JP2627926B2 - 液晶電気光学装置 - Google Patents

液晶電気光学装置

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、液晶表示素子や液晶光シャッターアレイ等
の液晶電気光学装置に関し、更に詳しくは、液晶分子の
初期配向状態を改善することにより表示ならびに駆動特
性を改善した液晶電気光学装置に関するものである。
〔従来の技術〕
従来の液晶電気光学装置としてはツイステッド・ネマ
チック(twisted nematic)液晶を用いたものが知られ
ている。このTN液晶は、画素密度を高くしたマトリクウ
電極構造を用いた時分割駆動の際、クロストークを発生
する問題点があるため、画素数が制限されていた。
また、各画素に薄膜トランジスタによるスイッチング
素子を接続し、各画素毎にスイッチングするアクティブ
マトリクス方式の表示素子が知られているが、基板上に
薄膜トランジスタを形成する工程が極めて煩雑な上、そ
の製造コスト製造歩留り等の要因により大面積の表示素
子を作成することが難しい問題点がある。
これらの問題点を解決するものとして、クラークによ
り米国特許第4367924号公報で強誘電性液晶素子が提案
されている。
第3図は強誘電性液晶の動作説明のために、セルの例
を模式的に描いたものである。11と11′は、In2O2ある
いはITO(Indium−Tin−Oxide)等の薄膜からなる透明
電極で被覆された基板(ガラス板)であり、その間に液
晶分子層12がガラス面に垂直になるように配向したSmC
相又は、他の強誘電性を示す液晶相が封入されてい
る。この液晶電気光学装置において強誘電性液晶分子が
第4図に示すように、スメクチック層の層の法線方向に
対して+θ傾いた第1の状態(I)と−θ傾いた第2の
状態(II)を取る。
この二つの状態間を外部より電界を加えて、強誘電性
液晶分子をスイッチさせることにより発生する複屈折効
果の違いにより表示を行うものであった。
この時強誘電性液晶分子を第1の状態(I)より第2
の状態(II)へかえる為にスメクチック層に対して垂直
方向に例えば正の電界を加えることにより成される。ま
た逆に第2の状態(II)より第1の状態(I)へ反転さ
せる為には、逆に負の電界を加えることにより成される
ものであった。すなわち外部より印加される電界の向き
をかえることにより強誘電性液晶分子の取る2状態を変
化させそれに伴って生じる電気光学効果の違いを利用す
るものであった。
さらにこの外部より印加する電界を除去しても強誘電
性液晶分子はその状態を安定に保っており第1と第2の
双安定なメモリー性を持っていた。
その為、この強誘電性液晶を用いた液晶電気光学装置
を駆動する信号波形としては両極性パルス列となってお
り、パルス極性の切り替わる方向により強誘電性液晶分
子の取る2状態間をスイッチングしていた。
このような強誘電性液晶を用いた電気光学装置におい
ては、装置全体において均一な駆動特性が当然ながら要
求される。そのために、液晶電気光学装置全体にわたっ
て欠陥のない、均一な液晶相すなわちモノドメインを全
体に形成すること、すなわち強誘電性液晶の複数の層が
互いに平行に一方向に配列しており、かつ欠陥のない均
一な配向を、目標として従来より技術開発がなされてき
た。
しかしながら、液晶材料特に強誘電性液晶は配向膜に
ついた微少はキズや液晶駆動用の電極の凹凸段差や、液
晶装置の基板間隔を一定に保持するためのスペーサー又
は液晶材料と配向膜との組合せ、その他種々の原因によ
り欠陥が発生し、均一なモノドメインが得られない。そ
の為に従来は液晶電気光学装置セルの端部より、液晶を
一次元結晶成長させる方法(温度勾配)によりセル全体
にモノドメントを成長させること又は一対の基板をミク
ロンオーダーの距離の制御で互いにずらすシェアリング
法等が試みられていた。
しかしながら液晶電気光学装置が大面積化した場合こ
れらの方法は適用不可能であった。すなわちこの方法に
よって実現されるモノドメインの大きさは最大数十ミリ
角程度であり大面積化して工業的製品に使用することは
不可能であった。
また仮に使用可能な大きさのモノドメントが実現され
たとしても、強誘電性液晶材料が持つ性質として液晶材
料分子が基板に配列せず、一定の傾きを持つ配列(プレ
チルト)するため強誘電性液晶の層が曲がったり、折れ
たりする。そのため層が平行に一方向に配列させる技術
は非常に難しく、さらにこの層の曲がりなどによってジ
グザグ欠陥がドメイン中に発生する問題があった。
そして、液晶材料は外部よりの電界によって、その取
り得る状態を変化させる際に、このジグザグ欠陥を境に
してその反転過程が逆になるという現象が見られる。こ
のために、装置全体において、均一な表示及び駆動特性
が得られないという問題があった。
〔発明の構成〕
本願発明は従来の考えであったモノドメインを得た状
