JP2631907B2 - 異常放電位置に基づいて放電間隙を補正する放電加工方法及び装置 - Google Patents

異常放電位置に基づいて放電間隙を補正する放電加工方法及び装置

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JP2631907B2 JP18427490A JP18427490A JP2631907B2 JP 2631907 B2 JP2631907 B2 JP 2631907B2 JP 18427490 A JP18427490 A JP 18427490A JP 18427490 A JP18427490 A JP 18427490A JP 2631907 B2 JP2631907 B2 JP 2631907B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は放電加工機に関し、特に複数軸の同時制御に
より放電関隙を制御する型彫放電加工機に関する。
従来の技術 放電加工機では工具となる電極と被加工物との間に火
花放電を生じさせ、その際発生する熱によって被加工物
の材料を蒸発気化若しくは溶融させ、かつ、断続的に放
電を生じさせることにより、それに伴う衝撃圧力によっ
て材料を飛散させて除去加工するものである。
したがって、加工電極と被加工物の間隙が大きすぎた
り、または逆に狭すぎて加工電極と被加工物が接触して
しまった状態では放電が生じないため、加工が行われず
加工能率を低下させる。さらに、加工電極と被加工物の
間に放電加工によって生じた加工屑やガスが溜まると間
隙の電気絶縁性が低下して放電が停止せず、連続的な放
電となるため衝撃的な圧力が発生しなくなって加工能率
が低下する。
また、加工電極と被加工物の間に放電加工によって生
じた加工屑が溜まると、これを介して放電が生じるた
め、加工電極と被加工物の間の1点に集中して何回も同
じ場所に放電が起きる場合がある。このような集中放電
の場合、集中放電が生じた加工電極や被加工物のその箇
所だけが消耗し、全体の加工形状の精度を悪くしたり、
傷となって残ってしまうという不具合が生じる。
したがって、放電加工機では、加工電極と被加工物を
放電が生じる程度まで近付けると共に、直接接触して短
絡を生じないように間隙を保つように加工電極または被
加工物を移動させ制御する必要がある。さらに、間隙を
加工屑が溜まったときには、一旦加工電極または被加工
物を後退させ間隙を大きくし加工屑の汚染物質を間隙外
に排出する必要がある。
また、工具電極が被加工物を切り込む際、その正面だ
けでなく側面でも放電が生じる。例えば、加工電極がテ
ーパ形状をしている場合、テーパになった加工電極の側
面で生じる放電も加工電極の正面(底面)で生じる放電
と同様に加工を行っている。
そのため、放電間隙の制御では、放電が実際に生じて
いる点で加工電極と被加工物の間隔を適切に保ち、か
つ、放電が生じている点の加工屑がうまく排除されるよ
うに加工電極または被加工物を動かす必要がある。この
ためには実際に放電が生じている点での加工電極又は被
加工物の法線方向に加工電極若しくは被加工物を動かす
のが最適である。
しかし、従来の汎用放電加工機(非NCの放電加工機)
では、加工電極を動かす方向が構造的に決まっており、
加工電極と非加工物の間のどこで放電が生じても一定の
方向に加工電極を移動させて間隙を制御している。これ
では、加工電極の底面での放電間隙が適切に制御されて
も、加工電極側面方向には間隙制御が行われないのと同
じであり、被加工物側面(加工された穴の側面)の精
度、品質が劣ったものになる。
一方、数値制御装置で制御されるNC放電加工機では複
数の送り軸の合成によって任意の方向に加工電極または
被加工物を動かすことができるが、しかし、放電が生じ
ている位置は次々と移動するために、どの方向に加工電
極を移動させればよいか、分からず、従来のNC放電加工
機においては、NCプログラムにしたがって現在切り込ん
でいる方向、または事前に設定したおいた一定方向に加
工電極を動かし放電間隙を制御する方式が採用されてい
た。
発明が解決しようとする課題 上述したように従来の放電加工機においては、放電位
置に関係なくある決められた方向に加工電極を移動させ
て放電間隙を制御しており、異常放電が生じてもその異
