JP2658296B2 - アーク起動装置 - Google Patents

アーク起動装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、主電極と補助電極(例えばプラズマアーク
加工装置におけるチップ電極、TIG溶接におけるアーク
スタート用トリガー電極)との間に高周波高電圧を印加
し、火花放電を発生させて、これによって主アークを誘
発させる方式のアーク起動装置の改良に関するものであ
る。
〔従来の技術〕
プラズマアーク加工装置やアークスタートのためのト
リガー用電極を設けたTIG溶接装置においては、加工に
先立って主電極とこれを囲むように設けられたチップ電
極やトリガー電極などの補助電極との間に高電圧を印加
して両電極間に火花放電を発生させて、この火花放電に
よって主電極と補助電極または主電極と被加工物との間
に主アークを誘発させるようになっている。このとき印
加する高電圧は、作業者に対する感電事故防止の観点か
ら数MHz以上の高周波の高電圧が用いられる。
第5図に従来のプラズマアーク加工装置の例を示す。
同図において1は直流電源部、2は高周波発生回路であ
り通常数MHz、数万ボルトの高周波高電圧を発生する。
3は高周波発生回路2の出力を直流電源部1の出力回路
に重畳させるためのカップリングコイルであり、高周波
発生回路2の出力端子に接続される一次巻線3aと直流電
源部1の出力に直列接続される二次巻線3bとからなる。
4ないし8は高周波をバイパスし直流電源部1に混入し
ないように保護するためのコンデンサ、9は電流制限用
抵抗器、10および11は直流電源部1の制御回路への高周
波や他の電磁ノイズの混入を防止するためのチョークコ
イル、12は起動指令時に閉じられるリレー接点である。
上記直流電源部1ないしリレー接点12はプラズマ加工電
源部100を構成している。また21は電源部100の負出力端
子(a)と加工用トーチ200の主電極26との間を接続す
る電力ケーブル、22は電源部100の補助端子(b)と加
工用トーチ200の補助電極、即ちチップ電極27との間を
接続するケーブル、23は加工用トーチ200に設けられた
起動指令用スイッチ(以後トーチスイッチという)25と
電源部100の制御信号入力端子(c),(d)との間を
接続するトーチスイッチ用制御ケーブルであり、これら
の各ケーブル21ないし23は図示を省略したプラズマ作動
用ガスを供給するためのホースや必要に応じて設けられ
るトーチ冷却水供給用ホースなどとまとめられて、共通
のシース24に収められて外見上一本のトーチケーブルを
構成している。加工用トーチ200は主電極26とチップ電
極27およびこれら両電極によって形成されるプラズマ作
動用ガスを導入するためのガス通路とから主として構成
されている。また31は被加工物、32は被加工物31と電源
部100の正出力端子(e)との間を接続する電力ケーブ
ルである。
同図の装置において、トーチスイッチ25を押すと直流
電源部1はこれにより直流出力を発生するとともに高周
波発生回路2を起動させカップリングコイル3に高周波
電力を供給しはじめる。一方、トーチスイッチ25の閉路
によりリレー接点12が閉じ、これによって主電極26とチ
ップ電極27および被加工物31との間に直流電源部1の出
力電圧が印加される。高周波発生回路2の高周波電圧の
出力はカップリングコイル3の二次巻線3bにて直流電源
部1の出力に重畳される。この高周波高電圧はコンデン
サ4,7を経てチップ電極27と主電極26との間の絶縁を破
り火花放電を発生させる。この火花放電によって主電極
26とチップ電極27との間に直流電源部1からの電力によ
ってアークが誘発される。このアークは抵抗器9によっ
て制限された小電流アークであり、通常パイロットアー
クとよばれる。また、このとき主電極26とチップ電極27
との間にプラズマ作動用のガス、例えばアルゴン、酸
素、空気など、を流すとこれらのガスはパイロットアー
クによってイオン化され、このイオン化されたガスがチ
ップ電極27の先端部に設けられたオリフィス部27aから
噴出する。この状態でトーチを被加工物に近づけるとこ
のイオン化されたガスが被加工物31に達し、主電極26と
被加工物31との間にアークが発生する。このアークは直
流電源部1との間に電流を制限するものがないので直流
電源部1の出力設定によって定まる電流にまで増加し、
これによって被加工物31の切断、溶接または溶融などが
