JP2650847B2 - 心臓保護活性を有する薬理組成物 - Google Patents

心臓保護活性を有する薬理組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、下記式(I)で表わさ
れる1−[2−ナフチルエチル]−4−(3−トリフル
オロメチルフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロ
ピリジンまたはその薬学的に許容され得る酸との付加塩
を包含する、心臓保護薬として有用な薬理組成物に関す
る。
【0002】
【化4】 上記式(I)において、1−[4−(3−トリフルオロ
メチルフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリ
ジル]エチル基は、ナフタレンの1または2位に結合さ
れ得る。
【0003】本発明の好ましい態様において、この基
は、ナフタレンの2位に結合する。
【0004】
【従来の技術】遊離塩基または付加塩の形態にある式
(I)の化合物、並びにその製造方法および食欲不振誘
発活性については、欧州特許出願EP−A−10138
1に開示がある。式(I)の化合物の薬学的に許容され
得る付加塩として、例えば、塩酸、臭素酸、リン酸およ
び硫酸のような鉱酸、または酢酸、ギ酸、プロピオン
酸、安息香酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、フマル
酸、クエン酸、グリオキシル酸、アスパラギン酸、メタ
ンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸
およびp−トルエンスルホン酸のような有機酸との塩を
挙げることができる。
【0005】より最近となって、式(I)の化合物の他
の治療活性、すなわち抗不安および抗鬱活性(EP−A
−369887)、抗便秘活性(EP−A−41290
1)、神経栄養/神経保護活性(EP−A−45869
6)、並びに抗遊離基活性(EP−A−498718)
が開示された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】さて、式(I)で表わ
される化合物が、全く予期せざることに、非常に価値の
ある心臓保護活性を少ない投与量で発揮することが見い
出された。すなわち、本発明は、心臓保護活性を有する
薬理組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、式
(I)の化合物または薬学的に許容され得るその塩を活
性成分とする薬理組成物が提供される。
【0008】式(I)の化合物の心臓保護活性は、ラッ
トについての心筋壊死試験によって立証された。使用し
たモデルは、G.ロナ(Rona)らによってArc
h.Path.,1959,67,443−455に提
案されたものを改変したものである。それは、高投与量
のイソプレナリン(isoprenaline)をラットに投与する
と、自発心筋梗塞にかかった動物に見られるものと似た
非常に有意の心筋壊死を引き起こす。したがって、イソ
プレナリンによって引き起こされる心筋損傷は、心臓壊
死およびそれを改善または悪化させる要因を研究するた
めの非常に満足できるモデルとなる。
【0009】心臓保護活性 実験例1 式(I)の化合物の心臓保護活性を評価するために使用
したモデルに対し、試験化合物を異なる投与量で一日一
回14日間に渡って経口投与した。初めの投与は、イソ
プレナリン(40mg/kg)の一回の皮下注射の2時
間前であった。対照群の動物は、イソプレナリン(40
mg/kg)を一回皮下注射しただけであった。この期
間経過後、組織学的研究のために、心臓を摘出し、秤量
し、固定した。心筋損傷および組織修復の度合の顕微鏡
評価をグリッド(grid)法によりブラインドで行った。各
細胞タイプ(健康または壊死筋細胞、炎症細胞、線維芽
細胞)の存在およびコラーゲン繊維の存在を百分率で表
わす。対照群と処置群との比較は、これら異なる細胞タ
イプのそれぞれの分布に対して、スチューデントの
「t」を計算することによって行った。かくして、1な
いし10mg/kgに渡る1−[2−(2−ナフチル)
エチル]−4−(3−トリフルオロメチルフェニル)−
1,2,3,6−テトラヒドロピリジン塩酸塩の投与に
より処置された動物において、イソプレナリンにより誘
起された心筋発作(壊死組織、炎症細胞の存在、核濃
縮)の比率は、対照群のそれよりも有意に低く、また修
復に対応するプロセス(線維芽細胞/線維細胞およびコ
ラーゲン繊維の存在)も同様に対照群のそれよりも有意
に低いことが観察された。
【0010】実験例2 イソプレナリンの直ぐの結果に対して心臓保護作用が早
期に効力を示すかどうかをチェックするために、実験例
1に記載した方法により試験を行った。ただし、イソプ
レナリンの注射後4日目、すなわち処置のわずか3日後
に、心臓を組織学的研究に供した。その結果、式(I)
の化合物は、この短い処置試験でも実質的な保護効果を
発揮し、心臓保護活性が処置の3日目で既に有意である
ことが立証された。
【0011】この心臓保護効果は、心臓機能に対する直
接の効果とは関連しない。すなわち、単離したラットの
心臓に1μM の同化合物を灌流させても、鼓動率、心室
圧、dP/dt max、心拍出量のいずれも変化しな
い。
【0012】すなわち、本発明の1つの特徴によれば、
本発明は、上記式(I)の化合物および薬学的に許容さ
