JP2653597B2 - 走査型プローブ顕微鏡及びそれを用いた分子加工方法 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡及びそれを用いた分子加工方法

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JP2653597B2 JP4063121A JP6312192A JP2653597B2 JP 2653597 B2 JP2653597 B2 JP 2653597B2 JP 4063121 A JP4063121 A JP 4063121A JP 6312192 A JP6312192 A JP 6312192A JP 2653597 B2 JP2653597 B2 JP 2653597B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、物質表面の構造を分子
レベルや官能基のレベルで直接調べたり加工したりする
走査型プローブ顕微鏡と、それを用いた分子加工方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】物質表面の構造を分子レベルや官能基の
レベルで調べたり加工したりする方法としては、 (1)物質表面の構造を分子レベルや官能基のレベルで
調べる方法、 (2)物質表面の構造を分子レベルや官能基のレベルで
加工する方法があり、従来提案されている技術を以下に
示す。 (1)物質表面の構造を分子レベルや官能基のレベルで
調べる方法 この方法としては例えば、X線マイクロアナライザーに
よって構成原子の比率が、分光学的手段によって化学結
合の種類が、化学的な反応性によって官能基の種類が判
り、また近年、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用い
て物質表面の構造を直接調べようとする研究も成され、
電子雲の違いや、物質表面の電位変化に対するトンネル
電流の変化の違いから、物質表面を構成している個々の
原子を区別する事が可能であり、この方法によって、半
導体基板中の不純物原子の分布などが検出されつつあ
る。このように物質表面の構造は、様々な測定手段を用
いて得られた情報をもとにして総合的に決められてい
る。 (2)物質表面の構造を分子レベルや官能基のレベルで
加工する方法 物質表面の構造は、化学反応によって加工することがで
きる。一般的に行なわれている方法は、保護基などを導
入して物質表面の保護されてない部分の構造を変え、こ
の保護基をはずし、違った部分を保護し、保護されてな
い部分の構造を変える反応を再び実行する、といった操
作を繰り返し行う方法である。
【0003】また、例えばネイチャー第344巻第52
4頁(Nature,Vol.344(5)524(1990))に記載されている
ように、STMを利用して物質表面の構造を加工する試
みも成され、STMを用いて1個1個のキセノン分子を
ニッケル基板上に原子レベルの正確さで並べることに成
功している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来提案されて
いた物質表面の構造を調べる方法および物質表面の構造
を加工する方法の技術では、以下に示すような課題があ
った。 (1)物質表面の構造を分子レベルや官能基のレベルで
調べる場合 X線マイクロアナライザー、分光学的手段もしくは化学
的な手法などを用いて物質表面の構造を調べる方法は有
用ではある。しかし、光(紫外光から赤外光)を用いた
手段では、光の波長の長さよりも小さい領域の、物質表
面の構造を調べることはできないという課題があり、し
かも、操作が煩雑である。また、STMを用いた物質表
面の構造の解析は、原子の種類が少ない時のみ可能であ
り、この物質が多種類の原子で構成されている場合には
ほとんど不可能となるという課題がある。すなわち、何
種類もの原子が存在すると、一つの原子に属する電子は
隣にある原子の電子雲の影響を複雑に受けるため、電子
雲の違いから単純に原子を区別する事が難しくなるから
である。 (2)物質表面の構造を分子レベルや官能基のレベルで
加工する場合 化学反応によって物質表面の構造を加工する場合、ある
構造の一部のみをを変えたい時でも、反応可能な場所全
てが変わってしまうという課題がある。そこで、変えた
くない場所に保護基などを付け、そこだけ反応しないよ
うにする必要がある。しかし適当な保護基がある場合は
よいが、これがない場合は、構造を変えることが不可能
となり、また、化学反応を用いた加工法では、物質表面
のある狭い領域の構造だけを加工することは困難である
という課題もある。
【0005】さらに、STMを用いて、多種類の原子で
構成されている物質表面の構造を分子や官能基のレベル
で加工するためには、STMの探針で物質表面を構成す
る様々な種類の原子を運搬しなくてはならない。しか
し、STMの探針で運搬できる原子の種類は限られてい
るので、この物質表面を加工することは困難であるとい
う課題がある。
【0006】本発明は、かかる従来の課題を解決するた
めに成されたもので、物質表面の構造を分子レベル又は
官能基レベルで容易に直接探索又は加工できる走査型プ
ローブ顕微鏡を提供し、これを用いた物質表面の構造を
分子レベルや官能基のレベルで加工する物質表面の分子
加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の第1番目の発明の走査型プローブ顕微鏡
は、探針を物質表面に接近もしくは接触させて原子レベ
ルの精度で走査し前記物質表面と前記探針との間で生じ
る物理量を検出する走査型プローブ顕微鏡であって、前
記探針にセンサーとなる分子または官能基が、Si−O
結合を介して固定されているか、または前記センサーと
なる分子が、前記探針表面に電析された金属内部に固定
されており、前記物理量が前記探針を前記物質表面に接
近もしくは接触させて原子レベルの精度で走査した場合
に、前記センサーとなる分子や官能基と前記物質表面が
相互作用もしくは化学反応をする時に生ずる物理量であ
ることを特徴とする。
【0008】前記構成においては、走査型プローブ顕微
鏡が、原子間力顕微鏡(以下、AMFと略称する。)で
あり、検出する物理量が原子間力である事が好ましい。
また、前記構成においては、走査型プローブ顕微鏡が、
走査型電気化学顕微鏡(以下、SEMと略称する。)で
あり、検出する物理量が電流である事が好ましい。
【0009】次に、本発明の第2番目の発明の走査型プ
ローブ顕微鏡は、探針を物質表面に接近もしくは接触さ
せた時に前記物質表面と前記探針との間で生じる物理量
を検出し、前記探針を前記物質表面から離し、前記探針
を原子レベルの精度で移動し、前記探針を再び前記物質
表面に接近もしくは接触させた時に前記物質表面と前記
探針との間で生じる物理量を検出する操作を繰り返す走
査型プローブ顕微鏡であって、前記探針にセンサーとな
る分子または官能基が、Si−O結合を介して固定され
ているか、または前記センサーとなる分子が、前記探針
表面に電析された金属内部に固定されており、前記物理
量が前記探針を前記物質表面に接近もしくは接触した場
合に、前記センサーとなる分子や官能基と前記物質表面
が相互作用もしくは化学反応をする時に生ずる物理量で
あることを特徴とする。
【0010】前記構成においては、走査型プローブ顕微
鏡が、AMFであり、検出する物理量が原子間力である
事が好ましい。次に、本発明の第3番目の発明の物質表
面の分子加工方法は、特定の分子または官能基と相互作
用を及ぼし合うかまたは化学反応をする分子または官能
基を固定した探針を有する走査型プローブ顕微鏡の前記
探針を、加工したい物質表面に接近させて前記探針にS
i−O結合を介して固定されるかまたは前記探針表面に
電析された金属内部に固定された分子、または前記探針
にSi−O結合を介して固定され官能基と前記物質表面
との間で発生する相互作用で生じる物理量を測定しなが
ら原子レベルの精度で走査し、前記物質表面の特定部分
に前記探針を接近もしくは接触させ、前記特定部分で相
互作用もしくは化学反応を行なわせ、前記物質表面の構
造を分子レベルもしくは官能基のレベルで加工するか、
又は、前記探針を加工したい物質表面に接触させて、前
記探針に固定された分子もしくは官能基と前記物質表面
との間で発生する相互作用で生じる物理量を測定しなが
ら原子レベルの精度で走査し、前記物質表面の特定部分
で相互作用もしくは化学反応を行なわせ、前記物質表面
の構造を分子レベルまたは官能基のレベルで加工すると
いう構成を備えたものである。
【0011】前記加工方法においては、走査型プローブ
顕微鏡が原子間力顕微鏡であり、探針に固定された分子
もしくは官能基と物質表面間で発生する相互作用で生じ
る物理量が原子間力である事が好ましい。
【0012】また、前記加工方法においては、走査型プ
ローブ顕微鏡が走査型電気化学顕微鏡であり、探針に固
定された分子もしくは官能基と物質表面間で発生する相
互作用で生じる物理量が電流である事が好ましい。
【0013】
【作用】本発明の走査型プローブ顕微鏡は、探針にセン