行なわれる。同時にチップ電極27に発生していたパイロ
ットアークは、その電流通路に抵抗器9を有するために
消滅する。なお、高周波発生回路2は通常パイロットア
ークの発生によって出力を停止するように構成されてい
る。
〔発明が解決しようとする課題〕
第5図の装置において、高周波高電圧を印加して火花
放電を発生させるときの状態を考えてみる。高周波発生
回路2の出力周波数は前述のように数MHz以上であるの
で、これらはプラズマ加工電源部においてはコンデンサ
4ないし8にてバイパスされるので第5図においてこれ
らのコンデンサより左側へは伝わらない。それ故、高周
波に対する第5図の装置は第6図のように書き直すこと
ができる。同図において、Z1は主電極側電力ケーブル21
と被加工物側電力ケーブル32との間の洩れインピーダン
ス、Z2は電力ケーブル21とチップ側ケーブル22との間の
洩れインピーダンス、Z3は電力ケーブル21とトーチスイ
ッチ用制御ケーブル23との間の洩れインピーダンスをそ
れぞれ示している。またコンデンサ4ないし8は各洩れ
インピーダンスZ1ないしZ3に対しては十分に低い値であ
るので高周波に対しては略短絡とみなし得るので図示の
ように示してある。これらの洩れインピーダンスは各ケ
ーブル間に分布する浮遊容量や洩れ抵抗であり、図中に
示した方向の閉回路電流i1、i2、i3に関係する分布洩れ
インピーダンスを集中定数で示してある。これらの洩れ
インピーダンスの存在のために (但し、eはカップリングコイル二次巻線の出力電
圧) なる洩れ電流が流れることになる。この洩れ電流はトー
チケーブルが長くなるほど大となり、またカップリング
コイル3を含めた高周波発生回路2の内部インピーダン
スは比較的大であるので洩れ電流が流れることによって
主電極26とチップ電極27との間に到達する高周波電圧が
減衰し、ケーブルが長いときには火花放電の発生が困難
になる。この減衰を補うためには第5図のような構成の
従来装置においては、高周波発生回路2の出力電圧と電
力とをともに高くする他ないが、このためにはトーチケ
ーブルの絶縁耐圧をその分だけ高くしなければならず、
また高周波の制御回路への混入防止をより厳密にしなけ
ればならないのみならず、高周波の装置外への輻射量が
増加し、電波障害を増加させる原因となる。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は高周波重畳のためのカップリングコイルの二
次巻線を2つに分割し、一方は従来通り主電極に直列接
続し、他方は補助電極に直列接続するとともに両巻線の
極性を両巻線の誘起電圧の和が主電極と補助電極との間
に印加される極性として、上記従来の装置の欠点を改善
したものである。
〔作 用〕
本発明の装置においては、上記のようにすることによ
って洩れ電流が著しく低減し、これによって高周波電
圧,電力を増加することなく高周波電圧の減衰をなくし
て長尺のケーブルの使用が可能となる。
〔実施例〕
第1図は本発明をプラズマアーク加工装置に適用した
ときの実施例を示す接続図である。同図は第5図に示し
た従来装置において高周波カップリングコイル3の二次
巻線3bを2等分して3b1,3b2とし、巻線3b1は主電極26と
直列に、巻線3b2は補助電極、即ちチップ電極27と直列
になるように、またその極性は両巻線3b1と3b2の出力電
圧の和の電圧が主電極26とチップ電極27との間に印加さ
れる極性に定めてある。その他の構成は第5図の従来装
置と同じであるので同機能のものに同符号を付してあ
る。
第2図は第1図の装置の高周波に対する等価回路であ
り、同図中Z1はケーブル21とケーブル32の間の洩れイン
ピーダンス、Z2aはケーブル21とケーブル22の間の洩れ
インピーダンス、Z2bはケーブル22とケーブル32の間の
洩れインピーダンス、Z3aはケーブル21とケーブル23の
間の洩れインピーダンス、Z3bはケーブル23とケーブル2
2の間の洩れインピーダンスを示し、それぞれ図中に示
した方向の閉回路洩れ電流i1,i2a,i2b,i3a,i3bに関係す
る分布洩れインピーダンスを集中定数で示してある。同
図において高周波発生回路2の出力電圧をケーブルに重
畳するカップリングコイル3b1、3b2の誘起電圧をeaとす
ると、 i1=ea/Z1,i2a=(ea+ea)/Z2a, i2b=ea/Z2b,i3a=ea/Z3a, i3b=ea/Z3b である。ここでケーブル21,22および23は第5図の従来