態で電気光学効果を利用するという技術思想とはちがっ
た技術思想によりこれらの均一な表示及び駆動特性が得
られないという問題を解決するものであります。本発明
者らは、とくに液晶材料が等方性液体状態(高温状態)
より液晶状態(低温状態)へ移行する降温過程における
液晶材料の初期配列性に注目しその配列性を従来思想と
されていた状態とは全くちがう状態を利用することによ
り良好な液晶電気光学装置の表示又は駆動特性を実現せ
しめたものであります。
すなわち、本発明は、一対の平行基板間に強誘電性液
晶が挟持された、液晶電気光学装置であって、前記強誘
電性液晶は前記基板間に配置され前記複数の層は、連続
して互いに平行に一方向のみに配列するのではなく多方
向に配列しており、かつ前記基板の面内で複数の微小な
ドメインを形成している。液晶電気光学装置でありま
す。
本発明の場合、液晶は、微少なドメイン(大きさは数
十μm程度)が数多く集まったマルチドメイン状態とな
っている。
このようなマルチドメイン状態においては、液晶の配
向欠陥はそのドメインの境界によって、緩和されるため
に液晶電気光学装置セル全体において、ジグザグ欠陥等
が発生しないものである。
又、この微少なドメイン内部は良好なモノドメイン状
態となっているため、各々の微少なドメインにおける液
晶の表示又は駆動特性に差がなく、装置全体としては、
均一な表示又は駆動特性を実現することができるもので
あります。
さらに本発明の場合、強誘電性液晶の複数の層は平行
となっているが、基板全体では一方向のみに配列してお
らず、多方向に配列している。このために従来のように
基板全体にわたって均一な一方向のみの配列を実現する
必要がなく、工業的な生産規模においても、十分生産性
の高い液晶電気光学装置を作製できるものであります。
以下に実施例を示します。
〔実施例〕
第1図に本実施例にて使用した液晶電気光学装置のセ
ル概略断面図を示す。同図は行方向と列方向のマトリク
ス状に配置された電極部の端部の1部分を示している。
また概略図であるためその寸法は任意となっている。
本実施例で用いられたセルは従来より使用されているも
のと全く同様のセル構成のものである。すなわち、透明
の基板(例えばガラス)2,2′上に液晶駆動用の電極3,
3′が行方向と列方向にマトリクス状になるようパター
ニングされ形成されている。また該電極上には、配向制
御4,4′が設けられており、その片側は、液晶分子が並
べるように公知のラビング処理が施されている。この配
向制御膜4,4′は両方とも同じ材料を用いてもまた片側
づつ異なった材料を用いてもよいが本実施例において
は、4の配向制御をポリイミド膜を用い、もう一方の配
向制御膜4′にSiO2膜を使用した。
このように、配向制御膜の種類を変えた場合、液晶分
子を外部信号により駆動させる際に、比較的大きなしき
い値を得ることができ、マトリクス状の液晶電気光学装
置では、有利であった。
このような基板に2,2′を互いに重ね合わせ間にスペ
ーサ(図示せず)をはさんで一定間隔に保って液晶セル
を形成している。
本実施例の場合、強誘電性液晶の複数の層が互いに平
行になっており、さらに多方向に配列していることがす
ぐわかるように、基板間隔を20μmとし強誘電性液晶の
らせんピッチに対応するしま模様でこの層の配向の様子
がわかるようにした。一般に強誘電性液晶ではらせんピ
ッチに対応するしま模様はスメクチック層の方向と一致
していることが知られている。
このようなセルに対し、公知の液晶注入法に従って、
液晶を注入する。この液晶としては、等方性液晶−スメ
クチックA相−スメクチックC相−結晶相という相系列
をとり、等方性液体からスメクチックA相の転移が89.5
℃で行われる混合液晶を用いた。
この混合液晶はエステル系の強誘電性液晶を含み8種
類の液晶材料を混合した物であるが、混合液晶中の単一
液晶材料の割合が最も多い物で20%であり、8種類の混
合割合は各々5〜20%の間で主となる液晶が存在せず、
多品種をほぼ等量づつ混合しているものである。
尚、本実施例で用いた混合液晶の転移温度は次のよう
な物であります。
このような混合液晶を公知の注入法によりセル内に注入
した。注入時は、混合液晶を等方性液体状態にして注入
し、セル内にすべて液晶材料を注入した後、注入口を封
止する。
この後、強誘電性液晶を示す液晶相状態にまで徐例す
る。この際に強誘電性液晶の液晶相より高温の相に液体
状態から温度を下げてくると同時にスメクチック層が形
成され始める。この時、スメクチック層はある領域では
互いに平行となっている。しかし別の領域では、先とは
異なった方向に平行に揃っている。この様子を第4図に
示す。
第4図は、本実施例におけるスメクチックA相状態で
の、液晶の分子配列の様子を示している顕微鏡写真であ
る。クロスニコル下での顕微鏡写真のため、黒い部分と
白い部分が存在し液晶の層が一方向には配列せず、若干