サーとなる分子や官能基が固定されており、検出する物
理量が前記探針を物質表面に接近もしくは接触させて原
子レベルの精度で走査した場合に、前記センサーとなる
分子または官能基と前記物質表面が相互作用もしくは化
学反応をする時に生ずる物理量であるので、物質表面の
特定の微小領域の構造を分子レベルまたは官能基のレベ
ルで調べたり、加工したりすることが可能になる。
【0014】また、本発明の走査型プローブ顕微鏡は、
探針にセンサーとなる分子または官能基が固定されてお
り、検出する物理量が前記探針を物質表面に接近もしく
は接触した場合に、前記センサーとなる分子または官能
基と前記物質表面が相互作用もしくは化学反応をする時
に生ずる物理量であるので、物質表面の特定の微小領域
の構造を分子レベルまたは官能基のレベルで調べること
が可能になる。
【0015】また、探針に固定した分子または官能基
は、物質表面の分子または官能基と特異的に相互作用も
しくは化学反応をすることができるので、多種類の原子
より成る物質表面の構造を直接調べたり、加工すること
が可能になる。また、センサーとなる分子または官能基
がSi−O結合を介して固定されている場合、センサー
は共有結合を介して探針に固定されることになり、セン
サー分子が容易に探針から脱離することなく探針の耐久
性が向上する。さらに、センサーとなる分子が前記探針
表面に電析された金属内部に固定されている場合、セン
サー分子が容易に探針から脱離することなく探針の耐久
性が向上するとともに、センサー分子が探針と試料間の
電子伝達を妨げることがないため、測定の感度も向上す
る。
【0016】また、走査型プローブ顕微鏡が、原子間力
顕微鏡(AMF)であり、検出する物理量が原子間力で
ある事により、導電性のないサンプルでも容易に物質表
面の構造を直接調べたり、加工することが可能になる。
【0017】また、走査型プローブ顕微鏡が、走査型電
気化学顕微鏡(SEM)であり、検出する物理量が電流
である事により、相互作用として力の作用が生じないよ
うな電気化学的変化が生じた場合でも、容易に物質表面
の構造を直接調べたり、加工することが可能になる。
【0018】次に本発明の物質表面の分子加工方法は、
物質表面の特定の微小領域の構造を加工することが可能
になる。そして、加工の時には、従来法のように保護基
などを使う必要がなくなり、操作の繁雑性が簡素化でき
る。
【0019】また、探針に固定した分子や官能基は、物
質表面の分子や官能基と特異的に相互作用もしくは化学
反応をすることができるので、多種類の原子より成る物
質表面の構造を直接加工することが可能になる。
【0020】また、走査型プローブ顕微鏡が原子間力顕
微鏡であり、探針に固定された分子もしくは官能基と物
質表面間で発生する相互作用で生じる物理量が原子間力
である事により、導電性のないサンプルでも容易に物質
表面の構造を直接加工することが可能になる。
【0021】また、走査型プローブ顕微鏡が走査型電気
化学顕微鏡であり、探針に固定された分子もしくは官能
基と物質表面間で発生する相互作用で生じる物理量が電
流である事により、相互作用として力の作用が生じない
ような電気化学的変化が生じる場合でも、容易に物質表
面の構造を直接加工することが可能になる。
【0022】
【実施例】本発明は、走査型プローブ顕微鏡の探針に分
子や官能基を固定し、物質表面を構成する分子や官能基
を直接識別またはその構造を変えたりするする微小セン
サーまたは微小加工器を作ることによって、従来の問題
を解決しようとするものである。
【0023】なお、走査型プローブ顕微鏡としては、細
い探針を物質表面に接近もしくは接触させて、原子レベ
ルの精度でこの物質表面を走査し、探針と物質表面間に
発生する様々な相互作用の結果生じるトンネル電流や力
や熱などの物理量を検出することによって、物質表面の
形状を調べる装置であり、走査型プローブ顕微鏡の具体
例としては原子間力顕微鏡(AFM)、電気化学顕微鏡
(SEM)、トンネル電子顕微鏡(STM)その他様々
なものがある。これをタイプ1型の走査型プローブ顕微
鏡と定義しておく。
【0024】また、別のタイプの走査型プローブ顕微鏡
としては、細い探針を物質表面に接近もしくは接触させ
た時に探針と物質表面間に発生する様々な相互作用の結
果生じるトンネル電流や力や熱などの物理量を検出した
後、この探針を物質表面から離し、この探針を原子レベ
ルの精度移動し、再びこの探針を物質表面に接近もしく
は接触させ、物質表面と探針との間で生じる物理量を検
出するという操作を繰り返すことによって、物質の表面
の形状を調べる装置がある。これをタイプ2型の走査型
プローブ顕微鏡と定義しておく。
【0025】尚、本発明で用いる走査型プローブ顕微鏡
は、その探針が、対象となる試料である物質の表面の特
定の分子や官能基と相互作用を及ぼし合うかまたは化学
反応をする分子や官能基を固定した探針を用いる点で特
異性があるが、他の点においては通常の上述した走査型
プローブ顕微鏡とその構造、動作原理などは基本的に同
一であり、また、通常の上述した走査型プローブ顕微鏡
はすでに知られているので、その構造などの詳細な説明
は省略し、その原理的な作用機構を以下図面を参照しな
がら説明する。
【0026】図1は本発明のタイプ1型の走査型プロー
ブ顕微鏡の一例としてAFMの要部の構成を示す原理図
である。図1において、60は測定対象となる試料、6
1は探針、62は探針の梃部で上面側は、レーザー光な
どの光を反射できるように金属が蒸着されている。63
は探針の基部、であり、通常顕微鏡本体に固定されてい
る。64はレーザー光などの光源、65は前記光源から
出た光を収束し梃部62の上面側に光を当てるレンズ、
66は光、67は光の角度や、強度の変化をキャッチし
電気信号(電圧)に変えるためのセンサーでこの場合は
フォトダイオード、68はセンサー67からの電気信号
の増幅器、70は試料60を原子レベルの精度で走査す
るための圧電体で、電気信号(電圧)により伸縮し、三
次元方向すなわち試料を上下するZ軸方向、試料を図の
手前方向や奥方向に移動させるY軸方向、試料を図の左
右方向に移動させるX軸方向に動くように構成されてい
る。69は試料のZ軸方向をコントロールするためのZ
軸方向制御用サーボ回路、71は試料検査結果を記憶す
るX、Y、Z軸方向のメモリー装置、72は試料を設定
した範囲で走査する信号をコントロールするためのX−
Y軸方向走査用回路、73はデータ解析装置、74はデ
ィスプレイを示す。
【0027】X−Y軸方向走査用回路72で走査する範
囲やピッチを予め設定しておき、探針61で試料表面に
接近させまたは接触させて試料表面を走査する。この時
探針61上に固定された分子や官能基と試料表面の分子
や官能基と相互作用例えば原子間力が働く部位で、探針
61がZ軸方向に動こうとすると、それを光66の反射
方向の変化でセンサー67でキャッチし電気信号に変
え、信号増幅器68、Z軸方向制御用サーボ回路69で
圧電体70をZ軸方向に作動させる。この場合に、Z軸
方向制御用サーボ回路69は、センサー67の電気信号
の出力が常に一定になるような制御信号を出力するよう
になっている。すなわち強い原子間力が働いて探針61
と試料60の距離が近づくような力が生じた場合にはそ
の力が生じていなかったときの力と同じになるよう試料
がZ軸方向で引き離されるように作動する。この様にし
て試料上を所定の範囲にわたって走査し、X、Y、Z軸
方向のメモリー装置71、データ解析装置73、ディス
プレイ74または記録装置(図示せず)により試料検査
結果が出力される。
【0028】図2は本発明のタイプ2型の走査型プロー
ブ顕微鏡の一例としてAFMの要部の構成を示す原理図
である。図2においては、図1で示されたいくつかの部
分がそのまま利用されている。図1と共通する部品の説
明は省略する。75は試料のZ軸方向をコントロールす
るためのZ軸方向制御用回路、76はX、Y、Z軸方向
と68からの電気信号を記憶する装置、77は試料を設
定した範囲で走査する信号をコントロールするためのX
−Y軸方向走査用回路、78はデータ解析装置、79は
ディスプレイを示す。
【0029】X−Y軸方向走査用回路77で走査する範
囲とピッチを予め設定しておき、Z軸方向制御回路75
を用いて探針61を試料表面60に接近させまたは接触
させる。この時探針61上に固定された分子や官能基と
試料表面の分子や官能基と相互作用、例えば原子間力が
働く部位で、探針61がZ軸方向に動こうとすると、そ
れを光66の反射方向の変化でセンサー67でキャッチ
し電気信号に変え、信号増幅器68によって増幅し、こ
の電気信号とこの時のX、Y、Zの位置を記憶装置76
で記憶する。次に、Z軸方向制御用回路75を用いて探
針を試料表面から離し、X−Y軸方向走査用回路77を
用いてあらかじめ設定されたピッチだけ移動する。再び
Z軸方向制御用回路75を用いて探針61を試料表面6
0に接近または接触させて、同様に、探針61上に固定
された分子や官能基と試料表面の分子や官能基と相互作
用例えば原子間力が働く部位で、探針61がZ軸方向に
動こうとすると、それを光66の反射方向の変化でセン
