JP2649200B2 - ゴム組成物 - Google Patents

ゴム組成物

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JP2649200B2
JP2649200B2 JP4084649A JP8464992A JP2649200B2 JP 2649200 B2 JP2649200 B2 JP 2649200B2 JP 4084649 A JP4084649 A JP 4084649A JP 8464992 A JP8464992 A JP 8464992A JP 2649200 B2 JP2649200 B2 JP 2649200B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、タイヤカーカス用とし
てプライルース現象を効果的に軽減することができる新
規特性のゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ゴム補強材として用いられるファーネス
カーボンブラックには特性に応じた多様の品種があり、
主に平均粒子径、比表面積、ストラクチャー等の粒子特
性に基づいて分類される。また、これらの品種特性は配
合対象となるゴム成分の諸性能を決定づける重要な要因
となることから、ゴムの用途目的に最も適合する品種の
カーボンブラックを選定して使用に供されている。例え
ば、タイヤカーカス部位はタイヤの受ける荷重、衝撃お
よび充填空気圧などに耐えなければならないために高い
抗張積が要求されるが、このような用途に対しては比較
的粒子径が小さく、ストラクチャーの低いN219(ISAF-L
s)やN326(HAF-Ls) などのハード系品種が選択的に使用
されている。
【0003】近年、トラックやバス用の大型タイヤにも
高速耐久性が強く要求されるようになり、タイヤ構造も
ラジアル化が進んでカーカスコードにはポリエステル、
スチールなど高弾性率の線材が複雑に充填されている。
このため、走行時におけるコード周の伸縮や接地時にお
けるコード方向の剪断歪が大きくなって、カーカスプラ
イのゴム部分に亀裂破壊として現出する所謂「プライル
ース現象」が発生し易くなっている。
【0004】一般に、プライルース現象の軽減を図るた
めには、走行時に発熱によるゴムの熱老化を防ぎ、同時
に走行時の繰り返し歪による疲労劣化を低減化すること
が有効とされている。ゴム組成物に対する低発熱性の付
与は、粒子径が大きく、比表面積の小さいソフト系領域
のカーボンブラック品種を配合することが有効とされて
いるが、この種のカーボンブラックは補強性能が不十分
で破断強度が弱いため、カーカスコードとゴム成分との
接合界面に剥離現象が発生して耐久性が維持できなくな
る。
【0005】このような物性上の背反的な課題を解決す
る手段として、粒子径、比表面積、ストラクチャーなど
の基本特性以外のカーボンブラック性状をミクロに評価
し、目的ゴム性能を全てカバーするような特性範囲のカ
ーボンブラックを選択してゴム成分に配合する技術が有
用されている。例えば前記のプライルース現象を軽減す
る高度の補強性能および伸びと低発熱性とを同時に配合
ゴム組成物に付与するためのタイヤカーカス用ファーネ
スブラックとして、窒素吸着比表面積(N2SA)が60m2/g以
上、DBP吸油量が60〜90ml/100g のハード系領域に属
し、真比重値が{(1.8379 −0.0006×(N2SA)}式により
算出される値以下であり、かつ凝集体のストークスモー
ド径Dstが{0.286 ×(DBP) −0.621 ×(N2SA)+114.4
}式から算出される値以下の選択的特性のものが本出
願人によって開発されている(特公平1−54376 号公
報) 。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近時の
タイヤ使用状態はますます苛酷化しており、タイヤカー
カス用のゴム組成物に対しても一層高水準の破断強度と
伸び率を保持しながら低発熱性を付与する性能特性が求
められている。
【0007】本発明者は、このような状況下で引き続き
前記課題を解決するための研究を重ねた結果、上記の先
行技術と同等のハード系領域に属するファーネスカーボ
ンブラックにおいて、水銀圧入法によるカーボンブラッ
ク粒子空隙直径がこれまで知られているカーボンブラッ
クに比べて小さな特性のものを選択配合したゴム組成物
は、タイヤカーカス用ゴム組成物としての要求性能に対
し優れた改善効果を与える事実を解明して本発明を開発
するに至ったものである。
【0008】したがって本発明の目的は、苛酷な走行条
件におけるプライルース現象を軽減し得る高度の補強性
能ならびに伸び率を有し同時に優れた低発熱性を兼備す
るタイヤカーカス用に好適なゴム組成物を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明によるゴム組成物は、窒素吸着比表面積(N2S
A)が60m2/g以上、DBP吸油量(DBP) が50〜90ml/100g
のハード系領域に属し、かつ下記の選択的特性を備える