装置において説明したように一本のシース内に収納され
て一本のトーチケーブルとして製作されるので、それぞ
れの間の洩れインピーダンスZ2a、Z3a、Z3bは略等しい
と考えられる。またこのようにして作成されたトーチケ
ーブルと被加工物31と電源部との間を結ぶケーブル32と
の間の洩れインピーダンスであるZ2bとZ1とも略等しい
と考えてよい。それ故、上記閉回路電流はそれぞれその
絶対値において |i3a|≒|i3b|,また |i1|≒|i2b| となる。そして各電流の方向は図示の通りであるので、
ケーブル23および32を流れる電流は相殺されて略零とな
り、実質的にはループ電流i1,i2b,i3a,i3bによるケーブ
ル電流は流れない。この結果、実際に流れる高周波洩れ
電流は大略 i2a=2ea/Z2a のみとなる。
ここで2eaは第5図の従来装置におけるカップリング
コイルの出力eに等しく、またZ2aは第6図におけるZ2
またはZ3に略等しいと考えられるので i2a≒e/Z2 となり、第5図の従来装置における高周波洩れ電流の
(1/2〜1/3)程度の低い値となる。
次に各ケーブルと接地電位との間に印加される電圧を
考えてみる。ケーブル21とケーブル22とはそれぞれカッ
プリングコイル3b1,3b2の各誘起電圧が接地電位に対し
て印加される。この電圧はカップリングコイル3b1,3b2
の極性が図示のように加算された電圧が主電極26とチッ
プ電極27との間に印加される極性にしてあるので、両電
極間に火花電圧を発生させるために必要な電圧のそれぞ
れ半分でよいことになる。このため、各ケーブルの絶縁
耐圧は1/2の低いものでよいことになる。このことは逆
に、同じ耐圧のケーブルを用いるときには2倍もの高い
電圧を印加することが可能になることを示している。
なお、本発明はパイロットアークを主電極とチップ電
極との間に発生させ、それを加工用プラズマアークに移
行させる方式のプラズマアーク加工装置にのみ適用でき
るものではなく、トーチを被加工物に近づけた状態で高
周波高電圧を主電極とチップ電極との間に印加し、これ
によって発生する火花放電によって主電極と被加工物と
の間に加工用プラズマアークを直接誘発する方式の装置
にも適用できる。この場合は第1図の接続図において抵
抗器9およびリレー接点12を除去したものとすればよ
く、他は第1図と同じでよいので詳細な説明は省略す
る。
また、第1図に示した装置は、上記の説明のように、
これによって直接被加工物を加工するもの以外に、他の
アークの起動用、例えばTIGアーク溶接やMIGアーク溶接
の非接触によるアーク起動、アーク炉の起動などのトリ
ガー用として主アーク通路に電離されたガスを注入する
ための手段としても利用できるのはもちろんである。こ
の場合には、第1図に示した装置において、被加工物31
にかえてアーク起動の対象となるアーク通路(例えば、
溶接電極と被加工物との間隙)に向ってプラズマが注入
されるように溶接用電極または被加工物を接続すればよ
い。このときのトーチ回りの様子を第3図に示す。
第3図において41はTIGアーク溶接用トーチであり、
タングステンからなる溶接用電極41aおよびガスシール
ドノズル41bを有する。この溶接用トーチ41は溶接用電
源42の一方の出力端子に接続されており、溶接用電源42
の他方の出力端子は被加工物31に接続されている。溶接
トーチ41にはまたプラズマアーク発生用トーチ200が取
付けられており、このプラズマアーク発生用トーチ200
はプラズマ発生用電源部100に接続されている。これら
電源部100とトーチ200とは第1図の電源部100およびト
ーチ200に相当し同一機能のものに同一符号を付してあ
り、また内部構造は一部省略してある。電源部100の他
方の出力は被加工物31に接続されている。
同図の装置においてトーチスイッチ25を押すと高周波
電圧が主電極26とチップ電極27との間に印加されて火花
放電が発生し、これに誘発されて主電極26とチップ電極
27との間にパイロットアークが発生し、このパイロット
アークによってイオン化されたプラズマ作動ガスがチッ
プ電極27の先端のオリフィス部27aからガスシールドノ
ズル41b内に注入される。このとき溶接用電源42も出力
が発生し溶接用電極41aと被加工物31との間に電圧が印
加されているとオリフィス部27aから注入されたイオン
化ガスによって溶接用電極41aと被加工物31との間の絶