サー67でキャッチし電気信号に変え、信号増幅器68
によって増幅し、この電気信号とこの時のX、Y、Zの
位置を76で記憶する。このような操作をX−Y軸方向
走査用回路77で設定された走査範囲で繰り返す。この
様にして探針を試料上の所定の範囲にわたって走査し、
データー解析装置78、ディスプレイ79または記録装
置(図示せず)により試料検査結果が出力される。
【0030】尚、上記探針61は特に限定するものでは
ないが探針61の根元部の直径は例えば4μm程度、長
さは1μm程度、探針先端の曲率半径は0.5〜1μm
程度、梃部62の厚さは1.5μm程度のオーダーのも
のが通常使用されている。
【0031】本発明においては原子レベルの精度で走査
することが必要であるが、例えば0.01〜0.1オン
グストロームの精度で、走査範囲は通常10μm角程度
の範囲を走査するのが一般的である。
【0032】図3は本発明の走査型プローブ顕微鏡の一
例としてSEMの要部の構成を示す原理図である。図3
において、90は測定対象となる試料、91はセル、9
2は電解液などの溶液、93は作用極(電極)と成る探
針、94は白金などからなる対極(電極)、95は探針
93の電位を決めるための参照極、96はポテンシヨス
タット、97はポテンシヨスタット96からの電流増幅
器、99は試料90を原子レベルの精度で走査するため
の圧電体で、電気信号(電圧)により伸縮し、三次元方
向すなわち試料を上下するZ軸方向、試料を図の手前方
向や奥方向に移動させるY軸方向、試料を図の左右方向
に移動させるX軸方向に動くように構成されている。9
8は試料のZ軸方向をコントロールするためのZ軸方向
制御用サーボ回路、100は試料検査結果を記憶する
X、Y、Z軸方向のメモリー装置、101は試料を設定
した範囲で走査する信号をコントロールするためのX−
Y軸方向走査用回路、102はデータ解析装置、103
はディスプレイを示す。
【0033】探針93に固定された分子や官能基と試料
表面の分子や官能基と相互作用例えば電気化学反応が生
じやすい部位で、探針93に電流が強く流れようとする
所があると、それが当初の一定値になるように圧電体9
9がZ軸方向に動いて、電流が当初の一定値になるよう
に作動する以外は前記の図1のAMFの場合と作動機構
は同一である。
【0034】図1、図2および図3で示した例の場合に
は試料の方を圧電体で動くようにしているが、探針の方
を圧電体に接続して、探針の方が動く形にしても良いこ
とはもち論である。
【0035】本発明の走査型プローブ顕微鏡の別の一例
として、図4にAFMの探針に分子や官能基が固定され
た状態を示す原子間力顕微鏡の部分模式図を示し、ま
た、図5に本発明のAFMを用いた物質表面の探索原理
を模式図で示した。
【0036】図4に示すように、センサーとなる分子や
官能基2がAFMの探針1に固定され、探針1と試料と
なる物質3表面間で働く力を検出するセンサー4とは、
圧電体5,6および7を介して物質3表面に原子レベル
の精度で位置を制御する。但し圧電体5および6は各々
探針1をY軸方向、X軸方向に走査させるための圧電体
であり、また圧電体7は探針1と物質3表面間の距離を
変えるための圧電体である。この分子や官能基2は、物
質3表面を構成する分子や官能基9と特異的に相互作用
もしくは化学反応をするものとする。
【0037】次に図5に示したように、この探針1を物
質3の表面に圧電体7を用いて接近させるかもしくは接
触させ、圧電体5および6を用いて原子レベルの精度で
走査する。物質3表面は分子や官能基8で構成され、そ
の中でも探針1表面の分子や官能基2と特異的に相互作
用もしくは化学反応性を有する分子や官能基9が存在す
るものとする。圧電体5又は6を用いて操作方向10の
方に探針1を操作してゆく。探針1が物質3の表面の特
定の分子や官能基9の位置にきたとき、ここで特異的に
相互作用もしくは化学反応が起き、他の場所にはみられ
ない大きな力の変化が生じる。この時の力を探針1表面
の分子や官能基2を介してセンサー4で検出することに
よって、物質3の表面の特定の分子や官能基9の位置が
分かる。なお、センサー4による力の検出機構は、先に
図1などで説明した機構など適宜の機構が採用できる。
また、探針1の先に固定する分子や官能基2の種類を色
々代え、これらの操作を繰り返すことによって、物質3
の表面の構造を分子レベルや官能基のレベルで直接調べ
ることができる。
【0038】なお、物質3表面を構成する特定の分子や
官能基9と相互作用や化学反応をして、その構造を変え
ることのできる分子や官能基2をAFMの探針1に固定
してやれば、物質3表面の構造を分子レベルもしくは官
能基のレベルで加工することができる。この場合の物質
3表面の加工は、以下のようにして行う。
【0039】例えば、まず、探針1に何も固定されてい
ない従来のAFMで、加工したい物質3表面の形状を調
べる。次に、このAFMによって得られた情報を基にし
て、物質3表面中の加工したい部分の近傍に分子や官能
基2の固定されたAFMの探針1を持って行く。この
後、この探針1を物質3表面に接近させて、力を探針1
に固定された分子や官能基2を介してセンサー4で測定
しながら、圧電体5又は6を用いて原子レベルの精度で
走査する。そして、加工したい特定の部分にこの探針1
を最接近させるかもしくは接触させることによって、相
互作用や化学反応を起こさせ、この特定部分の構造を変
える。なお、この探針1を始めから物質3表面の加工し
たい部分の近傍に接触させておいて、力を測定しながら
原子レベルの精度で走査して、物質表面の特定の部分に
おいて相互作用や化学反応を起こさせ、その部分の構造
を変えることもできる。探針の先に固定する分子や官能
基の種類を色々変えてこれらの操作を繰り返すことによ
って、物質表面の構造を、分子レベルや官能基のレベル
で加工することができる。
【0040】物質表面において生ずる相互作用や化学反
応によって生じる物理量としては例えば、ファンデルワ
ールス力、イオンによって生ずる電気的なクーロン力、
水素結合によるクーロン力などの原子間力や電気化学反
応によって生じる電流などが挙げられるが、これのみに
限定されるものではなく、相互作用や化学反応によって
生じる測定可能な物理量であれば他のものでも良い。
【0041】なお、走査型プローブ顕微鏡の探針への分
子や官能基の固定方法と、測定試料の作製方法を以下に
示しておく。ここで、1−2−6〜1−2−9で示され
た方法は、N.バラチャンダー等によって提案されたも
の(N.Balachander,C.N.Sukenik,Langmuir,6(11),132(19
90))を応用したものである。
【0042】1:AFMの探針への分子または分子集団
の固定法 1−1:AFMの探針の前処理 用いるAFMの探針は窒化シリコンもしくは酸化シリコ
ンでできたものである。窒化シリコンの場合は、水酸化
ナトリウムによるアルカリ処理、熱硝酸による処理、熱
硫酸による処理、酸素雰囲気中での熱処理のいずれかに
よって探針を酸化して、表面に水酸基(−OH)を付加
する。
【0043】1−2:分子または分子集団の固定法 1−2−1:末端がメチル基である分子の固定法 末端にメチル基を持つシランカップリング剤[CH
3(CH2nSiCl3]を非水系有機溶剤(たとえばヘ
キサデカン80vol.%、クロロホルム12vol.%、四塩
化炭素8vol.%)に、1wt. %溶解して反応溶液とす
る。
【0044】この反応溶液に1−1で処理された探針を
入れ、窒素雰囲気中で約2時間反応を行わせる。反応は
脱塩酸反応によって進む。この反応は下記式(化1)の
ように表わすことができる。
【0045】
【化1】
【0046】次に、この探針を2つの糟の非水溶液(た
とえばクロロホルム溶液)に15分づつ浸漬して、未反
応シランカップリング剤を洗浄、除去する。次に、純水
を用いて水洗を行う。これによってクロロシリル基(−
SiCl)はシラノール基(−SiOH)に加水分解さ
れる。この反応は下記式(化2)のように表わすことが
できる。
【0047】
【化2】
【0048】次に乾燥することにより、前記シラノール
基(−SiOH)は脱水縮合して隣のSi基との間でシ
ロキサン結合(−SiO−)が形成される。この反応は
下記式(化3)のように表わすことができる。
【0049】
【化3】
【0050】図6はシランカップリング剤によって、末
端がメチル基の分子が探針1に固定される様子を示した
模式図であるが、上述の操作によって、図6に示すよう
に、探針1表面の水酸基11とトリクロロシランカップ
リング剤12が反応して、末端がメチル基の化学吸着単
分子膜13が探針1に形成される。この化学吸着単分子
膜13は探針1の基材表面と共有結合によって固定され
ている。
【0051】なお、シランカップリング剤の化学式中の
nは0〜25で可能であるが、nが10〜20のときが
好都合である。 1−2−2:末端がシアノ基である分子の固定法 末端にシアノ基(−CN)を持つシランカップリング剤
[NC(CH2nSiCl3]を非水系有機溶剤(たと
えばヘキサデカン80vol.%、クロロホルム12vol.
