JP2640461B2 - 医療用ガイドワイヤ及び医療用カテーテル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、形状記憶合金からなる医療用ガイドワイヤ
及び医療用カテーテルに関する。

〈従来の技術〉 TiNi合金を主成分とする数種の合金は、熱弾性型マル
テンサイト変態の逆変態に付随して顕著な形状記憶効果
を示し、また、同時に超弾性特性も示している。

Ni濃度が50.3原子パーセント（以下at％と略す）を越
えるTiNi合金が温度変化に対し自発的な形状変化を可逆
的に示すことは特開昭58-151445号公報によって明らか
にされている。また、前記Ni濃度範囲のTiNi合金が熱処
理条件によって変態温度を任意に変えることができるこ
とも知られている。形状記憶合金をばねとして使用する
場合、コイルばね、線いづれについても均一な熱処理に
よってただ１種の変態点を有する単機能を示すものが使
われていた。たとえば、感温駆動素子として形状記憶ば
ねを用いる場合、従来は単機能のため、スナップアクシ
ョン、あるいは段階的な仕事をさせる目的には使用され
ていない。また、衣料品などに応用する場合でも、例え
ばブラジャーなどにおいて線で人体への密着感を増す目
的に使用する場合、部分的にしなやかさを変えることに
よりさらに密着させることが望ましいが、従来の単機能
線では実現できない。

〈発明が解決しようとする問題点〉 近年、医療用のカテーテルや医療用のガイドワイヤな
どに、形状記憶合金線は、その疑弾性効果によるしなや
かさのため使用されているが、一本の連続した線でも、
部分的に異なるしなやかさ強さが要求されている。

たとえばガイドワイヤに応用する場合、第５図に示す
ように先端部Ｌの領域は直接血管内に挿入されるため、
体温近くで疑弾性効果を示すものの中でもきわめてやわ
らかでしなやかである方が望ましい。

また中間部Ｍは、先端部Ｌに比べてあまりやわらかす
ぎると曲がってしまうのである程度の固さを必要とす
る。さらに一番人体外に近い端末部Ｎは挿入する部分に
あたるため中間部Ｍより、さらに固さが要求される。し
かし、従来の形状記憶合金線では均一な熱処理による１
つの変態温度を有しているため、部分的にしなやかさを
変えることは困難であり、異なる変態温度を有する線を
接合などが行なわれるが、ガイドワイヤの場合、直径が
約0.3mmと非常に細いため極めて接合がむずかしく、接
合部分において径が太くなったり、また血管内に挿入中
途中で切れ、人命にかかわる欠点があった。

このような医療用のガイドワイヤが入る管状の医療用
カテーテルにも同様の欠点がある。

本発明の目的は、上述の欠点を除去した医療用ガイド
ワイヤを提供することにある。

本発明のもう一つの目的は、上述の欠点を除去した医
療用カテーテルを提供することにある。

〈問題点を解決するための手段〉 本発明によれば、同一組成よりなるつぎ目のない一本
の形状記憶合金線上に部分的に互に異なる２種以上の変
態温度を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤが
得られる。

更に本発明によれば、前記形状記憶合金線はNiの濃度
が50.3原子パーセント以上のTiNiを主成分とする合金か
らなることを特徴とする医療用ガイドワイヤが得られ
る。

また本発明によれば、同一組成よりなるつぎ目のない
一本の形状記憶合金管上に部分的に互に異なる２種以上
の変態温度を有することを特徴とする医療用カテーテル
が得られる。

更に本発明によれば、前記形状記憶合金管はNiの濃度
が50.3原子パーセント以上のTiNiを主成分とする合金か
らなることを特徴とする医療用カテーテルが得られる。

〈実施例〉 次に本発明の実施例について図面を参照して説明す
る。

本発明は、Niの濃度が50.3at％以上のTiNiを主成分と
する同一組成の形状記憶合金の医療用ガイドワイヤ用の
線又は医療用カテーテル用の管の複数箇所を部分的に温
度または処理時間が異なる複数種の処理条件の炉内にて
熱処理することにより、複数の変態点を備えた形状記憶
合金の線又は管を用いて形成した医療用ガイドワイヤ又
は医療用カテーテルである。

本発明の医療用ガイドワイヤ（又は医療用カテーテ
ル）の製造方法の実施例は第１図に示すように記憶合金
材よりなるつぎ目のない線材（又は管材）１を炉壁２の
一部に開けられた孔３より部分的に炉４内に挿入し、一
定条件で熱処理し、また線材（又は管材）１の他の部分
を炉４内に挿入し先の条件と異なる別条件で熱処理を行
って異なる変態温度を有する医療用ガイドワイヤ用形状
記憶合金線（又は医療用カテーテル用形状記憶合金管）
が得られる。