常放電箇所に応じた最適の放電間隙制御ができず、加工
能率、加工結果の品質の両面で十分満足できるものでは
なかった。
型彫放電加工機においては、その特徴である3次元形
状の総型加工において、異常放電が放電間隙制御運動の
方向によってきまる方向の面以外の点で生じたときにそ
の異常放電を停止させるような最適な間隙制御ができ
ず、放電間隙制御運動の方向によってきまる方向の面
と、他の面の加工特性が異なることは、加工の転写精度
を低下させるだけでなく加工電極の制作において、これ
を補償する必要が生じ、加工法の利用価値を損ねてい
る。
そこで本発明の目的は、電極の形状に関係なく最適な
放電間隙制御を実施する異常放電位置に基づいて放電間
隙を補正する放電加工方法及び装置を提供することにあ
る。
課題を解決するための手段 加工電極若しくは被加工物のどちらか一方の給電点を
分解し少なくとも3つ以上の異なった位置の分割給電点
とし、他方を1つの給電点として加工電極と被加工物間
に加工電源を接続し、上記各分割給電点に流れる電流の
値を検出する電流測定器と、上記電流測定器で測定され
る電流値から電流値の比若しくは電流の時間的変化率の
比を算出する比算出手段と、分割給電点を設けた側の加
工電極若しくは被加工物の各店に電流を流したときの各
分割給電点に流れる電流の電流値の比若しくは電流の時
間的変化率の比に対応する加工電極若しくは加工形状の
上記各点における法線方向を記憶する記憶手段と、異常
放電を検出する異常放電検出手段と、上記異常放電検出
手段で異常放電が検出されると上記比算出手段で算出さ
れる比に基づいて上記記憶手段から読み出される法線方
向ベクトルの各軸方向成分に基づいて加工電極と被加工
物の相対的移動を補正して加工電極と被加工物間の間隙
を制御する補正手段とを備えた放電加工機とすることに
よって上記課題を解決した。
特に、上記記憶手段に記憶させる電流値の比若しくは
電流の時間的変化率の比に対する加工電極若しくは加工
形状の法線方向は、工作物のCAD情報若しくは加工用NC
プログラムから予め求め記憶しておく。若しくは、測定
用電源と各方向の方向ベクトルを発生する方向ベクトル
発生器と、加工が所定量進むごとに加工電源から測定用
電源に切り替えて、上記方向ベクトル発生器を作動させ
て順次加工電極を加工穴中心位置から移動させ、被加工
物に短絡させ、そのとき方向ベクトル発生器から出力さ
れた方向ベクトルをそのとき検出される電流値の比若し
くは電流の時間的変化率の比に対する法線方向として上
記記憶手段の法線方向を書き替える法線方向書き替え手
段を設けることによって、順次記憶内容を更新するよう
にする。
作用 第2図は本発明の作用原理を説明する説明図で、この
説明図では被加工物2側に3つの分割給電点P1,P2,P3が
設けられており、工具電極1には1つの給電点P0が設け
られている。図中V0は被加工物2と加工電極1間に接続
された電源の電圧を意味し、Rは電源と加工電極1間に
挿入されている電流制限抵抗である。例えば、加工電極
1の点D1と被加工物2の点D2間に放電が生じたとする
と、放電点D1と給電点P0間の抵抗をR0、放電点D2と分割
給電点P1,P2,P3間の抵抗をR1,R2,R3とし、給電点P0に流
れる電流をI0、分割給電点P1,P2,P3に流れる電量をI1,I
2,I3とし、放電柱の内部での電圧降下(ギャップ電圧)
をVGとすると、分割給電点P1,P2,P3は被加工物状の異な
った位置であることから抵抗R1,R2,R3の値電流I1,I2,I3
の値も異なってくる。そして、次の第1〜第3式が成立
する。
R1=(1/I1){(V0−VG)−(R+R0)I0} …(1) R2=(1/I2){(V0−VG)−(R+R0)I0} …(2) R3=(1/I3){(V0−VG)−(R+R0)I0} …(3) 上記第1〜第3式において抵抗R1〜R3は分割給電点P1
〜P3から放電点D2までの各抵抗値であり、分割給電点P1
〜P3から放電点D2までの各距離に比例する。すなわち、
上記第1〜第3式により抵抗値R1〜R3がわかれば、3次
元上の放電点D2の位置がわかることになる。そして、抵
抗R1〜R3の比とると、 R1/R2=I2/I1 ……(4) R1/R3=I3/I1 ……(5) R2/R3=I3/I2 ……(6) となり、抵抗の比すなわち、各分割給電点P1〜P3から放