%、四塩化炭素8vol.%)に、1wt. %溶解して反応溶
液とする。
【0052】この反応溶液に1−1で処理された探針を
入れ、窒素雰囲気中で約2時間反応を行わせ、次に、こ
の探針を2つの糟のクロロホルム溶液に15分づつ浸漬
した後、水洗を行う。以上の操作によって、前記式(化
1)〜(化3)と同様の反応を起こさせ、末端がシアノ
基の分子を探針表面に固定する。
【0053】なお、シランカップリング剤の化学式中の
nは0〜25で可能であるが、nが10〜20の時が好
都合である。 1−2−3:末端がハロゲンである分子の固定法 末端にハロゲン基を持つシランカップリング剤[Xk
3-k(CH2nSiCl3;k=1,2,3、X=C
l,Br,F]を非水系有機溶剤(たとえばヘキサデカ
ン80vol.%、クロロホルム12vol.%、四塩化炭素8
vol.%)に1wt.%溶解して反応溶液とするこの反応溶
液に1−1で処理された探針を入れ、窒素雰囲気中で約
2時間反応を行わせ、次に、この探針を2つの糟のクロ
ロホルム溶液に15分づつ浸漬した後、水洗を行う。以
上の操作によって、前記式(化1)〜(化3)と同様の
反応を起こさせ、末端がハロゲンの分子を探針表面に固
定する。
【0054】なお、シランカップリング剤の化学式中の
nは0〜25で可能であるが、nが10〜20のときが
好都合である。 1−2−4:末端がアルコール基(−CH2OH)もし
くはカルボキシル基(−COOH)である分子の固定法 末端がトルエンカルボン酸でエステル化されたシランカ
ップリング剤[CH3−C64−OOC(CH2n−S
iCl3]を、1−1で処理された探針に1−2−1と
同じ方法で固定する。
【0055】なお、シランカップリング剤の化学式中の
nは0〜25で可能であるが、nが10〜20のときが
好都合である。次に、上記の探針を数wt.%のリチウム
アルミニウムハイドライド(LiAlH4)を含むエー
テル溶液中で室温下で20分反応させるか、もしくは塩
酸の36%溶液中で65℃で30分反応させて、末端に
アルコール基もしくはカルボキシル基を持つ分子を探針
に固定する。
【0056】1−2−5:末端がアルコール基(−CH
2OH)である分子の固定法(他の方法) 末端がビニル基(−CH=CH2)を有するトリクロロ
シランカップリング剤[CH2=CH−(CH2n−S
iCl3]を1−2−1と同じ方法で1−1で処理され
た探針に固定する。なお、シランカップリング剤の化学
式中のnは0〜25で可能であるが、nが10〜20の
ときが好都合である。
【0057】次に、この探針をジボランの溶解したテト
ラヒドロフラン溶液(1M)に浸しアルゴン雰囲気中室
温で1分間反応させた後、過酸化水素と水酸化ナトリウ
ムの混合溶液(過酸化水素30%、水酸化ナトリウム
0.1M)に浸し1分間反応させて、末端にアルコール
基を持つ分子を固定する。
【0058】1−2−6:末端がチオール基(−SH)
である分子の固定法 分子末端に臭素を有するトリクロロシランカップリング
剤[Br(CH2nSiCl3]を1−1で処理された
探針に1−2−1と同じ方法で固定する。
【0059】なお、シランカップリング剤の化学式中の
nは0〜25で可能であるが、いずれの場合も、nが1
0〜20のときが好都合である。次に、チオシアン酸カ
リウム100mgをN,Nジメチルホルムアミド溶液1
0mlにとかし、上記の探針をこの溶液に浸して20時
間反応を行わせる。
【0060】そして、リチウムアルミニウムハイドライ
ドの溶解したエーテル(10mg/ml)にこの探針を浸し4時
間反応させて、末端がチオール基の分子を固定する。
【0061】1−2−7:末端がアミノ基(−NH2
である分子の固定法 シアノ基を分子末端に持つトリクロロシランカップリン
グ剤[NC−(CH2nSiCl3]を1−1で処理さ
れた探針に1−2−1と同じ方法で固定する。なお、シ
ランカップリング剤の化学式中のnは0〜25で可能で
あるが、nが10〜20のときが好都合である。
【0062】次に、リチウムアルミニウムハイドライド
の溶解したエーテル(10mg/ml)に上記の探針を
入れ、一晩反応させる。この探針を取り出し、空の容器
に入れて、エーテル、続いてエーテルと同容量の10%
の塩酸を加える。その後探針をトリエチルアミン溶液に
入れて、2時間反応を行わせた後、クロロホルム溶液で
洗浄して、末端にアミノ基を持つ分子を固定する。
【0063】1−2−8:末端がアミノ基(−NH2
である分子の固定法(他の方法) 分子末端に臭素を有するトリクロロシランカップリング
剤[Br(CH2nSiCl3]を、1−1で処理され
た探針に1−2−1と同じ方法で固定する。なお、シラ
ンカップリング剤の化学式中のnは0〜25で可能であ
るが、nが10〜20のときが好都合である。
【0064】次に、ナトリウムアジドの溶解したN,N
ジメチルホルムアミド溶液(8mg/ml)に上記の探
針を浸し一晩反応を行わせる。そして、リチウムアルミ
ニウムハイドライドの溶解したエーテル(10mg/m
l)にこの探針を浸し、一晩反応させる。この探針を取
り出し、空の容器に入れて、エーテル、続いてエーテル
と同容量の10%の塩酸を加える。その後探針をトリエ
チルアミン溶液に浸し、2時間反応を行わせた後、クロ
ロホルム溶液で洗浄して、末端がアミノ基の分子を固定
する。
【0065】1−2−9:末端がスルホン酸基(−SO
3H)である分子の固定法 分子末端に臭素を有するトリクロロシランカップリング
剤[Br(CH2nSiCl3]を、1−1で処理され
た探針に1−2−1と同じ方法で固定する。なお、シラ
ンカップリング剤の化学式中のnは0〜25で可能であ
るが、nが10〜20のときが好都合である。
【0066】次に、チオシアン酸カリウム100mgを
N,Nジメチルホルムアミド溶液10mlにとかし、上
記の探針をこの溶液に浸して20時間反応を行わせる。
そして、リチウムアルミニウムハイドライドの溶解した
エーテル(10mg/ml)にこの探針を浸し、4時間
反応させる。
【0067】最後に、30vol.%の過酸化水素水と30
vol.%の酢酸が容量比で1対5の混合溶液中にこの探針
浸し、40℃から50℃の間で30分反応させ、末端が
スルホン酸基の分子を固定する。
【0068】1−2−10:探針への牛血清アルブミン
の坑体の固定方法 1−1で処理された探針を2,4,6−トリクロロ−
1,3,5−トリアジンで飽和したトルエン溶液に浸し
て室温で2時間反応を行わせる。次に、この探針をトル
エンでよく洗浄した後、牛血清アルブミンの坑体の入っ
た水溶液(100mg/ml)に浸して室温で30分反
応させ、坑体を探針に固定する。
【0069】1−2−11:探針への牛血清アルブミン
の坑体の固定方法(他の方法) 1−1で処理された探針を、10wt. %の3−アミノプ
ロピルトリエソキシシラン水溶液中50℃で2時間、
2.5wt. %のグルタルアルデヒド水溶液中室温で1時
間、最後に抗体の水溶液(100ml/mg)中室温で
1時間浸すことによって反応を行なわさせ、牛血清アル
ブミンの坑体を固定する。
【0070】1−2−12:探針への牛血清アルブミン
の坑体の固定方法(他の方法) 1−2−4または1−2−5の方法で、末端がアルコー
ル基である分子を1−1で処理された探針に固定した
後、1−2−10または1−2−11の方法を用いて牛
血清アルブミンの抗体を固定する。
【0071】1−2−13:探針への牛血清アルブミン
の坑体の固定方法(他の方法) 1−2−4の方法によって、末端がカルボキシル基であ
る分子を1−1で処理された探針に固定する。
【0072】次に、この探針を1−(3−ジメチルアミ
ノプロピル)−3−エチルカルボジイミド[(CH32