また他の実施例は第２図に示すように記憶合金材より
なる一本のつぎ目のない線材（又は管材）１を変態温度
が互に異なる部分が得られるようそれぞれ寸法の異るア
スベスト、レンガなどの断熱材６で部分的に覆い同一の
温度の炉に入れて一定条件で熱処理する。その結果断熱
材６の厚さなどの寸法の差によって部分的に異る複数の
変態温度を有する医療用ガイドワイヤ用形状記憶合金線
（又は医療用カテーテル用形状記憶合金管）が得られ
る。

さらに他の実施例は第３図に示すように一定温度の条
件で加熱された炉４内の一方より他方に記憶合金材より
なる線材（又は管材）１を移行させ、この移行速度を部
分的に変えることによって、部分的に異る複数の変態温
度を有する医療用ガイドワイヤ用形状記憶合金線（又は
医療用カテーテル用形状記憶合金管）が得られる。

これら実施例によって得られた２種以上の変態温度を
有する医療用ガイドワイヤ用形状記憶合金線（又は医療
用カテーテル用形状記憶合金管）の具体例について述べ
る。

具体例として、伸線加工されたTi-51at％の直径1.0mm
のNi合金の線又は管をランキング炉を用いて、400℃で
５分間の熱処理ができるスピードで処理した。その後約
2mの定尺材とし、1m部分をバッチ炉を用いて400℃で20
分間の熱処理を行ない、更に先端部50mmを400℃で５時
間の熱処理を行った。

得られた試料の各ステージ中心部の25℃に於ける応力
−ひずみ曲線を第４図に示す。図において、（Ａ）
（Ｂ）（Ｃ）はそれぞれ400℃で５分間、400℃で20分
間、400℃で５時間の熱処理を行った試料の応力−ひず
み曲線図である。これらはいづれも超弾性特性を示す。
しかし（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）とひずみが進むにつれ応力の
低下が認められる。すなわち剛性、しなやかさが異な
る。このようにしなやかさが異なる超弾性線は先端の柔
軟性、基部の剛性が必要とされるガイドワイヤやカテー
テルなどへの応用が期待される。

〈発明の効果〉 以上に述べたように本発明によればつぎ目のない一本
の形状記憶合金線や管を部分的に熱処理の条件を変化さ
せることによって複数個の変態点を持たせた医療用ガイ
ドワイヤや医療用カテーテルを得ることができ複数個の
異なった温度においてそれぞれ異なった動作をさせるこ
とができる。

なお、本発明による合金は、TiNi合金、特にNiが50.5
〜51.0at％のTiNi合金が最も好ましいが、TiNi合金に第
３元素Ｘを添加したTiNiX合金、および熱処理によって
変態温度が調整可能な他の形状記憶合金についても同様
の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の医療用ガイドワイヤや医療用カテーテ
ルの製造方法を説明するための断面図、第２図は本発明
の医療用ガイドワイヤや医療用カテーテルの他の製造方
法を説明するための断面図、第３図は本発明の医療用ガ
イドワイヤや医療用カテーテルのさらに他の製造方法を
説明するための断面図、第４図は本発明の具体例におけ
るひずみの大きさに対する応力との関係を示す曲線図
で、（Ａ）は熱処理時間５分、（Ｂ）は熱処理時間20
分、（Ｃ）は熱処理時間５時間に対する曲線図、第５図
は医療の分野で使用されているガイドワイヤー示す略図
である。 なお、1:線材（又は管材）、2:炉壁、3:孔、4:炉、6:断
熱材。

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】同一組成よりなるつぎ目のない一本の形状
   記憶合金線上に部分的に互に異なる２種以上の変態温度
   を有することを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
2. 【請求項２】前記形状記憶合金線はNiの濃度が50.3原子
   パーセント以上のTiNiを主成分とする合金からなること
   を特徴とする特許請求の範囲第１項記載の医療用ガイド
   ワイヤ。
3. 【請求項３】同一組成よりなるつぎ目のない一本の形状
   記憶合金管上に部分的に互に異なる２種以上の変態温度
   を有することを特徴とする医療用カテーテル。
4. 【請求項４】前記形状記憶合金管はNiの濃度が50.3原子
   パーセント以上のTiNiを主成分とする合金からなること
   を特徴とする特許請求の範囲第３項記載の医療用カテー
   テル。