電点D2までの距離の比は各分割給電点P1〜P3らに流れる
電流I1〜I3の比によって表わされる。また、加工電極ま
たは、被加工物上の分割給電点という既知の点からの距
離の比によって放電位置を特定させるためには、2つ以
上の距離の比、即ち2つ以上の電流の比を必要とし、3
つ以上の分割給電点があればよいことになる。このこと
より各分割給電点P1〜P3を流れる電流の比によって放電
位置を特定できることを意味する。
また、放電開始時の放電電流の時間微分を用いても放
電点の特定はできる。上記第1〜3式において、抵抗R
0,R1,R2,R3,を夫々のインダクタンスL0,L1,L2,L3と置き
換え、電流I0,I1,I2,I3の微分値をi0,i1,i2,i3とすれ
ば、次の第7〜9式が成立する。なお、この場合インダ
クタンスに比べ抵抗R0,R1,R2,R3の影響は小さいのでそ
の項は省略する。
L1=(1/i1)×{(V0−VG)−R×I0−L0×i0} …(7) L2=(1/i2)×{(V0−VG)−R×I0−L0×i0} …(8) L3=(1/i3)×{(V0−VG)−R×I0−L0×i0} …(9) インダクタンスの値も各分割給電点P1〜P3から放電点
D2の距離と比例しているから、各分割給電点から放電点
間での距離の比は上記第7〜9式より各分割給電点に流
れる電流の時間的変化率の比であらわされ、2つ以上の
距離の比が求められれば放電点の位置が特定できる。
一方、被加工物2の形状は工作物のCAD情報または加
工用NCプログラムから事前に求められるので加工形状の
各点における法線方向若しくは加工電極の法線方向を求
めることができる。そこで、各点の法線方向と、各点と
分割給電点間の距離の比すなわち、各分割給電点に流れ
る電流の比若しくは電流の時間的変化率の比を表として
記憶装置に記憶しておく。
さらには、予め被加工物(加工電極に分割給電点をも
うけた場合には加工電極)の各点にプローブを接触さ
せ、測定用の電流を流し、その接触位置の法線方向と各
分割給電点に流れる電流の比,若しくは電流の時間的変
化率の比を求め表として記憶装置に記憶しておく。な
お、プローブを接触させて電流を流した場合第1〜3
式、第7〜9式においてV0は測定用電圧、VGは接触抵
抗、R0が加工電極上の給電点から短絡点までの電気抵抗
を現わすものとなり、各分割給電点P1〜P3から接触点
(放電点)間での距離の比が各分割給電点に流れる電流
の比若しくは電流の時間的変化率の比で現わされること
には変わりはない。
また、加工途中において、加工電極自体をプローブと
して用い、測定用電源を加工電極と被加工電極間に接触
し、加工用電極を加工穴の中心に位置ぎめしたのちあら
ゆる方向に移動させて加工電極と被加工物を接触短絡さ
せ、、この時流れる各分割給電点の短絡電流を測定し各
分割給電点の電流値の被若しくは電流の時間的変化率の
比を求め、この比と、加工電極の移動方向を表として記
憶するようにする。すなわち、加工穴の中心位置から加
工電極を移動させ接触させれば、その接触点の法線方向
は加工電極の移動方向と同一方向であり、短絡電流の比
若しくは電流変化率の比は各分割給電点から接触点まで
の距離の比となり、接触点が特定され記憶されることに
なると共にその接触点の法線方向が記憶されることにな
る。
一方放電加工途中において、異常放電が生じると、各
分割給電点における電流を測定し、その電流値の比若し
くは電流の時間的変化率の比を求めて上記表より、この
比に対する法線方向を求め、放電間隙をこの求められた
法線方向に異常放電が解消するように補正するようにす
れば、最適の放電間隙制御が得られる。
実施例 第1図は本発明の一実施例のブロック図で、1は加工
電極、2は被加工物、3は放電加工電源である。放電加
工電源3は主電源4,電流制御抵抗5、、スイッチング素
子6及び該スイッチング素子6をオン/オフさせる断続
信号を発生する断続信号発生回路7で構成され従来の放
電加工電源と同一である。被加工物2は数値制御装置8
で制御されるX軸用サーボモータ9、Y軸用サーボモー
タ10でXY軸方向に移動させられるようになっている。ま
た、加工電極1は数値制御装置8で制御されるZ軸用サ
ーボモータ11によってZ軸方向に駆動されるようになっ
ている。これらの被加工物2,加工電極1の駆動方式では
従来の数値制御装置で制御される放電加工機と同一構成