N(CH23N=C=NCH2CH3]溶液(25mg/
ml)に浸して0℃で1時間反応さるせ。
【0073】最後に、この探針を0℃の抗体溶液(10
0mg/ml)に一晩浸し反応させて、牛血清アルブミ
ンの抗体を固定する。 1−2−14:探針上への牛血清アルブミンの坑体の固
定方法(他の方法) 1−2−7または1−2−8の方法によって、末端がア
ミノ基である分子を1−1で処理された探針に固定す
る。
【0074】次に、この探針を1−(3−ジメチルアミ
ノプロピル)−3−エチルカルボジイミド[(CH32
N(CH23N=C=NCH2CH3]溶液(25mg/
ml)に浸して0℃で1時間反応させる。
【0075】最後に、この探針を0℃の抗体溶液(10
0mg/ml)に一晩浸して反応さて、牛血清アルブミ
ンの抗体を固定する。 1−2−15:探針上へのアルコールデヒドロゲナーゼ
の固定方法 1−1で処理された探針へのアルコールでヒドロゲナー
ゼの固定方法は、1−2−10〜1−2−14のいずれ
かの方法によって行う。但し、抗体の代わりにアルコー
ルデヒドロゲナーゼを用いる。
【0076】1−2−16:探針上へのペプチターゼの
固定方法 1−1で処理された探針へのペプチターゼの固定方法
は、1−2−10〜1−2−14のいずれかの方法によ
って行う。但し、抗体の代わりにペプチターゼを用い
る。
【0077】2:SEMの探針上への分子または官能基
の固定法 2−1:探針の前処理 SEMの探針には、先端の鋭い白金線を用いる。この探
針をよく蒸留水で洗浄する。
【0078】2−2:分子または官能基の固定法 2−2−1:酵素アルコールデヒドロゲナーゼの固定法 塩化白金酸(30mg/ml)と酢酸鉛(0.6mg/
ml)の混合溶液50mlに1Mの水酸化ナトリウム水
溶液を滴下して溶液のpHを7.0にする。次に、アル
コールデヒドロゲナーゼ500mgをこの溶液に加え
る。
【0079】そして、2−1で処理されたSEMの白金
線を作用電極、対極を白金板、参照電極を銀・塩化銀電
極(Ag/AgCl)として、これらの3電極を上記の
溶液に入れる。ポテンショスタットを用いて、白金線の
電位を参照電極にたいして10秒間マイナス0.2Vに
設定する事によって、この白金線上にアルコールデヒド
ロゲナーゼと共に白金を電析する。次に、この白金線を
リン酸緩衝溶液で洗浄してSEM用の探針とする。
【0080】3:測定試料の作製法 3−1:表面から2種類の官能基の出ている測定試料の
作製法 測定試料は基板とする。用いる基板は、酸化膜の付いた
シリコンウェーハー、酸化シリコン膜の付いたガラス基
板もしくは表面の酸化しているグラファイト基板であ
る。これらの基板は全て表面から水酸基がででいるの
で、1−2−1〜1−2−3と同じ方法で表面からメチ
ル基(−CH3)、シアノ基(−CN)、ハロゲン基な
どを出すことができる。但し、それぞれの基板表面から
は2種類の官能基が出るようにする。
【0081】図7は2種類の官能基の固定された基板の
作製工程を示した図である。図7中(a)に示すよう
に、あらかじめ基板26の全部を任意のパターン状にレ
ジスト27でカバー(マスキング)しておき(28はレ
ジストの付いていない部分を示す。)、図7(b)に示
すように、この基板26を反応容器29中の反応溶液3
0に浸して反応を行なわせ、図7(c)に示すようにレ
ジストの付いていない部分に選択的に官能基を固定す
る。31は官能基の固定された部分を示す。その後、図
7(d)に示すようにこのレジストを除き(32はレジ
ストが除かれた部分を示す。)、図7(e)に示すよう
に、この基板26を他の反応溶液33に浸して図7
(f)に示されるようにレジストを除いた部分に官能基
を固定する。34はこの官能基が固定された部分を示す
ものである。このようにして、2種類の官能基がパター
ン状に付いた基板が作製される。
【0082】3−2:表面から2種類の官能基の出てい
る測定試料の作製法(他の方法) 測定試料は基板とする。用いる基板は、酸化膜の付いた
シリコンウェーハー、酸化シリコン膜の付いたガラス基
板または表面の酸化しているグラファイト基板である。
1−2−5〜1−2−9の方法を利用して、反応時間を
調整することによって、ビニル基(−CH=CH2)と
アルコール基(−CH2OH)、ブロモ基(−Br)と
チオシアノ基(−SCN)、チオシアノ基(−SCN)
とチオール基(−SH)、チオール基(−SH)とスル
ホン酸基(−SO3H)、ブロモ基(−Br)とアジド
基(−N3)、アジド基(−N3)とアミノ基(−N
2)、シアノ基(−CN)とアミノ基(−NH2)、等
の2種類の官能基を基板表面から混在させて出す。
【0083】3−3:3種類の血清アルブミンの固定さ
れた基板の作製法 基板上に固定するタンパク質は、牛血清アルブミン、馬
血清アルブミン、鳥血清アルブミンとする。基板上への
固定方法はラングミュア−ブロジェット法による。
【0084】図8はラングミュア−ブロジェット法によ
るタンパク質の基板上への固定法を示した工程図であ
る。図8の(a)に示すように、まず、3種類のタンパ
ク質を等重量含む混合水溶液(タンパク質総量0.2m
g/ml)を、マイクロシリンジ35を用いて100μ
lだけ清浄な水溶液38上に滴下する。この時のバリア
ー36で挟まれた水面上の表面積は約400cm2 とす
る。なお、37はタンパク質溶液、39は容器を示す。
なお、バリアー36は特に限定するわけではないが通常
フッ素樹脂などからなる断面が4角形の棒状物からなる
ものである。
【0085】次に、図8の(b)で示したように、バリ
アー36の間隔を狭めて水面上のタンパク質の膜を圧縮
し、水面上のタンパク質膜の表面圧を16mN/mにす
る。最後に、図8の(c)に示すように表面圧が一定に
なるようにバリアーの動きにフィードバックをかけ、疎
水処理を行った基板40を水面に垂直に挿入後、再び引
き出す。
【0086】なお、用いる基板は表面から水酸基の出て
いるガラス板、シリコンウェイハー、グラファイト基板
または雲母などで、1wt. %のステアリルトリクロロシ
ランを含む有機溶剤(ヘキサデカン80vol.%、クロロ
ホルム12vol.%、四塩化炭素8vol.%)中で2時間反
応を行わせることによって疎水性にしたものである。
【0087】以上の一連の操作によって3種類の血清ア
ルブミンが基板に固定される。 3−4:牛血清アルブミンの固定された基板の作製法 3−3と同じ方法によって基板上に牛血清アルブミンを
基板上に固定する。但し、用いるタンパク質は、牛血清
アルブミン1種類のみとする。
【0088】実施例1 官能基間の電気陰性度の違いを利用した物質表面の分析 本実施例は、電気陰性度の違いに基づいて官能基間に働
く相互作用を利用した分析である。前述の1−2−3の
方法を用い、トリクロロメチル基(−SiCl3)を末
端に持つ分子をAFMの探針に固定した。また、3−2
の方法によって、表面からビニル基とアルコール基がラ
ンダムに出ている基板を作り、測定試料とした。
【0089】上記のAFMの探針を測定試料表面に接近
させて、この探針と試料表面の間に働く力が一定になる
ように探針と試料表面との間の距離を調製しながら、探
針を原子レベルの精度(この場合数オングストロームの
精度、以下同様)で試料表面を走査した。この時、探針
の軌跡が描く曲線群の形状を調べたところ、多数の分子
レベルの凹凸が観測された。
【0090】この結果、凹のある位置にビニル基、凸の
ある位置にアルコール基が存在すると判断された。なぜ
なら、アルコール基の電気陰性度(3.89)と探針上
のトリクロロメチル基の電気陰性度(3.03)との差
は、ビニル基の電気陰性度(3.08)と探針上のトリ
