JP2633656B2 - ダイヤモンド被膜の製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド被膜の製造方法

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JP2633656B2 JP28464288A JP28464288A JP2633656B2 JP 2633656 B2 JP2633656 B2 JP 2633656B2 JP 28464288 A JP28464288 A JP 28464288A JP 28464288 A JP28464288 A JP 28464288A JP 2633656 B2 JP2633656 B2 JP 2633656B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、気相合成法により基体表面にダイヤモンド
被膜を形成する方法に係わり、特に、バイト、エンドミ
ル、カッター、ドリル等の切削工具の超硬合金上への被
膜形成に好適なダイヤモンド被膜の製造方法に関する。
[従来の技術] 気相合成法によるダイヤモンド被膜の製造技術として
つぎのものがある。
(あ)炭化水素含有ガスと水素ガスとを混合してなる混
合ガスを、熱電子放射材や高周波誘導、誘電加熱による
電子ビーム放射などにより、流動する高熱活性化ガス流
とし、該ガス流中に基体を晒して該基体上にダイヤモン
ド被膜を成膜する(特開昭58−189423号公報、特開昭58
−110494号公報、特開昭58−135117号公報)。
(い)前記基体表面に傷をつける(特開昭60−86096号
公報)。
(う)前記基体にエッチング処理を施す(特開昭61−52
363号公報、特開昭60−204695号公報) (え)前記基体は硬質粒子の入った溶液中に超音波を入
射させて処理される(特開昭62−226889号公報)。
[発明が解決しようとする課題] しかるに、上記従来の技術は、つぎの欠点を有する。
(あ)は、ダイヤモンド被膜と基体との界面の接合強
度が低い。
(い)は、析出速度は早いが接合強度は改善されな
い。
(う)は、反応初期における析出速度や被膜の組織の
荒さは改善されるが界面の接合強度は低い。
(え)は、界面の接合強度がある程度改善されている
が切削工具に使用できる程、耐久性は優れていない。
本発明は、切削工具の刃先として十分使用に耐える、
ダイヤモンド被膜と基体との界面の接合強度に優れるダ
イヤモンド被膜の製造方法の提供にある。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成するため、本発明はつぎの構成を採用
した。
ダイヤモンド被膜の製造方法は、炭素源ガスを含み、
熱電子放射材、高周波放電またはマイクロ波プラズマ放
電などによって活性化された原料ガス流中に基体を晒し
て該基体上にダイヤモンド被膜を成膜する化学気相析出
法によるダイヤモンド被膜の製造方法において、前記基
体上にダイヤモンド被膜を成膜の後、(ア)圧力が1メ
ガパスカル以上150メガパスカル以下の不活性ガス雰囲
気中で、かつ、(イ)その雰囲気温度が1000℃以上1300
℃以下で、かつ、(ウ)その雰囲気中で0.5時間以上2
時間以下保持し、このHIP処理により前記ダイヤモンド
被膜と基体との界面の接合強度を高めたことを特徴とす
る。
ダイヤモンド被膜の製造方法は、前記の構成を有
し、かつ、前記基体上にダイヤモンド被膜を成膜の後、
前記HIP処理を施すのに先立って、さらにダイヤモンド
被膜上に気密性コーティング膜を形成させることを特徴
とする。
[発明の作用および効果] 本発明の方法は、つぎの作用および効果を奏する。
<請求項1について> 炭素源ガスを含み、熱電子放射材、高周波放電または
マイクロ波プラズマ放電などによって活性化された原料
ガス流中に基体を晒して該基体上にダイヤモンド被膜を
成膜する化学気相析出法により、基体上に数μm程度の
ダイヤモンド被膜を成膜の後(ア)圧力が1メガパスカ
ル以上150メガパスカル以下の不活性ガス雰囲気中で、
かつ、(イ)その雰囲気温度が1000℃以上1300℃以下
で、かつ、(ウ)その雰囲気中で0.5時間以上2時間以
下保持するHIP処理を行っている。このため、ダイヤモ
ンド被膜と基体との界面の接合強度が増加する。
炭素源ガスとしては、例えば、エタン、アセチレンな
どの各種炭化水素、アセトンなどのケトン類、エタノー
ルなどのアルコール類、炭酸ガス、一酸化炭素などを使
用することができる。最適なものはメタン、アセトン、
一酸化炭素である。そして、これらの炭素源ガスと水素
ガスとの併用が好ましい。この併用により非ダイヤモン
ド成分の析出を抑制し、ダイヤモンドが析出しやすくな
る。
なお、原料ガスにはアルゴン等の不活性ガスを混入さ
せても支障ない。
HIP処理の不活性ガスとしてはアルゴン、窒素ガス等
が使用できる。
ここで数値限定の理由は、つぎのとおりである。圧
力、温度、保持時間のいずれかひとつでも、提示した下
限に満たないと、ダイヤモンド被膜と基体との界面の接
合強度に劣り、上限を越えると作用の向上を期待できな
くなるばかりか、高すぎる温度、あるいは長すぎる保持
時間のときは、ダイヤモンド被膜が黒鉛へ転換する恐れ
がある。
<請求項2について> 基体上にダイヤモンド被膜を成膜の後、HIP処理を施
すのに先立って、さらにダイヤモンド被膜上に気密性コ
ーティング膜を形成させている。このため、ダイヤモン
ド粒子間またはダイヤモンド粒子と基体との間に、不活
性ガスが侵入するのを防ぐことができ、界面の接合強度
の劣化が生じ難いので、請求項1よりさらに接合強度が
高まる。
[実施例] 本発明の方法を一実施例により具体的に説明する。
第1図はマイクロ波使用のプラズマ放電による化学気
相ダイヤモンド被膜製造装置を示す。この装置Aは、メ