その方向が異なっている様子がわかる。
さらに温度を下げてゆき、スメクチックC相にまで温
度を下げるとらせんピッチに対応するしま模様が見られ
てきた。この様子を第5図に示す。
これより判るようにしま模様が連続して平行に存在
し、かつ多方向に配列いていることがわかる。さらにま
た、この除冷を行う過程において一部液晶状態の部分と
等方性液体状態の部分が存在し、この時液晶状態の部分
は、配向制御膜4に施されたラビング処理にそって、並
びマイクロドメインを形成する。さらに温度を下げてい
くとさらに液体状態の部分より新たに液晶部分が発生に
同様にマイクロドメインを形成する。
このようにしてセル全体がマイクロドメインで埋める
ことができる。このマイクロドメインの大さは巾数μm
長さ100μmの細長いものであった。
このようなマルチドメイン配向状態を光学顕微鏡にて
観察を行ったところ、第5図に見られるように、従来見
られたジグザグ欠陥等は存在せずむしろ各ドメイン領域
の境界がすべて欠陥を含んだ状態であり、その欠陥が小
さいため、セル全体では均一な配向が得られているよう
に見られた。このような液晶に対し、室温付近の温度状
態で、上下の電極3,3′間に外部より電圧を加え液晶を
駆動した±30Vの三角波を加えその反転の様子を観察し
たところ液晶はマイクロドメイン単位で反転を行い、従
来のようにモノドメイン内で舟型ドメインを形成して反
転することはなかった。
また各ドメインの反転もほぼ同時に行われており、セ
ル全体で見ると、全体が同時に反転しているように観察
された。
この反転過程の途中には、本実施例の場合必ずらせん
形成状態を経由していた。また、電界印加を中止した場
合液晶分子の配向状態は2状態をとっており、しばらく
放置していてもその状態を取り続けていた。
又、セルの中央付近と、端部と液晶の反転はほぼ同じ
で場所による反転状態の違いも見られなかった。
本実施例では、複数の層が連続して平行でかつ多方向
に配列していることがわかるように厚いセルを用いた
が、薄いセル(3μm程度)においても同様の配向を行
っていることは、確認できている。この薄いセルを用い
た場合、強誘電性液晶はらせんをほどいた状態であり、
このため20μmセルと同じ電圧を加えた時が応答速度が
速く(約10μsec)なり、スレッシュホールド特性も向
上した。また薄いセルでの液晶分子の配列状態を第6図
に示す。
〔効 果〕
本発明により、従来の技術的進歩の方向とは逆の方向
であるマルチドメイン配向を持つ液晶電気光学装置を実
用化できた。
ジグザグ欠陥等光学的に大きな影響の出る欠陥が発生
せず均一な表示特性と高いコントラスト比を実現でき
た。さらにマルチドメイン各々の反転特性が揃っている
ので全体で均一な液晶駆動が可能となった。
また、モノドメインを形成させるための複雑な技術工
程が不要であり工業的にも生産しやすくなった。
そのため等方性液晶状態から強誘電性を示す液晶相状
態まで温度を下げる速度を上げることができた。加え
て、ラビング法にて液晶材料を配向させた液晶電気光学
装置も十分製品として耐えうる品質を持つものであっ
た。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明で用いた液晶電気光学装置セルの概略を
示す。 第2図は強誘電性液晶を模式的に現した図を示す。 第3図は液晶の取り得る状態を現す。 第4図、第5図及び第6図は液晶セル内での液晶の配列
状態の構造を示す顕微鏡写真。 2,2′……基板 3,3′……電極 4,4′……配向制御膜 5……液晶

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一対の基板と、 前記一対の基板間に配置され、スメクチック相を呈し、
    1種類の液晶材料が20%以下となるように多品種の液晶
    材料が混合された強誘電性液晶でなる強誘電性液晶層
    と、 前記強誘電性液晶層に電界を印加するための電極と、 前記強誘電性液晶層を配向させる配向層とを有し、 前記強誘電性液晶層は複数のドメインを形成し、前記複
    数のドメインは細長い形状を呈し、電界が印加されたと
    きの前記複数のドメインの各々の反転がほぼ同時に行わ
    れる ことを特徴とする液晶電気光学装置。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項において、前記強誘
    電性液晶は前記基板間にてらせん形成していないことを
    特徴とする液晶電気光学装置。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項において、前記強誘
    電性液晶はスイッチングの際にらせん状態を経由するこ
    とを特徴とする液晶電気光学装置。
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