クロロメチル基の電気陰性度の差より大きく、このた
め、探針とアルコール基間に働く力は、探針とビニル基
間に働く力よりも大きくなるからである。
【0091】実施例2 抗原坑体反応を利用した、タンパク質の分布の測定 前述の1−2−10の方法を用いて、AFMの探針に牛
血清アルブミンの坑体を固定した。また、3−3の方法
によって、3種類の血清アルブミンの固定された基板を
作製し、測定試料とした。
【0092】上記のAFMの探針を測定試料表面に接近
させて、この探針と試料表面の間に働く力が一定になる
ように探針と試料表面との間の距離を調製しながら、探
針を原子レベルの精度で試料表面を走査した。この時、
探針の軌跡が描く曲線群の形状を調べたところ、多数の
分子レベルの突起が観測された。
【0093】この結果、この突起のある位置に牛血清ア
ルブミン分子が存在すると判断された。なぜなら、探針
が牛血清アルブミン上にきたとき、探針上の坑体は抗原
である牛血清アルブミンと特異的に強い力を及ぼし合う
ため、この探針と試料表面の距離は探針が他の血清アル
ブミン上にいる場合に比べて大きくなるからである。
【0094】実施例3 酵素反応を用いた試料表面の分析 前述の2−2−1の方法を用いて、SEMの探針にアル
コールデヒドロゲナーゼを固定した。また、3−2の方
法によって、表面からビニル基とアルコール基がランダ
ムに出ている基板を作り、測定試料とした。これとは別
に、アルコールデヒドロゲナーゼの補酵素ニコチンアミ
ドアデニンジヌクレオチド(NAD+ )10mMとメル
ドーラブルー(以下MB+ で示す。また、構造式を(化
4)に示す。)200μMの溶けたリン酸緩衝溶液
(0.1M、pH=7.0)を用意した。
【0095】
【化4】
【0096】上記の溶液中に、試料基板、SEMの探
針、白金板電極、銀・塩化銀の参照電極を入れ、探針を
作用極、白金板電極を対極とした。なお、試料基板の電
位は特に設定しなかった。
【0097】まず、SEMの探針の電位を参照電極にた
いして50mVに設定し、この探針を測定試料表面に接
触させた。次に、この探針に流れる電流を測定しなが
ら、探針を原子レベルの精度で試料表面を走査した。走
査の結果、試料表面に、電流値が他の場所に比べてが異
常に大きくなる箇所が多数見いだされた。そして、この
電流の大きい箇所にアルコール基があると判断された。
以下に理由を示す。
【0098】探針がアルコール基と接触すると、探針の
アルコールデヒドロゲナーゼはアルコール基を酸化しア
ルデヒド基に変える。この反応にともない、NAD+
NADHに還元される。還元されたNADHは、メルド
ーラブルー(MB+ )に酸化され、NAD+ になる。そ
して、還元されたメルドーラブルー(MBH)は探針に
よって酸化され、この時に酸化電流が流れる。この様子
を(化5)に示した。
【0099】
【化5】 R−CH2OH+NAD+→R−CHO+NADH+H+ NADH+MB+→NAD++MBH MBH→MB++H++2e- 従って、探針がアルコール基と接触した時は、ビニル基
に接触している場合に比べて電流値が大きくなり、これ
によって、アルコール基の位置が分かる。
【0100】実施例4 分子間の吸着力の違いを利用した物質表面の分析 本実施例は、分子間の吸着力の違いに基づいて官能基間
に働く相互作用を利用した分析である。前述の1−2−
1の方法を用い探針にオクタデシルトリクロロシラン
[CH3(CH217SiCl3:以下OTSと記す]を
AFMの探針に固定した。また、前述の3−1の方法を
用い、酸化膜の付いたシリコン基板上に、OTSとテト
ラデシルトリクロロシラン[CH3(CH213SiCl
3:以下TTSと記す]で、図9の様な2μm角の格子
状のパターンを作製した。
【0101】測定は、探針と基板上の分子との間に働く
ファンデルワールス力の影響を少なくするために、エタ
ノール溶液中で行った。測定においては、探針に付けら
れたOTSとシリコン基板上のOTSもしくはTTSと
の間に働く吸着力を調べる事によって、OTSとTTS
の表面分布を調べた。以下に測定方法を示す。
【0102】試料の測定範囲は、10μm2とした。試
料上の最初の点におけるフォースカーブを測定後、探針
をいったん試料から離し、この探針を50ナノメートル
別の場所に移動して、この点で再びフォースカーブを測
定する。同様に、再び探針を別の場所に移動して、そこ
でフォースカーブを測定するという操作を繰り返す。こ
の操作によって10μm2の範囲内での吸着力の分布を
調べた。
【0103】なお、フォースカーブの測定方法と、デー
ターの解釈の仕方を以下に示しておく。フォースカーブ
は、試料のX、Yの位置を固定して、Z方向のみを変化
させたときに探針に働く力を測定する事によって得られ
る。具体的には、試料のZ軸方向を制御するピエゾ素子
にかける電圧を図10の様な三角波とし、Z方向の走引
幅が300ナノメートル程度になるように電圧を決め
る。この結果、探針は、相対的に試料に近づいては離れ
るといった往復運動をする。図11が典型的なフォース
カーブである。横軸は探針と試料の間の距離を示し、右
に行くに従って探針と試料との間の距離は大きくなる。
横軸の0点は、ピエゾ素子にかかる電圧が0Vの位置で
あるが、この図には表示されていない。縦軸は探針に働
く力を示し、O点では探針は試料からなんら力を受けて
おらず、これより上では斥力、下では引力を受ける事を
示す。吸着力がある場合には一般にフォースカーブには
ヒシテリシスがあり、図中に、移動方向を矢印で示して
ある。この図においては探針と試料とに働く吸着力は3
nNである。
【0104】以下に本実施例の結果を示す。フォースカ
ーブは、図12と図13の二つのタイプのものが観測さ
れた。吸着力はそれぞれ5nNと3nNであった。図1
4にY方向を固定した場合の吸着力のX方向依存性を示
す。これより、2μmごとに吸着力が変化している事が
分かる。
【0105】これらとは別に、酸化膜の付いたシリコン
基板にOTSもしくはTTSのみを付けた試料を作製し
て、これらの試料と前記OTSの付いた探針との間に働
く吸着力を測定した。吸着力は、前記記載と同様の方法
で調べた。その結果、OTSとTTSの付いた試料で
は、それぞれ5nNと3nNであった。
【0106】以上の結果より、図14では、吸着力の大
きい場所にはOTS、小さな場所にはTTSが付いてい
るという事が分かった。従って、試料基板と探針との間
に働く吸着力の面内分布を調べる事によって、基板上の
OTSとTTSの分布を調べる事ができ、その結果、基
板上には、OTSとTTSが2μmの格子状にパターン
になっている事が調べられた。以上の説明のとおり、分
子間の吸着力の違いを利用して物質表面を分析する事が
できた。
【0107】実施例5 酵素反応を利用した、分子マニュピレーション(分子加
工法) 上述の1−2−15の方法を用いて(この中でも特に1
−2−10を応用)AFMの探針にアルコールデヒドロ
ゲナーゼを固定した。また、3−2の方法によって、表
面からアルコール基の出ている基板を作製した。但し、
この場合、基板表面から出ている官能基はアルコール基
のみになるようにした。これとは別に、アルコールデヒ
ドロゲナーゼの補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレ
オチド(NAD+ )10mMの溶けたリン酸緩衝溶液
(0.1M、pH=7.0)を用意した。
【0108】まず、上記の溶液中で、探針に何も固定さ
れていない従来のAFMを用いて試料表面の形状を調
べ、加工したい場所を決めた。次に、この試料の形状の
データーを基にして、同じ溶液中で、アルコールデヒド
ロゲナーゼの固定されたAFMの探針を加工したい表面