ファーネスカーボンブラックをゴム成分 100重量部に対
し35〜100 重量部の割合で配合してなることを構成上の
特徴とする。 空隙直径(Dmp) ≦−0.1892×(N2SA)+43.3524 但し、空隙直径(Dmp) は、水銀圧入法により圧力25〜30
000psiの範囲で測定されるカーボンブラック粒間空隙容
積の最大頻度を示す圧力からの算出値とする。
【0010】上記構成によるカーボンブラックの各特性
は、以下の測定方法によって得られる値が用いられる。 窒素吸着比表面積(N2SA);ASTM D3037−88 “St
andard Test Method for Carbon Black-SurfaceArea by
Nitrogen Absorption ”MethodBによる。この方法に
よるIRB#6の測定値は、76m2/gである。 DBP吸油量(DBP) ;JIS K6221(1982)「ゴム用カ
ーボンブラックの試験方法」6 ・1 ・2 項、吸油量A法
による。この方法によるIRB#6の測定値は、99.0ml/1
00g である。
【0011】空隙直径(Dmp) ;造粒されたカーボンブラ
ック試料を粒径 250〜500 μm の範囲に篩分級し、JI
S K6221(1982)5「乾燥試料の作り方」に従って乾燥
したのち、精秤する。このカーボンブラック試料を粉体
測定用専用セルに装填し、水銀圧入式粒間空隙測定装置
(マイクロメリテクス社製,Poresizer9300型)により25
〜30000psiの範囲で圧力を変化させて水銀圧入量を測定
する。この測定データから下記 (1)式により空隙容積(V
mp: 単位ml/g) を算出する。 (1)式において、Aは圧力25psi 時における装置の指示
値、Bは各圧力における装置の指示値を指し、セル定数
はセル固有の補正係数でセル購入時の各セルに示される
定数である。 (1)式で求められる各圧力での空隙容積
は、圧力25psi を基準とした累積容積である。この空隙
容積(Vmp) の値と下記 (2)式により与えられる各圧力で
の空隙直径との関係をグラフ化すると空隙の最大頻度を
示す部分の変曲点が表れる。この変曲点における空隙直
径値(単位:nm) を空隙直径(Vmp) とする。 なお、 (2)式における数値 180は水銀を圧入する場合に
与えられる物理定数である。
【0012】本発明で特定したファーネスカーボンブラ
ックの特性項目のうち、窒素吸着比表面積(N2SA)が60m2
/g以上の粒子径範囲およびDBP吸油量50〜90ml/100g
のストラクチャー範囲は通常品種のハード系領域に属
し、配合ゴムに高度の補強性能を付与するとともに適度
の低発熱性を保持させるための前提要件となる。この窒
素吸着比表面積(N2SA)が60m2/g未満では強度特性の低下
が著しく、また、DBP吸油量が50ml/100g 以下では、
カーボンブラックの分散が困難となり十分な補強効果が
認められず、90ml/100g 以上では特に伸び特性の低下が
著しくなる。
【0013】本発明において設定した空隙直径(Dmp) に
関する選択的特性は、カーボンブラックが強固に融着結
合したストラクチャー性状を示す指標となるもので、一
定比表面積当たりにおけるカーボンブラックの粒間空隙
が相対的に小さいことに特徴付けられる。そして、空隙
直径(Dmp) ≦−0.1892×(N2SA)+43.3524 の要件を満た
す場合に配合ゴムに高水準の強度特性と改善された低発
熱性を付与することが可能となる。
【0014】これらの特性を備えるファーネスカーボン
ブラックは、炉頭部に接線方向の空気供給口と炉軸方向
に挿着された燃焼バーナーを有する燃焼室と、これに同
軸的に連設された原料油噴射ノズルを備える二段の狭径
反応ゾーンおよび広径反応ゾーンからなる構造のオイル
ファーネス炉を用い、燃料油供給量、空気供給量、酸素
ガス添加量、各狭径反応ゾーンに対する原料油供給量等
の生成条件を制御するとによって製造することができ
る。
【0015】上記のファーネスカーボンブラックは、常
法に従って天然ゴムまたは各種の合成ゴム成分と配合す
る。カーボンブラックの配合比率は、ゴム成分 100重量
部に対し35〜100 重量部とし、加硫剤、加硫促進剤、老
化防止剤、加硫助剤、可塑剤等の必要成分とともに混練
して本発明にゴム組成物を得る。
【0016】
【作用】アグリゲート粒間の空隙容積(Vmp) に基づいて
求められる空隙直径(Dmp) は、上述したようにカーボン
ブラックが強固に融着結合した凝集性状を示すパラメー
ターであって、その性状変動はカーボンブラック生成過
程における反応温度や燃焼ガスの撹乱度合などと密接に
関係している。特にカーボンブラックの特性としては比
表面積との相関性が高い。本発明のファーネスカーボン
ブラックは、粒間空隙直径が比表面積値に対して相対的
に小さい性状を保有しているが、この空隙直径(Dmp) が
〔−0.1892×(N2SA)+43.3524 〕値と同等以下の要件を
満たす場合に配合ゴム組成物に対して優れた補強性能な
らびに低発熱性を付与するために効果的に作用する。こ
の関係は本発明者が研究の過程で実験的に求めたもの