であり、詳細は省略する。
加工電極1は1つの給電点P0を介して放電加工電源の
一方の端子に接続され、被加工物2は位置が異なる3つ
の分割給電点P1,P2,P3を介して放電加工電源3の他方の
端子に接続されている。そして、各分割給電点P1,P2,P3
に流れる電流を電流測定器12,13,14で夫々測定するよう
にしている。
15はプロセッサ、ROM,RAM等のメモリ等で構成されて
いる電極運動制御装置で、加工電極1と被加工物2間の
ギャップ電圧VGと各電流測定器12,13,14の出力が入力さ
れ、出力として、加工電極1と被加工物2の間隙を補正
する補正データを出力するようになっている。また、数
値制御装置8との間で制御信号が入出力されるようにな
っている。
第3図は上記電極運動制御装置15が、加工形状の各点
の法線方向と電流測定器12,13,14で検出される電流値の
比を算出し方向ベクトル表を作成し、電流値の比と法線
方向を記憶するときの機能ブロック図である。
第3図中、符号20は電流比計算部、22は方向ベクトル
発生器、21は電流値の比の組み合わせに対する方向ベク
トルのXYZ軸成分を記憶する方向ベクトル表、23〜15は
方向ベクトルのXYZ成分に夫々基準速度Vsを乗じて分配
速度指令を求め、これを数値制御装置8に出力する乗算
器である。なお、26は基準速度発生器である。
まず、放電加工電源3の主電源4の電圧を測定用電圧
に変え、スイッチング素子6を常時オンとして放電加工
電源を測定用電源に切り替える。または、従来から放電
加工機が備えている短絡測定用の電源に切り替えて、電
源1と被加工物2間に測定用電圧を印加するようにして
もよい。続いて、加工電極1を加工穴の中心位置に位置
ぎめした後、方向ベクトル発生器22は、予め記憶されて
いる所定ピッチずつ方向が異なる方向ベクトルの各軸成
分を出力し、この各軸成分に基準電圧Vsを乗じて分配速
度指令Vx,Vy,Vzとして数値制御装置8に出力する。数値
制御装置8はこの分配速度指令をXYZの各軸のサーボモ
ータ9,10,11に出力し加工電極1を被加工物2に対して
相対的に移動させる。そして、加工電極1と被加工物2
が接触し短絡電流が流れると、加工電極1の移動を停止
し、各分割給電点P1〜P3に流れる電流を電流測定器12〜
14で検出し、その電流値はA/D変換器(図示せず)でデ
ィジタル信号に変換され、電流比計算部20に入力され、
2つの電流値の比,例えばI1/、I2,I1/I3が計算され、
ある単位で四捨五入されて、2つの電流値の比データと
して方向ベクトル表21に出力される。方向ベクトル表21
はい2つの電流値の比を縦軸、横軸に取ったテーブル状
に構成され、2つの電流値の比の交点に、そのとき方向
ベクトル発生器22から発生していた方向ベクトルの各軸
成分を記憶する。すなわち、2つの電流値の比の組み合
わせに対応するアドレスにそのとき発生していた方向ベ
クトルの各軸成分が記憶されることになる。加工電極1
を加工穴の中心位置から移動させ加工電極1と被加工物
2を接触させたものであるから、加工電極1の移動方向
は接触した点の加工形状(加工電極)の法線方向を意味
する。そのため、接触した位置における2つの電流値の
比の組み合わせに対応するアドレスにその接触した位置
の法線方向が記憶されることになる。
そして、再び加工電極1を加工穴の中心位置に位置付
け、方向ベクトル発生器22に記憶された次の方向に加工
電極を移動させ上述した動作を繰り返し行わせ、方向ベ
クトル発生器22に設定記憶されているすべての方向に対
して、上述した処理を行うことによって、方向ベクトル
表21に加工形状(加工電極)の各点における電流値の比
に対応する方向べクトルを記憶させ、方向ベクトル表21
の作成は終了する。なお、この方向ベクトル表21の作成
は加工が設定所定量行われるごとに実施して、該方向ベ
クトル表21は更新される。
第4図は、異常放電時の加工電極1と被加工物2間の
間隙の補正処理の機能ブロック図で、28は異常放電検出
手段で、27は基準電圧Vr発生器である。通常の異常放電
が発生していないときは、方向ベクトル表21からは出力
が出されておらず、ギャップ電圧VGからら基準電圧Vrを
減じてあるゲイン(図示せず)を乗じて得られる間隙補
正速度指令Vgcに各軸方向ベクトルを乗じて出力される
分配速度指令Vx,Vy,Vzは「0」であり、精緻制御装置8