の近傍に持ってきた。その後、この探針を試料表面に接
近させて、力(原子間力)を測定しながら原子レベルの
精度で走査する。そして特定の位置において、この探針
を試料表面に接触させ、この状態で、原子レベルの精度
でゆっくりと走査する。探針を試料から離し、再び力を
測定しながら試料上を走査する。その後、また別の場所
に探針を接触させて走査するという操作を繰り返した。
【0109】これらの操作の結果、探針を接触させて走
査したところだけ、表面のアルコール基は酸化されてア
ルデヒド基になった。以上のことより、この方法によっ
て物質表面の構造を官能基のレベルで加工できた。
【0110】実施例6 酵素反応を利用した、分子マニュピレーション 前述の1−2−16の方法を用いて(この中でも特に1
−2−10を応用)AFMの探針にペプチターゼを固定
した。また、3−4の方法によって牛血清アルブミンを
基板上に固定した。これとは別に、リン酸緩衝溶液
(0.1M、pH=7.0)を用意した。
【0111】まず、上記の溶液中で、探針に何も固定さ
れていない従来のAFMを用いて試料表面の形状を調
べ、加工したい場所を決めた。次に、この試料の形状の
データーを基にして、同じ溶液中で、ペプチターゼの固
定されたAFMの探針を加工したい表面の近辺上に持っ
てきた。その後、この探針を試料表面に接近させて、力
を測定しながら原子レベルの精度で走査する。そして特
定の位置において、この探針を試料表面に接触させ、こ
の状態で、原子レベルの精度でゆっくりと走査する。探
針を試料から離し、再び力を測定しながら試料上を走査
する。その後、また別の場所に探針を接触させて走査す
るという操作を繰り返した。
【0112】これらの操作の結果、探針を接触させて走
査したところだけ、表面の牛血清アルブミンは加水分解
された。以上説明した通り、本実施例の方法によって物
質表面の構造を分子レベルで加工できた。
【0113】実施例7 酵素反応を利用した、分子マニュピレーション 前述の2−1−1の方法によって、SEMの探針にアル
コールデヒドロゲナーゼを固定した。また、3−2の方
法によって、表面からアルコール基の出ている基板を作
製した。但し、この場合、基板表面から出ている官能基
はアルコール基のみになるようにした。これとは別に、
アルコールデヒドロゲナーゼの補酵素ニコチンアミドア
デニンジヌクレオチド(NAD+ )10mMとメルドー
ラブルー(化4)200μMの溶けたリン酸緩衝溶液
(0.1M、pH=7.0)を用意した。
【0114】上記の溶液中に、試料基板、SEMの探
針、白金板電極、銀・塩化銀の参照電極を入れ、探針を
作用極、白金板電極を対極とした。なお、試料基板の電
位は特に設定しなかった。
【0115】まず、SEMの探針を、光学顕微鏡でみな
がら、試料表面上の特定の位置に持ってきた。そして、
この探針の電位を参照電極にたいして50mVに設定
し、この探針を測定試料表面に接触させる。次に、この
探針に流れる電流を測定しながら、試料表面を原子レベ
ルの精度で走査する。探針を試料表面から離し、電流を
測定しながら少し探針を移動させた後、再び試料表面に
接触させ、電流を測定しながら原子レベルの精度で走査
する、そして再び探針を試料表面から離す、という操作
を繰り返した。
【0116】これら一連の操作の結果、探針が接触した
時には、接触しない時に比べて大きな電流が流れた。こ
れは、実施例3で示されたように、探針が試料表面に接
触した時、アルコール基が探針上のアルコールデヒドロ
ゲナーゼによって酸化されるためである。従って、探針
が接触した箇所だけ、表面のアルコール基がアルデヒド
基となったことが確認できた。
【0117】以上のことより、この方法によって物質表
面の構造を官能基のレベルで加工できた。なお、本発明
を用いて、固体表面に密度の高い情報を書き込むことも
できた。すなわち、アルコール基のみの存在する固体表
面の微小領域(原子レベルでの)の構造を上述の方法に
より変え、この構造の変わった場所と変わっていない場
所を固体表面にパターン状に作ることによって、情報を
書き込むことができ、メモリーとして利用できた。
【0118】以上の如く、本発明においては、走査型プ
ローブ顕微鏡の操作に習熟さえすれば、特定の探針を用
いることにより、手軽に、物質表面の構造を分子レベル
もしくは官能基のレベルから直接調べたり、加工するこ
とができる。
【0119】本発明は、物質表面の構造を直接調べた
り、もしくは加工したりできるので、分析化学や合成化
学の分野に革新的な利益をもたらすものである。さら
に、近年、分子数個で電子デバイスを作ろうという研究
が盛んになされているが、本発明は、この分野でも重要
な技術となり得る。
【0120】なお、実施例に於いては、走査型プローブ
顕微鏡としてAFMとSEMを用いた場合のみを示し
た。しかし、トンネル電子顕微鏡(電流を検出)等、他
の様々な走査型プローブ顕微鏡の探針にセンサーとなる
分子や官能基を固定して、物質表面の構造を分子レベル
もしくは官能基のレベルで調べたり加工したりできるこ
とは言うまでもない。
【0121】
【発明の効果】本発明は物質表面の特定の微小領域の構
造を分子レベルや官能基のレベルで調べたり、加工した
りすることが可能な走査型プローブ顕微鏡が提供でき
る。また、走査型プローブ顕微鏡が、原子間力顕微鏡
(AMF)であり、検出する物理量が原子間力である事
により、導電性のないサンプルでも容易に物質表面の構
造を直接調べたり、加工することが可能になる。また、
走査型プローブ顕微鏡が、走査型電気化学顕微鏡(SE
M)であり、検出する物理量が電流である事により、相
互作用として力の作用が生じないような電気化学的変化
が生じた場合でも、容易に物質表面の構造を直接調べた
り、加工することが可能になる。また、物質表面の分子
加工方法の発明においては、物質表面の特定の微小領域
の構造を分子レベルや官能基のレベルで加工できる方法
が提供でき、保護基などを使う必要がなく、操作の繁雑
性が簡素化できる。また、多種類の原子より成る物質表
面の構造を直接加工することが可能になる。
【0122】また物質表面の分子加工方法の発明におい
て、走査型プローブ顕微鏡が原子間力顕微鏡であり、探
針に固定された分子もしくは官能基と物質表面間で発生
する相互作用の結果生じる物理量が原子間力である事に
より、導電性のないサンプルでも容易に物質表面の構造
を直接加工することが可能になる。
【0123】また物質表面の分子加工方法の発明におい
て、走査型プローブ顕微鏡が走査型電気化学顕微鏡であ
り、探針に固定された分子もしくは官能基と物質表面間
で発生する相互作用の結果生じる物理量が電流である事
により、相互作用として力の作用が生じないような電気
化学的変化が生じる場合でも、容易に物質表面の構造を
直接加工することが可能になる。さらに、センサーとな
る分子または官能基がSi−O結合を介して固定されて
いる場合、センサーは共有結合を介して探針に固定され
ることになり、センサー分子が容易に探針から脱離する
ことなく探針の耐久性が向上する。また、センサーとな
る分子が前記探針表面に電析された金属内部に固定され
ている場合、センサー分子が容易に探針から脱離するこ
となく探針の耐久性が向上するとともに、センサー分子
が探針と試料間の電子伝達を妨げることがないため、測
定の感度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の走査型プローブ顕微鏡であ
る原子間力顕微鏡の要部の構成を示す原理図である。
【図2】本発明の一実施例の走査型プローブ顕微鏡であ
る電気化学顕微鏡の要部の構成を示す原理図である。
【図3】本発明の一実施例の走査型プローブ顕微鏡であ