れ得るその塩を心臓保護作用を有する薬理組成物の調製
に用いることに関する。この使用の枠内で、かくして調
製された組成物は、心臓病理学的状態の治療のため、ま
たは心臓毒性副作用を有する薬の有害な作用を防止もし
くは治療するための心臓保護作用を発揮する。
【0013】より具体的には、本発明は、心筋梗塞、心
臓虚血、心不全、冠血管痙攣、狭心症、および心臓弁脱
出症の治療を意図された、心臓保護活性を有する薬理組
成物の調製のための式(I)の化合物もしくは薬学的に
許容され得るその塩の使用に関する。さらに、炎症過程
におけるその有益な関与により、式(I)の化合物は、
心臓の病理学的状態例えば心膜炎および心内膜炎の治療
および/または予防のために指示され得る。
【0014】式(I)の化合物は、すでに発作にかかっ
た心臓を保護することを意図された薬の調製、より具体
的には、第2の心臓発作を防止することを意図された薬
の調製にも使用することができる。
【0015】さらに、式(I)の化合物および薬学的に
許容され得るその塩は、抗癌剤例えばドキソルビシンの
ようなアントラサイクリン類や、シスプラチン(cisplat
in)のような白金誘導体の心臓毒性副作用、または塩化
エリプチニウム(elliptiniumchloride)、天然もしくは
合成カテコールアミンおよび過剰のカフェインのような
挿入剤(intercalating agent) の副作用の防止または治
療を意図された薬理組成物の調製に使用できる。
【0016】最後に、式(I)の化合物および薬学的に
許容され得るその塩は、心臓発作の危険を低減するため
に肥満の人を治療する、あるいは経管血管形成または心
臓移植のような心臓手術を受けている患者を治療するこ
とを意図された心臓保護活性を有する薬理組成物の調製
に使用できる。
【0017】すなわち、本発明の他の特徴によれば、本
発明は、上記式(I)の化合物または薬学的に許容され
得るその塩を活性成分として含有する、心臓保護活性を
有する薬理組成物に関する。好ましくは、この組成物
は、投与単位の形態にあり、活性成分は通常の薬学的佐
剤と混合される。
【0018】式(I)の化合物または薬学的に許容され
得るその塩は、経口、非経口、舌下または経皮投与用組
成物に製剤化される。本発明の方法により心臓保護効果
を得るために投与されるべき活性成分の量は、治療すべ
き病訴の性質および程度、および患者の体重に依存し、
心臓毒性薬と併用する場合、心臓毒性薬の投与量にも依
存する。
【0019】本発明の薬理組成物は、不活性薬学的担体
とともに、式(I)の化合物および薬学的に許容され得
るその付加塩から選ばれる少なくとも1種の物質を効果
的な量で含有する。単位投与は、2ないし500mg、
有利には2ないし250mg、好ましくは5ないし15
0mg、例えば5、10、30、50、70、90、1
00、110、130または150mgの活性成分を含
む。これら単位投与は、通常、一日1回ないし数回投与
され、例えば一日2または3回、好ましくは一日1回ま
たは2回投与され、人に対する一日の全投与量は、2な
いし500mg例えば5ないし250mg、好ましくは
10ないし150mgに渡る。
【0020】経口または舌下投与用には、活性成分は、
特に、単純または被覆錠剤、場合に応じて徐放剤を含む
顆粒含有ゼラチンカプセル、ドロップ、あるいはリポソ
ームに製剤化される。凍結乾燥物、滅菌または滅菌可能
な溶液は、静脈内、舌下または筋肉内投与用に調製さ
れ、通常のパッチは、経皮投与用に調製され得る。
【0021】本発明の薬理組成物は、EP−10138
1やレミントンの薬科学18版(マック出版社)に記載
されたような通常の方法により調製できる。活性成分
は、これら薬理組成物に普通に用いられている佐剤例え
ばタルク、アラビアゴム、ラクトース、セルロース、シ
リカ、マンニトール、スターチ、ステアリン酸マグネシ
ウム、水性もしくは非水性担体、動物性もしくは植物性
脂肪物質、パラフィン誘導体、グリコール類、種々の湿
潤剤、分散剤もしくは乳化剤、保存剤等中に含入され
る。
【0022】本発明の薬理組成物において、式(I)の
活性成分は、シクロデキストリンまたはそのエーテルも
しくはエステルとの包接錯体の形態にあってもよい。
【0023】式(I)の化合物または薬学的に許容され
得るその塩を心臓病理学的状態の治療のための心臓保護
剤として使用する場合、それらが存在する薬理組成物
は、これら病理学的状態の治療に普通に用いられている
1またはそれ以上の他の既知の薬を有利に含むことがで
きる。これらの他の薬として、カプトプリル(captopri
l) 、エナラプリル(enalapril) 、フォシノプリル(fosi
nopril)、キナプリル(quinapril) およびラミプリル(ra
mipril)のようなアンギオテンシン転化酵素阻害剤、ジ
ルチアゼム(diltiazem) 、ベラパミル(verapamil) 、ニ
フェジピン(nifedipine)、ニカルジピン(nicardipine)
およびアムロジピン(amlodipine)のようなカルシウム拮
抗剤、ニコランジル(nicorandil)、トリニトリン(trini
trin) およびイソソルバイド(isosorbide)モノナイトレ
ートもしくはジナイトレートのような血管拡張薬、プロ
プラノロール(propranolol) 、ソタロール(sotalol) 、
メトプロロール(metoprolol)およびナドロール(nadolo
l) のようなβ遮断薬、ジギトキシン(digitoxin) 、ジ