タンガス(流量0.5sccm)と水素ガス(流量99.5sccm)
とを混合してなる混合ガス11が導入される反応容器1
と、該反応容器1内にチップ2を配置するための設置台
12と、該設置台12付近の混合ガス11を活性化させるため
のプラズマ放電発生装置3とを備えている。
反応容器1は円筒を立てた形状を有し、天板13の中央
には混合ガス導入口14が設けられ、側壁15の下部には混
合ガス11の排出口16が設けられている。設置台12は前記
反応容器1内の中央に配された台板19と、その下面中心
を支え、前記底板17を貫通して設けられた支柱とからな
り、この設置台12の台板19上にチップ2が載置される。
チップ2は、超硬合金(JIS K10、SPGN221)である。
また、チップ2の温度はCVD作動時には900℃に保持され
ている。
プラズマ放電発生装置3は、反応容器1の中央外周部
に設けられ、発振周波数に共振している導波管31と、そ
の一端に取付けられたマグネトロン32とからなり、導波
管31の他端にはマグネトロン32と対向して、定在波の調
整用のプランジャ33が取付けられている。このマグネト
ロン32は周波数2.45GHz、出力500Wで作動する。
つぎに、この化学気相ダイヤモンド被膜製造装置Aを
使用して行う、ダイヤモンド被膜の製造方法について述
べる。
(カ)チップ2を台板19上に設置する。
(キ)反応容器1内への混合ガス11の流量をメタンガス
0.5sccmと水素ガス99.5sccmに設定し、天板13に設けた
混合ガス導入口14から混合ガスを流入し、一方側壁15の
下部にある混合ガス11の排出口16から排気して、反応容
器1内の圧力を50Torrに保持する。
(ク)プラズマ放電発生装置3を作動させ、前記混合ガ
ス11を流動する活性化ガス流とする。ここで、前記プラ
ンジャ33を調整して、チップ2の周囲にマイクロ波によ
るプラズマ放電を発生させるとともにチップ2の温度を
900℃に保持する。
(ケ)この状態を6時間保持して、前記チップ2上に5
μm程度のダイヤモンド被膜を成膜させる。このチップ
2にラマン分光分析を行いダイヤモンド被膜が成膜して
いることを確認する(ラマン散乱スペクトル中の1333cm
-1付近のピークによる)。
(コ)このダイヤモンド被膜上に気密性コーティング膜
を形成させるために、装置Aからチップ2を取りだし、
表1の方法で気密シールを行う。
(サ)続いて、表1の条件でアルゴンガス中でHIP処理
を行い、この処理により前記ダイヤモンド被膜とチップ
2との界面の接合強度を高める。
つぎに、本実施例における作用および効果を説明す
る。
ダイヤモンド被膜を形成したチップ2を、被削材(Al
−8重量%Si合金)に切削速度800m/minで、送り0.1mm/
rev、切込み0.25mmで、切削時間を1時間、10時間、100
時間、切削試験を行ったところ、HIP処理を施さない場
合には短時間の試験で剥離が生じたが、本発明品におい
ては表1に示すように良好な耐久性を呈した。
また、前記(コ)の工程を付加することにより、ガラ
スコーティングや窒化チタンによる気密性コーティング
膜により、アルゴンガスがダイヤモンド粒子間またはダ
イヤモンド粒子とチップ2との間へ侵入することが防止
でき、界面の接合強度の一層の向上が図れる。さらに、
これらコーティング膜は、ガラスコーティングの場合HI
P処理後に容易に除去でき、窒化チタン(窒化物一般)
の場合使用時に剥離する。
このように、本実施例の方法により製造されたチップ
2は、バイト、エンドミル、カッター、ドリル等の切削
工具の超硬合金に適用すれば、実用上ダイヤモンド被膜
の剥離の発生が皆無となり工業上有用なものとなる。
本発明は上記実施例の他、つぎの実施態様を含む。
a.請求項2において、ダイヤモンド被膜上への気密性コ
ーティング膜の形成は、HIP処理条件下で、気密性の保
たれる膜であれば何でも良い。ただし、厚みは気密性が
保たれる範囲で、薄い方が好ましい(窒化チタンの場合
は1μm〜10μm)。
b.炭素源ガスを含む原料ガスを活性化する方法として、
タングステン、トリウムフィラメント等の熱電子放射材
や、短波〜極超短波(13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、
915MHz、5.8GHz、22.125GHz)による高周波数放電を使
用しても良い。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す、マイクロ波使用のプ
ラズマ放電による化学気相ダイヤモンド被膜製造装置の
断面図である。 図中 2……チップ(基体)、11……混合ガス(炭素源
ガス)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素源ガスを含み、 熱電子放射材、高周波放電またはマイクロ波プラズマ放
    電などによって活性化された原料ガス流中に基体を晒し
    て該基体上にダイヤモンド被膜を成膜する化学気相析出
    法によるダイヤモンド被膜の製造方法において、 前記基体上にダイヤモンド被膜を成膜の後、 (ア)圧力が1メガパスカル以上150メガパスカル以下
    の不活性ガス雰囲気中で、かつ、 (イ)その雰囲気温度が1000℃以上1300℃以下で、か
    つ、 (ウ)その雰囲気中で0.5時間以上2時間以下保持し、 このHIP処理により前記ダイヤモンド被膜と基体との界
    面の接合強度を高めたことを特徴とするダイヤモンド被
    膜の製造方法。
  2. 【請求項2】前記基体上にダイヤモンド被膜を成膜の
    後、 前記HIP処理を施すのに先立って、さらにダイヤモンド
    被膜上に気密性コーティング膜を形成させる請求項1記
    載のダイヤモンド被膜の製造方法。
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