で、本式で求められたASTM D-24 Standard Refere
nce Black C-3(N234) の空隙直径(Dmp) は32nmである。
【0017】前記の作用が前提となる窒素吸着比表面積
およびDBP吸油量によるゴム性能の調整化作用と相俟
って、タイヤカーカスとした場合のプライルース現象を
効果的に軽減し、苛酷な走行条件下での安定性と耐久性
を著しく高めるために寄与する。
【0018】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。
【0019】(1) カーボンブラックの製造 実施例1〜3 炉頭部に接線方向空気供給口と炉軸方向に装着された燃
焼バーナーを有する燃焼室(直径800mm 、長さ900mm)、
前記燃焼室と同軸的に連結してそれぞれに原料油噴射ノ
ズルを備える第一狭径反応ゾーン(直径160mm 、長さ50
0mm)と第二狭径反応ゾーン(直径250mm 、長さ500mm)、
引き続き連設された広径反応ゾーン(直径400mm)とから
構成されたオイルファーネス炉を設置した。この発生炉
を用い、燃料油、空気供給量および酸素ガス添加量など
の燃焼条件、第一狭径反応ゾーンおよび第二狭径反応ゾ
ーンに対する原料油供給条件を表1のように設定して本
発明の特性要件を満たす3種類のファーネスカーボンブ
ラックを製造した。原料油としては、比重(15/4 ℃)1.0
73、粘度(エングラー40/20 ℃)2.10 、トルエン不溶分
0.03%、相関係数(BMCI)140 の芳香族炭化水素油を、ま
た燃料油には、比重(15/4 ℃)0.903、粘度(Cst/50 ℃)1
6.1 、残炭分 5.4%、引火点96℃の炭化水素油を用い
た。
【0020】
【表1】
【0021】得られたファーネスカーボンブラックの各
種特性を、実施例No. に対応させて表3に示した。
【0022】比較例1〜3 炉頭部に接線方向空気供給口と炉軸方向に装着した燃焼
バーナーおよび原料油噴射ノズルを有する燃焼室(直径
800mm 、長さ900mm)を設置し、該燃焼室と同軸的に連結
する狭径反応ゾーン(直径160mm 、長さ1000mm) および
引き続く広径反応ゾーン (直径400mm)とから構成された
オイルファーネス炉を用い、表2の発生条件により3種
類のファーネスカーボンブラックを製造した。原料油お
よび燃料油は実施例と同一のものを用いた。
【0023】
【表2】
【0024】表2の条件で得られたファーネスカーボン
ブラックの特性を表3に併載した。なお、表3に示した
比較例4および5は市販されているファーネスカーボン
ブラックの特性である(比較例4:東海カーボン(株)
製、シースト300 、比較例5:東海カーボン(株)製、
シースト600 )。
【0025】
【表3】
【0026】(2) ゴム配合試験 つぎに、実施例および比較例の各カーボンブラックを表
4に示す配合比により天然ゴムに配合した。
【0027】
【表4】
【0028】表4の配合物を 145℃の温度で40分間加硫
して得られた各ゴム組成物につき各種ゴム特性を測定
し、結果を表5に示した。なお、ゴム特性の測定は下記
によった。 tanδ(損失係数);岩本製作所製のVisco Elastic
Spectrometerを用い、次の条件で測定した。 試験片:厚さ2mm、長さ30mm、幅5mm 周波数:50Hz 動的歪率:1.0 % その他の特性 ;JIS K6301「一般ゴム試験法」に従
って測定した。
【0029】
【表5】
【0030】表5から、実施例の結果は同比表面積レベ
ルにありながら本発明の選択的特性要件を外れる比較例
に比べ、引張り強さ、伸びおよび低発熱性の指標となる
tanδ(損失係数)の全てが有意に改善向上している
ことが認められる。
【0031】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば配合する
ファーネスカーボンブラックの特性を規制することによ
りタイヤカーカス用として好適な高度の強度性能と低発
熱性とを同時に兼備するゴム組成物を提供することが可
能となる。したがって、苛酷な走行条件下においてもプ
ライルース現象が効果的に軽減され、安全性および耐久
性が向上する。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒素吸着比表面積(N2SA)が60m2/g以上、
    DBP吸油量(DBP)が50〜90ml/100g のハード系領域に
    属し、かつ下記の選択的特性を備えるファーネスカーボ
    ンブラックをゴム成分 100重量部に対し35〜100 重量部
    の割合で配合してなることを特徴とするゴム組成物。 空隙直径(Dmp) ≦−0.1892×(N2SA)+43.3524 但し、空隙直径(Dmp) は、水銀圧入法により圧力25〜30
    000psiの範囲で測定されるカーボンブラック粒子空隙容
    積の最大頻度を示す圧力からの算出値とする。
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