ゴキシン(digoxin) およびメチルジゴキシン(metildigo
xin)のような心臓グルコシド、およびトロンボキサンA
2 受容体拮抗剤を挙げることができる。
【0024】他の特徴によれば、本発明は、治療的また
は予防的効果投与量の式(I)の化合物または薬学的に
許容され得るその塩を哺乳動物に投与することを包含す
る、哺乳動物に心臓保護を誘起する方法に関する。
【0025】式(I)の化合物を心臓が病理学的状態の
結果として危険にあるような病理学的状態にある場合の
心臓保護剤として用いる場合、当化合物は、該状態また
はこの状態が有害な作用をもって再発する危険性によっ
て決定される期間に渡って投与される。
【0026】式(I)の化合物を心臓毒性副作用を持つ
薬による治療において用いる場合は、式(I)の化合物
の投与期間は、該薬の投与期間に依存する。
【0027】式(I)の化合物または薬学的に許容され
得るその塩を心臓毒性薬による治療の場合の心臓保護剤
として用いる場合は、本化合物は心臓毒性薬と別に製剤
化し、心臓毒性薬の前または同時に投与することができ
るし、あるいは心臓毒性薬の後でも必要に応じて投与で
きる。
【0028】いずれの場合でも、所望により、式(I)
の化合物および心臓毒性薬は同じ薬理組成物に製剤化す
ることができる。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例を記載するが、本発明
はそれらに限定されるものではない。以下の実施例は、
塩酸塩の形態にある1−[2−(2−ナフチル)エチ
ル]−4−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1,
2,3,6−テトラヒドロピリジン(以下、簡便のため
にこれを化合物Aと称する)を活性成分として含有する
薬理組成物を記述するものである。
【0030】実施例1 以下の単位組成を有するゼラチンおよび二酸化チタンカ
プセルを調製した。
【0031】 化合物A塩酸塩 54.8 mg 変性コーンスターチ 104.72mg 微結晶セルロース 15.00mg 無水コロイドシリカ 0.16mg ステアリン酸マグネシウム 0.32mg。
【0032】実施例2 以下の単位組成を有するゼラチンおよび二酸化チタンカ
プセルを調製した。
【0033】 化合物A塩酸塩 5.48mg 変性コーンスターチ 142.92mg 微結晶セルロース 26.00mg ステアリン酸マグネシウム 0.40mg。
【0034】実施例3 以下の組成を有する凍結乾燥物を調製した。
【0035】 化合物A塩酸塩 13.2 mg クエン酸 240.00mg ツイーン(Tween、商品名)80 301.50mg マンニトール 1.2001g 1N NaOH 685.00mg 注射用製剤とするための水を加えて 30.00g 調製方法 注射用製剤とするための水にクエン酸を溶かし、化合物
A塩酸塩を加える。24時間後、他の成分を加え、常法
により凍結乾燥を行う。
【0036】実施例4 以下の組成を有する凍結乾燥物を調製した。
【0037】 化合物A塩酸塩 33.20mg ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン 751.20mg クエン酸 2.10mg マンニトール 1509.10mg 注射用製剤とするための水を加えて 30.00g。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−312528(JP,A) 特開 平4−226917(JP,A) EUROPEAN JOURNAL OF PHARMACOLOGY,VO L.210,NO.1(1992),PP.85 −90 MEDICAL CLINICS O F NORTH AMERICA,VO L.72,NO.1(1988),PP.243 −258

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化1に示される式(I)で表わされ
    る化合物または薬学的に許容され得るその塩を活性成分
    として含有する心筋損傷および組織修復薬剤。 【化1】
  2. 【請求項2】 下記化2に示される式(I)で表わされ
    る化合物または薬学的に許容され得るその塩を活性成分
    として含有することを特徴とする、心臓保護活性を必要
    とする疾病を治療するための薬剤。 【化2】
  3. 【請求項3】 下記化3に示される式(I)で表わされ
    る化合物または薬学的に許容され得るその塩を活性成分
    として含有することを特徴とする、心筋梗塞、心臓虚
    血、心不全、冠血管痙攣、狭心症、心臓弁脱出症、心膜
    炎または心内膜炎を治療するための薬剤。 【化3】
  4. 【請求項4】 活性成分が、1−[2−(2−ナフチ
    ル)エチル]−4−(3−トリフルオロメチルフェニ
    ル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリジンまたは薬
    学的に許容され得るその塩である請求項1ないし3のい
    ずれか1項記載の薬剤。
  5. 【請求項5】 活性成分が1−[2−(2−ナフチル)
    エチル]−4−(3−トリフルオロメチルフェニル)−
    1,2,3,6−テトラヒドロピリジン塩酸塩である請
    求項4記載の薬剤。
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