る電気化学顕微鏡の要部の構成を示す原理図である。
【図4】本発明の一実施例の原子間力顕微鏡の探針に分
子や官能基が固定された状態を示す原子間力顕微鏡の部
分模式図である。
【図5】本発明の一実施例の原子間力顕微鏡により、物
質表面の構造を調べる原理を示した模式図である。
【図6】本発明の一実施例のシランカップリング剤によ
って、末端がメチル基の分子が探針に固定される様子を
示した模式図である。
【図7】本発明の一実施例の2種類の官能基の固定され
た基板の作製工程を示した図である。
【図8】本発明の一実施例のラングミュア−ブロジェッ
ト法によるタンパク質の基板上への固定法を示した工程
図である。
【図9】本発明の一実施例の酸化膜の付いたシリコン基
板上に、OTSとTTSが10μm角の格子パターン状
に作製された様子を示した図である。
【図10】本発明の一実施例の酸化膜のフォースカーブ
を測定するときに、Z軸方向を制御するピエゾ素子に印
可する電圧を示した図である。
【図11】本発明の一実施例の典型的なフォースカーブ
を示した図である。
【図12】本発明の一実施例の測定されたフォースカー
ブを示した図である。
【図13】本発明の一実施例の測定されたフォースカー
ブを示した図である。
【図14】本発明の一実施例のY方向を固定した場合の
吸着力のX方向依存性を示した図である。
【符号の説明】
1 AFMの探針 2 探針に固定された分子や官能基 3 物質 4 探針と物質表面間で働く力を検出するセンサー 5 探針を走査させるための圧電体 6 探針を走査させるための圧電体 7 探針と物質表面間の距離を変えるための圧電体 8 物質表面を構成する分子や官能基 9 探針上の分子や官能基と相互作用作用もしくは化学
反応をする分子または官能基 10 探針の走査方向 11 探針の表面のから出ている水酸基 12 トリクロロシランカップリング剤 13 探針に固定されたシランカップリング剤 26 基板 27 レジスト 28 レジストの付いてない部分 29 反応容器 30 反応溶液 31 官能基の固定された部分 32 レジストが除かれた部分 33 反応溶液 34 官能基の固定された部分 35 マイクロシリンジ 36 バリアー 37 タンパク質溶液 38 水溶液 39 容器 40 疎水性の基板 60 測定対象となる試料 61 探針 62 探針の梃部 63 探針の基部 64 光源 65 レンズ 66 光 67 センサー 68 電気信号増幅器 69 Z軸方向制御用サーボ回路 70 圧電体 71 X、Y、Z軸方向のメモリー装置 72 X−Y軸方向走査用回路 73 データ解析装置 74 ディスプレイ 75 Z軸方向制御用回路 76 X、Y、Z軸方向と電気信号増幅器からの信号記
憶装置 77 X−Y軸方向走査用回路 78 データー解析装置 79 ディスプレイ 90 測定対象となる試料 91 セル 92 溶液 93 作用極と成る探針 94 対極 95 参照極 96 ポテンシヨスタット 97 電流増幅器 98 Z軸方向制御用サーボ回路 99 圧電体 100 X、Y、Z軸方向のメモリー装置 101 X−Y軸方向走査用回路 102 データ解析装置 103 ディスプレイ 200 オクタデシルトリクロロシラン(OTS) 201 テトラデシルトリクロロシラン(TTS)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 探針を物質表面に接近もしくは接触させ
    て原子レベルの精度で走査し、前記物質表面と前記探針
    との間で生じる物理量を検出する走査型プローブ顕微鏡
    であって、前記探針にセンサーとなる分子または官能基
    が、Si−O結合を介して固定されているか、または前
    記センサーとなる分子が、前記探針表面に電析された金
    属内部に固定されており、前記物理量が前記探針を前記
    物質表面に接近もしくは接触させて原子レベルの精度で
    走査した場合に、前記センサーとなる分子または官能基
    と前記物質表面が相互作用もしくは化学反応をする時に
    生ずる物理量であることを特徴とする走査型プローブ顕
    微鏡。
  2. 【請求項2】 走査型プローブ顕微鏡が、原子間力顕微
    鏡であり、検出する物理量が原子間力である請求項1に
    記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 【請求項3】 走査型プローブ顕微鏡が、走査型電気化
    学顕微鏡であり、検出する物理量が電流である請求項1
    に記載の走査型プローブ顕微鏡。
  4. 【請求項4】 探針を物質表面に接近もしくは接触させ
    た時に前記物質表面と前記探針との間で生じる物理量を
    検出し、前記探針を前記物質表面から離し、前記探針を
    原子レベルの精度で移動し、前記探針を再び前記物質表
    面に接近もしくは接触させた時に、前記物質表面と前記
    探針との間で生じる物理量を検出する操作を繰り返す走
    査型プローブ顕微鏡であって、前記探針にセンサーとな
    る分子または官能基が、Si−O結合を介して固定され
    ているか、または前記センサーとなる分子が、前記探針
    表面に電析された金属内部に固定されており、前記物理
    量が前記探針を前記物質表面に接近もしくは接触した場
    合に、前記センサーとなる分子または官能基と前記物質
    表面が相互作用もしくは化学反応をする時に生ずる物理
    量であることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
  5. 【請求項5】 走査型プローブ顕微鏡が、原子間力顕微
    鏡であり、検出する物理量が原子間力である請求項4に
    記載の走査型プローブ顕微鏡。
  6. 【請求項6】 特定の分子や官能基と相互作用を及ぼし
    合うかまたは化学反応をする分子または官能基を固定し
    た探針を有する走査型プローブ顕微鏡の探針を、加工し
    たい物質表面に接近させて前記探針にSi−O結合を介
    して固定されるかまたは前記探針表面に電析された金属
    内部に固定された分子、または前記探針にSi−O結合
    を介して固定され官能基と前記物質表面との間で発生す
    る相互作用で生じる物理量を測定しながら原子レベルの
    精度で走査し、前記物質表面の特定部分に前記探針を接
    近もしくは接触させ、前記特定部分で相互作用もしくは
    化学反応を行なわせ、前記物質表面の構造を分子レベル
    または官能基のレベルで加工するか、又は、前記探針を
    加工したい物質表面に接触させて、前記探針に固定され
    た分子または官能基と前記物質表面との間で発生する相
    互作用で生じる物理量を測定しながら原子レベルの精度
    で走査し、前記物質表面の特定部分で相互作用もしくは
    化学反応を行なわせ、前記物質表面の構造を分子レベル
    や官能基のレベルで加工することからなる物質表面の分
    子加工方法。
  7. 【請求項7】 走査型プローブ顕微鏡が原子間力顕微鏡
    であり、探針に固定された分子もしくは官能基と物質表
    面で発生する相互作用で生じる物理量が原子間力である
    請求項6に記載の物質表面の分子加工方法。
  8. 【請求項8】 走査型プローブ顕微鏡が走査型電気化学
    顕微鏡であり、探針に固定された分子もしくは官能基と
    物質表面で発生する相互作用で生じる物理量が電流であ
    る請求項6に記載の物質表面の分子加工方法。
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