1×106Ω/sqであった。実
用上1×109Ω/sq以下が好ましく、1×108Ω/sq以下が特に好ましい
ことがわかった。 この表面電気抵抗は強磁性粉末、結合剤、カーボンブラック等によって定まっ てくる値である。 【0278】 上述の方法、特性を有する8mmビデオテープを現在市販されているテープと
比較し、その結果を表20に示した。 【0279】 【表20】 【0280】 尚、評価方法は前記方法もしくは一般的方法によった。 また、判定基準は以下の通りである。 ジッター:○ 0.2μsec未満 × 0.2μsec以上 保存安定性:○ 60℃、90%RHに10日間保存後の錆の発生が皆無 × 60℃、90%RHに10日間保存後の錆の発生がある 走行耐久性:8mmビデオデッキで50パス走行させた時 ○ 30秒以上続く目詰まりがない。 【0281】 × 30秒以上続く目詰まりがある。 スリキズ:スチルモードで10分間走行させた。 ○ 目視で傷が認められない。 × 目視で傷が認められる。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の磁気記録媒体のΔdを測定する方法を説明するための図である。 【図2】 本発明で下層及び上層をウェット・オン・ウェット塗布方式で設けるのに用い
る逐次塗布方式の一例を示す説明図である。 【図3】 同じく同時重層塗布方式の一例を示す説明図である。 【符合の説明】 1 可撓性支持体 2 塗布液(a) 3 塗布機(A) 4 スムージングロール 5 塗布液(b) 6 塗布機(B) 7 バックアップロール 8 同時多層塗布器

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 非磁性支持体上に少なくとも非磁性粉末を結合剤に分散した下
    層非磁性層を設け、その上に前記下層非磁性層が湿潤状態のうちに、強磁性粉末
    を結合剤に分散した上層磁性層を設けた少なくとも二層以上の複数の層を有する
    磁気記録媒体において、前記上層磁性層の乾燥厚み平均値(d)が1μm以下で
    あり、かつ前記上層磁性層と下層非磁性層の界面における厚味変動の平均値Δd
    がΔd≦d/2の関係にあることを特徴とする磁気記録媒体。 【請求項2】 前記上層磁性層表面が、3d−MIRAUで測定した光干渉表
    面粗さでRaが1〜5nm、Rrmsが1.3〜6nm、P−V値が80nm以下
    の内少なくとも1つの値を満足することを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒
    体。 【請求項3】 前記磁気記録媒体の曲げ剛性(円環式スティフネス)は全厚が
    11.5μmより厚い場合は40〜300mgであり、全厚が10.5±1μm
    では20〜90mgであり、又全厚が9.5μmより薄い場合は10〜70mg
    であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。 【請求項4】 前記磁気記録媒体の23℃、70%RHで測定した磁性層のク
    ラック発生伸度が20%以下であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒
    体。 【請求項5】 前記磁気記録媒体をX線光電子分光装置を用いて測定した前記
    上層磁性層表面のCl/Feスペクトルαが0.3〜0.6であり、N/Feス
    ペクトルβが0.03〜0.12であることを特徴とする請求項1記載の磁気記
    録媒体。 【請求項6】 前記上層磁性層表面の23℃、70%RHの鋼球磨耗が0.7
    ×10-5〜5×10-5mm3であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒
    体。 【請求項7】 前記磁気記録媒体をSEM(電子顕微鏡)で倍率50000倍
    で5枚撮影した前記上層磁性層表面の研磨剤の目視での数が 0.1個/μm2以上であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。 【請求項8】 前記磁気記録媒体の上層磁性層に1MHzの短波長記録をし、
    フェリコロイドを用いて磁気現像し、微分干渉顕微鏡を用いて10倍で観察した
    5mm幅のサンプルの中に連続した黒又は白い線が5本以内であることを特徴と
    する請求項1記載の磁気記録媒体。 【請求項9】 前記磁気記録媒体の上層磁性層の塗布方向(長手方向)の面内
    角形比が0.7以上であり、垂直方向の角形比が0.6以上であることを特徴と
    する請求項1記載の磁気記録媒体。

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