によって通常のサーボ送り制御が行われている。しか
し、異常放電が生じると、従来の異常放電検出と同様の
方法で異常放電検出手段が異常を検出し、電流比計算部
20に信号を送り、各電流測定器12,13,14で検出される電
流値より電流値の比(I1/I2,I1/I3)を算出させ、方向
ベクトル表21からこの2つの電流値の比の組み合わせに
対応する方向ベクトルの各軸成分を読みだし、ギャップ
電圧VGから基準電圧Vrを減じ、ゲインを乗じた間隙補正
速度指令Vgcに方向ベクトルの各軸成分を乗じて間隙補
正用の分配速度指令Vx,Vy,Vzを出力し、数値性装置8は
この補正用分配速度指令Vx,Vy,Vzをサーボ送りの各軸成
分に加算して各軸のサーボモータを駆動する。
間隙補正速度指令Vgcはギャップ電圧VGから基準電圧V
rを減じた値に比例するものであるから、集中放電等で
異常にギャップ電圧VGが低下し基準電圧Vrより小さくな
ると、負の値となり、この値に方向ベクトルの各軸値が
乗じられて得られる補正用分配速度指令は方向ベクトル
と逆向きの方向となる。すなわち、第3図で説明した加
工電極1を被加工物2に接触させる方向とは逆向きの指
令となり、加工電極1と被加工物2間の間隙が拡大する
方向に、しかもその方向は集中放電が生じている位置の
法線方向に加工電極の移動が補正されることになる。そ
の結果異常放電が停止し、異常放電が停止すれば、方向
ベクトル表21からの出力は「0」となり、補正用分配速
度指令Vx,Vy,Vzは「0」となって通常のサーボ送りにな
る。
このようにして、異常放電に対して自動的に異常放電
が解消するように補正されることとなる。
以上が、本実施例の機能の説明であるが、上記機能を
具体的に実施する数値制御装置8のプロセッサ(シーケ
ンス制御を行うプロセッサ)の処理と、電極運動制御装
置15のプロセッサの処理を第5図及び第6図(a),
(b)に示すフローチャートと共に説明する。
第5図は、本実施例において、本発明に関し数値制御
装置8のプロセッサが実施する処理のフローチャートで
ある。この放電加工機で放電加工のための運転を開始す
ると、まず、加工電極と被加工物の間に測定用電源を接
続する(ステップS1)。すなわち、前述したように、放
電加工電源3の主電源4の電圧を小さくしスイッチング
素子6をオンとし、放電加工電源3を測定用電源として
使用するか、若しくは別に設けられた測定用電源を加工
電極1と被加工物2に接続する。次に加工穴の中心に加
工電極1を位置決めする。なお、この中心位置は記憶し
ておく(ステップS2)。次に、測定指令を電極運動制御
装置15に出力し(ステップS3)、電極運動制御装置15か
ら測定終了信号が出力されたか、または位置決め信号が
出力されたか監視する(ステップS4,S5)。
一方第6図(a),(b)は電極運動制御装置15のプ
ロセッサが実施する処理のフローチャートである。放電
加工機が放電加工のための運転を開始すると、従来と同
様の方法で異常放電が発生しているか否か判断し、異常
放電が発生していなければ、測定指令が数値制御装置8
から送られて来ているか否か繰り返し判断している(ス
テップS101,S102)。そして、前述したように数値制御
装置8から測定指令が出力されると(ステップS3)、電
極運動制御装置15のプロセッサは指標iを1にセットし
(ステップS108)、電極運動制御装置15内に設けられた
所定ピッチ毎の方向ベクトルを記憶するメモリの指標i
で示されるアドレスより、該アドレスに記憶する方向ベ
クトルの各軸成分を読みだし、該方向ベクトル各軸成分
に基準速度Vsを乗じて各軸分配速度指令Vx,Vy,Vzを数値
制御装置8に出力する(ステップS109)。数値制御装置
8のパルス分配を行うプロセッサはこの分配速度指令を
各軸のサーボモータに分配し、各軸のサーボモータ9,1
0,11を駆動し加工電極1を被加工物2に対して相対的に
移動させる。
次に、電極運動制御装置15のプロセッサは電流測定器
12,13,14のどれか1つによって、電流が流れたか否か判
断し(ステップS110)、加工電極1と被加工物2が接触
して短絡電流が流れると、これを検出して、方向ベクト
ルの各軸成分を「0」にし加工電極1の被加工物2に対
する相対移動を停止させる(ステップS111)。そして、
各分割給電点の各電流測定器12,13,14で検出される電流