縁が破れて、アーク放電が誘発される。これによって溶
接用電極41aと被加工物31とは完全に非接触によって溶
接アークが起動できることになる。
さらにまた、本発明は、第1図、第3図に示したよう
なプラズマアークの発生装置にのみ適用できるものでは
なく、非接触でアークを起動するために主電極と補助電
極との間に高周波高電圧を印加して火花放電を発生し、
これによって主放電を誘発させる方式のアーク加工装置
全般に適用できるものである。
第4図は、TIG溶接装置に本発明を適用したときの例
を示す接続図である。第4図の装置は、第1図の装置に
おいてプラズマアーク加工用トーチ200をTIGアーク溶接
用トーチ200′に置換したものであり、トーチを置換し
たことによって、補助電極として金属製のガスシールド
ノズル27′が用いられている。そして主電極であるタン
グステン製の溶接用電極26′と補助電極である金属製ガ
スシールドノズル27′との間に第1図に示した例と同様
に高周波を重畳するカップリングコイル3b1,3b2が直列
に接続されている。その他は、第1図の装置とまったく
同様である。
第4図の装置において、トーチスイッチ25を押すと、
直流電源部1の出力が溶接用電極26′と被加工物31との
間に印加されるとともに、高周波電圧が溶接用電極26′
とガスシールドノズル27′(および被溶接物31)との間
に印加される。この高周波電圧によって溶接用電極26′
とガスシールドノズル27′との間に火花放電が発生し、
この火花放電によって溶接用電極26′とガスシールドノ
ズル27′との間に抵抗器9にて制限された微少放電が誘
発され、これによってイオン化されたシールドガスが被
加工物31に達することによって溶接用アークが起動す
る。
第4図の装置においては、第1図の装置と同様に抵抗
器9はなくてもよく、この場合には溶接用電極26′を被
加工物31に接近させた状態でトーチスイッチ25を押すと
溶接用電極26′とガスシールドノズル27′との間に火花
放電が発生し、これによって主アークが誘発されること
になる。
本発明の装置は上記の通りであるので、高周波の減衰
が少なく、また各ケーブルの対地電位が従来装置の1/2
となる。このため、ケーブルの絶縁耐圧が低いものを使
用できる、あるいは従来と同じ絶縁耐圧のケーブルを用
いて主電極とチップ電極との間より高い電圧の高周波電
圧を供給することができるので、ケーブルを長くしたと
きにも良好なアークスタートが得られることになる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明をプラズマアーク加工装置に適用したと
きの例を示す接続図、第2図は第1図の実施例の高周波
時における等価回路、第3図および第4図は本発明を別
の用途に適用したときの例を示す接続図、第5図は従来
装置の例を示す接続図、第6図は第5図の装置の高周波
時における等価回路を示す図である。 1……直流電源部、2……高周波発生回路、 3……カップリングコイル、3a……一次コイル、3b,3b
1,3b2……二次コイル、21,22,23,32……ケーブル、25…
…トーチスイッチ、26……主電極、26′……溶接用電
極、 27……チップ電極(補助電極)、 27′……金属製ガスシールドノズル(補助電極) 31……被加工物、41……TIGトーチ、 41a……溶接用電極、41b……ガスシールドノズル、42…
…溶接用電源、100……プラズマ加工電源部、200……加
工用トーチ、 Z1,Z2,Z3,Z2a,Z2b,Z3a,Z3b……洩れインピーダンス,i1,
i2a,i3a,i3b……高周波洩れ電流

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主電極と補助電極との間に高周波高電圧を
    印加して火花放電を発生させアーク放電を誘発させる方
    式のアーク起動装置において、高周波発生器と、前記高
    周波発生器の出力を一次巻線入力するとともに二次巻線
    を2分し前記2分した二次巻線の一方の巻線を前記主電
    極と直列に接続し前記二次巻線の他方の巻線を前記補助
    電極と直列に接続しかつ前記両二次巻線の極性を出力電
    圧の和が前記主電極と前記補助電極との間に印加される
    極性とした高周波カップリングコイルとを具備したアー
    ク起動装置。
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