を測定し、2つの電流値の比(例えばI1/I2,I1/I3)を
求め、この2つの電流値の比を所定単位で四捨五入し
て、電極運動制御装置15内に設けられたメモリ内の方向
ベクトル表(21)のアドレスをこの2つの電流値の比か
ら決定する(ステップS112,S113,S114)。そして、この
アドレスに加工電極を移動した方向、すなわち、ステッ
プS109で移動させた方向ベクトルの各軸成分をこのアド
レスに記憶する(ステップS115)。次に、指標iを1イ
ンクリメントし、該指標iが、メモリに記憶したすべて
の方向ベクトルの数nを越えたか否か判断し(ステップ
S116,S117)、越えてなければ、位置決め信号を数値制
御装置8に出力し(ステップS118)、測定指令が数値制
御装置8から送られてくるのを待つ(ステップS119)。
一方、数値制御装置8では電極運動制御装置15から位
置ぎめ信号が送られてくるとこれを検出して、ステップ
S5からステップS2に移行し、再び加工電極1を加工穴の
中心に位置ぎめし、測定指令を出力し、位置決め信号ま
たは測定終了信号が送られてくるまで待機する。
数値制御装置8より、測定指令が送られてくると、電
極運動制御装置15のプロセッサはこれを検出し(ステッ
プS119)、再びステップS109以下の処理を行う。
以下、上記処理を繰り返し、メモリ内の2つの電流値
の比の組み合わせに応じたアドレスに、その2つの電流
値の比が得られる位置の方向ベクトルの各軸成分を記憶
する。こうして、メモリに記憶された所定ピッチ毎の方
向の各々に対応して、その方向に加工電極を移動させて
加工電極と被加工物2を接触させ、そのとき得られる各
分割給電点に流れる電流の比に対する移動方向(法線方
向)が記憶される。指標iが法線方向の数nを越える
と、測定終了信号を数値制御装置8に出力し(ステップ
S120)、この測定終了信号を数値制御装置8のプロセッ
サが検出すると(ステップS4)、放電加工電源を測定用
電源として使用した場合は、数値制御装置8のプロセッ
サが主電源を加工用の電圧に切り替え、断続信号発生回
路7を作動させて、放電加工電源3を通常の加工時の電
源にする。一方、他に測定用電源を備えている場合に
は、この測定用電源から放電加工用電源に切り替える
(ステップS6)。そして、従来と同様にサーボ送りを開
始し、放電加工を開始する(ステップS7)。
そして、加工が終了したか、または、設定所定量切り
込み加工したか否か判断し(ステップS8,S9)、設定さ
れた所定量加工したことが検出されると、サーボ送りを
停止し(ステップS10)、ステップS1に戻り測定用電源
に切り替えて、放電加工を一時中断して、前述したステ
ップS2〜S5の処理を行うと共に、電極運動制御装置15の
プロセッサはステップS108〜S120の処理を行って方向ベ
クトル表の書き替えを行う。以下、所定量加工が進むご
とに、方向ベクトル表は書き替えられ、加工電極1と被
加工物2を接触させた加工形状の各点において、分割給
電点P1,P2,P3に流れる電流の比に応じてその点の法線方
向が更新されることになる。
こうして、方向ベクトル表を更新しながら、放電加工
が進められるが、この放電加工中において、異常放電が
生じると電極運動制御装置15のプロセッサはその異常放
電を検出し(ステップS101)、そのとき、電流測定器1
2,13,14で検出される電流を測定し、2つの電流の比(I
1/I2,I1/I3)を求めこの2つの電流値の比に対応する方
向ベクトルの各軸成分を方向ベクトル表より読みだし、
この方向ベクトルの各軸成分に、そのとき検出されたギ
ャップ電圧VGから基準電圧Vrを減じた値に所定のゲイン
を乗じた間隙補正速度指令Vgcを乗じて補正用分配速度
指令Vx,Vy,Vzを求め、数値制御装置8に出力する。な
お、このときの補正用分配速度指令Vx,Vy,Vzの大きさ
は、ギャップ電圧VGと基準電圧Vrの差によって決まり、
集中放電等でギャップ電圧VGが小さければ、間隙補正速
度指令Vgcは負となり、集中放電が生じている面の法線
方向に間隙を開くような補正用分配速度指令となる(ス
テップS103〜S107)。数値制御装置8はこの補正用分配
速度指令を通常のサーボ送りの各軸分配指令速度に加算
して、各軸のサーボモータ9,10,11を駆動し、加工電極
1と被加工物2間の間隙を補正する。
こうして、間隙が補正されると。異常放電が解消され
て、異常放電が検出されなくなるので(ステップS10
1)、補正用分配速度指令Vx,Vy,Vzが「0」になるの
で、通常のサーボ送りによる間隙制御が行われ放電加工
が持続して行われることとなる。
このようにして、放電加工が行われ、加工が設定所定
量進むごとに方向ベクトル表が書き替え更新され、異常
放電が生じると方向ベクトル表に基づいて、異常放電が
生じている面の法線方向に加工電極1と被加工物2間の
間隙が広げられ、補正されて異常放電を自動的に解消す
るように駆動され、放電加工が進められる。そして、加
工が終了すると(ステップS9)、この処理は終了する。
なお、上記実施例で、測定用電源を加工用電源の電圧
より低い電圧とし、加工電極1と被加工物2間にこの電
圧を常時印加して加工電極1と被加工物2を接触短絡さ
せ、分割給電点の電流の比を求めるようにしたが、放電
加工電源3の主電源4の電圧を小さくし、断続信号発生
回路7を加工時と同様に作動させてスイッチング素子6
をオン/オフさせて、各分割給電点に流れる電流を電流
測定器12,13,14で測定し、その電流の時間的変化率を求
めこの変化率の比2つ(i1/i2,i1/i3)を算出し、この
2つの電流の時間的変化率の比に対応する方向ベクトル
を方向ベクトル表に記憶しておき、異常放電時に各分割
給電点に流れる電流の時間的変化率の比を求めて、異常
放電が生じている面の法線方向を上記方向ベクトル表か
ら読みだし加工電極1と被加工物2間の間隙を補正する
ようにしてもよい。
また、上記実施例では、加工電極1を加工物2に接触
させて、方向ベクトルと電流の比の関係を求めて方向ベ
クトル表を作成したが、被加工物の加工形状のCAD情報
若しくはNCプログラムから、予め加工形状の各点におけ
る電流値の比(I1/I2,I1/I3)と法線ベクトルを求め記
憶させておいてもよい。
また、加工電極の変わりにプローブを用い、該プロー
ブと被加工物間に測定用電源を接続し、加工形状の各点
に該プローブを接触させて各分割給電点に流れる電流を
測定し、各分割給電点の電流の比若しくは、各分割給電
点に流れる電流の時間的変化率の比を求めて、該プロー
ブの接触点の法線方向を、上記電流の比若しくは電流の
時間的変化率の比に対応させて記憶させるようにしても
よい。
また、上記実施例では分割給電点を被加工物側に設け
たが、加工電極側に設けてもよい。
発明の効果 本発明においては、異常放電が検出されると、その異
常放電が生じている箇所における加工電極若しくは被加
工物の法線方向に加工電極と被加工物の間隙が拡大する
ように間隙制御がなされるので、テーパになった加工電
極の側面に異常放電が生じても、またコーナー部分の加
工で側面に異常放電が生じても、これらの異常放電を速
やかに解消することができ、加工面の精度を向上させる
と共に、均一な精度の加工面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例のブロック図、第2図は本発
明の作用原理を説明する説明図、第3図は本発明の一実
施例における、方向ベクトル表を作成するときの電極運
動制御装置の機能ブロック図、第4図は同実施例におけ
る異常放電時の電極運動制御装置の間隙補正処理の機能
ブロック図、第5図は同実施例におれる数値制御装置の
処理フローチャート、第6図(a),(b)は同実施例
における電極運動制御装置の処理フローチャートであ
る。 1……加工電極、2……被加工物、3……放電加工電
源、4……主電源、5……電流制限抵抗、6……スイッ
チング素子、7……断続信号発生回路、8……数値制御
装置、9,10,11……サーボモータ、12,13,14……電流測
定器、15……電極運動制御回路、P0……給電点、P1,P2,
P3……分割給電点、20……電流比計算部、21……方向ベ
クトル表、22……方向ベクトル発生器、23,24,25……乗
算器、26……基準速度発生器、27……基準電圧発生器、
28……異常放電検出部である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尾高 俊一 山梨県南都留郡忍野村忍草字古馬場3580 番地 ファナック株式会社基礎技術研究 所内 (56)参考文献 特開 昭64−16316(JP,A) 特開 昭54−147595(JP,A)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加工電極若しくは被加工物のどちらか一方
    の給電点を分割し少なくとも3つ以上の異なった位置の
    分割給電点とし、他方を1つの給電点として加工電極と
    被加工物間に加工電源を接続し、上記各分割給電点に流
    れる電流の値または電流の時間変更率の比によって放電
    点を特定し該放電点の加工電極又は被加工物の法線方向
    を予め記憶装置に記憶しておき、異常放電が生じたとき
    上記分割放電点に流れる電流の値または電流の時間変更
    率の比によって該放電点の法線方向を求め、放電間隙を
    該法線方向に補正するようにした異常放電位置に基づい
    て放電間隙を補正する放電加工方法。
  2. 【請求項2】上記各分割給電点に流れる電流の値または
    電流の時間変化率の比に対応する放電点の法線方向の記
    憶は、給電点を1つとした側をプローブとし、該プロー
    ブと分割給電点とした加工電極若しくは被加工物間に測
    定用電源を接続し、プローブを加工電極若しくは被加工
    物の各点に接触させ、そのとき各分割給電点に流れる電
    流の値の比若しくは電流の時間的変化率の比に対応させ
    て接触した点の法線方向を記憶装置に記憶させておく請
    求項第1記載の放電間隙を補正する放電加工方法。
  3. 【請求項3】上記各分割給電点に流れる電流の値または
    電流の時間変更率の比に対応する放電点の法線方向の記
    憶は、工作物のCAD情報若しくは加工用NCプログラムか
    ら予め記憶装置に記憶しておく請求項第1記載の放電間
    隙を補正する放電加工方法。
  4. 【請求項4】加工が設定量進むごとに、加工電極と被加
    工物間に測定用電源を接続し、加工電極を加工中心に位
    置付けたのち順次移動方向を変えて加工電極若しくは被
    加工物を相対的に移動させ加工電極と被加工物を短絡さ
    せ、上記移動方向を上記各分割給電点の電流値若しくは
    電流の時間的変化率の比に対応する法線方向として記憶
    装置の記憶を順次書き替える請求項1記載の異常放電位
    置に基づいて放電間隙を補正する放電加工方法。
  5. 【請求項5】加工電極若しくは被加工物のどちらか一方
    の給電点を分解し少なくとも3つ以上の異なった位置の
    分割給電点とし、他方を1つの給電点として加工電極と
    被加工物間に加工電源を接続し、上記各分割給電点に流
    れる電流の値を検出する電流測定器と、上記電流測定器
    で測定される電流値から電流比若しくは電流の時間的変
    化率の比を算出する比算出手段と、分割給電点を設けた
    側の加工電極若しくは被加工物の各点に電流を流したと
    きの各分割給電点に流れる電流の電流比若しくは電流の
    時間的変化率の比に対応する加工電極若しくは加工形状
    の上記各点における法線方向を記憶する記憶手段と、異
    常放電を検出する異常放電検出手段と、上記異常放電検
    出手段で異常放電が検出されると上記比算出手段で算出
    される比に基づいて上記記憶手段から読み出される法線
    方向ベクトルの各軸方向成分に基づいて加工電極と被加
    工物の相対的移動を修正して加工電極と被加工物間の間
    隙を制御する補正手段とを備えた異常放電位置に基づい
    て放電間隙を補正する放電加工装置。
  6. 【請求項6】測定用電源と各方向の方向ベクトルを発生
    する方向ベクトル発生器と、加工が所定量進むごとに加
    工電源から測定用電源に切り替えて、上記方向ベクトル
    発生器を作動させて順次加工電極を加工穴中心の位置か
    ら移動させ、被加工物に短絡させ、そのとき方向ベクト
    ル発生器から出力された方向ベクトルを、そのとき各電
    流測定器で検出される電流値の比若しくは電流の時間的
    変化率の比に対応する法線方向として、上記記憶手段の
    法線方向を書き替える法線方向書き替え手段を備えた請
    求項5記載の異常放電位置に基づいて放電間隙を補正す
    る放電加工装置。
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